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特許7312507分離装置及び液体サンプルにおける標的粒子を分離する方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-12
(45)【発行日】2023-07-21
(54)【発明の名称】分離装置及び液体サンプルにおける標的粒子を分離する方法
(51)【国際特許分類】
   C12M 1/26 20060101AFI20230713BHJP
   C12M 1/00 20060101ALI20230713BHJP
   G01N 33/48 20060101ALN20230713BHJP
【FI】
C12M1/26
C12M1/00 A
G01N33/48 S
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2022503474
(86)(22)【出願日】2019-07-17
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-09-22
(86)【国際出願番号】 CN2019096425
(87)【国際公開番号】W WO2021007825
(87)【国際公開日】2021-01-21
【審査請求日】2022-01-17
(73)【特許権者】
【識別番号】522022694
【氏名又は名称】深▲せん▼匯芯生物医療科技有限公司
【氏名又は名称原語表記】SHENZHEN HUIXIN LIFE TECHNOLOGIES CO., LTD
【住所又は居所原語表記】Room 816814, Bldg4 (complex building), Yesun Intelligent Community No. 1301-74, Guanguang Rd., Xinlan Community, Guanlan St., Longhua Dist. Shenzhen, Guangdong 518110, China
(74)【代理人】
【識別番号】110002262
【氏名又は名称】TRY国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】陳 欲超
【審査官】長谷川 強
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2019/0160432(US,A1)
【文献】中国実用新案第208297542(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12M 1/26
C12M 1/00
G01N 33/48
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の液体サンプルから標的粒子を分離精製するために用いられる分離装置であって、
複数の分離チップと、真空システムとを備え、
各分離チップは、液体サンプルを収容するためのサンプルプールと、前記サンプルプールの両側に位置する第1開口及び第2開口とを含み、
前記真空システムは、各分離チップの第1開口に連接される第1真空ポンプと、各分離チップの第2開口に連接される第2真空ポンプとを含み、
前記第1真空ポンプは、前記第1開口を通じて前記分離チップ内に負圧を発生させて、前記サンプルプール内の前記液体サンプルにおける標的粒子を分離し、前記第2真空ポンプは、前記第2開口を通じて前記分離チップ内に負圧を発生させて、前記サンプルプール内の前記液体サンプルにおける標的粒子を分離し、
前記複数の分離チップは、前記第1真空ポンプと前記第2真空ポンプとの間に並列に接続され、
前記分離装置は、
第1回転軸の周りで回転可能な第1支持台と、
第2回転軸の周りで回転可能であり且つ前記複数の液体サンプルを載置するための第2支持台と、
2つのサンプリング部材を含む液体採取ユニットと、をさらに含み、
前記複数の分離チップは、前記第1支持台に載置され、前記分離チップは、前記第1回転軸の周りに配置され、且つ前記第1支持台が回転するときにそれぞれ第1所定位置に移動し、
前記液体サンプルは、前記第2回転軸の周りに配置され、且つ前記第2支持台が回転するときにそれぞれ第2所定位置に移動し、
一方の前記サンプリング部材が前記第1支持台と前記第2支持台との接続線の一方側に位置し、他方の前記サンプリング部材が前記第1支持台と前記第2支持台との前記接続線の他方側に位置しており、
前記2つのサンプリング部材は、それぞれ異なる回転軸の周りに回転してサンプリング軌跡を形成し、各前記サンプリング部材は、1つのサンプリング軌跡に対応し、前記第1所定位置及び前記第2所定位置の数は、それぞれ2つであり、
一方の前記第1所定位置及びそれに対応する第2所定位置は、一方の前記サンプリング部材のサンプリング軌跡に位置し、他方の前記第1所定位置及びそれに対応する第2所定位置は、他方のサンプリング部材のサンプリング軌跡に位置し、
各前記サンプリング部材は、前記第2所定位置に位置する液体サンプルを採取し、且つ採取した液体サンプルをそれに対応する前記第1所定位置に位置する前記分離チップに加えることを特徴とする分離装置。
【請求項2】
前記分離チップは、さらに、
孔径が標的粒子の粒径よりも小さい第1濾過膜と、
孔径が標的粒子の粒径よりも小さい第2濾過膜と、
前記サンプルプールと前記第1濾過膜を介して連通し、且つ前記第1開口が設けられている第1チャンバーと、
前記サンプルプールと前記第2濾過膜を介して連通し、且つ前記第2開口が設けられている第2チャンバーと、を有し、
ここで、前記第1開口は、前記第1チャンバーを外部と連通させ、前記第2開口は、前記第2チャンバーを外部と連通させ、前記第1チャンバーと前記第2チャンバーは、それぞれ前記サンプルプールの対向する両側に位置することを特徴とする請求項1に記載の分離装置。
【請求項3】
前記分離装置は、周波数変換モジュールさらに含み、前記周波数変換モジュールは、前記真空システムを介して各前記第1開口及び各前記第2開口のそれぞれに接続することを特徴とする請求項1に記載の分離装置。
【請求項4】
前記周波数変換モジュールは、前記第1真空ポンプ及び前記第2真空ポンプの一方に交互に連通して、前記第1真空ポンプ及び前記第2真空ポンプを交互に作動させる周波数変換器と、前記周波数変換器に接続された制御弁とを含むことを特徴とする請求項3に記載の分離装置。
【請求項5】
前記真空システムは、各前記第1チャンバーおよび各前記第2チャンバー内で交互に発生する負圧は、周期の矩形パルス信号、正弦波信号または台形信号を形成することを特徴とする請求項に記載の分離装置。
【請求項6】
各前記分離チップの前記サンプルプール内の液面レベルを検出するための検出器、および
前記検出器により検出された前記液面レベルを取得し、且つ当該液面レベルと前記液体サンプルの予め設定された投入量とに基づいて、前記液体サンプルの分離精製が完了したか否かを判定するための駆動制御モジュールを更に含み、
前記駆動制御モジュールは、液体サンプルに対する分離精製を完了したと判断すると、前記真空システムを制御して、各前記分離チップの前記第1チャンバーと前記第2チャンバー内に交互に負圧を発生させるためのメイン制御モジュールに対して停止指令を送信し、前記メイン制御モジュールは、この停止指令に応答して、前記真空システムの作業を停止するように制御することにより、対応する前記分離チップ内に負圧を発生することを停止することを特徴とする請求項2に記載の分離装置。
【請求項7】
前記駆動制御モジュールは、洗浄液の予め設定された添加量を取得し、洗浄液毎の予め設定された添加量に基づいて、各前記サンプリング部材の作動時間を制御することにより、前記予め設定された添加量に適合する洗浄液をそれぞれ対応する前記サンプルプールに流入させることを特徴とする請求項6に記載の分離装置。
【請求項8】
請求項1~7の何れか一項に記載の分離装置で液体サンプルにおける標的粒子を分離する方法であって、
前記分離チップのサンプルプールに液体サンプルを供給するステップと、
前記第1真空ポンプを動作させて、前記第1開口を介して前記分離チップ内に負圧を発生させるステップと、
前記第1真空ポンプの運行を停止するステップと、
前記第2真空ポンプを動作させて、前記第2開口を介して前記分離チップ内に負圧を発生させるステップと、
前記第2真空ポンプの運行を停止して、前記第1真空ポンプを再運行するステップと、
以上のステップを繰り返して、前記第1真空ポンプと前記第2真空ポンプとを交互に動作させ、前記第1開口と前記第2開口とで負圧を交互に切り替えることにより、前記サンプルプール内の前記液体サンプルにおける標的粒子を分離するステップと、を備えることを特徴とする液体サンプルにおける標的粒子を分離する方法。
【請求項9】
前記分離チップのサンプルプールに液体サンプルを供給するステップは、具体的に、
前記複数の分離チップを前記第1支持台の上に載置し、前記複数の液体サンプルを前記第2支持台の上に載置することと、
前記複数の液体サンプルがそれぞれ第2所定位置に移動できるように前記第2支持台の回転を制御することと、
前記複数の分離チップがそれぞれ第1所定位置に移動できるように前記第1支持台の回転を制御することと、
サンプリング軌跡を形成するように、前記サンプリング部材の回転を制御し、前記第1所定位置及び前記第2所定位置が前記サンプリング軌跡に位置させることにより、前記サンプリング部材で前記第2所定位置に位置する液体サンプルを採取し、且つ採取した液体サンプルを前記第1所定位置に位置する前記分離チップに加えることと、
を含むことを特徴とする請求項8に記載の液体サンプルにおける標的粒子を分離する方法。
【請求項10】
前記分離チップのサンプルプールに液体サンプル及び洗浄液を供給することを特徴とする請求項8に記載の液体サンプルにおける標的粒子を分離する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バイオ技術の分野に関し、特に、液体サンプル中の標的粒子を分離する分離装置及び分離する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
エクソソームは、生きた細胞から継続的に大量に分泌される30~150nmのビスリン脂質膜構造の小胞の一種であり、細胞間通信交流の担体として親細胞由来のタンパク質、核酸、代謝小分子等の特異的な成分を担持する。多くの研究により、エクソソームは、腫瘍の発展に関与している多くのイベントを示し、免疫スリップ、血管新生、腫瘍転移及び腫瘍耐性などが含まれる。エクソソームは、より早く、持続的にがん細胞に放出されて患者の血液循環系に入り、その脂質二重膜構造は、担持するタンパク質及び包まれた核酸物質を効果的に保護できる。エクソソームは、多くの臨床検体に広く安定に存在し、血液、尿、腹水、組織液、涙、唾液及び脳脊髄液等を含む。そのうち、血液や尿におけるエクソソームの数が多く、臨床サンプリングが容易である。従って、エクソソームは、体外診断研究や腫瘍臨床検出の分野での重点研究対象として考えられており、腫瘍早期診断、腫瘍転移再発評価、腫瘍異質性評価、腫瘍進行や効能の動的検出、耐性突然変異検出及び個別化用薬などの点で大きな臨床的価値を発揮することが期待されている。
【0003】
現在、エクソソームの臨床応用を実現する主な障害は、高速・安定・高純度エクソソームを効率よく抽出する標準的な方法に乏しいことである。エクソソーム精製技術には、超速遠心分離、サイズ排除クロマトグラフィー、磁気ビーズによる免疫アフィニティー捕捉、ポリエチレングリコールによる沈殿法、限外濾過、マイクロ流体などの方法が市場に数多く存在する。しかしながら、上記精製方法には次の欠点がある、1)回収率が低い。2)純度が低い。3)分離したエクソソームの完全性が悪い。4)再現性が悪い。5)不要な不純物を導入する可能性がある。6)バイオマーカーが必要である、7)時間と労力を費やす。8)コストが高い。超速遠心分離は、現在最も汎用されているエクソソーム精製方法であるが、例えば、収量が低く(回収率:5%~25%)、操作過程が煩雑であり、時間がかかり(>4時間)、高価な設備に依存するといった制限がある。また、免疫捕捉による分離方法は、中等乃至高純度のエクソソームを収集することは可能であるが、これらの方法は抗体の特異性や煩雑な操作手順に限定され、標準化が困難であり、大量及び大体積の臨床検体の処理には適していない。最近では、マイクロフロー制御技術によるエクソソーム分離方法も数多く報告されており、流体動力や音響分離を含み、免疫捕捉と誘電泳動がある。しかしながら、依然として、スループットが低く、操作過程が複雑で、繰り返し性が悪いという問題は解決できず、異なる実験室間の結果の整合性を実現することは困難であった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
そこで、本発明は、高純度のエクソソームを迅速、安定、効率的に採取できる分離装置を提供する。
【0005】
また、上記分離装置により、液体サンプル中の標的粒子を分離する方法を提供することも必要である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る分離装置は、複数の液体サンプルから標的粒子を分離精製するために用いられ、
複数の分離チップと、真空システムを備え、
各分離チップは、前記液体サンプルを収容するためのサンプルプールと、前記サンプルプールの両側に位置する第1開口及び第2開口とを含み、
前記真空システムは、各分離チップの第1開口に連接される第1真空ポンプと、各分離チップの第2開口に連接される第2真空ポンプとを含み、
前記第1真空ポンプは、前記第1開口を通じて前記分離チップ内に負圧を発生させて、前記サンプルプール内の液体サンプルにおける標的粒子を分離し、前記第2真空ポンプは、前記第2開口を通じて前記分離チップ内に負圧を発生させて、前記サンプルプール内の液体サンプルにおける標的粒子を分離する。
【0007】
また、本発明は、前記分離装置を用いて、液体サンプルにおける標的粒子を分離するための方法を提供する。この方法は、
前記分離チップのサンプルプールに液体サンプルを供給するステップと、
前記第1真空ポンプを動作させて、前記第1開口を介して前記分離チップ内に負圧を発生させるステップと、
前記第1真空ポンプの運行を停止するステップと、
前記第2真空ポンプを動作させて、前記第2開口を介して前記分離チップ内に負圧を発生させるステップと、
前記第2真空ポンプの運行を停止して、前記第1真空ポンプを再運行するステップと、
以上のステップを繰り返して、前記第1真空ポンプと前記第2真空ポンプとを交互に動作させ、前記第1開口と前記第2開口とで負圧を交互に切り替えることにより、前記サンプルプール内の前記液体サンプルにおける標的粒子を分離するステップと、を備える。
【0008】
前記分離装置は、大体積の生体サンプルから、エクソソームを高効率で精製するという特徴を有する。前記分離装置は、1)ハイスループット(分離チップを並列接続して、複数の液体サンプルを並列処理することを実現する)、2)自動化処理、3)簡易かつ標準化動作、4)高収率かつ純度、5)マーカーフリー、6)コストパフォーマンス、7)高安定性とリピート性、8)血漿、尿、脳髄液、唾液、涙液、乳液及び細胞培養液など様々な生体サンプルを処理できる、という利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の実施形態により提供される分離チップの構成を示す図である。
図2図1に示す分離チップの構成を示す分解図である。
図3図1に示す分離チップと従来の限外濾過法とをそれぞれ用いてエクソソーム分離を行う濾過速度を示す模式図である。
図4】本発明の実施形態による分離装置の機能ブロックを示す図である。
図5A図4に示す分離装置の液路の模式図である。
図5B図4に示す分離装置の分離制御システムのプログラムブロック図である。
図6】本発明の一実施例における分離チップに加わる負圧を示す図である。
図7図4に示す分離装置のサンプリングモジュールの動作原理図である。
【0010】
本発明は、以下の具体的な実施形態において、上記の図面と併せてさらに説明する。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の図面を合せて、本発明の実施形態の技術提案を明確かつ完全に記載する。明らかなように、説明した実施例は、すべての実施例ではなく、本発明の一部の実施例に過ぎない。本発明の実施例に基づいて、当業者は、創造的な労働なしになし得る全ての他の実施例が、すべて本発明の保護範囲内に属される。
【0012】
あるコンポーネントが他のコンポーネントに「固定される」と称される場合、それは他のコンポーネントに直接に固定されていてもよく、中間媒体が存在してもよい。あるコンポーネントが他のコンポーネントに「接続」とみなされる場合、それは直接に他のコンポーネントに接続されてもよく、同時に中間媒体が存在してもよい。あるコンポーネントが他のコンポーネントに「設けられる」とみなされる場合、それは直接に他のコンポーネントに設けられてもよく、同時に中間媒体が存在してもよい。
【0013】
別段の定義がない限り、本明細書で使用されるすべての技術及び科学用語は、本発明の技術分野に属する技術者が一般的に理解する意味と同じである。本明細書で使用される用語は、具体的な実施形態を説明する目的だけであり、本発明を限定することを意図するものではない。
【0014】
本発明の実施形態によれば、液体サンプル中の異なるサイズの粒子を分離精製して、特定のサイズの標的粒子を得るための分離チップが提供される。この液体サンプルは、ヒト血漿、血清、脳髄液、唾液、尿、涙液、乳液、胃液及び細胞培養液などが挙げられる。図1は、本発明の一実施形態に係る分離チップ10の構成を示す図である。図1に示すように(同時に図2を併せて参照する)、分離チップ10は、サンプルプール11と、第1チャンバー16と、第2チャンバー18とを有する。第1チャンバー16及び第2チャンバー18は、サンプルプール11の対向する両側にそれぞれ位置している。
【0015】
サンプルプール11は、サンプルプール11の対向する両側に設けられた第1側蓋シート111及び第2側蓋シート112を備えている。第1側蓋シート111には、第1バンプ12が設けられている。第1バンプ12は、当該第1側蓋シート111を、第1バンプ12の一方側に位置する第1カバーシート1111と、第1バンプ12の他方側に位置する第2カバーシート1112とに区画する。第2側蓋シート112には、第1バンプ12に対向する第2バンプ13が設けられている。第2バンプ13は、当該第2側蓋シート112を、第2バンプ13の一方側に位置する第3カバーシート1121と、第2バンプ13の他方側に位置する第4カバーシート1122とに区画している。第1カバーシート1111、第3カバーシート1121、第1バンプ12及び第2バンプ13は、協働してサンプルプール11を囲んで形成している。サンプルプール11の上端部には、液体サンプルを投入及び/または取り出すためのサンプルプール開口部113が設けられている。
【0016】
第1側蓋シート111の底部には、第1バンプ12と対向する位置にチップベース14が設けられている。第1バンプ12とチップベース14との間には、第1濾過膜15が設けられている。第1濾過膜15は、第2カバーシート1112に対向している。第2カバーシート1112、第1濾過膜15及びチップベース14は、協働して第1チャンバー16を囲んで形成されている。第1チャンバー16とサンプルプール11とは、第1濾過膜15を介して連通している。第1チャンバー16には、当該第1チャンバー16を外界と連通させるための第1開口161が設けられている。
【0017】
第2側蓋シート112の底部には、第2バンプ13と対向する位置に別のチップベース14が設けられている。第2バンプ13とチップベース14との間には、第2濾過膜17が設けられている。第2濾過膜17は、第4カバーシート1122に対向している。第4カバーシート1122、第2濾過膜17及びチップベース14は、協働して第2チャンバー18を囲んで形成されている。第2チャンバー18とサンプルプール11とは、該第2濾過膜17を介して連通されている。第2チャンバー18には、当該第2チャンバー18を外界と連通させるための第2開口181が設けられている。
【0018】
本実施形態において、第1バンプ12と第2バンプ13との間には、サンプルプール11内の液体サンプルが当該サンプルプール11から流出可能にするための間隙(図示せず)が設けられている。当該間隙は、第1濾過膜15又は第2濾過膜17を介して第1チャンバー16又は第2チャンバー18にそれぞれ進入する。より具体的には、第1バンプ12のチップベース14に向かう側には、第1係止溝121が開設されている。チップベース14の対応する位置には、第2係止溝(図示せず)が開設されている。第1濾過膜15は、第1係止溝121と第2係止溝との間に係止されて固定されている。同様に、第2バンプ13のチップベース14に向かう側には、第3係止溝131が開設されている。チップベース14の対応する位置には、第四係止溝(図示せず)が開設されている。第2濾過膜17は、第3係止溝131と第四係止溝との間に係止されて固定されている。
【0019】
分離チップ10は、対称構造を有する。なお、分離チップ10は、非対称構造であってもよいし、本発明の思想を実現し得る他のいかなる構造であってもよい。
【0020】
分離チップ10を使用する際に、液体サンプルをサンプルプール11に入れて、第1開口161と第2開口181とをそれぞれ真空システム30(図4を参照)に接続する。第1開口161を通じて真空システム30が第1チャンバー16を吸引すると、当該第1チャンバー16には負圧が発生する。第1チャンバー16の負圧作用によって、サンプルプール11内の液体サンプルにおける第1濾過膜15の濾過孔径よりも小さいサイズの成分が、第1濾過膜15を介して第1チャンバー16に流入する。第2開口181を通じて真空システム30が第2チャンバー18を吸引すると、当該第2チャンバー18には負圧が発生する。第2チャンバー18の負圧作用によって、サンプルプール11内の液体サンプルにおける第2濾過膜17の濾過孔径よりも小さいサイズの成分が、第2濾過膜17を介して該第2チャンバー18に流入する。一実施例において、真空システム30は、二つの負圧ポンプであって、一方の負圧ポンプが第1開口161に接続され、他方の負圧ポンプが第2開口181に接続され、2つの負圧ポンプが交互に負圧を供給してもよい。第1チャンバー16と第2チャンバー18とを交互に繰り返して負圧を発生させることで、液体サンプルのうち第1濾過膜15と第2濾過膜17との孔径よりも大きなサイズの成分がサンプルプール11に残すように、液体サンプルを効率よく第1濾過膜15と第2濾過膜17とを交互に繰り返して流させることができる。分離チップ10は、第1濾過膜15と第2濾過膜17との表面に吸着した成分が交互に繰り返される負圧変化において濾過膜の表面から脱落しやすくなり、濾過膜の膜孔が目詰まりするのを効果的に防止できる構造となっている。
【0021】
交互負圧により、交換式濾過及び膜発振を発生させ、分離期間中にエクソソームが再懸濁して膜詰まりを回避できるようにする。実験結果は、図3のように、従来の膜分離と比較すると、30分以内に、前述の分離チップ10は20mLの尿と細胞培養液を処理することができ、従来の限外濾過法(3mL)を遥かに超える。
【0022】
分離チップ10のサンプルプール11、第1チャンバー16及び第2チャンバー18の本体部分は、プラスチック、ガラス、金属または複合材料からなることができる。一実施例において分離チップ10のサンプルプール11、第1チャンバー16及び第2チャンバー18の本体部分は、ポリエチレンイミン(PEI)やポリメチルメタクリレート(PMMA)等の透明材料によって作られている。分離チップ10の加工方法は、加工成形及び射出成形を含むが、これらに限らない。第1濾過膜15及び第2濾過膜17は、同一の膜材料から作製されてもよいし、異なる膜材料から作製されてもよい。第1濾過膜15と第2濾過膜17とは、同一の平均濾過膜孔径及び/又は孔径分布を有していてもよく、異なる平均濾過膜孔径及び/又は孔径分布を有していてもよい。第1濾過膜15(又は該第2濾過膜17)は、1種類の膜材料から作られていてもよいし、複数種類の膜材料が複合して形成されたものであってもよい。なお、第1濾過膜15及び第2濾過膜17は、多孔質セラミック材料、多孔質プラスチック材料及び多孔質金属材料等の多孔質材料であってもよい。具体的には、第1濾過膜15及び第2濾過膜17は、それぞれ、陽極酸化アルミナ膜(AAO)、ポリカーボネート膜、アセテートファイバ膜、ポリエチレン膜、ポリプロピレン膜、及びポリスチレン膜から選択されるいずれか1種以上であってもよい。具体的には、陽極酸化アルミナ膜の気孔率が高く、孔径が均一である点で、第1濾過膜15及び第2濾過膜17として陽極酸化アルミナ膜を用いる。
【0023】
第1濾過膜15及び第2濾過膜17の孔径は、液体サンプル及び標的粒子の種類に応じて設計することができる。一実施例において、第1濾過膜15と第2濾過膜17との孔径は、20nmであり、エクソソームのサイズ(30~150nm)よりも僅かに小さく、200nmの濾過膜を透過した細胞培養液サンプルにおけるエクソソームを分離精製するために用いられることができる。
【0024】
本発明の実施形態は、一種の分離装置を更に提供している。図4は、分離装置100のプログラムモジュールを模式的に示している。分離装置100は、本体モジュール101と、補助モジュール102と、ヒューマンマシンインタラクティブモジュール103とを備えている。
【0025】
本体モジュール101は、複数の液体サンプルを同時に分離精製し、精製の効率を高めるためのものである。本体モジュール101は、第1支持台1と、第2支持台2と、液体供給ユニット20と、真空システム30と、周波数変換モジュール40と、液体採取ユニット50とを備えている。
【0026】
図7は、分離装置100のサンプリングモジュールの動作原理を示している。第1支持台1は、上述した分離チップ10を複数備えている。一実施例において、第1支持台1における分離チップ10の数は12個である。第1支持台1は、駆動部材(例えば、図示しないモータ)の作用によって第1回転軸3の周りに回転可能であり、例えば、時計回り又は反時計回りを含んでもよい。これにより、第1支持台1における各分離チップ10を回転させて、各分離チップ10をそれぞれ第1所定位置5まで移動させてもよい。前述の第1所定位置5は、サンプリング位置である。ここで、複数の分離チップ10は、第1支持台1の第1回転軸3を中心として、第1支持台1に取り囲むように設けられる。勿論、第1支持台1における分離チップ10の数は、必要に応じて増加または減少されてもよい。
【0027】
第2支持台2は、複数の容器21を含んでいる。一実施例において容器21の数が、分離チップ10の数と同じ12個である。第2支持台2は、一駆動部材(例えば、図示しないモータ)の作用により第2回転軸4を中心に回転可能であり、例えば時計回り又は反時計回りを含んでもよい。これにより、第2支持台2での各容器21が回転し、各容器21が第2所定位置6にそれぞれ移動する。なお、複数の容器21は、第2支持台2の第2回転軸4を中心として、第2支持台2の周囲に設けられている。
【0028】
液体供給ユニット20は、測定対象サンプル室210と、第1制御弁220と、洗浄液室230と、を備える。測定対象サンプル室210は、液体サンプルを格納するためのものである。前述の液体サンプルは、同一のサンプルであってもよいし、複数の異なるサンプルであってもよい。洗浄液室230は、洗浄液を収容するためのものである。第1制御弁220は、測定対象サンプル室210内の液体サンプル及び洗浄液室230内の洗浄液の容器21内への注入を制御するものである。
【0029】
液体採取ユニット50は、少なくとも1つのサンプリング部材510を含む。サンプリング部材510は、第3回転軸7の回りに回転可能であり、サンプリング軌跡Tを形成する。第1所定位置5及び第2所定位置6は、洗浄液のサンプリング軌跡Tに位置する。サンプリング部材510は、第2所定位置6に位置する容器21内の液体サンプル又は洗浄液を採取し、且つ採取した液体サンプル又は洗浄液を第1所定位置5に位置する分離チップ10の中に注入して、分離チップ10で標的粒子を分離して洗浄する。一実施例においてサンプリング部材510はサンプリング針であり、このサンプリング針の数は2つである。そのうち、一方のサンプリング部材510が第1支持台1と第2支持台2との接続線の一方側に位置し、他方のサンプリング部材510が第1支持台1と第2支持台2との前述の接続線の他方側に位置している。各サンプリング部材510は、1つのサンプリング軌跡Tに対応している。第1所定位置5及び第2所定位置6の数は、それぞれ2つである。一方の第1所定位置5及びそれに対応する第2所定位置6は、一方のサンプリング部材510のサンプリング軌跡Tに位置し、他方の第1所定位置5及びそれに対応する第2所定位置6は、他方のサンプリング部材510のサンプリング軌跡Tに位置する。2つのサンプリング部材510は、同時に作動又は単独で作動可能である。各液体供給ユニット20は、さらに、液流に動力を供給するための動力ポンプ又は吸気ポンプなどの動力部品を含んでいてもよい。
【0030】
真空システム30は、第1支持台1での各分離チップ10の第1チャンバー16及び第2チャンバー18にそれぞれ負圧を発生させる。真空システム30は、2つの独立した真空システムであってもよいし、設計された一つの真空システムであってもよい。真空システム30は、マイクロ真空ポンプやマイクロガス吸引ポンプ等のデバイスを備えていてもよい。なお、真空システム30とそれぞれの分離チップ10との間は、気密性の良い配管により接続されている。一実施例において真空システム30は、第1真空ポンプ310と、第2真空ポンプ320とを含む。複数の分離チップ10は、第1真空ポンプ310と第2真空ポンプ320との間に並列に接続される。即ち、第1真空ポンプ310は、各分離チップ10の第1開口161に接続され、第2真空ポンプ320は、各分離チップ10の第2開口181に接続されている。
【0031】
周波数変換モジュール40は、真空システム30に電気的に接続されており、真空システム30に供給される電源電圧を制御することにより、各チャンバー16及び各チャンバー18内に負圧を交互に発生させることができる。複数の分離チップ10が並列に接続されているため、全ての分離チップ10に同時に作用する同じ強さの交互負圧を発生させることができる。他の実施例では、第1支持台1での分離チップ10が同時に動作する数(6個よりも大きい)が多い場合には、複数の当該分離チップ10を2つ又は2つ以上のグループに分けて、それぞれ複数の真空システム30に並列に接続することができる。このように、負圧が安定して動作し、減衰しないことを保証する。
【0032】
一実施形態では、周波数変換モジュール40は、周波数変換器410と、この周波数変換器410に接続された第2制御弁420とを含む。第2制御弁420は、液路変換機であってもよく、電磁弁や回転弁を含むが、これらに限らない。第2制御弁420は、それぞれ第1真空ポンプ310及び第2真空ポンプ320のいずれか一方と連通して、第1真空ポンプ310と第2真空ポンプ320とを交互に繰り返して動作させる。例えば、第2制御弁420を第1真空ポンプ310に連通して、周波数変換器410により第1真空ポンプ310の動作を制御する。各第1開口161を通じて吸引して第1チャンバー16内に負圧を発生させ、各サンプルプール11内の液体サンプル中の液体の第1濾過膜15の孔径よりも小さいサイズの成分が負圧により、それぞれの第1濾過膜15を通過して、それぞれの第1チャンバー16に入るとともに、各サンプルプール11内の液体サンプルがそれぞれの第2濾過膜17において還流(back flоw)現象を生じ、それぞれの第2濾過膜17に付着した成分を減少または除去し、濾過分離過程に濾過膜が詰まることを回避する。その後、周波数変換器410は、第1真空ポンプ310の運行を停止するように制御する。その後、第2制御弁420を第2真空ポンプ320と連通するように切り換えて、周波数変換器410で第2真空ポンプ320の運行を制御し、各第2開口181からの吸引によって各第2チャンバー18内に負圧を発生させて、各サンプルプール11内の液体サンプル中の液体の第2濾過膜17の孔径よりも小さいサイズの成分が負圧により、各第2濾過膜17を通過して各第2チャンバー18に進入させる。これと同時に、各サンプルプール11内の液体サンプルがそれぞれの第1濾過膜15において還流現象を生じ、それぞれの第1濾過膜15に付着した成分を低減または除去し、濾過分離過程に濾過膜が詰まることを回避する。さらにその後、周波数変換器410は、第2真空ポンプ320の運行を停止するように制御する。上記のステップを複数回繰り返す。
【0033】
図6に示すように、一実施例において真空システム30は、各チャンバー16及び各チャンバー18内に交互に発生した負圧は、周期の台形パルス信号を形成する。前述の台形パルス信号の強度は、-10~-80kpaである。他の実施例では、この台形パルス信号は、周期的な正弦波信号または矩形信号に置き換えられてもよい。別の実施例では、血漿サンプルにおける蛋白含量が多いことに鑑みて、濾過膜の目詰まり現象をさらに回避するために、一方のチャンバー内に負圧を発生させつつ他方のチャンバー内に陽圧を発生させることで、濾過膜における還流現象を強化してもよい。作業中、この交互に変化する負圧の強度、交互時間、周期及び全動作時間などは、液体サンプルの種類に応じて調整されるので、濾過膜における還流効果が最適になる。交互負圧の作用により、液体サンプル中の小さなサイズの不純物(核酸分子(RNA、DNA)、脂質タンパク質、脂質、タンパク質およびペプチド鎖等を含むが、これらに限定されない)は、それぞれの第1濾過膜15およびそれぞれの第2濾過膜17を経て、各第1開口161および各第2開口181から吸い出される一方、サイズの大きなエクソソームは、それぞれのサンプルプール11に残る。最終的に、それぞれのサンプルプール11から、より純度の高い濃縮されたエクソソームサンプルが得られる。各第1濾過膜15と各第2濾過膜17は互いに対立している。
【0034】
さらに、図5Aに示すように、本体モジュール101は、複数の第1液体貯留室330と、複数の第2液体貯留室340とをさらに備えていてもよい。第1液体貯留室330は、第1真空ポンプ310と各分離チップ10の第1開口161との間に設けられ、且つ第1真空ポンプ310と各分離チップ10の第1チャンバー16にそれぞれ連通している。第2液体貯留室340は、第2真空ポンプ320と各分離チップ10の第2開口181との間に設けられ、且つ第2真空ポンプ320と各分離チップ10の第2チャンバー18とにそれぞれ連通している。第1液体貯留室330及び第2液体貯留室340のそれぞれは、安全ボトルとして、各分離チップ10内の液体の真空ポンプへの進入を回避してもよいし、分離するたびに各分離チップ10に残留した液体や洗浄液を収集する廃液ボトルとしてもよい。
【0035】
補助モジュール102は、分離装置100の安定な運行を確保し、且つ分離精製効果を高めるためのものである。補助モジュール102は、検出器60と、コントローラ70とを備える。
【0036】
検出器60は、分離チップ10毎のサンプルプール11における液面高さを検出するためのものである。
【0037】
コントローラ70は、検出器60及び周波数変換モジュール40に電気的に接続されており、検出器60により検出された液面レベルを取得し、その液面レベルと液体サンプルの予め設定された添加量とを合わせて、液体サンプルと洗浄液との添加が継続されているか、分離精製が完了しているかを判断する。液体サンプルが分離精製を完了したと判断すると、コントローラ70は、分離チップ10の第1チャンバー16及び第2チャンバー18内に負圧が発生することが停止されるように、周波数変換モジュール40の動作を停止するように制御する。なお、コントローラ70は、ハードウェア又はファームウェアに内蔵された論理関係の集合であってもよいし、プログラミング言語で記述された一連のメモリ又は他のファームウェアに格納されたプログラムであってもよい。一実施例においてコントローラ70は、予め設定された負圧パラメータに応じて、周波数変換モジュール40を制御して、第1チャンバー16及び第2チャンバー18内に交互に対応する負圧を発生させる。
【0038】
前述のヒューマンマシンインタラクティブモジュール103は、実際の分離精製プロセスにおける使用需要に応えるためのものであり、分離装置100に操作性を持たせている。ヒューマンマシンインタラクティブモジュール103は、ヒューマンマシンインターフェース80を含む。このヒューマンマシンインターフェース80によって、ユーザは分離装置100の入力ユニット(例えば、タッチパネル、キーボード、マウス等)を介して分離精製パラメータを入力する。即ち、ユーザは、このヒューマンマシンインターフェース80を介して、分離精製プロセスに必要な分離精製パラメータを予め設定することができる。一実施例において、前述の分離精製パラメータは、液体サンプルの予め設定された添加量、洗浄液の予め設定された添加量、および負圧パラメータを含む。負圧パラメータは、負圧の強度、交互時間、周期、および全動作時間などの少なくとも1つを含む。コントローラ70は、さらに、ヒューマンマシンインターフェース80と電気的に接続されている。これにより、コントローラ70は、ヒューマンマシンインターフェース80を介して入力された分離精製パラメータを取得し、且つこの分離精製パラメータに基づいて、周波数変換モジュール40または液体供給ユニット20の対応する作業を制御することができる。
【0039】
一実施例において、ヒューマンマシンインタラクティブモジュール103は、外部装置(例えば、ユーザのUディスク、携帯電話など)に接続するためのトランスファインタフェース81をさらに含む。トランスファインタフェース81は、外部装置に分離精製パラメータを転送し、ユーザが各液体サンプルの分離精製が完了した後、関連する分離精製データをレビューすることができるようにする。ここで、トランスファインタフェース81は、USBポート又は無線ポートであってもよい。
【0040】
本発明によって提供される分離装置によれば、液体サンプルにおける標的粒子を自動化して分離して、サンプルプール内の濾過膜を通過できない成分を分離できるとともに、サンプルプールの両側のキャビティ内の負圧変化によりサンプルプール内の気液の流れ方向を変化させて、濾過膜の表面に付着する成分を低減し、濾過分離プロセスにおいて濾過膜が詰まることを回避できる。この分離装置は、低コストで使い勝手がよく、実験者の作業量を極めて低減したものである。
【0041】
本発明の実施形態は、さらに、分離装置100に適用される分離制御システム200を提供している。分離装置100の補助モジュール102は、メモリ71をさらに含む。分離制御システム200は、メモリ71に記憶されている。分離制御システム200は、1つ又は複数のプログラムコードからなるプログラムモジュールを含む。コントローラ70が分離制御システム200の各プログラムモジュールをロードして実行することにより、分離装置100の分離精製機能を実現する。このうち、図4及び5Bに示すように、分離制御システム200は、油路と機械モジュール202とメイン制御モジュール203とを含む。
【0042】
油路と機械モジュール202は、それぞれのサンプリング部材510が対応する分離チップ10のサンプルプール11に液体サンプル及び洗浄液を注入するように制御する。
【0043】
メイン制御モジュール203は、周波数変換モジュール40を介して真空システム30を制御して、各分離チップ10の第1チャンバー16と第2チャンバー18内に交互に負圧を発生させる。一実施形態では、真空システム30は、各分離チップ10の第1開口161に接続される第1真空ポンプ310と、各分離チップ10の第2開口181に接続される第2真空ポンプ320とを含む。周波数変換モジュール40は、周波数変換器410と、この周波数変換器410に接続された第2制御弁420とを含む。メイン制御モジュール203は、第1真空ポンプ310と連通するように第2制御弁420を制御して、周波数変換器410で第1真空ポンプ310の運行を制御し、各第1開口161を介して吸気することで各第1チャンバー16内に負圧を発生させる。メイン制御モジュール203は、さらに、第2制御弁420を制御して、第2真空ポンプ320と連通するように切り換える。これにより、周波数変換器410は、第2真空ポンプ320の運行を制御し、各第2開口181の吸引によって各第2チャンバー18内に負圧を発生させるようにする。
【0044】
一実施例において、分離装置100は、各分離チップ10のサンプルプール11内の液面高さを検出するための検出器60を更に含む。分離制御システム200は、検出部60により検出された液面レベルを取得し、且つ当該液面レベルと液体サンプルの予め設定された投入量とに基づいて、液体サンプルの分離精製が完了したか否かを判定するための駆動制御モジュール201をさらに含む。駆動制御モジュール201は、液体サンプルに対する分離精製を完了したと判断すると、メイン制御モジュール203に対して停止指令を送信する。メイン制御モジュール203は、この停止指令に応答して、周波数変換モジュール40の作業を停止するように制御することにより、対応する分離チップ10の第1チャンバー16及び第2チャンバー18内に負圧を発生することを停止する。
【0045】
一実施例において、駆動制御モジュール201は、予め設定された負圧パラメータをさらに取得して、前述の予め設定された負圧パラメータを含む第1制御指示をメイン制御モジュール203に送信する。メイン制御モジュール203は、第1制御指令に応答して、前述の予め設定された負圧パラメータに応じて、周波数変換モジュール40を制御して各第1チャンバー16及び各第2チャンバー18内に対応する負圧を交互に発生させる。駆動制御モジュール201は、さらに、液体サンプル毎に予め設定された添加量を取得し、且つ油路と機械モジュール202に第2制御指令を送信する。この油路と機械モジュール202は、当該第2制御指令に応答して、液体サンプル毎に予め設定された添加量に応じて、サンプリング部材510毎の作動時間を制御して、予め設定された添加量に応じた液体サンプルをサンプルプール11に流入させる。駆動制御モジュール201は、洗浄液の予め設定された添加量を取得し、且つ油路と機械モジュール202に第3制御指令を送信する。油路と機械モジュール202は、さらに、第3制御指令に応答し、且つ洗浄液毎の予め設定された添加量に基づいて、各サンプリング部材510の作動時間を制御することにより、この予め設定された添加量に適合する洗浄液をそれぞれ対応するサンプルプール11に流入させる。
【0046】
本発明の実施形態は、さらに、液体サンプルにおける標的粒子を分離する方法を提供し、この方法は、以下のステップを含む。
【0047】
ステップ1では、複数の分離チップ10を第1支持台1の上に載置し、複数の液体サンプルを第2支持台2の上に載置する。
【0048】
ステップ2では、前述の複数の液体サンプルがそれぞれ第2所定位置6に移動できるように第2支持台2の回転を制御する。
【0049】
ステップ3では、前述の複数の分離チップ10がそれぞれ第1所定位置5に移動できるように第1支持台1の回転を制御する。
【0050】
ステップ4では、サンプリング軌跡Tを形成するように、サンプリング部材510の回転を制御し、第1所定位置5及び第2所定位置6が前述のサンプリング軌跡Tに位置する。これにより、サンプリング部材510は、第2所定位置6に位置する液体サンプルを採取し、且つ採取した液体サンプルを第1所定位置5に位置する分離チップ10に加える。
【0051】
ステップ5では、それぞれの分離チップ10の第1開口161を通じて対応する第1チャンバー16を吸引して、対応する第1チャンバー16内に負圧を発生させる。
【0052】
ただし、吸引を行う前に、各分離チップ10の第1開口161、第2開口181をそれぞれ分離装置100の真空システム30に接続する。このように、真空システム30は、各第1開口161を介して対応する第1チャンバー16を吸引することで、対応する第1チャンバー16内に負圧を発生させる。各サンプルプール11内の液体サンプル内の液体の第1濾過膜15の孔径よりも小さいサイズの成分は、負圧により、対応する第1濾過膜15を通過して、対応する第1チャンバー16に進入する。場合によっては、第1チャンバー16の体積が相対的に小さく又は第1チャンバー16内の負圧変化が速すぎる時に、液体の第1濾過膜15の孔径よりも小さいサイズの成分は、さらに第1開口161を通って流出し、第1液体貯留室330に入っていてもよい。
【0053】
より具体的には、吸引を行う前に、液体サンプルがサンプルプール開口113を介してサンプルプール11に入れられると、このサンプルプール開口113をさらに塞ぐことができる。このサンプルプール開口113が閉鎖されると、吸引中、各サンプルプール11における対応する第1濾過膜15及び対応する第2濾過膜17の間に位置する液体の流動速度が高められることにより、対応する第1濾過膜15又は対応する第2濾過膜17の還流現象が高められ、濾過膜の表面に付着している成分が低減され、濾過分離過程における濾過膜の目詰まりが回避される。
【0054】
別の実施例では、血漿検体中における蛋白含量が多いことに鑑みて、濾過膜の目詰まり現象をさらに回避するために、ステップ5は、各第2チャンバー18内に陽圧を発生させ、濾過膜における還流現象を強化することをさらに含むことができる。
【0055】
ステップ6では、各第1チャンバー16への吸引を停止する。
【0056】
ステップ7では、各分離チップ10の第2開口181を介して対応する第2チャンバー18を吸引して、対応する第2チャンバー18内に負圧を発生させる。
【0057】
ただし、真空システム30は、対応する第2チャンバー18を第2開口181ごとに吸引することによって、対応する第2チャンバー18内に負圧を発生させる。対応する第1濾過膜15の表面に付着した成分は、対応するサンプルプール11の中に気流及び/又は液流に伴って還流する。各サンプルプール11内の液体サンプルにおける各第2濾過膜17の孔径よりも小さいサイズの成分は、負圧によって対応する第2濾過膜17を通して対応する第2チャンバー18に進入してもよい。場合によっては、第2チャンバー18の体積が相対的に小さい場合、或いは、第2チャンバー18内の負圧の変化が速すぎれば、液体中の第2濾過膜17の孔径よりも小さいサイズの成分はさらに第2開口181を通って流出し、第2液体貯留室340へ入り込むことができる。なお、ステップ4及びステップ5は、順次に前後して実行されてもよいし、同時に実行されてもよい。
【0058】
他の実施例では、血漿検体中の蛋白含量が多いことに鑑みて、濾過膜の目詰まり現象をさらに回避するために、ステップ5は、各第1チャンバー16内で陽圧を発生させて、濾過膜における還流現象を強化することをさらに含むことができる。
【0059】
ステップ8では、各チャンバー18への吸引を停止する。
【0060】
その後、ステップ5~ステップ8を複数回循環して、それぞれの液体サンプルにおいて、対応する濾過膜の孔径よりも小さい成分を除去し、対応する濾過膜の孔径よりも大きい成分を対応するサンプルプール11の中に差し止めることで、より好ましい分離精製効果を得ることができる。第1チャンバー16及び第2チャンバー18の各々内の負圧の交互変化により、濾過過程における濾過膜の透過性が改善され、濾過膜の目詰まりが低減され、濾過効果が向上される。
【0061】
一実施例において、ステップ8の後に、上述の方法は、以下のステップをさらに有していてもよい。
【0062】
ステップ7では、各分離チップ10のサンプルプール11の中に洗浄液を供給する。その後、ステップ5~ステップ8を繰り返して実行することにより、各分離チップ10が洗浄される。
【0063】
本発明の実施例による分離装置100を用いて20mLの細胞培養液サンプルを分離精製したところ、30min内で比較的高収量のエクソソームが分離された。
【0064】
この分離装置100は、大体積の生体サンプルから、エクソソームを高効率で精製するという特徴を有する。前記分離装置100は、1)ハイスループット(分離チップを並列接続して、複数の液体サンプルを並列処理することを実現する)、2)自動化処理、3)簡易かつ標準化動作、4)高収率かつ純度、5)マーカーフリー、6)コストパフォーマンス、7)高安定性とリピート性、8)血漿、尿、脳髄液、唾液、涙液、乳液及び細胞培養液など様々な生体サンプルを処理できる、という創作点がある
【0065】
上記実施形態は、本発明の好適な実施形態であるが、本発明の実施形態は、上記実施形態に限定されるものではなく、上記実施形態は、特許請求の範囲の解釈にのみ用いられるものである。しかしながら、本発明の保護範囲は、明細書に限定されるものではない。本開示の技術的範囲内において、当技術分野に精通しているいかなる技術者も、容易に考えられる変化または代替は、本発明の保護範囲内に含まれる。
【符号の説明】
【0066】
10 分離チップ
1 第1支持台
2 第2支持台
3 第1回転軸
4 第2回転軸
5 第1所定位置
6 第2所定位置
7 第3回転軸
11 サンプルプール
111 第1側蓋シート
1111 第1カバーシート
1112 第2カバーシート
112 第2側蓋シート
1121 第3カバーシート
1122 第4カバーシート
113 ール開口部
12 第1バンプ
121 第1係止溝
13 第2バンプ
131 第3係止溝
14 チップベース
15 第1濾過膜
16 第1チャンバー
161 第1開口
17 第2濾過膜
18 第2チャンバー
181 第2開口
20 液体供給ユニット
21 容器
30 真空システム
40 周波数変換モジュール
50 液体採取ユニット
60 検出器
70 コントローラ
71 メモリ
80 ヒューマンマシンインターフェース
81 トランスファインタフェース
100 分離装置
101 本体モジュール
102 補助モジュール
103 ヒューマンマシンインタラクティブモジュール
200 分離制御システム
201 駆動制御モジュール
202 油路と機械モジュール
203 メイン制御モジュール
210 測定対象サンプル室
220 第1制御弁
230 洗浄液室
310 第1真空ポンプ
320 第2真空ポンプ
330 第1液体貯留室
340 第2液体貯留室
410 周波数変換器
420 第2制御弁
510 サンプリング部材
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図6
図7