(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-12
(45)【発行日】2023-07-21
(54)【発明の名称】目視支援装置
(51)【国際特許分類】
G01N 21/84 20060101AFI20230713BHJP
【FI】
G01N21/84 D
(21)【出願番号】P 2019202175
(22)【出願日】2019-11-07
【審査請求日】2022-05-09
(31)【優先権主張番号】P 2019093523
(32)【優先日】2019-05-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】513176650
【氏名又は名称】シンクロア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100097559
【氏名又は名称】水野 浩司
(74)【代理人】
【識別番号】100123674
【氏名又は名称】松下 亮
(74)【代理人】
【識別番号】100173680
【氏名又は名称】納口 慶太
(72)【発明者】
【氏名】小山 光広
(72)【発明者】
【氏名】綾部 華織
【審査官】小野寺 麻美子
(56)【参考文献】
【文献】特開昭63-128239(JP,A)
【文献】特開2017-187425(JP,A)
【文献】特開2014-170016(JP,A)
【文献】国際公開第2018/158824(WO,A1)
【文献】特開2018-205025(JP,A)
【文献】特開2003-215057(JP,A)
【文献】特許第6185686(JP,B1)
【文献】特開2003-083911(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0274490(US,A1)
【文献】特開平10-293011(JP,A)
【文献】国際公開第2018/207602(WO,A1)
【文献】韓国公開特許第10-2006-0011908(KR,A)
【文献】韓国登録実用新案第20-0340344(KR,Y1)
【文献】韓国公開特許第10-2019-0040876(KR,A)
【文献】特開平04-142508(JP,A)
【文献】特開平08-129172(JP,A)
【文献】特開2003-262595(JP,A)
【文献】登録実用新案第3171325(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 21/00 - G01N 21/01
G01N 21/17 - G01N 21/61
G01N 21/84 - G01N 21/958
G02B 9/00 - G02B 21/36
G02B 25/00 - G02B 25/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基台に設けられ、ワークスペースに配置される対象物に光を照射する光源と、
前記基台に設けられ、対象物を拡大して視認可能にする拡大光学ユニットと、
前記光源から射出される射出光を直線偏光にする第1偏光素子と、
前記拡大光学ユニットを透過する光を、前記第1偏光素子の偏光軸に対して直交する偏光軸となる直線偏光にする第2偏光素子と、
前記第1偏光素子に重ねて配設され、前記光源からの射出光を円偏光又は楕円偏光にする第1波長板と、
前記第2偏光素子に重ねて配設され、第1波長板と同じ位相差の第2波長板と、
を有しており、
前記第1波長板、及び/又は、前記第2波長板は、前記重ねて配設されるそれぞれの偏光素子に対して回転可能であ
り、
前記光源は、前記ワークスペースに配置される対象物に対して反射光を照射する位置に設置される反射光ユニットに組み込まれており、
前記第1偏光素子及び第1波長板は、前記反射光ユニットに設置されていることを特徴とする目視支援装置。
【請求項2】
前記基台は、支柱を備えており、
前記支柱に、前記拡大光学ユニット及び反射光ユニットが支持されていることを特徴とする請求項
1に記載の目視支援装置。
【請求項3】
前記光源は、前記ワークスペースに配置される対象物に対して透過光を照射する位置に設置される透過光ユニットに組み込まれており、
前記第1偏光素子及び第1波長板は、前記透過光ユニットに設置されていることを特徴とする請求項1
又は2に記載の目視支援装置。
【請求項4】
前記透過光ユニットは、前記基台の内部に設置されていることを特徴とする請求項
3に記載の目視支援装置。
【請求項5】
前記第1波長板、及び/又は、前記第2波長板は、駆動モータによって回転制御され、
前記駆動モータを回転駆動する操作部材が設けられていることを特徴とする請求項1から
4のいずれか1項に記載の目視支援装置。
【請求項6】
前記光源は、プロジェクタとしての機能を備え、
前記対象物に対して、予め特定されている画像を投影することを特徴とする請求項1から
5のいずれか1項に記載の目視支援装置。
【請求項7】
前記光源によって照射される画像は、規則性のある模様画像が含まれることを特徴とする請求項
6に記載の目視支援装置。
【請求項8】
前記光源によって照射される画像は、波長帯域が異なる複数の色画像が含まれており、
前記対象物に対して少なくとも1色以上の色画像が照射可能であることを特徴とする請求項
6又は
7に記載の目視支援装置。
【請求項9】
前記拡大光学ユニットは、リング状の光源を備えていることを特徴とする請求項1から
8のいずれか1項に記載の目視支援装置。
【請求項10】
前記第2偏光素子及び第2波長板は、前記拡大光学ユニットに配設され、
前記拡大光学ユニットの視野から外れるように保持されていることを特徴とする請求項1から
9のいずれか1項に記載の目視支援装置。
【請求項11】
前記拡大光学ユニットは、ブルーライトカットフィルタを有しており、
前記ブルーライトカットフィルタは、前記拡大光学ユニットによる視野から外れるように、前記拡大光学ユニットに保持されていることを特徴とする請求項1から
10のいずれか1項に記載の目視支援装置。
【請求項12】
前記基台のワークスペースに配置される対象物を囲むように設置される円錐ミラーを備えていることを特徴とする請求項1から
11のいずれか1項に記載の目視支援装置。
【請求項13】
基台に設けられ、ワークスペースに配置される対象物に光を照射する光源と、
前記基台に設けられ、対象物を拡大して視認可能にする拡大光学ユニットと、
を備え、
前記光源は、プロジェクタとしての機能を備えると共に、前記対象物に対して、予め特定されている画像を投影し、
前記対象物に対して投影された画像の反射光、又は、前記対象物に対して投影された画像の透過光を前記拡大光学ユニットを介して視認可能としたことを特徴とする目視支援装置。
【請求項14】
前記光源によって照射される画像は、規則性のある模様画像が含まれることを特徴とする請求項
13に記載の目視支援装置。
【請求項15】
前記光源によって照射される画像は、波長帯域が異なる複数の色画像が含まれており、
前記対象物に対して少なくとも1色以上の色画像が照射可能であることを特徴とする請求項
13又は
14に記載の目視支援装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、様々な対象物に光を照射して、傷や汚れなどの異物を目視によって視認可能にする目視支援装置に関する。
【背景技術】
【0002】
各種の工業製品、食品、生鮮品など(以下、これらを総称して対象物と称する)の表面には、傷や汚れなど(以下、異物と称する)が付着していることがあり、このような異物は、製造段階、加工処理段階、検査段階等において発見し、排除する必要がある。通常、異物は、視認し易いように対象物に対して光を照射し、その反射光を目視することで検知する。例えば、ファクトリーオートメーション(FA)の業界では、対象物の生産ラインに人員を配置し、コンベアで搬送されてくる対象物を抽出したり、エラー表示があった対象物を抽出し、その表面状態を目視観察することで、異物の有無を検出する作業が行われている。
【0003】
本件特許出願人は、異物の検出に役立つ装置(目視支援装置)として、光源ユニットと、眼前に配設される透過部材と、を備えた頭部装着型照明装置を提案している(特許文献1)。この特許文献1に開示されている頭部装着型照明装置は、眼鏡タイプであり、対象物を拡大するために拡大機能を取り付けると焦点距離が問題となる。すなわち、対象物以外のところを見るとピントが合わず、めまいが起こる等、異物を検出する上では使い勝手が悪い。
【0004】
通常、異物の有無を検査することが行われる製造ラインでは、例えば、非特許文献1に開示されたデスク設置型の異物検出装置(目視支援装置)が利用されている。この異物検出装置は、デスク設置型であり、対象物をステージ上に載置するか、又は、対象物を手で摘まんでステージの上方に設置し、対象物に光を照射して対象物の表面状態を観察する構造となっている。対象物は、拡大レンズ素子を通して拡大され、作業者は、拡大レンズ素子を上方から覗いて、光で照射される対象物の表面に異物があるか否かを視認する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特許第6185686号
【文献】https://www.otsuka-op.com/(株式会社オーツカ光学のHPで紹介されている照明拡大鏡)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記した公知のデスク設置型の異物検出装置は、単に、対象物に光を照射し、その反射光を拡大して視認するだけの構造であるため、対象物からの反射光は、グレアが効果的に除去されておらず、対象物に対して異物が付着しているか否かを正確に検出することは難しい。この場合、光の照射側(光源側)と、受光側(拡大レンズ素子側)に、偏光軸が互いに90°になるように指向された偏光素子を配設することでグレアが除去された反射光を視認できるため、異物の付着状況を確認し易くすることが可能であるが、検査する対象物の色や凹凸状況(異物の種別)等に応じて、より効果的にグレアを除去できることが望ましい。また、1つの異物検出装置を用いて、多種多様な対象物を検査すると、ある対象物では、効果的にグレアが除去された反射光が得られるが、別の対象物を検査した場合、充分にグレアが除去されないことがある。これは、対象物毎に、その表面状態が様々であり、乱反射の仕方、色の吸収や反射、コントラスト等が異なることが理由と考えられる。
【0007】
さらに、公知のデスク設置型の異物検出装置は、対象物に光を照射し、その反射光を拡大して視認させる構成であるため、対象物が透明状のもの(例えば、宝石、目薬容器のような透明性がある物品)であると、対象物を通過する透過光の割合が多くなり、異物の検出が難しくなってしまう。公知のデスク設置型の異物検出装置では、そのような透明状の物品について、異物が付着していることを正確に視認することは難しい。
【0008】
本発明は、上記した問題に基づいてなされたものであり、対象物に光を照射して、対象物に異物が付着しているか否かを検出するに際し、対象物の状態に関係なく、グレアを効果的に除去して異物検出が行える目視支援装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記した目的を達成するために、本発明に係る目視支援装置は、基台に設けられ、ワークスペースに配置される対象物に光を照射する光源と、前記基台に設けられ、対象物を拡大して視認可能にする拡大光学ユニットと、前記光源から射出される射出光を直線偏光にする第1偏光素子と、前記拡大光学ユニットを透過する光を、前記第1偏光素子の偏光軸に対して直交する偏光軸となる直線偏光にする第2偏光素子と、前記第1偏光素子に重ねて配設され、前記光源からの射出光を円偏光又は楕円偏光にする第1波長板と、前記第2偏光素子に重ねて配設され、第1波長板と同じ位相差の第2波長板と、を有しており、前記第1波長板、及び/又は、前記第2波長板は、前記重ねて配設されるそれぞれの偏光素子に対して回転可能である、ことを特徴とする。
【0010】
上記した目視支援装置では、基台のワークスペースに対象物が設置される。対象物は、検査者の手で把持した状態でワークスペースに位置付けても良いし、基台上に設置(固定状態に載置)しても良い。ワークスペースに設置した対象物に対しては、光源から光が照射され、検査者は、拡大光学ユニットを介して、対象物に照射された光の反射光又は透過光を目視し、対象物に異常(傷、汚れなど)が生じていないか検査する。
【0011】
前記光源、及び、拡大光学ユニットには、それぞれ偏光軸が互いに直交するように配設された第1偏光素子、及び、第2偏光素子が配設されると共に、各偏光素子に、第1波長板、及び、第1波長板と同じ位相差の第2波長板が重ねて配設されており、対象物からの光(反射光又は透過光)は、グレアが除去された状態となり、拡大光学ユニットを介して、対象物に異常があるか否かを視認し易くすることが可能となる。すなわち、直線偏光の光を波長板に透過させて、右回り方向/左回り方向となる円偏光/楕円偏光にして対象物に照射し、かつ、対象物からの光についても、同様な波長板を透過させることにより、検査する対象物の色や凹凸状況(異物の種別)等に応じて、効果的にグレアを除去した状態で視認することが可能となる。
【0012】
この場合、光が照射される対象物によって、光の反射状態(透過状態)、コントラスト、屈折率などが異なっており、また、対象物によっては、光の波長帯域の一部が反射または吸収されてしまい、光の色情報が失われて、反射光や透過光は曇った状態(濁った状態)で見えることもある(コントラストが変化する)。前記第1波長板、及び/又は、前記第2波長板は、重ねて設置される偏光素子に対して回転可能となっており、第2偏光素子を通過する光の強さが最小になるようにいずれかの波長板を回転しながら調整し、偏光の向きと波長板の1つの軸の向きを一致させる(波長板を回転して、効果の大きい角度を検知する)ことによって、コントラストの向上が図れる。また、波長板の回転位置を変更、設定できるので、一つの目視支援装置で様々な対象物を、グレアを除去して鮮明に視認することが可能となる。
【0013】
なお、上記した目視支援装置は、製品の検品作業、或いは、製品の組立作業等に用いることが可能である。この場合、対象物が非透明性の物体であれば、対象物に光を照射して、その反射光を拡大光学ユニットを介して視認すれば良い。また、対象物が透明性の物体(透明性のあるガラス、樹脂、宝石など)であれば、対象物に光を照射して、その透過光(反射光でも良い)を拡大光学ユニットを介して視認すれば良い。すなわち、光源については、ワークスペースに設置された対象物に対して、反射光を照射する位置に設置されるもの、透過光を照射する位置に設置されるものが含まれる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、対象物に光を照射して、対象物に異物が付着しているか否かを検出するに際し、対象物の状態に関係なく、グレアを効果的に除去して異物検出が行える目視支援装置が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明に係る目視支援装置の第1の実施形態を示す図であり、全体構成を示す斜視図。
【
図3】
図1に示す目視支援装置の反射光ユニットの分解斜視図。
【
図4】ノートパソコンのキーボード部分の筐体に光を照射し、その反射光をカメラで撮影した写真コピー(グレア除去前)。
【
図5】
図5に示した状態から光源側の波長板を所定量回転してその反射光をカメラで撮影した写真コピー(グレア除去後)。
【
図6】制御基板に光を照射し、その反射光をカメラで撮影した写真コピー(グレア除去前)。
【
図7】
図6に示した状態から光源側の波長板を所定量回転してその反射光をカメラで撮影した写真コピー(グレア除去後)。
【
図8】ゴルフボールに光を照射し、その反射光をカメラで撮影した写真コピー(グレア除去前)。
【
図9】
図8に示した状態から光源側の波長板を所定量回転してその反射光をカメラで撮影した写真コピー(グレア除去後)。
【
図10】鉄球に光を照射し、その反射光をカメラで撮影した写真コピー(グレア除去前)。
【
図11】
図10に示した状態から光源側の波長板を所定量回転してその反射光をカメラで撮影した写真コピー(グレア除去後)。
【
図12】拡大光学ユニットに組み込まれる反射光ユニット(第2反射光ユニット)の光源の配置態様を示す図。
【
図13】第2反射光ユニットの使用方法の一例を示す図。
【
図14】透過光ユニットの使用方法の一例を示す図。
【
図15】半透明性の樹脂材料で形成された光ファイバー用のケーブル素材に無偏光状態の光を照射し、その反射光をカメラで撮影した写真コピー。
【
図16】
図15に示す素材に偏光状態の光を照射し、その反射光をカメラで撮影した写真コピー。
【
図17】
図16に示した状態から光源側の第1波長板を90°回転した偏光状態の光を照射し、その反射光をカメラで撮影した写真コピー。
【
図18】
図15に示す素材に偏光状態の光を照射し、その透過光をカメラで撮影した写真コピー。
【
図19】
図18で示す状態から、第1波長板を90°回転した偏光状態の光を照射し、その透過光をカメラで撮影した写真コピー。
【
図20】透明性の樹脂材料で形成された目薬容器に偏光状態の光を照射し、その透過光をカメラで撮影した写真コピー。
【
図21】
図20で示す状態から、第1波長板を90°回転した偏光状態の光を照射し、その透過光をカメラで撮影した写真コピー。
【
図22】反射光ユニットにプロジェクタ機能を備えた光源を設置した目視支援装置の第2の実施形態を示す図であり、(a)は、装置全体の構成を示す側面図、(b)は、プロジェクタによる照射光を示す図。
【
図23】反射光ユニットにプロジェクタ機能を備えた光源を設置した目視支援装において、ストライプ模様の照射光を対象物に投影し、その反射光をカメラで撮影した写真コピー。
【
図24】単体として構成される透過光ユニットの一例を示した分解斜視図。
【
図25】対象物を観察することが可能な観察ユニット(眼鏡タイプ)の一例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明に係る目視支援装置の実施形態を、添付の図面を参照して説明する。
図1及び
図2は、第1の実施形態を示す図であり、
図1は全体構成を示す斜視図、
図2は側面図である。
【0017】
本実施形態の目視支援装置1は、ワークスペースに設置される対象物100に対して、反射光を照射する光源(反射光ユニット)と、透過光を照射する光源(透過光ユニット)と、を備えた構成となっている。後述するように、本実施形態の反射光ユニットは、2箇所に設置されており、1つは、前記対象物100に対して斜め方向から光を照射する位置(第1反射光ユニット)、もう1つは、垂直方向から光を照射する位置(第2反射光ユニット)に配設されている。また、透過光ユニットは、ワークスペースの下方に配設されている。
【0018】
前記目視支援装置1は、ボックス状に構成された基台3と、作業者が作業する際に基台3の奥側となる位置に設置される支柱5とを備えている。前記基台3には、作業者が目視作業(検査作業)をする際、対象物100を設置するワークスペースが設けられている。このワークスペースは、基台3の平坦面3aの領域、又は、平坦面3aの上方の空間領域が該当する。すなわち、作業者は、平坦面3aに対象物100を載置する、或いは、対象物100を手に把持して平坦面3aの上方の空間領域に位置付けることで、対象物の目視作業を行なう。
【0019】
前記支柱5には、ワークスペースに設置される対象物100に光(反射光)を照射する光源(第1の反射用光源)を有する反射光ユニット(第1反射光ユニット)10と、対象物を拡大して視認可能にする拡大光学ユニット20が設置されている。
【0020】
前記反射光ユニット10は、ワークスペースに設置される対象物100に対して斜め方向から光を照射するように、支柱5に対して上下動可能に設置されている。具体的には、反射光ユニット10の筐体10Aは、支持部材6に対して上下方向に一定の範囲回動可能に保持されており、前記支持部材6は、支柱5に対して上下方向に摺動可能に支持されると共に、操作ツマミ7を操作することで、支柱5に対して任意の位置で固定できるようになっている。なお、この反射光ユニット10の筐体10Aは、
図2に示すように、支持部材6の支軸6aに対して回動可能に支持しておき、矢印D1方向に回動して、透過光ユニットとしての機能を併せ持つように構成しても良い。すなわち、筐体10Aを、反射光ユニット10の光源から照射された光が拡大光学ユニット20に向かうように回動し、拡大光学ユニット20の上から視認できるようにして、ワークスペースに設置した透過性のある対象物を検査できるように構成しても良い。このように、支柱5に設置される反射光ユニット10については、透過光ユニットとしての機能を兼ね備える構成にすることも可能である。
【0021】
前記拡大光学ユニット20は、ワークスペースの上方で、かつ、反射光ユニット10よりも上方側に設置されており、支柱5に対して上下動可能に設置されている。具体的には、拡大光学ユニット20の筐体20Aは、支持部材8に対して上下方向に一定の範囲回動可能に保持されており、前記支持部材8は、支柱5に対して上下方向に摺動可能に支持されている。この場合、筐体20Aは、操作ツマミ9aを操作することで、任意の回動位置で固定できるようになっており、操作ツマミ9bを操作することで、支柱5に対して任意の高さ位置で固定できるようになっている。
【0022】
前記拡大光学ユニット20は、その筐体20A内に、対象物100を拡大して作業者に視認させる拡大レンズ素子(×2~×10程度が好ましい)21が設置されている。また、前記筐体20A内の拡大レンズ素子21の周囲には、リング状の光源(第2の反射用光源)が組み込まれている。すなわち、本実施形態では、対象物100に対して垂直方向から反射光を照射できるように、拡大光学ユニット20内に、リング状の光源を備えた反射光ユニット(第2反射光ユニット)30が組み込まれている。
以下、上記した反射光ユニット10,30、及び、拡大光学ユニット20の構成について説明する。
【0023】
図3に示すように、反射光ユニット10の筐体10Aは、略円筒形状に構成されており、その筐体内には、光源(第1の反射用光源)11が配設されている。光源11は、LED等によって構成することが可能であり、光源11の前方には、図示されていない集光レンズ(コリメートレンズ)が配設されて、対象物100に対して、スポット光を照射可能となっている。また、筐体10Aの開口部には、偏光素子及び波長板を備えた位相差リング12が配設されており、この位相差リング12は、光源11から射出される射出光を偏光状態(円偏光又は楕円偏光)にして対象物100に照射する機能を有している。
【0024】
前記位相差リング12は、筐体10Aの開口縁に固定される固定リング12aと、固定リング12aを覆い、固定リング12aに対して回転可能に配設される可動リング12bとを備えている。前記固定リング12aには、光源11から射出される射出光を直線偏光にする第1偏光素子14が固定されている。また、前記可動リング12bには、第1偏光素子14を透過した直線偏光を、右回り方向/左回り方向となる円偏光又は楕円偏光にする機能を備えた第1波長板15が固定されている。このため、可動リング12bを摘まんで回転操作することで、第1波長板15は、360°に亘って回転可能となっている。
【0025】
前記拡大光学ユニット20の筐体20Aは、薄い円筒形状に構成されており、その中央領域に拡大レンズ素子21が配設されている。また、筐体20A内には、拡大レンズ素子21に対して対象物側に第2偏光素子24が配設されると共に、その下方に第2波長板25が配設されている。前記第2偏光素子24は、前記第1偏光素子14の偏光軸に対して90°(略90°を含む)直交する偏光軸となるように固定リング24aに保持、固定されており、前記第2波長板25は、固定リング24aに併設される固定リング25aに保持、固定されている。この場合、第2波長板25は、前記第1波長板15と同じ位相差のものが用いられており、それぞれの波長板15,25は、各偏光素子14,24に対して重ねて配設されている。なお、第1波長板15は、第1偏光素子14に対して光源側に重ねても良く、第2波長板25は、第2偏光素子24に対して拡大レンズ素子21側に重ねても良い。
【0026】
本実施形態では、前記第2偏光素子24及び第2波長板25は、拡大レンズ素子21の視野から外れるように、筐体20Aに対してスライド可能に支持されている。例えば、
図1に示すように、固定リング24a,25aには、筐体20Aから突出して指で摘まむことが可能な突片24b,25bが設けられており、各突片を摘まんで固定リング24a,25aをスライドすることで、第2偏光素子24及び/又は第2波長板25を、拡大レンズ素子21の視野から外すことが可能となっている。
【0027】
上記した拡大光学ユニット20には、ブルーライトカットフィルタ26を配設しておくことが好ましい。このブルーライトカットフィルタ26は、前記第2偏光素子24の上方側で重なるように配設されており、固定リング26aに保持、固定されている。そして、固定リング26aには、指で摘まむことが可能な突片26bが設けられており、ブルーライトカットフィルタ26は、前記第2偏光素子24及び第2波長板25と同様、拡大レンズ素子21の視野から外れるように、拡大光学ユニット20に対してスライド可能に支持されている。
【0028】
上記した構成によれば、反射光ユニット10の光源11から射出された光は、第1偏光素子14によって直線偏光に変更される。すなわち、第1偏光素子14によって、光源11から射出される光(非偏光状態の光)は、電場(および磁場)の振動方向が一定となる直線偏光となって対象物100に照射される。この場合、対象物100の表面が鏡面状態であれば、その反射光は、そのまま直線偏光となるが、実際には凹凸等の異物が存在するため、反射光は、直線偏光成分を含んだ拡散光(非偏光状態)となる。このように、対象物100からの反射光が拡散反射することから、入射光が直線偏光であったとしても、その反射光は非偏光状態となるのであり、この非偏光状態の光の中には、正反射光(入射した直線偏光がそのまま直線偏光となって反射される)の成分が含まれている。この正反射光の成分が、光源が写り込んだグレアとなることから、異物の存在を判別する上で妨げとなってしまう。
【0029】
すなわち、異物は、主にコントラストの変化で検知することから、グレアが生じていると、異物の発見が困難となってしまうが、視認側となる拡大光学ユニット20において、第1の偏光素子14の偏光軸に対して90°直交する偏光軸となる第2偏光素子24を透過させるため、光沢の原因となる反射成分を除いた拡散反射光を得ることができ、対象物100からの反射光はグレアのないとなり、異物の存在を容易に判別することが可能となる。
【0030】
なお、上記した第1偏光素子14及び第2偏光素子24は、例えば、リニア偏光フィルタ、フィルム偏光子、ナノワイヤーグリッド偏光板・無機偏光板(ガラスウエハ上にアルミ薄膜を形成し、微細なスリットを形成したもの)等によって構成することができる。或いは、そのような機能を有する薄膜を被着した構成であっても良い。また、上記した構成では、光源11からの射出光に対して、外部信号により電気的に周波数変調(パルス変調)をかけて位相、振幅、偏波面を変化させて光の電場の振動方向を正確に揃え(整列状態にする)、これを透過率の高い第1偏光素子であるワイヤーグリッド偏光板を通して対象物に照射することにより、より効果的にグレアを除去することも可能である。
【0031】
また、前記第1偏光素子14及び第2偏光素子24には、それぞれ第1波長板(1/2波長板、1/4波長板、1/8波長板など)15、及び、同じ位相差の第2波長板25が重ねて配設されている。
一般的に、光を物体に照射して反射光を得るとき、光の電場の振動方向が正確にそろった偏光を活用すれば対象物からも正確にそろった偏光が帰ってくる。この場合、対象物に対して円偏光や楕円偏光を照射して、光の透過にかかる時間や強度の変化を観測することによって、分子の立体的配置の差異であるキラリティの情報を得ることが可能となる。通常、対象物の表面は様々な状態となっており、その表面では、光は正反射することができずに乱反射を起こし、また、表面色によって、照射される光の波長帯域の一部は、反射または吸収されてしまい、光の色情報が失われて(コントラストが変化する)、反射光は曇った状態(濁った状態)となって見えてしまう。
【0032】
このように、対象物の色、表面の凹凸状況、水分の付着などの要因によって、表面での乱反射が対象物によって変化し、光の色情報についても様々に変化することから、直線偏光の光を、上記した波長板15に透過させて、右回り方向/左回り方向の円偏光/楕円偏光(適切な偏光状態)にして対象物100に照射し、かつ、対象物100からの反射光についても、同じ位相差の波長板25を透過させることで、さらにグレアを効果的に除去することが可能となる。すなわち、傷や埃の状態、背景の色やコントラスト等によって見え方変わり、その反射角度も変わることから、波長板を回転することで位相角をずらして行き、見易い状態にすることが可能となる。
【0033】
これを具体的に説明すると、例えば、光が水面などに反射する際、横方向の振動の大きな光に変化する特性を持っているので、ここに円偏光をかけると、縦方向の振動が極端に減少して、横方向の振動のみの振動に近い光に変化することから、反射した光を円偏光後に直線偏光へ変えることにより、対象物の表面に水分が付着していたとしても、グレアを効果的に軽減することが可能となる。すなわち、検査する対象物の色や凹凸状況(異物の種別)等に応じて、上記した偏光素子14および偏光素子24に重ねる第1波長板15および第2波長板25を、対象物に応じて適切な偏光状態にすることによって、さらに効果的にグレアを除去した画像を取得することが可能となる。
【0034】
前記第1偏光素子14に重ねられる第1波長板15は、上述したように、第1偏光素子14に対して回転可能に配設されている。これは、異物の内容(傷、埃など)によっては、反射の角度や光の吸収等が異なり、反射光の見え方が変化することを考慮したためである。すなわち、第1波長板15を回転操作して、第2偏光素子24を通過する光の強さが最小になるように調整し、偏光の向きと波長板の1つの軸の向きを一致させる(波長板を回転して、効果の大きい角度を検知する)ことで、コントラストが向上し、対象物に付着している異物を、グレアを生じさせることなく、より鮮明にすることが可能となる。
この場合、射出側となる第1波長板15を固定状態にし、受光側(観察側)となる拡大光学ユニット20に設置される第2波長板25を回転可能にすることが好ましい。このような構成によれば、射出側の光源を正反射が生じない状態に固定しておき、観察側を回転させることで、効果的にグレアが除去されるポジションを容易に検知することができるようになる。
【0035】
また、本実施形態は、第1偏光素子14及び第2偏光素子24に、それぞれ対応して波長板15,25を設置した構成であるため、例えば、光路上にハーフミラーやビームスプリッタ等を配設して1つの波長板でグレアを除去する構成と比較すると、光量の変化がなく偏光状態が変化することもないので、対象物が見難くなることはない。
【0036】
グレアが除去できる波長板15,25の相対的な位置については、対象物10の表面形状、色、コントラスト等によって様々であり、対象物と波長板の位置の関係性を明確に特定することはできないが、実際に上記した偏光素子、及び、波長板を備えた光学ユニットを準備し、様々な対象物に光を照射し、その対象物からの反射光をカメラで取得した画像を参照して、グレアが除去されることを説明する。ここでは、対象物の表面からの反射光の明度、コントラスト、凹凸状態等、表面が様々な状態の複数の対象物を準備し、それぞれについて検証をしている。なお、第1波長板及び第2波長板については、共に1/4波長板を用いている。
【0037】
図4は、ノートパソコンのキーボード部分の筐体(光輝性のある銀色)に、光源からの光を照射し、その反射光をカメラで撮影した画像である。
図4では、筐体部分からの反射光に、光源からの光が写り込んでグレアが生じた状態となっている。この状態から、光源側の第1波長板を、約1/8回転させたところ、
図5で示すような画像を取得することができた。
図5では、
図4で見られた筐体部分のグレアが除去されており、筐体部分の表面に付着している傷を明確に視認することが可能となった。
【0038】
図6は、各種の素子を実装した緑色の制御基板に光源からの光を照射し、その反射光をカメラで撮影した画像である。
図6では、中央部分の黒色のCPU部分、及び、その周囲に延びる光輝性のあるリードフレーム領域からの反射光にグレアが生じた状態となっているが、この状態から、光源側の第1波長板を、約1/12回転させたところ、
図7で示すような画像を取得することができた。
図7では、制御基板全体のグレアが除去されており、各素子の実装状態や表面の印字を明確に視認することが可能となった。
【0039】
図8は、白色のゴルフボールに光源からの光を照射し、その反射光をカメラで撮影した画像である。
図8では、球状の頂部領域からの反射光にグレアが生じた状態となっているが、この状態から、光源側の第1波長板を約1/10回転させたところ、
図9で示すような画像を取得することができた。
図9では、頂部領域のグレアが除去されており、その表面の汚れの付着を明確に視認することが可能となった。
【0040】
図10は、表面が荒れた状態にある鉄球に光源からの光を照射し、その反射光をカメラで撮影した画像である。
図10では、鉄球の頂部領域からの反射光にグレアが生じた状態となっているが、この状態から、光源側の第1波長板を、約1/12回転させたところ、
図11で示すような画像を取得することができた。
図11では、頂部領域のグレアが除去されており、その表面に生じている錆を明確に視認することが可能となった。
【0041】
なお、上記の対象物以外にも、様々な物品で検査したところ、いずれのタイプの波長板を用いた場合であっても、波長板は、少なくとも1/16回転以上させれば、グレアが除去された画像(異物が鮮明に視認できる画像)が得られた。このため、波長板については、1/16回転毎に節度を有するように、筐体10Aに回転可能に装着しておくことが好ましく、節度のあるいずれかの回転位置で停止することで、グレアが除去された画像を取得することが可能となる。前記波長板15,25については、光源側の第1波長板15のみを回転可能、拡大光学ユニット側の第2波長板25のみを回転可能、或いは、両者を回転可能に配設しても良く、対象物の種別や異物の状態等に応じて、適切な波長板を選択し、いずれかを回転させれば良い。勿論、波長板の回転については、節度を持たせることなく、無段階に位置調整できる(リニアに調整できる)構成であっても良い。
【0042】
上記した波長板15(或いは波長板25)については、手動操作ではなく、モータ等の駆動手段によって回転操作できるように構成しても良い。例えば、
図2に示すように、反射光ユニットの筐体10A内に駆動モータ18を設置しておき、手元側のコントローラ(操作部材)60の操作ボタン61を操作することで、前記可動リング12bを回転駆動させても良い。可動リング12bの回転駆動については、例えば、駆動モータ18の出力軸に平歯車を設けておき、これを可動リング12bに設けられた内歯車に噛合させる等の動力伝達機構を配設することで行うことが可能である。この場合、操作部材60は、操作性等を考慮して複数個所に設けても良く、光源を選択する機能、光量(照度)を可変させる機能、更には、光源が、後述するようなプロジェクタとしての機能を備える場合、対象物に投影する画像を選択する機能などを備えていても良い。或いは、手元操作する以外にも、フットペダル等によって構成しても良い。
【0043】
また、本実施形態の構成では、実際に対象物100を拡大して視認する場合、必要に応じて、上記した第2偏光素子24、第2波長板25、ブルーライトカットフィルタ26を視界から除外することもできるので、傷や汚れの状態等、より詳しく検査することが可能となる。
【0044】
上記したように、拡大光学ユニット20内には、第2反射光ユニット30が配設されている。この第2反射光ユニット30は、対象物100に対して、垂直方向から光を照射できるようにリング状の光源(第2の反射用光源)31が組み込まれている。光源31は、
図12に示すように、前記拡大レンズ素子21を囲むようにして、リング状に連続的に配設されている。各光源(リング照明)31については、ワークスペース上の対象物100に対してスポット光や拡散光を照射できるものであればよく、円周上に一定間隔をおいて配設されたLED等によって構成することが可能である。
【0045】
また、反射光ユニット30には、各光源31から射出される光を集光させる(平行光となる)ように、集光レンズを配設しても良い。この場合、集光レンズは、各光源31に対応してそれぞれ配設しても良いし、1つのレンズによって光を集光するものであっても良い。すなわち、光源31から射出された光を、対象物に対して、スポット照射、平行照射、拡散照射するような構成であれば、レンズ系の構成については、特に限定されることはない。
【0046】
また、反射光ユニット30には、反射光ユニット20の構成と同様、偏光素子(第1偏光素子)、及び、この偏光素子に対して回転可能な波長板(第1波長板)を配設しても良い。この場合、第1波長板については、手動で回転操作する構成であっても良いし、筐体20Aに駆動モータ等を組み込んでおき、モータ駆動される構成であっても良い。
【0047】
上記したような反射光ユニット30は、対象物の構成、配置態様、観察方法等に応じて、前記反射光ユニット10と選択的に使用される。例えば、
図13に示すように、検査する対象物100aが円柱形状のような構成で、その外周面を観察したい場合、ワークスペース(平坦面3a)に対象物100aを載置して、円錐ミラー(アキシコンミラー)80を設置して観察すると、その外周面を観察することができる。このような検査方法では、反射光ユニット30を選択することで対象物100aに対して垂直光が照射され、影を生じさせることなく、対象物100aの外周面を精度良く観察することが可能となる。
なお、拡大光学ユニット20(拡大レンズ素子21)と、リング照明31は、1つの筐体20Aに設置するのではなく、別体として構成されていても良い。すなわち、本実施形態の目視支援装置は、必要に応じて光源(反射光源、透過光源)を追加することが可能であり、このような構成では、拡大レンズ素子の焦点距離と、リング照明では有効作用点が異なるケースもあり得るため、両者は、一体構造に構成されていなくても良い。
【0048】
上述したように、本実施形態の目視支援装置は、ワークスペースに設置される対象物100に対して、透過光を照射する透過光ユニット40を備えている。透過光ユニット40は、ワークスペースに配置される対象物に対して透過光を照射する位置に設置されており、本実施形態では、外部に露出しないように、前記基台3の平坦面3aに凹所3Aを形成し、この凹所3A内に組み込んでいる。また、透過光ユニット40が配設される部分は、表面をガラス45で覆っている。
【0049】
前記透過光ユニット40は、上記した反射光ユニット20と同様、LED等によって構成される光源41を備えており、光源41よりも上方側(ワークスペース側)に、偏光素子(第1の偏光素子)及び波長板(第1の波長板)を備えた位相差リング42が配設されている。この位相差リング42の構成要素である波長板(第1の波長板)は、手動操作、又は、駆動モータ43によって回転可能に保持されており、波長板を任意の回転位置で固定できるよう構成されている。
【0050】
観察する対象物が、透過性のある素材(ガラス、透明性のある樹脂、宝石類など)である場合、上記した反射光ユニット10,30からの照射光では、対象物に光が吸収されてしまい、十分な観察ができない可能性がある。このため、
図14に示すように、透過性のある素材の対象物100bに対しては、透過光ユニット40の光源41から透過光を照射して、拡大光ユニット20を介して視認することで、その内部や表面に異物が存在しているか否かをグレアなく観察することが可能となる。
【0051】
また、透明な樹脂成型品では、射出成型した後、ひずみが生じていることが多く、アニール処理を行なうことでひずみを除去することが行なわれている。品質向上を図る場合、アニール処理の効果を確認するために、上記した透過光ユニット40を利用して検品作業(観察作業)を行なうことが可能である。
【0052】
これを
図15から
図19を参照して具体的に説明する。
図15は、半透明性の樹脂材料で形成された光ファイバー用のケーブル素材である。円柱状の樹脂の中央領域には、半透明性の樹脂材料で形成された芯材が埋め込まれており、この芯材の中心を検出することを考慮する。
図15は、無偏光状態の反射光を照射し、その反射光をカメラで撮影した画像である。反射光を照射しただけでは、その芯材の存在を確認することはできない。
図16は、上記した反射光ユニットで偏光状態の光を照射した画像であり、
図17は、
図16に示した状態から光源側の第1波長板を、90°回転した状態の画像である。このように、対象物が透過性を有する素材で形成されていると、上記した反射光ユニット10,30では、第1波長板を回転させても、その内部状態及び表面状態を明確にして観察することは困難であった。
【0053】
これに対し、透過光ユニット40を用い、上記した位相差リングで偏光状態にされた透過光を同一のケーブル素材に照射し、その状態を拡大すると、
図18で示すように、中央領域に埋め込まれた芯材の存在を視認することをが可能となった。そして、
図18で示す状態から、波長板を90°回転させると、
図19で示すように、芯材部分をより明確化して観察することが可能となり、第1波長板を回転しながら対象物を観察することにより、いずれかの回転位置で、その表面状態や内部状態に関し、グレアを生じさせることなく、明確に観察することが可能となった。
【0054】
図20は、透明性のあるオレンジ色の樹脂材料で形成された目薬容器を、上記した位相差リングで偏光状態にした透過光で観察した画像である。この画像で示すように、目薬容器には、傷や異物等を視認することはできないが、上記したように、偏光素子を介して透過光を視認することから、光源からの光が目に影響を与えることはなく、対象物を観察することが可能となる。そして、この状態から第1波長板を90°回転させると、
図21で示すように、気泡の存在、及び、異物(グリーンで見える部分)が混入していることを視認することが可能となった。すなわち、透過光ユニット40を設置することにより、透過性を有する対象物であっても、光源からの光が眩しくなることはなく、かつ、異物等の存在をグレアなく、検知することが可能となる。
【0055】
以上のように、本実施形態の目視支援装置によれば、観察する対象物に応じて、反射光ユニット10、反射光ユニット30、透過光ユニット40のいずれかを選択(例えば、
図1、
図2で示すコントローラ60でいずれかのユニットを選択)し、かつ、対象物を視認しながら、第1波長板(第2波長板であっても良い)を回転操作することで、その表面状態や内部の状態を、グレアを生じさせることなく観察することが可能となり、異物等の検査作業(視認による検査作業)を高精度かつ容易に行なうことが可能となる。
なお、前記光源41については、LED光源以外にも、有機EL光源(面発光する光源、例えば有機ELパネル等)で構成しても良い。すなわち、光源41は、有機ELパネルを平坦面3a上に設置する構成であっても良い。このような有機EL光源であれば、面発光するため、作業者にとって明る過ぎることがなく、目に負担を掛けることなく検品作業を行なうことが可能である。
【0056】
次に、本発明の第2の実施形態について説明する。
上記した目視支援装置の反射光ユニット10,30、透過光ユニット40で用いられる光源は、LED照明、或いは、ハロゲンランプ、キセノンランプ、蛍光ランプ、面発光体等を用いることが可能である。本実施形態では、上記したユニットに用いられる光源を、プロジェクタ機能を有する照明(プロジェクタ付き照明)としている。
このようなプロジェクタ機能を備えた照明であれば、傷等の異物を視認し易い画像を投影することが可能となる。
【0057】
図22(a)(b)に示すように、反射光ユニット10の光源にプロジェクタ機能を持たせると、波長が異なる色画像を対象物に投影することが可能となる。すなわち、対象物の色彩等によって、投影する画像の色を変えることで、異物を見え易くすることも可能となる。この場合、人による目視では、見易い色が存在しており、傷や異物の付着、背景色によっては見易い色が異なるため、見易くなるように、その都度、投影する色画像を切り替える必要性が生じる。
【0058】
本実施形態では、光源(反射光ユニットに組み込まれるプロジェクタ機能付きの光源)によって投影される画像に、波長帯域の異なる複数の色画像を含ませており、これを対象物100に対して同時に照射できるうように構成している。具体的には、作業者の手前側の領域90Aと奥側の領域90Bで異なる色画像(例えば、領域90Aにグリーンの画像、領域90Bにイエローの画像)を投影することで、作業者は、対象物100を手前/奥に移動させることで、2色の照射光で検査を行なうことが可能となり、作業効率を向上することが可能となる。
【0059】
このように、対象物に画像を投影する場合、少なくとも1色以上(複数)の色画像が照射できるようにすることで、検査作業を効率化して、精度良く、異物等の有無を視認することが可能となる。なお、ワークスペースに対する色画像の照射の仕方については、左右方向に分ける等、種々変形することが可能であり、また、対象物に応じて、適切な単一色を照射するようにしても良い。
【0060】
対象物に画像を投影する場合、上記したように、波長の異なる色画像を用いても良いが、例えば、ストライプ模様、格子模様のような、規則性のある模様画像を対象物に投影してその反射光を観察すると、3次元検査を行なうことが可能となる。
【0061】
図23は、上記した反射光ユニットにプロジェクタ機能を備えた光源において、ストライプ模様を対象物に投影し、その反射光を撮影した画像を示している。この写真で見られるように、表面に打痕箇所A1があったり、テープが付着されている部分A2があると、投影されるストライプ模様(規則性のあるストライプ模様)中に、段差等の高さが異なるような部分(3D的に高さの違いが把握できる部分)を視認すること可能となり、グレアを除去して、表面の傷や異物の付着等を、より精度良く視認することが可能となる。
すなわち、光源にプロジェクタ機能を持たせることで、対象物に投影する色、画像を適宜、変更することができ、最適な状態で観察することが可能となる。
【0062】
上記した透過光ユニット40については、単体として構成されていても良い(透明性のある対象物を観察する対象物観察用透過光ユニットとして構成されていても良い)。このような透過光ユニットは、
図1に示す基台3内に組み込む構成であっても良いし、様々な場所で設置、観察作業が行えるように手持ち操作可能な構成であっても良い。
【0063】
図24は、単体として構成される透過光ユニット400を示しており、手で把持して持ち運び可能な大きさに構成されている。図に示す透過光ユニット400は、板状で矩形状のベース部材401に、筐体(収納ケース)402を取り付け、この収納ケース402内に、光源となる有機EL光源405を配設している。収納ケース内に配設される有機EL光源405は、開口406aを備えた蓋部材406によって閉塞され、蓋部材406上には、一対のガラス板410に挟持された偏光素子412が配設されている。
【0064】
偏光素子412を挟持した一対のガラス板410は、両サイド側から固定部材420で挟まれ、複数の止めビス422によって筐体402に固定される。また、蓋部材406は、複数の止めビス425によって筐体402に固定される。さらに、ベース部材401は、複数の止めビス427によって筐体402に固定される。
【0065】
前記筐体402には、有機EL光源用のドライバ430が組み込まれており、外部に露出する電源接続部(DCジャック)432を介して電力が供給され、有機EL光源405を発光させる。
【0066】
このような構成の透過光ユニット400によれば、
図1に示したような基台3を設けることなく、対象物100の下方に設置して、拡大光学ユニット20を介して対象物100を観察することが可能となる。また、透明性のある対象物(透明性のある樹脂成型品、樹脂製の袋など)を透過光で観察する場合、観察者は、面発光による光を視認することから、眩しくなることはなく、長時間に亘って作業を行なうことが可能となる。なお、有機EL光源405は、観察の作業性を考慮して単色の発光であることが好ましく、特に白色の発光(白色単色光)にすることで目の疲れを軽減することが可能となる。
【0067】
また、上記した実施形態と同様、透過光ユニット400に波長板413を配設しておくことが好ましい。すなわち、観察側となる拡大光学ユニット20に波長板(第2波長板)が配設されていることから、透過光ユニット400にも同じ構成の波長板413を重ねて配設しておくことが好ましい。この波長板413については、一対のガラス板410に挟持される偏光素子412に重ねて配設しておけば良い。
【0068】
また、上記した透過光ユニット400を光源として用いる場合、
図25に示すように、眼鏡タイプの観察ユニット500によって対象物を観察することが可能である。観察ユニット500は、観察者の耳に掛けられる一対のテンプル502,502、及び、各テンプルの前端側を連結する連結部503を備えている。前記連結部503には、透過光ユニット400からの光(対象物を透過した光)を観察者に視認させる透過部材505が設けられており、この透過部材505に、拡大光学ユニット20に組み込まれた偏光素子と同様な偏光素子が設けられている。この場合、透過部材505に重ねられる偏光素子の偏光軸は、透過光ユニット400の偏光素子412の偏光軸に対して90°となるように設定されており、更に、透過光ユニット400に波長板が設けられる構成では、同じ波長板を積層して配設しておけば良い。
【0069】
このような透過光ユニット400は、観察者が眼鏡タイプの観察ユニット500を装着して、対象物を透過光ユニット400からの透過光で観察するだけで良いため、
図1に示したような大型の装置を設置しなくても対象物を検査することが可能となる。すなわち、作業スペースに関係なく、様々な対象物を容易に観察することが可能となる。また、必要に応じて透過光ユニット400に設けられる波長板412を筐体402に対して回転可能に構成したり、観察ユニット500の透過部材505に配設される波長板を左右同期して回転させる構成にしても良い。また、対象物の傷等が視認し難い場合、筐体402を回転させても視認し易くすることが可能である。
【0070】
前記透過光ユニット400は、持ち運び可能なように、単体として構成されるが、支持ロッド(図示せず)に保持すると共に、支持ロッドに対して、一定角度(例えば、0°~90°)回動するように配設されていても良い。このような支持ロッドを、例えば、
図1に示した装置の支柱5に固定することで、透過光ユニット400を水平状態から垂直状態に回動させることができ、対象物を上方から観察したり、水平方向で観察することが可能となる。
【0071】
以上、本発明に係る目視支援装置の実施形態について説明したが、本発明は、上記した実施形態に限定されることはなく、種々変形することが可能である。
上記した目視支援装置は、対象物に光を照射する光源として、2つの反射光ユニット10,20を設置すると共に、1つの透過光ユニット40を設置したが、目視支援装置としては、いずれか1つのユニットを有する構成であっても良い。この場合、透過光ユニットのみを設置する場合、拡大光学ユニット20は、波長板を有することなく、偏光機能を有するフィルタ(偏光フィルタ)が設置されたものであっても良い。また、上述した実施形態において、各ユニットに設置される光源については、半導体レーザ発光素子(面発光レーザ)や無電極ランプなどによって構成する等、適宜変形することが可能であり、光源の設置位置、照度、光野径などについても適宜変形することが可能である。
【0072】
また、拡大光学ユニット20は、伸縮アームや回動アームに設置して、対象物を様々な角度から視認できるように設置しても良いし、反射光ユニットや透過光ユニットの配設箇所については、適宜、変形することが可能である。
【0073】
さらに、本発明に係る目視支援装置は、各種の対象物の異物の検出作業以外にも、例えば、医療分野における検体検査、各種の工業製品用の製造ライン等に利用することが可能である。
【符号の説明】
【0074】
1 目視支援装置
3 基台
10 反射光ユニット
14 偏光素子(第1偏光素子)
15 波長板(第1波長板)
20 拡大光学ユニット
24 偏光素子(第2偏光素子)
25 波長板(第2波長板)
30 反射光ユニット
40,400 透過光ユニット
100,100a,100b 対象物