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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-12
(45)【発行日】2023-07-21
(54)【発明の名称】外装材の再生方法
(51)【国際特許分類】
   E04G 23/02 20060101AFI20230713BHJP
【FI】
E04G23/02 C
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2019029760
(22)【出願日】2019-02-21
(65)【公開番号】P2020133294
(43)【公開日】2020-08-31
【審査請求日】2021-12-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000003621
【氏名又は名称】株式会社竹中工務店
(74)【代理人】
【識別番号】100107364
【弁理士】
【氏名又は名称】斉藤 達也
(72)【発明者】
【氏名】山下 博之
(72)【発明者】
【氏名】吉田 真悟
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 完
(72)【発明者】
【氏名】山本 正人
(72)【発明者】
【氏名】森田 翔
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 貴大
(72)【発明者】
【氏名】米光 雄治
(72)【発明者】
【氏名】松原 道彦
【審査官】須永 聡
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-199458(JP,A)
【文献】特表2014-519965(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04G 23/02
E04G 23/08
C04B 41/72
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物の躯体を構成する躯体本体に対してモルタルを介して取り付けられた外装材を再生するための再生方法であって、
前記外装材を前記躯体本体から取り外す取り外し工程と、
前記外装材の変色化を防止するための変色化防止処理を行う変色化防止工程と、
前記変色化防止工程と同時又はその後に、前記取り外し工程において前記躯体本体から取り外された前記外装材を酸性の浸漬液に浸漬することにより、前記外装材に付着している前記モルタルを除去する除去工程と、を含み、
前記変色化防止処理は、前記外装材の変色化を防止するための変色化防止剤を前記浸漬液に混入する処理を含み、
前記変色化防止剤は、塩化アルミニウム又は塩化マグネシウムを含む、
外装材の再生方法。
【請求項2】
前記変色化防止工程において、
前記塩化アルミニウムを前記浸漬液に溶解する場合には、前記塩化アルミニウムの溶質量を飽和溶液量の90%~100%に相当する量とし、
又は、前記塩化マグネシウムを前記浸漬液に溶解する場合には、前記塩化マグネシウムの溶質量を飽和溶液量の25%~100%に相当する量とする、
請求項1に記載の外装材の再生方法。
【請求項3】
建物の躯体を構成する躯体本体に対してモルタルを介して取り付けられた外装材を再生するための再生方法であって、
前記外装材を前記躯体本体から取り外す取り外し工程と、
前記外装材の変色化を防止するための変色化防止処理を行う変色化防止工程と、
前記変色化防止工程と同時又はその後に、前記取り外し工程において前記躯体本体から取り外された前記外装材を酸性の浸漬液に浸漬することにより、前記外装材に付着している前記モルタルを除去する除去工程と、を含み、
前記変色化防止処理は、前記外装材の表面のうち前記モルタルが付着していた表面とは反対側の表面をカバー材で覆う処理を含み、
前記除去工程と同時又はその後に、前記カバー材を前記外装材から剥離する剥離工程を含み、
前記カバー材は、ラバースプレーである、
外装材の再生方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、外装材の再生方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、既存建築物の外壁を構成する外壁本体にモルタルを介して取り付けられたタイルであって、汚損劣化したタイルを再生する技術として、タイルを外壁本体に取り付けた状態で、タイルの表面及び目地の補修処理を行った後に、タイルの目地や表面に対して表面処理を施す技術が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平02-183051号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、近年では、外壁から取り外されたタイルを他の外壁に再利用したいというニーズが高まっている。しかしながら、上記従来の技術においては、上述したように、タイルに対して補修処理及び表面処理を行うものに過ぎないので、例えば、タイルの裏面にモルタルが付着していると、当該タイルを別の外壁を構成する外壁本体に対して取り付けることができなくなるおそれがあることから、タイルの如き外装材の再利用性の観点からは改善の余地があった。
【0005】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、外装材の再利用性を高めることが可能となる、外装材の再生方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、請求項1に記載の外装材の再生方法は、建物の躯体を構成する躯体本体に対してモルタルを介して取り付けられた外装材を再生するための再生方法であって、前記外装材を前記躯体本体から取り外す取り外し工程と、前記外装材の変色化を防止するための変色化防止処理を行う変色化防止工程と、前記変色化防止工程と同時又はその後に、前記取り外し工程において前記躯体本体から取り外された前記外装材を酸性の浸漬液に浸漬することにより、前記外装材に付着している前記モルタルを除去する除去工程と、を含み、前記変色化防止処理は、前記外装材の変色化を防止するための変色化防止剤を前記浸漬液に混入する処理を含み、前記変色化防止剤は、塩化アルミニウム又は塩化マグネシウムを含む。
【0007】
請求項2に記載の外装材の再生方法は、請求項1に記載の外装材の再生方法において、前記変色化防止工程において、前記塩化アルミニウムを前記浸漬液に溶解する場合には、前記塩化アルミニウムの溶質量を飽和溶液量の90%~100%に相当する量とし、又は、前記塩化マグネシウムを前記浸漬液に溶解する場合には、前記塩化マグネシウムの溶質量を飽和溶液量の25%~100%に相当する量とする。
【0008】
請求項3に記載の外装材の再生方法は、建物の躯体を構成する躯体本体に対してモルタルを介して取り付けられた外装材を再生するための再生方法であって、前記外装材を前記躯体本体から取り外す取り外し工程と、前記外装材の変色化を防止するための変色化防止処理を行う変色化防止工程と、前記変色化防止工程と同時又はその後に、前記取り外し工程において前記躯体本体から取り外された前記外装材を酸性の浸漬液に浸漬することにより、前記外装材に付着している前記モルタルを除去する除去工程と、を含み、前記変色化防止処理は、前記外装材の表面のうち前記モルタルが付着していた表面とは反対側の表面をカバー材で覆う処理を含み、前記除去工程と同時又はその後に、前記カバー材を前記外装材から剥離する剥離工程を含み、前記カバー材は、ラバースプレーである。
【発明の効果】
【0014】
請求項1に記載の外装材の再生方法によれば、外装材を躯体本体から取り外す取り外し工程と、変色化防止処理を行う変色化防止工程と、変色化防止工程と同時又はその後に、取り外し工程において躯体本体から取り外された外装材を酸性の浸漬液に浸漬することにより、外装材に付着しているモルタルを除去する除去工程と、を含むので、除去工程によって外装材に付着したモルタルを除去でき、当該外装材を別の建物の躯体に利用する場合に、当該外装材を当該躯体の躯体本体に対して確実に取り付けることができる。また、変色化防止工程により外装材を浸漬液に浸漬する際に生じる外装材の変色化を防止でき、外装材の意匠性を維持できる。以上のことから、外装材の再利用性を高めることができる。
また、変色化防止処理は、外装材の変色化を防 止するための変色化防止剤を浸漬液に混入する処理を含むので、変色化防止剤を浸漬液に 混入するだけで外装材の変色化を防止でき、変色化防止処理を簡易に行うことができる。
また、変色化防止剤は、塩化アルミニウム、又は塩化マグネシウムを含むので、他の材料に比べて外装材の変色化を防止でき、変色化防止処理を効果的に行うことが可能となる。
【0015】
請求項2に記載の外装材の再生方法によれば、変色化防止工程において、塩化アルミニウムを浸漬液に溶解する場合には、塩化アルミニウムの溶質量を飽和溶液量の90%~100%に相当する量とし、又は、塩化マグネシウムを浸漬液に溶解する場合には、塩化マグネシウムの溶質量を飽和溶液量の25%~100%に相当する量とするので、他の溶質量に比べて外装材の変色化を防止でき、変色化防止処理を一層効果的に行うことが可能となる。
【0016】
請求項3に記載の外装材の再生方法によれば、外装材を躯体本体から取り外す取り外し工程と、変色化防止処理を行う変色化防止工程と、変色化防止工程と同時又はその後に、取り外し工程において躯体本体から取り外された外装材を酸性の浸漬液に浸漬することにより、外装材に付着しているモルタルを除去する除去工程と、を含むので、除去工程によって外装材に付着したモルタルを除去でき、当該外装材を別の建物の躯体に利用する場合に、当該外装材を当該躯体の躯体本体に対して確実に取り付けることができる。また、変色化防止工程により外装材を浸漬液に浸漬する際に生じる外装材の変色化を防止でき、外装材の意匠性を維持できる。以上のことから、外装材の再利用性を高めることができる。
また、変色化防止処理は、外装材の表面のうち モルタルが付着していた表面とは反対側の表面をカバー材で覆う処理を含むので、外装材 の反対側表面をカバー材で覆うだけで外装材の変色化を防止でき、変色化防止処理を簡易 に行うことが可能となる。
また、除去工程と同時又はその後に、カバー材を外装材から剥離する剥離工程を含むので、カバー材を外装材から剥離でき、外装材の再利用時に不要なカバー材を除去できる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】実施の形態1に係る躯体を概念的に示す図であり、(a)は正面図、(b)は(a)のA-A矢視断面図である。
図2】実施の形態1に係る再生方法の取り外し工程を示す図であり、図2(b)に対応する領域を示す図である。
図3】再生方法の除去工程を示す図である。
図4】第1変色確認試験の試験結果を示す図である。
図5】実施の形態2に係る再生方法の除去工程を示す図である。
図6】第2変色確認試験の試験結果を示す図である。
図7】第1使用性確認試験の試験結果を示す図である。
図8】第2使用性確認試験の試験結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下に添付図面を参照して、この発明に係る外装材の再生方法の実施の形態を詳細に説明する。まず、〔I〕実施の形態の基本的概念を説明した後、〔II〕実施の形態の具体的内容について説明し、最後に、〔III〕実施の形態に対する変形例について説明する。ただし、実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
【0024】
〔I〕実施の形態の基本的概念
まず、実施の形態の基本的概念について説明する。実施の形態は、概略的に、建物の躯体を構成する躯体本体に対してモルタルを介して取り付けられた外装材を再生するための再生方法に関する。ここで、「建物」の具体的な構造や種類は任意であり、例えば、戸建て住宅、アパートやマンションの如き集合住宅、オフィスビル、商業施設等の建物等を含む概念であるが、実施の形態では、解体中のオフィスビルとして説明する。また、「建物の躯体」とは、例えば、建物の基本的な構造体であり、例えば、壁、天井、床、柱、梁等を含む概念であるが、実施の形態では、壁として説明する。また、「外装材」とは、建物の外側を装飾するための部材であり、例えば、タイル系の外装材、レンガ系の外装材等を含む概念であるが、実施の形態では、タイル系の外装材として説明する。また、「再生する」とは、躯体本体から取り外された外装材を、別の建物の躯体本体に取り付けられる外装材として利用可能な状態に戻すことを意味する。
【0025】
〔II〕実施の形態の具体的内容
次に、実施の形態の具体的内容について説明する。
【0026】
〔実施の形態1〕
まず、実施の形態1に係る外装材の再生方法について説明する。この実施の形態1は、後述の変色化防止処理が後述の変色化防止剤を後述の浸漬液に混入する処理である形態である。
【0027】
(構成)
最初に、実施の形態1に係る再生方法が適用される外装材を含む躯体の構成について説明する。図1は、実施の形態1に係る躯体を概念的に示す図であり、(a)は正面図、(b)は(a)のA-A矢視断面図である。以下の説明では、図1のX方向を躯体の左右方向(-X方向を躯体の左方向、+X方向を躯体の右方向)、図1のY方向を躯体の前後方向(+Y方向を躯体の前方向、-Y方向を躯体の後方向)、図1のZ方向を躯体の上下方向(+Z方向を躯体の上方向、-Z方向を躯体の下方向)と称する。躯体1は、建物(例えば、オフィスビル等)を構成する壁(例えば、外壁等)であり、図1に示すように、躯体本体10、外装材20、及び下地材30を備えている。
【0028】
(構成-躯体本体)
躯体本体10は、躯体1の基本構造体である。この躯体本体10は、例えばコンクリート製(一例として、鉄筋コンクリート製、プレストレストコンクリート製)の長尺な矩形状の板状体にて形成されており、図1に示すように、長手方向が上下方向に沿うように設けられ、図示しない設置対象(例えば、床部等)に対して固定されている。
【0029】
(構成-外装材)
外装材20は、例えば公知のタイル系の外装材等を用いて構成されており、図1に示すように、躯体本体10よりも外側において躯体本体10の外表面全体(図1(a)では、前面全体)を覆うように設けられており、外装材本体21及び表面膜22を備えている。
【0030】
(構成-外装材-外装材本体)
外装材本体21は、外装材20の基本構造体である。この外装材本体21は、例えば公知のタイル材(一例として、タイル部と目地部とを有する矩形状のタイル材)等を用いて構成されており、図1に示すように、躯体本体10を覆うように左右方向に略沿って複数並設され、且つ上下方向に略沿って複数並設されている。
【0031】
また、外装材本体21の具体的な構成については、実施の形態1では、図1に示すように、外装材本体21の外表面全体(図1(b)では、前面全体)は、平坦状に形成されている。ただし、これに限らず、例えば非平坦状に形成されてもよい。また、外装材本体21の内表面全体(図1(b)では、後面全体)は、非平坦状に形成されており、具体的には、後方に向けて突出する複数の凸部を有するように形成されている。
【0032】
(構成-外装材-表面膜)
表面膜22は、釉薬が塗布された膜である。ここで、「釉薬」とは、外装材20の装飾性及び強度を高めると共に、外装材20の汚れを防止するために用いる薬品を意味し、具体的には、釉薬の骨格をなすRO成分(例えば、SiO成分等)、外装材本体21との繋ぎや釉薬の骨格の一部をなすR成分(例えば、Al成分等)、釉薬の骨格を一部壊し、且つ溶融温度を下げるRO成分(CaO成分、MgO成分)、RO成分(NaO成分、KO成分等)からなる薬品である。また、「釉薬」の具体的な種類については任意であるが、例えば、非結晶である「透明釉」、非結晶中に取り込まれなかった細かい結晶を含む「マット釉・失透釉」、大きな結晶を含む「結晶釉」、及び非結晶の相が複数となった「乳白釉」等が該当する。
【0033】
この表面膜22は、図1(b)に示すように、外装材本体21の外表面全体に設けられており、具体的には、例えば外装タイル材用の釉薬が外装材本体21の外表面全体に塗布されて焼き付けられることによって形成されている。ここで、釉薬の塗布量について任意であるが、例えば、均一な表面膜22を形成する観点から、可能な限り少なく設定することが望ましいが、釉薬の種類や外装材本体21の種類等に応じて異なり得ることから、一例として、実験結果や解析結果等により設定してもよい。
【0034】
(構成-下地材)
下地材30は、外装材20を躯体本体10に対して取り付けるためのものである。この下地材30は、例えば公知のモルタル製の下地材を用いて構成されており、図1(b)に示すように、躯体本体10と外装材本体21との相互間に設けられており、具体的には、躯体本体10の外表面全体を覆うように設けられている。なお、この「下地材30」は、特許請求の範囲における「モルタル」に対応する。
【0035】
(再生方法)
次に、実施の形態1に係る外装材20の再生方法について説明する。図2は、実施の形態1に係る再生方法の取り外し工程を示す図であり、図2(b)に対応する領域を示す図である。図3は、再生方法の除去工程を示す図である。図2図3に示すように、実施の形態1に係る外装材20の再生方法は、取り外し工程、変色化防止工程、及び除去工程を含んでいる。
【0036】
(再生方法-取り外し工程)
まず、取り外し工程について説明する。取り外し工程は、外装材20を躯体本体10から取り外す工程である。
【0037】
具体的には、まず、図示しない公知の切断器具を用いて、外装材20の一部の領域を下地材30と併せて切断する。この場合において、外装材20の切断方法については任意であるが、例えば、外装材20の再利用性を高めるために、外装材20の切断領域に外装材本体21のタイル部が少なくとも1つ以上含まれるように切断すると共に、外装材本体21のタイル部を切断せずに外装材本体21の目地部を切断することが望ましい。次いで、図2に示すように、図示しない公知の剥離器具を用いて、当該切断した外装材20及び下地材30を躯体本体10から剥離する。そして、これらの動作サイクルを複数回繰り返すことにより、外装材20全体を躯体本体10から取り外す。
【0038】
(再生方法-変色化防止工程)
次に、変色化防止工程について説明する。変色化防止工程は、取り外し工程の後(又は取り外し工程の前)に、外装材20の変色化を防止するための処理(以下、「変色化防止処理」と称する)を行う工程である。ここで、「外装材20の変色化」とは、除去工程に用いられる後述の浸漬液に外装材20を浸漬した際に、外装材20の表面膜22が変色すること(具体的には、表面膜22が白色に変色すること)を意味する。
【0039】
また、外装材20の変色化が生じる原因については、以下のことが推定される。すなわち、外装材20の表面膜22については、釉薬の骨格をなす各種の成分(RO成分、R成分、及びRO、RO成分)がバランスよく配合されて焼成されている場合には、耐酸性を有する表面膜22となる。しかしながら、近代化前の調合技術や焼成技術を用いて形成された表面膜(以下、「旧表面膜」と称する)については、釉薬の焼き付け時に釉薬の一部の成分(例えば、Al成分、Ca成分等)が反応せずにそのままの状態で残っている場合がある。これにより、旧表面膜を含む外装材20を後述の浸漬液に浸漬すると、当該旧表面膜から上記残った成分が溶出することで、当該旧表面膜の一部(具体的には、旧表面膜の表層部)においてポーラス化(多孔質化)が生じることから、上記浸漬された旧表面膜に光を当てた際に、当該旧表面膜のポーラス化した部分で光が乱反射することで旧表面膜が白色に見える(つまり、外装材20の変色化が生じる)ものと推定される。
【0040】
また、変色化防止処理の具体的な処理内容については任意であるが、実施の形態1では、変色化防止剤を酸性の浸漬液(以下、「浸漬液」と称する)に混入する処理を行う。具体的には、まず、図3の容器50(例えば、耐酸性を有する容器50であって、取り外し工程にて取り外された外装材20及び下地材30及び浸漬液が収容可能な容器50)に浸漬液である1mоl/Lの塩酸を投入する。次いで、上記容器50に所定量の変色化防止剤を投入することで、当該変色化防止剤を上記浸漬液に溶解する(なお、変色化防止剤が溶解された図3の浸漬液40を、以下では「変色化防止剤入り浸漬液40」と称する)。ここで、「変色化防止剤」とは、外装材20の変色化を防止するためのものであり、具体的には、後述する第1試験結果からすると、塩化アルミニウム、塩化カルシウム、又は塩化マグネシウム等が該当する。このような変色化防止処理により、変色化防止剤を浸漬液に混入するだけで外装材20の変色化を防止でき、変色化防止処理を簡易に行うことができる。特に、変色化防止剤が、塩化アルミニウム、塩化カルシウム、又は塩化マグネシウムのいずれかを含むので、他の材料に比べて外装材20の変色化を防止でき、変色化防止処理を効果的に行うことが可能となる。
【0041】
また、変色化防止剤の溶質量については任意であるが、実施の形態1では、後述する第1試験結果に基づいて、変色化防止剤の種類毎に設定している。具体的には、塩化アルミニウムの溶質量については、飽和溶液量(溶解度まで変色化防止剤を浸漬液に溶解した際の溶質量)の90%~100%に相当する量に設定している。また、塩化カルシウムの溶質量については、飽和溶液量の25%~90%に相当する量に設定している。また、塩化マグネシウムの溶質量については、飽和溶液量の25%~100%に相当する量に設定している。このような設定により、他の溶質量に比べて外装材20の変色化を防止でき、変色化防止処理を効果的に行うことが可能となる。
【0042】
(再生方法-除去工程)
続いて、除去工程について説明する。除去工程は、変色化防止工程と同時又はその後に、取り外し工程において躯体本体10から取り外された外装材20を変色化防止剤入り浸漬液40に浸漬することにより、外装材20に付着している下地材30(モルタル)を除去する工程である。
【0043】
具体的には、図3に示すように、まず、変色化防止工程において変色化防止剤入り浸漬液40が収容された容器50内に、取り外し工程にて取り外された外装材20及び下地材30を投入する。次に、上記投入した外装材20及び下地材30を変色化防止剤入り浸漬液40に所定時間(例えば、数時間程度等)浸漬する。続いて、上記浸漬した外装材20及び下地材30を容器50から取り出した後、当該下地材30に対して洗浄水を吹き付けたり、又は当該下地材30を刷毛等の器具や手等で剥ぎ取ることにより、当該下地材30を除去する。
【0044】
以上のような再生方法により、除去工程によって外装材20に付着したモルタルを除去でき、当該外装材20を別の建物の躯体1に利用する場合に、当該外装材20を当該躯体1の躯体本体10に対して確実に取り付けることができる。また、変色化防止工程により外装材20を浸漬液に浸漬する際に生じる外装材20の変色化を防止でき、外装材20の意匠性を維持できる。以上のことから、外装材20の再利用性を高めることができる。
【0045】
(第1試験結果)
続いて、本件出願人が行った第1試験結果について説明する。ここでは、各種の変色化防止剤に関する第1変色確認試験について説明する。
【0046】
(第1試験結果-試験の概要)
最初に、第1変色確認試験の概要について説明する。ここで、「第1変色確認試験」とは、各種の変色化防止剤を対象として、各種の変色化防止剤を含む浸漬液に試験体をそれぞれ浸漬した際に、試験体(具体的には、試験体の表面膜)が変色するか否かを確認する試験である。
【0047】
この第1変色確認試験の試験方法については任意であるが、以下の通りとなる。すなわち、まず、公知の色差計を用いて、各種の浸漬液に対応する試験体に対して色彩測定を行う。次に、各種の浸漬液を対応する容器に収容した状態で対応する試験体をそれぞれ投入して14日間浸漬する(ただし、第1浸漬液Cに対応する試験体については6日間浸漬する)。その後、各種の浸漬液に対応する試験体に対して目視により変色化が生じたか否かを観察する(以下、「目視観察」と称する)。さらに、各種の浸漬液に対応する試験体に対して上記色彩測定を再度行った後に、公知の方法を用いて浸漬前の色彩測定と浸漬後の色彩測定に基づいて色差ΔEを算出する。
【0048】
ここで、第1変色確認試験に用いられた試験体は、解体された壁から取り外されたタイル材であって、釉薬からなる表面膜を有するタイル材である。具体的には、各種の浸漬液毎に、解体された壁において異なる位置に取り付けられていたタイル材を試験体として用いられている。
【0049】
また、第1変色確認試験で使用された浸漬液については、第1浸漬液~第5浸漬液に分けられる。このうち、第1浸漬液は、変色化防止剤である塩化アルミニウムを1mоl/Lの塩酸に溶解したものである。具体的には、第1浸漬液Aは、塩化アルミニウムの溶質量=飽和溶液量の0%に相当する量に設定した浸漬液である。第1浸漬液Bは、塩化アルミニウムの溶質量=飽和溶液量の25%に相当する量に設定した浸漬液である。第1浸漬液Cは、塩化アルミニウムの溶質量=飽和溶液量の50%に相当する量に設定した浸漬液である。第1浸漬液Dは、塩化アルミニウムの溶質量=飽和溶液量の90%に相当する量に設定した浸漬液である。第1浸漬液Eは、塩化アルミニウムの溶質量=飽和溶液量の100%に相当する量に設定した浸漬液である。また、第2浸漬液は、変色化防止剤である塩化カルシウムを1mоl/Lの塩酸に溶解したものである。具体的には、第2浸漬液Aは、塩化カルシウムの溶質量=飽和溶液量の25%に相当する量に設定した浸漬液である。第2浸漬液Bは、塩化カルシウムの溶質量=飽和溶液量の50%に相当する量に設定した浸漬液である。第2浸漬液Cは、塩化カルシウムの溶質量=飽和溶液量の100%に相当する量に設定した浸漬液である。また、第3浸漬液は、変色化防止剤である塩化マグネシウムを1mоl/Lの塩酸に溶解したものである。具体的には、第3浸漬液Aは、塩化マグネシウムの溶質量=飽和溶液量の25%に相当する量に設定した浸漬液である。第3浸漬液Bは、塩化マグネシウムの溶質量=飽和溶液量の50%に相当する量に設定した浸漬液である。第3浸漬液Cは、塩化マグネシウムの溶質量=飽和溶液量の100%に相当する量に設定した浸漬液である。また、第4浸漬液は、変色化防止剤である塩化ナトリウムを1mоl/Lの塩酸に溶解したものである。具体的には、第4浸漬液Aは、塩化ナトリウムの溶質量=飽和溶液量の25%に相当する量に設定した浸漬液である。第4浸漬液Bは、塩化ナトリウムの溶質量=飽和溶液量の50%に相当する量に設定した浸漬液である。第4浸漬液Cは、塩化ナトリウムの溶質量=飽和溶液量の100%に相当する量に設定した浸漬液である。また、第5浸漬液は、変色化防止剤である塩化カリウムを1mоl/Lの塩酸に溶解したものである。具体的には、第5浸漬液Aは、塩化カリウムの溶質量=飽和溶液量の25%に相当する量に設定した浸漬液である。第5浸漬液Bは、塩化カリウムの溶質量=飽和溶液量の50%に相当する量に設定した浸漬液である。第5浸漬液Cは、塩化カリウムの溶質量=飽和溶液量の100%に相当する量に設定した浸漬液である。
【0050】
(第1試験結果-試験結果の詳細)
次いで、第1変色確認試験の試験結果の詳細について説明する。図4は、第1変色確認試験の試験結果を示す図である。ここで、図4の目視観察の「〇」は外装材20の変色化が生じなかった旨を示し、図4の目視観察の「×」は外装材20の変色化が生じた旨を示し、図4の目視観察及び色差ΔEの「-」は測定不能であった旨を示す。
【0051】
図4に示すように、第1浸漬液の試験結果については、第1浸漬液A~Cでは、目視観察=外装材20が変色したことが確認されると共に、色差ΔE=10以上になったことが確認された。一方で、第1浸漬液D、Eでは、目視観察=外装材20が変色しなったことが確認されると共に、色差ΔE=10未満になったことが確認された。また、第2浸漬液の試験結果については、第2浸漬液A、Bでは、目視観察=外装材20が変色しなったことが確認されると共に、色差ΔE=10未満になったことが確認された。また、第3浸漬液の試験結果については、目視観察=外装材20が変色しなったことが確認されると共に、色差ΔE=10未満になったことが確認された。また、第4浸漬液及び第5浸漬液の試験結果については、目視観察=外装材20が変色したことが確認されると共に、色差ΔE=10以上になったことが確認された。
【0052】
以上のことから、変色化防止剤として、塩化アルミニウム、塩化カルシウム、及び塩化マグネシウムを用いることの有効性が確認できた。さらに、塩化アルミニウムの溶質量を飽和溶液量の90%~100%に相当する量に設定し、塩化カルシウムの溶質量を飽和溶液量の25%~90%に相当する量に設定し、及び塩化マグネシウムの溶質量を飽和溶液量の25%~100%に相当する量に設定することの有効性も確認できた。
【0053】
(実施の形態の効果)
このように実施の形態1によれば、外装材20を躯体本体10から取り外す取り外し工程と、変色化防止処理を行う変色化防止工程と、変色化防止工程と同時又はその後に、取り外し工程において躯体本体10から取り外された外装材20を酸性の浸漬液に浸漬することにより、外装材20に付着しているモルタルを除去する除去工程と、を含むので、除去工程によって外装材20に付着したモルタルを除去でき、当該外装材20を別の建物の躯体1に利用する場合に、当該外装材20を当該躯体1の躯体本体10に対して確実に取り付けることができる。また、変色化防止工程により外装材20を浸漬液に浸漬する際に生じる外装材20の変色化を防止でき、外装材20の意匠性を維持できる。以上のことから、外装材20の再利用性を高めることができる。
【0054】
また、変色化防止処理は、外装材20の変色化を防止するための変色化防止剤を浸漬液に混入する処理を含むので、変色化防止剤を浸漬液に混入するだけで外装材20の変色化を防止でき、変色化防止処理を簡易に行うことができる。
【0055】
また、変色化防止剤は、塩化アルミニウム、塩化カルシウム、又は塩化マグネシウムを含むので、他の材料に比べて外装材20の変色化を防止でき、変色化防止処理を効果的に行うことが可能となる。
【0056】
また、塩化アルミニウムを浸漬液に溶解する場合には、塩化アルミニウムの溶質量を飽和溶液量の90%~100%に相当する量とし、塩化カルシウムを浸漬液に溶解する場合には、塩化カルシウムの溶質量を飽和溶液量の25%~90%に相当する量とし、又は、塩化マグネシウムを浸漬液に溶解する場合には、塩化マグネシウムの溶質量を飽和溶液量の25%~100%に相当する量とするので、他の溶質量に比べて外装材20の変色化を防止でき、変色化防止処理を一層効果的に行うことが可能となる。
【0057】
〔実施の形態2〕
次に、実施の形態2に係る外装材の再生方法について説明する。この実施の形態2は、変色化防止処理が外装材を後述のカバー材で覆う処理である形態である。ただし、この実施の形態2の構成は、特記する場合を除いて、実施の形態1の構成と略同一であり、実施の形態1の構成と略同一の構成についてはこの実施の形態1で用いたものと同一の符号及び/又は名称を必要に応じて付して、その説明を省略する。
【0058】
(構成)
最初に、実施の形態2に係る躯体の構成について説明する。実施の形態2に係る躯体1は、実施の形態1に係る躯体1とほぼ同様に構成されているので、その説明を省略する。
【0059】
(再生方法)
次に、実施の形態2に係る外装材の再生方法について説明する。図5は、実施の形態2に係る再生方法の除去工程を示す図である。実施の形態2に係る外装材20の再生方法は、取り外し工程、変色化防止工程、除去工程、及び剥離工程を含んでいる。なお、この再生方法の取り外し工程は、実施の形態1に係る再生方法の取り外し工程と同様であるので、その説明を省略する。
【0060】
(再生方法-変色化防止工程)
まず、変色化防止工程について説明する。変色化防止工程は、取り外し工程の後に変色化防止処理を行う。
【0061】
この変色化防止処理の具体的な処理内容については任意であるが、実施の形態2では、外装材20の表面のうちモルタルが付着していた表面とは反対側の表面(図5では、外装材20の下面。以下、「反対側表面」と称する。)をカバー材60で覆う処理を行う。具体的には、図5に示すように、取り外し工程にて取り外された外装材20の反対側表面全体に加えて、外装材20の前面、後面、左面、及び右面がカバー材60によって覆われるように、カバー材60を取り付ける(ただし、これに限らず、外装材20の反対側表面全体のみが覆われてもよい)。
【0062】
ここで、「カバー材60」とは、外装材20(具体的には、表面膜22)の変色化を防止するためのものである。このカバー材60は、実施の形態2では、止水性、耐酸性、及び付着性を有する樹脂材料にて形成されたものであり、具体的には、後述する第2試験結果からすると、当該樹脂材料にて形成された樹脂製のパテ材(例えば、エアコン用配管パテ等)、樹脂製の接着剤(例えば、ホットメルト等)、樹脂製のテープ材(例えば、ニトフロン粘着テープ、樹脂製の粘着層である布テープ、ガムテープ、ビニルテープ、ダクトテープ等)、又は樹脂製の塗料(例えば、水系ストリッパブル、油性塗料(一例として、ラバースプレー(液体ゴム))等が該当する。また、上記樹脂材料の種類については任意であるが、例えば、ポリオレフィン系樹脂、エポキシ樹脂、合成樹脂エチレン、酢酸ビニル樹脂共重合体、ポリテトラフルオロエチレン、シリコーン系樹脂、トルエン、メチルエチルケトン、スチレン系ブロックコポリマー等が該当する。
【0063】
このような変色化防止処理により、外装材20の反対側表面をカバー材60で覆うだけで外装材20の変色化を防止でき、変色化防止処理を簡易に行うことが可能となる。また、カバー材60を止水性、耐酸性、及び付着性を有する樹脂材料にて形成するので、カバー材60が止水性、耐酸性、及び付着性を有することができ、カバー材60の使用性を高めることができる。また、カバー材60が、樹脂製のパテ材、樹脂製の接着剤、樹脂製のテープ材、又は樹脂製の塗料を含むので、状況に応じた種類のカバー材60を使用することができ、カバー材60の使用性を向上できる。
【0064】
(再生方法-除去工程)
次に、除去工程について説明する。除去工程は、変色化防止工程の後に、取り外し工程において躯体本体10から取り外された外装材20を浸漬液70に浸漬することにより、外装材20に付着している下地材30を除去する工程である。
【0065】
具体的には、図5に示すように、まず、浸漬液70である1mоl/Lの塩酸が収容された容器50内に、変色化防止処理にてカバー材60が取り付けられた外装材20及び下地材30を投入する。次に、上記投入した外装材20及び下地材30を上記浸漬液70に所定時間浸漬する。続いて、上記浸漬した外装材20及び下地材30を容器50から取り出した後、当該取り出した下地材30に対して洗浄水を吹き付けること等により、当該下地材30を除去する。
【0066】
(再生方法-剥離工程)
続いて、剥離工程について説明する。剥離工程は、除去工程と同時又はその後に、カバー材60を外装材20から剥離する工程である。
【0067】
具体的には、外装材20に取り付けられたカバー材60に対して洗浄水を吹き付けたり、又は当該カバー材60を刷毛等の器具や手等で剥ぎ取ることにより、当該カバー材60を当該外装材20から剥離する。
【0068】
以上のような再生方法により、実施の形態1に係る再生方法と同様に、除去工程によって外装材20に付着したモルタルを除去でき、当該外装材20を別の建物の躯体1に利用する場合に、当該外装材20を当該躯体1の躯体本体10に対して確実に取り付けることができる。また、変色化防止工程により外装材20を浸漬液70に浸漬する際に生じる外装材20の変色化を防止でき、外装材20の意匠性を維持できる。また、剥離工程が行われるので、カバー材60を外装材20から剥離でき、外装材20の再利用時に不要なカバー材60を除去できる。
【0069】
(第2試験結果)
続いて、本件出願人が行った第2試験結果について説明する。ここでは、各種のカバー材に関する第2変色確認試験、第1使用性確認試験、及び第2使用性確認試験について説明する。
【0070】
(第2試験結果-第2変色確認試験の概要)
最初に、第2変色確認試験の概要について説明する。ここで、「第2変色確認試験」とは、各種のカバー材を対象として、各種のカバー材が取り付けられた試験体を酸性の浸漬液にそれぞれ浸漬した際に、試験体(具体的には、表面膜22)が変色するか否かを確認する試験である。
【0071】
この第2変色確認試験の試験方法については任意であるが、以下の通りとなる。すなわち、まず、公知の色差計を用いて、各種のカバー材に対応する試験体に対して色彩測定を行う。次に、各種のカバー材を対応する試験体に取り付けた後に、当該試験体を各種のカバー材に対応する容器であって浸漬液(1mоl/Lの塩酸)を収容した容器にそれぞれ投入して14日間浸漬する。そして、上記浸漬から144時間経過した後に、各種のカバー材に対応する試験体に対して目視観察を行う。さらに、各種のカバー材に対応する試験体に対して上記色彩測定を再度行った後に、公知の方法を用いて浸漬前の色彩測定と浸漬後の色彩測定に基づいて色差ΔEを算出する。
【0072】
ここで、第2変色確認試験に用いられた試験体は、第1変色確認試験に用いられた試験体と同一のタイル材であり、具体的には、各種のカバー材毎に、解体された壁において異なる位置に取り付けられていたタイル材を試験体として用いられている。
【0073】
また、第2変色確認試験で使用されたカバー材については、第1カバー材~第13カバー材に分けられる。このうち、第1カバー材は、油粘土であり、具体的には、炭酸カルシウム、潤滑油、及び植物性油脂等を含んで構成されている。また、第2カバー材は、エアコン用配管パテであり、具体的には、ポリオレフィン系樹脂、充填材、及び顔料等を含んで構成されている。また、第3カバー材は、水中ボンドであり、具体的には、エポキシ樹脂及びポリアミドアミン等を含んで構成されている。また、第4カバー材は、水系ストリッパブルであり、具体的には、DME、合成樹脂、及び顔料等を含んで構成されている。また、第5カバー材は、クイックメンダーであり、具体的には、エポキシ樹脂、ポリチオール、及び3級アミン等を含んで構成されている。また、第6カバー材は、ホットメルトであり、具体的には、合成樹脂エチレン、酢酸ビニル樹脂共重合体、及びプラスチック等を含んで構成されている。また、第7カバー材は、ニトフロン粘着テープであり、具体的には、ポリテトラフルオロエチレン、及びシリコーン系樹脂等を含んで構成されている。また、第8カバー材は、ラバースプレーであり、具体的には、トルエン、メチルエチルケトン、スチレン系ブロックコポリマー等を含んで構成されている。また、第9カバー材は、ガムテープであり、具体的には、ポリプロピレン等を含んで構成されている。また、第10カバー材は、ビニルテープであり、具体的には、ポリ塩化ビニル等を含んで構成されている。また、第11カバー材は、ダクトテープであり、具体的には、ポリエチレンポ等を含んで構成されている。また、第12カバー材は、下層部をホットメルトとし、上層部をサランラップ(登録商標)としたものであり、具体的には、ポリ塩化ビニリデン、脂肪酸誘導体、及びエポキシ化植物油等を含んで構成されている。また、第13カバー材は、下層部をホットメルトとし、上層部を金属表面用養生フィルムとしたものであり、具体的には、ポリエチレン系フィルム及びアクリル系粘着剤等を含んで構成されている。
【0074】
(第2試験結果-第2変色確認試験の試験結果の詳細)
次いで、第2変色確認試験の試験結果の詳細について説明する。図6は、第2変色確認試験の試験結果を示す図である。
【0075】
図6に示すように、第1カバー材、第2カバー材、及び第4カバー材~第13カバー材の試験結果については、目視観察=外装材20が変色しなかったことが確認されると共に、色差ΔE=10未満になったことが確認された。一方で、第3カバー材の試験結果については、目視観察=外装材20が変色したことが確認されると共に、色差ΔE=10以上になったことが確認された。
【0076】
以上のことから、カバー材として、樹脂製のパテ材、樹脂製の接着剤、樹脂製のテープ材、及び樹脂製の塗料を用いることの有効性が確認できた。
【0077】
(第2試験結果-第1使用性確認試験の概要)
次に、第1使用性確認試験の概要について説明する。ここで、「第1使用性確認試験」とは、各種のカバー材を対象として、再生方法に用いる際の使用性を確認する試験であり、具体的には、止水性試験、耐酸性試験、付着性試験、及び施工性試験が該当する。
【0078】
この第1使用性確認試験の試験方法については任意であるが、以下の通りとなる。すなわち、止水性試験については、まず、浸漬液(1mоl/Lの塩酸)を収容した容器に、各種のカバー材が取り付けられた試験体を投入して、14日間浸漬する。次に、各試験体から各種のカバー材を取り外した後に、各試験体のカバー材側の表面にリトマス紙を取り付ける。そして、リトマス紙の色の変化に基づいて、カバー材の止水性の有無を確認する。また、耐酸性試験については、上記浸漬液を収容した容器に各種のカバー材が取り付けられた試験体を投入して、14日間浸漬する。そして、各試験体からカバー材を取り外した後に、各試験体のカバー材側の表面が変色したか否かを確認する。また、付着性試験については、上記浸漬液を収容した容器に各種のカバー材が取り付けられた試験体を投入して、14日間浸漬する(なお、容器における上記浸漬液の収容量については、試験体に5kPaの水頭圧がかかる程度の量に設定する)。その後、各種のカバー材が試験体から剥がれたか否かを確認する。また、施工性試験については、止水性試験にて各種のカバー材を取り付ける際の手間(例えば、作業の工程数、作業時間等)や浸漬後に試験体から各種のカバー材を取り外す際の手間に基づいて、各種のカバー材の施工性の程度を確認する。
【0079】
ここで、第1使用性確認試験に用いられた試験体は、第2変色確認試験に用いられた試験体と同一のタイル材であり、具体的には、各種のカバー材毎に、解体された壁において異なる位置に取り付けられていたタイル材を試験体として用いられている。
【0080】
また、第1使用性確認試験で使用されたカバー材については、第2変色確認試験と同様に、第1カバー材~第13カバー材に分けられる。
【0081】
(第2試験結果-第1使用性確認試験の試験結果の詳細)
次いで、第1使用性確認試験の試験結果の詳細について説明する。図7は、第1使用性確認試験の試験結果を示す図である。ここで、図7の「◎」は非常に良い旨を示し、図7の「〇」は良い旨を示し、図7の「△」は可もなく不可もない旨を示し、図7の「×」は良くなかった旨を示す(なお、後述する図8についても同様とする)。
【0082】
図7に示すように、まず、止水性試験の結果については、第1カバー材~第13カバー材の止水性がほぼ良かったことが確認された。また、耐酸性試験の結果については、第1カバー材~第13カバー材の耐酸性がほぼ良かったことが確認された。また、付着性試験の結果については、第2カバー材、及び第4カバー材~第13カバー材の付着性が良かったものの、第1カバー材及び第3カバー材の付着性が良くなかったことが確認された。また、施工性試験の結果については、第1カバー材、第2カバー材、第4カバー材~第13カバー材の施工性がほぼ良かったものの、第3カバー材の施工性が良くなかったことが確認された。これらのことを踏まえると、第2カバー材、及び第5カバー材~第11カバー材の総合評価が良かったものの、第4カバー材、第12カバー材、及び第13カバー材の総合評価が可もなく不可もなく、第1カバー材及び第3カバー材の総合評価が良くないことが確認された。
【0083】
以上のことからも、カバー材として、樹脂製のパテ材、樹脂製の接着剤、樹脂製のテープ材、及び樹脂製の塗料を用いることの有効性が確認できた。
【0084】
(第2試験結果-第2使用性確認試験の概要)
続いて、第2使用性確認試験の概要について説明する。ここで、「第2使用性確認試験」とは、各種のカバー材を対象として、各種の試験体毎の第1使用性確認試験を行う試験である。
【0085】
この第2使用性確認試験の試験方法については任意であるが、第1使用性確認試験の試験方法と同様である。
【0086】
また、第2使用性確認試験に用いられた試験体は、第1変色確認試験に用いられた試験体と同一のタイル材であるものの、試験体の表面のうち表面膜側の表面の形状に特徴を有するものである。具体的には、表面膜側の表面がフラット状である第1試験体と、表面膜側の表面がポーラス状(微細な孔を有する形状)である第2試験体と、表面膜側の表面が凹凸状である第3試験体とに分けられる。
【0087】
また、第2使用性確認試験で使用されたカバー材については、第1使用性確認試験と同様に、第1カバー材~第13カバー材に分けられる。
【0088】
(第2試験結果-第2使用性確認試験の試験結果の詳細)
次いで、第2使用性確認試験の試験結果の詳細について説明する。図8は、第2使用性確認試験の試験結果を示す図である。
【0089】
図8に示すように、第1試験体の結果(具体的には、第1試験体に関する第1使用性確認試験の総合評価)、第2試験体の結果(具体的には、第2試験体に関する第1使用性確認試験の総合評価)、及び第3試験体の結果(具体的には、第3試験体に関する第1使用性確認試験の総合評価)については、第1カバー材、第2カバー材、及び第4カバー材~第13カバー材の結果がほぼ良かったものの、第3カバー材の結果が良くなかったことが確認された。このことを踏まえると、第2カバー材、第4カバー材、第7カバー材~第11カバー材の総合評価が良かったものの、第1カバー材、第5カバー材、第6カバー材、第12カバー材、及び第13カバー材の総合評価が可もなく不可もなく、第3カバー材の総合評価が良くないことが確認された。
【0090】
以上のことからも、カバー材として、樹脂製のパテ材、樹脂製の接着剤、樹脂製のテープ材、及び樹脂製の塗料を用いることの有効性が確認できた。
【0091】
(実施の形態の効果)
このように実施の形態2によれば、変色化防止処理は、外装材20の表面のうちモルタルが付着していた表面とは反対側の表面をカバー材60で覆う処理を含むので、外装材20の反対側表面をカバー材60で覆うだけで外装材20の変色化を防止でき、変色化防止処理を簡易に行うことが可能となる。
【0092】
また、除去工程と同時又はその後に、カバー材60を外装材20から剥離する剥離工程を含むので、カバー材60を外装材20から剥離でき、外装材20の再利用時に不要なカバー材60を除去できる。
【0093】
また、カバー材60を、止水性、耐酸性、及び付着性を有する樹脂材料にて形成したので、カバー材60が止水性、耐酸性、及び付着性を有することができ、カバー材60の使用性を高めることができる。
【0094】
また、カバー材60は、樹脂製のパテ材、樹脂製の接着剤、樹脂製のテープ材、又は樹脂製の塗料を含むので、状況に応じた種類のカバー材60を使用することができ、カバー材60の使用性を向上できる。
【0095】
〔III〕実施の形態に対する変形例
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明の具体的な構成及び手段は、特許請求の範囲に記載した各発明の技術的思想の範囲内において、任意に改変及び改良することができる。以下、このような変形例について説明する。
【0096】
(解決しようとする課題や発明の効果について)
まず、発明が解決しようとする課題や発明の効果は、前記した内容に限定されるものではなく、本発明によって、前記に記載されていない課題を解決したり、前記に記載されていない効果を奏することもでき、また、記載されている課題の一部のみを解決したり、記載されている効果の一部のみを奏することがある。
【0097】
(形状、数値、構造、時系列について)
実施の形態や図面において例示した構成要素に関して、形状、数値、又は複数の構成要素の構造若しくは時系列の相互関係については、本発明の技術的思想の範囲内において、任意に改変及び改良することができる。
【0098】
(各実施の形態の組み合わせ)
上記実施の形態1、2に示した構成は、相互に組み合わせることができる。例えば、躯体1における一部の外装材20を実施の形態1に係る再生方法を用いて再生し、躯体1における他の一部の外装材20を実施の形態2に係る再生方法を用いて再生してもよい。
【0099】
(浸漬液について)
上記実施の形態1、2では、浸漬液70が、1mоl/Lの塩酸であると説明したが、これに限らない。例えば、塩酸以外の他の酸(一例として、硫酸等)であってもよい。あるいは、1mоl/Lを上回るモル濃度の塩酸であってもよく、1mоl/Lを下回るモル濃度の塩酸であってもよい。
【0100】
(変色化防止剤について)
上記実施の形態1では、変色化防止剤が、塩化アルミニウム、塩化カルシウム、又は塩化マグネシウムのいずれかを含むと説明したが、これに限らず、例えば、塩化アルミニウム、塩化カルシウム、又は塩化マグネシウムのいずれか2つ以上を含むものであってもよい。
【0101】
(カバー材について)
上記実施の形態2では、カバー材60は、止水性、耐酸性、及び付着性を有する樹脂材料にて形成されていると説明したが、これに限らない。例えば、外装材20の変色化を防止できるのであれば、止水性、耐酸性、又は付着性のいずれか1つのみ又はいずれか2つのみを有する樹脂材料で形成されてもよい。
【0102】
(再生方法について)
上記実施の形態2では、再生方法が、剥離工程を含むと説明したが、これに限らない。例えば、カバー材60を外装材20から剥離する必要がない場合(一例として、カバー材60が樹脂製の塗料である場合等)には、剥離工程を省略してもよい。
【0103】
(付記)
付記1の外装材の再生方法は、建物の躯体を構成する躯体本体に対してモルタルを介して取り付けられた外装材を再生するための再生方法であって、前記外装材を前記躯体本体から取り外す取り外し工程と、前記外装材の変色化を防止するための変色化防止処理を行う変色化防止工程と、前記変色化防止工程と同時又はその後に、前記取り外し工程において前記躯体本体から取り外された前記外装材を酸性の浸漬液に浸漬することにより、前記外装材に付着している前記モルタルを除去する除去工程と、を含む。
【0104】
付記2の外装材の再生方法は、付記1に記載の外装材の再生方法において、前記変色化防止処理は、前記外装材の変色化を防止するための変色化防止剤を前記浸漬液に混入する処理を含む。
【0105】
付記3の外装材の再生方法は、付記2に記載の外装材の再生方法において、前記変色化防止剤は、塩化アルミニウム、塩化カルシウム、又は塩化マグネシウムを含む。
【0106】
付記4の外装材の再生方法は、付記3に記載の外装材の再生方法において、前記変色化防止工程において、前記塩化アルミニウムを前記浸漬液に溶解する場合には、前記塩化アルミニウムの溶質量を飽和溶液量の90%~100%に相当する量とし、前記塩化カルシウムを前記浸漬液に溶解する場合には、前記塩化カルシウムの溶質量を飽和溶液量の25%~90%に相当する量とし、又は、前記塩化マグネシウムを前記浸漬液に溶解する場合には、前記塩化マグネシウムの溶質量を飽和溶液量の25%~100%に相当する量とする。
【0107】
付記5の外装材の再生方法は、付記1から4のいずれか一項に記載の外装材の再生方法において、前記変色化防止処理は、前記外装材の表面のうち前記モルタルが付着していた表面とは反対側の表面をカバー材で覆う処理を含む。
【0108】
付記6の外装材の再生方法は、付記5に記載の外装材の再生方法において、前記除去工程と同時又はその後に、前記カバー材を前記外装材から剥離する剥離工程を含む。
【0109】
付記7の外装材の再生方法は、付記5又は6に記載の外装材の再生方法において、前記カバー材を、止水性、耐酸性、及び付着性を有する樹脂材料にて形成した。
【0110】
付記8の外装材の再生方法は、付記5から7のいずれか一項に記載の外装材の再生方法において、前記カバー材は、樹脂製のパテ材、樹脂製の接着剤、樹脂製のテープ材、又は樹脂製の塗料を含む。
【0111】
(付記の効果)
付記1に記載の外装材の再生方法によれば、外装材を躯体本体から取り外す取り外し工程と、変色化防止処理を行う変色化防止工程と、変色化防止工程と同時又はその後に、取り外し工程において躯体本体から取り外された外装材を酸性の浸漬液に浸漬することにより、外装材に付着しているモルタルを除去する除去工程と、を含むので、除去工程によって外装材に付着したモルタルを除去でき、当該外装材を別の建物の躯体に利用する場合に、当該外装材を当該躯体の躯体本体に対して確実に取り付けることができる。また、変色化防止工程により外装材を浸漬液に浸漬する際に生じる外装材の変色化を防止でき、外装材の意匠性を維持できる。以上のことから、外装材の再利用性を高めることができる。
【0112】
付記2に記載の外装材の再生方法によれば、変色化防止処理は、外装材の変色化を防止するための変色化防止剤を浸漬液に混入する処理を含むので、変色化防止剤を浸漬液に混入するだけで外装材の変色化を防止でき、変色化防止処理を簡易に行うことができる。
【0113】
付記3に記載の外装材の再生方法によれば、変色化防止剤は、塩化アルミニウム、塩化カルシウム、又は塩化マグネシウムを含むので、他の材料に比べて外装材の変色化を防止でき、変色化防止処理を効果的に行うことが可能となる。
【0114】
付記4に記載の外装材の再生方法によれば、変色化防止工程において、塩化アルミニウムを浸漬液に溶解する場合には、塩化アルミニウムの溶質量を飽和溶液量の90%~100%に相当する量とし、塩化カルシウムを浸漬液に溶解する場合には、塩化カルシウムの溶質量を飽和溶液量の25%~90%に相当する量とし、又は、塩化マグネシウムを浸漬液に溶解する場合には、塩化マグネシウムの溶質量を飽和溶液量の25%~100%に相当する量とするので、他の溶質量に比べて外装材の変色化を防止でき、変色化防止処理を一層効果的に行うことが可能となる。
【0115】
付記5に記載の外装材の再生方法によれば、変色化防止処理は、外装材の表面のうちモルタルが付着していた表面とは反対側の表面をカバー材で覆う処理を含むので、外装材の反対側表面をカバー材で覆うだけで外装材の変色化を防止でき、変色化防止処理を簡易に行うことが可能となる。
【0116】
付記6に記載の外装材の再生方法によれば、除去工程と同時又はその後に、カバー材を外装材から剥離する剥離工程を含むので、カバー材を外装材から剥離でき、外装材の再利用時に不要なカバー材を除去できる。
【0117】
付記7に記載の外装材の再生方法によれば、カバー材を、止水性、耐酸性、及び付着性を有する樹脂材料にて形成したので、カバー材が止水性、耐酸性、及び付着性を有することができ、カバー材の使用性を高めることができる。
【0118】
付記8に記載の外装材の再生方法によれば、カバー材は、樹脂製のパテ材、樹脂製の接着剤、樹脂製のテープ材、又は樹脂製の塗料を含むので、状況に応じた種類のカバー材を使用することができ、カバー材の使用性を向上できる。
【符号の説明】
【0119】
1 躯体
10 躯体本体
20 外装材
21 外装材本体
22 表面膜
30 下地材
40 変色化防止剤入り浸漬液
50 容器
60 カバー材
70 浸漬液
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8