(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-12
(45)【発行日】2023-07-21
(54)【発明の名称】作業機械の制御システム、及び制御方法
(51)【国際特許分類】
E02F 3/85 20060101AFI20230713BHJP
E02F 9/20 20060101ALI20230713BHJP
【FI】
E02F3/85 D
E02F9/20 N
(21)【出願番号】P 2019027644
(22)【出願日】2019-02-19
【審査請求日】2022-01-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000001236
【氏名又は名称】株式会社小松製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000202
【氏名又は名称】弁理士法人新樹グローバル・アイピー
(72)【発明者】
【氏名】原田 純仁
【審査官】吉田 英一
(56)【参考文献】
【文献】特開平09-209393(JP,A)
【文献】特開2012-113429(JP,A)
【文献】特開2016-085705(JP,A)
【文献】特開2012-232608(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02F 3/85
E02F 9/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
作業機を含む作業機械の制御システムであって、
前記作業機械の後進中には、前記作業機の後進時の目標軌道に従って前記作業機を動作させるコントローラを備え
、
前記コントローラは、
現況地形を示す現況地形データを取得し、
前記現況地形に基づいて、前記後進時の目標軌道を決定する、
制御システム。
【請求項2】
前記コントローラは、
前記作業機械の後進中に、前記現況地形データを更新し、
更新された前記現況地形に基づいて、前記後進時の目標軌道を決定する、
請求項
1に記載の制御システム。
【請求項3】
前記作業機械は履帯を含み、
前記コントローラは、
前記作業機械の後進中に、前記履帯が通過した前記現況地形上の複数の地点の高さを取得し、
前記複数の地点の高さに基づいて、前記後進時の目標軌道を決定する、
請求項
1に記載の制御システム。
【請求項4】
前記現況地形データは、前記現況地形上の複数の地点の高さを示し、
前記コントローラは、
前記作業機の刃先位置を取得し、
前記刃先位置の周囲の前記複数の地点の高さに基づいて、前記後進時の目標軌道を決定する、
請求項
1に記載の制御システム。
【請求項5】
前記コントローラは、
前記作業機の刃先の車幅方向における中点位置を取得し、
前記中点位置の周囲の前記複数の地点の高さに基づいて、前記中点位置における前記作業機の目標高さを取得し、
前記目標高さに基づいて、前記後進時の目標軌道を決定する、
請求項
4に記載の制御システム。
【請求項6】
前記コントローラは、
前記作業機の刃先において車幅方向に離れた少なくとも2点の位置を取得し、
前記少なくとも2点の位置のそれぞれの周囲の前記複数の地点の高さに基づいて、前記少なくとも2点の位置における目標高さを取得し、
前記少なくとも2点の位置における目標高さに基づいて、前記後進時の目標軌道を決定する、
請求項
4に記載の制御システム。
【請求項7】
前記コントローラは、前記少なくとも2点の位置における前記目標高さに基づいて、前記作業機のチルト角を決定する、
請求項
6に記載の制御システム。
【請求項8】
作業機を含む作業機械の制御システムであって、
前記作業機械の後進中には、前記作業機の後進時の目標軌道に従って前記作業機を動作させるコントローラと、
前記作業機のチルト角を変更するために手動操作可能な入力装置
と、
を備え、
前記コントローラは、
前記入力装置の手動操作に応じて前記作業機のチルト角を変更し、
前記作業機械の後進中には、前記作業機を前記チルト角に保持しながら、前記後進時の目標軌道に応じて前記作業機を上下に動作させる、
制御システム。
【請求項9】
前記コントローラは、
前記作業機械が後進に切り換えられたかを判定し、
前記作業機械が後進に切り換えられたときに、前記作業機の後進時の目標軌道に従って前記作業機を動作させる後進制御を実行する、
請求項1
又は8に記載の制御システム。
【請求項10】
前記コントローラは、
前記作業機械の前進中には、前記作業機の前進時の目標軌道に従って前記作業機を動作させる前進制御を実行する、
請求項1
又は8に記載の制御システム。
【請求項11】
作業機を含む作業機械を制御するためにプロセッサによって実行される方法であって、
前記作業機械が後進中には、後進時の目標軌道に従って前記作業機を動作させることと、
現況地形を示す現況地形データを取得することと、
を備え、
前記後進時の目標軌道を決定することは、前記現況地形に基づいて、前記後進時の目標軌道を決定することを含む、
方法。
【請求項12】
前記作業機械の後進中に、前記現況地形データを更新することをさらに備え、
前記後進時の目標軌道を決定することは、更新された前記現況地形に基づいて、前記後進時の目標軌道を決定することを含む、
請求項
11に記載の方法。
【請求項13】
前記作業機械は履帯を含み、
前記作業機械の後進中に、前記履帯が通過した前記現況地形上の複数の地点の高さを取得することをさらに備え、
前記後進時の目標軌道を決定することは、前記複数の地点の高さによって、前記後進時の目標軌道を決定することを含む、
請求項
11に記載の方法。
【請求項14】
前記現況地形データは、前記現況地形上の複数の地点の高さを示し、
前記作業機の刃先位置を取得することをさらに備え、
前記後進時の目標軌道を決定することは、前記刃先位置の周囲の前記複数の地点の高さに基づいて、前記後進時の目標軌道を決定することを含む、
請求項
11に記載の方法。
【請求項15】
前記作業機の刃先の車幅方向における中点位置を取得することと、
前記中点位置の周囲の前記複数の地点の高さに基づいて、前記中点位置における前記作業機の目標高さを取得すること、
をさらに備え、
前記後進時の目標軌道を決定することは、前記目標高さに基づいて、前記後進時の目標軌道を決定することを含む、
請求項
14に記載の方法。
【請求項16】
作業機を含む作業機械を制御するためにプロセッサによって実行される方法であって、
前記作業機械が後進中には、後進時の目標軌道に従って前記作業機を動作させることと、
前記作業機のチルト角を変更するために手動操作可能な入力装置からの信号を受信することと、
前記入力装置の手動操作に応じて前記作業機のチルト角を変更すること、
を備え、
前記作業機を動作させることは、前記作業機械の後進中に、前記作業機を前記チルト角に保持しながら、前記後進時の目標軌道に応じて前記作業機を上下に動作させることを含む、
方法。
【請求項17】
前記作業機械が後進に切り換えられたかを判定することをさらに備え、
前記作業機械が後進に切り換えられたときに、
前記作業機の後進時の目標軌道に従って前記作業機を動作させる後進制御が実行される、
請求項
11又は16に記載の方法。
【請求項18】
前記作業機械が前進中には、前進時の目標軌道に従って前記作業機を動作させる前進制御を実行することをさらに備える、
請求項
11又は16に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、作業機械の制御システム、及び制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ブルドーザ等の作業機械において、作業機の位置を自動的に調整する制御が提案されている。例えば、特許文献1では、コントローラは、目標設計面を決定する。目標設計面の少なくとも一部は、現況地形よりも下方に位置している。作業機械が前進中に、コントローラは、作業機を目標設計面に合わせて上下に移動させる。それにより、現況地形が掘削される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
作業機械は、前進だけではなく、後進する場合もある。しかし、上記の技術では、後進時の作業機械の制御については記載されていない。
【0005】
本開示の目的は、作業機械による作業の効率を向上させることにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の態様は、作業機を含む作業機械の制御システムであって、コントローラを備える。コントローラは、作業機械の後進中には、作業機の後進時の目標軌道に従って作業機を動作させる。
【0007】
第2の態様は、作業機を含む作業機械を制御するためにプロセッサによって実行される方法である。当該方法は、作業機械の後進中には、後進時の目標軌道に従って作業機を動作させることを含む。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、作業機械の後進時において、目標軌道に従って作業機が動作する。それにより、作業機械による作業の効率を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】実施形態に係る作業機械を示す側面図である。
【
図2】作業機械の制御システムの構成を示すブロック図である。
【
図7】作業機械の前進制御の処理を示すフローチャートである。
【
図8】作業機械の後進制御の処理を示すフローチャートである。
【
図9】刃先位置における目標高さを決定するための方法を示す図である。
【
図10】作業機械の後進時の動作の一例を示す図である。
【
図11】制御システムの構成の第1変形例を示すブロック図である。
【
図12】制御システムの構成の第2変形例を示すブロック図である。
【
図13】作業機械の制御の第1変形例を示す図である。
【
図14】作業機械の制御の第2変形例を示す図である。
【
図15】作業機械の制御の第2変形例を示す図である。
【
図16】作業機械の制御の第3変形例を示す図である。
【
図17】作業機械の制御の第4変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、実施形態に係る
作業機械について、図面を参照しながら説明する。
図1は、実施形態に係る作業機械1を示す側面図である。本実施形態に係る作業機械1は、ブルドーザである。作業機械1は、車体11と、走行装置12と、作業機13とを備えている。
【0011】
車体11は、運転室14とエンジン室15とを有する。運転室14には、図示しない運転席が配置されている。エンジン室15は、運転室14の前方に配置されている。走行装置12は、車体11の下部に取り付けられている。走行装置12は、左右の履帯16を有している。なお、
図1では、左側の履帯16のみが図示されている。履帯16が回転することによって、作業機械1が走行する。
【0012】
作業機13は、車体11に取り付けられている。作業機13は、リフトフレーム17と、ブレード18と、リフトシリンダ19と、チルトシリンダ20とを含む。
【0013】
リフトフレーム17は、軸線Xを中心として、上下に動作可能に車体11に取り付けられている。軸線Xは、車幅方向に延びている。リフトフレーム17は、ブレード18を支持している。ブレード18は、車体11の前方に配置されている。ブレード18は、リフトフレーム17の動作に伴って上下に移動する。リフトフレーム17は、走行装置12に取り付けられてもよい。
【0014】
リフトシリンダ19は、車体11とリフトフレーム17とに連結されている。リフトシリンダ19が伸縮することによって、リフトフレーム17は、軸線Xを中心として上下に動作する。チルトシリンダ20は、車体11とブレード18とに連結されている。チルトシリンダ20が伸縮することによって、ブレード18は、軸線Yを中心として傾動する。軸線Yは、前後方向に延びている。
【0015】
図2は、作業機械1の制御システム3の構成を示すブロック図である。本実施形態では、制御システム3は、作業機械1に搭載されている。
図2に示すように、作業機械1は、エンジン22と、油圧ポンプ23と、動力伝達装置24とを備えている。
【0016】
油圧ポンプ23は、エンジン22によって駆動され、作動油を吐出する。油圧ポンプ23から吐出された作動油は、リフトシリンダ19とチルトシリンダ20とに供給される。なお、
図2では、1つの油圧ポンプ23が図示されているが、複数の油圧ポンプが設けられてもよい。
【0017】
動力伝達装置24は、エンジン22の駆動力を走行装置12に伝達する。動力伝達装置24は、例えば、HST(Hydro Static Transmission)であってもよい。或いは、動力伝達装置24は、例えば、トルクコンバーター、或いは複数の変速ギアを有するトランスミッションであってもよい。
【0018】
制御システム3は、入力装置25と、コントローラ26と、制御弁27とを備える。入力装置25は、運転室14に配置されている。入力装置25は、オペレータによる操作を受け付け、操作に応じた操作信号を出力する。入力装置25は、コントローラ26に操作信号を出力する。
【0019】
入力装置25は、走行装置12と作業機13とを操作するための操作レバー、ペダル、或いはスイッチ等の操作子を含む。入力装置25は、タッチパネルを含んでもよい。入力装置25の操作に応じて、作業機械1の前進及び後進などの走行が制御される。入力装置25の操作に応じて、作業機13の上昇及び下降などの動作が制御される。入力装置25の操作に応じて、作業機13のチルト角が制御される。
【0020】
コントローラ26は、取得したデータに基づいて作業機械1を制御するようにプログラムされている。コントローラ26は、記憶装置28とプロセッサ29とを含む。記憶装置28は、ROMなどの不揮発性メモリと、RAMなどの揮発性メモリとを含む。記憶装置28は、ハードディスク、或いはSSD(Solid State Drive)などの補助記憶装置を含んでもよい。記憶装置28は、非一時的な(non-transitory)コンピュータで読み取り可能な記録媒体の一例である。記憶装置28は、作業機械1を制御するためのコンピュータ指令及びデータを記憶している。
【0021】
プロセッサ29は、例えばCPU(central processing unit)である。プロセッサ29は、プログラムに従って、作業機械1を制御するための処理を実行する。コントローラ26は、走行装置12、或いは動力伝達装置24を制御することで、作業機械1を走行させる。コントローラ26は、制御弁27を制御することで、ブレード18を上下に移動させる。コントローラ26は、制御弁27を制御することで、ブレード18をチルト動作させる。
【0022】
制御弁27は、比例制御弁であり、コントローラ26からの指令信号によって制御される。制御弁27は、リフトシリンダ19及びチルトシリンダ20などの油圧アクチュエータと、油圧ポンプ23との間に配置される。制御弁27は、油圧ポンプ23から、リフトシリンダ19及びチルトシリンダ20に供給される作動油の流量を制御する。コントローラ26は、ブレード18が動作するように、制御弁27への指令信号を生成する。これにより、リフトシリンダ19及びチルトシリンダ20が制御される。なお、制御弁27は、圧力比例制御弁であってもよい。或いは、制御弁27は、電磁比例制御弁であってもよい。
【0023】
制御システム3は、作業機センサ34,35を含む。作業機センサ34,35は、作業機位置データを取得する。作業機位置データは、車体11に対する作業機13の位置を示す。詳細には、作業機センサ34,35は、リフトセンサ34とチルトセンサ35とを含む。作業機位置データは、リフト角θliftとチルト角θtiltとを含む。リフトセンサ34は、
図3に示すように、ブレード18のリフト角θliftを検出する。例えば、リフトセンサ34は、リフトシリンダ19のストローク長さを検出する。コントローラ26は、リフトシリンダ19のストローク長さから、ブレード18のリフト角θliftを算出する。或いは、リフトセンサ34は、ブレード18の軸線X周りの回転角度を直接検出するセンサであってもよい。
【0024】
チルトセンサ35は、
図4に示すように、ブレード18のチルト角θtiltを検出する。例えば、リフトセンサ34は、チルトシリンダ20のストローク長さを検出する。コントローラ26は、チルトシリンダ20のストローク長さから、ブレード18のチルト角θtiltを算出する。或いは、チルトセンサ35は、ブレード18の軸線Y周りの回転角度を直接検出するセンサであってもよい。
【0025】
図2に示すように、制御システム3は、姿勢センサ32と位置センサ33とを含む。姿勢センサ32は、車体11の姿勢を示す姿勢データを出力する。姿勢センサ32は、例えばIMU(慣性計測装置:Inertial Measurement Unit)を含む。姿勢データは、ピッチ角とロール角とを含む。ピッチ角は、車体11の前後方向の水平に対する角度である。ロール角は、車体11の車幅方向の水平に対する角度である。姿勢センサ32は、姿勢データをコントローラ26に出力する。
【0026】
位置センサ33は、例えばGPS(Global Positioning System)などのGNSS(Global Navigation Satellite System)レシーバを含む。位置センサ33は、衛星より測位信号を受信し、測位信号により車体位置データを取得する。車体位置データは、車体11のグローバル座標を示す。グローバル座標は、地理座標系における位置を示す。位置センサ33は、車体位置データをコントローラ26に出力する。コントローラ26は、車体位置データにより、作業機械1の進行方向と車速とを得る。
【0027】
コントローラ26は、作業機位置データと、車体位置データと、姿勢データとから、作業機13の刃先位置PBを演算する。詳細には、コントローラ26は、車体位置データに基づいて、車体11のグローバル座標を算出する。コントローラ26は、作業機位置データと機械データに基づいて、車体11に対する刃先位置PBのローカル座標を算出する。ローカル座標は、車体11を基準とする座標系における位置を示す。機械データは、記憶装置28に記憶されている。機械データは、作業機械1に含まれる複数の構成要素の位置及び寸法を含む。すなわち、機械データは、車体11に対する作業機13の位置を示す。
【0028】
コントローラ26は、車体11のグローバル座標と、刃先位置PBのローカル座標と、姿勢データとに基づいて、刃先位置PBのグローバル座標を算出する。コントローラ26は、刃先位置PBのグローバル座標を、刃先位置データとして取得する。なお、位置センサ33は、ブレード18に取り付けられてもよい。その場合、刃先位置PBは、位置センサ33によって直接的に取得されてもよい。
【0029】
コントローラ26は、現況地形データを取得する。現況地形データは、作業現場の現況地形を示す。現況地形データは、現況地形の三次元測量図を示す。
図5は、作業機械1の周囲の現況地形50を示す上面図である。
図5に示すように、現況地形データは、現況地形50上の複数の地点Pn(nは整数)の位置を示す。複数の地点Pnは、グリッドで区画された複数のエリア内の代表点である。現況地形データは、現況地形50上の複数の地点Pnのグローバル座標を示す。なお、
図5においては、複数の地点Pnの一部のみに符号が付されており、他の部分の符号は省略されている。
【0030】
図6は、現況地形50の側面断面図である。
図6において、縦軸は、地形の高さを示している。横軸は、作業機械1の進行方向における現在位置からの距離を示している。
図6に示すように、現況地形データは、複数の地点Pnにおける高さZnを示す。複数の地点Pnは、所定間隔ごとに配置されている。所定間隔は、例えば1mである。しかし、所定間隔は、1mと異なる距離であってもよい。
【0031】
初期の現況地形データは、予め記憶装置28に保存されている。例えば、初期の現況地形データは、レーザ測量によって得られてもよい。コントローラ26は、作業機械1の移動中に、最新の現況地形データを取得して、現況地形データを更新する。詳細には、コントローラ26は、履帯16が通過した現況地形50上の複数の地点Pnの高さを取得する。
【0032】
詳細には、
図3及び
図5に示すように、コントローラ26は、車体11のグローバル座標と機械データとに基づいて、履帯16の底の位置PC1,PC2を取得する。位置PC1は、左側の履帯16の底の位置である。位置PC2は、右側の履帯16の底の位置である。コントローラは、履帯16の底の位置PC1,PC2を、履帯16が通過した現況地形50上の複数の地点Pnの高さとして取得する。
【0033】
次に、コントローラ26によって実行される、作業機械1の自動制御について説明する。なお、作業機械1の自動制御は、オペレータによる手動操作と合わせて行われる半自動制御であってもよい。例えば、作業機械1の前進と後進とが、オペレータによって操作され、作業機13の動作がコントローラ26によって自動制御されてもよい。或いは、作業機械1の自動制御は、オペレータによる手動操作無しで行われる完全自動制御であってもよい。
【0034】
図7は、作業機械1の自動制御の処理を示すフローチャートである。
図7に示すように、ステップS100では、コントローラ26は、作業機械1の進行方向を判定する。ここでは、コントローラ26は、入力装置25からの信号に基づいて、作業機械1が前進しているか、又は後進しているかを判定する。作業機械1が前進しているときには、コントローラ26は、ステップS101以降に示す前進制御の処理を実行する。ステップS101では、コントローラ26は、刃先位置データを取得する。ここでは、コントローラ26は、上述したように、ブレード18の現在の刃先位置PBを取得する。
【0035】
ステップS102では、コントローラ26は、現況地形データを取得する。例えば、コントローラ26は、作業機械1の前方の所定範囲内の現況地形データを記憶装置28から読み出す。
【0036】
ステップS103では、コントローラ26は、作業機13の前進時の目標軌道70(以下、「前進目標軌道70」と呼ぶ)を決定する。
図6に示すように、前進目標軌道70の少なくとも一部は、現況地形50の下方に位置している。前進目標軌道70は、作業におけるブレード18の刃先の目標軌道を示す。なお、
図6では、前進目標軌道70の全体が、現況地形50よりも下方に位置している。しかし、前進目標軌道70の一部が、現況地形50と同じ高さ、或いは現況地形50よりも上方に位置してもよい。
【0037】
例えば、コントローラ26は、現況地形50から所定距離、下方に位置する平面を、前進目標軌道70として決定する。ただし、前進目標軌道70の決定方法は、これに限らず、変更されてもよい。例えば、コントローラ26は、現況地形50を所定距離、下方に変位させた地形を、前進目標軌道70として決定してもよい。前進目標軌道70は、水平であってもよい。前進目標軌道70は、作業機械1の進行方向において、水平に対して傾斜していてもよい。前進目標軌道70は、作業機械1の車幅方向において、水平に対して傾斜していてもよい。
【0038】
ステップS104では、コントローラ26は、前進目標軌道70に従って、作業機13を動作させる。コントローラ26は、前進目標軌道70に従ってブレード18の刃先位置PBが移動するように、作業機13への指令信号を生成する。コントローラ26は、指令信号を制御弁27に出力する。それにより、作業機13が前進目標軌道70に従って動作する。作業機械1は、前進しながら、作業機13を前進目標軌道70に従って動作させる。それにより、現況地形50が、作業機13によって掘削される。
【0039】
ステップS105では、コントローラ26は、現況地形データを更新する。上述したように、コントローラ26は、作業機械1の前進中に、履帯16が通過した現況地形50上の複数の地点Pnの高さを取得する。コントローラ26は、前進中に取得された複数の地点Pnの高さによって、現況地形データを更新する。
【0040】
作業機械1が所定の反転位置に到達すると、作業機械1が前進から後進に切り換えられる。この場合、上述したステップS100において、コントローラ26は、作業機械1が後進していると判定する。作業機械1が後進中には、コントローラ26は、
図8に示すステップS201以降に示す後進制御の処理を実行する。
【0041】
図8に示すように、ステップS201では、コントローラ26は、刃先位置データを取得する。ここでは、コントローラ26は、上述したように、ブレード18の現在の刃先位置PBを取得する。
【0042】
ステップS202では、コントローラ26は、現況地形データを取得する。例えば、コントローラ26は、作業機械1の後方の所定範囲内の現況地形データを記憶装置28から読み出す。
【0043】
ステップS203では、コントローラ26は、現況地形データを更新する。コントローラ26は、作業機械1の後進中に、履帯16が通過した現況地形50上の複数の地点Pnの高さを取得する。コントローラ26は、後進中に取得された複数の地点Pnの高さによって、現況地形データを更新する。
【0044】
ステップS204では、コントローラ26は、作業機13の後進時の目標軌道80(以下、「後進目標軌道80」と呼ぶ)を決定する。コントローラ26は、更新された現況地形50上の複数の地点Pnの高さに基づいて、後進目標軌道80を決定する。詳細には、コントローラ26は、作業機13の刃先位置PBを取得する。
図5に示すように、刃先位置PBは、ブレード18の刃先の車幅方向における中点位置である。コントローラ26は、刃先位置PBの周囲の複数の地点Pnの高さに基づいて、後進目標軌道80を決定する。
【0045】
例えば、
図9に示すように、コントローラ26は、刃先位置PBの前後左右に位置する4つの地点P(x1,y1)、P(x2,y1)、P(x1,y2)、P(x2,y2)の高さを取得する。4つの地点P(x1,y1)、P(x2,y1)、P(x1,y2)、P(x2,y2)の高さから、刃先位置PBにおける目標高さを算出する。コントローラ26は、例えばバイリニア補完により、4つの地点P(x1,y1)、P(x2,y1)、P(x1,y2)、P(x2,y2)の高さから、刃先位置PBにおける目標高さを算出する。
【0046】
コントローラ26は、以下の式(1)により、刃先位置PBにおける目標高さを算出する。
ZB = { A1 * Z(x1,y1) + A2 * Z(x1,y2) + A3 * Z(x2,y1) + A4 * Z(x2,y2) } / (A1 + A2 + A3 + A4 ) (1)
ZBは、刃先位置PBにおける目標高さである。Z(x1,y1)、Z(x2,y1)、Z(x1,y2)、Z(x2,y2)は、それぞれ刃先位置PBの周囲の複数の地点P(x1,y1)、P(x2,y1)、P(x1,y2)、P(x2,y2)の高さである。A1は、領域B1の面積である。A2は、領域B2の面積である。A3は、領域B3の面積である。A4は、領域B4の面積である。
【0047】
コントローラ26は、刃先位置PBにおける目標高さZBを算出し、目標高さZBを更新する。作業機械1が後進している間、コントローラ26は、目標高さZBの算出と後進とを繰り返し実行する。コントローラ26は、刃先位置PBが目標高さZBに位置するように、後進目標軌道80を決定する。
【0048】
コントローラ26は、作業機械1の車幅方向において、前進目標軌道70と平行になるように、後進目標軌道80を決定する。或いは、コントローラ26は、作業機械1の車幅方向において水平になるように、後進目標軌道80を決定してもよい。或いは、コントローラ26は、作業機械1の車幅方向において水平に対して所定角度、傾斜するように、後進目標軌道80を決定してもよい。
【0049】
ステップS204では、コントローラ26は、後進目標軌道80に従って、作業機13を動作させる。コントローラ26は、後進目標軌道80に従ってブレード18の刃先位置PBが移動するように、作業機13への指令信号を生成する。コントローラ26は、指令信号を制御弁27に出力する。それにより、作業機13が後進目標軌道80に従って動作する。作業機械1は、後進しながら、作業機13を後進目標軌道80に従って動作させる。
【0050】
例えば、
図10Aに示すように、作業機械1が前進して掘削を行う時にブレード18からこぼれた土100(以下、「ウィンドロー100」と呼ぶ)が、現況地形50上に残る場合がある。本実施形態に係る制御システム3では、作業機械1が後進して次の掘削開始位置に移動するときに、コントローラ26は、
図10Bに示すように、後進目標軌道80を決定する。そして、
図10Cに示すように、作業機13が後進目標軌道80に従って動作することで、ウィンドロー100を除去することができる。
【0051】
以上説明した、本実施形態に係る作業機械1の制御システム3では、作業機械1の前進時だけではなく、後進時においても、後進目標軌道80に従って作業機13が動作する。それにより、作業機械1による作業の効率を向上させることができる。
【0052】
以上、一実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0053】
作業機械1は、ブルドーザに限らず、ホイールローダ、モータグレーダ、油圧ショベル等の他の車両であってもよい。作業機械1は、電動モータで駆動される車両であってもよい。その場合、エンジン22及びエンジン室15は省略されてもよい。
【0054】
コントローラ26は、互いに別体の複数のコントローラを有してもよい。上述した処理は、複数のコントローラに分散して実行されてもよい。
【0055】
作業機械1は、遠隔操縦可能な車両であってもよい。その場合、制御システム3の一部は、作業機械1の外部に配置されてもよい。例えば、
図11に示すように、コントローラ26は、リモートコントローラ261と車載コントローラ262とを含んでもよい。リモートコントローラ261は、作業機械1の外部に配置されてもよい。例えば、リモートコントローラ261は、作業機械1の外部の管理センタに配置されてもよい。車載コントローラ262は、作業機械1に搭載されてもよい。
【0056】
リモートコントローラ261と車載コントローラ262とは、通信装置38,39を介して無線により通信可能であってもよい。そして、上述したコントローラ26の機能の一部がリモートコントローラ261によって実行され、残りの機能が車載コントローラ262によって実行されてもよい。例えば、前進目標軌道70と後進目標軌道80とを決定する処理がリモートコントローラ261によって実行されてもよい。作業機13への指令信号を出力する処理が、車載コントローラ262によって実行されてもよい。
【0057】
入力装置25は、作業機械1の外部に配置されてもよい。入力装置25が作業機械1から省略されてもよい。その場合、運転室は、作業機械1から省略されてもよい。
【0058】
現況地形50は、上述した位置センサ33に限らず、他の装置によって取得されてもよい。例えば、作業機械1は、Lidar(Light Detection and Ranging)などの計測装置を備えてもよい。コントローラ26は、計測装置が計測した現況地形50に基づいて、現況地形データを取得してもよい。
【0059】
図12に示すように、外部の装置からのデータを受け付けるインターフェ-ス装置37によって現況地形50が取得されてもよい。インターフェ-ス装置37は、外部の計測装置41が計測した現況地形データを無線によって受信してもよい。或いは、インターフェ-ス装置37は、記録媒体の読み取り装置であってもよい。コントローラ26は、外部の計測装置41が計測した現況地形データを記録媒体を介して受け付けてもよい。
【0060】
上記の実施形態では、コントローラ26は、車幅方向において前進目標軌道70に平行になるように、後進目標軌道80を決定している。しかし、コントローラ26は、入力装置25の手動操作に応じて、作業機13のチルト角を変更してもよい。例えば、
図13Aに示すように、現況地形50が、前進目標軌道70に対して、車幅方向において傾斜している場合がある。この場合、オペレータは、入力装置25を操作して、ブレード18の刃先が現況地形50と平行になるように、手動で作業機13のチルト角を変更してもよい。それにより、
図13Bに示すように、コントローラ26は、手動操作に応じて作業機13のチルト角を変更してもよい。その後、
図13Cに示すように、コントローラ26は、作業機械1の後進中には、変更後のチルト角に作業機13を保持しながら、後進目標軌道80に応じて作業機13を上下に動作させてもよい。
【0061】
後進目標軌道80の決定方法は、上記の実施形態のものに限らず、変更されてもよい。例えば、コントローラ26は、上記の実施形態の目標高さZBを、上下方向に所定距離、変位させてもよい。
【0062】
コントローラ26は、ブレード18の刃先において車幅方向に離れた少なくとも2点の位置における目標高さZBを決定してもよい。例えば、
図14に示すように、コントローラ26は、刃先の左端位置PBLの目標高さZBL(以下、「左目標高さZBL」と呼ぶ)と、右端位置PBRの目標高さZBR(以下、「右目標高さZBR」と呼ぶ)を決定してもよい。
【0063】
コントローラ26は、刃先の左端位置PBLの周囲の複数の地点の高さを取得してもよい。コントローラ26は、上記の実施形態の目標高さZBの決定方法と同様にして、複数の地点の高さから、左目標高さZBLを算出してもよい。コントローラ26は、刃先の右端位置PBRの周囲の複数の地点の高さを取得してもよい。コントローラ26は、上記の実施形態の目標高さZBの決定方法と同様にして、複数の地点の高さから、右目標高さZBRを算出してもよい。
【0064】
コントローラ26は、
図15に示すように、左目標高さZBLと右目標高さZBRとから、刃先位置PBにおける目標高さZBを算出してもよい。コントローラ26は、左目標高さZBLと右目標高さZBRとの平均値を、刃先位置PBにおける目標高さZBとして決定してもよい。
【0065】
また、コントローラ26は、左目標高さZBLと右目標高さZBRとから、目標チルト角を決定してもよい。コントローラ26は、左目標高さZBLと右目標高さZBRとの差から、目標チルト角を算出してもよい。コントローラ26は、ブレード18のチルト角が目標チルト角になるように、作業機13を自動制御してもよい。
【0066】
コントローラ26は、ブレード18の刃先が前進目標軌道70を下方に越えないように、後進目標軌道80を補正してもよい。例えば、
図16Aに示すように、刃先の左端位置PBLが、前進目標軌道70よりも下方に位置する場合がある。刃先の右端位置PBRは、前進目標軌道70よりも上方に位置している。
【0067】
この場合、
図16Bに示すように、コントローラ26は、刃先の右端位置PBRと、前進目標軌道70の左端位置701とから、目標チルト角を決定してもよい。前進目標軌道70の左端位置701は、刃先の左端位置PBLに対応する前進目標軌道70上の位置である。
【0068】
或いは、図示を省略するが、刃先の右端位置PBRが、前進目標軌道70よりも下方に位置し、刃先の左端位置PBLが、前進目標軌道70よりも上方に位置している場合がある。その場合、コントローラ26は、刃先の左端位置PBLと、前進目標軌道70の右端位置702とから、目標チルト角を決定してもよい。前進目標軌道70の右端位置702は、刃先の右端位置PBRに対応する前進目標軌道70上の位置である。
【0069】
図17Aに示すように、刃先の左端位置PBLと右端位置PBRとの両方が、前進目標軌道70よりも下方に位置する場合がある。この場合、
図17Bに示すように、コントローラ26は、前進目標軌道70の左端位置701と、前進目標軌道70の右端位置702とから、目標チルト角を決定してもよい。
【0070】
上記の実施形態では、コントローラ26は、刃先位置PBの周囲の4つの地点の高さから、後進目標軌道80を決定している。しかし、後進目標軌道80を決定するための地点の数は、4つより少なくてもよく、或いは4つより多くてもよい。
【0071】
或いは、コントローラ26は、前進目標軌道70に基づいて、後進目標軌道80を決定してもよい。例えば、コントローラ26は、前進目標軌道70と同じ高さに、後進目標軌道80を決定してもよい。或いは、コントローラ26は、前進目標軌道70を上下に変位させた軌道を、後進目標軌道80として決定してもよい。
【0072】
前進制御は上記の実施形態のもの限らず、変更されてもよい。或いは、前進制御は、省略されてもよい。例えば、前進時はオペレータが手動で作業機械1を操作してもよい。その場合、上記の実施形態と同様に、コントローラ26は、前進中に現況地形50を取得してもよい。コントローラ26は、前進中に取得された現況地形に基づいて後進制御を行ってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0073】
本開示によれば、作業機械による作業の効率を向上させることができる。
【符号の説明】
【0074】
1 作業機械
13 作業機
26 コントローラ
70 前進目標軌道(前進時の目標軌道)
80 後進目標軌道(後進時の目標軌道)