(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-12
(45)【発行日】2023-07-21
(54)【発明の名称】多層印刷システム、多層印刷方法及びコンピュータソフトウェア
(51)【国際特許分類】
B41J 2/01 20060101AFI20230713BHJP
【FI】
B41J2/01 213
B41J2/01 123
B41J2/01 451
B41J2/01 401
B41J2/01 129
(21)【出願番号】P 2019079142
(22)【出願日】2019-04-18
【審査請求日】2022-03-23
(73)【特許権者】
【識別番号】307015301
【氏名又は名称】武藤工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100067758
【氏名又は名称】西島 綾雄
(72)【発明者】
【氏名】白石 匠
【審査官】中村 博之
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-171325(JP,A)
【文献】特開2015-074204(JP,A)
【文献】特開2003-191601(JP,A)
【文献】特開2006-168107(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01-2/215
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
インク吐出装置のノズルから反応性硬化型インクをメディアに吐出し、メディア上の反応性硬化型インクにインク硬化反応促進装置からインク硬化反応に必要なエネルギーを照射し、メディアとインク吐出装置とを相対移動させ、コントローラの制御によってメディアに多層印刷を行うインクジェットプリンタと、該インクジェットプリンタに接続し、プリンタドライバと多層印刷ソフトを有するコンピュータとで多層印刷システムを構成し、該システムの制御部を、多層印刷データ入力手段、多層印刷データの各エリアごとのインクの積層を解析する多層印刷データ積層解析手段、多層印刷データの隣接するエリア間のインク積層の積層差が所定の大きさか否かを検出するインク積層差検出手段、前記隣接するエリア間のインク積層差が所定の大きさの範囲内となるようにエリア間の積層差の大きさを減少させるエリア間インク積層差減少手段、前記エリア間インク積層差減少手段のデータに基づいて、多層印刷データを修正し、エリア間の積層差が所定の大きさを超えないようにした修正多層印刷データを作成する修正多層印刷データ作成手段として機能させ、
前記インク積層差検出手段は、前記多層印刷データ積層解析手段の解析結果から、隣接するエリア間のインク積層の差が2層分以上あるか否かを確認するようにし、前記エリア間インク積層差減少手段は、隣接するエリア間のインク積層の差が2層分以上ある場合に、隣接するエリア間の積層差が1層差となるように追加修正データを前記修正多層印刷データ作成手段に出力するようにしたことを特徴とする多層印刷システム。
【請求項2】
前記反応性硬化型インクが光硬化型インクであり、インク硬化反応促進装置がインク硬化光線照射装置であり、インク硬化反応促進装置の出力がインク硬化光線であることを特徴とする請求項1に記載の多層印刷システム。
【請求項3】
インク吐出装置のノズルから反応性硬化型インクをメディアに吐出し、メディア上の反応性硬化型インクにインク硬化反応促進装置からインク硬化反応に必要なエネルギーを照射し、メディアとインク吐出装置とを相対移動させ、コントローラの制御によってメディアに多層印刷を行うインクジェットプリンタと、該インクジェットプリンタに接続し、プリンタドライバと多層印刷ソフトを有するコンピュータとで多層印刷システムを構成し、該システムの制御部を、多層印刷データ入力手段、多層印刷データの各エリアごとのインクの積層を解析する多層印刷データ積層解析手段、多層印刷データの隣接するエリア間のインク積層の積層差が所定の大きさか否かを検出するインク積層差検出手段、前記隣接するエリア間のインク積層差が所定の大きさの範囲内となるようにエリア間の積層差の大きさを減少させるエリア間インク積層差減少手段、前記エリア間インク積層差減少手段のデータに基づいて、多層印刷データを修正し、エリア間の積層差が所定の大きさを超えないようにした修正多層印刷データを作成する修正多層印刷データ作成手段として機能させ、前記インク積層差検出手段は、前記多層印刷データの解析結果から、隣接するエリア間のインク積層の差が2層分以上あるか否かを確認するようにし、前記多層印刷データが3層印刷データであり、メディアの表面に印刷データのない状態を0層、メディアの表面に印刷されるインク層を第1層、第1層又はメディア表面に印刷される隠蔽層を第2層、第2層の上のカラーインク層を第3層とし、前記インク積層差検出手段が隣接するエリア間に2積層差を確認したとき、前記エリア間インク積層差減少手段が、3層積層エリアと隣接する対象エリア間の積層差の大きさを減少させるために第1層のインク層の印刷データの回りにクリアインクの印刷を追加し、対象エリアに1層分の印刷データを追加するようにしたことを特徴とする多層印刷システム。
【請求項4】
4層印刷において、前記エリア間インク積層差減少手段は、3層積層エリアと、4層積層エリアの多層エリアと、これら多層エリアに隣接する対象エリアとの間の積層の差が2層以上ある場合に、エリア間の積層差が1積層差となるように対象エリアにクリアインクの印刷データを追加する追加修正データを前記修正多層印刷データ作成手段に出力するようにしたことを特徴とする請求項3に記載の多層印刷システム。
【請求項5】
前記多層印刷データが4層印刷データであり、メディアの表面に印刷データのない状態を0層、メディアの表面に印刷されるインク層を第1層、第1層又はメディア表面に印刷される隠蔽層を第2層、第2層の上のインク層を第3層、第3層の上のクリアインク層を第4層とし、隣接するエリア間の積層の差が2層差の場合、前記エリア間のインク積層差減少手段が、隣接するエリア間が1層差となるように第1層のインク層にクリアインクの印刷を追加し、第1層のインク層の印刷データの回りにクリアインク層が印刷されるようにしたことを特徴とする
請求項4に記載の多層印刷システム。
【請求項6】
前記多層印刷データが4層印刷データであり、メディアの表面に印刷データのない状態を0層、メディアの表面に印刷されるインク層を第1層、第1層又はメディア表面の上に印刷される隠蔽層を第2層、第2層の上のインク層を第3層、第3層の上のクリアインク層を第4層とし、隣接するエリア間の積層の差が3層差の場合、前記インク積層差減少手段が、エリア間積層差の大きさを減少させるために第1層のインク層と第3のインク層にクリアインクの印刷を追加し、第1層と第3層のカラーインク層の印刷データの回りにクリアインク層が印刷されるようにしたことを特徴とする
請求項4に記載の多層印刷システム。
【請求項7】
前記クリアインクの追加の印刷の範囲を可変としたことを特徴とする
請求項3乃至6に記載の多層印刷システム。
【請求項8】
通常の多層印刷機能を付加し、修正多層印刷機能と通常の多層印刷機能を選択的に利用できるようにしたことを特徴とする請求項1に記載の多層印刷システム。
【請求項9】
プリンタドライバと多層印刷ソフトがインストールされたコンピュータを、インクジェットプリンタに接続し、コンピュータによりインクジェットプリンタのコントローラを制御し、メディアに多層印刷を行う多層印刷方法であって、多層印刷データを作成するステップと、多層印刷データの各エリアごとのインクの積層を解析するステップと、
多層印刷データの隣接する対象エリア間のインク層の積層差が2層分以上の大きさか否かを検出するステップと、隣接する対象エリア間のインク層の積層差が2層分以上の場合に対象エリア間の積層差の大きさを1層に減少させるステップと、対象エリア間のインクの積層差が1層を超えないように印刷データを修正し、修正印刷データを作成するステップとを備えたことを特徴とする多層印刷方法。
【請求項10】
前記多層印刷データが3層印刷データであり、メディアの表面に印刷データのない状態を0層、メディアの表面に印刷されるインク層を第1層、第1層又はメディア表面に印刷される隠蔽インク層を第2層、第2層の上のインク層を第3層とし、隣接するエリア間のインク積層の差が2層分あるか否かを検出し、2層分の差がある場合に、第1層のインク層にクリアインク層を追加し、第1層のインク層の印刷データの回りにクリアインク層が印刷されるようにして、隣接するエリア間のインク積層差を1層としたことを特徴とする
請求項9に記載の多層印刷方法。
【請求項11】
前記多層印刷データが4層印刷データであり、メディアの表面に印刷データのない状態を0層、メディアの表面に印刷されるインク層を第1層、第1層又はメディア表面に印刷される隠蔽インク層を第2層、第2層の上のインク層を第3層、第3層の上のクリアインク層を第4層とし、隣接するエリア間のインク積層の差が2層分あるか否かを検出し、2層分の差がある場合に第1層のインク層にクリアインク層を追加し、第1層のインク層の印刷データの回りにクリアインク層が印刷されるようにして、隣接するエリア間のインク積層差を1層としたことを特徴とする
請求項9に記載の多層印刷方法。
【請求項12】
前記多層印刷データが4層印刷データであり、メディアの表面に印刷データのない状態を0層、メディアの表面に印刷されるインク層を第1層、第1層又はメディア表面に印刷される隠蔽インク層を第2層、第2層の上のインク層を第3層、第3層の上のクリアインク層を第4層とし、隣接するエリア間のインク積層の差が3層分あるか否かを検出し、3層分の差が在る場合に、第1層と第3層のインク層にクリア層を追加し、第1層と第3層のインク層の各印刷データの回りにクリアインク層が印刷されるようにして、隣接するエリア間のインク積層差を1層としたことを特徴とする請求項9に記載の多層印刷方法。
【請求項13】
前記クリアインク層の追加の印刷の範囲を可変としたことを特徴とする請求項10乃至12に記載の多層印刷方法。
【請求項14】
インクジェットプリンタを用いてメディアに多層印刷を行うためのコンピュータソフトウェアであって、
多層印刷データを複数のエリアに分割し、各エリアごとのインクの積層の積層数を解析する多層印刷データ積層解析手段、
多層印刷データの隣接するエリア間のインク積層の積層差が2層分以上の大きさか否かを検出するインク積層差検出手段、
隣接するエリア間のインク積層差が2層分以上の場合に、対象エリア間の積層差の大きさを1層に減少させるエリア間インク積層差減少手段、
エリア間インク積層差減少手段のデータに基づいて、多層印刷データを修正し、隣接するエリア間の積層差が1層を超えないよう修正多層印刷データを作成する修正多層印刷データ作成手段として機能させたことを特徴とするコンピュータソフトウェア。
【請求項15】
前記インク積層差検出手段は、前記多層印刷データの解析結果から、隣接するエリア間のインク積層の差が2層分以上あるか否かを確認するようにしたことを特徴とする
請求項14に記載のコンピュータソフトウェア。
【請求項16】
クリアインクによる追加の印刷の範囲を可変としたことを特徴とする請求項14に記載のコンピュータソフトウェア。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、メディア(印刷媒体)にインクを吐出して多層印刷を行う多層印刷システム、多層印刷方法及びコンピュータソフトウェアに関する。
【背景技術】
【0002】
多層印刷として、例えば透明な板に多層印刷を施して、表面、裏面で異なる絵柄、文字等が見えるようにする印刷技術が知られている(例えば特許文献1参照)。
また、ラミネートラベル作成印刷の分野では、メディアにカラーインクが印刷されてないエリアにクリアインク(バーニッシュインクほか)を埋めて盛り上がったインク層の表面と残余のエリアの表面との間に段差が生じないようにした技術が存在する(例えば特許文献2参照)。
また、メディア全体をカラーインクとクリアインクにて覆い印刷を行う技術が存在する(例えば特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2010-76102号公報
【文献】特開2015-74204号公報
【文献】特開2003-191601号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
多層印刷に於ける印刷品質について気になる部分としては、隣り合うエリアの印刷層の積層厚の差に起因する問題点がある。
例えば、カラー印刷層、白インク印刷層(隠蔽層)、カラー印刷層の3層で印刷を行う場合、クリアインクを補完しないで印刷を行う場合には、積層される層の差は最大2層分になる。その場合、下の印刷層との差が1層の差であれば穏やかな差であるため目立たないが、この積層差が2層分以上になると目立ってしまい印刷品質の評価が悪くなるという問題が出る。
また、カラーインクとクリアインクとでメディア全体を覆うように印刷を行う技術も提供されている。この場合、クリアインクはカラーインクの提供されていないメディアの残りの部分に対して使用がされるため、非常に多く使用されることになり消費量が多くなるという問題がある。
本発明は、上記問題点を解決することを目的とするものである。
なお、本発明は紫外線硬化型インクを使用した多層印刷に特に限定されるものではなく、EB(電子線)など電磁波硬化型インクやその他化学反応で硬化するインク等、光、熱、化学反応等で硬化する反応性硬化型インクを用いた多層印刷に適用されるものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するため、本発明は、インク吐出装置のノズルから反応性硬化型インクをメディアに吐出し、メディア上の反応性硬化型インクにインク硬化反応促進装置からインク硬化反応に必要なエネルギーを照射し、メディアとインク吐出装置とを相対移動させ、コントローラの制御によってメディアに多層印刷を行うインクジェットプリンタと、該インクジェットプリンタに接続し、プリンタドライバと多層印刷ソフトを有するコンピュータとで多層印刷システムを構成し、該システムの制御部を、多層印刷データ入力手段、多層印刷データの各エリアごとのインクの積層を解析する多層印刷データ積層解析手段、多層印刷データの隣接するエリア間のインク積層の積層差が所定の大きさか否かを検出するインク積層差検出手段、前記隣接するエリア間のインク積層差が所定の大きさの範囲内となるようにエリア間の積層差の大きさを減少させるエリア間インク積層差減少手段、前記エリア間インク積層差減少手段のデータに基づいて、多層印刷データを修正し、エリア間の積層差が所定の大きさを超えないようにした修正多層印刷データを作成する修正多層印刷データ作成手段として機能させ、前記インク積層差検出手段は、前記多層印刷データ積層解析手段の解析結果から、隣接するエリア間のインク積層の差が2層分以上あるか否かを確認するようにし、前記エリア間インク積層差減少手段は、隣接するエリア間のインク積層の差が2層分以上ある場合に、隣接するエリア間の積層差が1層差となるように追加修正データを前記修正多層印刷データ作成手段に出力するようにしたことを特徴とする。
また本発明は、前記反応性硬化型インクが光硬化型インクであり、インク硬化反応促進装置がインク硬化光線照射装置であり、インク硬化反応促進装置の出力がインク硬化光線であることを特徴とする。
また本発明は、インク吐出装置のノズルから反応性硬化型インクをメディアに吐出し、メディア上の反応性硬化型インクにインク硬化反応促進装置からインク硬化反応に必要なエネルギーを照射し、メディアとインク吐出装置とを相対移動させ、コントローラの制御によってメディアに多層印刷を行うインクジェットプリンタと、該インクジェットプリンタに接続し、プリンタドライバと多層印刷ソフトを有するコンピュータとで多層印刷システムを構成し、該システムの制御部を、多層印刷データ入力手段、多層印刷データの各エリアごとのインクの積層を解析する多層印刷データ積層解析手段、多層印刷データの隣接するエリア間のインク積層の積層差が所定の大きさか否かを検出するインク積層差検出手段、前記隣接するエリア間のインク積層差が所定の大きさの範囲内となるようにエリア間の積層差の大きさを減少させるエリア間インク積層差減少手段、前記エリア間インク積層差減少手段のデータに基づいて、多層印刷データを修正し、エリア間の積層差が所定の大きさを超えないようにした修正多層印刷データを作成する修正多層印刷データ作成手段として機能させ、前記インク積層差検出手段は、前記多層印刷データの解析結果から、隣接するエリア間のインク積層の差が2層分以上あるか否かを確認するようにし、前記多層印刷データが3層印刷データであり、メディアの表面に印刷データのない状態を0層、メディアの表面に印刷されるインク層を第1層、第1層又はメディア表面に印刷される隠蔽層を第2層、第2層の上のカラーインク層を第3層とし、前記インク積層差検出手段が隣接するエリア間に2積層差を確認したとき、前記エリア間インク積層差減少手段が、3層積層エリアと隣接する対象エリア間の積層差の大きさを減少させるために第1層のインク層の印刷データの回りにクリアインクの印刷を追加し、対象エリアに1層分の印刷データを追加するようにしたことを特徴とする。
また本発明は、4層印刷において、前記エリア間インク積層差減少手段は、3層積層エリアと、4層積層エリアの多層エリアと、これら多層エリアに隣接する対象エリアとの間の積層の差が2層以上ある場合に、エリア間の積層差が1積層差となるように対象エリアにクリアインクの印刷データを追加する追加修正データを前記修正多層印刷データ作成手段に出力するようにしたことを特徴とする。
また本発明は、前記多層印刷データが4層印刷データであり、メディアの表面に印刷データのない状態を0層、メディアの表面に印刷されるインク層を第1層、第1層又はメディア表面に印刷される隠蔽層を第2層、第2層の上のインク層を第3層、第3層の上のクリアインク層を第4層とし、隣接するエリア間の積層の差が2層差の場合、前記エリア間のインク積層差減少手段が、隣接するエリア間が1層差となるように第1層のインク層にクリアインクの印刷を追加し、第1層のインク層の印刷データの回りにクリアインク層が印刷されるようにしたことを特徴とする。
また本発明は、前記多層印刷データが4層印刷データであり、メディアの表面に印刷データのない状態を0層、メディアの表面に印刷されるインク層を第1層、第1層又はメディア表面の上に印刷される隠蔽層を第2層、第2層の上のインク層を第3層、第3層の上のクリアインク層を第4層とし、隣接するエリア間の積層の差が3層差の場合、前記インク積層差減少手段が、エリア間積層差の大きさを減少させるために第1層のインク層と第3のインク層にクリアインクの印刷を追加し、第1層と第3層のカラーインク層の印刷データの回りにクリアインク層が印刷されるようにしたことを特徴とする。
また本発明は、前記クリアインクの追加の印刷の範囲を可変としたことを特徴とする。
また本発明は、通常の多層印刷機能を付加し、修正多層印刷機能と通常の多層印刷機能を選択的に利用できるようにしたことを特徴とする。
また本発明は、プリンタドライバと多層印刷ソフトがインストールされたコンピュータを、インクジェットプリンタに接続し、コンピュータによりインクジェットプリンタのコントローラを制御し、メディアに多層印刷を行う多層印刷方法であって、多層印刷データを作成するステップと、多層印刷データの各エリアごとのインクの積層を解析するステップと、多層印刷データの隣接する対象エリア間のインク層の積層差が2層分以上の大きさか否かを検出するステップと、隣接する対象エリア間のインク層の積層差が2層分以上の場合に対象エリア間の積層差の大きさを1層に減少させるステップと、対象エリア間のインクの積層差が1層を超えないように印刷データを修正し、修正印刷データを作成するステップとを備えたことを特徴とする。
また本発明は、前記多層印刷データが3層印刷データであり、メディアの表面に印刷データのない状態を0層、メディアの表面に印刷されるインク層を第1層、第1層又はメディア表面に印刷される隠蔽インク層を第2層、第2層の上のインク層を第3層とし、隣接するエリア間のインク積層の差が2層分あるか否かを検出し、2層分の差がある場合に、第1層のインク層にクリアインク層を追加し、第1層のインク層の印刷データの回りにクリアインク層が印刷されるようにして、隣接するエリア間のインク積層差を1層としたことを特徴とする。
また本発明は、前記多層印刷データが4層印刷データであり、メディアの表面に印刷データのない状態を0層、メディアの表面に印刷されるインク層を第1層、第1層又はメディア表面に印刷される隠蔽インク層を第2層、第2層の上のインク層を第3層、第3層の上のクリアインク層を第4層とし、隣接するエリア間のインク積層の差が2層分あるか否かを検出し、2層分の差がある場合に第1層のインク層にクリアインク層を追加し、第1層のインク層の印刷データの回りにクリアインク層が印刷されるようにして、隣接するエリア間のインク積層差を1層としたことを特徴とする。
また本発明は、前記多層印刷データが4層印刷データであり、メディアの表面に印刷データのない状態を0層、メディアの表面に印刷されるインク層を第1層、第1層又はメディア表面に印刷される隠蔽インク層を第2層、第2層の上のインク層を第3層、第3層の上のクリアインク層を第4層とし、隣接するエリア間のインク積層の差が3層分あるか否かを検出し、3層分の差が在る場合に、第1層と第3層のインク層にクリア層を追加し、第1層と第3層のインク層の各印刷データの回りにクリアインク層が印刷されるようにして、隣接するエリア間のインク積層差を1層としたことを特徴とする。
また本発明は、インクジェットプリンタを用いてメディアに多層印刷を行うためのコンピュータソフトウェアであって、
多層印刷データを複数のエリアに分割し、各エリアごとのインクの積層の積層数を解析する多層印刷データ積層解析手段、多層印刷データの隣接するエリア間のインク積層の積層差が2層分以上の大きさか否かを検出するインク積層差検出手段、
隣接するエリア間のインク積層差が2層分以上の場合に、対象エリア間の積層差の大きさを1層に減少させるエリア間インク積層差減少手段、
エリア間インク積層差減少手段のデータに基づいて、多層印刷データを修正し、隣接するエリア間の積層差が1層を超えないよう修正多層印刷データを作成する修正多層印刷データ作成手段として機能させたことを特徴とする。
また本発明は、前記インク積層差検出手段は、前記多層印刷データの解析結果から、隣接するエリア間のインク積層の差が2層分以上あるか否かを確認するようにしたことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0006】
本件の方法を用いることにより、非印刷領域に使用されるクリアインクの量を減らすことができるようになり、また隣接する印刷領域の積層差を少なくできるため、積層印刷での印刷品質を良くすることができる。
また、クリアインクを追加する領域を可変に設定することにより、印刷データ(印刷範囲)に対し、適切な範囲の設定を施すことができるため、使用者が所望の積層印刷を行うこともできるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】本発明の実施形態を示すフローチャート説明図である。
【
図8】本発明の他の実施形態を示すフローチャート説明図である。
【
図12】多層印刷システムのブロック説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下に本発明の構成を添付した図面を参照して詳細に説明する。
図11,12図に示すように、本発明に係る多層印刷システム2は、紫外線硬化型インク(UVインク)を用いたインクジェットプリンタ4と、これに接続するパソコンなどのコンピュータ6とからなり、コンピュータ6の記憶装置には、プリンタ4を駆動するためのプリンタドライバ8と、メディア10に多層印刷を行うための多層印刷ソフト12がインストールされている。
【0009】
キーホルダーなどの基板に使用される透明な板から成るメディア10は、メディアホルダー14を介して、プリンタ4のテーブル16上に1枚又は、複数枚(図示省略)セットされる。メディア10に対する多層印刷は、副走査駆動部18の制御により、横レール20が一方向(副走査方向)に、設定された搬送単位で送られる。一方このレール20に沿って、主走査駆動部22の制御により、インクジェット記録ヘッド24と紫外線照射装置26を備えたヘッドキャリッジ(図示省略)が前記横レール20の搬送方向とは直角な主走査方向に移動して行われる。なお、本件に使用されるインクジェットプリンタの構造は、印刷が行えるものであれば良く、搬送テーブルが移動する方式を用いても良い。
【0010】
前記ヘッドキャリッジが主走査方向に移動するとき、記録ヘッド駆動部28の制御により記録ヘッド24のノズルからUVインクが吐出され、コンピュータ6からインクジェットプリンタ4のコントローラに転送される修正された多層印刷データが、多層印刷ソフト12の制御により、メディア10に印刷される。メディア10上のUVインクは、コントローラの制御により、紫外線照射装置26から紫外線が照射されて、メディア10上のUVインクの硬化が行われる。尚、照明装置26、記録ヘッド24の前後方向には、外からの光が内部に入らないようにカバー(図示省略)が設けられており、ヘッド下面のインクなどに光が当たり硬化するのを防ぐようにしている。
【0011】
図4は、本発明に使用される多層印刷ソフト12のアルゴリズムの説明図である。
透明な板から成るメディア10の表面に通常の多層印刷ソフトで、
図4Aに示すように、絵柄Bが描かれたカラーインク層(1層)と、全面膜状の白インク隠蔽層(2層)と絵柄Aが描かれたカラーインク層(3層)の多層印刷を行った場合、
図4Bに示すように、場所により、2層分の段差が生じ、最終的なインク層の厚みはバラバラとなり、計算外の凹凸により完成品の外観の劣化が生じる。
【0012】
本発明は、その解決手法1として、
図4Cに示すように、下層印刷時に、カラーインクによる印字データの印刷と同時に印字データの回りのエリアに色材を含まない透明なクリアインク(バーニッシュインクほか)を印刷する。なお本発明で透明なクリアインクと記載しているものはワニス、ニス、グロス、バニッシュ、バーニッシュなどと言われる主に印刷物の表面を保護又は印刷物の光沢を制御するために用いられる透明または半透明なインクを言うものであり、限定をしているものではない。下層印刷時にクリアインクの同時印刷を施すことにより、凹凸部分の積層差が小さくなる。これにより、本発明の主たる目的は達成されるが、
図4C、
図6Bに示すように、積層差の小さい部分G1も、積層差が補正され、クリアインクの消費量が大きくなってしまう。
【0013】
解決手法2は、この点を改善するためのものであり、印刷領域内の積層差が大きい部分G2のみ、下層にクリアインクでの印刷を行い、積層差を低減する。
図5は、解決手法2の印刷原理を示している。メディア10に施された多層印刷の凹凸の積層差大の部分G3から一定の範囲内で下記判定を行う。
部分G3に最上層レイヤーから2層分以上の積層差があるか。Yesの場合、部分G3のカラーインク層F1にクリアインク印刷データを追加し、部分G3のカラーインク層F1の印刷データの回りにクリアインクでの印刷を行う。
【0014】
図7B、Cに示すように多層印刷ソフト12のプログラムにより、クリアインク領域を設定A、設定Bのように可変にすることが可能であり、クリアインクの節約ができ、使用されるインクのランニングコストの低減に寄与できる。
図4Dは、ギャップ大の部分のみ、所定設定範囲でクリアインクの印刷を行い、隣接するエリアの2層の積層差を1層に減少させた解決手法2を示している。
【0015】
次に、本発明の構成を
図1に示すフローチャートを参照して説明する。
まず、コンピュータに作成した多層印刷データD1(
図2参照)をインストールする(ステップS1)。次に、コンピュータは、多層印刷データD1の積層を解析する(ステップ2)。多層印刷データD1は、全体エリアが
図7Aに示すように、ます目状に分割され各部分エリアは、
図2に示すように0層、1層、2層、3層の積層構造に区別される。
【0016】
0層は、メディア層の上に印刷データのない状態である。
3層印刷データD1は、メディア層の表面に印刷されるカラーインク層から成る第1層と、第1層の上の白インク層から成る第2層と、第2層の上のカラーインク層から成る第3層とで構成される。
次に、コンピュータは、
図7Aに示す積層データを参照して3層積層エリア(多層エリア)E1とそれに隣接する対象エリアを選択する(ステップS3)。
次に、コンピュータは、選択したエリア間に2層差があるか否かを判断する(ステップS4)。
【0017】
コンピュータは、否定を判断すると、データ修正なしを判断する(ステップS5)。肯定を判断すると、2層差のある対象エリアに印刷データがあるか否か判断し(ステップS7)、
図2の0層の状態の場合には、印刷データなしを判断し、データ修正なしを判断する(ステップS5)。コンピュータは、判断ステップS7で肯定を判断すると、3層の多層エリアE1の第1層のカラーインク層F1(
図3参照)にクリアインク層C1(
図3,6参照)を追加し、これにより第1層のカラーインク層F1の印刷データM1の回りSS1にクリアインク層が形成されるようにする。
【0018】
これにより、多層エリアE1に隣接する対象エリアに1層分のクリアインクからなる印刷データC1が
図3C,Dに示すように、カラーインク層F1の印刷データM1の回りSS1に追加され(ステップ8)、多層印刷データD2を作成する(ステップS9)。修正多層印刷データD2は、追加データC1のエリア(適用させる範囲)を可変にできるように設定されている。
図7B,Cに設定Aと設定Bで示すように各種の設定を選択して使用することができるようにすることで、用途に合わせた最適な設定を選択し、追加データC1のエリアを変更して印刷を行うことができるように構成されている。
【0019】
図7B,Cに示す設定AとBのように、設定を可変とする方式は、1層のエリア全てにクリアインクを印刷する
図4Cの解決手法1の方式に比し、クリアインクの消費が抑制されるが、本発明は、
図4Cに示す方式を排除するものではなく、下層印刷時にクリアインクの同時印刷を施すことで、2層以上の積層差を解消するようにしても良い。
【0020】
上記のように、コンピュータは、印刷データのステップS2で印刷データの解析を行い、隣接するエリア間でインク層の差が2層分以上あるかを確認し、ある場合には、最下層のカラーインク層の印刷時に、最下層となるカラーインク層F1の印刷データM1の回りSS1に、クリアインク(バーニッシュインクほか)の印刷を行う。そうすることにより、2層差分の差があるエリアが無くなり、印刷品質が改善する。
【0021】
また最下層のカラーインクの印刷データの回りにクリアインクのデータを追加することができる領域を可変にできるように設定して、それを選択して使用することができるようにすることで、用途に合わせた最適な設定を選択し印刷を行うことが可能にもなる。
尚、本システム2は、上記機能を使用しない通常での多層印刷機能も設けておき、必要に応じて選択できるようにしても良い。
【0022】
次に、
図8のフローチャートを参照して4層印刷を行う場合について説明する。
まず、コンピュータに、ソフトを用いて作成した多層印刷データをインストールする(ステップS1)。次に、コンピュータは、この多層印刷データに基づいて、この印刷データの全体をます目状に区画し、各区画エリアごとに積層の数のデータを記録し、
図7Aに示すように積層テーブルを作成する。
【0023】
図9は、4層印刷における本発明の説明図であり、積層数に対応する印刷データのレイヤー構造を示している。4層印刷では、メディア10上に印刷データの無い状態を0層とし、メディア10表面に印刷されるカラーインク層を第1層、第1層又はメディア表面に印刷される白インクなどの隠蔽層を第2層、第2層の上に印刷されるカラーインク層を第3層、第3層の上のクリアインク層を第4層とするレイヤー構成となっている。
【0024】
本実施形態では、メディア10の表と裏で異なる絵柄を見せることができる印刷を行うため、隠蔽層である白インク(第2層)無しのエリアの層は0層となっている。第1層のカラーインク層のみの場合は裏から第一層のカラーインク層を見ることができる。1層構造になる場合としては、メディア10の表面に白インクの第2層が印刷される場合と、カラーインクの第1層が印刷される場合と、クリアインクの第4層が印刷される場合の3種類がある。
【0025】
2層構造になる場合としては、メディア10の表面に、第2層と第3層が積層して印刷される場合と、第1層と第2層が積層して印刷される場合の2種類がある。
3層構造になる場合としては、メディア10の表面に第1層と第2層と第3層とが積層して印刷される。また
図10のように第1層が空白で、メディア10の表面に上から、第4層、第3層、第2層の順で積層される場合がある。
【0026】
4層構造になる場合としては、メディア10の表面に、1層、2層、3層、4層が積層して印刷される。 コンピュータは、作成した4層印刷データの積層テーブルに基づいて多層印刷データの各エリアの積層を解析する(ステップS2)。次に、コンピュータは、3層エリアの隣接エリアと4層エリアの隣接エリアを選択する(ステップS3)。次に、コンピュータは、選択したエリア間の層差に2層差以上の差があるか否か判断する(ステップS4)。否定を判断した場合は、データ修正無しを判断する(ステップS5)。
【0027】
コンピュータは、隣接するエリアの印刷データの確認を行い(ステップS6)、隣接エリアに印刷データがあるか否か判断する(ステップS7)。隣接エリアが0層であり、印刷データ無しの場合は、否定を判断し、データ修正無しを判断する(ステップS5)。判断ステップS7で肯定を判断した場合には、コンピュータは、隣接エリアのカラーインク層に、エリア間の積層差が1層差となるように印刷データを追加する(ステップS8)。選択したエリア間の積層差が2層差の場合、
図9に示すように、クリアインクにより、追加データC2を第1層のカラーインク層F1に1層追加する。追加データの優先順位は、第1層と第3層の順である。
【0028】
ここで第3層が追加データとして優先される場合は、
図9中、3層のエリアaに、1層のカラーインク層のエリアbが隣接する場合であり、この場合、1層のエリアbは、カラーインク層の上にクリアインク層が追加されて2層となり、両エリアの積層差は1となる。このケースでエリアaの1層のカラーインク層にクリアインク層が追加されると、エリアbの層は、カラーインク1層なので、クリアインク層は印刷されず、1層のままとなってしまう。
【0029】
即ち、カラーインク層に追加されるクリアインク層は、カラーインク層の印刷データ(絵や文字)の回りに印刷されるもので、印刷データには重ねて印刷されるものではないからである。
図10は、4層印刷において、3層エリアの最上位がクリアインク(第4層)の場合の処理を説明している。3層エリアとこれに隣接するエリアとの積層差が2層差ある場合、第3層のカラーインク層F2にクリアインクの追加データC4が追加される。これにより、隣接する1層エリアに追加データが追加され2層となり、3層エリアと積層差が1となる。 選択したエリア間の積層差が3層差の場合、
図9に示すように、クリアインクにより、追加データC2,C3を第1と第3のインク層に追加し(ステップS8)、修正多層印刷データを作成する(ステップ9)。
【0030】
尚、追加データとしては、2層以下になるように制御し、
図9に示すように追加データC2,C3が複数重なる場所においても追加層分はC2,C3の2層として参照する対象より高くならないようにする。 上記実施形態は、透明な板に多層の印刷を施して表面、裏面で異なる絵柄、文字等を印刷する多層印刷について説明したが、本発明は、特に図示する多層印刷に限定されるものではない。他の用途の多層印刷にも適用することが可能である。
また、本件の実施例においては、透明な板状の小さなメディア10を対象として説明を行っているが、印刷対象となるメディアは何でも良く、例えば通常の透明な板状のメディアやロール状のメディアなど、インクジェットプリンタにて印刷できるものであれば何でもよい。
【符号の説明】
【0031】
2 多層印刷システム
4 インクジェットプリンタ
6 コンピュータ
8 プリンタドライバ
10 メディア
12 多層印刷ソフト
14 メディアホルダー
16 テーブル
18 副走査駆動部
20 横レール
22 主走査駆動部
24 記録ヘッド
26 紫外線照射装置
28 記録ヘッド駆動部