(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-12
(45)【発行日】2023-07-21
(54)【発明の名称】型枠
(51)【国際特許分類】
E04G 9/00 20060101AFI20230713BHJP
【FI】
E04G9/00 Z
(21)【出願番号】P 2022186078
(22)【出願日】2022-11-21
【審査請求日】2022-11-22
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】522456246
【氏名又は名称】合同会社醍醐
(74)【代理人】
【識別番号】110001667
【氏名又は名称】弁理士法人プロウィン
(72)【発明者】
【氏名】醍醐 直弘
【審査官】須永 聡
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-251006(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第110331852(CN,A)
【文献】特開平07-224532(JP,A)
【文献】特開2011-026860(JP,A)
【文献】登録実用新案第3144648(JP,U)
【文献】実開昭61-013748(JP,U)
【文献】特開2017-031782(JP,A)
【文献】登録実用新案第3148093(JP,U)
【文献】実開昭49-007724(JP,U)
【文献】韓国登録特許第10-1139843(KR,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04G 9/00-19/00
E04G 25/00-25/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一部に可視光を透過する透過領域を有する堰板と、
前記堰板の長手方向に沿って前記堰板の裏面側に立設された複数の桟取付部を有し、
前記桟取付部は、前記堰板と一体に形成されて
おり、
前記桟取付部は前記長手方向に沿って複数に分離され、前記桟取付部の間には幅方向に沿って前記堰板の裏面側が露出した領域が存在することを特徴とする型枠。
【請求項2】
少なくとも一部に可視光を透過する透過領域を有する堰板と、
前記堰板の長手方向に沿って前記堰板の裏面側に立設された複数の桟取付部を有し、
前記桟取付部は、前記長手方向に直交する幅方向に所定間隔で設けられた一対の挟持片を備え、
前記挟持片の互いに対向する面には、前記挟持片と一体に形成された摺動規制突起が設けられていることを特徴とする型枠。
【請求項3】
請求項1または2に記載の型枠であって、
前記桟取付部は、前記長手方向に直交する幅方向および前記長手方向に沿ってマトリクス状に複数分離して配置されていることを特徴とする型枠。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、型枠に関し、特にコンクリート構造物を建設する際に、コンクリートを打設する空間を構成するための型枠に関する。
【背景技術】
【0002】
従来からコンクリート構造物の建設現場では、ベニヤ等の堰板の裏面を桟材で補強して型枠を作成し、一対の型枠の間にコンクリートを流し込んで打設していた。しかし、コンクリートが硬化した後に型枠を外すまで、コンクリートに空隙やひび割れ等の不具合が生じていないかを確認できないという問題があった。そこで、堰板を透明なプラスチック板で構成して、コンクリートの充填時から目視で施工状況を確認することができる型枠も提案されている(特許文献1等を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし特許文献1の型枠では、様々な施工現場に対応させるためには、様々なサイズの堰板を各種取り揃えて運搬する必要があった。また、堰板がプラスチック製であるため、釘打ちでの桟材の固定ができず、現場での作業負担が大きくなるという問題があった。特許文献1では金属製の桟材を用いることも記載されているが、桟材の重量が増加して運搬時や作業時の効率が低下するという問題もあった。
【0005】
そこで本発明は、上記従来の問題点に鑑みなされたものであり、コンクリート打設の施工状況を目視で確認することが可能であり、かつ施工現場での作業負担を軽減することが可能な型枠を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明の型枠は、少なくとも一部に可視光を透過する透過領域を有する堰板と、前記堰板の長手方向に沿って前記堰板の裏面側に立設された複数の桟取付部を有し、前記桟取付部は、前記堰板と一体に形成されており、前記桟取付部は前記長手方向に沿って複数に分離され、前記桟取付部の間には幅方向に沿って前記堰板の裏面側が露出した領域が存在することを特徴とする。
また、上記課題を解決するために、本発明の型枠は、少なくとも一部に可視光を透過する透過領域を有する堰板と、前記堰板の長手方向に沿って前記堰板の裏面側に立設された複数の桟取付部を有し、前記桟取付部は、前記長手方向に直交する幅方向に所定間隔で設けられた一対の挟持片を備え、前記挟持片の互いに対向する面には、前記挟持片と一体に形成された摺動規制突起が設けられていることを特徴とする。
【0007】
このような本発明の型枠では、堰板の裏面側に複数の桟取付部が立設されており、堰板に透過領域を有するため、コンクリート打設の施工状況を目視で確認することが可能であり、かつ施工現場での作業負担を軽減することが可能となる。
【発明の効果】
【0008】
本発明では、コンクリート打設の施工状況を目視で確認することが可能であり、かつ施工現場での作業負担を軽減することが可能な型枠を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】第1実施形態に係る型枠100を用いたコンクリート打設の施工状況を示す模式図である。
【
図2】型枠100の構造を示す図であり、
図2(a)は表面10a、
図2(b)は縦断面、
図2(c)は裏面10b、
図2(d)は横断面を示している。
【
図3】桟取付部11への桟材20の取り付けを示す拡大斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(第1実施形態)
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。各図面に示される同一または同等の構成要素、部材、処理には、同一の符号を付すものとし、適宜重複した説明は省略する。本実施形態では、型枠100を用いたコンクリート打設方法について説明するが、本発明の型枠100はコンクリート打設に限定されず、他の建築材料を用いた工法にも適用できる。
図1は、本実施形態に係る型枠100を用いたコンクリート打設の施工状況を示す模式図である。
図2は、型枠100の構造を示す図であり、
図2(a)は表面10a、
図2(b)は縦断面、
図2(c)は裏面10b、
図2(d)は横断面を示している。
【0011】
図1に示したように、型枠100は、堰板10の裏面10bに複数の桟取付部11が設けられている。また、型枠100の裏面10b側には複数の桟材20が桟取付部11に取り付けられており、桟材20で堰板10と延長板30が保持されている。また、一対の型枠100が所定距離を隔てて対向して配置されており、堰板10の間に構成された空間に充填材料40が打設される。
図1では堰板10の高さ方向における途中まで充填材料40が注入された状態を示しているが、充填材料40の注入を継続して、延長板30の高さまで充填材料40を到達させることができる。
【0012】
堰板10は、表面10aと裏面10bを有する略平板状の部材である。堰板10の表面10a側は充填材料40が接触する面であり、裏面10b側は桟材20が取り付けられて補強される面である。また、堰板10の裏面10b側には、複数の桟取付部11が立設されている。また、堰板10の上端および下端には複数の固定孔12,13が設けられている。
【0013】
堰板10は可視光を透過する材料で構成された透過領域を有している。本実施形態では、堰板10の全体を透過領域とした例を示している。透過領域を構成する材料は限定されないが、例えばPET(Polyethyleneterephthalate)樹脂や、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、メタクリル樹脂、ポリカーボネート、ABS樹脂、PE樹脂、PP樹脂、PVC樹脂等を用いることができる。特に、再生PET樹脂を用いることで省資源化を図るとともに、堰板10のリサイクル化を図ることが好ましい。堰板10に透過領域が設けられていることで、
図1に示したように、充填材料40を注入している段階から、充填される充填材料40の施工状況を外部から視認することができる。堰板10のサイズは限定されないが、例えば幅600mm、長さ1800mm、厚さ12mm等のベニヤ板と同程度とすることができる。
【0014】
桟取付部11は、堰板10と一体に形成され、裏面10bから離れる方向に立設された、桟材20を取り付けるための部分である。本実施形態では、桟取付部11として、略板状の2枚の挟持片を一対としたものを示しているが、桟取付部11の具体的な構造は限定されない。
図1,2に示したように、本実施形態では桟取付部11は堰板10の長手方向に沿って複数分離して配列されるとともに、長手方向と直交する幅方向にも複数分離して配列されており、全体としてマトリクス状に配置されている。
図1では、堰板10を地面に対して鉛直方向に設けているため、桟材20を鉛直方向に沿って取り付けた例を示しているが、所定角度で堰板10を傾斜させる場合等には、長手方向に分離して設けられた桟取付部11の間にパイプ等の保持材を配置することもできる。
【0015】
図2に示すように、桟取付部11には固定孔11aが設けられている。固定孔11aには後述するように締結部材50が挿入されて、桟材20を桟取付部11に固定することが可能となっている。また、桟取付部11は一対の挟持片が対向して配置されており、挟持片の間には所定間隔dの桟挿入部11bが構成されている。桟取付部11のサイズは限定されないが、例えば長さ157mm、高さ40mm、厚さ2mmの挟持片を所定間隔d=25mmで対向させたものを用いることができる。また桟取付部11の間隔は、一例として長さ方向に100mm、幅方向に156mm等とすることができる。
【0016】
固定孔12,13は、堰板10の上端および下端に設けられた貫通孔であり、堰板10の表面10a側から裏面10b側にネジや釘等の締結部材を挿入可能とする部分である。堰板10の裏面10b側において下端辺10cおよび上端辺10dに幅方向に枠材を設けて補強する場合には、固定孔12,13にネジや釘等の締結部材を挿入して枠材を固定することができる。ここでは固定孔12,13を設けた例を示したが、固定孔12,13を省略した構成としてもよい。
【0017】
桟材20は、桟取付部11に取り付けられて、堰板10の補強を行う部材である。桟材20の厚みは、桟挿入部11bに桟材20を挿入できるサイズとし、長さは堰板10の長さ以上のものを用いる。堰板10の長さよりも長い桟材20を用いることで、堰板10の上端または下端よりも突出した部分に延長板30を固定して、堰板10の長さ以上の施工高さにも対応させることができる。桟材20の具体的な構成は限定されないが、幅48mm厚み24mm等に規格化された木材である桟木を用いることができる。
【0018】
延長板30は、堰板10の上端または下端に隣接して配置され、裏面10bに桟材20が取り付けられた板状の部材である。延長板30の表面は、堰板10の表面10aと略面一とされており、堰板10および延長板30の組み合わせで型枠100が構成される。
図1では延長板30を用いる例を示しているが、堰板10のみで施工高さを確保できる場合には、延長板30を省略するとしてもよい。延長板30の構成は限定されず、可視光を透過する樹脂製の板やベニヤ板等を用いることができる。延長板30を桟材20に固定することで、作業現場で延長板30を取り付けるだけで堰板10のサイズ不足を補うことができる。これにより、堰板10として複数のサイズを確保して作業現場まで運搬する必要が無くなり、規格化されたサイズの堰板10だけで様々な施工に対応することが可能となる。
【0019】
充填材料40は、施工時に流動性を有して型枠100の間に充填され、時間経過とともに硬化する材料であり、公知のコンクリート材料を用いることができる。充填材料40の材料は限定されないが、堰板10および延長板30の表面と接触した状態で硬化するため、硬化後に良好に剥離できるように堰板10および延長板30を構成する材料を選択することが好ましい。
【0020】
図3は、桟取付部11への桟材20の取り付けを示す拡大斜視図である。桟取付部11の挟持片には、互いに対向する面に摺動規制突起11cが設けられている。摺動規制突起11cは、桟挿入部11b内に突出して設けられた突起であり、桟材20が桟挿入部11bに挿入された状態において、桟材20の長手方向への移動を規制する。
図3に示した例では、摺動規制突起11cとして堰板10の裏面10bから離間する方向に延伸して形成されたライン形状の突起を示しているが、摺動規制突起11cの形状は限定されず、ドット形状や格子形状などを用いてもよい。摺動規制突起11cのサイズは限定されないが、桟材20の長手方向への移動を効果的に規制するためには、数mm程度(一例として2mm)突出させることが好ましい。
図3では摺動規制突起11cを一つの挟持片に三つ設けた例を示したが、個数や位置は限定されず適宜変更可能である。
【0021】
図3に示したように、本発明の型枠100では、桟材20を桟挿入部11bに挿入して、一対の挟持片で桟材20を挟持し、固定孔11aにネジ等の締結部材50を挿入して、桟取付部11に桟材20を取り付けて固定する。ここで、挟持片の間隔dは桟材20の厚みと略同程度であり、摺動規制突起11cが桟挿入部11b内に突出しているため、桟材20を桟挿入部11bに挿入する際には、摺動規制突起11cが桟材20に食い込み、長手方向への移動が規制される。
【0022】
上述したように、本実施形態の型枠100では、少なくとも一部に可視光を透過する透過領域を有する堰板10と、堰板10の長手方向に沿って堰板10の裏面10b側に立設された複数の桟取付部11を有する。これにより、コンクリート打設の施工状況を目視で確認することが可能であり、かつ施工現場での作業負担を軽減することが可能となる。
【0023】
また桟取付部11は、長手方向に直交する幅方向に所定間隔で設けられた一対の挟持片を備え、挟持片の互いに対向する面には、摺動規制突起11cが設けられている。これにより、桟材20の長手方向への移動が摺動規制突起11cによって規制され、桟材20の抜けや位置ずれを抑制し、桟取付部11への固定作業を容易に行うことができる。
【0024】
また桟取付部11は、長手方向に直交する幅方向および長手方向に沿ってマトリクス状に複数分離して配置されている。これにより、複数の桟材20を取り付けて堰板10の補強を行うことが容易となる。また、桟取付部11が長手方向にも分離されているため、桟取付部11が無い領域には幅方向に沿ったパイプ等を配置して、傾斜面や水平面への施工も可能となる。
【0025】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態について説明する。第1実施形態と重複する内容は説明を省略する。第1実施形態では、堰板10の全面を可視光を透過する透過領域とした例を示したが、堰板10の少なくとも一部において可視光を透過する透過領域を備えていればよい。一例としては、堰板10の幅方向の一部が可視光を透過する樹脂材料で構成された透過領域であり、透過領域以外の部分は光が透過しない材料で構成されるとしてもよい。また、矩形状の堰板10における対角線状に透過領域を設けるとしてもよい。
【0026】
(第3実施形態)
次に、本発明の第3実施形態について説明する。第1実施形態と重複する内容は説明を省略する。第1実施形態では、桟取付部11を堰板10と一体に成型した例を示したが、堰板10と桟取付部11を別体で構成して、堰板10の裏面10bに桟取付部11を固定するとしてもよい。一例としては、桟取付部11を金属板で形成し、接着剤や締結部材を用いて堰板10の裏面10b側に固定する構造が挙げられる。また、桟取付部11として一対の挟持片を用いた例を示したが、片側の挟持片が桟材20の左右において交互に(千鳥状に)配置するとしてもよい。また、片側の挟持片のみで桟取付部11を構成し、締結部材50での締結力によって桟取付部11に桟材20を固定するとしてもよい。
【0027】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0028】
100…型枠
10…堰板
11…桟取付部
11a,12,13…固定孔
11b…桟挿入部
11c…摺動規制突起
20…桟材
30…延長板
40…充填材料
50…締結部材
【要約】
【課題】コンクリート打設の施工状況を目視で確認することが可能であり、かつ施工現場での作業負担を軽減することが可能な型枠を提供する。
【解決手段】少なくとも一部に可視光を透過する透過領域を有する堰板(10)と、堰板(10)の長手方向に沿って堰板(10)の裏面(10b)側に立設された複数の桟取付部(11)を有することを特徴とする型枠。
【選択図】
図2