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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-12
(45)【発行日】2023-07-21
(54)【発明の名称】吸収性物品
(51)【国際特許分類】
   A61F 13/513 20060101AFI20230713BHJP
   A61F 13/53 20060101ALI20230713BHJP
   A61F 13/511 20060101ALI20230713BHJP
   A61F 13/49 20060101ALI20230713BHJP
【FI】
A61F13/513 110
A61F13/53 100
A61F13/511 400
A61F13/511 300
A61F13/511 100
A61F13/49 312Z
【請求項の数】 22
(21)【出願番号】P 2018214974
(22)【出願日】2018-11-15
(65)【公開番号】P2019118799
(43)【公開日】2019-07-22
【審査請求日】2021-09-07
(31)【優先権主張番号】P 2017250965
(32)【優先日】2017-12-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000918
【氏名又は名称】花王株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002170
【氏名又は名称】弁理士法人翔和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】植田 章之
(72)【発明者】
【氏名】福田 優子
(72)【発明者】
【氏名】奥田 泰之
【審査官】住永 知毅
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-228594(JP,A)
【文献】特開2012-070821(JP,A)
【文献】特開2012-110364(JP,A)
【文献】特開2009-119079(JP,A)
【文献】特開2017-213360(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 13/513
A61F 13/53
A61F 13/511
A61F 13/49
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
着用者の前後方向に対応する縦方向とこれに直交する横方向とを有し、液保持性の吸収性コアと、該吸収性コアの肌対向面に接触するコアラップシートとを具備し、該コアラップシートの肌対向面側に、該コアラップシートに近い順に表面シート、吸汗シートが配された吸収性物品であって、
前記吸汗シートは、その一部が前記表面シートと接触可能に対向配置されており、
前記表面シートの液拡散性は、前記吸汗シートの液拡散性に比して低く、且つ前記コアラップシートの液拡散性に比して低く、
前記吸収性物品は、着用時に着用者の胴周りに配される胴周り部を具備し、該胴周り部に、前記吸汗シート、前記表面シート、前記コアラップシート及び前記吸収性コアが配されていると共に、弾性部材が横方向に伸長状態で配されており、
前記吸汗シートは、前記胴周り部に、前記表面シートの縦方向端から縦方向外方に延出する縦外方延出部を有しており、
前記胴周り部において、前記吸汗シートと前記表面シートとが縦方向において同位置にある領域を領域A、該吸汗シートの前記縦外方延出部と縦方向において同位置にある領域を領域Bとした場合、該領域Aは、該領域Bに比して、横方向の伸長応力が大きく、
前記吸汗シートと前記表面シートとが厚み方向で重なる領域A1において、両シート間に疎水性シートが介在配置され、該吸汗シートは、該疎水性シートの縦方向内方端から縦方向内方に延出する縦内方延出部を有し、該縦内方延出部が、前記表面シートと接触可能に対向配置されている吸収性物品。
【請求項2】
着用者の前後方向に対応する縦方向とこれに直交する横方向とを有し、液保持性の吸収性コアと、該吸収性コアの肌対向面に接触するコアラップシートとを具備し、該コアラップシートの肌対向面側に、該コアラップシートに近い順に表面シート、吸汗シートが配された吸収性物品であって、
前記吸汗シートは、その一部が前記表面シートと接触可能に対向配置されており、
前記表面シートの液拡散性は、前記吸汗シートの液拡散性に比して低く、且つ前記コアラップシートの液拡散性に比して低く、
前記吸収性物品は、着用時に着用者の胴周りに配される胴周り部を具備し、該胴周り部に、前記吸汗シート、前記表面シート、前記コアラップシート及び前記吸収性コアが配されていると共に、弾性部材が横方向に伸長状態で配されており、
前記吸汗シートは、前記胴周り部に、前記表面シートの縦方向端から縦方向外方に延出する縦外方延出部を有しており、
前記胴周り部において、前記吸汗シートと前記表面シートとが縦方向において同位置にある領域を領域A、該吸汗シートの前記縦外方延出部と縦方向において同位置にある領域を領域Bとした場合、該領域Aは、該領域Bに比して、横方向の伸長応力が大きく、
前記胴周り部は、着用時に着用者の腹側に配される腹側部と背側に配される背側部とに区分され、該腹側部及び該背側部それぞれの前記領域Aの横方向中央部に前記表面シートが配され、前記吸汗シートが、該領域Aの横方向中央部及びその両側部にわたって横方向に延在しており、
前記吸汗シートと前記表面シートとが厚み方向で重なる前記領域Aの横方向中央部は、該領域Aの横方向両側部に比して、横方向の伸縮性が低く、
前記吸汗シートと前記表面シートとが厚み方向で重なる前記領域Aの横方向中央部において、両シート間に疎水性シートが介在配置され、該吸汗シートは、該疎水性シートの縦方向内方端から縦方向内方に延出する縦内方延出部を有し、該縦内方延出部が、前記表面シートと接触可能に対向配置されている吸収性物品。
【請求項3】
前記コアラップシートは、前記吸汗シートに比して、液拡散面積が大きい請求項1又は2に記載の吸収性物品。
【請求項4】
前記吸汗シートは、前記表面シートと接触可能に対向配置された部分にて、該表面シートと接合されている請求項1~3のいずれか1項に記載の吸収性物品。
【請求項5】
前記吸汗シートと前記表面シートとの前記接合が、部分的な接合である請求項4に記載の吸収性物品。
【請求項6】
前記吸汗シートと前記表面シートとの重なり部分の総面積に占める、両シートどうしの接合部の総面積の割合が、0.5%以上20%以下である請求項5に記載の吸収性物品。
【請求項7】
前記吸汗シートは、肌対向面側が非肌対向面側に比して親水度が低い請求項1~6のいずれか1項に記載の吸収性物品。
【請求項8】
前記表面シートは、肌対向面側に凹凸形状を有し、該凹凸形状の凸部にて前記吸汗シートと接触可能になされている請求項1~7のいずれか1項に記載の吸収性物品。
【請求項9】
前記表面シートの前記凹凸形状が、該表面シートの肌対向面の全域に複数の凸部が散点状に配され、且つ各該凸部の周囲が凹部となっている形状である請求項8に記載の吸収性物品。
【請求項10】
前記表面シートの前記凸部と前記吸汗シートとが接合されている請求項8又は9に記載の吸収性物品。
【請求項11】
前記領域Aの横方向の伸長応力と前記領域Bの横方向の伸長応力との比率が、領域A>領域Bを前提として、領域A/領域Bとして、1.05以上2.5以下である請求項1又は2に記載の吸収性物品。
【請求項12】
前記領域Aの横方向の伸長応力が、0.04N/mm以上0.12N/mm以下である請求項1、2及び11のいずれか1項に記載の吸収性物品。
【請求項13】
前記領域Bの横方向の伸長応力が、0.02N/mm以上0.10N/mm以下である請求項1、2、11及び12のいずれか1項に記載の吸収性物品。
【請求項14】
前記吸汗シートと前記疎水性シートとが縦方向において同位置にある領域A2は、該吸汗シートの前記縦内方延出部と縦方向において同位置にある領域A3に比して、横方向の伸長応力が大きい請求項1~13のいずれか1項に記載の吸収性物品。
【請求項15】
前記領域A2の横方向の伸長応力と前記領域A3の横方向の伸長応力との比率が、領域A2>領域A3を前提として、領域A2/領域A3として、1.03以上2.5以下である請求項14に記載の吸収性物品。
【請求項16】
前記領域A2の横方向の伸長応力が、0.04N/mm以上0.12N/mm以下である請求項14又は15に記載の吸収性物品。
【請求項17】
前記領域A3の横方向の伸長応力が、0.02N/mm以上0.10N/mm以下である請求項1416のいずれか1項に記載の吸収性物品。
【請求項18】
前記領域A2が横方向に伸縮性を有している請求項1417のいずれか1項に記載の吸収性物品。
【請求項19】
前記表面シートは、前記コアラップシートに比して、繊維間距離が長い請求項1~18のいずれか1項に記載の吸収性物品。
【請求項20】
前記表面シートは、前記吸汗シートに比して、繊維間距離が長い請求項1~19のいずれか1項に記載の吸収性物品。
【請求項21】
前記表面シートの繊維間距離と前記吸汗シートの繊維間距離との比率が、前者>後者を前提として、前者/後者として、1.5以上10以下である請求項1~20のいずれか1項に記載の吸収性物品。
【請求項22】
前記表面シートは、前記吸汗シートに比して、繊維密度が低い請求項1~21のいずれか1項に記載の吸収性物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸汗機能を有する吸汗シートを備えた吸収性物品に関する。
【背景技術】
【0002】
使い捨ておむつなどの吸収性物品として、着用者の肌と接触可能に配された表面シートと、該表面シートよりも着用者の肌から遠い側に配された裏面シートと、両シート間に介在配置された吸収体とを具備し、該吸収体が、パルプなどの吸収性材料を含む吸収性コアと、該吸収性コアを被覆するコアラップシートとを含んで構成されているものが知られている。このような構成の吸収性物品において、汗疹などの肌トラブルを低減する目的で、着用時に着用者の肌と接触し得る部位に、汗を吸収可能な親水性素材を含む吸汗シートを配置することが従来行われている。
【0003】
特許文献1には、パンツ型使い捨ておむつにおいて、吸収体の端縁から外方へ延出する背側エンドフラップに、吸汗シートとして、吸水性の高い材料である長繊維を有する親水性ウエブを配置することが記載されている。前記親水性ウエブは、着用者の肌と当接可能に配され、前記背側エンドフラップは、該親水性ウエブよりも着用者の肌から遠い側に配されている。前記背側エンドフラップは2枚のシート材から構成され、両シート材間には、おむつの横方向に延びる弾性部材が縦方向に所定間隔をおいて伸長状態で配されており、斯かる構成により、該背側エンドフラップは横方向に伸縮性を有している。特許文献1によれば、着用者の腰周りから発散された汗は、前記親水性ウエブによって素早く吸収・拡散されるため、着用者の腰周りは低湿度のドライな状態が保たれ、肌トラブルが発生し難いとされている。なお、縦方向は、吸収性物品の着用者の前後方向に対応する方向、横方向は、縦方向に直交する方向である。
【0004】
特許文献2には、使い捨ておむつにおける前後胴周り域の内面側を覆う疎水性シートに吸汗シートを取り付けることが記載されている。前記疎水性シートは、その縦方向内方端部が表面シートと厚み方向において重複し、その両シートの重複部分においては、該疎水性シートが該表面シートよりも着用者の肌に近い位置に配されている。前記吸汗シートは、その全体が前記疎水性シートと厚み方向において重複し、前記表面シートとの接触部を有していない。特許文献2に記載の使い捨ておむつは、その着用中に前記疎水性シートの非接合領域がめくれることがあっても、そのことによって吸汗シートがめくれて吸汗シートとしての機能を損なうということがないように構成されたものである。
【0005】
特許文献3には、使い捨ておむつにおける吸収性コアの縦方向外方位置たるウエストフラップに、吸汗シートとして機能する親水性シートを配置し、また、該ウエストフラップにウエスト弾性部材を横方向に伸長状態で配置してギャザーを形成することが記載されている。前記親水性シートは、いわゆる表面シートである内側親水性シートと、該内側親水性シートの非肌対向面側に配された外側親水性シートとを具備する。特許文献3記載の使い捨ておむつによれば、肌トラブルが発生しやすいおむつのウエストフラップに、ウエスト弾性部材によりギャザーが形成されているため、着用者の動きに起因する該ギャザーの伸縮により、内側親水性シートに移行した汗が外側親水性シートに移行しやすく、そのため、肌トラブルが生じ難いとされている。また、外側親水性シートの液体の拡散性を内側親水性シートのそれよりも高くすることで、外側親水性シートに移行した汗を素早く拡散できることも記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2006-141549号公報
【文献】特開2007-259874号公報
【文献】特開2010-246901号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
吸汗シートを具備する吸収性物品においては、吸汗シートによる汗の吸収量が、吸汗シートが有する汗の吸収容量に達した場合が問題となる。その場合には、吸汗シートによる汗の吸収が不可能になり且つ大量の汗を吸収した湿潤状態の吸汗シートが存在することになるため、そのまま吸収性物品を着用し続けると、汗疹などの肌トラブルを引き起こすおそれがあるからである。斯かる問題の対応策として、吸汗シートの厚みを増加して吸収容量の増大を図る方法が考えられるが、この方法では、吸汗シートの厚み増加に起因して着用感の悪化を招くおそれがある。吸収性物品の着用感の悪化を招かずに、多量の汗を吸収し得る技術は未だ提供されていない。
【0008】
したがって本発明の課題は、多量の汗を速やかに吸収することができ、且つ吸収された体液が着用者の肌側に逆戻りする不都合が低減され、体液に起因する肌トラブルが生じ難い吸収性物品を提供することに関する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、着用者の前後方向に対応する縦方向とこれに直交する横方向とを有し、液保持性の吸収性コアと、該吸収性コアの肌対向面に接触するコアラップシートとを具備し、該コアラップシートの肌対向面側に、該コアラップシートに近い順に表面シート、吸汗シートが配された吸収性物品であって、前記吸汗シートは、その一部が前記表面シートと接触可能に対向配置されており、前記表面シートの液拡散性は、前記吸汗シートの液拡散性に比して低く、且つ前記コアラップシートの液拡散性に比して低い吸収性物品である。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、多量の汗を速やかに吸収することができ、且つ吸収された体液が着用者の肌側に逆戻りする不都合が低減され、体液に起因する肌トラブルが生じ難い吸収性物品が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、吸収性物品の一実施形態であるパンツ型使い捨ておむつを模式的に示す斜視図である。
図2図2は、図1に示すおむつの展開且つ伸長状態における肌対向面側(内面側)を模式的に示す展開平面図である。
図3図3は、図2のI-I線断面(横方向に沿う断面)を模式的に示す横断面図である。
図4図4は、図2のII-II線断面(縦方向に沿う断面)を模式的に示す断面図であり、図1に示すおむつの縦方向の一端部(背側部側の縦方向端部)を拡大して模式的に示す縦断面図である。
図5図5は、本発明の吸収性物品の他の実施形態の図4相当図である。
図6図6は、本発明の吸収性物品のさらに他の実施形態の図4相当図である。
図7図7は、本発明の吸収性物品のさらに他の実施形態の図4相当図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下本発明を、その好ましい実施形態に基づき図面を参照しながら説明する。図1図4には、本発明の吸収性物品の一実施形態であるパンツ型使い捨ておむつ1が示されている。おむつ1は、図1図4に示すように、着用者の前後方向、すなわち腹側から股間部を介して背側に延びる方向に相当する縦方向Xと、これに直交する横方向Yとを有し、液保持性の吸収性コア24と、該吸収性コア24の肌対向面に接触するコアラップシート25とを具備し、該コアラップシート25の肌対向面側に、該コアラップシート25に近い順に表面シート21、吸汗シート10が配されている。吸収性コア24とその外面に接触してこれを包むコアラップシート25とによって、吸収体23が構成されている。
【0013】
本明細書において、「肌対向面」は、吸収性物品又はその構成部材(例えば表面シート)における、吸収性物品の着用時に着用者の肌側に向けられる面、すなわち相対的に着用者の肌に近い側であり、「非肌対向面」は、吸収性物品又はその構成部材における、吸収性物品の着用時に肌側とは反対側に向けられる面、すなわち相対的に着用者の肌から遠い側である。なお、ここでいう「着用時」は、通常の適正な着用位置、すなわち当該吸収性物品の正しい着用位置が維持された状態を意味する。
【0014】
おむつ1は、図1及び図2に示すように、股下部M並びに該股下部Mの前後から縦方向Xに延出する腹側部F及び背側部Rを有する。股下部Mは、おむつ1の着用状態において着用者の股間部に配される部位であり、腹側部Fは、おむつ1の着用状態において股下部Mよりも着用者の腹側すなわち縦方向Xの前側に配される部位であり、背側部Rは、おむつ1の着用状態において股下部Mよりも着用者の背側すなわち縦方向Xの後側に配される部位である。腹側部F及び背側部Rは、おむつ1の着用時に着用者の胴周りに配される胴周り部である。換言すれば、おむつ1の胴周り部は、腹側部Fと背側部Rとに区分される。
【0015】
おむつ1は、吸収体23(吸収性コア24及びコアラップシート25)を含む吸収性本体2を横方向Yの中央部に備えると共に、該吸収性本体2の非肌対向面側すなわち該吸収性本体2よりも着用者の身体から遠い側に配された外装体3を備え、腹側部F及び背側部Rそれぞれにおける外装体3の縦方向Xに沿う両側縁部どうしが、接着剤、ヒートシール、超音波シール等の公知の接合手段によって互いに接合されて、図1に示すように、一対のサイドシール部S,S、並びに着用者の胴が通されるウエスト開口部WH、及び着用者の下肢が通される一対のレッグ開口部LH,LHが形成されている。
【0016】
吸収性本体2は、図2に示す如きおむつ1の展開且つ伸長状態において、平面視長方形形状をなし、腹側部Fから背側部Rにわたって縦方向Xに延在しており、その長手方向を展開且つ伸長状態におけるおむつ1の縦方向Xに一致させて、外装体3の横方向Yの中央部に配置され、接着剤により外装体3に接合されている。おむつ1の「展開且つ伸長状態」とは、おむつ1をサイドシール部Sで切り離して展開状態とし、その展開状態のおむつ1を各部の弾性部材を伸長させて設計寸法(弾性部材の影響を一切排除した状態で平面状に広げたときの寸法と同じ)となるまで拡げた状態をいう。
【0017】
吸収性本体2は、図3に示すように、肌対向面を形成する液透過性の表面シート21、非肌対向面を形成する液不透過性若しくは液難透過性又は撥水性の裏面シート22、及び両シート21,22間に介在配置された液保持性の吸収体23を具備しており、これらが接着剤等の公知の接合手段により一体化されて構成されている。吸収性本体2の縦方向Xの全長は吸収体23のそれと同じであり、縦方向両端23a,23aは、図2に示すように、吸収性本体2の縦方向端と同位置にある。表面シート21及び裏面シート22としては、それぞれ、この種の吸収性物品に従来用いられている各種のものを特に制限なく用いることができる。例えば、表面シート21としては各種の不織布や開孔フィルム等を用いることができ、裏面シート22としては樹脂フィルムや、樹脂フィルムと不織布等とのラミネート等を用いることができる。
【0018】
吸収体23は、吸収性材料を主体とする液保持性の吸収性コア24と、該吸収性コア24の外面すなわち肌対向面及び非肌対向面を被覆するコアラップシート25とを含んで構成されている。吸収性コア24は、図1に示す如き平面視において縦方向Xに長い長方形形状をなし、腹側部Fから背側部Rにわたって縦方向Xに延在している。吸収性コア24の主体をなす吸収性材料としては、この種の吸収性物品において吸収体の材料として用いられるものを特に制限なく用いることができ、例えば、木材パルプ、親水化処理された合繊繊、吸水性ポリマー等が挙げられる。吸収性コア24の典型的な形態として、木材パルプ等の親水性繊維の繊維集合体、又は該繊維集合体に粒子状の吸水性ポリマーを保持させたものを例示できる。
【0019】
おむつ1において、コアラップシート25は、吸収性コア24の横方向Yの長さの2倍以上3倍以下の幅を有する1枚の連続した液透過性シートであり、図3に示すように、吸収性コア24の肌対向面の全域を被覆し、且つ吸収性コア24の縦方向Xに沿う両側縁から横方向Yの外方に延出し、その延出部が、吸収性コア24の下方に巻き下げられて、吸収性コア24の非肌対向面の全域を被覆している。吸収性コア24とコアラップシート25との間は、ホットメルト型接着剤等の公知の接合手段により接合されていてもよい。コアラップシート25としては、例えば、紙、各種不織布、開孔フィルム等の液透過性シートを用いることができる。
【0020】
なお、本発明において、コアラップシートはこのような1枚のシートでなくてもよく、例えば、吸収性コア24の肌対向面を被覆する1枚の肌側コアラップシートと、該肌側コアラップシートとは別体で、吸収性コア24の非肌対向面を被覆する1枚の非肌側コアラップシートとを含んで構成されていてもよい。
【0021】
図2及び図3に示すように、吸収性本体2の肌対向面における縦方向Xに沿う両側部には、液抵抗性又は撥水性で且つ通気性の防漏カフ形成用シート27から構成された一対の防漏カフ26,26が設けられている。各防漏カフ26の自由端部の近傍には糸状の防漏カフ形成用弾性部材28が1本以上縦方向Xに伸長状態で配されている。防漏カフ26は、伸長状態で配された弾性部材28がおむつ1の着用時に収縮することによって少なくとも股下部Mで起立し、それによって尿等の排泄液の横方向Yの外方への流出を阻止する。
【0022】
外装体3は、図2に示す如き展開且つ伸長状態のおむつ1の外形を形作っており、外装体3の周縁は、その状態のおむつ1の輪郭線、すなわち腹側部F、股下部M及び背側部Rそれぞれの輪郭線を形成している。外装体3は、図2に示すように、腹側部F及び背側部Rにおいては、縦方向Xよりも横方向Yの長さが長い長方形形状をなし、腹側部Fと背側部Rとの間に位置する股下部Mにおいては、外装体3の縦方向Xに沿う両側縁部すなわち一対のレッグ縁部LS,LSが横方向Yの中央に向かって凸の円弧状に湾曲しており、図2に示す如き平面視において、縦方向Xの中央域が横方向Yの内方に向けて括れた砂時計状をなしている。
【0023】
外装体3は、図3及び図4に示すように、着用状態においておむつ1の外面すなわち非肌対向面を形成する外層シート31と、外層シート31の肌対向面に対向配置された内層シート32との積層体を含んで構成されている。おむつ1の着用状態において、外層シート31は着用者の身体から遠い側に位置して、おむつ1の非肌対向面(外面)を形成し、内層シート32は着用者の身体に近い側に位置して、おむつ1の肌対向面(内面)を形成する。外層シート31と内層シート32とは、所定の部位において接着剤等の接合手段を介して互いに接合されている。
【0024】
おむつ1において、外層シート31は、図2及び図4に示すように、腹側部F及び背側部Rに、内層シート32の縦方向Xの端縁から延出し、内層シート32の肌対向面側に折り返される折り返し部31Eを有し、該折り返し部31Eは、吸収性本体2の縦方向Xの端部を被覆している。なお、図4では背側部Rの縦方向端部を拡大して示し、腹側部Fの拡大図は示していないが、腹側部Fも背側部Rと同様に構成されており、特に断らない限り、腹側部Fについては背側部Rについての説明が適宜適用される。
【0025】
外装体3を構成するシート31,32は、互いに同種のシートでもよく、あるいは異種のシートでもよく、後者の例として、伸縮性が互いに異なる形態が挙げられる。具体的には例えば、外層シート31としては、横方向Yに伸縮性を有する伸縮シートを用い、内層シート32としては、伸縮性を有していない非伸縮シートを用いることができる。また例えば、外層シート31の伸縮性が部分的に異なっていてもよく、具体的には、外層シート31における腹側部F及び背側部Rに位置する部分が、横方向Yに伸縮性を有する伸縮シートからなり、外層シート31における股下部Mに位置する部分が、伸縮性を有していない非伸縮シートからなる形態が挙げられる。
【0026】
外装体3として使用可能な伸縮シートとしては、例えば、弾性繊維層の両面又は片面に伸長可能な繊維層が一体化されている伸縮シートが挙げられ、弾性繊維層と伸長可能な繊維層との一体化の方法としては、例えば、両者を積層して水流交絡する方法、エアスルー等により繊維を交絡させる方法、ヒートエンボス、接着剤、超音波等によって接合させる方法が挙げられる。また、外装体3として使用可能な非伸縮シートとしては、例えば、各種製法による不織布が挙げられ、具体的にはスパンボンド不織布、エアスルー不織布、ニードルパンチ不織布を例示できる。
【0027】
図1図2及び図4に示すように、腹側部F及び背側部Rそれぞれには、糸状又は帯状の胴周り弾性部材33が横方向Yに伸長状態で複数本配され、それら複数本の胴周り弾性部材33は縦方向Xに所定間隔を置いて間欠配置されている。このように、胴周り弾性部材33がその弾性伸縮性が発現される状態で配されていることにより、ウエスト開口部WHの開口縁部には、その全周にわたって実質的に連続した環状のウエストギャザーが形成される。また、一対のレッグ開口部LH,LHそれぞれの開口縁部を形成するレッグ縁部LSには、糸状又は帯状の1本又は複数本のレッグギャザー形成用のレッグ弾性部材34が伸長状態で配されており、これによって一対のレッグ開口部LH,LHそれぞれの開口縁部には、その全周にわたって実質的に連続した環状のレッグギャザーが形成される。これらの弾性部材33,34は、何れも外装体3を構成する外層シート31と内層シート32との間に接着剤等の接合手段により挟持固定されている。
【0028】
おむつ1においては前記の通り、外装体3は、吸収体23よりもおむつ1の着用者の肌から遠い側に配されている。また外装体3は、横方向Yに伸長状態で固定された胴周り弾性部材33を具備することに起因して、横方向Yに伸縮性を有しており、同方向に伸縮性を有する伸縮シートである。
【0029】
本明細書において「伸縮性」とは、所定方向に伸長可能であり且つ伸長を解除すると収縮する性質を意味する。シートが、ある方向に実質的に伸縮性を有しない(非伸縮性である)とは、該シートに対して当該ある方向に引っ張る力を加えても、該シートが、殆ど伸びないことを意味する。例えば、長さ15×幅5cmのサンプルに対して、該サンプルをテンシロン等の材料引っ張り試験機で長手方向に引っ張って、該サンプルが破断するときの破断伸度が10%以下である場合、そのサンプルは、長手方向に実質的に伸縮性を有しない。なお、破断伸度とは(破断時の該サンプル長さ-該サンプルの元の長さ)/(該サンプルの元の長さ)×100で算出することができる。
【0030】
吸汗シート10は、着用者の腰周りの汗の吸収を目的とするもので、おむつ1における着用時に着用者の肌と接触し得る部位に配されている。おむつ1においては図1図2及び図4に示すように、着用時に着用者の胴周りに配される胴周り部である腹側部F及び背側部Rそれぞれに、着用者の肌に近い順に、吸汗シート10、表面シート21、コアラップシート25及び吸収性コア24が配されていると共に、弾性部材33が横方向Yに伸長状態で配されている。腹側部F及び背側部Rは、それぞれ、部分的に弾性部材33の伸縮性が阻害されている場合があり得るものの、全体としては、弾性部材33を具備することに起因して、横方向Yに伸縮性を有している。
【0031】
おむつ1において、吸汗シート10は、図2に示す如き平面視において一方向に長い形状、具体的には長方形形状をなし、その長手方向を横方向Yに一致させて、腹側部F及び背側部Rそれぞれの横方向Yの全長にわたって配されている。吸汗シート10は、腹側部F及び背側部Rそれぞれにおいて、吸収性コア24(吸収性本体2)が配されているコア配置領域と、吸収性コア24(吸収性本体2)が配されていないコア非配置領域との両方に跨って配されている。腹側部F及び背側部Rそれぞれにおける前記コア非配置領域は、吸収性コア24(吸収性本体2)の縦方向Xに沿う両側縁及びその仮想延長線よりも横方向Yの外方に位置する領域(サイドフラップ領域)と、吸収性コア24(吸収性本体2)の縦方向端(吸収体23の縦方向端23a)及びその仮想延長線よりも縦方向Xの外方に位置する領域(エンドフラップ領域)とを含む。このように吸汗シート10は、腹側部F及び背側部Rそれぞれにおいて、コア配置領域及びコア非配置領域の双方を跨ぐように配されている点で、実質的にコア配置領域のみに配されている表面シート21と相違する。
【0032】
吸汗シート10は、腹側部F及び背側部Rそれぞれの肌対向面側において、ウエスト開口部WHの開口端の近傍に該開口端に沿って配され、その配置位置においておむつ1の着用者の肌の最も近くに配されている。吸汗シート10は、ウエスト開口部WHから相対的に近い縦方向外方端10aと、ウエスト開口部WHから相対的に遠い縦方向内方端10bとを有し、両縦方向端10a,10bは横方向Yに平行に延びている。吸汗シート10の縦方向外方端10aは、吸収体23の縦方向端23aよりも縦方向Xの外方に位置し、吸汗シート10の縦方向内方端10bは、吸収体23の縦方向端23aよりも縦方向Xの内方に位置している。吸収体23の縦方向端23aは、吸収性コア24及びコアラップシート25それぞれの縦方向端でもある。
【0033】
吸汗シート10は、典型的には不織布を主体とする。吸汗シート10を構成する不織布としては、この種の吸収性物品の構成部材として使用可能な各種製法による不織布を特に制限なく用いることができ、例えば、カード法により製造された不織布、スパンボンド不織布、メルトブローン不織布、スパンレース不織布、ニードルパンチ不織布などが挙げられる。
【0034】
おむつ1においては、吸汗機能を有する吸汗シート10が着用者の肌と接触し得る部位(肌対向面のウエスト開口部WH周り)に配されているため、汗疹、湿疹、かぶれなどの汗に起因する肌トラブルが低減されている。しかしながら、吸汗シート10が有する汗の吸収容量は有限であり、吸汗シート10による汗の吸収量がその吸収容量に達した後では、吸汗シート10による汗の吸収がほとんどなされず、また、大量の汗を吸収した湿潤状態の吸汗シート10が着用者の肌と接することになるため、その状態でおむつ1を着用し続けると、肌トラブルに繋がることが懸念される。この問題に対しては、吸汗シート10の厚みを増加するなどして吸収容量の増大を図る方法が考えられるが、この方法ではおむつ1の着用感の悪化を招きかねない。
【0035】
これに対し、おむつ1においては、吸汗シート10自体の吸収容量の増加を図るのではなく、吸汗シート10と吸汗機能を有する他の部材とを、それら部材間を汗が移行可能なように連結させ、そうすることでおむつ1全体としての汗の吸収容量の増加を図ることとした。具体的には図4に示すように、吸汗シート10の一部である縦方向内方端10b側の端部を、表面シート21と接触可能に対向配置させ、該端部を、吸汗シート10から表面シート21への汗の導通路として機能するようにした。斯かる構成により、おむつ1の着用中においては、吸汗シート10によって吸収された汗の量が吸汗シート10の吸汗容量の飽和に達したとき、その汗の一部が、吸汗シート10の縦方向内方端10b側の端部から表面シート21へ移行し、表面シート21、更にはその非肌対向面側に位置するコアラップシート25を厚み方向に順次透過して、吸収性コア24に到達しそこで吸収保持され得る。おむつ1においてはこのように、汗の吸収部材として、着用者の肌と直接接触する吸汗シート10だけでなく、吸収性コア24などの他の部材も活用されるため、おむつ1の着用中に吸汗シート10の吸収容量が飽和する事態が生じ難く、長時間安定的に汗が吸収される。
【0036】
しかしながら、このような吸汗シート10から吸収性コア24にわたる汗の導通路が形成されると、吸収性コア24に一旦は吸収保持された汗、尿などの体液が、該導通路を逆流して吸汗シート10側へ移行し濡れ拡がる、いわゆる液戻りの発生が懸念される。そこでおむつ1においては、吸汗シート10の一部(縦方向内方端10b側の端部)を表面シート21と接触可能に対向配置させることに加えて更に、吸収性コア24よりも着用者の肌に近い側に配された部材、具体的には吸汗シート10、表面シート21及びコアラップシート25の液拡散性に特定の大小関係を持たせることとした。具体的には、表面シート21の液拡散性を、吸汗シート10のそれに比して低く、且つコアラップシート25のそれに比して低くした。このように、吸収性コア24よりも着用者の肌に近い部材の液拡散性に関して、「吸汗シート10>表面シート21」及び「コアラップシート25>表面シート21」なる大小関係を成立させることで、吸汗シート10から吸収性コア24への汗の移行を行いつつ、吸収性コア24から表面シート21への自発的な液の流れは起こらないため、吸汗シート10側への体液の移行いわゆる液戻りが効果的に防止される。液拡散性は、下記方法により測定される液拡散面積に基づき判断される。液拡散面積が大きいほど、液拡散性が高く、体液が濡れ拡がりやすいと評価される。
【0037】
<液拡散面積の測定方法>
測定対象物(吸汗シート10、表面シート21、コアラップシート25)から100mm×100mm四方を切断してサンプルとする。アクリル板の上にサンプルを載置し、そのサンプルの上方30mmの位置から、着色した水0.05mLをサンプルに滴下する。滴下から10分経過後に、画像解析装置を用いて、サンプルにおける被着色部(滴下された水の拡散部分)の面積を測定する。
【0038】
吸汗シート10の液拡散面積と表面シート21の液拡散面積との比率は、吸汗シート10の液拡散面積(前者)>表面シート21の液拡散面積(後者)を前提として、吸汗シート10の液拡散面積(前者)/表面シート21の液拡散面積(後者)として、好ましくは1.5以上、より好ましくは2.0以上であり、そして、好ましくは30以下、より好ましくは15以下である。コアラップシート25の液拡散面積と表面シート21の液拡散面積との比率は、コアラップシート25の液拡散面積(前者)>表面シート21の液拡散面積(後者)を前提として、コアラップシート25の液拡散面積(前者)/表面シート21の液拡散面積(後者)として、好ましくは2.0以上、より好ましくは2.5以上であり、そして、好ましくは40以下、より好ましくは35以下である。
【0039】
吸汗シート10の液拡散面積は、好ましくは100mm以上、より好ましくは150mm以上であり、そして、好ましくは1000mm以下、より好ましくは800mm以下である。
コアラップシート25の液拡散面積は、好ましくは120mm以上、より好ましくは170mm以上であり、そして、好ましくは1000mm以下、より好ましくは800mm以下である。
表面シート21の液拡散面積は、好ましくは10mm以上、より好ましくは20mm以上、そして、好ましくは100mm以下、より好ましくは200mm以下、更に好ましくは300mm以下である。
【0040】
なお、吸汗シート10の液拡散面積とコアラップシート25の液拡散面積との大小関係については、吸汗シート10に吸収された汗が、表面シート21を介してコアラップシート25に効率よく移行できるようにする観点から、コアラップシート25の方が吸汗シート10よりも液拡散面積が大きいことが好ましい。
【0041】
前述した、吸汗シート10から表面シート21への汗の移行は、少なくともおむつ1の着用時において、吸汗シート10の一部(縦方向内方端10b側の端部)が表面シート21と接触していれば可能であり、おむつ1の非使用時に両シートが接触していなくても構わない。吸汗シート10の一部と表面シート21とが、両シート間に他の部材を介さずに対向配置されてさえいれば、おむつ1の非使用時に両シートが接触していなくても、おむつ1の着用時には通常、胴周り弾性部材33の収縮などによって両シートが一体的に着用者の肌に押し付けられ、それによって両シートの接触が生じるからである。しかしながら、おむつ1の着用時において吸汗シート10の一部と表面シート21とを確実に接触させて、両シート間での汗の移行をスムーズにする観点から、吸汗シート10は、表面シート21と接触可能に対向配置された部分(縦方向内方端10b側の端部)、すなわち吸汗シート10と表面シート21との重なり部分(図4中符号A3で示す部分)にて、表面シート21と接合されていることが好ましい。斯かる吸汗シート10と表面シート21との接合手段は特に限定されず、接着剤、融着などの公知の接合手段を用いることができる。
【0042】
また、吸収性コア24から吸汗シート10側への液戻りを防止する観点から、前記の吸汗シート10と表面シート21との接合は、部分的な接合であることが好ましい。すなわち、吸汗シート10は、表面シート21と接触可能に対向配置された部分、すなわち吸汗シート10と表面シート21との重なり部分(図4中符号A3で示す部分)にて、表面シート21と部分的に接合されていることが好ましい。両シートが部分的に接合されていることで、吸汗シート10から表面シート21へのスムーズな汗の移行と液戻りの防止とが高いレベルで両立される。両シートを接合する接合部のパターンは、吸汗性能と液戻り防止性能とのバランスなどを考慮して適宜設定することができる。
【0043】
前述した作用効果をより確実に奏させるようにする観点、特に液戻り防止の観点から、「吸汗シート10と表面シート21との重なり部分の総面積に占める、両シート10,21どうしの接合部の総面積の割合」(接合部面積占有率)は、好ましくは20%以下、より好ましくは15%以下である。前記接合部面積占有率の下限については、特に吸汗シート10から表面シート21への汗の移行を確保する観点から、好ましくは0.5%以上、より好ましくは2%以上である。
【0044】
吸汗シート10、表面シート21及びコアラップシート25において前述した液拡散面積の大小関係を成立させ、吸汗性と液戻り防止性との両立を図る観点から、表面シート21は、コアラップシート25に比して、繊維間距離が長い(繊維密度が低い)ことが好ましい。このように、繊維間距離に関して「表面シート21>コアラップシート25」なる大小関係が成立するか、又は繊維密度に関して「表面シート21<コアラップシート25」なる大小関係が成立することは、特に吸収性コア24から吸汗シート10側への液戻りの防止に有効である。
【0045】
また同様の観点から、表面シート21は、吸汗シート10に比して、繊維間距離が長い(繊維密度が低い)ことが好ましい。斯かる構成の採用により、繊維間距離に関して「表面シート21>吸汗シート10」なる大小関係が成立するか、又は繊維密度に関して「表面シート21<吸汗シート10」なる大小関係が成立することにより、液拡散性に関して「表面シート21<吸汗シート10」なる大小関係が成立し、これにより、発汗時には、より拡散性の高い吸汗シート10において汗が拡散蒸発する一方で、発汗が多量の場合には、吸汗シート10の吸収容量以上の汗が表面シート21に移行するようになり、おむつ1に吸汗し続けられる性能が付与される。繊維間距離は、下記方法により測定される。
【0046】
<繊維間距離の測定方法>
不織布、紙等の繊維集合体の繊維間距離は、Wrotnowskiの仮定に基づく下記式(1)により求められる。下記式(1)は一般に、繊維集合体の繊維間距離を求める際に用いられる。Wrotnowskiの仮定の下では、繊維は円柱状であり、それぞれの繊維は交わることなく規則正しく並んでいる。
測定対象のシート(吸汗シート10、表面シート21、コアラップシート25)が単層構造の場合、その単層構造のシートの繊維間距離は下記式(1)で求められる。
測定対象のシート(吸汗シート10、表面シート21、コアラップシート25)がSMS不織布の如き多層構造の場合、その多層構造のシートの繊維間距離は以下の手順に従って求められる。
まず、下記式(1)により、多層構造を構成する各繊維層の繊維間距離を算出する。その際、下記式(1)で用いる厚みt、坪量W、繊維の樹脂密度ρ及び繊維径Dは、それぞれ、測定対象の層についてのものを用いる。厚みt、坪量W及び繊維径Dは、それぞれ、複数の測定点における測定値の平均値である。
厚みt(mm)は以下の方法にて測定する。まず、測定対象のシートを長手方向50mm×幅方向50mmに切断し該シートの切断片を作製する。ただし、小さな吸収性物品からシートを採取する場合など、測定対象のシートとしてこの大きさの切断片を作製できない場合は、可能な限り大きな切断片を作製する。次に、この切断片を平板上に載せ、その上に平板上のガラス板を載せ、ガラス板を含めた荷重が49Paになるようにガラス板上に重りを均等に載せた上で、該切断片の厚みを測定する。測定環境は温度20±2℃、相対湿度65±5%、測定機器にはマイクロスコープ(株式会社キーエンス製、VHX-1000)を用いる。切断片の厚みの測定は、まず、該切断片の切断面の拡大写真を得る。この拡大写真には、既知の寸法のものを同時に写しこむ。次に、前記切断片の切断面の拡大写真にスケールを合わせ、該切断片の厚みすなわち測定対象のシートの厚みを測定する。以上の操作を3回行い、3回の平均値を、測定対象のシートの厚みtとする。なお、測定対象のシートが積層品の場合は、繊維径及び/又は繊維密度の違いからからその境界を判別し、厚みを算出する。
坪量W(g/m)は、測定対象のシートを所定の大きさ(例えば12cm×6cmなど)にカットし、質量測定後に、その質量測定値を、該所定の大きさから求まる面積で除することで求められる(「坪量W(g/m)=質量÷所定の大きさから求められる面積」)。4回測定し、その平均値を坪量とする。
繊維の樹脂密度ρ(g/cm)は、密度勾配管を使用して、JIS L1015化学繊維ステープル試験方法に記載の密度勾配管法の測定方法に準じて測定する(URLはhttp://kikakurui.com/l/L1015-2010-01.html、書籍ならJISハンドブック繊維-2000、(日本規格協会)のP.764~765に記載)。
繊維径D(μm)は、日立製作所株式会社製S-4000型電界放射型走査電子顕微鏡を用いて、カットした繊維の繊維断面を10本測定し、その平均値を繊維径とする。繊維径Dの測定方法は後述する<繊維径の測定方法>に従う。
次に、各層の繊維間距離に、多層構造全体の厚みに占める該層の厚みの割合を乗じ、さらに、そうして得られた各層の数値を合計することで、目的とする多層構造のシートの構成繊維の繊維間距離が求められる。例えば、2層のS層と1層のM層とからなる3層構造のSMS不織布において、2層のS層をまとめて1つの層として扱い、3層構造全体の厚みtが0.11mm、S層の厚みtが0.1mm、S層の繊維間距離LSが47.8μm、M層の厚みtが0.01mm、M層の繊維間距離LSが3.2μmの場合、斯かるSMS不織布の構成繊維の繊維間距離は、43.8μm〔=(47.9×0.1+3.2×0.01)/0.11〕となる。
【0047】
【数1】
【0048】
<繊維径の測定方法>
測定対象(吸汗シート10、表面シート21、コアラップシート25)を剃刀(例えばフェザー安全剃刃株式会社製片刃)で切断し、平面視四角形形状(8mm×4mm)の測定片を得る。この測定対象の切断の際には、その切断によって形成される測定片の切断面の構造が、切断時の圧力などによって破壊されないように注意する。好ましい測定対象の切断方法として、測定対象の切断に先立って、測定対象を液体窒素中に入れて十分に凍結させ、しかる後切断する方法が挙げられる。紙両面テープ(ニチバン株式会社製ナイスタックNW-15)を用いて、測定片を試料台に貼り付ける。次いで測定片を白金コーティングする。コーティングには日立那珂精器株式会社製イオンスパッタ装置E-1030型(商品名)を用い、スパッタ時間は30秒とする。測定片の切断面を、日立製作所株式会社製S-4000型電界放射型走査電子顕微鏡を用いて倍率1000倍で観察する。例えば測定対象が積層不織布の場合、電子顕微鏡像より、繊維径及び/又は繊維密度の違いから積層不織布各層の境界を判別し、各層に存する繊維それぞれについて、繊維の長手方向に対する幅方向の長さを10本測定し、その平均値を繊維径とする。
【0049】
表面シート21の繊維間距離とコアラップシート25の繊維間距離との比率は、前述した通り、表面シート21の繊維間距離(前者)>コアラップシート25の繊維間距離(後者)を前提として、表面シート21の繊維間距離(前者)/コアラップシート25の繊維間距離(後者)として、好ましくは1.5以上、より好ましくは2.0以上であり、そして、好ましくは10以下、より好ましくは8以下である。
表面シート21の繊維間距離と吸汗シート10の繊維間距離との比率は、前述した通り、前者>後者を前提として、前者/後者として、好ましくは1.5以上、より好ましくは2.0以上であり、そして、好ましくは10以下、より好ましくは8以下である。
【0050】
表面シート21は、吸汗シート10に比して液透過性が高いことが好ましい。より具体的には、表面シート21は、吸汗シート10に比して、下記方法により測定される通液時間(「153.0-02 REPEATED Liquid Strike-Through Time」法に準じて測定されるストライクスルー時間)が短いことが好ましい。斯かる構成により、吸汗性と液戻り防止性との両立がより一層確実に図られるようになる。表面シート21や吸汗シート10の如き繊維シート(不織布)の液透過性(通液時間)は、繊維間距離と密接に関連するので、繊維間距離によって調整することができる。繊維間距離については前述したとおりである。前記のように、液透過性に関して「表面シート21>コアラップシート25」なる大小関係を成立させる、すなわち通液時間について「表面シート21<コアラップシート25」なる大小関係を成立させるためには、表面シート21の繊維間距離をコアラップシート25のそれよりも長くすればよい。
【0051】
<通液時間(ストライクスルー時間)の測定方法>
Lenzing Technik社製のストライクスルー時間測定装置Listerを使用し、EDANA(ヨーロッパ不織布工業会)の「153.0-02 REPEATED Liquid Strike-Through Time」法に準じて測定する。通液時間(ストライクスルー時間)は、測定対象シート(例えば表面シート21)の一面から他面に向けて、所定量の試験液が通過するのに要する時間(秒)を示すものであり、通液時間が短いほど、液透過性に優れると評価できる。具体的には、試験機の台座の上に「キムタオル ホワイト 4つ折り」(日本製紙クレシア製)1枚を2つ折りにした状態で置き、その上に測定対象シートを載せる。次いで、電極を有するストライクスループレートを測定対象シート上に載置して、ストライクスループレートに接続された液投入口から試験液(生理食塩水)を5ml入れ、その後試験機の電源を入れる。試験機は、試験液が電極に触れた状態から、測定対象シートを試験液が通過して水位が下がり、電極と非接触となるまでの時間(秒)を計測する。測定は3回行いその平均値を、測定対象シートの液透過時間とする。
【0052】
表面シート21の通液時間(ストライクスルー時間)と吸汗シート10のそれとの比率は、前者<後者を前提として、前者/後者として、好ましくは0.2以上、より好ましくは0.5以上、そして、好ましくは0.9以下、より好ましくは0.8以下である。
表面シート21の通液時間(ストライクスルー時間)は、好ましくは1.5秒以上、より好ましくは2.0秒以上、そして、好ましくは7秒以下、より好ましくは5秒以下である。
吸汗シート10の通液時間(ストライクスルー時間)は、好ましくは2秒以上、より好ましくは3秒以上、そして、好ましくは10秒以下、より好ましくは8秒以下である。
【0053】
吸汗シート10は、肌対向面側が非肌対向面側に比して親水度が低いことが好ましい。吸汗シート10が厚み方向にこのような親水度勾配を有していることで、特に吸収性コア24から吸汗シート10側への液戻りが効果的に防止される。またこのように、おむつ1の着用者の肌に直接接触して汗を吸収する、吸汗シート10の肌対向面が、相対的に親水度が低くされていても、該肌対向面の絶対的な親水度、吸汗シート10の層構成などを適切に制御することで、吸汗シート10は吸汗性にも優れたものとなる。
【0054】
吸汗シート10の表面(肌対向面、非肌対向面)の親水度の指標としては、下記方法で測定される水との接触角を用いることができる。下記方法で測定される水との接触角が小さいほど親水性が高く(疎水性が低く)、該接触角が大きいほど親水性が低い(疎水性が高い)と判断できる。
【0055】
<繊維層(不織布)の接触角の測定方法>
測定対象の繊維層(不織布)から、MD方向150mm、CD方向70mmの平面視四角形形状を切り出して測定サンプルとし、測定サンプルにおける接触角の被測定面に、イオン交換水の液滴を付着させ、該液滴を録画して、その録画した画像に基づき接触角を測定する。より具体的には、測定装置として株式会社キーエンス製のマイクロスコープVHX-1000を用い、これに中倍率ズームレンズを90°に倒した状態で取り付ける。測定サンプルを、被測定面が上向きの状態となり且つ測定サンプルのCD方向から観察できるように、測定装置の測定ステージにセットする。そして、測定ステージにセットされた測定サンプルの被測定面にイオン交換水3μLの液滴を付着させ、その液滴の画像を録画して測定装置に取り込む。録画され複数の画像のうち、液滴におけるCD方向の両端又は片端が鮮明な画像を10枚選択し、その10枚の画像それぞれについて液滴の接触角を計測し、それらの接触角の平均値を、測定対象の繊維層(不織布)の接触角とする。測定環境は、20℃/50%RHとする。
【0056】
吸汗シート10の肌対向面の接触角は、好ましくは90度以上、より好ましくは100度以上、そして、好ましくは150度以下、より好ましくは140度以下である。
吸汗シート10の非肌対向面の接触角は、好ましくは15度以上、より好ましくは20度以上、そして、好ましくは88度以下、より好ましくは85度以下である。
【0057】
親水度に関して前記の「肌対向面<非肌対向面」なる大小関係を有する吸汗シートの形態は特に限定されず、単層構造でもよい。斯かる吸汗シートの好ましい一実施形態として、「肌対向面を形成する第1層と非肌対向面を形成する第2層とを含む積層構造を有し、該第1層が該第2層に比して親水度が低い積層不織布」が挙げられる。
【0058】
前記積層不織布において、積層構造には、第1層と第2層との間に1層以上の他の層が介在されていてもよい。また、前記積層構造を構成する複数の層は互いに接合されて一体化されていることが好ましく、その接合部としては、周辺部よりも厚みが小さく且つ該積層構造を構成する各層どうしが互いに融着された、層間融着部が好ましい。このような層間融着部は、熱、超音波などの、構成繊維(熱可塑性繊維)の溶融を促進させる溶融促進手段を伴う圧搾加工、具体的には例えばヒートシール加工、超音波シール等を、積層構造に施すことで形成することができる。また前記層間融着部は、前記積層不織布の肌対向面及び/又は非肌対向面に複数散在していることが好ましい。前記層間融着部は、肌対向面側から非肌対向面側に凹状に窪んでいてもよく、これとは逆に、非肌対向面側から肌対向面側に凹状に窪んでいてもよいが、前者が好ましい。
【0059】
前記積層不織布の第1層(肌対向面を形成する層)の主体をなす繊維(含有量が第1層の全構成繊維の好ましくは70質量%以上を占める繊維)としては、例えば、疎水性の熱可塑性繊維(熱融着繊維)を用いることができる。この疎水性の熱可塑性繊維の素材としては、疎水性の熱可塑性樹脂として例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン;ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル;ナイロン6、ナイロン66等のポリアミド;ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸アルキルエステル、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン等が挙げられ、これらの1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0060】
また、前記積層不織布の第2層(非肌対向面を形成する層)の主体をなす繊維(含有量が第2層の全構成繊維の好ましくは70質量%以上を占める繊維)としては、親水性の熱可塑性繊維(熱融着繊維)を用いることができ、具体的には例えば、ポリアクリロニトリル繊維等の、本来的に親水性の熱可塑性繊維でもよく、あるいは第1層で使用可能な疎水性の熱可塑性繊維に親水化処理を施したものでもよく、これらの1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。後者の「親水化処理された熱可塑性繊維」としては、例えば、親水化剤が練り込まれた熱可塑性繊維、表面に親水化剤が付着した熱可塑性繊維、プラズマ処理が施された熱可塑性繊維等が挙げられる。親水化剤は、衛生品用途に使用される一般的な親水化剤であれば特に限定されない。また、本来的に親水性を有する繊維、例えばセルロース繊維などの天然系や半天然系の繊維を用いることもできる。
【0061】
前記積層不織布を構成する第1層及び第2層は、それぞれ、短繊維を主体とする短繊維不織布でもよく、あるいは長繊維を主体とする長繊維不織布でもよい。短繊維不織布としては、例えば、エアスルー不織布、スパンレース不織布、ニードルパンチ不織布、ケミカルボンド不織布が挙げられる。長繊維不織布としては、例えば、スパンボンド不織布、メルトブローン不織布などの単層不織布、又は長繊維を主体とするスパンボンド層、メルトブローン層などを積層した積層不織布、カード法によるヒートロール不織布等が挙げられ該積層不織布としては、例えば、スパンボンド-スパンボンド積層不織布(SS不織布)、スパンボンド-スパンボンド-スパンボンド積層不織布(SSS不織布)、スパンボンド-メルトブローン-スパンボンド積層不織布(SMS不織布)、スパンボンド-メルトブローン-メルトブローン-スパンボンド不織布(SMMS不織布)等が挙げられる。
【0062】
前記積層不織布を構成する第1層(肌対向面を形成する層)の坪量は、好ましくは8g/m以上、より好ましくは10g/m以上、そして、好ましくは30g/m以下、より好ましくは25g/m以下である。
前記積層不織布を構成する第2層(非肌対向面を形成する層)の坪量は、好ましくは10g/m以上、より好ましくは13g/m以上、そして、好ましくは40g/m以下、より好ましくは35g/m以下である。
【0063】
また、表面シート21は、図3及び図4に示すように、肌対向面側に凹凸形状を有し、該凹凸形状の凸部にて吸汗シート10と接触可能になされていることが好ましい。また、この表面シート21の凸部と吸汗シート10とは、単に接触可能になされているだけでなく、接合されていると尚良い。吸汗シート10が、表面シート21と接触可能に対向配置された部分(縦方向内方端10b側の端部)にて、表面シート21の凸部と接合されていることで、両シートが部分的に接合されるようになり、吸汗シート10から表面シート21へのスムーズな汗の移行と、吸収性コア24から吸汗シート10側への液戻りの防止とが高いレベルで両立されるようになるためである。なお、表面シート21の肌対向面が凹凸形状であることの他の利点として、該肌対向面が実質的に凹凸形状を有していない平坦面である場合に比して、おむつ1の着用者の肌と表面シート21との接触面積が低減するため、肌トラブルの低減にも繋がる点が挙げられる。
【0064】
表面シート21の肌対向面の凹凸形状は特に限定されず、この種の吸収性物品における表面シートの凹凸形状を適宜採用できる。凹凸形状の一例として、表面シートの肌対向面の全域に複数の凸部が散点状に配され、各凸部の周囲が凹部となっている形態が挙げられる。凸部の平面視形状は特に限定されず、円形、楕円形、四角形以上の多角形などから適宜選択すればよい。具体的には例えば、表面シート21の肌対向面に、縦方向X及び横方向Yの両方向に交差する第1方向に延びる平面視線状の第1凹部と、該第1方向に交差する第2方向に延びる平面視線状の第2凹部とが格子状に配され、両凹部で囲まれた複数の区画それぞれに凸部が存在する形態が挙げられる。また、凹凸形状の他の一例として、縦方向X又は横方向Yに延在する畝部としての凸部と、同方向に延在する溝部としての凹部とが、それらの延在方向と直交する方向に交互に配された形態が挙げられる。また、凹凸形状を構成する凸部(畝部)は、内部に表面シートの構成繊維が充填された中実構造でもよく、中空構造でもよい。凸部が中空構造の表面シートの一例として、2枚のシートが積層状態で部分的に接合され、相対的に着用者の肌から近い一方のシートが、その接合部以外の部位において他方のシート(相対的に着用者の肌から遠いシート)から離れる方向に突出して、着用者の肌側に向かって突出する複数の凸部を形成している形態が挙げられる。なお、表面シート21の非肌対向面(コアラップシート25との対向面)は、図3及び図4に示すように、実質的に凹凸形状を有していない平坦面であるのが通常である。
【0065】
表面シート21としては、この種の吸収性物品において従来用いられている液透過性のシート材を用いることができ、例えば、カード法により製造された不織布、エアスルー不織布、スパンボンド不織布、メルトブローン不織布、スパンレース不織布及びニードルパンチ不織布等の種々の不織布;開口手段によって液透過可能とされたフィルム等が挙げられる。これらの不織布やフィルムには、界面活性剤等の親水化剤を用いた親水化処理が施されていてもよい。表面シート21の坪量は、好ましくは12g/m以上、より好ましくは15g/m以上、そして、好ましくは50g/m以下、より好ましくは45g/m以下である。
【0066】
表面シート21として好ましいものの一例として、嵩高不織布が挙げられる。嵩高不織布は、その内部に、該不織布の構成繊維によって画成される空間部(繊維等の不織布構成成分が存在していない部分)を多数有しており、不織布の全体積に占める空間部の割合(空間占有率)が大きい。このような特徴を有する嵩高不織布を表面シート21として用いることにより、特に、吸収性コア24から吸汗シート10側への液戻りが効果的に防止される。前記嵩高不織布としては、例えばエアスルー不織布、エアレイド不織布、レジンボンド不織布などを好適に用いることができる。
【0067】
前記嵩高不織布は、前述した作用効果が確実に奏されるようにする観点から、見かけ密度が、好ましくは0.01g/cm以上、より好ましくは0.02g/cm以上、そして、好ましくは0.30g/cm以下、より好ましくは0.20g/cm以下である。
同様の観点から、前記嵩高不織布の坪量は、好ましくは15g/m以上、より好ましくは20g/m以上、そして、好ましくは50g/m以下、より好ましくは40g/m以下である。
【0068】
また、吸収性コア24から吸汗シート10側への液戻りをより確実に防止する観点から、吸汗シート10の構成繊維の繊維配向と表面シート21の構成繊維の繊維配向とは互いに交差していることが好ましい。具体的には例えば、吸汗シート10の構成繊維が横方向Yに配向し、表面シート21の構成繊維が縦方向Xに配向している形態が挙げられる。あるいはこれとは逆に、吸汗シート10の構成繊維が縦方向Xに配向し、表面シート21の構成繊維が横方向Yに配向している形態でもよい。ここでいう「縦方向(横方向)に配向」とは、当該シートの構成繊維の長手方向と吸収性物品の縦方向(横方向)とのなす角度が45度以下であることを意味する。
【0069】
おむつ1においては前述した通り、着用時に着用者の胴周りに配される胴周り部である腹側部F及び背側部Rに、吸汗シート10、表面シート21、コアラップシート25及び吸収性コア24が配されていると共に、胴り弾性部材33が横方向Yに伸長状態で配されており、腹側部F及び背側部Rそれぞれが全体として横方向Yに伸縮性を有しているところ、この伸縮性と密接に関連する、横方向Yの伸長応力を工夫することによって、おむつ1の吸汗性を向上させることが可能である。
【0070】
具体的には吸汗シート10は、図4に示すように、胴周り部(腹側部F、背側部R)に、表面シート21の縦方向端21aから縦方向Xの外方に延出する縦外方延出部10Sを有しているところ、該胴周り部において、図2及び図4に示すように、吸汗シート10と表面シート21とが縦方向Xにおいて同位置にある領域を領域A、吸汗シート10の縦外方延出部10Sと縦方向Xにおいて同位置にある領域(図示の形態では、縦外方延出部10Sの配置領域と一致)を領域Bとした場合、おむつ1においては、領域Aは、領域Bに比して、横方向の伸長応力が大きい。横方向Yの伸長応力は、おむつ1の着用者に対する締め付け程度と相関があり、横方向Yの伸長応力が大きいほど締め付けが強くなる。したがって、横方向Yの伸長応力の相互関係が前記の通り領域A>領域Bとなっている、おむつ1においては、吸汗シート10と表面シート21とが厚み方向で重なる領域(重複領域)A1(図2中斜線を付した領域)を含まない領域Bよりも、該重複領域A1を含む領域Aの方が、着用者に対する締め付けが強くなされている。伸長応力は下記方法により測定される。
【0071】
<伸長応力の測定方法>
おむつ1を展開して平面状に拡げ、おむつ1の横方向Yと平行な直線に沿って、前記領域A,Bをそれぞれ切り出して測定サンプルとする。この切り出しの際には、外装体3のみならず、吸収性本体2等を含むおむつ1全体を切断する。測定サンプルの長手方向(横方向Y)の両端(サイドシール部Sのすぐ内側)を、(株)ORIENTEC社製のテンシロン万能試験機(RTC-1210A)のチャックに挟み、測定サンプルを300mm/minの速度で長手方向に伸長させ、その際の測定サンプルの応力を測定する。具体的には、外装体3の内寸(弾性部材33により外装体3のシート31,32が収縮していない状態での一対のサイドシール部S,S間の長さ)を100(例えば350mm)とした場合に、測定サンプルを80相当(例えば280mm)の長さまで伸長させた後に、71相当(例えば250mm)の長さまで収縮させた時の引張り荷重(cN)をその測定サンプルの応力とする。測定サンプルの応力、すなわち前記領域A,Bそれぞれの応力は、各領域の長手方向(横方向Y)の長さあたりに換算することで,平均応力として算出される。
なお、測定サンプル(前記領域A,B)の応力として前記のように、外装体の内寸を100としたときの71相当の長さにおける戻りの力を規定した理由は、おむつ1の如きパンツおむつを着用する主たる幼児の腹周りの長さがおむつ内寸と比して71%程度となるからである。ここでいう、腹周りの長さは、幼児の姿勢が変化したときの腹周りの周長の変化を考慮し、立位及び座位で測定した腹周りの平均値である。
【0072】
前記のように、おむつ1の胴周り部(腹側部F、背側部R)において、横方向Yの伸長応力の相互関係が領域A>領域Bとなっていることにより、領域Aに存する吸汗シート10と表面シート21との積層体(重複領域A1)の、おむつ1の着用者の肌に対する密着性が高まるため、吸汗シート10による汗の吸収、吸汗シート10から表面シート21への汗の移行が、一層スムーズに行われるようになり、結果としておむつ1の吸汗性が向上する。このように、胴周り部の伸長応力を部分的に異ならせずに、胴周り部全体の伸長応力を大きくすることによっても、おむつ1の吸汗性の向上が期待できるが、その場合には、胴周り部全体が着用者の肌を強く締め付けることになるため、締め付けに起因する跡が肌に残るなどの肌トラブルが発生するおそれがある。この点、おむつ1においては、吸汗性の向上に特に影響のある部分(前記重複領域)の伸長応力を選択的に大きくしているので、そのような締め付けに起因する肌トラブルが生じ難い。また領域Aは、吸汗シート10や表面シート21をはじめとする複数の層の積層構造を含むためにクッション性が高く、そのため、領域Aの締め付けを多少高めても、肌に跡が付きにくい。
【0073】
領域Aの横方向Yの伸長応力と領域Bの横方向Yの伸長応力との比率は、領域A>領域Bを前提として、領域A/領域Bとして、好ましくは1.05以上、より好ましくは1.1以上、そして、好ましくは2.5以下、より好ましくは2.0以下である。
領域Aの横方向Yの伸長応力は、好ましくは0.04N/mm以上、より好ましくは0.05N/mm以上、そして、好ましくは0.12N/mm以下、より好ましくは0.10N/mm以下である。
領域Bの横方向Yの伸長応力は、好ましくは0.02N/mm以上、より好ましくは0.04N/mm以上、そして、好ましくは0.10N/mm以下、より好ましくは0.08N/mm以下である。
【0074】
領域A(重複領域A1並びに後述する領域A2及び領域A3)及び領域Bの横方向Yの伸長応力(伸縮性)は、領域A及び領域B並びにそれらの近傍に配されている胴周り弾性部材33の数、弾性部材33の太さ、弾性部材33どうしの離間距離の他、弾性部材33が固定されているシート状部材、すなわち外層シート31及び内層シート32の種類(伸縮性)などを適宜調整することで調整可能である。
【0075】
また、おむつ1においては図2に示すように、胴周り部が腹側部Fと背側部Rとに区分され、腹側部F及び背側部Rそれぞれの領域A(吸汗シート10と表面シート21とが縦方向Xにおいて同位置にある領域)の横方向Yの中央部に表面シート21(吸収性本体2)が配され、吸汗シート10が、領域Aの横方向Yの中央部及びその両側部にわたって横方向Yに延在しており、領域Aの横方向Yの中央部が、吸汗シート10と表面シート21とが厚み方向で重なる重複領域A1となっているところ、この重複領域A1は、その横方向Yの両外方(領域Aの横方向両側部)に比して、横方向Yの伸縮性が低い。領域Aの横方向Yの両側部は、吸汗シート10が表面シート21(吸収性本体2)の縦方向Xに沿う両側縁から横方向Yの両外方に延出している領域であり、吸汗シート10が表面シート21と厚み方向で重ならずに存在する非重複領域である。このように、腹側部F及び背側部Rそれぞれの領域Aにおける横方向Yの伸縮性の相互関係が、「横方向中央部(重複領域A1)<横方向両側部(前記非重複部)」となっていることにより、おむつ1の着用者の肌に対する吸汗シート10の密着性が高まるため、おむつ1の吸汗性が向上する。特に、胴周り部(腹側部F、背側部R)における横方向Yの伸長応力の相互関係が、前述したように領域A>領域Bとなっていると、斯かる相互関係による作用効果と相俟って、おむつ1の吸汗性がより一層向上する。
【0076】
領域Aの横方向Yの中央部(重複領域A1)は、吸汗シート10及び表面シート21に加えてさらに比較的厚みの大きい吸収性コア24などの複数の部材が重なる領域であり、横方向Yの両側部(前記非重複部)に比して剛性があるところ、このような高剛性の重複領域A1の横方向Yの伸縮性が周辺部のそれと同等であると、重複領域A1の肌対向面を形成する吸汗シート10に縦方向Xに延びる皺が発生しやすくなり、そのような縦皺が生じた吸汗シート10がおむつ1の着用者の肌に接した場合には両者間に隙間が生じ、吸汗シート10の肌に対する密着性が低下するおそれがある。そこでおむつ1においては、前記のように、腹側部F及び背側部Rそれぞれの領域Aにおける横方向Yの伸縮性の相互関係を、横方向中央部(重複領域A1)<横方向両側部(前記非重複部)とすることで、重複領域A1における吸汗シート10の肌対向面に縦皺が発生することを抑制し、それによって吸汗シート10の肌に対する密着性を高め、おむつ1の吸汗性の向上を図っている。
【0077】
領域Aにおける横方向Yの伸縮性に関して、「横方向中央部(重複領域A1)<横方向両側部(前記非重複部)」なる大小関係を成立させる方法としては、重複領域A1の横方向Yの伸縮性を意図的に低下させる方法が挙げられ、より具体的には、重複領域A1に存する胴周り弾性部材33に切断、加熱などの伸縮阻害処理を施す方法が挙げられる。このような伸縮阻害処理が施された重複領域A1は、横方向Yの伸縮性を全く有しないか、あるいは伸縮阻害処理が施された胴周り弾性部材33に残存する伸縮性により、横方向Yに若干の伸縮性を有する場合があり得る。
【0078】
おむつ1においては、図2及び図4に示すように、吸汗シート10と表面シート21とが厚み方向で重なる重複領域A1において、両シート10,21間に疎水性シート11が介在配置されている。吸汗シート10は、疎水性シート11の縦方向内方端11bから縦方向Xの内方に延出する縦内方延出部10T(図4参照)を有し、その縦内方延出部10Tすなわち吸汗シート10の縦方向内方端10b側の端部が、表面シート21と接触可能に対向配置されている。疎水性シート11は、少なくとも表面が疎水性であって吸汗性を有しないシートであり、典型的には、疎水性繊維(熱融着繊維)を含んで構成される不織布からなり、該不織布の種類としては、吸汗シート10として使用可能なものを用いることができる。このように、重複領域A1において吸収性コア24の肌対向面側に配された表面シート21と吸汗シート10との間に、尿等の体液に対して不透過性の疎水性シート11が介在配置されていることにより、吸収性コア24から吸汗シート10側への液戻りが効果的に防止される。吸汗シート10、疎水性シート11及び表面シート21どうしは、接着剤、融着などの公知の接合手段により互いに接合されていてもよい。
【0079】
おむつ1における疎水性シート11は、外装体3を構成する外層シート31の一部である。すなわち外層シート31は、内層シート32よりも縦方向Xの長さが長く、内層シート32の縦方向Xの両端それぞれから延出する延出部を有し、その各延出部が、図2及び図4に示すように、内層シート32の肌対向面側に折り返されて折り返し部31Eを形成しているところ、その折り返し部31Eが疎水性シート11である。疎水性シート11(折り返し部31E)は、吸汗シート10と同じ平面視形状をなしており、平面視において一方向に長い形状、具体的には長方形形状(帯状)をなし、その長手方向を横方向Yに一致させて、腹側部F及び背側部Rそれぞれの横方向Yの全長にわたって配されている。疎水性シート11は、吸収体23の縦方向端23aすなわち吸収性本体2の縦方向端に沿ってこれと重なるように配されている。
【0080】
また、おむつ1においては図4に示すように、領域A(吸汗シート10と表面シート21とが縦方向Xにおいて同位置にある領域)において、吸汗シート10と疎水性シート11とが縦方向Xにおいて同位置にある領域A2は、吸汗シート10の縦内方延出部10Tと縦方向Xにおいて同位置にある領域A3に比して、横方向Yの伸長応力が大きい。つまり、領域Aの一部(横方向Yの中央部)である重複領域A1(吸汗シート10と表面シート21とが厚み方向で重なる領域)では、疎水性シート11の配置領域(領域A2)の方が、疎水性シート11の非配置領域(領域A3)よりも横方向Yの伸長応力が大きい。斯かる構成により、疎水性シート11がおむつ1の着用者の肌に密着性よくフィットするため、吸収性コア24に吸収された尿などの体液が吸汗シート10を伝って外部に漏れ出などの不都合が効果的に防止される。
【0081】
領域A2の横方向Yの伸長応力と領域A3の横方向Yの伸長応力との比率は、領域A2>領域A3を前提として、領域A2/領域A3として、好ましくは1.03以上、より好ましくは1.05以上、そして、好ましくは2.5以下、より好ましくは2.0以下である。
領域A2の横方向Yの伸長応力は、好ましくは0.04N/mm以上、より好ましくは0.05N/mm以上、そして、好ましくは0.12N/mm以下、より好ましくは0.10N/mm以下である。
領域A3の横方向Yの伸長応力は、好ましくは0.02N/mm以上、より好ましくは0.03N/mm以上、そして、好ましくは0.10N/mm以下、より好ましくは0.08N/mm以下である。
【0082】
また、前述した吸汗シート10による体液の漏れ防止効果をより確実に奏させるようにする観点から、領域A(吸汗シート10と表面シート21とが縦方向Xにおいて同位置にある領域)のうち、吸汗シート10と疎水性シート11とが縦方向Xにおいて同位置にある領域A2については、横方向Yに伸縮性を有していることが好ましい。具体的には領域A2に、少なくとも1本の胴周り弾性部材33が横方向Yに伸縮性を有する状態で配されていることが好ましい。一方、吸汗シート10の縦内方延出部10Tと縦方向において同位置にある領域A3、すなわち領域Aにおける疎水性シート11の非配置領域では、前述したように、領域Aの横方向Yの中央部である重複領域A1における吸汗シート10の肌対向面に縦皺が発生すること防止する観点から、胴周り弾性部材33の伸縮性が阻害されていることが好ましい。
【0083】
図5図7には本発明の他の実施形態が示されている。後述する他の実施形態については、前述したおむつ1と異なる構成部分を主として説明し、同様の構成部分は同一の符号を付して説明を省略する。特に説明しない構成部分は、おむつ1についての説明が適宜適用される。
【0084】
図5に示すおむつ1Aは、疎水性シート11が独立した一構成部材である点で、疎水性シート11が外層シート31の一部(折り返し部31E)であったおむつ1(図4参照)と異なる。疎水性シート11は、接着剤12を介して吸汗シート10及び外装体3(内層シート32)に接合されている。おむつ1Aによっても、おむつ1と同様の効果が奏される。
【0085】
図6に示すおむつ1Bは、疎水性シート11を具備していない点でおむつ1(図4参照)と異なる。おむつ1Bは、疎水性シート11を具備していないため、吸収性コア24から吸汗シート10側への液戻りの防止性能の点では、これを具備するおむつ1に劣るものの、その他の構成はおむつ1と実質的に同じであり、吸汗シート10から表面シート21へのスムーズな汗の移行と液戻りの防止とが高いレベルで両立されるものである。
【0086】
図7に示すおむつ1Cは、吸汗シート10と表面シート21とが厚み方向で重なる領域(重複領域)A1に吸収体23が配されていない点で、おむつ1(図4参照)と異なる。より具体的には、おむつ1Cの背側部R(腹側部F)において、吸汗シート10は、吸収体23の縦方向端23a及びその仮想延長線よりも縦方向Xの外方に位置する領域(エンドフラップ領域)のみに位置していて、平面視において吸収体23と重なっておらず、また、表面シート21は、吸収体23の縦方向端23aから縦方向Xの外方に延出しており、その表面シート21の縦方向端23aからの延出部と吸汗シート10とが重なって、吸収体23よりも縦方向Xの外方位置に重複領域A1が形成されている。図7に示す形態では、裏面シート22も吸収体23の縦方向端23aから縦方向Xの外方に延出しており、重複領域A1にて表面シート21の非肌対向面と接触している。ここでいう「吸収体23が配されていない」には、吸収体23の構成部材(吸収性コア24及びコアラップシート25)の全部が配されていない形態と、吸収体23の構成部材の一部のみが配され、他の一部は配されていない形態とが包含されるところ、図7に示す形態は前者であり、重複領域A1には、吸収性コア24及びコアラップシート25の双方が配されていない。また、おむつ1Cは、疎水性シート11を具備していない点でもおむつ1と異なる。但し、おむつ1Cは、疎水性シート11を具備していてもよく、その場合、疎水性シート11は、重複領域A1において吸汗シート10と表面シート21との間に介在配置されていてもよく、また、図4に示す如くに、外層シート31の一部(折り返し部31E)であってもよく、あるいは図5に示す如くに、独立した一構成部材であってもよい。また、おむつ1Cでは、表面シート21は肌対向面側に凹凸形状を有しておらず、表面シート21の肌対向面は平坦面となっているが、凹凸形状を有していてもよい。斯かる表面シート21の凹凸形状については前述したとおりである。おむつ1Cによっても、おむつ1Bと同様の効果が奏されるが、特に吸汗シート10と表面シート21との重複領域A1に吸収体23が配されていないことにより、特に吸収体23が体液を吸収保持している状態で重複領域A1に着用者の荷重がかかったときの、該吸収体23からの着用者側への体液の戻りが抑制されるという効果が奏される。
【0087】
以上、本発明をその実施形態に基づいて説明したが、本発明は、前記実施形態に制限されることなく適宜変更が可能である。前述した一の実施形態のみが有する部分は、すべて適宜相互に利用できる。
例えばおむつ1においては、図2に示すように、外装体3が腹側部F、股下部M及び背側部Rにわたる連続した形状をなしているが、これに代えて、外装体3が腹側シート部材と背側シート部材とに分割された形態であり、吸収性本体2が両シート部材に架け渡して固定されていてもよい。
また前記実施形態では、吸汗シート10は腹側部F及び背側部Rそれぞれの横方向Yの全長にわたって配されていたが、吸汗シート10の配置はこれに限定されない。吸汗シート10の役割を考慮すると、吸汗シート10の横方向Yの長さは、吸収体23のそれと同等以上であることが好ましく、吸汗シート10の配置に関しては、腹側部F及び背側部Rそれぞれにおいて少なくとも吸収体23の横方向Yの長さの全長にわたって配されていることが好ましく、前記実施形態のように、腹側部F及び背側部Rそれぞれの横方向Yの全長にわたって配されていることがさらに好ましい。また、吸汗シート10は、腹側部F及び背側部Rの双方に配されていなくてもよく、どちらか一方でもよく、その場合、背側部Rに配されていることが好ましい。
また、本発明の吸収性物品は、前述したおむつ1の如きパンツ型使い捨ておむつに限定されず、体液の吸収に用いられる物品全般に適用することができ、例えば、展開型使い捨ておむつに適用することができる。前述した本発明の実施形態に関し、更に以下の付記を開示する。
【0088】
<1> 着用者の前後方向に対応する縦方向とこれに直交する横方向とを有し、液保持性の吸収性コアと、該吸収性コアの肌対向面に接触するコアラップシートとを具備し、該コアラップシートの肌対向面側に、該コアラップシートに近い順に表面シート、吸汗シートが配された吸収性物品であって、
前記吸汗シートは、その一部が前記表面シートと接触可能に対向配置されており、
前記表面シートの液拡散性は、前記吸汗シートの液拡散性に比して低く、且つ前記コアラップシートの液拡散性に比して低い吸収性物品。
<2> 前記吸汗シートの液拡散面積と前記表面シートの液拡散面積との比率が、吸汗シートの液拡散面積(前者)>表面シートの液拡散面積(後者)を前提として、吸汗シートの液拡散面積(前者)/表面シートの液拡散面積(後者)として、好ましくは1.5以上、より好ましくは2.0以上、そして、好ましくは30以下、より好ましくは15以下である前記<1>に記載の吸収性物品。
<3> 前記コアラップシートの液拡散面積と前記表面シートの液拡散面積との比率が、コアラップシートの液拡散面積(前者)>表面シートの液拡散面積(後者)を前提として、コアラップシートの液拡散面積(前者)/表面シートの液拡散面積(後者)として、好ましくは2.0以上、より好ましくは2.5以上、そして、好ましくは40以下、より好ましくは35以下である前記<1>又は<2>に記載の吸収性物品。
<4> 前記吸汗シートの液拡散面積が、好ましくは100mm以上、より好ましくは150mm以上、そして、好ましくは1000mm以下、より好ましくは800mm以下である前記<1>~<3>のいずれか1項に記載の吸収性物品。
<5> 前記コアラップシートの液拡散面積が、好ましくは120mm以上、より好ましくは170mm以上、そして、好ましくは1000mm以下、より好ましくは800mm以下である前記<1>~<4>のいずれか1項に記載の吸収性物品。
<6> 前記表面シートの液拡散面積が、好ましくは10mm以上、より好ましくは20mm以上、そして、好ましくは100mm以下、より好ましくは200mm以下、更に好ましくは300mm以下である前記<1>~<5>のいずれか1項に記載の吸収性物品。
<7> 前記コアラップシートは、前記吸汗シートに比して、液拡散面積が大きい前記<1>~<6>のいずれか1項に記載の吸収性物品。
【0089】
<8> 前記吸収性物品は、着用時に着用者の胴周りに配される胴周り部を具備し、該胴周り部に、前記吸汗シート、前記表面シート、前記コアラップシート及び前記吸収性コアが配されていると共に、弾性部材が横方向に伸長状態で配されており、
前記吸汗シートは、前記胴周り部に、前記表面シートの縦方向端から縦方向外方に延出する縦外方延出部を有しており、
前記胴周り部において、前記吸汗シートと前記表面シートとが縦方向において同位置にある領域を領域A、該吸汗シートの前記縦外方延出部と縦方向において同位置にある領域を領域Bとした場合、該領域Aは、該領域Bに比して、横方向の伸長応力が大きい前記<1>~<7>のいずれか1項に記載の吸収性物品。
<9> 前記胴周り部は、着用時に着用者の腹側に配される腹側部と背側に配される背側部とに区分され、該腹側部及び該背側部それぞれの前記領域Aの横方向中央部に前記表面シートが配され、前記吸汗シートが、該領域Aの横方向中央部及びその両側部にわたって横方向に延在しており、
前記吸汗シートと前記表面シートとが厚み方向で重なる前記領域Aの横方向中央部は、該領域Aの横方向両側部に比して、横方向の伸縮性が低い前記<8>に記載の吸収性物品。
<10> 前記吸汗シートは、前記表面シートと接触可能に対向配置された部分にて、該表面シートと接合されている前記<1>~<9>のいずれか1項に記載の吸収性物品。
<11> 前記吸汗シートと前記表面シートとの前記接合が、部分的な接合である前記<10>に記載の吸収性物品。
<12> 前記吸汗シートと前記表面シートとの重なり部分の総面積に占める、両シートどうしの接合部の総面積の割合が、好ましくは20%以下、より好ましくは15%以下である前記<11>又は<12>に記載の吸収性物品。
<13> 前記表面シートは、前記吸汗シートに比して液透過性が高く、より具体的には、前記表面シートは、前記吸汗シートに比して通液時間(「153.0-02 REPEATED Liquid Strike-Through Time」法に準じて測定されるストライクスルー時間)が短い前記<1>~<12>のいずれか1項に記載の吸収性物品。
【0090】
<14> 前記吸汗シートは、肌対向面側が非肌対向面側に比して親水度が低い前記<1>~<13>のいずれか1項に記載の吸収性物品。
<15> 前記吸汗シートの肌対向面の接触角が、好ましくは90度以上、より好ましくは100度以上、そして、好ましくは150度以下、より好ましくは140度以下である前記<1>~<14>のいずれか1項に記載の吸収性物品。
<16> 前記吸汗シートの非肌対向面の接触角が、好ましくは15度以上、より好ましくは20度以上、そして、好ましくは88度以下、より好ましくは85度以下である前記<1>~<15>のいずれか1項に記載の吸収性物品。
<17> 前記吸汗シートが、肌対向面を形成する第1層と非肌対向面を形成する第2層とを含む積層構造を有し、該第1層が該第2層に比して親水度が低い積層不織布である前記<1>~<16>のいずれか1項に記載の吸収性物品。
【0091】
<18> 前記表面シートは、肌対向面側に凹凸形状を有し、該凹凸形状の凸部にて前記吸汗シートと接触可能になされている前記<1>~<17>のいずれか1項に記載の吸収性物品。
<19> 前記表面シートの前記凹凸形状が、該表面シートの肌対向面の全域に複数の凸部が散点状に配され、且つ各該凸部の周囲が凹部となっている形状である前記<18>に記載の吸収性物品。
<20> 前記表面シートの前記凸部と前記吸汗シートとが接合されている前記<18>又は<19>に記載の吸収性物品。
<21> 前記表面シートが嵩高不織布であり、該嵩高不織布の見かけ密度が、好ましくは0.01g/cm以上、より好ましくは0.02g/cm以上、そして、好ましくは0.30g/cm以下、より好ましくは0.20g/cm以下である前記<1>~<20>のいずれか1項に記載の吸収性物品。
【0092】
<22> 前記領域Aの横方向の伸長応力と前記領域Bの横方向の伸長応力との比率が、領域A>領域Bを前提として、領域A/領域Bとして、好ましくは1.05以上、より好ましくは1.1以上、そして、好ましくは2.5以下、より好ましくは2.0以下である前記<1>~<21>のいずれか1項に記載の吸収性物品。
<23> 前記領域Aの横方向の伸長応力が、好ましくは0.04N/mm以上、より好ましくは0.05N/mm以上、そして、好ましくは0.12N/mm以下、より好ましくは0.10N/mm以下である前記<1>~<22>のいずれか1項に記載の吸収性物品。
<24> 前記領域Bの横方向の伸長応力が、好ましくは0.02N/mm以上、より好ましくは0.04N/mm以上、そして、好ましくは0.10N/mm以下、より好ましくは0.08N/mm以下である前記<1>~<23>のいずれか1項に記載の吸収性物品。
【0093】
<25> 前記吸汗シートと前記表面シートとが厚み方向で重なる領域(重複領域A1)において、両シート間に疎水性シートが介在配置され、該吸汗シートは、該疎水性シートの縦方向内方端から縦方向内方に延出する縦内方延出部を有し、該縦内方延出部が、前記表面シートと接触可能に対向配置されている前記<1>~<24>のいずれか1項に記載の吸収性物品。
<26> 前記吸汗シートと前記疎水性シートとが縦方向において同位置にある領域(領域A2)は、該吸汗シートの前記縦内方延出部と縦方向において同位置にある領域(領域A3)に比して、横方向の伸長応力が大きい前記<25>に記載の吸収性物品。
<27> 前記領域A2の横方向の伸長応力と前記領域A3の横方向の伸長応力との比率が、領域A2>領域A3を前提として、領域A2/領域A3として、好ましくは1.03以上、より好ましくは1.05以上、そして、好ましくは2.5以下、より好ましくは2.0以下である前記<26>に記載の吸収性物品。
<28> 前記領域A2の横方向の伸長応力が、好ましくは0.04N/mm以上、より好ましくは0.05N/mm以上、そして、好ましくは0.12N/mm以下、より好ましくは0.10N/mm以下である前記<26>又は<27>に記載の吸収性物品。
<29> 前記領域A3の横方向の伸長応力が、好ましくは0.02N/mm以上、より好ましくは0.03N/mm以上、そして、好ましくは0.10N/mm以下、より好ましくは0.08N/mm以下である前記<26>~<28>のいずれか1項に記載の吸収性物品。
<30> 前記領域A2が横方向Yに伸縮性を有している前記<26>~<29>のいずれか1項に記載の吸収性物品。
【0094】
<31> 前記表面シートは、前記コアラップシートに比して、繊維間距離が長い前記<1>~<30>のいずれか1項に記載の吸収性物品。
<32> 前記表面シートの繊維間距離と前記コアラップシートの繊維間距離との比率が、表面シートの繊維間距離(前者)>コアラップシートの繊維間距離(後者)を前提として、表面シートの繊維間距離(前者)/コアラップシートの繊維間距離(後者)として、好ましくは1.5以上、より好ましくは2.0以上、そして、好ましくは10以下、より好ましくは8以下である前記<1>~<31>のいずれか1項に記載の吸収性物品。
<33> 前記表面シートは、前記コアラップシートに比して、繊維密度が低い前記<1>~<32>のいずれか1項に記載の吸収性物品。
<34> 前記表面シートは、前記吸汗シートに比して、繊維間距離が長い前記<1>~<33>のいずれか1項に記載の吸収性物品。
<35> 前記表面シートの繊維間距離と前記吸汗シートの繊維間距離との比率が、表面シートの繊維間距離(前者)>吸汗シートの繊維間距離(後者)を前提として、表面シートの繊維間距離(前者)/吸汗シートの繊維間距離(後者)として、好ましくは1.5以上、より好ましくは2.0以上、そして、好ましくは10以下、より好ましくは8以下である前記<1>~<34>のいずれか1項に記載の吸収性物品。
<36> 前記表面シートは、前記吸汗シートに比して、繊維密度が低い前記<1>~<35>のいずれか1項に記載の吸収性物品。
<37> 前記吸汗シートの構成繊維の繊維配向と前記表面シートの構成繊維の繊維配向とが互いに交差している前記<1>~<36>のいずれか1項に記載の吸収性物品。
<38> 前記吸収性物品は、着用時に着用者の胴周りに配される胴周り部を具備し、該胴周り部は、着用時に着用者の腹側に配される腹側部と背側に配される背側部とに区分され、
前記吸汗シートは、平面視において一方向に長い形状(長方形形状)をなし、その長手方向を横方向に一致させて、前記腹側部及び前記背側部それぞれの横方向の全長にわたって配されている前記<1>~<37>のいずれか1項に記載の吸収性物品。
<39> 前記吸汗シートと前記表面シートとが厚み方向で重なる領域に、前記吸収性コアが配されていない前記<1>~<38>のいずれか1項に記載の吸収性物品。
<40> 前記吸汗シートと前記表面シートとが厚み方向で重なる領域に、前記コアラップシートが配されていない前記<1>~<39>のいずれか1項に記載の吸収性物品。
【符号の説明】
【0095】
1,1A,1B,1C 吸収性物品(パンツ型使い捨ておむつ)
F 腹側部
M 股下部
R 背側部
2 吸収性本体
21 表面シート
22 裏面シート
23 吸収体
24 吸収性コア
25 コアラップシート
3 外装体
31 外層シート
31E 外層シートの折り返し部(疎水性シート)
32 内層シート
33 胴周り弾性部材
10 吸汗シート
10S 縦外方延出部
10T 縦内方延出部
11 疎水性シート
X 縦方向
Y 横方向
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7