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  • 特許-シリンダ用の保持具 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-12
(45)【発行日】2023-07-21
(54)【発明の名称】シリンダ用の保持具
(51)【国際特許分類】
   E02D 17/04 20060101AFI20230713BHJP
【FI】
E02D17/04 B
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2019232565
(22)【出願日】2019-12-24
(65)【公開番号】P2021101064
(43)【公開日】2021-07-08
【審査請求日】2022-08-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000128038
【氏名又は名称】株式会社エヌ・エス・ピー
(74)【代理人】
【識別番号】110000659
【氏名又は名称】弁理士法人広江アソシエイツ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 欣也
【審査官】湯本 照基
(56)【参考文献】
【文献】特開平09-125393(JP,A)
【文献】特開平08-246459(JP,A)
【文献】特開平09-137452(JP,A)
【文献】米国特許第05232313(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02D 17/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
送液装置からの送液によって伸長する土留用の液圧式シリンダを保持する保持具であって、
上下方向に延びるサイドレールと、
前記サイドレールに上下方向に間隔をあけて配置され、複数の前記シリンダをそれぞれ取り付けるための複数のパッドと、
前記複数のパッドにそれぞれ取り付けられ、前記送液装置のソケットと接続される複数のプラグと、
少なくとも最上段のプラグよりも下方に位置するプラグの左右方向における少なくとも一方側に配置され、前記ソケット又は前記プラグを操作する工具を接触させてテコの支点とするためのサポートと、
を備える保持具。
【請求項2】
前記サポートは、前記サイドレール及び前記パッドの少なくとも一方に着脱可能に接続されている、
請求項1に記載の保持具。
【請求項3】
前記パッド及び前記サポートは共に、取付部材によって前記サイドレールに着脱可能に接続されている、
請求項2に記載の保持具。
【請求項4】
前記サポートは、前記サイドレール及び前記パッドの少なくとも一方に一体形成されている、
請求項1に記載の保持具。
【請求項5】
前記サポートは、リング状部材から成る、
請求項1から4のいずれか1項に記載の保持具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、土留用の液圧式シリンダを保持するための保持具に関する。
【背景技術】
【0002】
土留用の液圧式シリンダは保持具に取り付けられ、例えば対向する腹起し間に架設される。そして、送液装置からシリンダに液体が送られることで、シリンダが伸長して腹起しを押圧する。
【0003】
ここで、図5を参照して従来の保持具100’について説明する。図5は従来の保持具100’の斜視図である。なお、従来の保持具100’の各構成要素の符号は、後述する本発明の保持具100の各構成要素の符号に「’」を付して表している。
【0004】
保持具100’は、サイドレール10’と、パッド20’と、プラグ30’と、取っ手60’と、を備える。パッド20’は、サイドレール10’に取り付けられている。プラグ30’及びシリンダCは、パッド20’に取り付けられている。プラグ30’には、送液装置(不図示)のホースのソケットが接続される。通常、ソケット及びプラグ30’は、ワンタッチで着脱可能なソケット及びプラグである。送液装置からの液体は、ホースからパッド20’を通ってシリンダC内に送り込まれる。取っ手60’はU字型の棒状部材から成り、サイドレール10’の上部に取り付けられている。
【0005】
土留作業の終了後には、プラグ30’からソケットを取り外し、プラグ30’の先端を押圧して、シリンダC内から液体を排出する必要がある。しかしながら、ソケット及びプラグ30’には、液体による圧力が掛かっているため、人力でソケットをプラグ30’から取り外したり、あるいは、人力でプラグ30’の先端を押圧したりすることは困難である。そこで、従来、工具Tを使って、テコの原理を利用することにより、ソケットをプラグ30’から取り外したり、あるいは、プラグ30’の先端を押圧したりしている。
【0006】
ここで、図6を参照して、工具Tによりプラグ30’の先端を押圧する方法を説明する。なお、図6では、プラグ30’を押圧するときの工具Tの移動方向を矢印にて示している。保持具100’の上方から、U字型の取っ手60’の内側空間内に工具Tを差し込み、工具Tをプラグ30’の先端に接触させる。そして、工具Tを取っ手60’に接触させ、工具Tと取っ手60’との接触点を支点とするテコの原理を利用して、プラグ30’の先端を押圧する。こうすることで、工具Tの使用者が工具Tに加えた力よりも大きな力をプラグ30’の先端に加えることができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来のように、一つのサイドレールに対し一本のシリンダが接続される実施形態では、上記の方法で、ソケット又はプラグを操作することができる。しかしながら、一つのサイドレールに対して、上下方向に複数のパッドが離隔して配置され、各パッドにそれぞれプラグ及びシリンダが接続される実施形態では、設計上、最上段のパッドよりも下方のパッドに取り付けられたプラグの上方に、取っ手を配置するスペース及び工具を差し込むスペースを確保できない場合がある。そのため、最上段よりも下方のソケット又はプラグに対しては、従来のように、プラグの上方から工具を差し込んで操作することが困難な場合がある。
【0008】
本発明は、複数のシリンダを上下に配置可能な保持具であって、最上段よりも下方に配置されたプラグ又は当該プラグに接続されたソケットなどの送液用継手を工具によって容易に操作することができる保持具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、以下に掲げる態様の発明を提供する。
(項目1)
送液装置からの送液によって伸長する土留用の液圧式シリンダを保持する保持具であって、
上下方向に延びるサイドレールと、
前記サイドレールに上下方向に間隔をあけて配置され、複数の前記シリンダをそれぞれ取り付けるための複数のパッドと、
前記複数のパッドにそれぞれ取り付けられ、前記送液装置のソケットと接続される複数のプラグと、
少なくとも最上段のプラグよりも下方に位置するプラグの左右方向における少なくとも一方側に配置され、前記ソケット又は前記プラグを操作する工具を接触させてテコの支点とするためのサポートと、
を備える保持具。
【0010】
(項目2)
前記サポートは、前記サイドレール及び前記パッドの少なくとも一方に着脱可能に接続されている、
項目1に記載の保持具。
【0011】
(項目3)
前記パッド及び前記サポートは共に、取付部材によって前記サイドレールに着脱可能に接続されている、
項目2に記載の保持具。
【0012】
(項目4)
前記サポートは、前記サイドレール及び前記パッドの少なくとも一方に一体形成されている、
項目1に記載の保持具。
【0013】
(項目5)
前記サポートは、リング状部材から成る、
項目1から4のいずれか1項に記載の保持具。
【発明の効果】
【0014】
本発明の保持具では、最上段のプラグよりも下方のプラグの右側及び左側の少なくとも一方に、サポートが配置されている。これにより、工具を、プラグの右側又は左側から差し込み、サポートと接触させることで、工具とサポートとの接触点をテコの原理の支点として、ソケット又はプラグを操作することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】保持具の組立斜視図である。
図2】保持具の分解斜視図である。
図3】保持具の使用状態を示す斜視図である。
図4】(a)工具によってプラグ先端を押圧している状態を示す側面図、(b)工具によってプラグ先端を押圧している状態を示す底面図である。
図5】従来の保持具の斜視図である。
図6】工具によって従来の保持具のプラグ先端を押圧している状態を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の保持具について図面を参照しながら説明する。以下で説明する実施形態は、本発明の好ましい一具体例を示すものである。本発明は、以下の実施形態に限定されず、その主旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【0017】
<1 保持具の構造>
図1は保持具10の組立斜視図、図2は保持具10の分解斜視図、図3は保持具10の使用状態を示す斜視図である。以下では、図1の上、下、左上、右下、左下、右上をそれぞれ、保持具10の上、下、左、右、前、後として説明する。
【0018】
図1に示すように、保持具100は、サイドレール10と、複数のパッド20と、複数のプラグ30と、サポート40と、取付部材50と、取っ手60と、を備える。本実施形態では、パッド20、プラグ30、及びサポート40はいずれも二つずつ設けられている。複数のパッド20及びサポート40は、取付部材50によってサイドレール10に取り付けられている。各プラグ30は、各パッド20にそれぞれ取り付けられている。取っ手60は、U字型の棒状部材から成り、サイドレール10の上部に取り付けられている。以下、各構成要素の詳細な構造について説明する。
【0019】
図1及び図2に示すように、サイドレール10は、第一壁部11と、第二壁部12とを備える。第一壁部11は、上下方向に延びる平板状である。第二壁部12は、第一壁部11の左右両端それぞれから、第一壁部11と略直角を成して立ち上がっている。第二壁部12には、複数の貫通穴12aが、上下方向に離隔して形成されている。貫通穴12aには、取付部材50が挿入される。
【0020】
図1及び図2に示すように、本実施形態では、取付部材50は、シャフトである。取付部材50の軸方向両端には、貫通穴50aが設けられている。取付部材50がサイドレール10の貫通穴12aに挿入されたとき、貫通穴50aは第二壁部12よりも外側に位置する。貫通穴50aにピン等の位置決め部材Pを挿入することにより、取付部材50の左右方向への移動が規制される。これにより、取付部材50は、左右方向において位置決めされる。
【0021】
図1及び図2に示すように、二つのパッド20は、サイドレール10の第一壁部11に、上下方向に間隔をあけて配置されている。パッド20には左右方向に貫通する貫通穴20aが形成されている。パッド20の貫通穴20aには取付部材50が挿入され、これによりパッド20はサイドレール10に取り付けられる。
【0022】
図2に示すように、パッド20は、プラグ30を取り付けるためのプラグ取付部20bと、シリンダCを取り付けるためのシリンダ取付部20cと、を備える。プラグ取付部20bは、プラグ30の雄ネジと螺合可能な雌ネジが形成された穴である。図3に示すように、各プラグ30には、送液装置の二股ホースHのソケットSが接続される。ソケットS及びプラグ30(以下では、これらをまとめて「送液用継手」と表記することがある)は、公知のソケットS及びプラグ30を使用することができる。ソケットS及びプラグ30は、好ましくは、ワンタッチカプラ等のワンタッチで着脱可能なソケットS及びプラグ30である。
【0023】
図2に示すように、シリンダ取付部20cは、プラグ取付部20bの下方に形成されている。シリンダ取付部20cは、シリンダCの雄ネジと螺合可能な雌ネジが形成された穴である。
【0024】
プラグ取付部20bとシリンダ取付部20cとは、流路(不図示)によって連通されている。また、流路は、シリンダCをシリンダ取付部20cに取り付けたときに、シリンダCに設けられた液体注入口(不図示)と連通する。これにより、送液装置から送られた液体は、プラグ30から流路を通ってシリンダC内に供給される。
【0025】
図1及び図2に示すように、二つのサポート40は、上から二つ目のパッド20に取り付けられたプラグ30の右側及び左側にそれぞれ配置されている。本実施形態で、サポート40は、リング状部材から成る。
【0026】
図2に示すように、サポート40は、貫通穴40aを有する。サポート40は、貫通穴40aが、サイドレール10の貫通穴12a及びパッド20の貫通穴20aと整合するように、サイドレール10の第二壁部12とパッド20との間に配置される。そして、取付部材50をそれらの貫通穴12a、20a、40aに挿入することにより、サポート40はパッド20と共にサイドレール10に取り付けられる。
【0027】
サポート40をサイドレール10に取り付けたとき、側面視において、サポート40の前端は、プラグ30の前端(先端)よりも前方に延出しており、プラグ30はリング状のサポート40の輪内に入っている(図4(a)参照)。
【0028】
<2 工具を使用して送液用継手を操作する方法>
次に、工具Tを使用して送液用継手を操作する方法について説明する。ここでは、図4を参照して、シリンダC内に溜まった液体を排出するために、工具Tによってプラグ30の先端を押圧する方法について説明する。図4(a)は工具Tによってプラグ30の先端を押圧している状態を示す側面図、図4(b)は工具Tによってプラグ30の先端を押圧している状態を示す底面図である。
【0029】
工具Tをリング状のサポート40内に通し、工具Tの先端をプラグ30の先端に接触させる。次に、工具Tの先端をプラグ30の先端に接触させたまま、工具Tをリング状のサポート40の内縁に押し当てるように、工具Tを引き上げる。こうすることで、工具Tとサポート40との接触点を支点とするテコの原理により、使用者が工具Tに加えた力よりも大きな力をプラグ30の先端に加えることができる。このようにして、シリンダC内に溜まった液体を排出することができる。
【0030】
上記以外にも、例えば、工具TによってソケットSをプラグ30から取り外す場合、又は、シリンダC内にさらに液体を注入するために工具TによってソケットSをプラグ30に対して押し込む場合にも、サポート40に工具Tを接触させ、テコの原理を利用することで、送液用継手に大きな力を加えることができる。
【0031】
<3 特徴>
本発明の保持具100では、最上段よりも下方のプラグ30(すなわち、上から二つ目のプラグ30)の右側及び左側には、サポート40が配置されている。これにより、上から二つ目以下に配置された送液用継手において、その上方に工具Tを差し込むスペースがない場合でも、工具Tを左右方向から差し込んで、送液用継手を操作することができる。
【0032】
サポート40がプラグ30の右側及び左側の両方に配置されていることにより、プラグ30の右側及び左側のいずれの側からも工具Tを差し込むことができる。したがって、例えば、プラグ30の右側には工具Tを差し込むスペースが十分にない場合でも、プラグ30の左側から工具Tを差し込んで送液用継手を操作できる。
【0033】
サポート40がサイドレール10又はパッド20に着脱可能であることにより、サポート40の交換や、サポート40の取付位置を容易に変更できる。
【0034】
パッド20及びサポート40は、一つの取付部材50によってサイドレール10に取り付けることができるため、部品数を少なくすることができる。
【0035】
<4 変形例>
上記で説明した実施形態は、保持具100の好ましい一実施形態を示すに過ぎない。本発明の保持具100には、様々な変形例が考えられる。以下では、保持具100の変形例を説明する。以下で説明する変形例は、本発明の主旨を逸脱しない範囲で適宜組み合わせ可能である。
【0036】
(1)サポート40は、プラグ30の右側又は左側のいずれか一方のみに配置されていてもよい。
【0037】
(2)サポート40は、サイドレール10又はパッド20から取り外し不能であってもよい。また、サポート40は、サイドレール10又はパッド20に一体形成されていてもよい。
【0038】
(3)最上段に位置するプラグ30の右側及び左側の少なくとも一方にも、サポート40が配置されていてもよい。
【符号の説明】
【0039】
100 保持具
10 サイドレール
20 パッド
30 プラグ
40 サポート
50 取付部材
C シリンダ
S ソケット
T 工具
図1
図2
図3
図4
図5
図6