(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-12
(45)【発行日】2023-07-21
(54)【発明の名称】被加工物をクランプし、密封するよう構成されたクランプシステムを伴う可動キャリッジを有する、レーザアブレーションシステム
(51)【国際特許分類】
B23K 26/08 20140101AFI20230713BHJP
B23K 26/10 20060101ALI20230713BHJP
B23K 26/36 20140101ALI20230713BHJP
B23K 26/364 20140101ALI20230713BHJP
【FI】
B23K26/10
B23K26/36
B23K26/364
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2018210989
(22)【出願日】2018-11-09
【審査請求日】2021-11-05
(32)【優先日】2017-11-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】500520743
【氏名又は名称】ザ・ボーイング・カンパニー
【氏名又は名称原語表記】The Boeing Company
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】ジョンソン, マシュー シー.
(72)【発明者】
【氏名】ハンニネン, ブルース ジェー.
【審査官】黒石 孝志
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-305376(JP,A)
【文献】特表2013-545615(JP,A)
【文献】特開平10-113787(JP,A)
【文献】特開2016-215251(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 26/00 - 26/70
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被加工物(106)を内包するよう構成された空間(114)と、
前記空間(114)内で前記被加工物(106)に対して動くよう構成されたキャリッジ(116)であって、
前記被加工物(106)をクランプし、かつ前記被加工物(106)の一部分(124)を密封するよう構成された、クランプシステム(118)、
向かい合った2つの半体(134,136)を備えるレーザ筐体(120)、及び、
前記レーザ筐体(120)内のレーザアブレーション加工ヘッド(122)を備える、キャリッジ(116)とを備える、レーザアブレーションシステム(102)。
【請求項2】
前記レーザアブレーションシステム(102)の前記空間(114)内へと前記被加工物(106)を動かすよう構成された、移動システム(140)を更に備える、請求項1に記載のレーザアブレーションシステム(102)。
【請求項3】
前記移動システム(140)がモノレール(142)であり、前記被加工物(106)が前記モノレール(142)から懸架され、前記クランプシステム(118)が、前記レーザアブレーション加工ヘッド(122)によるレーザアブレーションのために前記被加工物(106)を不動化するよう構成されている、請求項2に記載のレーザアブレーションシステム(102)。
【請求項4】
前記クランプシステム(118)が、レーザ放出を遮断するための遮光密封(126)を作り出し、かつ、廃出物(130)の漏れを防止するための負の圧力差(128)を作り出すよう構成されている、請求項1から3のいずれか一項に記載のレーザアブレーションシステム(102)。
【請求項5】
前記キャリッジ(116)が、前記被加工物(106)の端から端までにわたる空気の層流(166)を作り出すよう構成された気流システム(160)を更に備え、前記気流システム(160)が、廃出物(130)を廃出物抽出システム(144)に向けて動かすよう構成されている、請求項1から4のいずれか一項に記載のレーザアブレーションシステム(102)。
【請求項6】
レーザアブレーションシステム(102)のキャリッジ(116)であって、
向かい合った2つの半体(134,136)を備えるレーザ筐体(120)と、前記レーザ筐体(120)内のレーザアブレーション加工ヘッド(122)とを備えるキャリッジ(116)を、前記レーザアブレーションシステム(102)の空間(114)内で被加工物(106)に対して動かすこと(1202)と、
前記キャリッジ(116)のクランプシステム(118)を使用して、前記被加工物(106)をクランプすること(1204)と、
前記キャリッジ(116)の前記クランプシステム(118)を使用して、前記キャリッジ(116)に前記被加工物(106)を密封させること(1206)と、
前記レーザアブレーションシステム(102)の、前記レーザアブレーション加工ヘッド(122)と、前記レーザアブレーション加工ヘッド(122)に動作可能に接続されているパルスレーザ源(177)とを使用して、前記被加工物(106)にアブレーションパターンを実行すること(1208)と、
前記アブレーションパターンを実行している間に、前記レーザアブレーションシステム(102)の廃出物抽出システム(144)を使用して廃出物(130)を抽出すること(1210)とを含む、方法。
【請求項7】
前記被加工物(106)の表面(110)の端から端まで、空気を連続的に流すこと(1212)を更に含む、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
圧縮空気ノズル(164)を使用して、アブレーション部位に空気を導くこと(1214)を更に含む、請求項6又は7に記載の方法。
【請求項9】
前記被加工物(106)をクランプすることが、
前記レーザアブレーション加工ヘッド(122)によるレーザアブレーションのために、前記被加工物(106)を不動化することを含む、請求項6から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記キャリッジ(116)の前記クランプシステム(118)を使用して、前記キャリッジ(116)に前記被加工物(106)を密封させることが、
レーザ放出を遮断するための遮光密封(126)を作り出すこと(1207)と、
廃出物(130)の漏れを防止するための負の圧力差(128)を作り出すこととを含む、請求項6から9のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は概して、レーザアブレーションを使用して材料を除去することに関し、より具体的には、可動キャリッジ内に密封された被加工物の一部分から材料を除去するための、レーザアブレーションのシステム及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
アルミニウムの航空機部品は、アースボンド(ground bond)接点を有する。アースボンド接点は、所望にしたがい、コーティングのないアルミニウムの地金を有する。アルミニウムの航空機部品の周部は、塗料や下塗り剤といったコーティングで覆われる。
【0003】
コーティングの塗布に先立って、マスカントが作製され、手作業でアースボンド接点に付けられる。マスカントは、コーティングの塗布後に、マスカントの下のアルミニウムを露出させるよう除去される。
【0004】
マスカントの付着は、専門知識を有する訓練されたオペレータによって実施される。マスカントの付着は、手作業で実施されることによる時間の制約を受ける。
【0005】
したがって、上述の問題の少なくとも一部と共に他の起こりうる問題をも考慮している方法及び装置を有することができれば、それが望ましい。
【発明の概要】
【0006】
本開示の例示的な一実施形態は、レーザアブレーションシステムを提供する。このレーザアブレーションシステムは、被加工物を内包するよう構成された空間と、空間内で被加工物に対して動くよう構成されたキャリッジとを備える。キャリッジは、クランプシステムと、レーザ筐体と、レーザ筐体内のレーザアブレーション加工ヘッドとを備える。クランプシステムは、被加工物をクランプし、かつ被加工物の一部分を密封するよう構成される。
【0007】
本開示の別の例示的な実施形態は、方法を提示する。レーザアブレーションシステムのキャリッジであって、レーザ筐体と、レーザ筐体内のレーザアブレーション加工ヘッドとを備えるキャリッジは、レーザアブレーションシステムの空間内で被加工物に対して動かされる。被加工物は、キャリッジのクランプシステムを使用してクランプされる。キャリッジは、キャリッジのクランプシステムを使用して、被加工物に対して密封される。レーザアブレーションシステムの、レーザアブレーション加工ヘッドとレーザアブレーション加工ヘッドに動作可能に接続されているパルスレーザ源とを使用して、被加工物にアブレーションパターンが実行される。アブレーションパターンを実行している間に、レーザアブレーションシステムの廃出物(effluent)抽出システムを使用して、廃出物が抽出される。
【0008】
本開示の更なる例示的な実施形態は、レーザアブレーションシステムを提供する。このレーザアブレーションシステムは、キャリッジと、廃出物抽出システムとを備える。キャリッジは、レーザアブレーションのための作業環境を作り出すよう構成され、かつ、被加工物に対して動くよう構成される。作業環境は被加工物よりも小さい。キャリッジは、クランプシステムと、遮光(light-tight)レーザ筐体と、レーザ筐体内のレーザアブレーション加工ヘッドとを備える。クランプシステムは、被加工物の一部分を密封するよう構成され、更に、被加工物を固定し、レーザ放出を遮断するための遮光密封を作り出し、かつ、廃出物の漏れを防止するための負の圧力差を作り出すよう、構成される。廃出物抽出システムは、レーザ筐体の内部から廃出物を除去するよう構成される。
【0009】
これらの特徴及び機能は、本開示の様々な実施形態で単独で実現可能であるか、又は、以下の説明及び図面を参照して更なる詳細を理解しうる更に別の実施形態において、組み合わされうる。
【0010】
例示的な実施形態の特性と考えられる新規特徴は、付随する特許請求の範囲に明記されている。しかし、例示的な実施形態と共に、その更なる目的及び特徴である好ましい使用モードが、本開示の例示的な実施形態についての以下の詳細説明を添付図面と併せて参照することによって、最もよく理解されよう。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】例示的な一実施形態による、レーザアブレーションシステムが稼働する製造環境のブロック図を例示している。
【
図2】例示的な一実施形態による、1つのキャリッジを有するレーザアブレーションシステムの等角図を例示している。
【
図3】例示的な一実施形態による、1つのキャリッジを有するレーザアブレーションシステムを伴う製造環境のフロアプランを例示している。
【
図4】例示的な一実施形態による、2つのレーザアブレーション加工ヘッドを有するレーザアブレーションシステムのキャリッジの上面図を例示している。
【
図5】例示的な一実施形態による、レーザアブレーションシステムのキャリッジの等角図を例示している。
【
図6】例示的な一実施形態による、キャリッジが被加工物にクランプされている時の、2つのレーザアブレーション加工ヘッドを有するレーザアブレーションシステムのキャリッジの正面図を例示している。
【
図7】例示的な一実施形態による、キャリッジが開放状態にある時の、2つのレーザアブレーション加工ヘッドを有するレーザアブレーションシステムのキャリッジの正面図を例示している。
【
図8】例示的な一実施形態による、1つのレーザアブレーション加工ヘッドを有するレーザアブレーションシステムのキャリッジの内部の等角図を例示している。
【
図9】例示的な一実施形態による、2つのキャリッジを有するレーザアブレーションシステムの等角図を例示している。
【
図10】例示的な一実施形態による、エアナイフによって発生するキャリッジ内の気流の断面図を例示している。
【
図11】例示的な一実施形態による、アブレーション加工ヘッド付近のエアノズルによって発生するキャリッジ内の気流の断面図を例示している。
【
図12】例示的な一実施形態による、可動キャリッジ内でレーザアブレーションを実施するための方法のフロー図を例示している。
【発明を実施するための形態】
【0012】
例示的な実施形態では、一又は複数の異なる検討事項が認識され、考慮されている。例えば、例示的な実施形態では、ベア基板材料をコーティングからマスキングするのではなく、コーティングの部位が基板材料から選択的に除去されうるということが、認識され、考慮されている。例示的な実施形態では、一部の例では選択的なコーティング除去が選択的なマスキングよりも好ましいものでありうるということが、認識され、考慮されている。例示的な実施形態では、選択的なコーティング除去により製造時間が削減されうるということが、認識され、考慮されている。例示的な実施形態では、選択的なコーティング除去は自動システムによって実施されうるということが、認識され、考慮されている。例示的な実施形態では、選択的なコーティング除去により製造コストが削減されうるということが、認識され、考慮されている。例示的な実施形態では、選択的なコーティング除去により製造廃棄物が削減されうるということが、認識され、考慮されている。
【0013】
例示的な実施形態では、レーザアブレーションはコーティング除去の一方法であるということが、認識され、考慮されている。例示的な実施形態では、レーザアブレーションはレーザ筐体内で実施されるということが、認識され、考慮されている。例示的な実施形態では、レーザ筐体は大型の遮光箱又は遮光室でありうるということが、認識され、考慮されている。例示的な実施形態では、レーザ筐体は、レーザアブレーションを受ける被加工物全体を包含するのに十分なほど大きく作製されるということが、認識され、考慮されている。
【0014】
例示的な実施形態では、大型の航空機部品(航空機の翼や他の大型構成要素など)のためのレーザ筐体は、望ましくないほどに大型になりうるということが、認識され、考慮されている。例示的な実施形態では、航空機部品又はその他の部品のためのレーザ筐体は、その構築及び/又は稼働が望ましくないほどに高価になりうるということが、更に認識され、考慮されている。
【0015】
例示的な実施形態では、レーザアブレーションにより廃出物が生じるということが、認識され、考慮されている。例示的な実施形態では、レーザアブレーションによる廃出物は、微小粉の形態をとりうるということが、認識され、考慮されている。例示的な実施形態では、レーザアブレーションによる廃出物はガス状体(fumes)の形態をとりうるということが、認識され、考慮されている。例示的な実施形態では、ある種の廃出物に対するオペレータの暴露を制限するのが望ましいかもしれないということが、認識され、考慮されている。例示的な実施形態では、大型のレーザ筐体については、定期的なメンテナンスが、レーザ筐体の内部の残留廃出物を洗浄することを含みうるということが、更に認識され、考慮されている。
【0016】
ここで図(詳細には
図1)を参照するに、例示的な一実施形態による、レーザアブレーションシステムが稼働する製造環境のブロック図が例示されている。環境100において、レーザアブレーションシステム102は、被加工物106からコーティング104を選択的に除去する。
【0017】
アブレーションプロセスにより、被加工物106に悪影響を与えることなく、コーティングが除去される。レーザアブレーションシステム102により、所定の領域だけから、コーティング104がアブレーションされる。
【0018】
レーザアブレーションシステム102は、所望にしたがい、被加工物106の表面(例えば表面110又は表面112)から基材108に至るまで、コーティング104をアブレーションする。所望にしたがい、レーザアブレーションプロセスにより、基材108にムラ(inconsistencies)が生じることはない。
【0019】
被加工物106は任意の望ましい形態をとりうる。被加工物106は、任意の種類のプラットフォーム(例えば、移動式プラットフォーム、静止型プラットフォーム、陸上構造物、水中水上構造物、及び宇宙構造物)の、一部品又はいくつかの部品が組み合わされたものでありうる。より具体的には、構造物は、水上艦、戦車、人員運搬体、列車、宇宙船、宇宙ステーション、衛星、潜水艦、自動車、発電所、橋、ダム、家屋、製造施設、建造物、及びその他の適切なものでありうる。一部の実施例では、被加工物106は一又は複数の航空機部品の形態をとる。一部の実施例では、被加工物106は、飛行機の翼の構造的構成要素でありうる。
【0020】
被加工物106は、基材108で形成されており、かつ第1表面110と第2表面112とを有する。第1表面110と第2表面112は、被加工物106の両側にある。
【0021】
一部の実施例では、基材108は金属材料である。一部のより具体的な実施例では、基材108はアルミニウムである。
【0022】
コーティング104は任意の望ましい形態をとりうる。一部の実施例では、コーティング104は下塗り剤である。一部の実施例では、コーティング104は塗料である。その他の一部の実施例では、コーティング104は酸化層である。その他の実施例では、コーティング104は、汚染層、レーダー吸収材層、陽極酸化層、潤滑剤層、フォトレジスト層、又は電気めっき層の形態をとりうる。
【0023】
レーザアブレーションシステム102は、被加工物106を内包するよう構成された空間114と、空間114内で被加工物106に対して動くよう構成されたキャリッジ116とを備える。キャリッジ116は、クランプシステム118と、レーザ筐体120と、レーザ筐体120内のレーザアブレーション加工ヘッド122とを備える。
【0024】
レーザ筐体120は、レーザ放出を完全に封じ込めるように構築される。例えば、レーザ筐体120は、完全に遮光であるよう構築される。ドア及びアクセスパネルの場所におけるものを含むレーザ筐体120のいかなる間隙も、レーザ筐体120を遮光に保つよう閉ざされる。更に、天井部又は壁の継ぎ目のいかなる間隙又はピンホールも、レーザ筐体120を遮光にするために密封される。
【0025】
一部の実施例では、レーザ筐体120のアクセスポート及び着脱可能パネルの全てが、パネルが取り外されたところを通じてレーザエネルギーが偶発的に放出されることを防止するよう、構成される。レーザ筐体120のアクセスポート又は着脱可能パネルは、キャリッジ116に固定的に取り付けられる。
【0026】
クランプシステム118は、被加工物106を固定し、かつ被加工物106の部分124を密封するよう構成される。クランプシステム118は、レーザ放出を遮断するための遮光密封126を作り出し、かつ、廃出物130の漏れを防止するための負の圧力差128を作り出すよう、構成される。コーティング104の種類に応じて、廃出物130は特定の取り扱い要件を有しうる。
【0027】
キャリッジ116は、空間114内にレーザアブレーションのための作業環境132を作り出すよう構成される。作業環境132は空間114よりも小さい。作業環境132は被加工物106よりも小さい。作業環境132内のスペースを小さくすることによって、抽出されるガス状体の質量も少なくなる。作業環境132は、レーザアブレーションが実施されるスペースである。キャリッジ116が被加工物106に対して密封されている時に、作業環境132はキャリッジ116に内包される。レーザアブレーション加工ヘッド122は、コーティング104をアブレーションするために作業環境132内で動く。
【0028】
キャリッジ116のレーザ筐体120は、向かい合った2つの半体を備える。図示しているように、キャリッジ116のレーザ筐体120は、第1半体134と第2半体136とを有する。被加工物106が空間114内に存在している時に、第1半体134は被加工物106の第1表面110を密封することになる。被加工物106が空間114内に存在している時に、第2半体136は、被加工物106の第2表面112を密封することになる。
【0029】
一部の実施例では、レーザアブレーション加工ヘッド122は、第1表面110と第2表面112のいずれかを加工するために、第1半体134と第2半体136との間で動く。その他の実施例では、レーザアブレーション加工ヘッド122は、レーザ筐体120の第1半体134の中でのみ作動する。上記の具体例では、レーザアブレーション加工ヘッド122は、第1半体134が第1表面110を密封している時に第1表面110を加工する。一部の実施例では、オプションで、レーザ筐体120の第2半体136内に、第2レーザアブレーション加工ヘッド138が存在する。その他の実施例では、第1半体134が第2表面112を密封し、レーザアブレーション加工ヘッド122が第2表面112を加工するように、被加工物106が再位置付けされうる。
【0030】
レーザアブレーションシステム102は、レーザアブレーションシステム102の空間114内へと被加工物106を動かすよう構成された、移動システム140を更に備える。移動システム140は、コンベヤシステム、軌道、ローラシステム、ロボット式アーム、又は他の任意の望ましい形態といった、任意の望ましい形態をとる。
【0031】
一部の実施例では、移動システム140はモノレール142であり、被加工物106がモノレール142から懸架される。一部の実施例では、被加工物106は、モノレール142から懸架されている時に、モノレール142からの自由懸架状態(free-hanging)である。
【0032】
一部の実施例では、被加工物106は、被加工物106のロードバーの下のストラップを使用して、懸架される。被加工物106がモノレール142からの自由懸架状態である時に、クランプシステム118は、レーザアブレーション加工ヘッド122によるレーザアブレーションのために被加工物106を不動化するよう、構成される。
【0033】
クランプシステム118は、被加工物106を有効に不動化すると共に、遮光密封126を作り出すことと、レーザの境界(perimeter)の周囲に廃出物130を封じ込めることとを同時に行う。クランプシステム118は、被加工物106を不動化することによって、被加工物106の揺れ又は他の運動を防止するか、又は減少させる。
【0034】
クランプシステム118は、レーザ筐体120の2つの半体(第1半体134と第2半体136)の間に作業界面を作り出す。クランプシステム118は、任意の望ましい構成要素を内包する。例えば、クランプシステム118は、ブラダ(bladder)、空圧ブラダ、エアオーバ液圧、サーボモータ、真空、又は他の任意の望ましい構成要素のうちの、少なくとも1つを内包しうる。
【0035】
クランプシステム118は「ソフトクランプシステム」とも称されうる。クランプシステム118が係合すると、浮遊している廃出物130を封じ込めるためのバリアが作り出される。クランプシステム118は、閉じている時には、被加工物106を密封し、レーザ放出を遮断するための遮光(クラス1)バリアを形成する。遮光密封126は、被加工物106の配向にかかわらず、部分124の全ての側部(上部及び底部を含む)を覆う。
【0036】
クランプシステム118は、被加工物106と共に遮光バリアを作り出す。ただし、既知の部位で時折発生する通過(被加工物106の貫通穴)は別である。一部の実施例では、クランプシステム118は、より有効にレーザ放出を遮断し、廃出物130を封じ込めるように、被加工物106の部品形状寸法に適合する。
【0037】
クランプシステム118は、所望にしたがい、レーザアブレーションシステム102内に被加工物(例えば被加工物106)が存在しなくとも、同等のクランプ性能及び密封性能を提供する。クランプシステム118が、不利な様態で、被加工物106又はその表面(第1表面110と第2表面112を含む)を損傷すること、欠損させること、へこますこと、キズを付けること、摩損すること、あるいは別様に影響を与えることはない。
【0038】
クランプシステム118を形成する材料は、ガス放出材料が選ばれないように選択される。クランプシステム118は更に、不燃材料又は自己消火性材料で形成される。
【0039】
クランプシステム118は、アブレーション中に、レーザエネルギー及び廃出物130がレーザ筐体120から漏れるのを防止する。レーザアブレーション加工ヘッド122を使用してアブレーションパターンを実行している間に、廃出物抽出システム144により、廃出物130がレーザアブレーションシステム102から抽出される。
【0040】
廃出物抽出システム144は、アブレーションプロセスによって生成された廃出物130を濾過する。廃出物抽出システム144は、規制要件に合致する濾過済み放出物を生成するよう構成される。
【0041】
廃出物抽出システム144は、キャリッジ116から廃出物130を除去し、その他の廃棄成分から廃出物130を分離させるための、複数の構成要素を備える。廃出物抽出システム144は、レーザ筐体120の内部から廃出物130を除去するよう構成される。廃出物抽出システム144は、任意の望ましい種類及び数量の構成要素を備える。図示しているように、廃出物抽出システム144は、取り出しダクト146と、排気ダクト148と、分離器150と、フィルタ152と、デブリ容器154とを備える。
【0042】
取り出しダクト146は、キャリッジ116の作業環境132から廃出物130を除去し、廃出物130を、廃出物抽出システム144のそれ以外の部分に導く。廃出物130は、分離器150、フィルタ152、及びデブリ容器154を使用して、排気流156から除去される。排気ダクト148は、残りの濾過済み放出物158を、環境100の外部に排気する。
【0043】
廃出物抽出システム144の構成要素は、任意の望ましい場所に位置付けられうる。一部の実施例では、廃出物抽出システム144の全ての構成要素が環境100内にある。一部の実施例では、廃出物抽出システム144の全ての構成要素が空間114内にある。一部の実施例では、廃出物抽出システム144の全ての構成要素がキャリッジ116内にある。
【0044】
一部の実施例では、廃出物抽出システム144は、部分的に環境100の外に位置付けられうる。例えば、廃出物抽出システム144は、部分的に製造用建造物の外部に位置付けられうる。廃出物抽出システム144は、部分的に環境100の外部に位置付けられることによって、基材108又はコーティング104の変更に柔軟に対処しうる。
【0045】
例えば、フィルタ152の数量、フィルタ152の種類、フィルタ152の等級、又は、フィルタ152のその他の特性は、コーティング104の特徴に応じて変更されうる。例えば、コーティング104の排出物に関する環境標準が、レーザアブレーションシステム102内に存在するフィルタ152の数量に影響を与えうる。
【0046】
一部の実施例では、所望にしたがい、取り出しダクト146が排気流156を製造用建造物の外部に排気しうる。取り出しダクト146が排気流156を建造物の外部に排気する場合、廃出物抽出システム144はより大きな流量を有しうる。
【0047】
その他の一部の実施例では、廃出物抽出システム144の全体が、キャリッジ116に位置付けられうる。キャリッジ116に廃出物抽出システム144を有すると、キャリッジ116のサイズ、重量、及び複雑性が増す。
【0048】
取り出しダクト146は、耐久性材料で構築され、滞留を防止するためのスムーズな内部壁を有する。取り出しダクト146の材料は、高い耐熱性及び耐摩耗性を有する。取り出しダクト146は、プラスチックである場合には、UL94に格付けされ、かつ、静電散逸を確実にするために編組式接合ストラップで内張りされる。
【0049】
取り出しダクト146と排気ダクト148の少なくとも一方における通気には、有効な密封を提供し、耐久性のある製造サービスを確実にするために、レール、カバー、又は格納デバイスといったハードウェアが使用されうる。取り出しダクト146と排気ダクト148の少なくとも一方におけるダクトの設計及び構造により、ダクトセクションの交換が比較的簡単になる。
【0050】
一部の実施例では、取り出しダクト146は、少なくとも1つのインライン気流量計(図示せず)を含む。上記の実施例では、不具合対応の目的で、この少なくとも1つのインライン気流量計により測定値が提供される。
【0051】
一部の実施例では、取り出しダクト146は、火花抑制装置(図示せず)を含む。一部の実施例では、火花抑制装置は、フィルタ152に先立って設置される。上記の実施例では、この火花抑制装置は、廃出物抽出システム144によって生成される流量範囲全体にわたって機能するよう、サイズ決定される。例えば、火花抑制装置は、フィルタ152が洗浄される時又はフィルタ152がケーキングされる時に機能するよう、サイズ決定される。
【0052】
分離器150は、アブレーションプロセスによって作り出された固体廃出物130を、排気流156から分離させるよう構成される。分離器150は、所望にしたがい、有効性が90%以上の粒子分離を提供する。
【0053】
分離器150からの送出物は、デブリ容器154内に堆積する。一部の実施例では、デブリ容器154は、ライナ(袋状体など)を含む。デブリ容器154は、廃出物130の衛生的かつ効率的な捕捉及び堆積が行われるよう、構成される。
【0054】
分離器150によって分離された固体デブリがデブリ容器154内に堆積する一方、排気流156の残部はフィルタ152を通過する。一部の実施例では、廃出物抽出システム144は多段濾過を含む。上記の実施例では、フィルタ152は、異なる種類の一連のフィルタを含む。
【0055】
フィルタ152は、所望にしたがい、着脱可能であり、かつ一般的に入手可能である。一部の実施例では、廃出物抽出システム144は、フィルタ寿命を延ばすために、逆流空気パージシステムを含む。上記の実施例では、残留物がフィルタ152から吹き飛ばされた後にそれを除去するために、残留物シュートが設けられうる。
【0056】
一部の実施例では、廃出物抽出システム144は、廃出物130の粒子からガス状体を抽出するための、HEPA最終フィルタ(After-Filters)を備える。一部の実施例では、排気流156からガス状体(揮発性有機化合物など)及び匂いを消去するために、活性炭濾過システムが廃出物抽出システム144内に存在する。
【0057】
キャリッジ116内では、気流システム160が空気を導く。気流システム160は複数の機能を実施する。気流システム160は、廃出物130を廃出物抽出システム144へと導く。気流システム160は、キャリッジ116のレーザ筐体120内で空気を導くことによって、レーザ筐体120からの、ガス状体及び粉の形態の廃出物130の抽出を支援する。
【0058】
気流システム160は、空気を制御するか又は導く構成要素の、任意の望ましい組み合わせを備える。例えば、気流システム160は、任意の望ましい数量の、又は任意の望ましい組み合わせで、空気パージ、エアナイフ、又は圧縮空気(forced air)ノズルを備えうる。図示しているように、気流システム160は、エアナイフ162と、圧縮空気ノズル164とを備える。エアナイフ162は、廃出物抽出システム144に向けて廃出物130を導くための層流166を提供する。一部の実施例では、層流166は高速の下向気流の形態をとる。上記の実施例では、エアナイフ162は、部分124の端から端までにわたる高速の下向気流を提供するよう構成される。エアナイフ162は、所望にしたがい、被加工物106上のレーザアブレーション部位の端から端までにわたる高速の下向気流を提供するよう、構成される。
【0059】
一部の実施例では、エアナイフ162はイオン化エアナイフである。一部の実施例では、レーザ筐体120の第1半体134及び第2半体136は、少なくとも1つの、大流量で低ノイズのイオン化エアナイフ162であって、被加工物106の上方に装着され、かつ下向きに配向された、イオン化エアナイフ162を含む。エアナイフ162は、被加工物106のアブレーション部位の端から端までにわたる、下向きの、層状空気の高速移動流(層流166)を生成する。エアナイフ162からの下向層流166は、廃出物130が廃出物抽出システム144の取り出しダクト146に向かって下向きに押されるように、導かれる。一部の実施例では、エアナイフ162の装着場所は、吸気ルーバーから、被加工物106上のアブレーション部位の端から端までわたるように、更なる進入空気を引き込むよう、構成されうる。
【0060】
一部の実施例では、捕捉盤(capture basin)168が、取り出しダクト146に先立って、キャリッジ116内に位置付けられる。上記の実施例では、エアナイフ162からの下向層流166は、廃出物130が捕捉盤168に向かって、取り出しダクト146内へと下向きに押されるように、導かれる。
【0061】
捕捉盤168は、もしあれば、キャリッジ116と一緒に動く。一部の実施例では、捕捉盤168は、レーザ筐体120のフロアの役割を果たす。一部の実施例では、捕捉盤168は、移動式の下向き通気(downdraft)ブースとして機能する。レーザ筐体120の内部では、廃出物130が、捕捉盤168を通って取り出しダクト146内へと、下向気流によって押される。
【0062】
一部の実施例では、エアナイフ162はイオン化される。イオン化により、アブレーション中にプラズマプルームによって生成された静電荷が中和される。静電荷の中和によって、所望にしたがい、浮遊している廃出物130とレーザアブレーションシステム102の構成要素との間の誘引力が減少する。例えば、静電荷を中和することによって、所望にしたがい、廃出物130とレーザアブレーション加工ヘッド122との間の誘引力が減少する。静電荷の中和によって、所望にしたがい、廃出物130と、レーザ光学素子、カメラレンズ、及びレーザ筐体120の内部の類似のデバイスとの間の、誘引力が減少する。
【0063】
気流システム160は、圧縮空気ノズル164も含む。一部の実施例では、圧縮空気ノズル164は専用エアナイフの形態をとる。一部の実施例では、圧縮空気ノズル164は、レーザアブレーション加工ヘッド122の一部分の正面に位置付けられる。一部の実施例では、圧縮空気ノズル164は、レーザアブレーション加工ヘッド122の最終レンズの正面に位置付けられる。圧縮空気ノズル164は、廃出物130によるレーザアブレーション加工ヘッド122の汚染を低減するよう、構成される。より具体的には、圧縮空気ノズル164は、廃出物130によるレーザアブレーション加工ヘッド122の最終レンズ又はレンズカバープレートの汚染を低減するよう、構成される。一部の実施例では、圧縮空気ノズル164は、レーザアブレーション加工ヘッド122に装着される。一部の実施例では、圧縮空気ノズル164は、レーザアブレーション加工ヘッド122に装着され、レーザ光学素子を保護するために下向きに配向される。圧縮空気ノズル164は、レーザアブレーション加工ヘッド122の視界の中心に配置されうる。
【0064】
一部の実施例では、圧縮空気ノズル164は、I/O制御され、調節される空圧回路の一部でありうる。圧縮空気ノズル164により、処理後の部品(被加工物106など)における廃出物130の残留が減少するか、又は防止される。所望にしたがい、圧縮空気ノズル164は、レーザ光学素子、カメラ、又はレーザ筐体120の外部の領域に対する汚染源を作り出さない。
【0065】
圧縮空気ノズル164は、任意の望ましい方式で使用されうる。一部の実施例では、圧縮空気ノズル164は、プログラムされた連続空気方式で使用される。プログラムされた連続空気方式において、圧縮空気ノズル164は、アブレーションプロセス全体を通じて走査野に導かれる空気を提供する。一部の実施例では、圧縮空気ノズル164は、プログラムされたパルス方式で使用される。プログラムされたパルス方式において、圧縮空気ノズル164は、各アブレーションパターンの完了時に空気を提供する。一部の実施例では、圧縮空気ノズル164は、手動パルス方式で使用される。手動パルス方式において、圧縮空気ノズル164は、オペレータステーション170又は他の任意の望ましいオペレータ入力場所から命令を受けると、空気を提供する。
【0066】
一部の実施例では、レーザアブレーションシステム102は、オプションで、被加工物106のアブレーションされた領域を検査するよう構成される。上記の実施例では、レーザアブレーションシステム102は検査システム172を含む。検査システム172は任意の望ましい形態をとる。一部の実施例では、検査システム172は、光学検査機器174と抵抗試験機器176の少なくとも一方を含む。
【0067】
一部の実施例では、光学検査は、アブレーションが実施された後の、キャリッジ116が被加工物106に対して移動する前に、光学検査機器174によって実施される。一部の実施例では、光学検査は、アブレーションパターンが実施された後の、レーザアブレーション加工ヘッド122が次のアブレーションパターンへと動く前に、光学検査機器174によって実施される。一部の実施例では、光学検査は、アブレーションの品質、場所、深さ、及びカバー範囲を確認するためのプロセス内チェックとして、使用されうる。
【0068】
一部の実施例では、検査システム172の抵抗試験機器176は、アブレーションされたアースボンド接触領域の電気抵抗を、自動的に検査し、記録する。一部の実施例では、抵抗試験機器176は、デジタルオーム計を含む。検査システム172は、検査システム172が被加工物106にキズやへこみを付けること、又は別様に被加工物106を変容させることがないように、構成される。
【0069】
パルスレーザ源177が、レーザアブレーション加工ヘッド122にレーザエネルギーを提供する。パルスレーザ源177は、任意の望ましい場所に配置されうる。一部の実施例では、パルスレーザ源177は、キャリッジ116のレーザ筐体120の外部に配置される。パルスレーザ源177は、所望にしたがい、廃出物130への暴露を低減するためにレーザ筐体120の外部に配置される。
【0070】
一部の実施例では、パルスレーザ源177は空間114の外部に配置される。パルスレーザ源177を空間114の外部に有することで、キャリッジ116の重量が低減する。パルスレーザ源177を空間114の外部に有することで、静止レーザ源が提供される。パルスレーザ源177が空間114の外部に配置されている場合、レーザファイバにより、レーザエネルギーがキャリッジ116内のレーザアブレーション加工ヘッド122に運ばれる。
【0071】
オペレータをレーザ工程から遠ざけておくために、オペレータステーション170は空間114の外部に位置付けられる。キャリッジ116が空間114の中で動いている時にオペレータをキャリッジ116から遠ざけておくために、オペレータステーション170は空間114の外部に位置付けられる。
【0072】
安全フェンス178が、空間114の境界180の少なくとも一部分を取り囲んでいる。オペレータステーション170は、安全フェンス178の外部に位置付けられる。安全フェンス178は、安全境界物182の一部を形成する。安全境界物182は、環境100の中にレーザアブレーションシステム102の空間114を特定するためのフレーム又は他の構造物も、含みうる。
【0073】
本書において、列挙されたアイテムと共に使用される「のうちの少なくとも1つ(at least one of)」という表現は、列挙されたアイテムのうちの一又は複数の種々の組み合わせが使用されうること、及び、列挙された各アイテムのうちの1つだけが必要とされうることを、意味している。換言すると、「のうちの少なくとも1つ」は、アイテムの任意の組み合わせ及び任意の数のアイテムが列挙された中から使用されうるが、列挙されたアイテムのすべてが必要なわけではないことを、意味している。アイテムとは、特定の対象物、物品、又はカテゴリでありうる。
【0074】
この例は、「アイテムA、アイテムB、及びアイテムC」、又は「アイテムB及びアイテムC」も含みうる。言うまでもなく、これらのアイテムの任意の組み合わせが存在しうる。他の例としては、「のうちの少なくとも1つ」とは、限定しないが例としては、「2個のアイテムA、1個のアイテムB、及び10個のアイテムC」、「4個のアイテムB及び7個のアイテムC」、又はその他の適切な組み合わせでありうる。
【0075】
図1の環境100の図は、例示的な実施形態が実装されうる様態に対する物理的又は構造的な制限を示唆することを意図するものではない。図示している構成要素に加えて、又はそれらに代えて、他の構成要素も使用されうる。一部の構成要素は不必要でありうる。また、一部の機能性構成要素を図示するためにブロックが提示されている。例示的な実施形態で実装される場合、これらのブロックのうちの一又は複数は、異なるブロックになるよう、結合されても、分割されても、又は結合されかつ分割されてもよい。例えば、気流システム160は、エアナイフ162を有するものとして説明されているが、その代わりに、他の一部の例では、有向ファン、エアカーテン、又はその他の望ましい有向空気機器を含むこともある。
【0076】
別の例としては、レーザ筐体120は、作業環境132の内部でのプロセスを観察するのに十分な照明を含みうる。この例では、照明装置は、アブレーションプロセスと共に被加工物106のアブレーションされる部分の視認を可能にするよう、配置される。
【0077】
更なる例では、キャリッジ116にはオプションの視認ウインドウが設けられる。一部の実施例では、保守担当者及び技術担当者がレーザアブレーションプロセスを直接観察することを可能にするために、耐レーザ性が保証された視認ウインドウが設けられる。
【0078】
一部の実施例では、視認ウインドウは、望ましい光学密度のレーザ保証付きウインドウコアからなる層状アセンブリであり、飛散防止型で耐擦傷性のガラス又はポリカーボネートの間に挟持されうる。
【0079】
更に別の実施例では、被加工物106は、任意の望ましい方式で配向されうる。例えば、被加工物106は、空間114の中で垂直ではないことがある。一部の実施例では、被加工物106は製造フロアに平行でありうる。上記の実施例では、被加工物106は、モノレール142を使用するのではなく、テーブル又は他の任意の望ましい構造物上に保持されうる。
【0080】
別の実施例では、レーザアブレーションシステム102内に更なるキャリッジが存在しうる。例えば、空間内で被加工物に対して動くよう構成された第2キャリッジが設けられうる。第2キャリッジは、被加工物をクランプし、かつ被加工物を密封するよう構成された第2クランプシステムと、第2レーザ筐体と、第2レーザ筐体内の第2レーザアブレーション加工ヘッドとを備えうる。第2キャリッジについてだけ記載しているが、任意の望ましい数量のキャリッジが設けられうる。
【0081】
ここで
図2を参照するに、例示的な一実施形態による、1つのキャリッジを有するレーザアブレーションシステムの等角図が例示されている。レーザアブレーションシステム200は、
図1のレーザアブレーションシステム102の物理的な一実行形態である。レーザアブレーションシステム200は、被加工物206を内包するよう構成された空間204を取り囲んでいる、安全境界物202を有する。安全境界物202は、オペレータの進入を制限するよう構成される。安全境界物202は、被加工物206に対して動作が実施されている時にオペレータ207が空間204に進入しないようにするよう、構成される。安全境界物202は光透過性である。
【0082】
キャリッジ208は、空間204内にレーザアブレーションのための作業環境を作り出すよう構成される。キャリッジ208は、空間204内で被加工物206に対して動くよう構成される。キャリッジ208は可動キャリッジとも称されうる。
【0083】
キャリッジ208は、遮光レーザ筐体210を有する。遮光レーザ筐体210は、その中にレーザアブレーション加工ヘッド(図示せず)からのレーザエネルギーを封じ込める。
【0084】
キャリッジ208のレーザ筐体210は、向かい合った2つの半体(第1半体212と第2半体214)を備える。第1半体212は、空間204内で、軌道216に沿って可動である。第2半体214は、空間204内で、軌道218に沿って可動である。
【0085】
キャリッジ208は、被加工物206にレーザアブレーション動作を実施するためにキャリッジ208を位置付けるよう、軌道216及び軌道218を使用して、方向220に動く。キャリッジ208は、被加工物206の端から端まで、段階的にレーザアブレーション動作を実施する。
【0086】
移動システム222は、レーザアブレーションシステム200の空間204内へと被加工物206を動かすよう構成される。図示しているように、移動システム222はモノレール224であり、被加工物206がモノレール224から懸架される。キャリッジ208のクランプシステム(図示せず)は、レーザアブレーション加工ヘッドによるレーザアブレーションのために、被加工物206を不動化するよう構成される。
【0087】
ここで
図3を参照するに、例示的な一実施形態による、1つのキャリッジを有するレーザアブレーションシステムを伴う製造環境のフロアプランが例示されている。フロアプラン300は、製造環境(例えば
図1の製造環境100)の一部分の二次元図である。レーザアブレーションシステム302は、
図1のレーザアブレーションシステム102の物理的な一実行形態のレイアウトの二次元図である。レーザアブレーションシステム302は、
図2のレーザアブレーションシステム200のレイアウトでありうる。
【0088】
レーザアブレーションシステム302は、被加工物(図示せず)を内包するよう構成された空間304を有する。安全境界物306が空間304を取り囲んでいる。安全境界物306は、オペレータの進入を制限するよう構成される。安全境界物306は光透過性である。
【0089】
キャリッジ308は、空間304内にレーザアブレーションのための作業環境を作り出すよう構成される。キャリッジ308が被加工物に対してクランプされている時に、作業環境はキャリッジ308に内包される。キャリッジ308は、空間304内で被加工物に対して動くよう構成される。キャリッジ308は、空間304内で方向310に動く。キャリッジ308はレーザ筐体312を備える。キャリッジ308のレーザ筐体312は、向かい合った2つの半体(第1半体314と第2半体316)を備える。
【0090】
移動システム318は、レーザアブレーションシステム302の空間304内へと被加工物を動かすよう構成される。図示しているように、移動システム318はモノレール320である。第1半体314と第2半体316は、モノレール320の両側に位置付けられる。
【0091】
図示しているように、オペレータステーション322は、安全境界物306の外部に位置付けられる。一部の実施例では、キャリッジ308に動作可能に接続された複数のシステムも、安全境界物306の外部に位置付けられうる。一部の実施例では、電気、空圧、又はその他のユーティリティといったユーティリティが、安全境界物306の外部に位置付けられる。
【0092】
図示しているように、廃出物抽出システム324は部分的に安全境界物306の外部に位置付けられる。図示しているように、取り出しダクト326が、キャリッジ308から分離器328へと排気流を導く。分かりやすくするために、廃出物抽出システム324の更なる構成要素は図示していない。
【0093】
図示しているように、レーザ源330及びそれに関連する冷却器332は、安全境界物306の外部に位置付けられる。図示していないその他の一部の実施例では、レーザ源330はキャリッジ308に取り付けられる。
【0094】
ここで
図4を参照するに、例示的な一実施形態による、2つのレーザアブレーション加工ヘッドを有するレーザアブレーションシステムのキャリッジの上面図が例示されている。キャリッジ400は、
図1のキャリッジ116の物理的な一実行形態である。一部の実施例では、キャリッジ400は
図2のキャリッジ208と同じものでありうる。キャリッジ400は、
図3のキャリッジ308の一実行形態でありうる。
【0095】
図示しているように、キャリッジ400はレーザ筐体402を有する。この実施例では、レーザ筐体402は、単に図解目的のために、透明なものとして図示されている。この実施例では、レーザ筐体402は、レーザ筐体402の内部が見えるよう、透明なものとして図示されている。稼働中、レーザ筐体402は遮光であり、不透明である。
【0096】
レーザ筐体402は、向かい合った2つの半体(第1半体404と第2半体406)を有する。第1半体404と第2半体406は、モノレール407の両側に位置付けられる。被加工物(図示せず)に対するレーザアブレーションの実施に先立って、第1半体404と第2半体406とが、モノレール407から懸架されている被加工物を密封する。
【0097】
図示しているように、第1半体404の中にはレーザアブレーション加工ヘッド408が存在する。レーザアブレーション加工ヘッド408は、被加工物の第1の側にレーザアブレーションを実施する。図示しているように、第2半体406の中にはレーザアブレーション加工ヘッド410が存在する。レーザアブレーション加工ヘッド410は、被加工物の第2の側にレーザアブレーションを実施する。
【0098】
第1半体404は、被加工物に対して再配置されるよう、軌道412に沿って進む。第2半体406は、被加工物に対して再配置されるよう、軌道414に沿って進む。
【0099】
軌道412と軌道414の各々は、キャリッジ400の各半体を、他方の半体とは無関係に、直線軸の移動範囲全体にわたって駆動させるための能力を、提供する。一部の実施例では、ユーティリティ(電力など)のケーブルが、軌道412及び軌道414を通って延在しうる。一部の実施例では、ユーティリティのケーブルは、電力ケーブル、通信ケーブル、冷却剤ライン、レーザファイバ、空圧ライン、水ライン、又はその他の任意の望ましい種類のリソースのうちの、少なくとも1つを含みうる。上記の実施例では、軌道412及び軌道414は電力軌道と称されうる。
【0100】
一部の実施例では、軌道412及び軌道414は、種々のユーティリティケーブルを互いから物理的に分離させうる。一部の実施例では、軌道412及び軌道414は、電力ケーブル、通信ケーブル、冷却剤ライン、及びレーザファイバを、互いから物理的に分離させうる。一部の実施例では、軌道412及び軌道414は、電力ケーブル、通信ケーブル、冷却剤ライン、及びレーザファイバを、互いから最低2インチ、物理的に分離させる。
【0101】
ユーティリティケーブルは各々、個別の物理仕様を有する。一部の実施例では、軌道412及び軌道414では、各種のユーティリティケーブルの物理仕様が考慮されている。一実施例では、軌道412及び軌道414は各々、レーザファイバによって規定される最小曲げ半径限度を超える屈曲を妨げる。軌道412及び軌道414に通っているユーティリティケーブルは全て、工業製造標準に合致している。一実施例では、ユーティリティケーブルは、可撓性と評価されており(flex-rated)、工業環境に適しており、絶縁されており、かつ不燃性である。
【0102】
キャリッジ400の2つの半体は、全ての通常製造モードで、対になって機能する。一部の実施例では、キャリッジ400の2つの半体(第1半体404と第2半体406)は、互いとは無関係に進むことが可能である。一部の実施例では、検査及び洗浄のためのアクセスを容易にするよう、第1半体404と第2半体406は被加工物に対して個別に可動である。
【0103】
ここで
図5を参照するに、例示的な一実施形態による、レーザアブレーションシステムのキャリッジの等角図が例示されている。キャリッジ500は、
図1のキャリッジ116の物理的な一実行形態である。キャリッジ500は、
図2のキャリッジ208の一実行形態でありうる。キャリッジ500は、
図3のキャリッジ308の一実行形態でありうる。キャリッジ500は、
図4のキャリッジ400の一実行形態でありうる。
【0104】
図示しているように、キャリッジ500は、第1半体504と第2半体506とを有するレーザ筐体502を備える。図示しているように、レーザ筐体502は、レーザ筐体502に進入してメンテナンスを実施するための、オペレータアクセスドア508を有する。図示しているように、レーザ筐体502にはユーティリティ筐体510が取り付けられる。一部の実施例では、ユーティリティ筐体510は、レーザ筐体502の内部のレーザアブレーション加工ヘッド(図示せず)をサポートするための電気筐体である。
【0105】
一部の実施例では、第1半体504と第2半体506とは実質的に同じものである。上記の実施例では、第1半体504と第2半体506の各々はそれぞれ、1つのレーザアブレーション加工ヘッドを封入しうる。上記の実施例では、レーザアブレーション加工ヘッドの各々のためのサポート構造物が、レーザ筐体502の各半体に設けられる。
【0106】
その他の実施例では、レーザ筐体502は非対称である。一部の実施例では、キャリッジ500が1つのレーザアブレーション加工ヘッドしか内包していないので、レーザ筐体502が非対称になる。上記の実施例では、レーザ筐体502の第1半体504と第2半体506との間で、サポート構造物(ユーティリティ筐体510など)が異なる。
【0107】
移動システム512は、レーザ筐体502の第1半体504及び第2半体506の構成要素の直線運動をもたらす。移動システム512は、第1半体504及び第2半体506の構成要素を、被加工物をクランプするよう、方向514に、被加工物に向けて又は被加工物から遠ざかるように動かす。
【0108】
ここで
図6を参照するに、例示的な一実施形態による、キャリッジが被加工物にクランプされている時の、2つのレーザアブレーション加工ヘッドを有するレーザアブレーションシステムのキャリッジの正面図が例示されている。
図602のレーザアブレーションシステム600は、
図1のレーザアブレーションシステム102の物理的な一実行形態である。
図602は、
図2のレーザアブレーションシステム200内で作動するキャリッジ208の正面図でありうる。
図602は、
図3のフロアプラン300に示しているレーザアブレーション302の正面図でありうる。一部の実施例では、キャリッジ604の
図602は
図4のキャリッジ400の図となる。一部の実施例では、キャリッジ604の
図602は
図5のキャリッジ500の図となる。
【0109】
図示しているように、安全境界物606が、レーザアブレーションシステム600の空間607を取り囲んでいる。安全境界物606は遮光ではない。
【0110】
キャリッジ604は、被加工物にレーザアブレーションプロセスを実施するための作業環境を提供する。被加工物はモノレール608から懸架されている。キャリッジ604のクランプシステム610は、被加工物に対するレーザアブレーション及び密封のために被加工物を不動化して、レーザアブレーションプロセスによるレーザエネルギー又は廃出物の漏れを防止する。
【0111】
図602では、キャリッジ604は被加工物に対してクランプされている。
図602では、キャリッジ604は、キャリッジ604内の作業環境の内部でレーザアブレーションが実施される際に、被加工物に対して静止したままである。
【0112】
ここで
図7を参照するに、例示的な一実施形態による、キャリッジが開放状態にある時の、2つのレーザアブレーション加工ヘッドを有するレーザアブレーションシステムのキャリッジの正面図が例示されている。
図700は、「開放(open)」位置、すなわち「非クランプ(unclamped)」位置にある、
図6のキャリッジ604の図である。
【0113】
図700では、被加工物702が視認可能である。
図700では、
図6のクランプシステム610は視認可能ではない。
図700では、クランプシステム610は、キャリッジ604が被加工物702に対して動きうるように、後退した状態である。
【0114】
一実施例では、
図700において、キャリッジ604は、被加工物702を再位置付けし、被加工物702の別の部分をクランプするために、ページから出入りするように動きうる。被加工物702を再位置付けし、被加工物702の別の部分をクランプすることによって、キャリッジ604は、被加工物702の端から端まで徐々に進みうる。
【0115】
別の実施例では、
図700において、被加工物702を空間607から取り出すために、被加工物702はページを出入りするように動かされうる。更に別の実施例では、
図700において、検査とメンテナンスの少なくとも一方を可能にするために、キャリッジ604の1つの半体が単独で動きうる。
【0116】
ここで
図8を参照するに、例示的な一実施形態による、1つのレーザアブレーション加工ヘッドを有するレーザアブレーションシステムのキャリッジの内部の等角図が例示されている。キャリッジ800は、
図1のキャリッジ116の物理的な一実行形態である。キャリッジ800は、
図2のキャリッジ208の一実行形態でありうる。キャリッジ800は、
図3のキャリッジ308の一実行形態でありうる。キャリッジ800は、
図5のキャリッジ500の一実行形態でありうる。キャリッジ800は、
図9のレーザアブレーションシステム900のキャリッジ908とキャリッジ910のいずれかの、一実行形態でありうる。
【0117】
キャリッジ800は、単一のレーザアブレーション加工ヘッドを有するキャリッジの物理的な一実行形態である。レーザアブレーション加工ヘッド802は、被加工物の処理される望ましい側に応じて、レーザ筐体806の第1半体804とレーザ筐体806の第2半体808のいずれかの中へと動く。
【0118】
ここで
図9を参照するに、例示的な一実施形態による、2つのキャリッジを有するレーザアブレーションシステムの等角図が例示されている。レーザアブレーションシステム900は、
図1のレーザアブレーションシステム102の物理的な一実行形態である。レーザアブレーションシステム900は、被加工物906を内包するよう構成された空間904を取り囲んでいる安全境界物902と、空間904内にレーザアブレーションのための作業環境を作り出すよう構成されたキャリッジ908と、廃出物抽出システムとを備える。
【0119】
空間904は、被加工物906を保持するのに十分なほど大きいことによって被加工物906を内包するよう、構成される。更に、空間904は、被加工物906に加えてキャリッジお908及びキャリッジ910を内包するのに十分なほど大きい。一部の実施例では、キャリッジ910は第2キャリッジと称されうる。
【0120】
安全境界物902は、オペレータの進入を制限するよう構成される。図示しているように、安全境界902は、レーザアブレーションプロセス中のオペレータ912による空間904への進入を制限するよう、構成される。安全境界物902は光透過性である。安全境界物902は、レーザ放出を制限するものではない。
【0121】
キャリッジ908は、空間904内で被加工物906に対して動くよう構成される。キャリッジ910は、空間904内で被加工物906に対して動くよう構成される。
【0122】
キャリッジ908とキャリッジ910の各々は、クランプシステムと、遮光レーザ筐体と、レーザ筐体内のレーザアブレーション加工ヘッドとを備える。クランプシステムは、被加工物906をクランプし、かつ被加工物906の一部分を密封するよう構成される。キャリッジ908とキャリッジ910の両方が被加工物906を同時に加工する場合、キャリッジ908の対応クランプシステムが被加工物906の第1部分を密封する一方、キャリッジ910の対応クランプシステムが被加工物906の第2部分を密封する。一部の実施例では、キャリッジ908とキャリッジ910は、実質的に同時に、別々の被加工物を加工することもある。各クランプシステムは、レーザ放出を遮断するための遮光密封を作り出し、かつ、廃出物の漏れを防止するための負の圧力差を作り出すよう、構成される。
【0123】
図示していないが、レーザアブレーションシステム900は、キャリッジ908及びキャリッジ910の内部から廃出物を除去するよう構成された、廃出物抽出システムも備える。この廃出物抽出システムは、空間904の外部で、空間904の内部で、又はこの2つの何らかの組み合わせにおいて、構成要素を内包しうる。
【0124】
ここで
図10を参照するに、例示的な一実施形態による、エアナイフによって発生するキャリッジ内の代表的な気流の断面図が例示されている。
図1000は、
図1のキャリッジ116を切った断面図の物理的描写である。
図1000は、
図1のエアナイフ162によって発生する気流の断面図の物理的描写である。
【0125】
図1000は、誘導された気流によって発生する、
図2のキャリッジ208内の気流の断面図でありうる。
図1000は、
図4のキャリッジ400内の気流の断面図でありうる。
図1000は、
図5のキャリッジ500内の気流の断面図でありうる。
図1000は、
図8のキャリッジ800内の気流の断面図でありうる。
図1000は、
図9のキャリッジ908とキャリッジ910のいずれかの中の気流の断面図でありうる。
【0126】
図1000では、プラズマプルームの迅速な除去を確実にするために、被加工物の加工面の端から端まで、空気が導かれる。図示しているように、吸入空気を増幅させ、下向き方向1004に誘導する層流1002を、エアナイフが作り出す。層流1002は、廃出物を排気配管に向けて導く。層流1002は、キャリッジ1006内のいくつかのレーザアブレーション加工ヘッドから遠ざけるように、廃出物を導く。層流1002は更に、被加工物の表面から残留廃出物を除去する。
【0127】
ここで
図11を参照するに、例示的な一実施形態による、アブレーション加工ヘッド付近のエアノズルによって発生する、キャリッジ内の気流の断面図が例示されている。
図1100は、
図1のキャリッジ116を切った断面図の物理的描写である。
図1100は、
図1の圧縮空気ノズル164によって発生する気流の断面図の物理的描写である。
【0128】
図1100は、
図2のキャリッジ208内の気流の断面図でありうる。
図1100は、
図4のキャリッジ400内の気流の断面図でありうる。
図1100は、
図5のキャリッジ500内の気流の断面図でありうる。
図1100は、
図8のキャリッジ800内の気流の断面図でありうる。
図1100は、
図9のキャリッジ908とキャリッジ910のいずれかの中の気流の断面図でありうる。
【0129】
図1100では、気流1102は、被加工物上のアブレーション部位に向かって導かれる。
図1100では、気流1102は、レーザアブレーション加工ヘッド(例えば
図1のレーザアブレーション加工ヘッド122)の視界に向かって導かれる。気流1102は、レーザアブレーションの後に廃出物が被加工物上に残留することを防止する。気流1102は、気流1102がレーザアブレーション加工ヘッドに対する更なる汚染を作り出さないように、構成される。
【0130】
図2~
図11に示している種々の構成要素は、
図1の構成要素と組み合わされうるか、
図1の構成要素と共に使用されうるか、又は、この2つの組み合わせでありうる。加えて、
図2~
図11の構成要素の一部は、
図1にブロック形式で示している構成要素が、物理的構造物としてどのように実装されうるかについての実施例でありうる。
【0131】
ここで
図12を参照するに、例示的な一実施形態による、可動キャリッジ内でレーザアブレーションを実施するための方法のフロー図が例示されている。方法1200は、
図1のレーザアブレーションシステム102を使用して実施されうる。方法1200は、
図2のレーザアブレーションシステム200を使用して実施されうる。方法1200は、
図9のレーザアブレーションシステム900を使用して実装されうる。
【0132】
方法1200は、レーザアブレーションシステムのキャリッジであって、レーザ筐体と、レーザ筐体内のレーザアブレーション加工ヘッドとを備えるキャリッジを、レーザアブレーションシステムの空間内で被加工物に対して動かす(工程1202)。方法1200は、キャリッジのクランプシステムを使用して、被加工物をクランプする(工程1204)。一部の実施例では、被加工物をクランプすることは、レーザアブレーション加工ヘッドによるレーザアブレーションのために、被加工物を不動化することを含む(工程1205)。
【0133】
方法1200は、キャリッジのクランプシステムを使用してキャリッジに被加工物を密封させる(工程1206)。一部の実施例では、キャリッジのクランプシステムを使用してキャリッジに被加工物を密封させることは、レーザ発光を遮断するための遮光密封を作り出すこと、及び、廃出物の漏れを防止するための負の圧力差を作り出すことを含む(工程1207)。
【0134】
方法1200は、レーザアブレーションシステムの、レーザアブレーション加工ヘッドとレーザアブレーション加工ヘッドに動作可能に接続されているパルスレーザ源とを使用して、被加工物にアブレーションパターンを実行する(工程1208)。方法1200は、アブレーションパターンを実行している間に、レーザアブレーションシステムの廃出物抽出システムを使用して廃出物を抽出する(工程1210)。
【0135】
一部の実施例では、方法1200は更に、被加工物の表面の端から端まで、空気を連続的に流す(工程1212)。上記の実施例では、この連続気流が、レーザアブレーションプロセスから廃出物抽出システムに向けて、廃出物を導く。一部の実施例では、連続気流は廃出物を下向きに導く。
【0136】
一部の実施例では、方法1200は、圧縮空気ノズルを使用して、アブレーション部位に空気を導くこと(工程1214)を更に含む。アブレーション部位に空気を導くことによって、廃出物が、レーザアブレーション加工ヘッドから遠ざかるように導かれる。
【0137】
図示している種々の実施形態におけるフロー図及びブロック図は、例示的な一実施形態における装置及び方法の、いくつかの可能な実行形態のアーキテクチャ、機能性、及び動作を示している。これに関し、フロー図又はブロック図内の各ブロックは、1つの工程又はステップの、モジュール、セグメント、機能、及び/又は部分を表わしていることがある。
【0138】
例示的な一実施形態の、いくつかの代替的な実行形態では、ブロックに記載された一又は複数の機能が、図中に記載されている順序を逸脱して行われることがある。例えば、場合によっては、連続して図示されている2つのブロックが実質的に同時に実行されること、又は、関連機能に応じて、ブロックが時に逆順に実施されることもありうる。また、フロー図又はブロック図に示されているブロックに加えて、他のブロックが追加されることもある。
【0139】
一部の実施例では、方法1200の全てのブロックが実施されるわけではない。例えば、場合によっては、空気は、工程1212における場合のように被加工物の表面の端から端まで連続的に流されるわけではない。一部の実施例では、空気は、非連続方式で、表面の端から端まで流れる。
【0140】
この明細書で説明しているシステムは、正確な形状寸法で、アルミニウムの航空宇宙部品からコーティング(耐食仕上げ剤など)を除去して、アースボンド接触領域を作り出すために、レーザを使用するものである。この明細書で説明しているシステムは、正確な形状寸法でコーティング(腐食防止コーティングなど)を除去するために、パルスレーザを使用する。一部の実施例では、システムは、アースボンド接点を作り出すという目的のために、コーティングを除去しうる。
【0141】
一部の実施例では、個々の部品は、頭上モノレールシステムによって、自由懸架の状態で吊り下げられる。2つの位置付け器を有するレーザ筐体が、部品の長さ全体にわたって平行移動し、アブレーションプロセスを実行するためにプログラムされた場所で停止する。ソフトクランプシステムが、部品を不動化し、レーザ発光を遮断し、かつ、アブレーションされた廃出物を封じ込める。部品のキーフィーチャを位置特定し、次いで各位置付け器を精密に位置合わせするために、マシンビジョンが使用される。レーザ光学素子をスキャンすることにより下塗り剤がアブレーションされると同時に、廃出物及びガス状体は、下向気流によって押し流される。分離器サイクロンとガス状体抽出システムが、デブリとガス状体を捕捉する。カメラシステムは、次の場所に動く前に各パターンの製造品質保証(QA)検査を実施する。レーザ筐体は、被加工物を密封し、機械的安定化と、レーザ光及び生成された廃出物を封じ込めるための物理バリアとを提供する。
【0142】
更に、本開示は以下の条項による実施形態を含む。
【0143】
条項1.
被加工物(106)を内包するよう構成された空間(114)と、
空間(114)内で被加工物(106)に対して動くよう構成されたキャリッジ(116)であって、
被加工物(106)をクランプし、かつ被加工物(106)の一部分(124)を密封するよう構成された、クランプシステム(118)、
レーザ筐体(120)、及び、
レーザ筐体(120)内のレーザアブレーション加工ヘッド(122)を備える、キャリッジ(116)とを備える、レーザアブレーションシステム(102)。
【0144】
条項2.
レーザアブレーションシステム(102)の空間(114)内へと被加工物(106)を動かすよう構成された移動システム(140)を更に備える、条項1に記載のレーザアブレーションシステム(102)。
【0145】
条項3.移動システム(140)がモノレール(142)であり、被加工物(106)がモノレール(142)から懸架され、クランプシステム(118)が、レーザアブレーション加工ヘッド(122)によるレーザアブレーションのために被加工物(106)を不動化するよう構成されている、条項2に記載のレーザアブレーションシステム(102)。
【0146】
条項4.
空間(114)の境界(180)を取り囲んでいる安全フェンス(178)を更に備える、条項1に記載のレーザアブレーションシステム(102)。
【0147】
条項5.
安全フェンス(178)の外部に位置付けられたオペレータステーション(170)を更に備える、条項4に記載のレーザアブレーションシステム(102)。
【0148】
条項6.キャリッジ(116)のレーザ筐体(120)が向かい合った2つの半体(134、136)を備える、条項1に記載のレーザアブレーションシステム(102)。
【0149】
条項7.クランプシステム(118)が、レーザ放出を遮断するための遮光密封(126)を作り出し、かつ、廃出物(130)の漏れを防止するための負の圧力差(128)を作り出すよう構成されている、条項1に記載のレーザアブレーションシステム(102)。
【0150】
条項8.キャリッジ(116)が、被加工物(106)の端から端までにわたる空気の層流(166)を作り出すよう構成された気流システム(160)を更に備え、気流システム(160)が、廃出物(130)を廃出物抽出システム(144)に向けて動かすよう構成されている、条項1に記載のレーザアブレーションシステム(102)。
【0151】
条項9.キャリッジ(116)が、第2レーザアブレーション加工ヘッド(138)を更に備える、条項1に記載のレーザアブレーションシステム(102)。
【0152】
条項10.
空間(114、904)内で被加工物(106、906)に対して動くよう構成された第2キャリッジ(910)であって、
被加工物(106、906)をクランプし、かつ被加工物(106、906)を密封するよう構成された、第2クランプシステムと、
第2レーザ筐体と、
第2レーザ筐体内の第2レーザアブレーション加工ヘッドとを備える、第2キャリッジ(910)を更に備える、条項1に記載のレーザアブレーションシステム(102)。
【0153】
条項11.
レーザアブレーション加工ヘッド(122)に動作可能に接続されたパルスレーザ源(177)と、
空間(114)の外部に位置付けられている廃出物抽出システム(144)とを更に備える、条項1に記載のレーザアブレーションシステム(102)。
【0154】
条項12.
レーザアブレーションシステム(102)のキャリッジ(116)であって、レーザ筐体(120)と、レーザ筐体(120)内のレーザアブレーション加工ヘッド(122)とを備えるキャリッジ(116)を、レーザアブレーションシステム(102)の空間(114)内で被加工物(106)に対して動かすこと(1202)と、
キャリッジ(116)のクランプシステム(118)を使用して被加工物(106)をクランプすること(1204)と、
キャリッジ(116)のクランプシステム(118)を使用してキャリッジ(116)に被加工物(106)を密封させること(1206)と、
レーザアブレーションシステム(102)の、レーザアブレーション加工ヘッド(122)と、レーザアブレーション加工ヘッド(122)に動作可能に接続されているパルスレーザ源(177)とを使用して、被加工物(106)にアブレーションパターンを実行すること(1208)と、
アブレーションパターンを実行している間に、レーザアブレーションシステム(102)の廃出物抽出システム(144)を使用して廃出物(130)を抽出すること(1210)とを含む、方法。
【0155】
条項13.
被加工物(106)の表面(110)の端から端まで、空気を連続的に流すこと(1212)を更に含む、条項12に記載の方法。
【0156】
条項14.
圧縮空気ノズル(164)を使用して、アブレーション部位に空気を導くこと(1214)を更に含む、条項13に記載の方法。
【0157】
条項15.被加工物(106)をクランプすることが、
レーザアブレーション加工ヘッド(122)によるレーザアブレーションのために、被加工物(106)を不動化することを含む、条項12に記載の方法。
【0158】
条項16.キャリッジ(116)のクランプシステム(118)を使用してキャリッジ(116)に被加工物(106)を密封させることが、
レーザ放出を遮断するための遮光密封(126)を作り出すこと(1207)と、
廃出物(130)の漏れを防止するための負の圧力差(128)を作り出すこととを含む、条項12に記載の方法。
【0159】
条項17.
被加工物(106)よりも小さいレーザアブレーションのための作業環境(132)を作り出すよう構成され、かつ被加工物(106)に対して動くよう構成されている、キャリッジ(116)であって、
被加工物(106)の一部分(124)を密封するよう構成されたクランプシステム(118)であって、被加工物(106)を固定し、レーザ放出を遮断するための遮光密封(126)を作り出し、かつ、廃出物(130)の漏れを防止するための負の圧力差(128)を作り出すよう構成されている、クランプシステム(118)、
遮光レーザ筐体(120)、及び、
レーザ筐体(120)内のレーザアブレーション加工ヘッド(122)を備える、キャリッジ(116)と、
レーザ筐体(120)の内部から廃出物(130)を除去するよう構成された、廃出物抽出システム(144)とを備える、レーザアブレーションシステム(102)。
【0160】
条項18.キャリッジ(116)が、第2レーザアブレーション加工ヘッド(138)を更に備える、条項17に記載のレーザアブレーションシステム(102)。
【0161】
条項19.キャリッジ(116)のレーザ筐体(120)が、向かい合った2つの半体(134、136)を備える、条項17に記載のレーザアブレーションシステム(102)。
【0162】
種々の例示的な実施形態の説明は、例示及び説明を目的として提示されており、網羅的であること、又は開示された形態の実施形態に限定することを、意図するものではない。当業者には、多くの修正例及び変形例が自明となろう。更に、種々の例示的な実施形態は、それ以外の例示的な実施形態と比較して、異なる特徴を提供しうる。選択された一又は複数の実施形態は、実施形態の原理と実際の応用を最もよく説明するため、及び、他の当業者が、様々な修正例を伴う様々な実施形態の開示内容は想定される特定の用途に適していると理解することを可能にするために、選ばれ、かつ説明されている。