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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-12
(45)【発行日】2023-07-21
(54)【発明の名称】手袋
(51)【国際特許分類】
   A41D 19/00 20060101AFI20230713BHJP
   A41D 19/015 20060101ALI20230713BHJP
【FI】
A41D19/00 Z
A41D19/00 A
A41D19/015 610Z
【請求項の数】 29
(21)【出願番号】P 2022126005
(22)【出願日】2022-08-08
(65)【公開番号】P2022145790
(43)【公開日】2022-10-04
【審査請求日】2022-08-08
(73)【特許権者】
【識別番号】314000800
【氏名又は名称】株式会社無有
(74)【代理人】
【識別番号】100179327
【弁理士】
【氏名又は名称】大坂 憲正
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 博
【審査官】▲高▼辻 将人
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-165459(JP,A)
【文献】特開平09-279407(JP,A)
【文献】特開2017-210707(JP,A)
【文献】特開2021-185286(JP,A)
【文献】特開2021-152236(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A41D19/00-19/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
手に嵌められる袋状の本体と、
前記本体に固定され、指で摘むことが可能な摘み部材と、を備え、
前記摘み部材は、当該摘み部材が折り返された状態である折返状態と、当該摘み部材が折り返されていない状態である非折返状態とを切り替えられるように構成されており、
前記摘み部材は、前記折返状態のときに前記手と前記本体との間に隠れるとともに前記非折返状態のときに前記本体の裾口から当該本体の外部に食み出す露見部を有し、
前記摘み部材は、当該摘み部材に外力を加えることにより前記非折返状態から前記折返状態に切り替えられるとともに、前記手と前記本体との間に隙間が生じるように当該本体を引き上げて前記外力を取り除くと前記折返状態から前記非折返状態に自然に切り替わることを特徴とする手袋。
【請求項2】
請求項1に記載の手袋において、
前記折返状態のとき、前記摘み部材の全体が前記手と前記本体との間に隠れる手袋。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の手袋において、
前記摘み部材は、前記本体の内面に固定されている手袋。
【請求項4】
請求項1又は2に記載の手袋において、
前記摘み部材は、折目を有しており、当該折目に沿って折られることにより前記折返状態となる手袋。
【請求項5】
請求項4に記載の手袋において、
前記折目は、前記折返状態及び前記非折返状態の何れのときも、前記手と前記本体との間に隠れている手袋。
【請求項6】
請求項5に記載の手袋において、
前記折目は、前記本体の前記裾口から離間した位置にある手袋。
【請求項7】
請求項6に記載の手袋において、
平面視で、前記折目から前記裾口までの距離は、5mm以上15mm以下である手袋。
【請求項8】
請求項4に記載の手袋において、
前記摘み部材は、細長い形状をしており、前記非折返状態のときに前記本体の前記裾口を横切るように当該摘み部材の長手方向に延在する手袋。
【請求項9】
請求項8に記載の手袋において、
前記摘み部材は、当該摘み部材の先端から前記折目までの部分である可動部と、当該摘み部材の後端から前記折目までの部分である不動部とを有する手袋。
【請求項10】
請求項9に記載の手袋において、
前記折返状態のとき、前記可動部は、前記本体と前記不動部との間に挟まれる手袋。
【請求項11】
請求項10に記載の手袋において、
前記可動部の長さは、前記不動部の長さよりも小さい手袋。
【請求項12】
請求項9に記載の手袋において、
前記摘み部材は、前記不動部の一部においてのみ前記本体に固定されている手袋。
【請求項13】
請求項12に記載の手袋において、
前記不動部の前記一部は、前記摘み部材の前記後端を含み、
当該不動部の残部は、前記折目を含む手袋。
【請求項14】
請求項13に記載の手袋において、
前記残部の長さは、前記可動部の長さ以上である手袋。
【請求項15】
請求項9に記載の手袋において、
前記可動部の長さは、30mm以上50mm以下である手袋。
【請求項16】
請求項9に記載の手袋において、
前記不動部の長さは、40mm以上60mm以下である手袋。
【請求項17】
請求項9に記載の手袋において、
前記露見部は、前記可動部の一部であり、
前記露見部の長さは、15mm以上45mm以下である手袋。
【請求項18】
請求項9に記載の手袋において、
前記可動部の幅は、前記不動部の幅よりも小さい手袋。
【請求項19】
請求項4に記載の手袋において、
前記摘み部材は、複数の前記折目を有している手袋。
【請求項20】
請求項1又は2に記載の手袋において、
前記摘み部材は、帯状又は紐状をしている手袋。
【請求項21】
請求項1又は2に記載の手袋において、
前記摘み部材は、接着又は溶着により、前記本体に固定されている手袋。
【請求項22】
請求項1又は2に記載の手袋において、
前記摘み部材の伸縮率は、前記本体の伸縮率よりも小さい手袋。
【請求項23】
請求項1又は2に記載の手袋において、
前記摘み部材は、前記手の甲側に設けられている手袋。
【請求項24】
請求項1又は2に記載の手袋において、
前記摘み部材は、プラスチック、セロファン、紙、又は合成ゴムからなる手袋。
【請求項25】
請求項1又は2に記載の手袋において、
前記本体は、前記手に密着するように嵌められる手袋。
【請求項26】
請求項1又は2に記載の手袋において、
前記本体は、ゴムからなる手袋。
【請求項27】
請求項26に記載の手袋において、
前記ゴムは、ニトリルゴム又は天然ゴムラテックスである手袋。
【請求項28】
請求項1又は2に記載の手袋において、
前記本体の外側に突出する突起を備える手袋。
【請求項29】
請求項1又は2に記載の手袋において、
当該手袋は、医療用である手袋。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、手袋に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の手袋としては、例えば特許文献1に記載されたものがある。同文献に記載された手袋は、衛生又は安全等の目的で使用される作業用の手袋であって、手に嵌められる袋状の本体と、本体の内面に固定され、指で摘むことが可能な摘み部材とを備えている。摘み部材は、装着時に本体の内部に隠れる部分である内側部分と、装着時に本体の外部に食み出す部分である外側部分とを有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2021-165459号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述の手袋を脱ぐときは、反対の手の指で摘み部材の外側部分を摘んで本体の指先側に引っ張ればよい。それにより、反対の手が使用後の本体に触れることなく本体を手から外すことができるため、衛生的である。しかしながら、摘み部材の外側部分は、装着時に本体の外部に露出しているため、本体と同様、作業中に汚染される場合がある。その場合、手袋を脱ぐ際に反対の手で外側部分を摘むのでは、反対の手が本体に触れないという衛生面での利点を減殺してしまうことになる。
【0005】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、衛生的に脱ぐことが可能な手袋を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明による手袋は、手に嵌められる袋状の本体と、上記本体に固定され、指で摘むことが可能な摘み部材と、を備え、上記摘み部材は、当該摘み部材が折り返された状態である折返状態と、当該摘み部材が折り返されていない状態である非折返状態とを切り替えられるように構成されており、上記摘み部材は、上記折返状態のときに上記本体の内部に隠れるとともに上記非折返状態のときに上記本体の外部に食み出す露見部を有することを特徴とする。
【0007】
この手袋においては、露見部を有する摘み部材が設けられている。露見部は、摘み部材が折返状態にあるときに本体の内部に隠れる一方、非折返状態にあるときに本体の外部に食み出す。このため、作業中は摘み部材を折返状態にしておくことにより、露見部が汚染されるのを防ぐことができる。そして、作業後に摘み部材を非折返状態にすることにより、反対の手の指で露見部を摘めるようになる。これにより、作業中に本体の外部に露出していなかった部分(露見部)を摘んで、本体を手から外すことができる。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、衛生的に脱ぐことが可能な手袋が実現される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明による手袋の一実施形態を示す斜視図である。
図2図1のII-II線に沿った断面の一部を示す図である。
図3】非折返状態にある摘み部材20を示す平面図である。
図4】折返状態にある摘み部材20を示す平面図である。
図5図2において摘み部材20を折返状態にしたときの様子を示す図である。
図6】一変形例に係る摘み部材20を示す平面図である。
図7図6の摘み部材20を折返状態にしたときの様子を示す側面図である。
図8図6の摘み部材20を折返状態にしたときの様子を示す側面図である。
図9】他の変形例に係る摘み部材20を示す側面図である。
図10】他の変形例に係る摘み部材20を示す平面図である。
図11】摘み部材20の他の変形例を説明するための図である。
図12図1の手袋の変形例を説明するための斜視図である。
図13図12のXIII-XIII線に沿った断面の一部を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施形態について詳細に説明する。なお、図面の説明においては、同一要素には同一符号を付し、重複する説明を省略する。
【0011】
図1は、本発明による手袋の一実施形態を示す斜視図である。また、図2は、図1のII-II線に沿った断面の一部を示す図である。図1は、手の甲側を示している。手袋1は、衛生又は安全等の目的で使用される作業用の手袋である。手袋1は、例えば、医療現場で使用される医療用の手袋、介護現場で使用される介護用の手袋、工場で使用される工業用の手袋、又は家庭で使用される家事用の手袋である。手袋1は、使い捨てされる手袋であってもよいし、繰り返し使用される手袋であってもよい。
【0012】
手袋1は、本体10、及び摘み部材20を備えている。本体10は、袋状をしており、装着者の手に嵌められる。本体10は、手の形に合わせて一体に形成されている。本体10は、各指を個別に覆えるように5つの筒状部を有している。各筒状部の先端は、閉塞されている。本体10は、裾口12を有している。裾口12は、本体10に対して手を出し入れするための開口である。本体10は、手の全体を覆うように構成されている。本体10は、前腕(特に手首)まで覆ってもよいし、覆わなくてもよい。前者の場合、以下の記述における「手」には、前腕(本体10に覆われる部分)も含まれるものとする。
【0013】
本体10は、手に密着するように嵌められる。ここで、手に密着するとは、本体10が伸縮性を有しており、手に嵌められているときに本体10が伸展した状態にあるということである。このとき、手には、本体10の収縮力が働く。本体10の伸縮率は、50%以上であることが好ましく、100%以上であることがより好ましい。本実施形態において本体10は、ゴムからなる。ゴムとしては、例えば、ニトリルゴム又は天然ゴムラテックスを用いることができる。本体10としては、一般的な市販のゴム手袋を用いてもよい。
【0014】
摘み部材20は、本体10に固定されている。本実施形態において摘み部材20は、本体10の内面(本体10が嵌められた手に触れる側の面)に固定されている。摘み部材20は、図2に示すように、本体10の手の平側10aでなく、手の甲側10bに設けられている。摘み部材20は、指で摘むことが可能である。
【0015】
図3及び図4は、摘み部材20を示す平面図である。摘み部材20は、摘み部材20が折り返された状態である折返状態(図4参照)と、摘み部材20が折り返されていない状態である非折返状態(図3参照)とを切り替えられるように構成されている。上述の図1及び図2は、摘み部材20が非折返状態にある場合を示している。摘み部材20は、露見部22を有している。露見部22は、折返状態のときに本体10の内部に隠れる(図5参照)とともに、非折返状態のときに裾口12から本体10の外部に食み出す(図2参照)。図5は、図2において摘み部材20を折返状態にしたときの様子を示している。折返状態のとき、摘み部材20の全体が本体10の内部に隠れる。なお、非折返状態のとき、露見部22が本体10の外部に食み出す限り、摘み部材20が完全に平坦にならなくてもよい。
【0016】
摘み部材20は、折目24を有している。摘み部材20は、折目24に沿って折られることにより折返状態となる。折目24は、折返状態及び非折返状態の何れのときも、本体10の内部に隠れている(図2及び図5参照)。折目24は、本体10の裾口12から離間した位置にある。平面視で、すなわち摘み部材20の厚み方向(図2及び図5の上下方向)から見たとき、折目24から裾口12までの距離d1は、5mm以上15mm以下であることが好ましい。
【0017】
摘み部材20は、細長い形状をしている。ここで、細長い形状とは、平面視で摘み部材20を内包し得る最小の矩形を考えたとき、当該矩形の長辺の長さが短辺の長さの2倍以上となる形状をいう。摘み部材20の具体的形状としては、例えば、帯状又は紐状が挙げられる。本実施形態において摘み部材20は、矩形の帯状をした薄片からなる。摘み部材20は、非折返状態のときに本体10の裾口12を横切るように摘み部材20の長手方向に延在する。
【0018】
摘み部材20は、可動部26、及び不動部28を有している。可動部26は、摘み部材20の先端20aから折目24までの部分である。先端20aは、摘み部材20の長手方向の両端のうち(非折返状態のときに)本体10の指先から遠い方の端である。不動部28は、摘み部材20の後端20bから折目24までの部分である。後端20bは、摘み部材20の長手方向の両端のうち(非折返状態のときに)本体10の指先に近い方の端である。可動部26は、折返状態と非折返状態とが切り替わると変位する。ここで、変位とは、本体10に対する相対的な位置が変わることをいう。可動部26は、折返状態のときは平面視で不動部28に重なる位置にある一方、非折返状態のときは平面視で不動部28に重ならない位置にある。不動部28は、折返状態と非折返状態とが切り替わっても変位しない。
【0019】
折返状態のとき、可動部26と不動部28とは、重なり合う。折返状態のとき、可動部26は、本体10と不動部28との間に挟まれる(図5参照)。すなわち、摘み部材20は、非折返状態のときに本体10に接する側の面が内側になるように、折目24に沿って折られる。可動部26の長さd2(図3参照)は、不動部28の長さd3よりも小さい。長さd2は、例えば30mm以上50mm以下である。長さd3は、40mm以上60mm以下である。摘み部材20の幅w1は、一定である。それゆえ、可動部26の幅と不動部28の幅とは、互いに等しい。幅w1は、例えば5mm以上30mm以下である。
【0020】
摘み部材20は、不動部28の一部(部分28a)においてのみ本体10に固定されている。部分28aは、折目24から離間している。部分28aは、摘み部材20の後端20bを含んでいる。部分28aは、本体10の内面における手の甲又は前腕を覆う領域に固定されている。本体10に対する摘み部材20の固定は、例えば、接着又は溶着により行うことができる。不動部28の残部(部分28b)は、不動部28における部分28a以外の部分である。部分28bは、折目24を含んでいる。部分28bの長さd4は、可動部26の長さd2以上である。上述の露見部22は、可動部26の一部である。露見部22の長さd5は、例えば15mm以上45mm以下である。
【0021】
摘み部材20は、外力(重力は除く。)を受けていないとき、非折返状態にある。すなわち、摘み部材20に外力を加えることにより非折返状態から折返状態に切り替えることができる。一方、当該外力を取り除くと、摘み部材20は、折返状態から非折返状態に自然に切り替わる。
【0022】
摘み部材20の伸縮率は、本体10の伸縮率よりも小さい。摘み部材20の伸縮率は、1%以下であることが好ましい。このように摘み部材20の伸縮率が1%以下である場合、摘み部材20は、実質的に伸縮性を有しないといえる。摘み部材20は、可撓性を有することが好ましい。摘み部材20の材料としては、例えば、プラスチック、セロファン、紙、又は合成ゴムを用いることができる。
【0023】
続いて、手袋1の脱着方法の一例を説明する。本例において手袋1は、左右の手に嵌められる一対の本体10を備えている。手袋1を手に装着するには、摘み部材20を折返状態(図5の状態)にしたまま、本体10を左右の手に嵌めればよい。このとき、摘み部材20は、手と本体10との間に挟まれた状態となる。
【0024】
手袋1を脱ぐときは、まず、本体10が嵌められている左手で、右手の本体10の裾口12又はその付近を引き上げることにより、本体10(摘み部材20が設けられた部分)と右手との間に隙間を生じさせる。これにより、右手の摘み部材20を非折返状態にし、露見部22を本体10の外部に露出させることができる。次に、本体10が嵌められている右手で、左手の本体10の裾口12又はその付近を引き上げることにより、本体10(摘み部材20が設けられた部分)と左手との間に隙間を生じさせる。これにより、左手の摘み部材20を非折返状態にし、露見部22を本体10の外部に露出させることができる。続いて、右手の摘み部材20の露見部22を左手の指で摘んで右手の指先側に引っ張る。これにより、裾口12が捲れて、本体10を裏返しながら右手から外すことができる。さらに、左手の摘み部材20の露見部22を右手(素手)の指で摘んで左手の指先側に引っ張る。これにより、裾口12が捲れて、本体10を裏返しながら左手から外すことができる。
【0025】
手袋1の効果を説明する。手袋1においては、露見部22を有する摘み部材20が設けられている。露見部22は、摘み部材20が折返状態にあるときに本体10の内部に隠れる一方、非折返状態にあるときに本体10の外部に食み出す。このため、作業中は摘み部材20を折返状態にしておくことにより、露見部22が汚染されるのを防ぐことができる。そして、作業後に摘み部材20を非折返状態にすることにより、反対の手の指で露見部22を摘めるようになる。これにより、作業中に本体10の外部に露出していなかった部分(露見部22)を摘んで、本体10を手から外すことができる。したがって、衛生的に脱ぐことが可能な手袋1が実現されている。
【0026】
折返状態のとき、摘み部材20の全体が本体10の内部に隠れる。これにより、摘み部材20の全体を作業中の汚染から守ることができる。
【0027】
摘み部材20は、本体10の内面に固定されている。これにより、摘み部材20が本体10の外面に固定される場合と異なり、摘み部材20の全体を本体10の内部に隠すことが可能となる。また、非折返状態のとき、露見部22を引っ張ると、摘み部材20によって裾口12が下から持ち上げられることになる。これにより、裾口12と手との間に隙間ができるため、本体10を手から外しやすくなる。
【0028】
摘み部材20は、折目24を有しており、折目24に沿って折られることにより折返状態となる。このように折目24を設けることにより、非折返状態から折返状態への切替えが容易になる。
【0029】
折目24は、折返状態及び非折返状態の何れのときも、本体10の内部に隠れている。これにより、折返状態のときに摘み部材20の全体が本体10の内部に隠れる構成を容易に実現することができる。
【0030】
折目24は、本体10の裾口12から離間した位置にある。これにより、折返状態のとき、摘み部材20の全体を作業中の汚染から一層確実に守ることができる。
【0031】
折目24から裾口12までの距離d1が大きい方が、摘み部材20の汚染を防ぐのに有利である。かかる観点から、距離d1は、5mm以上であることが好ましい。他方、距離d1が大きすぎると、露見部22を本体10の外部に食み出させにくくなってしまう。かかる観点から、距離d1は、15mm以下であることが好ましい。
【0032】
摘み部材20は、細長い形状をしており、非折返状態のときに本体10の裾口12を横切るように摘み部材20の長手方向に延在する。これにより、本体10の左右方向(図1の左右方向)についての摘み部材20の寸法を小さく抑えつつ、本体10の前後方向(図1の上下方向)についての摘み部材20の寸法を大きく確保することができる。本体10の左右方向についての摘み部材20の寸法を小さくすることは、装着時に摘み部材20が邪魔になりにくくするのに有利である。また、本体10の前後方向についての摘み部材20の寸法を大きくすることは、露見部22の長さを充分に確保し、摘み部材20を摘みやすくするのに有利である。
【0033】
折返状態のとき、摘み部材20の可動部26は、本体10と不動部28との間に挟まれる。この場合、摘み部材20が反対側に折られる場合(非折返状態のときに本体10に接する側の面が外側になるように折られる場合)に比して、作業中に摘み部材20が邪魔になりにくい。
【0034】
可動部26の長さd2は、不動部28の長さd3よりも小さい。このように長さd2を小さくすることは、折返状態のときに可動部26を本体10と不動部28との間に収めやすくするのに有利である。
【0035】
摘み部材20は、不動部28の一部(部分28a)においてのみ本体10に固定されている。この場合、摘み部材20が不動部28の全体において本体10に固定される場合に比して、摘み部材20(露見部22)を引っ張ったときに裾口12が大きく捲れるようにすることができる。
【0036】
不動部28の一部(部分28a)は摘み部材20の後端20bを含んでおり、不動部28の残部(部分28b)は折目24を含んでいる。このように不動部28において本体10に固定されていない部分28bを折目24側に配置することにより、折返状態のときに本体10と不動部28の部分28bとの間に可動部26を収納することが可能となる。
【0037】
部分28bの長さd4は、可動部26の長さd2以上である。これにより、折返状態のとき、可動部26を折り曲げることなく本体10と部分28bとの間に収納することができる。
【0038】
露見部22の長さd5が大きい方が、非折返状態のときに摘み部材20を摘みやすくなる。かかる観点から、長さd5は、15mm以上であることが好ましい。他方、長さd5が大きすぎると、可動部26ひいては摘み部材20全体の長さが過大になり、摘み部材20が邪魔になりやすくなってしまう。かかる観点から、長さd5は、45mm以下であることが好ましい。
【0039】
摘み部材20は、外力を受けていないとき、非折返状態にある。この場合、外力を取り除くと摘み部材20が折返状態から非折返状態に自然に切り替わるため、手袋1を脱ぐ際に露見部22を本体10の外部に容易に食み出させることができる。
【0040】
摘み部材20が帯状又は紐状である場合、細長い形状の摘み部材20を特に容易に形成することができる。
【0041】
摘み部材20が接着又は溶着により本体10に固定されている場合、簡易な手段で、本体10に対して摘み部材20を強固に固定することができる。
【0042】
摘み部材20の伸縮率は、本体10の伸縮率よりも小さい。このように摘み部材20の伸縮率を小さくすることにより、摘み部材20を引っ張ったときに、本体10に対して効率良く力を伝えることができる。かかる観点から、摘み部材20の伸縮率は、1%以下であることが好ましい。
【0043】
摘み部材20は、手の甲側10bに設けられている。この場合、摘み部材20が手の平側10aに設けられている場合に比して、作業中に摘み部材20が邪魔になりにくい。
【0044】
摘み部材20がプラスチック、セロファン、紙、又は合成ゴムからなる場合、摘み部材20を低コストで形成することができる。
【0045】
本体10は、手に密着するように嵌められる。この場合、本体10が手に密着しない場合に比して本体10が手から外れにくいため、摘み部材20が設けられた手袋1が特に有用となる。
【0046】
本体10の伸縮率が高い方が、手の大きさにかかわらず、本体10を手に密着させやすくなる。かかる観点から、本体10の伸縮率は、50%以上であることが好ましく、100%以上であることがより好ましい。
【0047】
本体10がゴムからなる場合、伸縮性を有する本体10を容易に実現することができる。ゴムがニトリルゴム又は天然ゴムラテックスである場合、特に優れた伸縮性を有する本体10を実現することができる。
【0048】
手袋1が医療用である場合、手袋1にウィルスや細菌等が付着しやすい環境で使用される。それゆえ、作業中に本体10の外部に露出しない露見部22を摘んで本体10を手から外すことのできる手袋1が特に有用となる。
【0049】
本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、様々な変形が可能である。上記実施形態においては、折返状態のとき、摘み部材20の全体が本体10の内部に隠れる場合を例示した。しかし、折返状態のとき、摘み部材20の一部のみが本体10の内部に隠れてもよい。
【0050】
上記実施形態においては、摘み部材20が本体10の内面に固定されている場合を例示した。しかし、摘み部材20は、本体10の外面に固定されてもよいし、本体10の内面と外面との間(本体10を構成する1又は2以上の層の層中又は層間)に固定されてもよい。
【0051】
上記実施形態においては、折返状態のとき、可動部26が本体10と不動部28との間に挟まれる場合を例示した。しかし、折返状態のとき、可動部26は、不動部28と手との間に挟まれてもよい。すなわち、摘み部材20は、非折返状態のときに本体10に接する側の面が外側になるように折られてもよい。
【0052】
上記実施形態においては、可動部26の長さd2が不動部28の長さd3よりも小さい場合を例示した。しかし、長さd2は、長さd3より大きくてもよいし、長さd3に等しくてもよい。
【0053】
上記実施形態においては、不動部28の部分28bの長さd4が可動部26の長さd2以上である場合を例示した。しかし、長さd4は、長さd2より小さくてもよい。
【0054】
上記実施形態においては、摘み部材20が不動部28の一部においてのみ本体10に固定されている場合を例示した。しかし、摘み部材20は、不動部28の全体において本体10に固定されてもよい。
【0055】
上記実施形態においては、折目24が本体10の内部に隠れている場合を例示した。しかし、折目24は、本体10の外部に露出していてもよい。
【0056】
上記実施形態においては、摘み部材20に折目(折目24)が1つだけ設けられた場合を例示した。しかし、摘み部材20は、例えば図6に示すように、複数の折目を有していてもよい。同図において摘み部材20は、折目24(第1の折目)に加えて折目25(第2の折目)を有している。折目25は、折目24と先端20aとの間に設けられている。折返状態のとき、これらの折目24,25は、図7に示すように同じ側に折られてもよいし、図8に示すように互いに反対側に折られてもよい。図7及び図8においては、見やすさのため、折る途中の状態を示している。このように複数の折目24,25を設けることにより、折返状態のとき摘み部材20の可動部26を小さく纏めることができる。
【0057】
上記実施形態においては、摘み部材20が予め折目24を有する場合を例示した。しかし、摘み部材20は、折目24を有していなくてもよい。その場合、装着者は、露見部22が本体10の内部に隠れるように摘み部材20を折ることにより、摘み部材20を非折返状態から折返状態に切り替えればよい。なお、折返状態にする際、摘み部材20は、必ずしも角張るように折られる必要はなく、図9に示すように曲線状に折り曲げられてもよい。
【0058】
上記実施形態においては、摘み部材20の幅が一定である場合を例示した。しかし、摘み部材20の幅は、例えば図10に示すように、一定でなくてもよい。同図において摘み部材20は、帯状をしているが、その幅は一定でない。詳細には、可動部26の幅w2が、不動部28の幅w3よりも小さい。このように可動部26の幅w2を小さくすることにより、摘み部材20を折返状態から非折返状態に切り替える際、露見部22を本体10の外部に食み出させやすくなる。一方、不動部28の幅w3を大きくすることにより、摘み部材20を本体10に対して安定的に固定しやすくなる。
【0059】
上記実施形態においては、摘み部材20が外力を受けていないとき非折返状態にある場合を例示した。しかし、摘み部材20は、外力を受けていないとき折返状態にあってもよい。その場合、摘み部材20を手動で折返状態から非折返状態に切り替えればよい。
【0060】
上記実施形態においては、摘み部材20の伸縮率が本体10の伸縮率よりも小さい場合を例示した。しかし、摘み部材20の伸縮率は、本体10の伸縮率に等しくてもよいし、本体10の伸縮率より大きくてもよい。
【0061】
上記実施形態においては、摘み部材20が手の甲側10bに設けられた場合を例示した。しかし、摘み部材20は、手の平側10aに設けられてもよいし、その他の箇所(手の甲と手の平との間)に設けられてもよい。
【0062】
上記実施形態においては、1つの本体10に対して摘み部材20が1つだけ設けられた場合を例示した。しかし、例えば図11に示すように、1つの本体10に対して複数の摘み部材20が設けられていてもよい。複数の摘み部材20は、本体10の相異なる位置に固定される。同図においては、2つの摘み部材20が本体10に設けられている。詳細には、本体10の手の甲側10bに摘み部材202(第1の摘み部材)が設けられるとともに、手の平側10aに摘み部材204(第2の摘み部材)が設けられている。このように複数の摘み部材20を設けた場合、それらの摘み部材20を介して複数の箇所から本体10に力を伝えることが可能となるため、本体10を手から一層外しやすくなる。
【0063】
上記実施形態において手袋1には、例えば図12及び図13に示すように、突起30が設けられていてもよい。図13は、図12のXIII-XIII線に沿った断面の一部を示す図である。突起30は、本体10の外側に突出している。突起30は、平面視で摘み部材20と重なる位置に設けられている。突起30の材料としては、例えばプラスチック又はゴムを用いることができる。
【0064】
突起30は、本体10と別に成形された後に本体10の外面に取り付けられてもよいし、本体10と一体に成形されてもよい。後者の場合、本体10及び突起30は、例えば、以下に述べる浸漬法(ディッピング法)を用いて製造することができる。まず、突起に対応する位置に凹部が形成された手型を準備する。次に、本体10の原材料溶液に手型を浸漬することにより、当該溶液を手型に付着させる。このとき、凹部内にも溶液が入り込むようにする。続いて、当該溶液を乾燥させた後、加硫する。その後、本体10を裏返しながら手型から外す。以上により、互いに一体に成形された本体10及び突起30が得られる。
【0065】
このように突起30を設けることにより、摘み部材20を折返状態から非折返状態に切り替える際、反対の手の指で突起30を摘むことにより、本体10を直接摘む場合に比して、本体10を容易に引き上げることができる。
【0066】
上記実施形態においては、本体10がゴムからなる場合を例示した。しかし、本体10は、ゴム以外の材料からなってもよい。例えば、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン等のプラスチックからなってもよい。
【符号の説明】
【0067】
1 手袋
10 本体
10a 手の平側
10b 手の甲側
12 裾口
20 摘み部材
20a 先端
20b 後端
22 露見部
24 折目
25 折目
26 可動部
28 不動部
30 突起
202 摘み部材(第1の摘み部材)
204 摘み部材(第2の摘み部材)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13