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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-12
(45)【発行日】2023-07-21
(54)【発明の名称】微小チップ部品用はんだ組成物
(51)【国際特許分類】
   B23K 35/363 20060101AFI20230713BHJP
   B23K 35/26 20060101ALI20230713BHJP
   C22C 13/02 20060101ALI20230713BHJP
   H05K 3/34 20060101ALI20230713BHJP
【FI】
B23K35/363 C
B23K35/363 E
B23K35/26 310A
C22C13/02
H05K3/34 512C
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2018184394
(22)【出願日】2018-09-28
(65)【公開番号】P2020049539
(43)【公開日】2020-04-02
【審査請求日】2021-08-28
(73)【特許権者】
【識別番号】390005223
【氏名又は名称】株式会社タムラ製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100139996
【弁理士】
【氏名又は名称】太田 洋子
(72)【発明者】
【氏名】酒井 悠希
(72)【発明者】
【氏名】杉本 淳
(72)【発明者】
【氏名】柴▲崎▼ 正訓
【審査官】櫛引 明佳
(56)【参考文献】
【文献】特表2005-505422(JP,A)
【文献】特開2005-093145(JP,A)
【文献】特開2017-170465(JP,A)
【文献】特開2015-098035(JP,A)
【文献】特開平07-246493(JP,A)
【文献】特開2009-065008(JP,A)
【文献】特開2019-147185(JP,A)
【文献】特開昭63-281794(JP,A)
【文献】特開平05-008081(JP,A)
【文献】特開平07-144293(JP,A)
【文献】特開平10-230388(JP,A)
【文献】国際公開第2004/108345(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 35/363
B23K 35/26
H05K 3/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロジン系樹脂(A)と、活性剤(B)と、溶剤(C)とを含有するフラックス組成物と、
はんだ合金からなる合金粉末(D)とを含有し、
前記溶剤(C)は炭素数が18であって常温で液状の高級アルコール(C-1)として、2-オクチルデカノールを含有し、
前記溶剤(C)全量の配合量は、フラックス組成物全量に対して20質量%以上40質量%以下であり、
前記常温で液状の高級アルコール(C-1)の配合量は、前記溶剤(C)全量に対して10質量%以上30質量%以下であることを特徴とする微小チップ部品用はんだ組成物。
【請求項2】
ロジン系樹脂(A)と、活性剤(B)と、溶剤(C)とを含有するフラックス組成物と、
はんだ合金からなる合金粉末(D)とを含有し、
前記溶剤(C)は炭素数が18であって常温で液状の高級アルコール(C-1)として、2-ヘキシルドデカノールを含有し、
前記溶剤(C)全量の配合量は、フラックス組成物全量に対して20質量%以上40質量%以下であり、
前記常温で液状の高級アルコール(C-1)の配合量は、前記溶剤(C)全量に対して10質量%以上30質量%以下であることを特徴とする微小チップ部品用はんだ組成物。
【請求項3】
ロジン系樹脂(A)と、活性剤(B)と、溶剤(C)とを含有するフラックス組成物と、
はんだ合金からなる合金粉末(D)とを含有し、
前記溶剤(C)は炭素数が18であって常温で液状の高級アルコール(C-1)として、2-オクチルデカノールおよび2-ヘキシルドデカノールを含有し、
前記溶剤(C)全量の配合量は、フラックス組成物全量に対して20質量%以上40質量%以下であり、
前記常温で液状の高級アルコール(C-1)の配合量は、前記溶剤(C)全量に対して10質量%以上30質量%以下であることを特徴とする微小チップ部品用はんだ組成物。
【請求項4】
前記溶剤(C)全量の配合量は、フラックス組成物全量に対して20質量%以上40質量%以下であり、
前記常温で液状の高級アルコール(C-1)の配合量は、前記溶剤(C)全量に対して12質量%以上28質量%以下であることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の微小チップ部品用はんだ組成物。
【請求項5】
前記ロジン系樹脂(A)として、水添アクリル変性ロジン樹脂を含むことを特徴とする請求項1から請求項のいずれか1項に記載の微小チップ部品用はんだ組成物。
【請求項6】
更に、酸化防止剤としてヒンダードフェノール系酸化防止剤を含むことを特徴とする請求項1から請求項のいずれか1項に記載の微小チップ部品用はんだ組成物。
【請求項7】
更に、チクソ剤をフラックス組成物全量に対して5質量%以上10質量%以下含むことを特徴とする請求項1から請求項のいずれか1項に記載の微小チップ部品用はんだ組成物。
【請求項8】
前記はんだ合金からなる合金粉末(D)は液相線温度が230℃以上245℃以下のはんだ合金からなることを特徴とする請求項1から請求項のいずれか1項に記載の微小チップ部品用はんだ組成物。
【請求項9】
前記はんだ合金からなる合金粉末(D)はSbを5質量%含み、残部がSnからなるはんだ合金からなることを特徴とする請求項に記載の微小チップ部品用はんだ組成物。
【請求項10】
請求項1から請求項のいずれか1項に記載の微小チップ部品用はんだ組成物を用いて形成されるはんだ接合部を有することを特徴とする電子回路実装基板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、微小チップ部品用はんだ組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
プリント配線板やシリコンウエハといった基板上に形成される電子回路に電子部品を接合する接合材料としては、主としてはんだ合金が用いられている。
このはんだ合金を用いた接合方法としては、例えばはんだ合金粉末とフラックス組成物とを混合したはんだ組成物を基板に印刷して行う方法が存在する。
【0003】
近年、電子機器の高性能化に伴い、電子回路実装基板も高性能化及び高密度化が進んでいる。そのため、電子回路基板に実装される電子部品も更に微小化が進んでいる。
従来使用される一般的なはんだ組成物の場合、微小な電子部品を電子回路基板に実装する際に印刷にじみやはんだブリッジが生じ易く、はんだ接合不良の発生要因となっていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2017-209690号公報
【0005】
特許文献1には、粘度安定性に優れるはんだ用フラックスとして、有機溶剤の配合量を30質量%以上40質量%未満とするはんだ用フラックスが開示されている。
【0006】
フラックス組成物に含まれる有機溶剤の配合量を減少させると、はんだ組成物の粘度安定性、印刷性は向上し得る。しかし一方で、このようなはんだ組成物の場合、特に微小なチップ部品の実装においては、チップ立ちが増加し易いという問題があった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的はこれらの課題を解決するものであり、特に微小なチップ部品の実装に際しても、印刷にじみ及びはんだブリッジの発生を抑制すると共に、チップ立ちの発生も抑制し得るはんだ組成物及びこれを用いて形成されるはんだ接合部を有する電子回路実装基板に関する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のはんだ組成物は、微小チップ部品用のはんだ組成物であって、ロジン系樹脂(A)と、活性剤(B)と、溶剤(C)とを含有するフラックス組成物と、はんだ合金からなる合金粉末(D)とを含有し、前記溶剤(C)は炭素数が12以上22以下であって常温で液状の高級アルコール(C-1)を含有することをその特徴とする。
【0009】
また前記炭素数が12以上22以下であって常温で液状の高級アルコール(C-1)はアルキル鎖が分岐鎖状であることが好ましい。
【0010】
また前記炭素数が12以上22以下であって常温で液状の高級アルコール(C-1)はアルキル鎖がC-2位で分岐鎖を有することが好ましい。
【0011】
また前記炭素数が12以上22以下であって常温で液状の高級アルコール(C-1)は2-アルキルアルカノールであることが好ましい。
また前記炭素数が12以上22以下であって常温で液状の高級アルコール(C-1)はイソステアリルアルコールであることが好ましい。
【0012】
また前記炭素数が12以上22以下であって常温で液状の高級アルコール(C-1)の配合量は前記溶剤(C)全量に対して10質量%以上30質量%以下であることが好ましい。
【0013】
また前記はんだ合金からなる合金粉末(D)は液相線温度が230℃以上245℃以下のはんだ合金からなることが好ましい。
【0014】
また前記はんだ合金からなる合金粉末(D)はSbを5質量%含み、残部がSnからなるはんだ合金からなることが好ましい。
【0015】
また本発明の電子回路実装基板は、上記微小チップ部品用はんだ組成物を用いて形成されるはんだ接合部を有することをその特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明のはんだ組成物は、特に微小なチップ部品の実装に際しても、印刷にじみ及びはんだブリッジの発生を抑制すると共に、チップ立ちの発生も抑制し得る。またこのようなはんだ組成物を用いて形成されるはんだ接合部を有する電子回路実装基板は、高い信頼性を保つことができる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明のはんだ組成物及び電子回路実装基板の一実施形態について詳細に説明する。なお、本発明が当該実施形態に限定されないのはもとよりである。
【0018】
1.フラックス組成物
本実施形態に係るはんだ組成物に含まれるフラックス組成物は、ロジン系樹脂(A)と、活性剤(B)と、溶剤(C)とを含有する。
【0019】
ロジン系樹脂(A)
前記ロジン系樹脂(A)としては、例えばトール油ロジン、ガムロジン、ウッドロジン等のロジン;水添ロジン、重合ロジン、不均一化ロジン、アクリル酸変性ロジン、マレイン酸変性ロジン、ホルミル化ロジン等のロジン誘導体等が挙げられる。
なおロジン系樹脂(A)としては、ロジンまたはロジン誘導体をアクリル酸変性したアクリル変性ロジン樹脂が好ましく用いられ、アクリル変性ロジン樹脂に水素を添加した水添アクリル変性ロジン樹脂が特に好ましく用いられる。
また、これらは単独でまたは複数を組合せて使用することができる。
【0020】
前記ロジン系樹脂(A)の配合量はフラックス組成物全量に対して30質量%以上50質量%以下であることが好ましく、35質量%以上45質量%以下であることが更に好ましい。
【0021】
活性剤(B)
前記活性剤(B)としては、例えば有機アミンのハロゲン化水素塩等のアミン塩(無機酸塩や有機酸塩)、有機酸、有機酸塩、有機アミン塩、臭素化ハロゲン化合物等が挙げられる。具体的には、例えばジエチルアミン塩、酸塩、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、グルタル酸、ジフェニルグアニジン臭化水素酸塩、シクロヘキシルアミン臭化水素酸塩、臭素化トリアリルイソシアヌレート、トリス(2,3-ジブロモプロピル)イソシアヌレート、ポリ8,13-ジメチル-8,12-エイコサジエン二酸無水物、ダイマー酸等が挙げられる。
前記活性剤(B)は、特に、炭素数18の不飽和脂肪酸を二量化したダイマー酸を含むことが好ましい。前記活性剤(B)として前記炭素数18の不飽和脂肪酸を二量化したダイマー酸を配合する場合、その配合量はフラックス組成物全量に対して7質量%以上20質量%以下であることが好ましく、8質量%以上17質量%以下であることが更に好ましい。なお、前記炭素数18の不飽和脂肪酸を二量化したダイマー酸としては、例えばUNIDYME14(商品名:クレイトンポリマー社製)等が挙げられる。
これらは単独でまたは複数を組合せて使用することができる。
【0022】
前記活性剤(B)の配合量は、他の成分及び使用する鉛フリーはんだ合金により異なるが、フラックス組成物全量に対して25質量%以下であることが一般的である。
【0023】
溶剤(C)
前記溶剤としては、アルコール系、エタノール系、アセトン系、トルエン系、キシレン系、酢酸エチル系、エチルセロソルブ系、ブチルセロソルブ系、グリコールエーテル系、エステル系等が挙げられる。これらは単独でまたは複数を組合せて使用することができる。
【0024】
本実施形態に係るフラックス組成物は、前記溶剤(C)として、炭素数が12以上22以下であって常温で液状の高級アルコール(C-1)を含むことが好ましい。
【0025】
本実施形態に係るフラックス組成物は、前記炭素数が12以上22以下であって常温で液状の高級アルコール(C-1)を含むことにより、前記溶剤(C)全体の配合量を抑えた場合であっても、これを用いたはんだ組成物の印刷にじみ及びはんだブリッジの発生を抑制すると共に、特に微小なチップ部品を実装する場合においても、チップ立ちの発生をも抑制することができる。
【0026】
ここで、従来の方法として、加熱時におけるはんだ組成物の流動性を保つために、フラックス組成物に沸点の高い溶剤を配合する方法が存在する。しかし、沸点の高い溶剤は分子量が多く、常温時でも粘度が高い。そのため、このような沸点の高い溶剤を含むフラックス組成物は、フラックス組成物及びはんだ組成物の粘度調整のために溶剤以外の成分、特に常温で固形状の成分の配合割合を減らさざるを得ず、特にはんだ組成物に求められる特性が阻害される虞があった。
一方、前記炭素数が12以上22以下であって常温で液状の高級アルコール(C-1)は、従来使用されるヘキシルジグリコール(沸点:258℃)よりも高い沸点を有し、且つ、常温時に液状であるため、常温で固形状の成分の配合割合を減らすことなく、フラックス組成物及びはんだ組成物の粘度を調整し得る。そのため、このようなはんだ組成物は、印刷にじみ及びはんだブリッジを抑制しつつ、はんだ組成物に求められる特性を十分に発揮し得る。
更には、前記炭素数が12以上22以下であって常温で液状の高級アルコール(C-1)をフラックス組成物に配合することにより、これを用いたはんだ組成物は、加熱時、特に高温加熱時におけるフラックス組成物の成分の揮発量を抑えられるため、特に微小なチップ部品を実装する場合においても、チップ立ちの発生をも抑制することができる。
【0027】
なお、本明細書において、前記炭素数が12以上22以下であって常温で液状の高級アルコール(C-1)の「常温」とは、15℃から30℃程度をいい、「液状」とは、粘度がブルックフィールド回転粘度計を用いて、200mPa・s以下(測定温度25℃)であることをいう。
【0028】
また前記炭素数が12以上22以下であって常温で液状の高級アルコール(C-1)は、アルキル鎖が分岐鎖状であることが好ましく、特にアルキル鎖がC-2位で分岐鎖を有するものであることが好ましい。
【0029】
また前記炭素数が12以上22以下であって常温で液状の高級アルコール(C-1)の炭素数は、16以上20以下であることが好ましい。
【0030】
前記炭素数が12以上22以下であって常温で液状の高級アルコール(C-1)としては、2-アルキルアルカノールが好ましく用いられる。この中でも特に、2-ヘキサデカール(炭素数:16)及び2-オクチルドデカノール(炭素数:20)が好ましく用いられる。
また前記炭素数が12以上22以下であって常温で液状の高級アルコール(C-1)としては、イソステアリルアルコール(炭素数:18)が好ましく用いられる。このようなイソステアリルアルコールは、イソステアリン酸を還元して得られる構造のものでなく、飽和アルコールをアルドール縮合により得られるアルキル鎖がC-2位で分岐鎖状となるものが好ましく用いられ、例えば、2-ヘプチルウンデカール、2-オクチルデカール、2-ヘキシルドデカール、2-ノニルアルコール等が挙げられる。
これらの前記炭素数が12以上22以下であって常温で液状の高級アルコール(C-1)をフラックス組成物に配合する場合、これを用いたはんだ組成物の印刷にじみ及びはんだブリッジの抑制効果、並びにチップ立ちの発生抑制効果をより向上し得る。
なお、これらは単独でまたは複数を組合せて使用することができる。
【0031】
なお、本実施形態に係るフラックス組成物は、前記炭素数が12以上22以下であって常温で液状の高級アルコール(C-1)以外の溶剤として、前記炭素数が12以上22以下であって常温で液状の高級アルコール(C-1)よりも低い沸点を有するものが好ましく用いられる。このようなフラックス組成物を使用するはんだ組成物は、その加熱中に溶剤(C)由来の2つの異なる揮発ピークを有するため、加熱時のはんだブリッジの抑制効果及びチップ立ちの発生抑制効果を向上し得る。
【0032】
なお、前記溶剤(C)全量の配合量は、フラックス組成物全量に対して20質量%以上40質量%以下であることが好ましく、25質量%以上35質量%以下であることが更に好ましい。
【0033】
また前記炭素数が12以上22以下であって常温で液状の高級アルコール(C-1)の配合量は前記溶剤(C)全量に対して10質量%以上30質量%以下であることが好ましく、12質量%以上28質量%以下であることが更に好ましい。
【0034】
チクソ剤
本実施形態に係るフラックス組成物には、チクソ剤を配合することができる。当該チクソ剤としては、例えば硬化ひまし油、ビスアマイド系チクソ剤(飽和脂肪酸ビスアマイド、不飽和脂肪酸ビスアマイド、芳香族ビスアマイド等)、ジメチルジベンジリデンソルビトール等が挙げられる。
これらの中でも特に、硬化ひまし油が前記チクソ剤として好ましく用いられる。硬化ひまし油は、他のチクソ剤と比較して軟化点が低いため、はんだ組成物の加熱時におけるフラックス組成物の流動性を向上し得る。そのため、チップ立ちの発生抑制効果を向上し得る。
なお、これらは単独でまたは複数を組合せて使用することができる。
【0035】
前記チクソ剤の配合量はフラックス組成物全量に対して3質量%以上15質量%以下であることが好ましく、5質量%以上10質量%以下であることが更に好ましい。
【0036】
本実施形態のフラックス組成物には、はんだ合金粉末の酸化を抑える目的で酸化防止剤を配合することができる。
前記酸化防止剤としては、例えばヒンダードフェノール系酸化防止剤、フェノール系酸化防止剤、ビスフェノール系酸化防止剤、ポリマー型酸化防止剤等が挙げられる。これらの中でも特にヒンダードフェノール系酸化防止剤が好ましく用いられる。
前記酸化防止剤はこれらに限定されるものではなく、またその配合量は特に限定されるものではない。その一般的な配合量は、フラックス組成物全量に対して0.5質量%から5質量%程度である。
【0037】
本実施形態のフラックス組成物には、更につや消し剤、消泡剤等の添加剤を加えてもよい。前記添加剤の配合量は、フラックス組成物全量に対して10質量%以下であることが好ましく、更に好ましい配合量は5質量%以下である。
【0038】
2.はんだ組成物
本実施形態のはんだ組成物は、上記フラックス組成物とはんだ合金からなる合金粉末(D)とを公知の方法にて混合して作製できる。
【0039】
はんだ合金からなる合金粉末(D)
前記はんだ合金からなる合金粉末(D)に使用されるはんだ合金としては、例えばSn、Ag、Cu、Bi、Zn、In、Ga、Sb、Au、Pd、Ge、Ni、Cr、Al、P、In、Pb等を複数組合せたものが挙げられる。
【0040】
その中でも特に、液相線温度が230℃以上245℃以下のものが前記はんだ合金として好ましく用いられる。このようなはんだ合金からなる合金粉末(D)を使用するはんだ組成物は、例えば電子回路基板の両面に、片面ずつ電子部品を実装する場合において、最初の電子部品の実装に好適に使用することができる。
即ち、先に電子回路基板の片面に、液相線温度が230℃以上245℃以下のはんだ合金からなる合金粉末(D)を使用するはんだ組成物を用いて電子部品を実装(はんだ接合部を形成)し、その後、当該はんだ合金よりも液相線温度の低いはんだ合金からなる合金粉末を使用するはんだ組成物を用いて、前記電子回路基板の別の片面に電子部品を実装することができる。
この際、液相線温度が230℃以上245℃以下のはんだ合金からなる合金粉末(D)を使用するはんだ組成物を用いて形成されるはんだ接合部は、後に行う、電子回路基板のもう一方の面の電子部品の実装において溶融し難いため、このような実装方法に最適に使用することができる。
【0041】
そして上述の通り、当該はんだ組成物に使用される上記フラックス組成物は、加熱時、特に高温加熱時におけるフラックス組成物の成分の揮発量を抑えることができる。そのため、液相線温度が230℃以上245℃以下のはんだ合金からなる合金粉末(D)を使用する場合であっても、当該はんだ組成物は、高温加熱時においても十分な粘度及び流動性を確保し得るため、特に微小なチップ部品を実装する場合において、チップ立ちの発生抑制効果を発揮し得る。
また上述の通り、上記フラックス組成物を使用する本実施形態のはんだ組成物は、印刷にじみ及びはんだブリッジの発生をも抑制することができる。
そして本実施形態に係るはんだ組成物は、特に微小なチップ部品を実装する際に、上記の効果を更に発揮し得る。
なお、本明細書において「微小なチップ部品(微小チップ部品)」とは、1パットあたりの電極面積が0.03mm以下のものをいい、特に好ましく用いられるチップ部品として、0402サイズチップ部品(抵抗器)が挙げられる。
【0042】
また前記はんだ合金として、Sbを5質量%含み、残部がSnからなるはんだ合金が特に好ましく用いられる。
【0043】
前記はんだ合金からなる合金粉末(D)の配合量は、はんだ組成物全量に対して63質量%から93質量%であることが好ましい。より好ましいその配合量は84質量%から92質量%であり、特に好ましいその配合量は86質量%から90質量%である。
【0044】
3.電子回路実装基板
本実施形態の電子回路実装基板は、上記はんだ組成物を用いて形成されるはんだ接合部を有する。当該はんだ接合部は、例えば以下の方法により形成される。
即ち、基板上の予め定められた所定の位置に前記はんだ組成物を印刷し、更に当該基板上の所定の位置に電子部品(特に微小なチップ部品)を搭載し、これをリフローすることにより形成される。
このように形成されたはんだ接合部は、前記はんだ組成物の印刷時における印刷にじみの発生、並びにはんだブリッジ及びチップ立ちの発生が抑制されていることから、信頼性の高いはんだ接合部となり得る。
またこのようなはんだ接合部を有する電子回路実装基板は、高い信頼性を発揮でき、半導体及び電子機器等に好適に用いることができる。
【実施例
【0045】
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明を詳述する。なお、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0046】
フラックス組成物の作製
表1に示す組成及び配合にて各成分を混練し、実施例1から6並びに比較例1及び2に係る各フラックス組成物を作製した。なお、表1のうち、組成を表すものに係る数値の単位は、特に断り書きがない限り質量%である。
【0047】
はんだ組成物の作製
次いで、実施例1から6並びに比較例1及び2に係るフラックス組成物11.5質量%と95Sn-5Sbはんだ合金粉末(粉末粒径1μmから12μm)88.5質量%とを混合し、実施例1から6並びに比較例1及び2に係るはんだ組成物を得た。
【0048】
【表1】
※1 水添酸変性ロジン 荒川化学工業(株)製
※2 アクリル変性ロジン イーストマン・ケミカル社製
※3 ダイマー酸 クレイトンポリマー社製
※4 イソステアリルアルコール(炭素数18:分岐型/C-2位で分岐鎖状) 高級アルコール工業(株)製
※5 2-ヘキサデカール(炭素数16:分岐型) 高級アルコール工業(株)製
※6 2-オクチルドデカノール (炭素数20:分岐型) 高級アルコール工業(株)製
※7 ヒンダードフェノール系酸化防止剤 BASFジャパン(株)製
【0049】
<チップ立ち確認試験>
以下の用具を用意した。
・0402サイズチップ部品(抵抗器)
・上記0402サイズチップ部品を実装し得る所定のパターンを有するソルダレジスト(膜厚:20μm)及び電極とを備えた電子回路基板
・上記パターンを有する厚さ40μmのメタルマスク(開口率:75%)
前記電子回路基板上に前記メタルマスクを用いて実施例1から6並びに比較例1及び2の各はんだ組成物を印刷し、前記電子回路基板1枚につき前記0402サイズチップ部品を500個搭載した。
その後、リフロー炉(製品名:TNP25-538EM、(株)タムラ製作所製)を用いて前記各電子回路基板を加熱して、当該各電子回路基板と前記0402サイズチップ部品とを電気的に接合するはんだ接合部を有する各試験基板を作製した。
この際のリフロー条件は、プリヒートを165℃から175℃で150秒間、ピーク温度を260℃とし、200℃以上の時間が105秒間、235℃以上の時間が60秒間、ピーク温度から200℃までの冷却速度を3℃から8℃/秒とし、酸素濃度は100±50ppmに設定した。
そして、作製した各試験基板について、光学顕微鏡を用いて、各試験基板上に形成されたはんだ接合部全てについて目視にてチップ立ち発生の有無及び発生率(%)を計測し、以下の基準に従い評価した。その結果を表2に示す。
○:チップ立ちの発生率が0%
△:チップ立ちの発生率が0%超0.05%以下
×:チップ立ちの発生率が0.05%越
【0050】
<粘着性試験(初期)>
実施例1から6並びに比較例1及び2の各はんだ組成物について、作製した直後の粘着性をJIS規格Z3284-3「粘着性試験」に規定の条件に準拠して測定した。なお、使用するメタルマスクの厚さは40μmに変更した。また粘着性測定装置は、(株)マルコム製のTackiness tester TK-1(製品名)を使用した。
測定した各はんだ組成物のタック力(力の平均値:n=5。以下同じ。)(N1)を表2に示す。
【0051】
<粘着性試験(24時間経過後)>
実施例1から6並びに比較例1及び2の各はんだ組成物について、作製してから25℃50%の条件下で24時間放置した後の粘着性を、上記粘着性試験(初期)に規定の条件と同じ条件で測定した。
測定した各はんだ組成物のタック力(N2)を表2に示す。
【0052】
<粘着性試験(変化率)>
上記粘着性試験(初期)と粘着性試験(24時間経過後)とで測定したタック力(N1)及びタック力(N2)について、以下の計算式を用いてタック力変化率(%)を算出した。その結果を表2に示す。
タック力変化率(%)=(N2-N1)/N1
【0053】
<印刷性試験>
以下の用具を用意した。
・各種チップ部品(1005、0603、0402)を実装し得る所定のパターンを有する試験基板
・上記パターンを有するメタルマスク(厚み:50μm、開口率100%)
そして、メタルスキージを用い、実施例1から6並びに比較例1及び2の各はんだ組成物を、印刷機(製品名:SP-60、パナソニック(株)製)を用い、各前記試験基板に印刷した。なお、印刷速度は50mm/秒に設定した。
各はんだ組成物をメタルマスクのクリーニングをせず連続印刷した5枚目の各前記試験基板について、印刷ブリッジ、にじみやかすれの有無を光学顕微鏡を用いて目視にて確認し、以下の基準に従い評価した。その結果を表2に示す。
○:にじみ及びかすれがない
△:にじみが発生
×:印刷ブリッジ、かすれが発生
【0054】
<はんだボール確認試験>
上記チップ立ち確認試験にて作製した各試験基板について、光学顕微鏡を用いて、各試験基板上の前記チップ部品脇及び当該部品間に発生したはんだボールの数を目視にて計測し、以下の基準に従い評価した。その結果を表2に示す。
○:発生したはんだボール数が30個未満
△:発生したはんだボール数が30個以上100個未満
×:発生したはんだボール数が100個以上
【0055】
【表2】
【0056】
以上に示す通り、各実施例に係るはんだ組成物は、経時による粘度の変化も少なく、また印刷にじみやかすれ及びはんだボールの発生を抑制し得ると共に、0402サイズチップ部品のような微小なチップ部品の実装において、チップ立ちをも抑制し得ることが分かる。
なお、比較例2については、作製したフラックス組成物の粘度が高すぎたためにはんだ合金粉末と混合してはんだ組成物を作製することができなかったため、全ての試験結果を「-」と評価している。