IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ キーサイト テクノロジーズ, インク.の特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-12
(45)【発行日】2023-07-21
(54)【発明の名称】広帯域増幅器及びその使用法
(51)【国際特許分類】
   H03F 3/68 20060101AFI20230713BHJP
【FI】
H03F3/68 220
【請求項の数】 10
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2019012017
(22)【出願日】2019-01-28
(65)【公開番号】P2019134420
(43)【公開日】2019-08-08
【審査請求日】2022-01-18
(31)【優先権主張番号】15/885,190
(32)【優先日】2018-01-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】514046574
【氏名又は名称】キーサイト テクノロジーズ, インク.
(74)【代理人】
【識別番号】100099623
【弁理士】
【氏名又は名称】奥山 尚一
(74)【代理人】
【氏名又は名称】松島 鉄男
(74)【代理人】
【識別番号】100125380
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 綾子
(74)【代理人】
【識別番号】100142996
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 聡二
(74)【代理人】
【識別番号】100166268
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 祐
(74)【代理人】
【識別番号】100170379
【弁理士】
【氏名又は名称】徳本 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100180231
【弁理士】
【氏名又は名称】水島 亜希子
(74)【代理人】
【氏名又は名称】有原 幸一
(72)【発明者】
【氏名】近松 聖
(72)【発明者】
【氏名】岩城 伸明
【審査官】岸田 伸太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-177368(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0240044(US,A1)
【文献】米国特許第07161420(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H03F 3/68
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
広帯域増幅器(100)であって、
該広帯域増幅器(100)が第1の動作構成に置かれたときにDCから第1のカットオフ周波数まで及び、該広帯域増幅器(100)が第2の動作構成に置かれたときにDCから前記第1のカットオフ周波数より高い第2のカットオフ周波数まで及ぶ第1の周波数応答を提供するように構成された直流(DC)差動増幅器と、
該広帯域増幅器(100)が前記第1の動作構成に置かれたときに前記第1のカットオフ周波数から第3のカットオフ周波数まで及び、該広帯域増幅器(100)が第3の動作構成に置かれたときに前記第1のカットオフ周波数より低い第4のカットオフ周波数から前記第3のカットオフ周波数まで及ぶ第2の周波数応答を提供するように構成された交流(AC)差動増幅器と、
前記DC差動増幅器(1005)の第1の出力信号と前記AC差動増幅器(1010)の第2の出力信号とを結合するように構成された信号結合器回路(140)であって、前記DC差動増幅器(1005)の出力端子(139)に接続されたローパスフィルタと、前記AC差動増幅器(1010)の出力端子(141)に接続されたハイパスフィルタとを備える、信号結合器回路(140)
備える、広帯域増幅器。
【請求項2】
請求項1に記載の広帯域増幅器(100)であって、
前記ローパスフィルタは、前記DC差動増幅器(1005)の前記出力端子(139)に接続された出力抵抗器(136)を備え、前記ハイパスフィルタは、前記AC差動増幅器(1010)の前記出力端子(141)に接続されたコンデンサを備える、広帯域増幅器。
【請求項3】
請求項1に記載の広帯域増幅器(100)であって、
前記AC差動増幅器(1010)は、該広帯域増幅器(100)の前記第2の動作構成の一部として前記AC差動増幅器(1010)を高インピーダンス出力状態に置く第1の制御信号を受信するように構成された第1の制御端子(114)を含み、前記DC差動増幅器(1005)は、該広帯域増幅器(100)の前記第3の動作構成の一部として前記DC差動増幅器(1005)を前記高インピーダンス出力状態に置く第2の制御信号を受信するように構成された第2の制御端子(134)を含む、広帯域増幅器。
【請求項4】
請求項1に記載の広帯域増幅器(100)であって、
前記DC差動増幅器(1005)は、該DC差動増幅器(1005)の前記出力端子(139)に接続された第1のリードを有する出力抵抗器(136)を備え、前記AC差動増幅器(1010)は、該AC差動増幅器(1010)の前記出力端子(141)に接続された第1のリードを有する出力コンデンサ(120)を備える、広帯域増幅器。
【請求項5】
請求項4に記載の広帯域増幅器(100)であって、
前記出力コンデンサ(120)の第2のリードと該広帯域増幅器(100)の出力ノード(142)との間に接続された第1のスイッチ(1020)であって、該広帯域増幅器(100)を前記第2の動作構成に置くように動作可能である、第1のスイッチ(1020)と、
前記出力抵抗器(136)の第2のリードと該広帯域増幅器(100)の前記出力ノード(142)との間に接続された第2のスイッチ(1015)であって、該広帯域増幅器(100)を前記第3の動作構成に置くように動作可能である、第2のスイッチ(1015
更に備える、広帯域増幅器。
【請求項6】
請求項1に記載の広帯域増幅器(100)であって、
前記AC差動増幅器(1010)の前記出力端子(141)と該広帯域増幅器(100)の出力ノード(142)に結合されている出力コンデンサ(120)との間に接続された第1のスイッチ(1020)であって、該広帯域増幅器(100)を前記第2の動作構成に置くように動作可能である、第1のスイッチ(1020)と、
前記DC差動増幅器(1005)の前記出力端子(139)と該広帯域増幅器(100)の前記出力ノード(142)に結合されている出力抵抗器(136)との間に接続された第2のスイッチ(1015)であって、前記広帯域増幅器(100)を前記第3の動作構成に置くように動作可能である、第2のスイッチ(1015
更に備える、広帯域増幅器。
【請求項7】
請求項1に記載の広帯域増幅器(100)であって、
前記AC差動増幅器(1010)の第1の直列入力コンデンサ(116)の両端に接続された第1のスイッチ(1105)と、
前記AC差動増幅器(1010)の第2の直列入力コンデンサ(118)の両端に接続された第2のスイッチ(1110
更に備える、広帯域増幅器。
【請求項8】
広帯域増幅器(100)であって、
第1の入力ノード(102)と、
第2の入力ノード(104)と、
出力ノード(142)と、
第1の入力端子、第2の入力端子及び第1の出力端子(139)を有する直流(DC)差動増幅器であって、前記第1の入力端子は、該広帯域増幅器(100)の前記第1の入力ノード(102)に接続され、前記第2の入力端子は、該広帯域増幅器(100)の前記第2の入力ノード(104)に接続されている、DC差動増幅器と、
前記DC差動増幅器(1005)の前記第1の出力端子(139)に接続された第1のリードを有する出力抵抗器(136)と、
第3の入力端子、第4の入力端子及び第2の出力端子(141)を有する交流(AC)差動増幅器と、
該広帯域増幅器(100)の前記第1の入力ノード(102)に接続された第1のリードと、前記AC差動増幅器(1010)の前記第3の入力端子に接続された第2のリードとを有する第1の直列入力コンデンサ(116)と、
該広帯域増幅器(100)の前記第2の入力ノード(104)に接続された第1のリードと、前記AC差動増幅器(1010)の前記第4の入力端子に接続された第2のリードとを有する第2の直列入力コンデンサ(118)と、
前記AC差動増幅器(1010)の前記第2の出力端子(141)に接続された第1のリードを有する出力コンデンサ(120)
備える、広帯域増幅器。
【請求項9】
請求項8に記載の広帯域増幅器(100)であって、
前記出力抵抗器(136)の第2のリード及び前記出力コンデンサ(120)の第2のリードの各々は、該広帯域増幅器(100)の前記出力ノード(142)に接続されている、広帯域増幅器。
【請求項10】
請求項8に記載の広帯域増幅器(100)であって、
前記出力コンデンサ(120)及び前記出力抵抗器(136)の各々は、信号結合器回路(140)の一部であり、該信号結合器回路(140)は、前記DC差動増幅器(1005)の前記第1の出力端子(139)に接続されたローパスフィルタとして、かつ前記AC差動増幅器(1010)の前記第2の出力端子(141)に接続されたハイパスフィルタとして動作するように構成されている、広帯域増幅器。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
広帯域増幅器は、多種多様の用途でいたるところで使用されており、帯域幅、電力処理容量及び過渡応答等の特定の要件を満たすように適合されることが多い。例えば、信号検知用途では、広帯域増幅器は、センサによって生成された低振幅信号の増幅を提供するために使用することができる。一般に、広帯域増幅器は、広帯域幅にわたって信号増幅を提供するだけでなく、過渡現象の結果として発生する可能性がある信号振幅の大きくかつ急な変動も処理することが望ましい。しかしながら、これらの2つの特徴は、本質的に相反する可能性がある。したがって、場合により、広帯域増幅器は、比較的低い振幅信号に対して広帯域幅応答を提供することができるが、信号振幅が(例えば、過渡電圧スパイクに起因して)高くなるときに過負荷になる可能性がある。広帯域増幅器はまた、過負荷から回復するために一定量の時間もかかる可能性もあり、したがって、回復期間中に十分なレベルの性能を提供することができない。
【発明の概要】
【0002】
本開示の1つの例示的な実施形態によれば、広帯域増幅器は、直流(DC)差動増幅器、交流(AC)差動増幅器及び信号結合器回路を含む。DC差動増幅器は、広帯域増幅器が第1の動作構成に置かれたときにDCから第1のカットオフ周波数まで及び、広帯域増幅器が第2の動作構成に置かれたときにDCから第1のカットオフ周波数より高い第2のカットオフ周波数まで及ぶ第1の周波数応答を提供するように構成されている。AC差動増幅器は、広帯域増幅器が第1の動作構成に置かれたときに第1のカットオフ周波数から第3のカットオフ周波数まで及び、広帯域増幅器が第3の動作構成に置かれたときに第1のカットオフ周波数より低い第4のカットオフ周波数から第3のカットオフ周波数まで及ぶ第2の周波数応答を提供するように構成されている。DC差動増幅器の第1の出力信号とAC差動増幅器の第2の出力信号とを結合するように構成された信号結合器回路は、DC差動増幅器の出力端子に接続されたローパスフィルタと、AC差動増幅器の出力端子に接続されたハイパスフィルタとを含む。
【0003】
本開示の別の例示的な実施形態によれば、第1の入力ノード、第2の入力ノード、出力ノード、直流(DC)差動増幅器、出力抵抗器、AC差動増幅器、第1の直列入力コンデンサ、第2の直列入力コンデンサ及び出力コンデンサ。DC差動増幅器は、第1の入力端子、第2の入力端子及び第1の出力端子を有し、第1の入力端子は、広帯域増幅器の第1の入力ノードに接続され、第2の入力端子は、広帯域増幅器の第2の入力ノードに接続されている。出力抵抗器は、DC差動増幅器の第1の出力端子に接続された第1のリードを有する。AC差動増幅器は、第3の入力端子、第4の入力端子及び第2の出力端子を有する。第1の直列入力コンデンサは、広帯域増幅器の第1の入力ノードに接続された第1のリードと、AC差動増幅器の第3の入力端子に接続された第2のリードとを有する。第2の直列入力コンデンサは、広帯域増幅器の第2の入力ノードに接続された第1のリードと、AC差動増幅器の第4の入力端子に接続された第2のリードとを有する。出力コンデンサは、AC差動増幅器の第2の出力端子に接続された第1のリードを有する。
【0004】
本開示の更に別の例示的な実施形態によれば、方法は、第1の期間中に広帯域増幅器を第1の動作構成に置くこと(placing a wideband amplifier in a first operational configuration)であって、それにより、DC差動増幅器は、DCから第1のカットオフ周波数に及ぶ第1の周波数応答を提供し、AC差動増幅器は、第1のカットオフ周波数から第3のカットオフ周波数に及ぶ第2の周波数応答を提供する、第1の動作構成に置くことと、第2の期間中に広帯域増幅器を第2の動作構成に置くことであって、それにより、DC差動増幅器の第1の周波数応答は、DCから第1のカットオフ周波数より高い第2のカットオフ周波数に及ぶ、第2の動作構成に置くことと、第3の期間中に広帯域増幅器を第3の動作構成に置くことであって、それにより、AC差動増幅器の第2の周波数応答は、第1のカットオフ周波数より低い第4のカットオフ周波数から第3のカットオフ周波数に及ぶ、第3の動作構成に置くこととを含む。
【0005】
本開示の他の実施形態及び態様は、添付の図面とともに取り入れられた以下の説明から明らかになる。
【0006】
本発明の多くの態様は、以下の説明を添付の特許請求の範囲及び図とともに参照することによってよりよく理解することができる。様々な図において、同様の参照符号は、同様の構造的要素及び特徴を示す。明瞭にするために、あらゆる図において、あらゆる要素に参照符号がラベル付けされているとは限らない。図面は、必ずしも一律の縮尺で描かれていない。その代わり、本発明の原理を示すことに重点が置かれている。図面は、本発明の範囲を、本明細書に示す例示の実施形態に限定するものとして解釈されるべきではない。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本開示の第1の例示的な実施形態による例示的な広帯域増幅器を示す図である。
図2図1に示す広帯域増幅器の例示的な周波数応答特性を示す図である。
図3A】本開示に従って広帯域動作構成が使用される場合の広帯域増幅器の第1の例示的な入力波形及び第1の例示的な出力波形を示す図である。
図3B図3Aに示す第1の例示的な入力波形における遷移エッジと第1の例示的な出力波形における対応する遷移エッジとの拡大図である。
図4A】本開示に従ってローパス動作構成が使用される場合の広帯域増幅器の第1の例示的な入力波形及び第2の例示的な出力波形を示す図である。
図4B図4Aに示す第1の例示的な入力波形における遷移エッジと第2の例示的な出力波形における対応する遷移エッジとの拡大図である。
図5】本開示の一実施形態に従って信号源の出力電流特性を評価するように構成された一対の広帯域増幅器を含む例示的なシステムを示す図である。
図6図5に示すシステムに関連する幾つかの例示的な波形を示す図である。
図7】本開示の一実施形態に従って信号源の出力電圧特性を評価するように構成された一対の広帯域増幅器を含む例示的なシステムを示す図である。
図8図7に示すシステムに関連する第1の例示的な波形を示す図である。
図9図7に示すシステムに関連する第2の例示的な波形を示す図である。
図10】本開示の第2の例示的な実施形態による例示的な広帯域増幅器を示す図である。
図11】本開示の第3の例示的な実施形態による例示的な広帯域増幅器を示す図である。
図12】本開示の一実施形態に従って信号源の出力電流特性を評価するように構成された単一の広帯域増幅器を含む例示的なシステムを示す図である。
図13A図12に示すシステムに関連する幾つかの例示的な波形を示す図である。
図13B図12に示すシステムに関連する幾つかの例示的な波形を示す図である。
図13C図12に示すシステムに関連する幾つかの例示的な波形を示す図である。
図13D図12に示すシステムに関連する幾つかの例示的な波形を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
この説明の全体を通して、実施形態及び変形形態は、発明概念の使用態様及び実施態様を示す目的で説明される。この例示の説明は、本明細書に開示されたような概念の範囲を限定するものとしてではなく、発明概念の例を提示するものとして理解されるべきである。この目的のために、幾つかの特定の単語及び用語が、専ら便宜上のために本明細書に用いられ、そのような単語及び用語は、当業者によって様々な形態及び同等物で一般に理解される様々な対象物及び動作を包含するものとして広く理解されるべきである。例えば、本明細書において用いられるような「端子」、「ノード」及び「リード」という単語は、概して、デバイスの一部であって、そのデバイスを別のデバイス又は回路素子に接続するために使用することができるデバイスの一部に関係する。抵抗器、コンデンサ、インダクタ又は演算増幅器等のデバイスの場合、「端子」、「ノード」及び「リード」という単語のうちの任意のものが、例えば、プリント回路基板(PCB)のホール内に挿入することができるワイヤリード、PCBの表面上のパッドにはんだづけすることができるタブ、又はPCBの表面上のパッドにはんだ付けすることができる表面実装技術(SMT)デバイスのパッドを示すことができる。本明細書において用いられるような「例」という単語は、本質的に非排他的及び非限定的であることを意図していることも理解されよう。より詳細に言えば、本明細書において用いられるような「例示的」という単語は、幾つかの例の中の1つを示し、この単語の使用によって、特別な強調、排他性、又は選好が関連付けられることも、暗に意味されることもないことが理解されよう。
【0009】
概して、本明細書に開示する様々な例示的な実施形態によれば、広帯域増幅器は、直流(DC)差動増幅器、交流(AC)差動増幅器及び信号結合器回路を含む。DC差動増幅器及びAC増幅器の各々の周波数応答は、広帯域増幅器を少なくとも3つの異なる動作構成のうちの1つで構成することにより、選択的に変更することができる。3つの異なる動作構成は、広帯域動作構成、ローパス動作構成及びハイパス動作構成として広く解釈することができる。3つの異なる動作構成のうちの1つ以上は、広帯域増幅器に提供することができる様々なタイプの入力信号の特性に従って選択することができる。信号結合器回路は、DC差動増幅器の出力端子に接続されたローパスフィルタとして、かつAC差動増幅器の出力端子に接続されたハイパスフィルタとして動作する。DC差動増幅器及びAC差動増幅器に提供される1つ以上のスイッチ及び/又は制御端子を用いて、広帯域増幅器を3つの異なる動作状態のうちの1つに置くように、DC差動増幅器又はAC差動増幅器からの出力信号の伝播を選択的に無効にすることができる。スイッチは、コントローラによって提供される好適な制御信号を用いることにより作動させるリレー又は固体スイッチとすることができる。
【0010】
図1は、本開示の第1の例示的な実施形態による広帯域増幅器100を示す。この例示的な実施形態では、広帯域増幅器100は、DC差動増幅器130、AC差動増幅器110及び信号結合器回路140を含む。DC差動増幅器130及びAC増幅器110の各々は、広帯域増幅器100を少なくとも3つの異なる動作構成のうちの1つで構成することにより選択的に変更することができる、周波数応答を有する。3つの異なる動作構成は、広帯域動作構成、ローパス動作構成及びハイパス動作構成として広く解釈することができる。信号結合器回路140は、DC差動増幅器130の出力信号とAC差動増幅器110の出力信号とを結合するために使用され、したがって、広帯域増幅器100は、広帯域増幅器100が広帯域動作構成に置かれているとき、DC差動増幅器130の動作帯域幅とAC差動増幅器110の動作帯域幅との組合せである全帯域幅を提供することができる。
【0011】
図1に示す例示的な実施形態では、広帯域増幅器100は、第1の入力ノード102、第2の入力ノード104及び出力ノード142を含む。第1の入力ノード102及び第2の入力ノード104を用いて、差動入力信号を広帯域増幅器100内に結合することができる。差動入力信号は、DC差動増幅器130の入力端子にDC結合され、同時に、AC差動増幅器110の入力端子にAC結合される。
【0012】
1つの例示的な実施態様では、差動入力信号のDC差動増幅器130へのDC結合は、(プリント回路基板上の一対のワイヤ又は一対の金属トラック等)一対の導体を用いて、第1の入力ノード120及び第2の入力ノード104をDC差動増幅器130の対応する入力端子に直接接続することによって、行われる。DC差動増幅器130の入力端子の極性は、DC差動増幅器130を、非反転差動増幅器として又は反転差動増幅器として動作するように構成するように、選択することができる。
【0013】
別の例示的な実施態様では、第1の入力ノード102とDC差動増幅器130の第1の入力端子との間に、第1の直列抵抗器が挿入され、第2の入力ノード104とDC差動増幅器130の第2の入力端子との間に、第2の直列抵抗器が挿入される。
【0014】
差動入力信号のAC差動増幅器110へのAC結合は、第1の入力ノード102とAC差動増幅器110の第1の入力端子との間の第1の直列入力コンデンサ116と、第2の入力ノード104とAC差動増幅器110の第2の入力端子との間の第2の直列入力コンデンサ118とを使用することにより、行われる。第1の直列入力コンデンサ116及び第2の直列入力コンデンサ118の各々の静電容量値は、AC差動増幅器110の第2の動作帯域幅に従って選択することができる。
【0015】
信号結合器回路140は、DC差動増幅器130の出力端子139に接続されたローパスフィルタと、AC差動増幅器110の出力端子141に接続されたハイパスフィルタとを含む。図1に示す例示的な実施形態では、ローパスフィルタは、DC差動増幅器130の出力端子139と広帯域増幅器100の出力ノード142との間に結合されている出力抵抗器136の形態で実装される。ハイパスフィルタは、AC差動増幅器110の出力端子141と広帯域増幅器100の出力ノード142との間に結合される出力コンデンサ120の形態で実装される。より詳細には、出力抵抗器136の第1のリードが、DC差動増幅器130の出力端子139に接続され、出力抵抗器136の第2のリードが、広帯域増幅器100の出力ノード142に接続されている。出力コンデンサ120の第1のリードが、AC差動増幅器110の出力端子141に接続され、出力コンデンサ120の第2のリードが、広帯域増幅器100の出力ノード142に接続されている。任意選択的に、広帯域増幅器100の出力ノード142に、減衰器150等の追加の素子を結合することができる。
【0016】
ローパスフィルタ及び/又はハイパスフィルタは、T型フィルタ構成若しくはπ型フィルタ構成で配置された、抵抗器、インダクタ及びコンデンサ等の複数の素子を用いることによって、又はデジタルフィルタの形態で等、様々な代替方法で実装することができる。デジタルフィルタの形態で実装される場合、アナログ-デジタル変換器を用いて、DC差動増幅器130及び/又はAC差動増幅器110のアナログ信号出力の一方又は両方を、デジタルフィルタを通して伝播させることができるデジタルフォーマットに変換することができる。
【0017】
DC差動増幅器130は、コントローラ(図示せず)によって提供される第1の制御信号を受信する制御端子134を含む。コントローラは、本開示に従って広帯域増幅器100の様々な動作を実行するようにメモリ(図示せず)に記憶された1つ以上のアプリケーションプログラムを実行するプロセッサを含むことができる。制御信号は、DC差動増幅器130を高インピーダンス出力状態に置くために使用される。DC差動増幅器130は、高インピーダンス出力状態に置かれると、信号結合器回路140におけるローパスフィルタから隔離され、出力抵抗器136の第1のリードは、有効に開回路状態になる。
【0018】
AC差動増幅器110は、コントローラ(図示せず)によって提供される別の制御信号を受信する第2の制御端子114を含む。第2の制御信号は、AC差動増幅器110を高インピーダンス出力状態に置くために使用され、出力コンデンサ120の第1のリードは、有効に開回路状態になる。
【0019】
フィードバック抵抗器(図示せず)等の様々なタイプの利得設定構成要素を用いて、DC差動増幅器130を第1の電圧利得を提供するように構成することができる。AC差動増幅器110を同様に、第2の電圧利得を提供するように構成することができる。1つの例示的な実施態様では、DC差動増幅器130の第1の電圧利得は、AC差動増幅器110の第2の電圧利得に実質的に等しいように設定される。したがって、広帯域増幅器100の出力ノード142における出力信号の振幅は、DCから第2のカットオフ周波数まで実質的に平坦である。出力信号のDC部分は、DC差動増幅器130によって提供され、出力信号の第2のカットオフ周波数部分は、AC差動増幅器110によって提供される。
【0020】
別の例示的な実施態様では、DC差動増幅器130の第1の電圧利得は、AC差動増幅器110の第2の電圧利得とは異なるように設定される。異なる電圧利得を用いて、例えば、DC差動増幅器130及び/又はAC差動増幅器110における信号減衰及び部品公差等の相違を補償することができる。
【0021】
図2は、広帯域増幅器100の出力ノード142において観察されるような広帯域増幅器100の例示的な周波数応答を示す。後述する様々なカットオフ周波数は、3-dBカットオフ周波数であることが理解されるべきである。
【0022】
DC差動増幅器130もAC差動増幅器110も高インピーダンス出力状態に置かれていない第1の期間中における、グラフ202はDC差動増幅器130の周波数応答を表し、グラフ204はAC差動増幅器110の周波数応答を表す。広帯域増幅器100の広帯域動作構成に対応するこの状態の下では、信号結合器回路140は、ローパスフィルタ及びハイパスフィルタの両方を含み、本開示に従って、DCから高域カットオフ周波数(fHF)まで及ぶ周波数応答を提供する。
【0023】
グラフ202は、広帯域増幅器100が広帯域動作構成に置かれているとき、DCから高域カットオフ周波数(fMID)まで及ぶ。グラフ204は、広帯域増幅器100が広帯域動作構成に置かれているとき、DCを超える低域カットオフ周波数(この例では、低域カットオフ周波数はfMIDに対応する)から高域カットオフ周波数(fHF)まで及ぶ。周波数fMIDは、fMID=1/(2πC)として定義することができ、「R」は出力抵抗器136の抵抗値であり、「C」は出力コンデンサ120の静電容量値である。
【0024】
グラフ206は、DC差動増幅器130が動作可能であり、AC差動増幅器110が高インピーダンス出力状態に置かれた第2の期間中における、DC差動増幅器130の周波数応答を表す。広帯域増幅器100のローパス動作構成に対応するこの状態の下では、信号結合器回路140はローパスフィルタのみを含む。DC差動増幅器130の周波数応答は、このとき、本開示に従って、DCから高域カットオフ周波数(f)まで及ぶ。高域カットオフ周波数(f)は、広帯域増幅器100が広帯域動作構成にあるときに適用可能である高域カットオフ周波数(fMID)から上方にシフトしており、それにより、より広いローパス動作帯域幅を提供する。上方のシフトは、DC差動増幅器130の出力端子139に対するAC差動増幅器110による負荷を除去する結果として発生する。1つの例示的な実施態様では、AC差動増幅器110の制御端子114に第2の制御信号を提供することにより、AC差動増幅器110を高インピーダンス出力状態に置くことができ、それにより、AC差動増幅器110の出力端子141に接続されている出力コンデンサ120の第1のリードは、有効に開回路状態にある。
【0025】
グラフ208は、AC差動増幅器110が動作可能であり、DC差動増幅器130が高インピーダンス出力状態に置かれた第3の期間中における、AC差動増幅器110の周波数応答を表す。広帯域増幅器100のハイパス動作構成に対応するこの状態の下では、信号結合器回路140は、ハイパスフィルタのみを含む。AC差動増幅器110の周波数応答は、このとき、高域カットオフ周波数(fHF)から、広帯域増幅器100が広帯域動作構成にあるときに適用可能である低域カットオフ周波数(fMID)より低い低域カットオフ周波数(f)まで及び、それにより、より広いハイパス動作帯域幅を提供する。下方のシフトは、AC差動増幅器110の出力端子141に対するDC差動増幅器130による負荷を除去する結果として発生する。1つの例示的な実施態様では、DC差動増幅器130の制御端子134に第1の制御信号を提供することにより、DC差動増幅器130を高インピーダンス出力状態に置くことができ、それにより、DC差動増幅器130の出力端子139に接続されている出力抵抗器136の第1のリードは、有効に開回路状態にある。
【0026】
図3Aは、本開示による、広帯域動作構成の間における広帯域増幅器100の第1の例示的な入力波形304及び第1の例示的な出力波形306を示す。第1の例示的な入力波形304は、広帯域増幅器100の第1の入力ノード102及び第2の入力ノード104に結合された入力信号に対応する。この例では、入力信号は、1kHzの周波数と、0V~100mVの範囲の電圧振幅スイングとを有する。DC差動増幅器130の利得は、AC差動増幅器110の利得(例えば、20の利得)に等しく設定される。
【0027】
入力波形304の立下りエッジ316と出力波形306の対応する立下りエッジ317とは、破線フォーマットで示すボックス302内に含まれる。出力波形306の立下りエッジ317において約10mVのアンダーシュートが発生し、実質的に遅延なしに0Vに達成した入力波形304に対応して、出力波形306が0Vに達するために望ましくない量の回復時間(約50μsec)がある。出力波形306の立下りエッジ317におけるアンダーシュートは、第1の例示的な入力波形304の振幅及び/又はエッジ遷移特性の結果として、広帯域増幅器100がオーバードライブ状態を有することに起因する。
【0028】
図3Bは、図3Aに示すボックス302内に含まれる波形エッジの拡大図を示す。望ましくない量の回復時間の結果として、出力波形306の振幅は、立下りエッジ317の発生の後、約2.5μS程度、0Vより約8mV下のレベルのままである。
【0029】
さらに、波形観察が、例えばオシロスコープを用いることによって行われる場合、出力波形306の立下りエッジ317は、間違って、入力波形304の立下りエッジ316より先に発生するように見える可能性がある。これは、入力波形304の立下りエッジ316の発生の前に入力波形が100mVである(又はそれより高い)ときに、DC差動増幅器130及びAC差動増幅器110の両方における飽和状態に起因してもたらされる。飽和状態により、間違って入力波形304の立下りエッジ316より先に発生するように見える出力波形306の立下りエッジ317の形態で、出力波形306がひずむことになる。
【0030】
この望ましくない状態は、本開示に従って、AC差動増幅器110を高インピーダンス出力状態に置くために制御端子114に第2の制御信号を提供することにより、対処することができる。したがって、出力コンデンサ120の第1のリードは開回路状態にあり、信号結合器回路140は、本開示によるローパス動作構成で動作する。広帯域増幅器100の周波数応答は、グラフ202からグラフ206(図2に示す)に変化する。
【0031】
図4Aは、広帯域増幅器100がローパス動作構成に置かれているときの広帯域増幅器の第1の例示的な入力波形304(図3Aに示す)と第2の例示的な出力波形406とを示す。第1の例示的な出力波形306(図3Aに示す)の立下りエッジ317に存在したアンダーシュートの量は、ここでは、ローパス動作構成に起因して低減している。アンダーシュートの低減は、第2の例示的な出力波形406の立下りエッジ417に示されている。
【0032】
図4Bは、図4Aに示すボックス402内に含まれる波形エッジの拡大図を示す。第2の例示的な出力波形406の立下りエッジ417におけるアンダーシュートに関連する回復時間は、第1の例示的な出力波形306の立下りエッジ317におけるアンダーシュートに関連する約50μsecの回復時間と比較して、約500nsecである。
【0033】
さらに、波形が試験機器で観察されかつ/又は評価される場合、出力波形406の立下りエッジ417は、入力波形304の立下りエッジ316に対して合理的なタイミング関係を有する。したがって、信号結合器回路140をローパス動作構成で動作するように構成することにより、オーバードライブ状態に関連する少なくとも幾つかの悪影響を軽減する高速回復動作モードが提供される。
【0034】
図5は、本開示の一実施形態による、信号源502の出力電流特性を評価するように構成された、第1の広帯域増幅器510及び第2の広帯域増幅器512を含む例示的なシステム500を示す。信号源502は、導体(ワイヤ又はケーブル等)を介して抵抗器506の第1のリードに接続されている。抵抗器506は、例示的な電流検知素子として動作する。導体は、第1のインピーダンス素子504として概略的に示す。抵抗器506の第2のリードが、第2のインピーダンス素子508として概略的に示す負荷素子に接続されている。
【0035】
第1の例示的な実施態様では、第1の広帯域増幅器510は、本明細書に記載する広帯域増幅器100とは異なる従来の広帯域増幅器である。第2の例示的な実施態様では、第1の広帯域増幅器510は、本明細書に記載する広帯域増幅器100である。第1の例示的な実施態様及び第2の例示的な実施態様の両方において、第2の広帯域増幅器512は、本明細書に記載する広帯域増幅器100である。
【0036】
第1の広帯域増幅器510の第1の入力ノードが、第2の広帯域増幅器512の第1の入力ノードとともに、抵抗器506の第1のリードに接続されている。第1の広帯域増幅器510の第2の入力ノードが、第2の広帯域増幅器512の第2の入力ノードとともに、抵抗器506の第2のリードに接続されている。したがって、信号源502によって提供される電流の振幅を示す、抵抗器506の両端の電圧降下が、第1の広帯域増幅器510及び第2の広帯域増幅器512の各々に結合されている。第1の広帯域増幅器510の出力ノード514及び/又は第2の広帯域増幅器512の出力ノード516に、オシロスコープ又は波形解析装置等の試験機器(図示せず)を接続することができる。
【0037】
例示的なシステム500では、第2の広帯域増幅器512の電圧利得は、第1の広帯域増幅器510の電圧利得より高く設定される。例えば、第1の広帯域増幅器510は、抵抗器506を通して、約40μAから約200mAの範囲の電流に対応する電圧を観察するのに好適な第1の電圧利得に設定することができ、第2の広帯域増幅器512は、抵抗器506を通して、第1の電圧利得より高くかつ約320nAから約2mAの範囲の電流に対応する電圧を観察するのに好適な、第2の電圧利得に設定することができる。
【0038】
第1の例示的な実施態様では、第1の広帯域増幅器510は、第2の広帯域増幅器512とともに、本開示によるローパス動作構成に置かれる。第2の例示的な実施態様では、従来の広帯域増幅器又は広帯域増幅器100のいずれかとすることができる第1の広帯域増幅器510は、依然としてデフォルトの広帯域動作モードで動作し、第2の広帯域増幅器512のみが、本開示によるローパス動作構成に置かれる。
【0039】
図6は、第1の広帯域増幅器510の出力ノード514(図5に示す)において観察可能な例示的な波形602と、第2の広帯域増幅器512の出力ノード516(図5に示す)において観察可能な例示的な波形604とを示す。この例では、波形602は、第1の期間610の間の抵抗器506を通る電流の伝播なしと、それに続く、第2の期間612の間の電流の伝播と、第3の期間614の間の電流の伝播なしを示すように見える。この電流伝播特性は、信号源502によって生成される信号のオフ-オン-オフ特性に対応する。
【0040】
第2の広帯域増幅器512の第2の電圧利得より低い、第1の広帯域増幅器510の第1の電圧利得は、信号源502によって提供される信号の全体図を提供し、第2の広帯域増幅器512の第2の電圧利得は、信号源502によって提供される信号の幾つかの特定の部分の拡大図を提供する。より詳細には、波形602によって提供される全体図は、第2の期間612の間の振幅の大きい電圧変動を示すが、第1の期間610及び第3の期間614の間に発生する振幅の小さい電圧変動を観察するために十分な分解能は提供しない。
【0041】
波形604は、第2の広帯域増幅器512の第2の電圧利得に起因したより高い分解能で、第1の期間610及び第3の期間614の間に発生する振幅の小さい電流変動を示す。この例では、第1の期間610の間に発生する振幅の小さい電流変動は、ボックス620によって示し、第2の広帯域増幅器512の電圧利得は、第1の広帯域増幅器510の電圧利得の100倍に設定されている。第3の期間614の間に発生する振幅の小さい電流変動は、ボックス622によって示す。
【0042】
第2の期間612の間の振幅の大きい電流変動は、第2の期間612の間に波形604におけるオーバードライブ状態として明示される。第2の広帯域増幅器512のローパス動作構成は、図4A及び図4Bを参照して上述したように、オーバードライブ状態を阻止する。
【0043】
したがって、波形604を用いて、第2の期間612を無視しながら第1の期間610及び第3の期間614の間に信号源502によって提供される信号の特性を観察することができる。波形602を用いて、第2の期間612の間に信号源502によって提供される信号の特性を観察することができ、それにより、波形604を用いてなされる観察が補完される。
【0044】
したがって、システム500は、信号源502によって提供される信号の幾つかの部分における振幅の大きい電圧変動の評価を提供すると同時に、信号源502によって提供される信号の幾つかの他の部分における振幅の小さい電圧変動の評価を可能にする。振幅の大きい電圧変動は、第1の程度の分解能で評価することができ、振幅の小さい電圧変動は、第1の程度の分解能とは無関係の第2の程度の分解能で評価することができ、それにより、信号源502によって提供される信号の様々な特性を評価する広いダイナミックレンジが提供される。
【0045】
図7は、本開示の一実施形態に従って信号源702の出力電圧特性を評価するように構成された、第1の広帯域増幅器710及び第2の広帯域増幅器712を含む例示的なシステム700を示す。信号源702は、導体(第1のインピーダンス素子704として概略的に示す)を介して負荷素子(第2のインピーダンス素子708として概略的に示す)に接続されている。
【0046】
第1の例示的な実施態様では、第1の広帯域増幅器710は、本明細書に記載する広帯域増幅器100とは異なる従来の広帯域増幅器であり、第2の広帯域増幅器712は、本明細書に記載する広帯域増幅器100である。第2の例示的な実施態様では、第1の広帯域増幅器710及び第2の広帯域増幅器712の両方が、本明細書に記載する広帯域増幅器100である。
【0047】
第1の広帯域増幅器710の第1の入力ノードが、第2の広帯域増幅器712の第1の入力ノードとともに、負荷素子708の第1の端子に接続されている。第1の広帯域増幅器710の第2の入力ノードが、第2の広帯域増幅器712の第2の入力ノードとともに、負荷素子708の第2の端子に接続されている。負荷素子の第2の端子は、接地に接続されている。この構成により、負荷素子708の両端で発生した電位を、第1の広帯域増幅器710及び第2の広帯域増幅器712の各々に結合することができる。第1の広帯域増幅器710の出力ノード714に及び/又は第2の広帯域増幅器712の出力ノード716に、オシロスコープ又は波形解析装置等の試験機器(図示せず)を接続することができる。
【0048】
例示的なシステム700では、第2の広帯域増幅器712は、第1の広帯域増幅器710の電圧利得より高く設定される電圧利得を有する。第1の例示的な実施態様では、第1の広帯域増幅器710及び第2の広帯域増幅器712の両方が、ハイパス動作構成に置かれる。第2の例示的な実施態様では、第2の広帯域増幅器712のみがハイパス動作構成に置かれ、従来の広帯域増幅器又は広帯域増幅器100のいずれかとすることができる第1の広帯域増幅器710は、依然としてデフォルトの広帯域動作モードで動作する。
【0049】
図8は、第1の広帯域増幅器710の出力ノード714において観察可能な例示的な波形802を示す。波形802は、振幅の大きいDC成分804と、DC成分804の上に乗っている振幅の小さいAC成分806とを有する。振幅の小さいAC成分806の部分は、例示の目的で楕円形808の内部に拡大形態で示す。DC成分804とAC成分806との間の振幅の差により、オシロスコープ等の従来の試験機器ではAC成分806と同時のDC成分804の評価が阻止される。通常、従来のオシロスコープでは、DC入力結合はDC成分804を評価するために使用され、AC入力結合はAC成分806を評価するために使用される。DC入力結合が使用されるとき、DC成分804を評価するために必要な分解能は、AC成分806を同時に評価するためには不適切である可能性がある。AC入力結合が使用されるとき、AC成分806は好適な分解能を用いることによって評価することができるが、DC成分804は遮断され、オシロスコープにおいて観察することができない。
【0050】
対照的に、システム700は、第1の程度の分解能でのDC成分804の観察を可能にすると同時に、第1の程度の分解能とは無関係の第2の程度の分解能でAC成分806を観察し、それにより、信号源702によって提供される信号のAC特性及びDC特性の両方を評価するための広いダイナミックレンジを提供する。より詳細には、第1の広帯域増幅器710の出力ノード714においてDC成分804を観察することができ、第2の広帯域増幅器712の出力ノード716においてAC成分806を観察することができる。
【0051】
第1の広帯域増幅器710の第1の電圧利得は、波形802における予期される変動の範囲に従って設定することができる。
【0052】
図9は、DC成分804における振幅の著しい変化を受けている波形802を示す。AC成分806における変化が出力ノード714において観察可能とすることができてもできなくても、第1の広帯域増幅器710の出力ノード714において、振幅変化904を観察することができる。一方、AC成分806の変化は、第2の広帯域増幅器712の出力ノード716において観察することができる。第2の広帯域増幅器712の第2の電圧利得にハイパス動作構成によって提供されるより広い帯域幅を結合することにより、高い分解能及び精度でAC成分806の観察が可能になる。
【0053】
図10は、本開示の第2の例示的な実施形態による例示的な広帯域増幅器1000を示す。広帯域増幅器1000は、DC差動増幅器1005、AC差動増幅器1010及び信号結合器回路140を含む。この第2の例示的な実施形態では、DC差動増幅器1005は、DC差動増幅器130を高インピーダンス出力状態に置くために使用することができる第1の制御端子を含まない。AC差動増幅器1010もまた、AC差動増幅器1010を高インピーダンス出力状態に置くために使用することができる第2の制御端子を含まない。
【0054】
しかしながら、第1の例示的な実施態様では、出力抵抗器136と広帯域増幅器1000の出力ノード142との間に第1のスイッチ1015が設けられ、出力コンデンサ120と広帯域増幅器1000の出力ノード142との間に第2のスイッチ1020が設けられている。
【0055】
第2の例示的な実施態様では、DC差動増幅器1005の出力端子139と出力抵抗器136との間に第1のスイッチ1015が設けられ、AC差動増幅器1010の出力端子141と出力コンデンサ120との間に第2のスイッチ1020が設けられる。
【0056】
第1の例示的な実施態様及び第2の例示的な実施態様の両方において、第1のスイッチ1015及び第2のスイッチ1020の各々を閉じることにより、広帯域増幅器1000を本開示による広帯域動作構成に置くことができる。出力抵抗器136の第2のリードは、第1のスイッチ1015が閉じることに起因して出力ノード142に接続され、出力コンデンサ120の第2のリードは、第2のスイッチ1020が閉じることに起因して出力ノード142に接続される。
【0057】
第1のスイッチ1015を閉じ、第2のスイッチ1020を開くことにより、広帯域増幅器1000を本開示によるローパス動作構成に置くことができる。出力抵抗器136の第2のリードは、第1のスイッチ1015が閉じることに起因して出力ノード142に接続され、出力コンデンサ120の第2のリードは、第2のスイッチ1020が開くことに起因して出力ノード142から切断される。
【0058】
第1のスイッチ1015を開き、第2のスイッチ1020を閉じることにより、広帯域増幅器1000を本開示によるハイパス動作構成に置くことができる。出力抵抗器136の第2のリードは、第1のスイッチ1015を開くことに起因して出力ノード142から切断され、出力コンデンサ120の第2のリードは、第2のスイッチ1020を閉じることに起因して出力ノード142に接続される。
【0059】
図11は、本開示の第3の例示的な実施形態による例示的な広帯域増幅器1100を示す。広帯域増幅器1100は、DC差動増幅器130、AC差動増幅器1010及び信号結合器回路140を含む。この第2の例示的な実施形態では、DC差動増幅器130は、図1を参照して上述した広帯域増幅器100の一部であるDC差動増幅器130と同一である。AC差動増幅器1010は、図1を参照して上述した広帯域増幅器100の一部であるAC差動増幅器110と実質的に同様である。しかしながら、AC差動増幅器1010は、AC差動増幅器110に含まれていない2つの構成要素を含む。これらの2つの構成要素は、第1の直列入力コンデンサ116の両端に接続された第1の入力スイッチ1105と、第2の直列入力コンデンサ118の両端に接続された第2の入力スイッチ1110とである。
【0060】
入力信号が、DC成分とその上に重ね合わされたAC成分とを有する場合、広帯域増幅器1100を本開示による第1の広帯域動作構成に置くことができる。第1の入力スイッチ1105及び第2の入力スイッチ1110の各々が開かれて、広帯域増幅器1100が第1の広帯域動作構成に置かれる。AC差動増幅器1010は、入力信号のDC成分を遮断し、入力信号のDC成分を評価するために使用することができるDC差動増幅器130によって提供される分解能より高い分解能での入力信号のAC成分の評価を可能にする、AC増幅器として動作する。オーバードライブ状態が入力信号に存在する場合、それに対処するために、制御端子134及び/又は制御端子114を使用することができる。
【0061】
入力信号の1つ以上の特性が、入力信号がAC成分を有するが実質的なDC成分を含まないことを示す場合、広帯域増幅器1100を本開示による第2の広帯域動作構成に置くことができる。オーバードライブ状態の発生は、DC成分が入力信号に存在しないことに起因して最小限になるか又はなくなる。第1の入力スイッチ1105及び第2の入力スイッチ1110の各々が閉じられて、広帯域増幅器1100は第2の広帯域動作構成に置かれる。
【0062】
図12は、本開示の一実施形態に従って信号源1202の出力電流特性を評価するように構成された例示的なシステム1200を示す。ここでは、図5を参照して上述したシステム500の変形である例示的なシステム1200を用いて、信号ひずみ及びオーバードライブ状態に関する幾つかの特定の態様について述べる。第1の広帯域増幅器510及び第2の広帯域増幅器512を含むシステム500とは対照的に、例示的なシステム1200は単一の広帯域増幅器1210を有する。広帯域増幅器1210は、図1に示すような、DC差動増幅器130、AC差動増幅器110及び信号結合器回路140を含む。この例示的な実施形態では、DC差動増幅器130及びAC差動増幅器110の各々は、約+0.5Vから約-0.5Vの範囲の入力電圧スイングに適応するように選択される。
【0063】
図13Aは、抵抗器506の両端から広帯域増幅器100の第1の入力ノード102及び第2の入力ノード104に結合された入力信号に対応する例示的な入力波形1302を示す。入力信号は、約+2Vから約0Vの範囲である。
【0064】
図13Bは、入力信号が広帯域増幅器100に結合されているときにAC差動増幅器110の出力端子141に存在する例示的な波形1304を示す。AC差動増幅器110の第1の直列入力コンデンサ116及び第2の直列入力コンデンサ118は、AC差動増幅器110をAC増幅器として構成する。したがって、波形1304は、(約+0.5Vにおける)0Vより上の(入力波形1302の2V部分に対応する)第1の部分1312と、(約-0.5Vにおける)0Vより下の(入力波形1302の0V部分に対応する)第2の部分1314とを示す。第1の部分1312は、第2の部分1314におけるアンダーシュートに至るオーバードライブ状態を示す。動作範囲が限られている(約+0.5V~約-0.5V)ことに起因したAC差動増幅器110における電圧クリッピングの結果として、波形1304のピークツーピーク振幅は約1Vである。
【0065】
図13Cは、入力信号が広帯域増幅器100に結合されているときにDC差動増幅器130の出力端子139に存在する例示的な波形1306を示す。波形1306は、(約+0.5Vにおける)0Vより上の(入力波形1302の2V部分に対応する)第1の部分1316を示す。波形1306の残りの部分は、入力信号に存在する0V状態を正確に反映する。第1の部分1316は、動作範囲が限られている(約+0.5V~約-0.5V)ことに起因したDC差動増幅器130における電圧クリッピングの結果として発生する。
【0066】
図13Dは、広帯域増幅器1210が広帯域動作構成で動作しており、信号結合器回路140が波形1304を波形1306と結合したときに広帯域増幅器1210の出力ノード1212に存在する例示的な出力波形1308を示す。出力波形1308は、(波形1304の第1の部分1312に対応する)部分1318と、(波形1304の第2の部分1314に対応する)部分1320とによって示すように波形ひずみを含む。部分1320もまた、オーバードライブ状態によるアンダーシュートを含む。
【0067】
波形1308によって示す信号ひずみ及びオーバードライブ状態は、広帯域増幅器1210を本開示によるローパス動作構成に置くことによって軽減することができる。ローパス動作構成では、AC差動増幅器110を高インピーダンス出力状態に置くために、AC差動増幅器110の制御端子114に制御信号が提供される。したがって、信号結合器回路140は、図2に示すDCから高域カットオフ周波数(f)までの範囲の帯域幅を提供するローパスフィルタのみを含む。
【0068】
要約すれば、本発明は、本発明の原理及び概念を例示説明するために、幾つかの例示の実施形態に関して説明されていることに留意すべきである。本明細書に提供される説明を考慮すると、本発明はこれらの例示の実施形態に限定されるものでないことが当業者によって理解されるであろう。当業者であれば、本発明の範囲から逸脱することなく、そのような多くの変形を例示の実施形態に対して行うことができることを理解するであろう。
なお、出願当初の特許請求の範囲の記載は以下の通りである。
請求項1:
広帯域増幅器(100)であって、
該広帯域増幅器(100)が第1の動作構成に置かれたときにDCから第1のカットオフ周波数まで及び、該広帯域増幅器(100)が第2の動作構成に置かれたときにDCから前記第1のカットオフ周波数より高い第2のカットオフ周波数まで及ぶ第1の周波数応答を提供するように構成された直流(DC)差動増幅器と、
該広帯域増幅器(100)が前記第1の動作構成に置かれたときに前記第1のカットオフ周波数から第3のカットオフ周波数まで及び、該広帯域増幅器(100)が第3の動作構成に置かれたときに前記第1のカットオフ周波数より低い第4のカットオフ周波数から前記第3のカットオフ周波数まで及ぶ第2の周波数応答を提供するように構成された交流(AC)差動増幅器と、
前記DC差動増幅器(1005)の第1の出力信号と前記AC差動増幅器(1010)の第2の出力信号とを結合するように構成された信号結合器回路(140)であって、前記DC差動増幅器(1005)の出力端子(139)に接続されたローパスフィルタと、前記AC差動増幅器(1010)の出力端子(139)に接続されたハイパスフィルタとを備える、信号結合器回路(140)と、
を備える、広帯域増幅器。
請求項2:
請求項1に記載の広帯域増幅器(100)であって、
前記ローパスフィルタは、前記DC差動増幅器(1005)の前記出力端子(139)に接続された出力抵抗器(136)を備え、前記ハイパスフィルタは、前記AC差動増幅器(1010)の前記出力端子(139)に接続されたコンデンサを備える、広帯域増幅器。
請求項3:
請求項1に記載の広帯域増幅器(100)であって、
前記AC差動増幅器(1010)は、該広帯域増幅器(100)の前記第2の動作構成の一部として前記AC差動増幅器(1010)を高インピーダンス出力状態に置く第1の制御信号を受信するように構成された第1の制御端子(114)を含み、前記DC差動増幅器(1005)は、該広帯域増幅器(100)の前記第3の動作構成の一部として前記DC差動増幅器(1005)を前記高インピーダンス出力状態に置く第2の制御信号を受信するように構成された第2の制御端子(114)を含む、広帯域増幅器。
請求項4:
請求項1に記載の広帯域増幅器(100)であって、
前記DC差動増幅器(1005)は、該DC差動増幅器(1005)の前記出力端子(139)に接続された第1のリードを有する出力抵抗器(136)を備え、前記AC差動増幅器(1010)は、該AC差動増幅器(1010)の前記出力端子(139)に接続された第1のリードを有する出力コンデンサ(120)を備える、広帯域増幅器。
請求項5:
請求項4に記載の広帯域増幅器(100)であって、
前記出力コンデンサ(120)の第2のリードと該広帯域増幅器(100)の出力ノード(1212)との間に接続された第1のスイッチ(1015)であって、該広帯域増幅器(100)を前記第2の動作構成に置くように動作可能である、第1のスイッチ(1015)と、
前記出力抵抗器(136)の第2のリードと該広帯域増幅器(100)の前記出力ノード(1212)との間に接続された第2のスイッチ(1020)であって、該広帯域増幅器(100)を前記第3の動作構成に置くように動作可能である、第2のスイッチ(1020)と、
を更に備える、広帯域増幅器。
請求項6:
請求項1に記載の広帯域増幅器(100)であって、
前記AC差動増幅器(1010)の前記出力端子(139)と該広帯域増幅器(100)の出力ノード(1212)に結合されている出力コンデンサ(120)との間に接続された第1のスイッチ(1015)であって、該広帯域増幅器(100)を前記第2の動作構成に置くように動作可能である、第1のスイッチ(1015)と、
前記DC差動増幅器(1005)の前記出力端子(139)と該広帯域増幅器(100)の前記出力ノード(1212)に結合されている出力抵抗器(136)との間に接続された第2のスイッチ(1020)であって、前記広帯域増幅器(100)を前記第3の動作構成に置くように動作可能である、第2のスイッチ(1020)と、
を更に備える、広帯域増幅器。
請求項7:
請求項1に記載の広帯域増幅器(100)であって、
前記AC差動増幅器(1010)の第1の直列入力コンデンサ(116)の両端に接続された第1のスイッチ(1015)と、
前記AC差動増幅器(1010)の第2の直列入力コンデンサ(118)の両端に接続された第2のスイッチ(1020)と、
を更に備える、広帯域増幅器。
請求項8:
広帯域増幅器(100)であって、
第1の入力ノード(102)と、
第2の入力ノード(104)と、
出力ノード(1212)と、
第1の入力端子、第2の入力端子及び第1の出力端子(139)を有する直流(DC)差動増幅器であって、前記第1の入力端子は、該広帯域増幅器(100)の前記第1の入力ノード(102)に接続され、前記第2の入力端子は、該広帯域増幅器(100)の前記第2の入力ノード(104)に接続されている、DC差動増幅器と、
前記DC差動増幅器(1005)の前記第1の出力端子(139)に接続された第1のリードを有する出力抵抗器(136)と、
第3の入力端子、第4の入力端子及び第2の出力端子(139)を有する交流(AC)差動増幅器と、
該広帯域増幅器(100)の前記第1の入力ノード(102)に接続された第1のリードと、前記AC差動増幅器(1010)の前記第3の入力端子に接続された第2のリードとを有する第1の直列入力コンデンサ(116)と、
該広帯域増幅器(100)の前記第2の入力ノード(104)に接続された第1のリードと、前記AC差動増幅器(1010)の前記第4の入力端子に接続された第2のリードとを有する第2の直列入力コンデンサ(118)と、
前記AC差動増幅器(1010)の前記第2の出力端子(139)に接続された第1のリードを有する出力コンデンサ(120)と、
を備える、広帯域増幅器。
請求項9:
請求項8に記載の広帯域増幅器(100)であって、
前記出力抵抗器(136)の第2のリード及び前記出力コンデンサ(120)の第2のリードの各々は、該広帯域増幅器(100)の前記出力ノード(1212)に接続されている、広帯域増幅器。
請求項10:
請求項8に記載の広帯域増幅器(100)であって、
前記出力コンデンサ(120)及び前記出力抵抗器(136)の各々は、信号結合器回路(140)の一部であり、該信号結合器回路(140)は、前記DC差動増幅器(1005)の前記第1の出力端子(139)に接続されたローパスフィルタとして、かつ前記AC差動増幅器(1010)の前記第2の出力端子(139)に接続されたハイパスフィルタとして動作するように構成されている、広帯域増幅器。
図1
図2
図3A
図3B
図4A
図4B
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13A
図13B
図13C
図13D