(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-12
(45)【発行日】2023-07-21
(54)【発明の名称】異物除去装置
(51)【国際特許分類】
E01H 1/08 20060101AFI20230713BHJP
【FI】
E01H1/08 B
(21)【出願番号】P 2019047560
(22)【出願日】2019-03-14
【審査請求日】2021-12-10
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】303056368
【氏名又は名称】東急建設株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000194516
【氏名又は名称】世紀東急工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】240000327
【氏名又は名称】弁護士法人クレオ国際法律特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 将充
(72)【発明者】
【氏名】本田 宏武
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 正憲
(72)【発明者】
【氏名】中嶋 毅
(72)【発明者】
【氏名】吉野 敏弘
(72)【発明者】
【氏名】永渕 克己
【審査官】湯本 照基
(56)【参考文献】
【文献】特開平06-173216(JP,A)
【文献】登録実用新案第3061761(JP,U)
【文献】特開2014-217826(JP,A)
【文献】特開平11-000292(JP,A)
【文献】特開2020-079494(JP,A)
【文献】特開平06-081325(JP,A)
【文献】特開2006-299703(JP,A)
【文献】特開2004-346675(JP,A)
【文献】実開平01-075123(JP,U)
【文献】特開2014-066080(JP,A)
【文献】特開2018-178547(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E01H 1/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
舗装のひび割れ部に詰まった異物を除去する異物除去装置であって、
吸引掃除機の吸引ノズルに取り付けられる、裏面に吸引口を有するベースプレートと、
前記ベースプレートの裏面に、前記吸引口を囲むように取り付けられるシール材とを備え、
前記シール材の幅は、
100~200mmであり、
前記ひび割れ部の周囲を加振する加振機を備え、
前記加振機は、弾性体を介して前記ベースプレートに接続される
ことを特徴とする、異物除去装置。
【請求項2】
舗装のひび割れ部に詰まった異物を除去する異物除去装置であって、
吸引掃除機の吸引ノズルに取り付けられる、裏面に吸引口を有するベースプレートと、
前記ベースプレートの裏面に、前記吸引口を囲むように取り付けられるシール材とを備え、
前記ベースプレートには、前記ひび割れ部に挿入可能な可撓性のある挿入部材を備える
ことを特徴とする、異物除去装置。
【請求項3】
前記ベースプレートは、円板状である
ことを特徴とする、請求項1又は2に記載の異物除去装置。
【請求項4】
前記ベースプレートが取り付けられる台車を備え、
前記台車には、作業者が握るハンドルが備えられる
ことを特徴とする、請求項1~3の何れか一項に記載の異物除去装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、舗装のひび割れ部に詰まった異物を除去する異物除去装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、舗装のひび割れ部に詰まった異物を吸引機で除去する異物除去装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1には、高空隙路面に対峙して配置される吸引口と、高空隙路面上を移動する平行空気流を発生させる平行空気流噴出部と、吸引口の前側位置に設けられた前空気噴出部と、後側位置に設けられた後空気噴出部とを有する路面清掃装置が開示されている。これにより、高空隙路面の塵埃は、平行空気流によって形成される負圧による空気流により除去され、上方に向かう空気流により吸引口に導かれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の構成は、大掛かりな装置で発生させた平行空気流によって形成された負圧による空気流によって、高空隙路面の塵埃を除去するものである。そのため、特許文献1の構成では、大掛かりな装置により高空隙路面の表面の塵埃を除去できるに過ぎず、簡易な装置により高空隙路面の深部の塵埃を除去することができない、という問題がある。
【0006】
そこで、本発明は、舗装の深部の異物を除去することができる簡易な構成の異物除去装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成するために、本発明の異物除去装置は、舗装のひび割れ部に詰まった異物を除去する異物除去装置であって、吸引掃除機の吸引ノズルに取り付けられる、裏面に吸引口を有するベースプレートと、前記ベースプレートの裏面に、前記吸引口を囲むように取り付けられるシール材とを備えることを特徴とする。
【0008】
ここで、本発明の異物除去装置では、前記ベースプレートは、円板状であってもよい。また、本発明の異物除去装置では、前記ベースプレートが取り付けられる台車を備え、前記台車には、作業者が握るハンドルが備えられてもよい。
【0009】
また、本発明の異物除去装置では、前記ひび割れ部の周囲を加振する加振機を備えてもよい。また、本発明の異物除去装置では、前記加振機は、弾性体を介して前記ベースプレートに接続されてもよい。
【0010】
さらに、本発明の異物除去装置では、前記ベースプレートには、前記ひび割れ部に挿入可能な可撓性のある挿入部材を備えてもよい。
【発明の効果】
【0011】
このように構成された本発明の異物除去装置は、吸引掃除機の吸引ノズルに取り付けられる、裏面に吸引口を有するベースプレートと、ベースプレートの裏面に、吸引口を囲むように取り付けられるシール材とを備える。これにより、ひび割れ部への空気の流入口と、吸引口との距離を離すことができ、より深い部分に流路を形成することができる。そのため、深さ方向において、異物の除去量を増やすことができる。
【0012】
また、本発明の異物除去装置では、ベースプレートは、円板状であることで、ベースプレートの形状を、ひび割れ部の形状にきっちりと合わせることなく、ひび割れ部に詰まった異物を除去することができる。
【0013】
また、本発明の異物除去装置では、ベースプレートが取り付けられる台車を備え、台車には、作業者が握るハンドルが備えられることで、作業者は、異物除去装置を容易に移動させることができる。また、作業者は、ハンドルを操作して、ベースプレートを舗装の表面に押し付けることができ、シール材によるシール性を向上させることができる。
【0014】
また、本発明の異物除去装置では、ひび割れ部の周囲を加振する加振機を備えることで、ひび割れ部の中で固着した異物を振動によって剥がすことができ、より多くの異物を除去することができる。
【0015】
また、本発明の異物除去装置では、加振機が、弾性体を介してベースプレートに接続されることで、加振機の振動をベースプレートに伝えないようにすることができる。そのため、ベースプレートを振動させることなく、加振機は、ひび割れ部の周囲を加振することができる。
【0016】
また、発明の異物除去装置では、ベースプレートに、ひび割れ部に挿入可能な可撓性のある挿入部材を備えていることで、ひび割れ部の深さ方向に、挿入部材を挿入して、ひび割れ部のより深い部分に、流入口から吸引口へ続く流路を形成することができる。そのため、深さ方向において、異物の除去量を増やすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】実施例1の異物除去装置が使用されるコンクリート舗装を示す斜視図である。
【
図2】実施例1の異物除去装置を示す斜視図である。
【
図3】実施例1のベースプレートを示す断面図である。
【
図4】実施例1の異物除去装置を部分的に示す断面図である。
【
図5】実施例1の異物除去装置による異物除去方法を説明する図である。
【
図6】実施例1の異物除去効果試験Aの実験概要を説明する図である。
【
図7】実施例1の異物除去効果試験Aの結果を示す図である。
【
図8】比較例の異物除去効果試験Aの結果を示す図である。
【
図9】シール材の幅と異物の除去量の関係を示すグラフである。
【
図10】シール材の幅と異物の除去最大深さの関係を示すグラフである。
【
図11】実施例1の異物除去効果試験Bの実験概要を説明する図である。
【
図12】実施例1の異物除去効果試験Bの結果を示す図である。
【
図13】実施例2のベースプレートを示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明による異物除去装置を実現する実施形態を、図面に示す実施例1及び実施例2に基づいて説明する。
【実施例1】
【0019】
実施例1の異物除去装置は、コンクリート舗装のひび割れ部の補修工事に使用される。実施例1の異物除去装置は、補修剤をひび割れ部に充填する前に、ひび割れ部に詰まった異物を除去するために使用される。
【0020】
[コンクリート舗装]
図1は、実施例1の異物除去装置が使用されるコンクリート舗装を示す斜視図である。以下、
図1に基づいて、実施例1のコンクリート舗装を説明する。
【0021】
コンクリート舗装1には、
図1に示すように、経年劣化等により、一本の線状のひび割れ部2が形成されている。
【0022】
作業者Mは、コンクリート舗装1に予め墨打ち等により形成されたマーク5を目印に、異物除去装置10を使用してひび割れ部2の異物を除去する。
【0023】
[異物除去装置の構成]
図2は、実施例1の異物除去装置10を示す斜視図である。
図3は、実施例1のベースプレートを示す断面図である。
図4は、実施例1の異物除去装置10を部分的に示す断面図である。以下、
図2~
図4に基づいて、実施例1の異物除去装置10の構成を説明する。
【0024】
異物除去装置10は、
図1及び
図2に示すように、異物除去部20と、加振機30と、吸引掃除機60と、台車50とを備える。
【0025】
<異物除去部>
異物除去部20は、
図3に示すように、ベースプレート21と、シール材28とで構成される。
【0026】
(ベースプレート)
ベースプレート21は、例えば、鋼材やステンレスなどの、汚れ除去作業で容易に変形や破損しないものを使用する。ベースプレート21は、円板状のベースプレート本体22と、ベースプレート本体22の上方に突出する円板状の上方突出部23と、ベースプレート本体22の下方に突出する円板状の下方突出部24とで一体に形成される。
【0027】
ベースプレート本体22の表面の直径W1は、例えば300[mm]で、裏面の直径W2は、例えば280[mm]とすることができる。ベースプレート21の側面は、下方に向けて縮径したテーパを形成する。ベースプレート本体22の厚みt2は、例えば20[mm]とすることができる。
【0028】
上方突出部23の直径W3は、例えば120[mm]とすることができる。上方突出部23の厚みt1は、例えば1.5[mm]とすることができる。
【0029】
下方突出部24の直径W4は、例えば80[mm]とすることができる。下方突出部24の厚みt3は、例えば5[mm]とすることができる。
【0030】
ベースプレート本体22と、上方突出部23と、下方突出部24とは、同心状に形成され、中心部に丸孔状の貫通孔25が形成される。貫通孔25の内径W5は、例えば40[mm]とすることができる。
【0031】
貫通孔25は、上方開口25aと、下方開口25bとを備える。上方開口25aには、吸引掃除機60のホース62の吸引ノズル62aが差し込まれて取り付けられる。
【0032】
貫通孔25の下部は、下方に向けて拡径したテーパを形成する。下方開口25bの内径W6は、例えば60[mm]とすることができる。下方開口25bは、吸引掃除機60によって吸引される吸引口を構成する。
【0033】
(シール材)
シール材28は、例えば合成ゴム、発泡ゴムなどの、気密性が高く、弾性率が低く、弾性限界が高いものを使用する。シール材28は、ドーナツ状(円環状)に形成され、ベースプレート21の裏面に、例えば両面テープ等によって取り付けられる。すなわち、シール材28は、ベースプレート21の裏面に、下方突出部24を囲むように取り付けられる。言い換えると、シール材28は、ベースプレート21の裏面に、下方開口25bを囲むように取り付けられる。
【0034】
シール材28の内径は、下方突出部24の外径と略同じ大きさとして、シール材28をベースプレート21に取り付ける際の位置決めとすることができる。シール材28の幅Lは、50~250[mm]とすることができる。好ましくは、シール材28の幅Lは、75~200[mm]とすることができる。
【0035】
シール材28の厚みt4は、例えば10[mm]とする。異物を除去する際に、ベースプレート21をコンクリート舗装1に押し付けたときは、シール材28の厚みt4は、例えば8[mm]に変形する。
【0036】
<加振機>
加振機30は、
図4に示すように、モータ31と、加振部32とを備える。
【0037】
モータ31は、例えば持ち運び可能なポータブル用の100[v]のバッテリーに接続され、加振部32を上下に移動させる。加振部32は、この上下の移動により、コンクリート舗装1に振動を伝える。
【0038】
モータ31と、加振部32とは、取付台45に取り付けられる。取付台45は、弾性体40を介して、ベースプレート21の表面側に取り付けられる。弾性体40は、例えば防震ゴムとすることができる。加振機30は、ひび割れ部2の周囲を加振する。
【0039】
<台車>
台車50は、
図2に示すように、金属製のパイプで形成され、鉛直方向に延在して並んで配置される2つの台車本体51と、台車本体51の下部から水平に延在する袖部52と、台車本体51の上部から傾斜して延在するハンドル53と、台車本体51の下端に取り付けられる車輪54と、吸引掃除機60を保持する保持部55とを備える。
【0040】
袖部52の先端には、ベースプレート21が2つのボルトBによって袖部52に取り付けられる。ハンドル53は、作業者Mが起立した姿勢で、腰から胸位の高さに形成される。車輪54は、台車本体51の下端で、後方に取り付けられる。
【0041】
保持部55は、台車本体51間に2つ架け渡され、吸引掃除機60の吸引掃除機本体61が脱着可能に取り付けられる。
【0042】
台車本体51が鉛直方向となる、台車50が直立した直立姿勢では、シール材28が、コンクリート舗装1と当接する。台車本体51が後方に傾いた、台車50が傾斜した傾斜姿勢では、車輪54が、コンクリート舗装1と当接する。
【0043】
<吸引掃除機>
吸引掃除機60は、
図2及び
図3に示すように、吸引掃除機本体61と、ホース62と、吸引ノズル62aとを備える。
【0044】
吸引掃除機本体61は、例えば持ち運び可能なポータブル用の100[v]のバッテリーに接続される。なお、バッテリーは、台車50に取り付けられてもよい。ホース62は、可撓性を有するものとすることができる。吸引ノズル62aは、ベースプレート21の上方開口25aに挿入して取り付けられる。
【0045】
吸引掃除機60は、ベースプレート21の下方開口25bから、ひび割れ部2の中に詰まった異物3を吸引する。
【0046】
[異物除去装置による異物除去方法]
図5は、実施例1の異物除去装置10による異物除去方法を説明する図である。以下、
図5に基づいて、実施例1の異物除去装置10による異物除去方法を説明する。
【0047】
(台車移動工程)
図5に示すように、作業者Mは、ハンドル53を握って、台車50を傾斜させた傾斜姿勢にする。次いで、作業者Mは、車輪54をコンクリート舗装1に当接させて、台車50をひび割れ部2の目標の位置に移動する。
【0048】
(振動工程)
次いで、
図1に示すように、作業者Mは、台車50を直立させた直立姿勢にする。この際、作業者Mは、ベースプレート21がひび割れ部2を跨ぐようにして、シール材28をコンクリート舗装1に当接させる。次いで、作業者Mは、加振機30の電源をONにして、ひび割れ部2の周囲を加振する。
【0049】
(異物除去工程)
次いで、作業者Mは、吸引掃除機60の電源をONにして、ひび割れ部2の中の異物3を、下方開口25bから吸引する。ひび割れ部2の中の異物3を十分に吸引し終えたら、吸引掃除機60と加振機30の電源をOFFにする。
【0050】
(台車移動工程)
次いで、
図5に示すように、作業者Mは、ハンドル53を握って、台車50を傾斜させた傾斜姿勢にする。次いで、作業者Mは、車輪54をコンクリート舗装1に当接させて、マーク5を目印として、台車50を、異物3の除去を終えていないひび割れ部2の次の目標の位置に移動する。
【0051】
このように、振動工程と、異物除去工程と、台車移動工程とを繰り返して、ひび割れ部2の全域について、異物3を除去する。
【0052】
[異物除去効果確認試験A]
図6は、実施例1の異物除去効果試験Aの実験概要を説明する図である。
図7は、実施例1の異物除去効果試験Aの結果を示す図である。
図8は、比較例の異物除去効果試験Aの結果を示す図である。以下、
図6~
図8に基づいて、実施例1の異物除去効果確認試験Aについて説明する。
【0053】
異物除去効果確認試験Aは、ひび割れ部2のモデルとしてのひび割れ部モデル2Aを有するコンクリート舗装モデル1Aにて実施した。
【0054】
(実施例1のコンクリート舗装モデル)
実施例1のコンクリート舗装モデル1Aは、
図6に示すように、長さ600[mm]で高さ300[mm]の2枚のアクリル板91を、枠材92を介して重ねて、ボルト95で固定して形成した。2枚のアクリル板91の間にできた長さ550[mm]×高さ250[mm]の隙間を、ひび割れ部モデル2Aとした。
【0055】
ひび割れ部モデル2Aに、異物3のモデルとしての異物モデル3Aを充填した。アクリル板91の中央上端面に、吸引口(下方開口25b)のモデルとしての吸引口モデル25Aを形成した。アクリル板91の上端面で、吸引口モデル25Aを挟んだ両側には、シール材28のモデルとしてシール材モデル28Aを設置した。
【0056】
吸引掃除機本体61の最大真空圧を20[kPa]とし、異物モデル3Aを砕砂とし、ひび割れ部モデル2Aのひび割れ幅を2[mm]とし、シール材モデル28Aの幅を100[mm]とした。
【0057】
(比較例のコンクリート舗装モデル)
実施例1のコンクリート舗装モデル1Aに、シール材モデル28Aを設置していないものを、比較例のコンクリート舗装モデル1Bとした。
【0058】
(異物除去効果確認試験Aの結果)
実施例1のコンクリート舗装モデル1Aでは、
図7に示すように、深さ方向で、最大155[mm]まで異物モデル3Aを除去できた。実施例1のコンクリート舗装モデル1Aでは、水平方向で、最大J1(約230[mm])まで異物モデル3Aを除去できた。
【0059】
一方、比較例のコンクリート舗装モデル1Bは、
図8に示すように、深さ方向で、最大60[mm]まで異物モデル3Aを除去できた。比較例のコンクリート舗装モデル1Bは、水平方向で、J1よりはるかに短い最大J2(約90[mm])まで異物モデル3Aを除去できた。
【0060】
以上より、実施例1のコンクリート舗装モデル1Aでは、比較例のコンクリート舗装モデル1Bと比較して、ひび割れ部モデル2Aへの空気の流入口E1を、吸引口モデル25Aから離して、流路F1を形成できることが分かった。
【0061】
また、実施例1のコンクリート舗装モデル1Aは、比較例のコンクリート舗装モデル1Bと比較して、より深い部分に及ぶような流路F1を形成することが分かった。
【0062】
[様々な条件における異物除去効果確認試験A]
図9は、シール材の幅と異物の除去量の関係を示すグラフである。
図10は、シール材の幅と異物の除去最大深さの関係を示すグラフである。以下、
図9及び
図10に基づいて、実施例1の様々な条件における異物除去効果確認試験Aについて説明する。
【0063】
吸引掃除機本体61の最大真空圧を16[kPa]、20[kPa]、30[kPa]とし、異物モデル3Aを砕砂、石粉とし、ひび割れ部モデル2Aのひび割れ幅を1[mm]、2[mm]とし、シール材モデル28Aの幅を0[mm]、20[mm]、100[mm]、200[mm]としたものについて、それぞれ異物除去効果確認試験Aをした。
【0064】
なお、
図9では、シール材の幅と異物の除去量の関係を、それぞれの異物除去効果確認試験Aの結果の近似曲線を実線で表した。
図10では、シール材の幅と異物の除去最大深さの関係を、それぞれの異物除去効果確認試験Aの結果の近似曲線を実線で表した。
【0065】
図9及び
図10から分かるように、異物モデル3Aの除去量と異物モデル3Aの最大除去深さは、吸引掃除機本体61の最大真空圧や、異物モデル3Aの種類や、ひび割れ幅に関わらず、シール材モデル28Aを設けることで、多くなることが分かった。
【0066】
図9に示すように、シール材モデル28Aを設けない場合、異物モデル3Aの除去量が12[cm
3]となることが分かった。シール材モデル28Aの幅が50[mm]以上で、異物モデル3Aの除去量が47[cm
3]となることが分かった。シール材モデル28Aの幅が75[mm]以上で、異物モデル3Aの除去量が60[cm
3]となることが分かった。シール材28の幅が100[mm]以上では、異物モデル3Aの除去量の効果は、それほど変化がないことが分かった。
【0067】
図10に示すように、シール材モデル28Aを設けない場合、異物モデル3Aの除去最大深さが61[mm]となることが分かった。シール材モデル28Aの幅が50[mm]で、異物モデル3Aの除去最大深さが105[mm]となることが分かった。シール材モデル28Aの幅が75[mm]で、異物モデル3Aの除去最大深さが119[mm]となることが分かった。シール材モデル28Aの幅が200[mm]で、異物モデル3Aの除去最大深さが121[mm]となることが分かった。シール材モデル28Aの幅が250[mm]で、異物モデル3Aの除去最大深さが88[mm]となることが分かった。
【0068】
[異物除去効果確認試験B]
図11は、実施例1の異物除去効果試験Bの実験概要を説明する図である。
図12は、実施例1の異物除去効果試験Bの結果を示す図である。以下、
図11及び
図12に基づいて、実施例1の異物除去効果確認試験Bについて説明する。
【0069】
異物除去効果確認試験Bは、
図11に示すように、ひび割れ部モデル2Aを有するコンクリート舗装モデル1Aを使用して、異物モデル3Aがコンクリート舗装モデル1Aの表面まで詰まっていない状態で実施した。異物除去効果確認試験Bは、ひび割れ部モデル2Aに、100[mm]の高さの隙間を有する状態で実施した。
【0070】
吸引掃除機本体61の最大真空圧を20[kPa]、30[kPa]とし、異物モデル3Aを砕砂とし、ひび割れ部モデル2Aのひび割れ幅を2[mm]とし、シール材モデル28Aの幅を0[mm]、20[mm]、100[mm]、200[mm]としたものについて、それぞれ異物除去効果確認試験Bをした。
【0071】
図12から分かるように、異物モデル3Aがコンクリート舗装モデル1Aの表面まで詰まっていない状態であっても、シール材モデル28Aを設けることで、異物モデル3Aの最大除去深さは、深くなることが分かった。
【0072】
[異物除去装置の作用]
次に、実施例1の異物除去装置10の作用を説明する。実施例1の異物除去装置10は、舗装(コンクリート舗装1)のひび割れ部2に詰まった異物3を除去する異物除去装置10である。異物除去装置10は、吸引掃除機60の吸引ノズル62aに取り付けられる、裏面に吸引口(下方開口25b)を有するベースプレート21と、ベースプレート21の裏面に、吸引口(下方開口25b)を囲むように取り付けられるシール材28とを備える(
図2)。
【0073】
これにより、ひび割れ部2への空気の流入口E1と、吸引口(下方開口25b)との距離を離すことができる。そのため、流入口E1から吸引口(下方開口25b)へ続く流路F1を、水平方向で長く形成することができる。その結果、水平方向において、異物3の除去量を増やすことができ、異物3の除去の効率化を図れる。
【0074】
また、流入口E1から吸引口(下方開口25b)へ続く流路F1を、より深い部分に形成することができる。そのため、深さ方向において、異物3の除去量を増やすことができる。その結果、補修剤によるひび割れ部2の確実な付着ができるような深さまで、異物3を除去することができ、ひび割れ部2が進展して、コンクリートの破片が飛散することを防止することができる。
【0075】
実施例1の異物除去装置10では、ベースプレート21は、円板状である(
図3)。これにより、ベースプレート21の形状を、ひび割れ部2の形状にしっかりと合わせることなく、ひび割れ部2に詰まった異物3を除去することができる。そのため、異物3を除去する作業性が向上する。
【0076】
実施例1の異物除去装置10は、ベースプレート21が取り付けられる台車50を備え、台車50には、作業者Mが握るハンドル53が備えられる(
図2)。
【0077】
これにより、作業者Mは、異物除去装置10を容易に移動させることができる。また、作業者Mは、ハンドル53を操作して、ベースプレート21を舗装(コンクリート舗装1)の表面に押し付けることができる。そのため、シール材28によるシール性を向上させることができる。その結果、異物3の吸引効果を向上させることができる。
【0078】
実施例1の異物除去装置10は、ひび割れ部2の周囲を加振する加振機30を備える(
図4)。
【0079】
これにより、ひび割れ部2の中で固着した異物3を振動によって剥がすことができる。そのため、より多くの異物3を除去することができる。
【0080】
実施例1の異物除去装置10では、加振機30は、弾性体を介してベースプレート21に接続される(
図4)。
【0081】
これにより、加振機30の振動をベースプレート21に伝えないようにすることができる。そのため、ベースプレート21を振動させることなく、加振機30は、ひび割れ部2の周囲を加振することができる。その結果、ベースプレート21を舗装(コンクリート舗装1)の表面にしっかりと押し付けることができる。
【実施例2】
【0082】
実施例2の異物除去装置110は、挿入部材を有する点で、実施例1の異物除去装置10と相違する。
【0083】
[挿入部材の構成]
図13は、実施例2のベースプレート21を示す断面図である。以下、
図13に基づいて、実施例2の挿入部材の構成を説明する。なお、上記実施例で説明した内容と同一乃至均等な部分の説明については、同一用語又は同一の符号を用いて説明する。
【0084】
実施例2の異物除去装置110の挿入部材131は、例えば可撓性を有する樹脂によって棒状に形成される。挿入部材131は、ベースプレート本体22の外縁部(外縁の周辺)に取り付けられた案内部材132に、上下方向にスライド可能に支持される。すなわち、挿入部材131は、ドーナツ状のシール材28の外側で、上下方向にスライドする。
【0085】
ベースプレート本体22には、挿入部材131を挿入可能な貫通孔22aが形成される。案内部材132を介して取り付けられたネジ135の先端が、挿入部材131の側面に当接することで、挿入部材131の上下方向の位置が固定される。
【0086】
[異物除去装置の作用]
次に、実施例2の異物除去装置110の作用を説明する。実施例2の異物除去装置110は、ベースプレート21には、ひび割れ部2に挿入可能な可撓性のある挿入部材131を備える(
図13)。
【0087】
これにより、ひび割れ部2の深さ方向に、挿入部材131を挿入して、ひび割れ部2のより深い部分に、流入口E1から吸引口(下方開口25b)へ続く流路を形成することができる。そのため、深さ方向において、異物3の除去量を増やすことができる。
【0088】
なお、他の構成及び作用効果については、上記実施例と略同様であるので説明を省略する。
【0089】
以上、本発明の異物除去装置を実施例1及び実施例2に基づき説明してきた。しかし、具体的な構成については、これらの実施例に限られるものではなく、特許請求の範囲の各請求項に係る発明の要旨を逸脱しない限り、設計の変更や、各実施例の組み合わせや、追加等は許容される。
【0090】
実施例1及び実施例2では、吸引掃除機60を台車50に取り付ける例を示した。しかし、吸引掃除機としては、台車に取り付けられなくてもよい。
【0091】
実施例1及び実施例2では、ベースプレート21を円板状とする例を示した。しかし、ベースプレートとしては、矩形状であってもよいし、多角形状であってもよい。
【0092】
実施例1及び実施例2では、異物除去装置10,110に加振機30を備える例を示した。しかし、異物除去装置は、加振機を備えなくてもよい。
【0093】
実施例1及び実施例2では、ひび割れ部2を一本の線状とする例を示した。しかし、ひび割れ部としては、一本から複数本に分岐する線状のものであってもよい。
【0094】
実施例2では、挿入部材131を1つ設ける例を示した。しかし、挿入部材は、2つ設けてもよい。この場合、一方の挿入部材を、ひび割れ部に挿入可能な位置に移動可能としてもよい。
【0095】
実施例2では、挿入部材131は、ベースプレート21の外縁部に設けられる例を示した。しかし、挿入部材131は、ベースプレートの吸引口(下方開口25b)の周囲に設けることができる。
【0096】
実施例1及び実施例2では、本発明をコンクリート舗装に形成されたひび割れ部に詰まった異物を除去する異物除去装置に適用する例を示した。しかし、本発明は、アスファルト舗装や、タイルや石材等による平板ブロック舗装等に形成されたひび割れ部に詰まった異物を除去する異物除去装置に適用してもよい。
【符号の説明】
【0097】
1 コンクリート舗装(舗装の一例)
2 ひび割れ部
3 異物
10 異物除去装置
21 ベースプレート
25b 下方開口(吸引口の一例)
28 シール材
30 加振機
50 台車
53 ハンドル
60 吸引掃除機
62a 吸引ノズル
131 挿入部材