(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-12
(45)【発行日】2023-07-21
(54)【発明の名称】メタ-フェノールスルホン酸系樹脂、及びその触媒としての利用
(51)【国際特許分類】
B01J 31/10 20060101AFI20230713BHJP
C08G 8/24 20060101ALI20230713BHJP
C07C 69/54 20060101ALI20230713BHJP
C07C 67/08 20060101ALI20230713BHJP
C07C 67/03 20060101ALI20230713BHJP
C07C 69/56 20060101ALI20230713BHJP
C07C 69/533 20060101ALI20230713BHJP
C07C 69/14 20060101ALI20230713BHJP
C07C 69/24 20060101ALI20230713BHJP
C08G 8/18 20060101ALI20230713BHJP
C07B 61/00 20060101ALN20230713BHJP
【FI】
B01J31/10 Z
C08G8/24
C07C69/54 Z
C07C67/08
C07C67/03
C07C69/56
C07C69/533
C07C69/14
C07C69/24
C08G8/18
C07B61/00 300
(21)【出願番号】P 2020514402
(86)(22)【出願日】2019-04-16
(86)【国際出願番号】 JP2019016353
(87)【国際公開番号】W WO2019203241
(87)【国際公開日】2019-10-24
【審査請求日】2022-04-05
(31)【優先権主張番号】P 2018078643
(32)【優先日】2018-04-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2018218498
(32)【優先日】2018-11-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成29年度国立研究開発法人科学技術振興機構、戦略的創造研究推進事業「超活性固定化有機分子変換触媒の開発」委託研究、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】503359821
【氏名又は名称】国立研究開発法人理化学研究所
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山田 陽一
(72)【発明者】
【氏名】魚住 泰広
(72)【発明者】
【氏名】ベク ヒヨル
(72)【発明者】
【氏名】篠原 賢太
(72)【発明者】
【氏名】太田 元
【審査官】三宅 澄也
(56)【参考文献】
【文献】特開平02-173114(JP,A)
【文献】特開2015-143348(JP,A)
【文献】特表平11-502244(JP,A)
【文献】特開平06-016594(JP,A)
【文献】ONOUE,Yasuharu et al,Studies on Ion exchange Membranes. VI.Improvement of Cation Exchange Membranes for the Permselectivi,Journal of the Electrochemical Society of Japan,日本,the Electrochemical Society of Japan,1961年,29/4,226-8
【文献】ONOUE,Yasuharu et al,Studies on Ion exchange membranes. V. On the Cation Exchange Membranes Consisting of Bisphenol A, So,Journal of the Electrochemical Society of Japan,日本,電気化学会,1961年,29/4,223-226
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 4/00- 16/06
C08K 3/00- 13/08
C08L 1/00-101/14
B01J21/00- 38/74
C07B31/00- 61/00
C07B63/00- 63/04
C07C 1/00-409/44
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(I)で表される構造単位を含む、
ノボラック型メタ-フェノールスルホン酸系樹脂を含む、触媒組成物。
【化1】
(式中、
m1は0
である。)
【請求項2】
さらに、式(II)で表される構造単位を含む、請求項1に記載のメタ-フェノールスルホン酸系樹脂を含む、触媒組成物。
【化2】
(式中、
m2は0
である。)
【請求項3】
さらに、式(III)で表される構造単位を含む、請求項1又は2に記載のメタ-フェノールスルホン酸系樹脂を含む、触媒組成物。
【化3】
(式中、R
3は
、ハロゲン、炭素数1~30の炭化水素、炭素数1~30のアシル、及びシアノからなる群から選ばれる重合反応に不活性な置換基であり、m3は0~3の整数である。)
【請求項4】
エステル化反応又はエステル交換反応に用いられる、請求項1~
3のいずれか一項に記載の触媒組成物。
【請求項5】
カルボン酸とアルコールを、請求項
4に記載の触媒組成物の存在下で反応させ、エステル化反応させる工程、
を含む、カルボン酸エステルの製造方法。
【請求項6】
カルボン酸エステルとアルコールを、請求項
4に記載の触媒組成物の存在下で反応させ、エステル交換反応させる工程、
を含む、カルボン酸エステルの製造方法。
【請求項7】
請求項1~
4のいずれか一項に記載の触媒組成物が充填された反応容器と、前記反応容器に反応原料を供給するための1以上の供給口と、前記反応容器から反応生成物を取り出す1以上の排出口とを少なくとも備える反応装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、メタ-フェノールスルホン酸系樹脂、同樹脂の製造方法、同樹脂を含む触媒組成物、及び同触媒組成物を用いたカルボン酸エステルの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、フェノール樹脂は、加工品のフィラー、バインダーとして、利用されている。本発明者等は、スルホン酸基を有するフェノール樹脂が、アルコールとカルボン酸とのエステル化反応において、高い触媒活性を有することを見出した(非特許文献1~3)。この触媒を用いることにより、アルコールとカルボン酸とから高効率でエステルを生成することができる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【文献】M. Minakawa, H. Baek, Y. M. A. Yamada, J. Han and Y. Uozumi Direct Dehydrative Esterification of Alcohols and Carboxylic Acids with a Macroporous Polymeric Acid Catalyst Org. Lett. 15, 5798-5801 (2013)
【文献】Y. -H. Kim, J. Han, B. Y. Jung, H. Baek, Y. M. A. Yamada, Y. Uozumi, and Y. -S. Lee Production of Valuable Esters from Oleic Acid with a Porous Polymeric Acid Catalyst without Water Removal Synlett 27, 29-32 (2016).
【文献】H. Baek, M. Minakawa, Y. M. A. Yamada, J. Han and Y. Uozumi In-Water and Neat Batch and Continuous-Flow Direct Esterification and Transesterification by a Porous Polymeric Acid CatalystSci. Rep. 6, 25925 (2016)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、工業的に利用される触媒に対しては、高い触媒活性を有するとともに、当該活性が長く持続し、繰り返し使用しても活性が顕著に低下しないことが要求される(以下、繰り返し利用可能である触媒の性質を「再利用性」という。)。本発明は、触媒活性及び再利用性のいずれも良好な新規な触媒組成物を提供することを課題とする。また、本発明は、前記触媒組成物に利用可能な新規なフェノールスルホン酸系樹脂、並びに前記触媒組成物を触媒として利用した新規な方法、及び反応装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
従前、非特許文献1~3に記載の前記触媒の活性の低下については、スルホン酸基の脱離が一因であると考えられていたものの、スルホン酸基脱離の具体的機構については明らかになっていなかった。本発明者らは、種々検討した結果、下記式に示す機構によって、触媒としての使用の過程でスルホン酸基が脱離するとの知見を得た。
【0006】
【0007】
この知見に基づき、さらに検討した結果、フェノールスルホン酸系樹脂中に、フェノールの-OH基に対してメタ位にスルホン酸基が存在する構造単位を組み込むことにより、良好な触媒活性を維持しつつ、上記の作用機構によるスルホン酸基の脱離を軽減できることを見出し、本件発明を完成した。
【0008】
すなわち、本発明の要旨は以下のとおりである。
[1] 一般式(I)で表される構造単位を含むメタ-フェノールスルホン酸系樹脂。
【0009】
【0010】
(式中、R1は電子吸引基であり、m1は0~2の整数である。)
[2] さらに、式(II)で表される構造単位を含む[1]に記載のメタ-フェノールスルホン酸系樹脂。
【0011】
【0012】
(式中、R2は電子吸引基であり、m2は0~2の整数である。)
[3] さらに、式(III)で表される構造単位を含む[1]又は[2]に記載のメタ-フェノールスルホン酸系樹脂。
【0013】
【0014】
(式中、R3は重合反応に不活性な置換基であり、m3は0~3の整数である。)
[4] 前記電子吸引基は、ハロゲン、炭素数1~4のハロゲン化アルキル、炭素数1~30のエステル、炭素数1~30のアシル、シアノ、アミド、及びニトロからなる群から選ばれる、[1]~[3]のいずれかに記載のメタ-フェノールスルホン酸系樹脂。
[5] [1]~[4]のいずれかに記載のメタ-フェノールスルホン酸系樹脂を含む触媒組成物。
【0015】
[6] エステル化反応又はエステル交換反応に用いられる、[5]に記載の触媒組成物。
[7] カルボン酸とアルコールを、[6]に記載の触媒組成物の存在下で反応させ、エステル化反応させる工程、
を含む、カルボン酸エステルの製造方法。
[8] カルボン酸エステルとアルコールを、[6]に記載の触媒組成物の存在下で反応させ、エステル交換反応させる工程、
を含む、カルボン酸エステルの製造方法。
[9](i)メタ-フェノールスルホン酸又はその誘導体の金属塩を陽イオン交換し、メタ-フェノールスルホン酸又はその誘導体を調製する工程、及び、
(ii)メタ-フェノールスルホン酸又はその誘導体とホルムアルデヒド類を反応させる工程、
を含む、[1]~[4]のいずれかに記載のメタ-フェノールスルホン酸系樹脂の製造方法。
[10] メタ-フェノールスルホン酸又はその誘導体の金属塩とホルムアルデヒド類を、酸触媒存在下で反応させる工程、
を含む、[1]~[4]のいずれかに記載のメタ-フェノールスルホン酸系樹脂の製造方法。
[11](i)メタ-フェノールスルホン酸又はその誘導体の金属塩とホルムアルデヒド類を、塩基性触媒存在下で反応させる工程、及び、
(ii)メタ-フェノールスルホン酸又はその誘導体の金属塩とホルムアルデヒドとの重合体を陽イオン交換し、メタ-フェノールスルホン酸又はその誘導体とホルムアルデヒドとの重合体を調製する工程、
を含む、[1]~[4]のいずれかに記載のメタ-フェノールスルホン酸系樹脂の製造方法。
[12] フェノールスルホン酸類と、ホルムアルデヒド類とを少なくとも重合してなる少なくとも一種のフェノールスルホン酸系樹脂を含有する触媒組成物であって、前記フェノールスルホン酸類の少なくとも一種が、メタ位にスルホン酸基を有するフェノールスルホン酸類である触媒組成物。
[13] 前記少なくとも一種のフェノールスルホン酸系樹脂が、n1モルの前記フェノールスルホン酸類と、n2モル(但し、n1<n2)の前記ホルムアルデヒド類とを重合してなるフェノール樹脂である[12]に記載の触媒組成物。
[14] [5]、「6」、[12]又は[13]のいずれかに記載の触媒組成物が充填された反応容器と、前記反応容器に反応原料を供給するための1以上の供給口と、前記反応容器から反応生成物を取り出す1以上の排出口とを少なくとも備える反応装置。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、新規な触媒組成物、特に触媒活性及び再利用性のいずれも良好な、新規な触媒組成物、並びにそれに用いられる新規なメタ-フェノールスルホン酸系樹脂を提供することができる。また、本発明によれば、前記触媒組成物を触媒として利用した新規な方法及び反応装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】
図1は、実施例1で製造したメタ-フェノールスルホン酸樹脂の表面のSEM/EDS観察の結果を示す図である。上段左はSEM写真を示す。上段右はEDSスペクトルであり、S,O,Cの存在及び含有量を示す。下段左はEDSイメージであり、Sの分布を示す。中央はEDSイメージであり、Oの分布を示す。右はEDSイメージであり、Cの分布を示す。
【
図2】
図2は、実施例2で製造したメタ-フェノールスルホン酸樹脂の表面のSEM/EDS観察の結果を示す図である。上段左はSEM写真を示す。上段右はEDS EDSスペクトルであり、S,O,Cの存在及び含有量を示す。下段左はEDSイメージであり、Sの分布を示す。中央はEDSイメージであり、Oの分布を示す。右はEDSイメージであり、Cの分布を示す。
【
図3】
図3は、実施例3で製造したメタ-フェノールスルホン酸樹脂の表面のSEM/EDS観察の結果を示す図である。上段左はSEM写真を示す。上段右はEDS EDSスペクトルであり、S,O,Cの存在及び含有量を示す。下段左はEDSイメージであり、Cの分布を示す。中央はEDSイメージであり、Oの分布を示す。右はEDSイメージであり、Sの分布を示す。
【
図4】
図4は、実施例4で製造したメタ-フェノールスルホン酸-パラ-フェノールスルホン酸樹脂の表面のSEM/EDS観察の結果を示す図である。上段左はSEM写真を示す。上段右はEDS EDSスペクトルであり、S,O,Cの存在及び含有量を示す。下段左はEDSイメージであり、Cの分布を示す。中央はEDSイメージであり、Oの分布を示す。右はEDSイメージであり、Sの分布を示す。
【
図5】
図5は、実施例5で製造したメタ-フェノールスルホン酸-フェノール樹脂の表面のSEM/EDS観察の結果を示す図である。上段左はSEM写真を示す。上段右はEDS EDSスペクトルであり、S,O,Cの存在及び含有量を示す。下段左はEDSイメージであり、Cの分布を示す。中央はEDSイメージであり、Oの分布を示す。右はEDSイメージであり、Sの分布を示す。
【
図6】
図6は、実施例1~5で製造した各樹脂の光学顕微鏡観察の結果を示す図(写真)である。倍率は×75、スケールバーは0.5 mmである。a)は実施例1により製造したメタ-フェノールスルホン酸樹脂、b)は実施例2のメタ-フェノールスルホン酸樹脂、c)は実施例3により製造したメタ-フェノールスルホン酸樹脂、d)は実施例4により製造したメタ-パラ-フェノールスルホン酸樹脂、e)は実施例5により製造したメタ-フェノールスルホン酸-フェノール樹脂である。
【
図7】
図7は、実施例1~5で製造した各樹脂の元素分析の結果を示す図である。
【
図8】
図8は、実施例1により製造したメタ-フェノールスルホン酸樹脂のFT-IR分析結果を示す図である。
【
図9】
図9は、実施例2により製造したメタ-フェノールスルホン酸樹脂の表面のFT-IR分析結果を示す図である。
【
図10】
図10は、実施例3により製造したメタ-フェノールスルホン酸樹脂のFT-IR分析結果を示す図である。
【
図11】
図11は、実施例4により製造したメタ-フェノールスルホン酸-パラ-フェノールスルホン酸樹脂のFT-IR分析結果を示す図である。
【
図12】
図12は、実施例5により製造したメタ-フェノールスルホン酸-フェノール樹脂触媒のFT-IR分析結果を示す図である。
【
図13】
図13は、実施例1により製造したメタ-フェノールスルホン酸樹脂を含む触媒の再利用実験の結果を示す図である。
【
図14】
図14は、実施例2により製造したメタ-フェノールスルホン酸樹脂を含む触媒の再利用実験の結果を示す図である。
【
図15】
図15は、実施例3により製造したメタ-フェノールスルホン酸樹脂を含む触媒の再利用実験の結果を示す図である。
【
図16】
図16は、比較例のパラ-フェノールスルホン酸樹脂を含む触媒の再利用実験の結果を示す図である。
【
図17】
図17は、連続フロー合成装置の一実施形態を示す図(写真)である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本明細書で使用する用語について、説明する。
本明細書において、「フェノールスルホン酸系樹脂」とは、特別に記載しない限り、「フェノールスルホン酸類‐ホルムアルデヒド重縮合物を含む樹脂」を意味する。
本明細書において、「メターフェノールスルホン酸系樹脂」とは、特別に記載しない限り、「メターフェノールスルホン酸類‐ホルムアルデヒド重縮合物を含む樹脂」を意味する。
本明細書において、「フェノールスルホン酸類」とは、特別に記載しない限り、フェノールスルホン酸、フェノールスルホン酸誘導体(スルホン酸基とともに他の置換基を有するフェノール類を意味する)及びそれらの金属塩(スルホン酸基が金属イオンと塩を形成している化合物群を意味する)の総称を意味する。
本明細書において、「ホルムアルデヒド類」は、ホルムアルデヒドの他、その水溶液(例えばホルマリン)、及び重合物(無水のトリオキサン及びパラホルムアルデヒドを含む)の総称を意味する。
本明細書において、「樹脂」とは、特別に記載しない限り、モノマーが重合した(コ)ポリマー((共)重合体)を含む。
【0019】
以下、本発明の実施の形態について、詳細に説明する。
本発明は、フェノールスルホン酸類と、ホルムアルデヒド類とを少なくとも重合してなる少なくとも一種のフェノールスルホン酸系樹脂を含有する触媒組成物に関する。ここで、フェノールスルホン酸類、及びホルムアルデヒド類としてはそれぞれ、1種を使用してもよいし、2種以上を併用してもよいが、本発明は、前記フェノールスルホン酸類の少なくとも一種が、メタ位にスルホン酸を有するフェノールスルホン酸類であることを特徴とする。本発明では、フェノールスルホン酸系樹脂中に、スルホン酸基が-OH基に対してメタ位に存在する構造単位を組み込むことにより、良好な触媒活性及び再利用性を達成している。例えば、スルホン酸基が-OH基に対してパラ位に存在する構造単位のみが組み込まれたフェノールスルホン酸系樹脂と比較して、触媒活性は同等以上であり、且つ再利用性が改善されている。本発明では、メタ-フェノールスルホン酸類とともに、パラ-フェノールスルホン酸類を共重合させた、及び/又はスルホン酸基を有しないフェノール類を共重合させたフェノールスルホン酸系樹脂を用いてもよい。
【0020】
[樹脂]
本発明に利用可能なフェノールスルホン酸系樹脂の一形態は、一般式(I)で表される構造単位を有する樹脂(以下、「本発明の樹脂」とも言う)である。一般式(I)で表される構造単位は、後記のとおり、メタ-フェノールスルホン酸類(即ち、メタ-フェノールスルホン酸、その誘導体又はそれらの金属塩)とホルムアルデヒド類に由来する構造単位である。
【0021】
【0022】
式中、R1は電子吸引基であり、m1は0~2の整数である。
【0023】
電子吸引基は、置換した原子団から、電子を吸引する基である。本発明において、電子吸引基は、フェノールスルホン酸より電子を吸引し、フェノールスルホン酸の酸性度を上げ、反応性を向上させ得る。電子吸引基は、このような作用を有するものであれば限定されない。
【0024】
電子吸引基R1の例として、限定されないが、それぞれ独立に、例えば、フッ素(-F)、塩素(-Cl)、臭素(-Br)、ヨウ素(-I)等のハロゲン(X)、炭素数1~4のハロゲン化アルキル、炭素数1~30のエステル、炭素数1~30のアシル、シアノ(-CN)、アミド(-CO-NH2)、ニトロ(-NO2)等が挙げられる。電子吸引基R1は、好ましくは、ハロゲン(X)、-CpX2p+1で示されるハロゲン化アルキル、-CO2Raで示されるカルボン酸エステル、-CORaで示されるアシル、シアノ、アミド、ニトロ(式中、Raは、それぞれ独立に、水素原子、置換若しくは無置換の環形成炭素数6~30の芳香族炭化水素基、置換若しくは無置換の環形成原子数5~30の複素環基、又は置換若しくは無置換の炭素数1~30のアルキル基を表し、pは1~4の整数である。)等が挙げられる。Raは、炭素数1~8のアルキル基又は炭素数6~10のアリール基がより好ましく、炭素原子数1~4のアルキル基又はフェニル基がより好ましい。ここで、アルキル基は、直鎖、分岐及び環状のいずれのアルキル基でもよいが、直鎖又は分岐のアルキル基であることが好ましく、直鎖のアルキル基であることがより好ましい。具体的には、炭素数1~8のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、n-ヘキシル基、n-ヘプチル基、n-オクチル基等が好ましく、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基等がより好ましい。
【0025】
芳香環における電子吸引基R1の置換位置としては、限定されないが、通常p位(4位)、又はm位(5位)であり、好ましくはm位(5位)である。
【0026】
m1は電子吸引基R1の置換数であり、0~2の整数であり、好ましくは0又は1である。
【0027】
一般式(I)で表される構造単位と、他の一般式(I)で表される構造単位との重合位置としては、限定されないが、通常o位(2位)、又はp位(4位)であり、好ましくはo位(2位)である。
【0028】
一般式(I)で表される構造単位を有する樹脂は、他の構造単位と架橋されていてもよく、架橋位置としては、通常m位(5位)である。構造単位の架橋構造を有することにより、本発明の樹脂は三次元編目構造を有する。
【0029】
一般式(I)で表される構造単位を有する樹脂の全構造単位の合計100モル%における、一般式(I)で表される構造単位の割合は、通常10モル%以上、20モル%以上、30モル%以上、40モル%以上、50モル%以上、60モル%以上、70モル%以上、80モル%以上、90モル%以上、95モル%以上、99モル%以上、100モル%である。また、通常99モル%以下、95モル%以下、90モル%以下、80モル%以下、70モル%以下、60モル%以下、50モル%以下である。
【0030】
上記樹脂に含まれる一般式(I)で表される構造単位は、一種のみでもよく、構造が異なる二種以上であってもよい。二種以上含まれる場合、上記割合は二種以上の合計についていうものとする。この点は、本発明及び本明細書における各種含有量及び割合についても、同様である。
【0031】
本発明の更なる一形態は、一般式(I)で表される構造単位と、さらに、式(II)で表される構造単位とを有する樹脂である。
【0032】
【0033】
式中、R2は電子吸引基であり、m2は0~2の整数である。
【0034】
電子吸引基R2の具体例、芳香環における置換位置、置換数としては、一般式(I)において説明された電子吸引基R1と同様である。
【0035】
一般式(I)で表される構造単位と、式(II)で表される構造単位とを有する樹脂の全構造単位の合計100モル%における比率は、目的とする樹脂性能等に応じて適宜変更でき、限定されないが、例えば、通常、0.1:99.9~99.9:0.1(モル%)、好ましくは50:50~99:1(モル%)、より好ましくは60:40~90:10(モル%)である。
【0036】
上記樹脂に含まれる一般式(II)で表される構造単位は、一種のみでもよく、構造が異なる二種以上であってもよい。
【0037】
本発明の更なる一形態は、一般式(I)で表される構造単位と、さらに、式(III)で表される構造単位とを有する樹脂である。また、本発明の更なる一形態は、一般式(I)で表される構造単位と、一般式(II)で表される構造単位と、さらに、式(III)で表される構造単位とを有する樹脂である。
【0038】
【0039】
式中、R3は重合反応に不活性な置換基であり、m3は0~3の整数である。
【0040】
重合反応に不活性な置換基R3は、反応に不活性な置換基であれば特に限定されないが、それぞれ独立に、例えば、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素等のハロゲン、炭素数1~30の炭化水素、炭素数1~30のアシル、シアノ等が挙げられる。R3は、炭素数1~8のアルキル基又は炭素数6~10のアリール基がより好ましく、炭素原子数1~4のアルキル基又はフェニル基がより好ましい。ここで、アルキル基は、直鎖、分岐及び環状のいずれのアルキル基でもよいが、直鎖又は分岐のアルキル基であることが好ましく、直鎖のアルキル基であることがより好ましい。具体的には、炭素数1~8のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、n-ヘキシル基、n-ヘプチル基、n-オクチル基等が好ましく、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基等がより好ましい。なお、芳香環上の置換基R3の数は1~3であってよく、好ましくは1である。芳香環上の置換基R3の置換位置は特に限定されない。
【0041】
一般式(I)で表される構造単位と、式(III)で表される構造単位とを有する樹脂の全構造単位の合計100モル%における比率は、目的とする樹脂の性能等に応じて適宜変更でき、限定されないが、例えば、通常、0.1:99.9~99.9:0.1(モル%)、好ましくは50:50~99:1(モル%)、より好ましくは60:40~90:10(モル%)である。
【0042】
上記樹脂に含まれる一般式(III)で表される構造単位は、一種のみでもよく、構造が異なる二種以上であってもよい。
【0043】
樹脂中に一般式(I)、式(II)、(III)等の各種構造単位が占める割合は、NMR等の公知の同定方法によって求めることができる。また、樹脂の重合に用いた化合物の組成から求めることができる。
【0044】
前記フェノールスルホン酸系樹脂の分子量は、用途に応じて、好ましい範囲が変動する。また、三次元網目構造を有し、有機溶媒に不溶であることから、その分子量の決定は困難である場合がある。一般的には、重量平均分子量は、200~200万、200~1万、又は200~5000程度である。
【0045】
[樹脂の製造方法]
前記樹脂は、少なくとも、フェノールスルホン酸類をモノマーとして、ホルムアルデヒド類とを重合して合成することができる。本発明では、前記フェノールスルホン酸類の少なくとも一種として、メタ位にスルホン酸を有するフェノールスルホン酸類を用いる。
【0046】
<モノマー>
メタ-フェノールスルホン酸は、例えば、3-アミノベンゼンスルホン酸(3-Aminobenzenesulfonic acid)から、文献(Russian Journal of General Chemistry, 2003, 73, 1095-1099)を参照し、合成することができる。具体的には、後記実施例を参照することができる。すなわち、3-アミノベンゼンスルホン酸のアミノ基を水酸基に置換することにより、メタ-フェノールスルホン酸金属塩を合成することができる。また、得られたメタ-フェノールスルホン酸又はその金属塩から、公知の合成方法により、メタ-フェノールスルホン酸誘導体を合成することができる。
メタ-フェノールスルホン酸類以外のフェノールスルホン酸類(パラ-フェノールスルホン酸、パラ-フェノールスルホン酸誘導体等を含む)、及び他のモノマー(フェノール、フェノール誘導体等を含む)は、公知の合成方法により合成したもの、及び市販のものを使用することができる。
【0047】
モノマーとして用いられるフェノールスルホン酸類は、金属塩(スルホン酸基が金属と塩を形成している金属塩)であってもよいし、フリーのスルホン酸基を有するものであってもよい。後者のモノマーは、例えば、金属塩を、イオン交換等によりフリーのスルホン酸に変換して調製することができる。
【0048】
具体的には、水素型陽イオン交換樹脂を充填したカラムに、フェノールスルホン酸又はその誘導体の金属塩溶液を通過させる方法等が採用できる。陽イオン交換樹脂は、強酸性陽イオン交換樹脂であっても、弱酸性陽イオン交換樹脂であってもよいが、スルホン酸基の生成率の向上の観点から、強酸性陽イオン交換樹脂が好ましい。強酸性陽イオン交換樹脂としては、重合系のスチレンに少量のジビニルベンゼンを共重合させて三次元網目構造をつくり、これにスルホン酸基(-SO3H)等の強酸性基を導入した多孔質タイプ(MR形)の陽イオン交換樹脂が挙げられる。強酸性陽イオン交換樹脂として、限定されないが、例えば、アンバーリスト(登録商標)16wet(SIGMA-ALDRICH)、ダイヤイオン(登録商標)PKシリーズ(三菱ケミカル)等が挙げられる。
【0049】
フェノールスルホン酸又はその誘導体、及びその金属塩の構造は、公知の分析方法、例えば、NMR等によって確認することができる。
【0050】
モノマーとして用いられる金属塩の例には、ナトリウム、リチウム、カリウム、ルビジウム、セシウム等のアルカリ金属の塩、ベリリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム等のアルカリ土類金属の塩が含まれる。これらの内、アルカリ金属塩が好ましく、ナトリウム塩がより好ましい。
【0051】
前記ホルムアルデヒド類は、フェノールスルホン酸類と重合し、フェノールスルホン酸類-ホルムアルデヒド共重合体を生成するためのホルムアルデヒド供給源となるものであれば限定されない。
ホルムアルデヒド類の例には、ホルムアルデヒド、パラホルムアルデヒド、ホルムアルデヒド水溶液(ホルマリン)等が挙げられる。ホルムアルデヒド類は、公知の合成方法により合成したもの、及び市販のものを使用することができる。
【0052】
<重合方法>
フェノールスルホン酸類と、ホルムアルデヒド類とを重合させて、本発明の樹脂を調製する方法として、1)酸触媒を用いる酸触媒法(Acidic method)、及び2)塩基性触媒を用いる塩基触媒法(Basic method)のいずれも利用することができる。
各方法について、以下に説明する。
【0053】
前記1)酸触媒法に用いられる酸触媒は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。前記酸触媒としては、例えば、通常のフェノール樹脂の合成に用いられる、硫酸、塩酸、リン酸等の無機酸類、シュウ酸、酢酸、クエン酸、酒石酸、安息香酸、パラトルエンスルホン酸等の有機酸類、酢酸亜鉛、ホウ酸亜鉛等の有機酸塩類等が挙げられる。なお、これらの酸触媒は1種を使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの内、硫酸は、安価に入手できる観点で好ましく使用できる。また、モノマーとして利用されるフェノールスルホン酸類が、酸触媒として作用する態様では、別途、酸触媒を添加することなく重合反応を進行させることができる。
【0054】
上記酸触媒の使用量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、フェノールスルホン酸又はその誘導体の金属塩と酸触媒のモル比として、通常1:0.001~1:1、好ましくは1:0.01~1:0.1の範囲である。反応を十分に行うことができる観点から1:0.001以上が好ましく、酸分解やゲル化を回避する観点から1:1以下が好ましい。
【0055】
前記2)塩基触媒法に利用可能な塩基性触媒は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。前記塩基性触媒としては、例えば、アルカリ金属の水酸化物、アルカリ土類金属の水酸化物、第1級アミン、第2級アミン及び第3級アミン等を用いることができる。前記アルカリ金属の水酸化物としては、例えば、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等が挙げられる。前記アルカリ土類金属の水酸化物としては、例えば、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化バリウム等が挙げられる。前記第1級アミンとしては、例えば、アンモニア、モノエタノールアミン等が挙げられる。前記第2級アミンとしては、例えば、ジエタノールアミン等が挙げられる。前記第3級アミンとしては、例えば、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリエタノールアミン、ジアザビシクロウンデセン等が挙げられる。なお、これら塩基性触媒は1種を使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの内、水酸化ナトリウムは、安価に入手できる観点で好ましく使用できる。
【0056】
上記塩基性触媒の使用量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、フェノールスルホン酸又はその誘導体の金属塩と塩基性触媒のモル比として、通常1:0.01~1:1、好ましくは1:0.1~1:0.5の範囲である。反応を十分に行うことができる観点から1:0.01以上が好ましく、加水分解を抑制する観点から1:1以下が好ましい。
【0057】
重合は、従来のフェノール樹脂の合成方法(例えば、非特許文献1~3等に記載のパラ-フェノールスルホン酸とホルムアルデヒドの重合)を参照して行うことができる。
具体的には、フェノールスルホン酸類、ホルムアルデヒド類、並びに所望により、他のモノマー類(例えば、フェノール又はフェノール誘導体(スルホン酸基以外の置換基を有するフェノール類を意味する)、及び/又は前記酸触媒もしくは塩基性触媒を混合した重合反応系を調製し、所望により加熱して重合反応を進行させる。重合反応は、反応効率の向上のため、攪拌翼、スターラー、ホモミキサー等による攪拌下行うことが好ましい。
【0058】
重合反応系の溶媒としては、重合反応を妨げない溶媒であれば、特に限定されず、例えば、水、メタノール、エタノール、n-ブタノール、t-ブタノール等炭素数が1~4のアルコールが挙げられ、このうち、水が好ましい。また、これらの混合液を用いることもできる。
【0059】
高い収率で樹脂を得る観点から、フェノールスルホン酸類(スルホン酸を有しないフェノール類も共重合する態様では、当該フェノール類のモル比も合算する)と、ホルムアルデヒド類との反応割合(モル比)は、通常1:0.3~1:10、好ましくは1:1~1:5の範囲である。本発明に係る樹脂の一態様は、フェノールスルホン酸類(スルホン酸を有しないフェノール類も共重合する態様では、当該フェノール類のモル比も合算する)、及びホルムアルデヒド類のそれぞれのモル仕込み量n1及びn2が、n1≦n2の態様である。より好ましい態様は、n1<n2である。また、他の態様は、0.5<n2/n1<5、1<n2/n1<3、又は1.5<n2/n1<3である。
【0060】
上記重合工程の反応温度としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、50~200℃が好ましく、100~150℃がより好ましい。反応を効率よく行う観点から、反応温度は50℃以上が好ましく、樹脂の分解を回避する観点から200℃以下が好ましい。
【0061】
前記重合工程の反応時間としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、0.5~100時間が好ましく、1~72時間がより好ましい。高い収率で樹脂を得る観点から、反応時間は0.5時間以上が好ましく、十分な収率で樹脂を得る観点から100時間以下が好ましい。
【0062】
前記重合反応の工程では、フェノールスルホン酸類へのホルムアルデヒド類の付加反応及び縮合反応により、高分子量化・三次元架橋構造化が進行する。付加反応及び縮合反応は、用いる触媒種等によって、協奏的に同時進行する場合があり、また主位的・副位的、ないし先行的・後行的に進行する場合がある。例えば、反応温度を変化させて(具体的には前半は比較的低温100℃未満、後半は比較的高温100℃以上に変化させて)、いずれかの反応が支配的になるように重合反応を調整してもよい。
【0063】
重合反応後、所望により、公知の単離・精製方法、例えば、沈殿、中和、濾過、抽出等の一般的な操作によって単離・精製することができる。例えば、上記重合によって得られた樹脂が、構造中のスルホン酸基が金属イオンと塩を形成した金属塩として得られる場合は、スルホン酸基をフリーの酸とするための処理を施すのが好ましい。当該処理の例には、イオン交換が挙げられる。イオン交換は従前公知の方法を参照して実施することができる。また、所望により、粉砕処理等を行った後に、触媒として利用してもよい。
【0064】
[触媒組成物の用途]
本発明の触媒組成物は、種々の反応に利用可能である。本発明の触媒組成物の一実施形態は、利用される前記樹脂が、三次元架橋構造を有する固体触媒であり、耐薬品性、耐熱性、難燃性、機械的特性(高強度・高高度)に優れ、種々の反応の触媒として利用可能である。前記樹脂はスルホン酸基を有するので、酸触媒が作用する反応に適する。また、前記樹脂は、親水性のスルホン酸基を有するので、副生成物として水、及び親水性物質(アルコール等)が生じる反応に利用すると、副生成物を除去しなくても、反応の進行が停滞しないので好ましい。
【0065】
本発明の触媒組成物の一実施形態は、エステル化反応に利用される形態である。具体的には、前記実施形態は、本発明の触媒組成物を、アルコールとカルボン酸とからカルボン酸エステルを生成する反応に用いる形態である。カルボン酸エステルは、各種用途に用いられる重要な化合物である。カルボン酸エステルは、乳化剤、燃料、滑沢剤、可塑剤等に用いられ、また、アルキル樹脂の産業的生産にも用いられる。したがって、カルボン酸とアルコールとのエステル化反応は、化学合成及び工業化学の両方において最も重要な化学変換の内の一つである。このエステル化反応は、平衡脱水反応であり、副産物として当量の水の生成を伴う。従来のエステル化方法は、水の除去工程に高いエネルギー投入を必要としていた。本発明の触媒組成物を用いることにより、水の除去作業に費やしていたエネルギーを軽減することかでき、生産性を改善することができる。
【0066】
本発明の触媒組成物の他の実施形態は、アルコールとカルボン酸エステルのエステル交換(トランスエステル化)反応に利用される態様である。この態様によっても、上記と同様の効果が得られる。
【0067】
本発明の触媒組成物は、前記樹脂以外に、必要に応じて、増粘剤、補強材、添加剤等を含んでいてもよい。
【0068】
本発明のさらなる一形態は、カルボン酸とアルコールを、本発明の触媒組成物の存在下で反応させ、エステル化反応させる工程、を含む、カルボン酸エステルの製造方法に関する。また、本発明のさらなる一形態は、カルボン酸エステルとアルコールを、本発明の触媒組成物の存在下で反応させ、エステル交換反応させる工程、を含む、カルボン酸エステルの製造方法に関する(以下、これらの方法を「本発明のカルボン酸エステルの製造方法」とも言う)。
【0069】
上記エステル化反応又はエステル交換反応工程においては、本発明の触媒組成物と、カルボン酸及びカルボン酸エステルの溶液又は懸濁液、及びアルコールとの接触を可能にする形態で、本発明の触媒組成物を使用することができる。例えば、本発明の触媒組成物はベッド又はカラムの形としてもよい。
【0070】
本発明のカルボン酸エステルの製造方法に用いられるカルボン酸としては、特に限定されないが、1以上のカルボキシ基を有する炭素数1~30、好ましくは1~18の直鎖又は分岐鎖の脂肪族鎖(例えば、C2~C4の低級、C5~C12の中級及びC13以上の高級脂肪族鎖のいずれも含む)又は芳香環を有する脂肪族カルボン酸又は芳香族カルボン酸が挙げられる。具体的には、例えば、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、エナント酸、カプリル酸、ペラルゴン酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、ステアリン酸等の飽和脂肪酸、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、チグリン酸、オレイン酸、リノール酸、エイコサジエン酸、リノレン酸等の不飽和脂肪酸等の脂肪族モノカルボン酸;安息香酸、サリチル酸等の芳香族モノカルボン酸;シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン二酸等の脂肪族ジカルボン酸、フマル酸、マレイン酸、フタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸等の芳香族ジカルボン酸等が挙げられる。これらのカルボン酸は適宜、アルキル、アルケニル、シクロアルキル、アリール、アルコキシ、ニトロ、シアノ、ハロゲン等の置換基を有していてもよい。なお、これらカルボン酸は1種を使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0071】
本発明のカルボン酸エステルの製造方法に用いられるアルコールとしては、特に限定されないが、例えば、炭素数1~22、好ましくは炭素数1~12の直鎖又は分岐鎖を有する1価アルコール又は多価アルコールを用いることができる。アルコールとしては、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、ヘプタノール、オクタノール、デカノール、ウンデカノール、ドデカノール等の直鎖又は分岐鎖の脂肪族一価アルコール;シクロヘキサノール、シクロドデカノール、2-エチル-1-ヘキサノール等の脂環式一価アルコール;ベンジルアルコール等の芳香族一価アルコール;グリセリン、エチレングリコール、プロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン等の多価アルコール;が挙げられる。これらのアルコールは1級アルコール、2級アルコール又は3級アルコールであってよい。これらのアルコールは適宜、アルキル、アルケニル、シクロアルキル、アリール、アルコキシ、ニトロ、シアノ、ハロゲン等の置換基を有していてもよい。なお、これらアルコールは1種を使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0072】
本発明のカルボン酸エステルの製造方法に用いられるカルボン酸エステルとしては、特に限定されないが、例えば、上記で例示した炭素数1~30、好ましくは炭素数1~18の直鎖又は分岐鎖の脂肪族鎖又は芳香環を有する脂肪族カルボン酸又は芳香族カルボン酸と、上記で例示した炭素数1~22、好ましくは炭素数1~12の直鎖又は分岐鎖を有する1価アルコール又は多価アルコールとのエステル又は部分エステルを用いることができる。なお、これらカルボン酸エステルは1種を使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0073】
上記製造方法に使用されるカルボン酸、アルコール、及びカルボン酸エステルは、公知の合成方法により合成したもの、及び市販のものを使用することができる。
【0074】
エステル化反応及びエステル交換反応は、従来のパラ-フェノールスルホン酸とホルムアルデヒドの重合体からなる樹脂によるエステル化反応及びエステル交換反応(例えば、非特許文献1~3等に記載のパラ-フェノールスルホン酸樹脂によるエステル化反応及びエステル交換反応)を参照して行うことができる。
高い収率で樹脂を得る観点から、カルボン酸又はカルボン酸エステルとアルコールとの反応割合(モル比)は、通常1:10~10:1、好ましくは1:1~1:3の範囲である。
【0075】
上記触媒組成物の使用量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、カルボン酸又はカルボン酸エステルと触媒のモル比として、通常1:0.001~1:1、好ましくは1:0.01~1:0.1の範囲である。反応を十分に行うことができる観点から1:0.001以上、1:1以下が好ましい。
【0076】
反応温度は、反応液の組成や触媒の耐熱温度等を考慮して適宜選定することができるが、通常50~130℃である。反応温度は高いほど反応速度が速く効率的に反応が実施でき、低いほど樹脂の劣化速度が遅くなり、反応を長時間連続的に実施できる。
【0077】
上記エステル化反応及びエステル交換反応は、溶媒を特に使用する必要はないが、必要に応じ使用することもできる。使用可能な溶媒は、反応基質と均一相をなすものが適しており、例えば、炭化水素、エーテル、エステル、アルコール等を用いることができる。
【0078】
エステル化反応後、所望により、公知の単離・精製方法、例えば、濾過、濃縮、抽出、蒸留、昇華、再結晶、カラムクロマトグラフィー等の一般的な操作によって単離・精製することができる。
【0079】
上記のとおり、本発明の触媒組成物は触媒活性が高い触媒である。ここで、触媒活性が高いとは、限定されないが、例えば、収率が70%以上、80%以上、85%以上である。収率は、公知の方法、例えば後記実施例に記載の方法で求めることができる。
【0080】
また、上記触媒組成物は、濾過及び洗浄等の公知の方法によって反応混合物から容易に分離され、再利用することができる。本発明の触媒は再利用性が高い触媒である。ここで、再利用性が高いとは、限定されないが、例えば、3回再利用の活性が初回利用の活性に対して、85%以上、90%以上、95%以上、99%以上、95%以上である。再利用性は、公知の方法、例えば後記実施例に記載の方法で求めることができる。
【0081】
本発明は、本発明の触媒組成物が充填された反応容器と、前記反応容器に反応原料を供給するための1以上の供給口と、反応容器から反応生成物を取り出す1以上の排出口とを少なくとも備える反応装置にも関する。本発明の反応装置をエステル合成に利用する態様では、同一又は異なる供給口からカルボン酸又はカルボン酸エステル及びアルコールを反応容器中に供給し、排出口から生成したカルボン酸エステルを排出して、収集する。別途、副生成物を排出するための排出口を設けてもよい。反応容器の形状については特に制限はなく、円筒形のカラム形状等があげられる。前記反応装置は、さらに反応容器を所定の温度に加熱する加熱装置等を備えていてもよい。
【0082】
本発明の触媒組成物、製造方法、及び反応装置のそれぞれは、バッチ方式の反応系に用いることもできるし、フロー方式の反応系に用いることもできる。収率又は反応効率の観点では、後者の態様が好ましい。
【実施例】
【0083】
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明する。ただし、本発明は以下の実施例の態様に限定されない。
【0084】
<SEM/EDS分析>
SEM(Scanning Electron Microscope)分析はTM 3030 Plus(株式会社日立ハイテクノロジーズ)を用いて行い、SEMに装着した分析装置によりEDS(Energy Dispersive X-ray Spectrometer)分析を行った。
【0085】
<元素分析>
元素の確認は、CHNコーダーMT-6(ヤナコ分析工業株式会社)及び、イオンクロマトグラフィーICS-1500(サーモフィッシャーサイエンティフィック株式会社)を用いて行った。
【0086】
<光学顕微鏡観察>
光学顕微鏡観察はSM2 1000(株式会社ニコン)を用いて行った。
【0087】
<FT-IR>
FT-IR(Fourier Transform Infrared Spectroscopy)分析はFT-IR-6200(日本分光株式会社)を用いて行った。
【0088】
<p-フェノールスルホン酸樹脂>
比較例の触媒に用いたp-フェノールスルホン酸樹脂は、非特許文献1~3に記載の方法により合成した。
【0089】
<m-フェノールスルホン酸類の準備>
1. m-フェノールスルホン酸ナトリウムの合成
m-フェノールスルホン酸ナトリウムを、文献(Russian Journal of General Chemistry, 2003, 73, 1095-1099)に基づき、合成した。具体的には以下のようにして行った。
【0090】
1-1 試薬
下記表に示す試薬を用いた。
【0091】
【0092】
1-2 実験方法
100mL なす型フラスコに3-Aminobenzenesulfonic acid 1.733 g (10 mmol)、超純水20 mLを加え、撹拌子とスターラーを用いて撹拌した(500 rpm)。 続いて40 wt%の水酸化ナトリウム水溶液を加え、反応溶液pHを7.5~8.5とした。その後反応溶液を5~10 ℃まで冷却した後に30 wt%亜硝酸ナトリウム水溶液1.61 mL(10.15 mmol)を加えた。次に反応溶液を15~18 ℃まで昇温し、反応溶液がpH<3になるまで30 wt%硫酸水溶液を加えた。30分間室温で撹拌した後、アミド硫酸48.5mg(0.5 mmol)を加えオイルバスを用いて65 ℃まで昇温し18時間反応させた。反応後溶液を室温で30分間放冷した。続いて反応溶液のpHが7になるまで炭酸バリウムを用いて中和した。その後桐山ロート、保留粒子1ミクロンのろ紙(No.4)を用いて吸引ろ過を行い、ろ液を200 mLなす型フラスコで受けた。この溶液を凍結乾燥機で乾燥させ、オレンジ色の固体を得た。
【0093】
1-3 後処理
200 mLなす型フラスコ内で得られた固体にエタノール150 mLを加え、60分間超音波機を用いて目的物を溶解させた。その後吸引ろ過でろ液を得た。このろ液をロータリーエバポレーターを用いて溶媒を取り除いた後、一昼夜真空乾燥させ、オレンジ色の目的生成物を得た。収率は66.9%(理論収率:1.96 g, 実験収率:1.31 g)であった。得られた生成物について、FT-IR及びNMRにより構造を分析した。その結果、m-フェノールスルホン酸ナトリウムの構造が確認された。
【0094】
2. m-フェノールスルホン酸の調製
上記で得られたm-フェノールスルホン酸金属塩を陽イオン交換し、m-フェノールスルホン酸を調製した。具体的に以下の方法により、m-フェノールスルホン酸を調製した。
【0095】
Amberlyst@16wet(イオン交換樹脂ビーズ)16.4 gを100 mLビーカーに入れ、超純水50 mLを加えた後、約20時間室温に置いた。その後一度超純水で洗浄した後、クロマト管に移しさらに10 mLの超純水で洗浄し、樹脂ビーズ上部が浸るところまで超純水で満たした。一方m-フェノールスルホン酸ナトリウム400 mg(2.03 mmol)は超音波機を用いて0.5 mL超純水に溶解させられた。溶解したm-フェノールスルホン酸ナトリウムを樹脂塔へゆっくりと滴下した。続いて超純水を加えながらクロマト管のコックを開け、溶液のpHが中性になるまで試験管で溶液を受けた。得られた溶液約30 mLを50 mLなす型フラスコに移し、15時間凍結乾燥した後、濃いオレンジ色の粘性液体を生成物として得た。収率は97.06 %(理論収率:353.6 mg, 実験収率:343.2 mg)であった。
【0096】
<実施例1>
フェノールスルホン酸類としてm-フェノールスルホン酸、及びホルムアルデヒド類としてホルムアルデヒド液を用いてm-フェノールスルホン酸樹脂を得た。なお、モノマーであるm-フェノールスルホン酸自体を酸触媒として作用させたので、触媒は別途添加しなかった。
【0097】
【0098】
上記で得られたm-フェノールスルホン酸100 mg(0.578 mmol)を試験管に加え、続いて超純水0.28 mL、上記表2に記載のホルムアルデヒド液95.9 mg(1.1 mmol)をそれぞれ加え、試験管上部にコットンを詰めた。この溶液をchemistation(EYELA社製)を用いて120 ℃、1000 rpmの条件下で72時間反応させた。反応後黒色の固体が生成物として得られた。
【0099】
上記で得られた試験管中の固体に4 mLのメタノールを加え、その後桐山ロート、保留粒子1ミクロンのろ紙(No,4)を用いて吸引ろ過を行った。その際、生成物を超純水、メタノール及びアセトンで洗浄した。最後に生成物を24時間真空乾燥させ、乳鉢で粉砕し目的物(実施例1の樹脂)を得た。収量は100.1 mgであった。得られた実施例1の樹脂について分析した。実施例1の樹脂のSEM/EDS分析結果を
図1に、光学顕微鏡観察結果を
図6に、元素分析結果を
図7に、FT-IR分析結果を
図8に示す。
【0100】
<実施例2>
m-フェノールスルホン酸金属塩をフェノールスルホン酸類として、下記表3に記載の硫酸を酸触媒に用いて、ホルムアルデヒド類としてパラホルムアルデヒドと重合させ、m-フェノールスルホン酸樹脂を得た。具体的には以下のようにして行った。
【0101】
【0102】
キャップ付き試験管に、上記で合成したm-フェノールスルホン酸ナトリウム98.25 mg(0.5 mmol)、上記表3に記載のパラホルムアルデヒド30.0 mgを加えた。続いて2 M 硫酸水溶液を0.25 mL加え、chemistationとスターラーを用いて120 ℃、500 rpmの条件下で24時間反応を行った。24時間後、黒色の目的物を得た。
【0103】
上記反応後の試験管中の固体に4 mLのメタノールを加え、その後桐山ロート、保留粒子1ミクロンのろ紙(No.4)を用いて吸引ろ過を行った。その際、生成物を超純水、5 wt%塩酸水溶液(上記表3に記載)、メタノール及びアセトンで洗浄した。最後に生成物を24時間真空乾燥させ、乳鉢で粉砕し目的物(実施例2の樹脂)を得た。収量は96.5 mgであった。得られた実施例2の樹脂について分析した。実施例2の樹脂のSEM/EDS分析結果を
図2に、光学顕微鏡観察結果を
図6に、元素分析結果を
図7に、FT-IR分析結果を
図9に示す。
【0104】
<実施例3>
m-フェノールスルホン酸金属塩をフェノールスルホン酸類として、塩基性触媒として水酸化ナトリウムを用いて、ホルムアルデヒド類としてパラホルムアルデヒドと重合させ、m-フェノールスルホン酸樹脂を得た。具体的には以下のようにして行った。
【0105】
【0106】
キャップ付き試験管に、上記で合成したm-フェノールスルホン酸ナトリウム225.9 mg(1.15 mmol)、上記表4に記載のパラホルムアルデヒド76.6 mgを加えた。次に超純水0.112 mL加え完全に溶解させた。その後、上記表4に記載の40 wt%に調製した水酸化ナトリウム水溶液を20.3 mg加え試験管にキャップをした。この溶液をChemistationを用いて65 ℃、800 rpmで撹拌しながら1時間反応を行った。反応後にさらに、上記表4に記載の40 wt%水酸化ナトリウム水溶液を11μL、上記表4に記載のアンモニア水を7μL加え、Chemistationを用いて100 ℃、800 rpmで撹拌しながら20時間反応を行った。反応後、生成物を超純水、イソプロパノールで洗浄した。最後に生成物を24時間真空乾燥させ、乳鉢で粉砕し目的物を得た。
【0107】
上記で得られた固体を円筒状のろ過装置に充填し、その上から、上記表4に記載の7.5 wt%塩酸水溶液を注ぎイオン交換を行った。その後触媒は超純水で洗浄後の溶液のpHが7になるまで洗浄された。
【0108】
上記で得られた固体はイソプロパノールで洗浄したのち24時間真空乾燥させ、乳鉢で粉砕し目的物(実施例3の樹脂)を得た。収量は248.3 mgであった。実施例3の樹脂について分析した。実施例3の樹脂のSEM/EDS分析結果を
図3に、光学顕微鏡観察結果を
図6に、元素分析結果を
図7に、FT-IR分析結果を
図10に示す。
【0109】
<実施例4>
m-フェノールスルホン酸ナトリウム塩と、p-フェノールスルホン酸との混合物をフェノールスルホン酸類として、塩基性触媒として水酸化ナトリウム及びアンモニア水を用いて、ホルムアルデヒド類として、パラホルムアルデヒドと重合させ、m-フェノールスルホン酸-p-フェノールスルホン酸樹脂を得た。具体的には以下のようにして行った。
【0110】
【0111】
キャップ付き試験管に、上記で合成したm-フェノールスルホン酸ナトリウム180.8 mg(0.92 mmol)、上記表5に記載のp-フェノールスルホン酸47.1 mg(0.23 mmol)、上記表5に記載のパラホルムアルデヒド76.6 mgを加えた。次に超純水0.112 mL加え完全に溶解させた。その後、上記表5に記載の40 wt%に調製した水酸化ナトリウム水溶液を20.3 mg加え試験管にキャップをした。この溶液をChemistationを用いて65 ℃、800 rpmで撹拌しながら1時間反応を行った。反応後にさらに、上記表5に記載の40 wt%水酸化ナトリウム水溶液を11μL、上記表5に記載のアンモニア水を7μL加え、Chemistationを用いて100℃、800 rpmで撹拌しながら20時間反応を行った。反応後、生成物を超純水、イソプロパノールで洗浄した。
実施例3の樹脂と同様にして、イオン交換し、イソプロパノールで洗浄したのち、最後に生成物を24時間真空乾燥させ、乳鉢で粉砕し目的物(実施例4の樹脂)を得た。収量は251.0 mgであった。得られた実施例4の樹脂について分析した。実施例4の樹脂のSEM/EDS分析結果を
図4に、光学顕微鏡観察結果を
図6に、元素分析結果を
図7に、FT-IR分析結果を
図11に示す。
【0112】
<実施例5>
上記で合成したm-フェノールスルホン酸ナトリウム塩とフェノールとの混合物をフェノールスルホン酸類として、塩基性触媒として水酸化ナトリウム及びアンモニア水を用いて、ホルムアルデヒド類としてパラホルムアルデヒドと重合させ、m-フェノールスルホン酸-フェノール樹脂を得た。具体的には以下のようにして行った。
【0113】
キャップ付き試験管に、上記で合成したm-フェノールスルホン酸ナトリウム180.8 mg(0.92 mmol)、フェノール21.6 mg(0.23 mmol)、上記表5に記載のパラホルムアルデヒド76.6 mgを加えた。次に超純水0.112 mL加え完全に溶解させた。その後、上記表5に記載の40 wt%に調製した水酸化ナトリウム水溶液を20.3 mg加え試験管にキャップをした。この溶液をChemistationを用いて65 ℃、800 rpmで撹拌しながら1時間反応を行った。反応後にさらに、上記表5に記載の40 wt%水酸化ナトリウム水溶液を11μL、上記表5に記載のアンモニア水を7μL加え、Chemistationを用いて100 ℃、800 rpmで撹拌しながら20時間反応を行った。反応後、生成物を超純水、イソプロパノールで洗浄した。
実施例3の樹脂と同様にして、イオン交換し、イソプロパノールで洗浄したのち最後に生成物を24時間真空乾燥させ、乳鉢で粉砕し目的物(実施例5の樹脂)を得た。収量は224.8 mgであった。得られた実施例5の樹脂について分析した。実施例5の樹脂のSEM/EDS分析結果を
図5に、光学顕微鏡観察結果を
図6に、元素分析結果を
図7に、FT-IR分析結果を
図12に示す。
【0114】
<実施例6>
6. 固体酸触媒を用いたアクリル酸メチルの合成
固体酸触媒(m-フェノールスルホン酸樹脂(実施例1~3の樹脂)、meta-para-フェノールスルホン酸樹脂(実施例4の樹脂)、m-フェノールスルホン酸-フェノール樹脂(実施例5の樹脂)を用いて、アクリル酸メチルを合成した。具体的には以下のようにして行った。
【0115】
6-1 試薬
下記表に示す試薬を用いた。
【0116】
【0117】
6-2 実験方法
キャップ付き試験管に固体酸触媒を加え、続いてアクリル酸216.2 mg(3.0 mmol)、脱水メタノール192.2 mg(6.0 mmol)を加えキャップとシールテープを装着した。この溶液をchemistationを用いて90 ℃、300 rpmの条件下で15時間反応を行った(6-4-6のみオイルバスを用いて実験を行った)。触媒の導入量は触媒の活性点である硫黄原子がアクリル酸に対して0.5 mol%になるようにした。
【0118】
6-3 アクリル酸の定量方法
6-2の反応後、試験管を室温で30分間放冷した。その後内部標準物質ジエチレングリコールジエチルエーテルを加えジエチルエーテル4 mLで希釈した後よく撹拌した。この溶液を0.1 mL取り出し、0.4 mLのジエチルエーテルで希釈した。続いてシリンジで溶液を1μL取り出し、GC-FID(Agilent社製 6850シリーズ)を用いて測定を行った。測定カラムはDB-624UI(Agilent社製)を用いた。
【0119】
6-4 実験結果
6-4-1 酸触媒を用いたm-フェノールスルホン酸樹脂(実施例1の樹脂)による実験結果
アクリル酸メチルの収率は、次のようにして算出した。
アクリル酸メチル収率(%)=(生成したアクリル酸メチルのモル数)/(供給したアクリル酸のモル数)×100
アクリル酸メチルGC収率:87.9%
アクリル酸回収率:14.4%
(アクリル酸メチルGC収率) : (アクリル酸回収率)= 85.9 : 14.1
【0120】
6-4-2酸触媒を用いたm-フェノールスルホン酸樹脂(実施例2の樹脂)による実験結果
アクリル酸メチルGC収率:84.1%
アクリル酸回収率:14.2%
(アクリル酸メチルGC収率) : (アクリル酸回収率)= 85.6 : 14.4
【0121】
6-4-3塩基性触媒を用いたm-フェノールスルホン酸樹脂の合成(実施例3の樹脂)
アクリル酸メチルGC収率:89.2%
アクリル酸回収率:14.9%
(アクリル酸メチルGC収率) : (アクリル酸回収率)= 85.7 : 14.3
【0122】
6-4-4 m-para copolymer(実施例4の樹脂)による実験結果
アクリル酸メチルGC収率:89.1%
アクリル酸回収率:14.9%
(アクリル酸メチルGC収率) : (アクリル酸回収率)= 85.7 : 14.3
【0123】
6-4-5 m-phenol copolymer(実施例5の樹脂)による実験結果
アクリル酸メチルGC収率:87.6%
アクリル酸回収率:17.4%
(アクリル酸メチルGC収率) : (アクリル酸回収率)= 83.4 : 16.6
【0124】
6-4-6 p-フェノールスルホン酸樹脂による実験結果(比較例)
アクリル酸メチルGC収率:77.1%
アクリル酸回収率:16.2%
(アクリル酸メチルGC収率) : (アクリル酸回収率)= 82.6 : 17.4
【0125】
本発明の触媒は、従来(比較例)の触媒(p-フェノールスルホン酸樹脂)と比較しても高い活性を示した。
【0126】
<実施例7>
7. 再利用実験
実施例1~3及び比較例の触媒を用いて、6-2で行った実験の繰り返し実験が行われた。
【0127】
7-1 実験方法
6-2の実験後試験管内に4 mLメタノールを加え、穴径0.2μmのメンブレンフィルター(メルク社製)で回収した。回収した固体酸触媒はメタノールとアセトンで洗浄し、24時間真空乾燥を行ったのち、次の実験へ利用した。
7-2. 実験結果
結果を
図13~16に示す。
図13~
図15に示す通り、本発明の実施例の触媒は、10回再利用後においても、高い活性を維持していた。これに対し、
図16に示す通り、比較例の触媒(p-フェノールスルホン酸樹脂)は3回再利用後において活性が顕著に低下した。
【0128】
<実施例8>
m-フェノールスルホン酸金属塩と、フェノールとの混合物をフェノールスルホン酸類として、下記表7に記載の硫酸を酸触媒に用いて、ホルムアルデヒド類としてパラホルムアルデヒドと重合させ、m-フェノールスルホン酸-フェノール樹脂を得た。具体的には以下のようにして行った。
【0129】
【0130】
キャップ付き試験管に、上記で合成したm-フェノールスルホン酸ナトリウム88.3 mg(0.45 mmol)、フェノール4.7 mg(0.05 mmol)、上記表7に記載のパラホルムアルデヒド50.6 mgを加えた。次に、4 M 硫酸水溶液を0.25 mLを加え試験管にキャップをした。この溶液をChemistationを用いて120 ℃、300 rpmで撹拌しながら7日間反応を行った。
【0131】
上記反応で得られた試験管中の固体に4 mLのメタノールを加え、保留粒子0.2 μmのメンブレンフィルターを用いて吸引ろ過を行った。その際、生成物を超純水、7.5 wt% 塩酸水溶液、メタノール及びイソプロパノールで洗浄した。最後に生成物を24時間真空乾燥させ、乳鉢で粉砕し目的物(実施例8の樹脂)を得た。収量は88.9 mgであった。実施例1等と同様に、FT-IR及び元素分析により、m-フェノールスルホン酸-フェノール樹脂が得られたことを確認した。また、上記と同様に表面分析したところ、実施例1等の樹脂と同様に硫黄原子が樹脂表面に均一に分散した表面性状であった。
【0132】
<実施例9>
m-フェノールスルホン酸金属塩と、p-クレゾールとの混合物をフェノールスルホン酸類として、下記表8に記載の硫酸を酸触媒に用いて、ホルムアルデヒド類としてパラホルムアルデヒドと重合させ、m-フェノールスルホン酸-p-クレゾール樹脂を得た。具体的には以下のようにして行った。
【0133】
【0134】
キャップ付き試験管に、上記で合成したm-フェノールスルホン酸ナトリウム98.3 mg(0.5 mmol)、p-クレゾール54.0 mg(0.5 mmol)、パラホルムアルデヒド69.0 mgを加えた。次に、2 M 硫酸水溶液を0.5 mLを加え試験管にキャップをした。この溶液をChemistationを用いて120 ℃、300 rpmで撹拌しながら24時間反応を行なった。
【0135】
上記で得られた試験管中の固体8 mLのメタノールを加え、保留粒子0.2 μmのメンブレンフィルターを用いて吸引ろ過を行った。その際、生成物を超純水、7.5 wt% 塩酸水溶液、メタノール及びイソプロパノールで洗浄した。最後に生成物を24時間真空乾燥させ、乳鉢で粉砕し目的物(実施例9の樹脂)を得た。収量は121.6 mgであった。実施例1等と同様に、FT-IR及び元素分析により、m-フェノールスルホン酸-p-クレゾール樹脂が得られたことを確認した。また、上記と同様に表面分析したところ、実施例1等の樹脂と同様に硫黄原子が樹脂表面に均一に分散した表面性状であった。
【0136】
<実施例10>
m-フェノールスルホン酸金属塩と、4-ドデシルフェノールとの混合物をフェノールスルホン酸類として、下記表9に記載の硫酸を酸触媒に用いて、ホルムアルデヒド類としてパラホルムアルデヒドと重合させ、m-フェノールスルホン酸-4-ドデシルフェノール樹脂を得た。具体的には以下のようにして行った。
【0137】
【0138】
キャップ付き試験管に、上記で合成したm-フェノールスルホン酸ナトリウム98.3 mg(0.5 mmol)、4-ドデシルフェノール131.2 mg(0.5 mmol)、パラホルムアルデヒド68.9 mgを加えた。次に、2 M 硫酸水溶液を0.5 mLを加え試験管にキャップをした。この溶液をChemistationを用いて120 ℃、300 rpmで撹拌しながら24時間反応を行った。
【0139】
上記で得られた試験管中の固体に8 mLのメタノールを加え、保留粒子0.2 μmのメンブレンフィルターを用いて吸引ろ過を行った。その際、生成物を超純水、7.5 wt% 塩酸水溶液、メタノール及びイソプロパノールで洗浄した。最後に生成物を24時間真空乾燥させ、乳鉢で粉砕し目的物(実施例10の樹脂)を得た。収量は124.5 mgであった。実施例1等と同様に、FT-IR及び元素分析により、m-フェノールスルホン酸-4-ドデシルフェノール樹脂が得られたことを確認した。また、上記と同様に表面分析したところ、実施例1等の樹脂と同様に硫黄原子が樹脂表面に均一に分散した表面性状であった。
【0140】
<実施例11>
11. 固体酸触媒を用いたアクリル酸メチルの合成
固体酸触媒(m-フェノールスルホン酸-フェノール樹脂(実施例8の樹脂)、m-フェノールスルホン酸-p-クレゾール樹脂(実施例9の樹脂)、m-フェノールスルホン酸-4-ドデシルフェノール樹脂(実施例10の樹脂)を用いて、アクリル酸メチルを合成した。具体的には以下のようにして行った。
【0141】
11-1 試薬
下記表に示す試薬を用いた。
【0142】
【0143】
11-2 実験方法
キャップ付き試験管に各固体酸触媒を加え、続いてアクリル酸216.2 mg(3.0 mmol)、脱水メタノール192.2 mg(6.0 mmol)を加えキャップとシールテープを装着した。この溶液をchemistationを用いて90 ℃、300 rpmの条件下で15時間反応を行った。触媒の導入量は触媒の活性点である硫黄原子がアクリル酸に対して0.5 mol%になるようにした。
【0144】
11-3 アクリル酸及びアクリル酸メチルの定量方法
11-2の反応後、試験管を室温で30分間放冷した。その後内部標準物質ジエチレングリコールジエチルエーテルを加えジエチルエーテル4 mLで希釈した後よく撹拌した。この溶液を0.1 mL取り出し、0.4 mLのジエチルエーテルで希釈した。続いてシリンジで溶液を1 μL取り出し、GC-FID(Agilent社製 6850シリーズ)を用いて測定を行なった。測定カラムはDB-624UI(Agilent社製)を用いた。
【0145】
11-4 実験結果
11-4-1 酸触媒を用いたm-フェノールスルホン酸ナトリウムとフェノールとのcopolymer(実施例8の樹脂)による実験結果
アクリル酸メチルの収量の算出は、実施例6と同様とした。
アクリル酸メチルGC収率:77.4 %
アクリル酸回収率:13.4 %
(アクリル酸メチルGC収率) : (アクリル酸回収率)= 85.2 : 14.8
【0146】
11-4-2酸触媒を用いたm-フェノールスルホン酸ナトリウムとp-クレゾールとのcopolymer(実施例9の樹脂)による実験結果
アクリル酸メチルGC収率:81.4%
アクリル酸回収率:12.3%
(アクリル酸メチルGC収率) : (アクリル酸回収率)= 86.8 : 13.2
【0147】
11-4-3酸触媒を用いたm-フェノールスルホン酸ナトリウムと4-ドデシルフェノールとのcopolymer(実施例10の樹脂)による実験結果
アクリル酸メチルGC収率:82.6%
アクリル酸回収率:13.6%
(アクリル酸メチルGC収率) : (アクリル酸回収率)= 85.8 : 14.2
【0148】
本発明の触媒は、高い活性を示した。
【0149】
<実施例12>
12. 酸触媒を用いて製造したm-フェノールスルホン酸ポリマーによるアクリル酸メチルの連続フロー合成
実施例2で合成したm-フェノールスルホン酸樹脂を固体酸触媒として、アクリル酸メチルを連続フロー合成した。具体的には以下のようにして行った。
図17及び下記に示す装置を用いた。
【0150】
12-1実験装置
シリンジポンプ(YMC社製)
PTFEチューブ(1/16’’×1.00 mm)
触媒充填用カラム(Omnifit column 長さ10 cm、内径6.6 mm)
ヒーター及び温度調整ユニット(YMC社製)
背圧弁 (DFC社製)
【0151】
12-2 試薬
下記表に示す試薬を用いた。
【0152】
【0153】
12-3 固体酸の充填とコンディショニング
触媒充填用カラム(Omnifit column)に、実施例2の方法で調製した固体酸触媒を硫黄元素が1.1 mmolまたは2.2 mmolになるようにそれぞれ327 mg及び653 mg充填した。その後シリンジポンプとヒーターを用いてカラム内が90 ℃になるようにした上で、100 μL/minの流速でカラム内にメタノールを10 mL流した。
【0154】
12-4 実験方法
アクリル酸とメタノールのモル比が1:2になるように溶液を調製した。その後この溶液をシリンジに充填した。次に
図17に示した装置図のように装置及びカラムを接続し、カラム内部温度が90 ℃になるように調整した。前処理として反応溶液を100 μL/minで5 mL流した後に実験を開始した。
カラム内を通過した溶液は背圧弁を通った後、チューブの出口から氷浴で冷やされたバイアル瓶内に集められた。
【0155】
12-5アクリル酸及びアクリル酸メチルの定量方法
12-3の反応溶液の重量を測定後、内部標準物質ジエチレングリコールジエチルエーテルを加えた。その溶液2μLをジエチルエーテル500μLで希釈した後よく撹拌した。次にこの溶液を1 μL取り出し、GC-FID(Agilent社製 6850シリーズ)を用いて測定を行なった。測定カラムはDB-624UI(Agilent社製)を用いた。
【0156】
12-6実験結果
本発明の固体酸触媒を用いて、アクリル酸メチルが連続フロー合成により、効率よく合成された。触媒充填量327 mgの結果を下記表に示す。
【0157】
【0158】
<実施例13>
13. 連続フロー装置を用いた種々のアクリル酸系化合物とアルコールとのエステル化反応
実施例2で合成したm-フェノールスルホン酸樹脂を固体酸触媒として、種々のアクリル酸系化合物とアルコールとのエステルを連続フロー合成した。具体的には以下のようにして行った。
【0159】
13-1 試薬
下記表に示す試薬を用いた。
【0160】
【0161】
13-2実験装置
実験装置は12-1と同様の装置を用いた。また、触媒を充填したカラムも12-1と同様のものを用い、12-3の方法でコンディショニングを行った。
【0162】
13-3実験方法
カルボン酸(アクリル酸系化合物)とアルコールのモル比が1:2になるように溶液を調製した。その後この溶液をシリンジに充填した。次に
図17に示した装置図のように装置及びカラムを接続し、カラム内部温度が90 ℃になるように調整した。前処理として反応溶液を100 μL/minで5 mL流した後に実験を開始した。
カラム内を通過した溶液は背圧弁を通った後、チューブの出口から氷浴で冷やされたバイアル瓶内に集められた。
【0163】
13-4原料及び目的生成物の定量方法
13-3の反応溶液の重量を測定後、内部標準物質ジエチレングリコールジエチルエーテルを加えた。その溶液2μLをジエチルエーテル500μLで希釈した後よく撹拌した。次にこの溶液を1 μL取り出し、GC-FID(Agilent社製 6850シリーズ)を用いて測定を行なった。測定カラムはDB-624UI(Agilent社製)を用いた。
【0164】
13-5実験結果
13-5-1アクリル酸とエタノールのエステル化反応
触媒充填量:327 mg
反応溶液送液速度:25 μL/min
アクリル酸エチルGC収率:94.6%
アクリル酸回収率:1.0%
【0165】
13-5-2アクリル酸とn-ブタノールのエステル化反応
触媒充填量:327 mg
反応溶液送液速度:10 μL/min
アクリル酸ブチルGC収率:76.6%
アクリル酸回収率:16.8%
【0166】
13-5-3アクリル酸と2-エチル-1-ヘキサノールのエステル化反応
触媒充填量:653 mg
反応溶液送液速度:20 μL/min
アクリル酸2エチルヘキシルGC収率:74.4%
アクリル酸回収率:10.2%
【0167】
13-5-4アクリル酸とn-オクタノールのエステル化反応
触媒充填量:653 mg
反応溶液送液速度:50 μL/min
アクリル酸オクチルGC収率:53.2%
アクリル酸回収率:26.2%
【0168】
13-5-5メタクリル酸とメタノールのエステル化反応
触媒充填量:327 mg
反応溶液送液速度:25 μL/min
メタクリル酸メチルGC収率:95.4%
メタクリル酸回収率:2.4%
【0169】
13-5-6クロトン酸とメタノールのエステル化反応
触媒充填量:653 mg
反応溶液送液速度:20 μL/min
クロトン酸メチルGC収率:87.2%
クロトン酸回収率:0.8%
【0170】
13-5-7チグリン酸とメタノールのエステル化反応
触媒充填量:653 mg
反応溶液送液速度:20 μL/min
チグリン酸メチルGC収率:87.7%
チグリン酸回収率:12.3%
【0171】
本発明の固体酸触媒を用いて、種々のアクリル酸系化合物とアルコールとのエステルが効率よく合成された。
【0172】
<実施例14>
14. 連続フロー装置を用いた酢酸とn-オクタノールのエステル化反応
実施例2で合成したm-フェノールスルホン酸樹脂を固体酸触媒として、酢酸とn-オクタノールとのエステルを連続フロー合成した。具体的には以下のようにして行った。
【0173】
14-1 試薬
下記表に示す試薬を用いた。
【0174】
【0175】
14-2実験装置
実験装置は12-1と同様の装置を用いた。また、触媒を充填したカラムも12-1と同様のものを用い、12-3の方法でコンディショニングを行った。
【0176】
14-3実験方法
酢酸とn-オクタノールのモル比が2:1になるように溶液を調製した。その後この溶液をシリンジに充填した。次に
図17に示した装置図のように装置及びカラムを接続し、カラム内部温度が90 ℃になるように調整した。前処理として反応溶液を100 μL/minで5 mL流した後に実験を開始した。
カラム内を通過した溶液は背圧弁を通った後、チューブの出口から氷浴で冷やされたバイアル瓶内に集められた。
【0177】
14-4原料及び目的生成物の定量方法
14-3の反応溶液の重量を測定後、内部標準物質ジエチレングリコールジエチルエーテルを加えた。その溶液2 μLをジエチルエーテル500 μLで希釈した後よく撹拌した。次にこの溶液を1 μL取り出し、GC-FID(Agilent社製 6850シリーズ)を用いて測定を行なった。測定カラムはDB-624UI(Agilent社製)を用いた。
【0178】
14-5実験結果
結果を下記表に示す。
【0179】
【0180】
本発明の固体酸触媒を用いて、飽和脂肪族カルボン酸とアルコールとのエステルが合成された。
【0181】
<実施例15>
15. 連続フロー装置を用いたオレイン酸とメタノールのエステル化反応(バイオディーゼル燃料合成)
実施例2と同様にしてm-フェノールスルホン酸樹脂を合成した。但し具体的な条件は、以下の通りである。
【0182】
【0183】
得られたm-フェノールスルホン酸樹脂を固体酸触媒として、オレイン酸とメタノールとのエステルを連続フロー合成した。具体的には以下のようにして行った。
【0184】
15-1 試薬
下記表に示す試薬を用いた。
【0185】
【0186】
15-2実験装置
実験装置は12-1と同様の装置を用いた。また、触媒を充填したカラムも12-1と同様のものを用い、12-3の方法でコンディショニングを行った。
【0187】
15-3実験方法
オレイン酸とメタノールのモル比が1:5になるように溶液を調製した。その後この溶液をシリンジに充填した。次に
図17に示した装置図のように装置及びカラムを接続し、カラム内部温度が90 ℃になるように調整した。前処理として反応溶液を100 μL/minで5 mL流した後に実験を開始した。
カラム内を通過した溶液は背圧弁を通った後、チューブの出口から氷浴で冷やされたバイアル瓶内に集められた。
【0188】
15-4目的生成物の定量方法
フロー装置から流れてきた溶液を規定時間サンプリングした後、エーテルと水でメタノールと水を取り除いた。次にシリカカラムで目的物を単離し、収率を決定した。
【0189】
15-5実験結果
触媒充填量:653 mg
反応溶液送液速度:50 μL/min
オレイン酸メチル単離収率:92%
【0190】
本発明の固体酸触媒を用いて、バイオデーィーゼル燃料として有用なオレイン酸とメタノールとのエステルが合成された。
【産業上の利用可能性】
【0191】
本発明の触媒組成物及びメタ-フェノールスルホン酸系樹脂は、酸触媒として種々利用でき、例えば、エステル化反応触媒及びエステル交換反応触媒として好適に利用できる。