(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-12
(45)【発行日】2023-07-21
(54)【発明の名称】火災防護対象ケーブルの耐火構造、原子力設備の床下構造、及び原子力設備の床下構造の施工方法
(51)【国際特許分類】
G21C 13/00 20060101AFI20230713BHJP
H02G 3/38 20060101ALI20230713BHJP
A62C 2/00 20060101ALN20230713BHJP
【FI】
G21C13/00 759
H02G3/38 030
A62C2/00 X
(21)【出願番号】P 2019082224
(22)【出願日】2019-04-23
【審査請求日】2022-02-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】江口 康隆
(72)【発明者】
【氏名】田辺 健一
(72)【発明者】
【氏名】福山 俊彦
【審査官】小林 幹
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-171176(JP,A)
【文献】特開2008-014654(JP,A)
【文献】中国実用新案第204275343(CN,U)
【文献】特開2017-133922(JP,A)
【文献】特開平08-163754(JP,A)
【文献】実開平01-096728(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G21C 11/00-13/10
G21C 17/00-17/14
H02G 3/38- 3/40
A62C 2/00ー 2/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
原子力設備の第1床と前記第1床の上方に設けられる第2床との間に設けられる火災防護対象ケーブルを覆い、
前記火災防護対象ケーブルを、別の系統の火災防護対象ケーブルから分離する耐火物を含み、
前記耐火物は、前記火災防護対象ケーブルを配置するための溝状の空間が形成される
複数の第1耐火物と、前記空間を覆う第2耐火物と、を含み、
それぞれの前記第1耐火物のうちの、少なくとも一部の前記第1耐火物同士は、前記空間の形状が異なる、
火災防護対象ケーブルの耐火構造。
【請求項2】
前記火災防護対象ケーブルを別の系統の火災防護対象ケーブルと区分けする収納部を含み、
前記耐火物は、前記収納部を覆う、請求項1に記載の火災防護対象ケーブルの耐火構造。
【請求項3】
前記耐火物は、前記第1床よりも比重が小さい部材で構成される、請求項1又は請求項2に記載の火災防護対象ケーブルの耐火構造。
【請求項4】
前記耐火物の内部であって、前記火災防護対象ケーブルが設置される空間に、火災検知器と消火設備との少なくとも1つが設けられる、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の火災防護対象ケーブルの耐火構造。
【請求項5】
原子力設備の第1床と、
前記第1床の上方に設けられる第2床と、
前記第1床と前記第2床との間に設けられる、複数の系統の火災防護対象ケーブルと、
前記火災防護対象ケーブルを覆い、前記火災防護対象ケーブルを別の系統の前記火災防護対象ケーブルから分離する耐火物を含む耐火構造と、
を含み、
前記耐火物は、前記火災防護対象ケーブルを配置するための溝状の空間が形成される
複数の第1耐火物と、前記空間を覆う第2耐火物と、を含み、
それぞれの前記第1耐火物のうちの、少なくとも一部の前記第1耐火物同士は、前記空間の形状が異なる、
原子力設備の床下構造。
【請求項6】
さらに、前記第1床と前記第2床との間に所定の間隔をおいて点在するように設けられて、前記第2床を支持する複数の柱部材を含む、請求項5に記載の原子力設備の床下構造。
【請求項7】
原子力設備の第1床と、前記第1床の上方に設けられる第2床とを含む原子力設備の床下構造の施工方法であって、
前記第1床と前記第2床との間に複数の系統の火災防護対象ケーブルを設置するケーブル設置ステップと、
前記火災防護対象ケーブルを耐火物で覆うことで、前記火災防護対象ケーブルを別の系統の前記火災防護対象ケーブルから分離する耐火物設置ステップと、
を含み、
前記耐火物は、前記火災防護対象ケーブルを配置するための溝状の空間が形成される
複数の第1耐火物と、前記空間を覆う第2耐火物と、を含み、
それぞれの前記第1耐火物のうちの、少なくとも一部の前記第1耐火物同士は、前記空間の形状が異なる、
原子力設備の床下構造の施工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、火災防護対象ケーブルの耐火構造、原子力設備の床下構造、及び原子力設備の床下構造の施工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
原子力設備の安全系設備は、単一故障を想定しても機能が維持されるよう、多重化された構成となっている。多重化された設備は、系統に分け、各系統を分離して配置するよう設計されている。また、機器に接続するケーブルも、系統ごとに分離して配設される。例えば特許文献1に示すように、このような原子力設備のケーブルは、原子力設備の床下に設けられる場合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【0004】
ここで、万が一原子力設備に火災が生じた場合、全ての系統のケーブルにまで火災が広がると、全体の機能が喪失するおそれが生じる。従って、1つの系統のケーブルにおける火災が他の系統のケーブルにまで及ぶことを抑制することが求められている。
【0005】
本発明は、上述した課題を解決するものであり、1つの系統のケーブルにおける火災が他の系統のケーブルにまで及ぶことを抑制することが可能な火災防護対象ケーブルの耐火構造、原子力設備の床下構造、及び原子力設備の床下構造の施工方法を提供することを目的とする。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本開示に係る火災防護対象ケーブルの耐火構造は、原子力設備の第1床と前記第1床の上方に設けられる第2床との間に設けられる火災防護対象ケーブルを覆い、前記火災防護対象ケーブルを、別の系統の火災防護対象ケーブルから分離する耐火物を含む。
【0007】
この火災防護対象ケーブルの耐火構造によると、火災防護対象ケーブルを覆って、互いに系統が異なる火災防護対象ケーブル同士を分離するため、1つの系統の火災防護対象ケーブルにおける火災が他の系統の火災防護対象ケーブルにまで及ぶことを、適切に抑制することができる。
【0008】
前記火災防護対象ケーブルを別の系統の火災防護対象ケーブルと区分けする収納部を含み、前記耐火物は、前記収納部を覆うことが好ましい。収納部を設けることで、火災防護対象ケーブルに対する防火性能を向上させたり、耐火構造の耐震性を高くしたりすることができる。
【0009】
前記耐火物は、前記第1床よりも比重が小さい部材で構成されることが好ましい。この耐火構造によると、火災防護対象ケーブル28のレイアウト変更を好適に行うことができる。
【0010】
前記耐火物は、前記火災防護対象ケーブルを配置するための空間が形成される第1耐火物と、前記空間を覆う第2耐火物と、を含むことが好ましい。この耐火構造によると、火災防護対象ケーブルの配置を容易に行う事が可能となる。
【0011】
前記耐火物の内部であって、前記火災防護対象ケーブルが設置される空間に、火災検知器と消火設備との少なくとも1つが設けられることが好ましい。このように火災検知器と消火設備との少なくとも1つを設けることで、例え火災が起きた場合にも、火災の検知や消火を行う事が可能となり、被害の拡大を抑えることができる。
【0012】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本開示に係る原子力設備の床下構造は、原子力設備の第1床と、前記第1床の上方に設けられる第2床と、前記第1床と前記第2床との間に設けられる、複数の系統の火災防護対象ケーブルと、前記火災防護対象ケーブルを覆い、前記火災防護対象ケーブルを別の系統の前記火災防護対象ケーブルから分離する耐火物を含む耐火構造と、を含む。
【0013】
さらに、前記第1床と前記第2床との間に所定の間隔をおいて点在するように設けられて、前記第2床を支持する複数の柱部材を含むことが好ましい。このように柱部材を設けることで、第2床の強度を保つことが可能となる。
【0014】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本開示に係る原子力設備の床下構造の施工方法は、原子力設備の第1床と、前記第1床の上方に設けられる第2床とを含む原子力設備の床下構造の施工方法であって、前記第1床と前記第2床との間に複数の系統の火災防護対象ケーブルを設置するケーブル設置ステップと、前記火災防護対象ケーブルを耐火物で覆うことで、前記火災防護対象ケーブルを別の系統の前記火災防護対象ケーブルから分離する耐火物設置ステップと、を含む。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、1つの系統のケーブルにおける火災が他の系統のケーブルにまで及ぶことを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】
図1は、第1実施形態に係る原子力設備の床下構造の模式図である。
【
図2】
図2は、第1実施形態に係る原子力設備の床下構造の模式図である。
【
図3】
図3は、第1実施形態に係る床下構造の施工方法の例を説明する模式図である。
【
図4】
図4は、第2実施形態に係る原子力設備の床下構造の模式図である。
【
図5】
図5は、第2実施形態に係る第1耐火物の模式図である。
【
図6】
図6は、第2実施形態に係る床下構造の施工方法の例を説明する模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に添付図面を参照して、本発明の好適な実施形態を詳細に説明する。なお、この実施形態により本発明が限定されるものではなく、また、実施形態が複数ある場合には、各実施形態を組み合わせて構成するものも含むものである。
【0018】
(第1実施形態)
最初に、第1実施形態について説明する。
図1は、第1実施形態に係る原子力設備の床下構造の模式図である。
図1に示すように、第1実施形態に係る原子力設備1は、原子力発電プラントであり、中央制御室10を備えている。中央制御室10は、原子力設備1の制御を行うための部屋であり、床下構造14上に、制御システム12が設けられている。制御システム12は、例えば原子力設備1を制御するための制御盤や、原子力設備1の状態を示す計器盤などを含む。なお、本実施形態に係る床下構造14は、中央制御室10の床下構造であることに限られず、原子力設備1に設けられる任意の設備の床下構造であってよい。
【0019】
床下構造14は、第1床20と、第2床22と、柱部材24と、耐火構造26と、火災防護対象ケーブル28とを備える。第1床20は、原子力設備1、ここでは中央制御室10の床である。第1床20は、耐火性能を有する部材で構成されており、本実施形態では、コンクリート製である。ただし、第1床20の材質は、コンクリートに限られない。以下、第1床20の表面に平行な一方向を方向Xとし、第1床20の表面に平行な一方向であって方向Xに交差する方向を、方向Yとする。本実施形態では、方向Yは、方向Xに直交する方向である。また、第1床20の表面に直交する方向、すなわち方向X及び方向Yに直交する方向を、方向Zとする。すなわち、方向Zは、鉛直方向である。また、以下、方向Zにおける上方側とは、鉛直方向における上方向側、すなわち地表から離れる方向を指し、方向Zにおける下方側とは、鉛直方向における下方向側、すなわち地表に近づく方向を指す。
【0020】
第2床22は、第1床20の方向Zにおける上方側に設けられる。第2床22は、方向Zにおける上方側から見て、第1床20の全域に重畳するように、すなわち第1床20を覆うように、設けられている。第2床22は、原子力設備1、ここでは中央制御室10の床である。第2床22の方向Zにおける上方側の表面22Aに、制御システム12が設けられる。すなわち、制御システム12などの作業者が操作する機器は、第2床22上に設けられる。第2床22は、耐火性能を有する部材で構成されており、本実施形態では、ケイ酸カルシウム製である。ただし、第1床20の材質は、ケイ酸カルシウムに限られない。
【0021】
また、第2床22は、方向Zにおいて第1床20と接触しておらず、第1床20から離れて設けられている。従って、第1床20と第2床22との間には、空間S0が形成されている。
【0022】
柱部材24は、第1床20と第2床22との間の空間S0に設けられる。柱部材24は、方向Zにおける長さが方向X及び方向Yにおける長さよりも長い柱状の部材である。柱部材24は、方向Zにおける下方側の端部が第1床20の表面20Aに接続され、方向Zにおける上方側の端部が第2床22の下方側の表面22Bに接続されることで、第2床22を支持している。柱部材24は、耐火性能を有する部材で構成されており、本実施形態では、コンクリート製である。ただし、柱部材24の材質は、コンクリートに限られない。
【0023】
図2は、第1実施形態に係る原子力設備の床下構造の模式図である。
図2は、第1床20が設けられない状態で方向Zにおける上方側から床下構造14を見た場合の図である。
図1及び
図2に示すように、柱部材24は、複数設けられる。柱部材24は、方向X及び方向Yにおいて、所定の間隔をおいて点在するように設けられる。また、火災防護対象ケーブル28は、実際には後述の収納部30及び耐火物32内に設けられているが、
図2では、説明の便宜上、収納部30及び耐火物32内における火災防護対象ケーブル28が見えた図としている。
【0024】
このように、床下構造14は、第1床20と第2床22との二重床構造となっており、第2床22が柱部材24に支持されている。また、床下構造14は、第1床20と第2床22との間の空間S0に、火災防護対象ケーブル28が設けられる。火災防護対象ケーブル28は、原子力設備1の機器(例えば安全系設備)に接続されるケーブルであり、例えば制御システム12に接続されるケーブルである。本実施形態において、原子力設備1の機器(例えば制御システム12)は、互いに同じ機能を備える複数の機器を有し、それぞれの機器が、互いに異なる系統で個別に制御される。また、それぞれの機器には、個別に火災防護対象ケーブル28(配線)が接続されている。従って、空間S0に設けられる火災防護対象ケーブル28は、系統ごとに設けられているといえる。
【0025】
ここで、万が一原子力設備に火災が生じた場合、全ての系統の火災防護対象ケーブル28にまで火災が広がると、全体の機能が喪失するおそれが生じる。従って、1つの系統の火災防護対象ケーブル28における火災が他の系統の火災防護対象ケーブル28にまで及ぶことを抑制することが求められている。そのため、例えば「実用発電用原子炉及びその附属施設の火災防護に係る審査基準」に規定されるように、異なる系統同士の安全系設備のケーブルは、互いの系統間が1時間の耐火能力を有する隔壁等で分離され、かつ火災検知設備及び自動消火設備を設ける旨、または、火災区域において、3時間の耐火能力を有する耐火壁によって他の火災区域から分離される旨、などを満たすことが望まれている。本実施形態に係る床下構造14は、隔壁や耐火壁として耐火構造26を設けることで、火災防護対象ケーブル28を他の系統の火災防護対象ケーブル28から分離して、火災防護対象ケーブル28が設けられた区域における火災が、他の系統の火災防護対象ケーブル28が設けられた区域に及ぶことを抑制している。以下、耐火構造26について説明する。
【0026】
図1に示すように、耐火構造26は、第1床20と第2床22との間の空間S0に配置される。耐火構造26は、収納部30と耐火物32とを備える。収納部30は、内部に火災防護対象ケーブル28を収納する容器(トレイ)である。収納部30は、本体部40と蓋部42とを備える。本体部40は、中空の容器であり、方向Zにおける上方側の面が開放されている。蓋部42は、本体部40の蓋であり、本体部40の方向Zにおける上方側の開放された領域を覆う。蓋部42は、本体部40に対し開閉可能、または本体部40から取り外し可能に構成されており、本体部40の方向Zにおける上方側の開放された領域を覆う状態と、その領域を解放する状態とを、切り替え可能である。収納部30は、本体部40内に火災防護対象ケーブル28を収納した状態で蓋部42が閉じられて、本体部40内の火災防護対象ケーブル28を、本体部40の外部から隔離する。
【0027】
収納部30は、火災防護対象ケーブル28毎に設けられている。すなわち、異なる系統の火災防護対象ケーブル28は、異なる収納部30に収納されている。言い換えれば、収納部30は、異なる系統の火災防護対象ケーブル28同士を、区分けしている。なお、収納部30は、例えば鉄製であるが、収納部30の材質は鉄に限られず任意である。
【0028】
なお、
図1及び
図2の例では、収納部30及び収納部30内の火災防護対象ケーブル28が、方向Yに沿って延在し、複数の収納部30及び火災防護対象ケーブル28が、方向Xに並んでいる。収納部30は、それぞれの火災防護対象ケーブル28が第1床20の表面に沿った方向に並ぶように設けられていることが好ましいが、収納部30及び収納部30内の火災防護対象ケーブル28の延在方向と並ぶ方向とは、任意であってよい。
【0029】
また、
図1に示すように、収納部30内には、火災検知器50と消火設備52とが設けられる。火災検知器50と消火設備52とは、それぞれの収納部30内に設けられる。火災検知器50は、収納部30内で火災が発生したことを検知するセンサであり、例えば周囲の温度を検出する温度センサであってよい。消火設備52は、消火装置であり、例えば、火災検知器50が収納部30内で火災が発生したことを検知した場合に、消火用の媒体などを放出して、消火する。なお、
図1の例では、火災検知器50と消火設備52とは、蓋部42に取付けられているが、蓋部42に取付けられることに限られない。また、収納部30は、後述のように耐火物32の空間S内に設けられるため、火災検知器50と消火設備52とは、それぞれの耐火物32の空間S内に設けられているといえる。また、火災検知器50と消火設備52は、収納部30(空間S)の外部であって、第1床20と第2床22との間の空間S0に設けられてもよい。また、火災検知器50と消火設備52とは、必須の構成でなく、設けられていなくてもよいが、火災検知器50と消火設備52との少なくとも一方が、収納部30(空間S)内に設けられることが好ましい。
【0030】
耐火物32は、収納部30を覆うように設けられている。具体的には、収納部30は、外周面において、第1床20、第2床22、及び柱部材24のいずれかと接触して設けられている場合がある。この場合、耐火物32は、収納部30の外周面において第1床20、第2床22、及び柱部材24のいずれとも接触しない領域を覆うように、設けられていればよい。すなわち、
図1の例だと、収納部30の方向Zにおける下方の面は第2床22に接触している。従って、耐火物32は、収納部30の外周面において、収納部30の下方の面以外の領域を覆っている。ただし、耐火物32は、収納部30の外周面において第1床20、第2床22、及び柱部材24のいずれとも接触しない領域についても覆ってもよい。例えば、
図1の例だと、耐火物32は、収納部30の外周面において、柱部材24と接触する領域も覆っている。また、耐火物32は、収納部30の外周面の全域を覆ってもよい。
【0031】
耐火物32は、収納部30のそれぞれを覆っている。従って、隣り合う収納部30同士は接触せず互いに分離されており、隣り合う収納部30同士の間には、耐火物32が設けられているといえる。言い換えれば、耐火物32は、内部に収納部30(火災防護対象ケーブル28)を配置するための空間Sが形成されており、収納部30(火災防護対象ケーブル)は、耐火物32の空間S内に設けられている。空間Sは、耐火物32、第1床20、第2床22、及び柱部材24の少なくともいずれかに覆われることで閉空間となっている。それぞれの空間Sは、連通せず互いに分離されている。
【0032】
耐火物32は、耐火性能を有する部材で構成されている。耐火物32は、本実施形態では、第1床20とは異なる材質で構成されており、さらに言えば、第1床20より比重が軽い材質で構成されている。耐火物32の材質は、例えば、ケイ酸カルシウムであるが、耐火性能を有するものであればケイ酸カルシウムに限られない。
【0033】
なお、
図1及び
図2の例では、耐火物32は、収納部30毎、すなわち火災防護対象ケーブル28毎に設けられている。ただし、耐火物32は、複数の収納部30(火災防護対象ケーブル28)に対して1つ設けられていてもよい。この場合、耐火物32は、収納部30を収納する空間Sが複数形成され、空間S同士が連通せず、互いに分離されている。また、
図1の例では、耐火物32の方向Zにおける上側の表面は、第2床22の方向Zにおける下側の表面と接しておらず、耐火物32と第2床22との間には空間が形成されているが、耐火物32の上側の表面と第2床22の下側の表面とが接していてもよい。
【0034】
耐火構造26は、以上のような構成となっている。なお、本実施形態においては、収納部30及び耐火物32は、空間S0内に配置される全ての火災防護対象ケーブル28を覆うが、全ての火災防護対象ケーブル28を覆うことに限られない。収納部30及び耐火物32は、空間S0内に設けられた複数の(異なる系統の)火災防護対象ケーブル28のうち、1つを除いた全ての火災防護対象ケーブル28を覆われることが好ましい。例えば、4つの火災防護対象ケーブル28が設けられている場合、3つの火災防護対象ケーブル28は、収納部30及び耐火物32で覆われていることが好ましい。このように1つを除いた全ての火災防護対象ケーブル28を覆うことで、火災防護対象ケーブル28を、別の系統の火災防護対象ケーブル28から分離することができる。また、
図1及び
図2の例では、隣り合う柱部材24の間に、4つの火災防護対象ケーブル28、すなわち4系統の火災防護対象ケーブル28を配置するように、耐火構造26を設けている。ただし、隣り合う柱部材24の間に設ける系統数は任意であり、1つでもよいし、2以上の複数であってもよい。
【0035】
また、本実施形態では、収納部30内に火災防護対象ケーブル28が収納されたが、火災防護対象ケーブル28は収納部30内に設けられることに限られない。例えば、収納部30を設けず、耐火物32が、火災防護対象ケーブル28を直接覆う構成であってもよい。この場合でも、火災防護対象ケーブル28が耐火物32に覆われるため、火災防護対象ケーブル28を、別の系統の火災防護対象ケーブル28から分離することができる。
【0036】
次に、床下構造14の施工方法について説明する。
図3は、第1実施形態に係る床下構造の施工方法の例を説明する模式図である。
図3に示すように、床下構造14を施工する場合、第1床20と第2床22との間の空間S内に、収納部30を設ける(ステップS10)。この場合、収納部30は、本体部40の方向Zにおける上方側が開放された状態で、空間S内に設けられる。そして、本体部40の方向Zにおける上方側から、収納部30内に、火災防護対象ケーブル28を設置する(ステップS12;ケーブル設置ステップ)また、収納部30内に、火災検知器50と消火設備52とを設置する。火災防護対象ケーブル28と火災検知器50と消火設備52とを設置したら、蓋部42を閉じて、収納部30内を閉空間とする。そして、収納部30の周囲を耐火物32で覆って(ステップS14;耐火物設置ステップ)、火災防護対象ケーブル28を別の系統の火災防護対象ケーブル28から分離する。これにより、第1床20と第2床22との間の空間S内に、耐火構造26が設置され、床下構造14の施工が完了する。
【0037】
なお、床下構造14の施工方法は、
図3の例に示したものに限られない。例えば、第2床22を設置する前にステップS10、S12、S14を実行して、ステップS14で耐火構造26を施工した後に、第2床22を設置してもよい。また、ステップS10、S12において、最初に空間S内に収納部30を設けてから、収納部30内に火災防護対象ケーブル28などを収納したが、火災防護対象ケーブル28などを収納した状態の収納部30を、空間S内に設置してもよい。また、ステップS14において、火災防護対象ケーブル28と収納部30とを空間S内に設置した後に、耐火物32で収納部30を覆ったが、先に火災防護対象ケーブル28を収納した状態の収納部30を耐火物32で覆ってから、空間S内に設置してもよい。また、収納部30を設けない場合は、火災防護対象ケーブル28を空間S内に設置した後に、耐火物32で火災防護対象ケーブル28を覆ってもよいし、耐火物32に覆われた状態の火災防護対象ケーブル28を、空間S内に設置してもよい。
【0038】
以上説明したように、本実施形態に係る耐火構造26は、第1床20と第2床22との間に設けられる火災防護対象ケーブル28を覆い、火災防護対象ケーブル28を、別の系統の火災防護対象ケーブル28から分離する耐火物32を含む。耐火構造26は、火災防護対象ケーブル28を覆って、互いに系統が異なる火災防護対象ケーブル28同士を分離するため、1つの系統の火災防護対象ケーブル28における火災が他の系統の火災防護対象ケーブル28にまで及ぶことを、適切に抑制することができる。
【0039】
また、耐火構造26は、火災防護対象ケーブル28を別の系統の火災防護対象ケーブル28と区分けする収納部30を含む。耐火物32は、収納部30を覆う。このように収納部30を設けることで、火災防護対象ケーブル28に対する防火性能を向上させたり、耐火構造26の耐震性を高くしたりすることができる。
【0040】
また、耐火物32は、第1床20よりも比重が小さい部材で構成される。火災防護対象ケーブル28を覆う耐火物を、第1床20と同じ部材の例えばコンクリートなどで構成した場合、重量が重くなるなどの理由で、空間S0内における火災防護対象ケーブル28のレイアウト変更が困難となる。それに対し、第1床20よりも比重が小さい部材で耐火物32を構成することで、例えば火災防護対象ケーブル28のレイアウト変更を行う場合に、耐火物32を、変更後のレイアウトに則した形状の耐火物32に容易に取り換えることができる。従って、この耐火構造26によると、火災防護対象ケーブル28のレイアウト変更を好適に行うことができる。
【0041】
また、耐火物32の内部であって、火災防護対象ケーブル28が設置される空間Sに、火災検知器50と消火設備52との少なくとも1つが設けられる。このように火災検知器50と消火設備52との少なくとも1つを設けることで、例え火災が起きた場合にも、火災の検知や消火を行う事が可能となり、被害の拡大を抑えることができる。
【0042】
また、本実施形態に係る床下構造14は、原子力設備1の第1床20と、第1床20の上方に設けられる第2床22と、第1床20と第2床22との間に設けられる、複数の系統の火災防護対象ケーブル28と、耐火構造26とを備える。耐火構造26は、火災防護対象ケーブル28を覆い、火災防護対象ケーブル28を、別の系統の火災防護対象ケーブル28から分離する耐火物32を含む。本実施形態に係る床下構造14は、耐火構造26を備えることで、1つの系統の火災防護対象ケーブル28における火災が他の系統の火災防護対象ケーブル28にまで及ぶことを、適切に抑制することができる。
【0043】
また、床下構造14は、第1床20と第2床22との間に所定の間隔をおいて点在するように設けられて、第2床22を支持する複数の柱部材24を含む。このように柱部材24を設けることで、第2床22の強度を保つことが可能となる。また、柱部材24を点在させることで、第1床20の表面に沿って長く形成される梁状の部材を設けることなく、第2床22を支持することが可能となり、重量の増加を抑えることができる。
【0044】
また、本実施形態に係る床下構造14の施工方法は、第1床20と第2床22とを含む原子力設備1の床下構造14の施工方法であって、第1床20と第2床22との間に複数の系統の火災防護対象ケーブル28を設けるケーブル設置ステップと、火災防護対象ケーブル28を耐火物32で覆うことで、火災防護対象ケーブル28を別の系統の火災防護対象ケーブル28から分離する耐火物設置ステップと、を含む。本実施形態に係る世法後方によると火災防護対象ケーブル28を耐火物32で覆うことで、1つの系統の火災防護対象ケーブル28における火災が他の系統の火災防護対象ケーブル28にまで及ぶことを、適切に抑制することができる。
【0045】
(第2実施形態)
次に、第2実施形態について説明する。第2実施形態においては、耐火物32aが第1耐火物60と第2耐火物62とを有する点で、第1実施形態と異なる。第2実施形態において、第1実施形態と構成が共通する箇所は、説明を省略する。
【0046】
図4は、第2実施形態に係る原子力設備の床下構造の模式図である。
図4に示すように、第2実施形態に係る床下構造14aの耐火構造26aは、収納部30と耐火物32aとを備える。耐火物32aは、第1耐火物60と第2耐火物62とを有する。第1耐火物60は、火災防護対象ケーブル28を配置するための空間Saが形成される。第1耐火物60において、空間Saは、閉空間となっておらず、方向Zにおける上方側に開放されている。すなわち、空間Saは、第1耐火物60において溝状に形成されている。空間Saには、火災防護対象ケーブル28と火災検知器50と消火設備52と収納された収納部30が設けられる。第2耐火物62は、第1耐火物60の蓋であり、第1耐火物60の方向Zにおける上方側の表面60A上に配置される。第2耐火物62は、第1耐火物60の表面60Aに配置されることで、空間Saの方向Zにおける上方側の開放された領域を覆って、空間Saを閉空間とする。すなわち、第1耐火物60上に第2耐火物62を配置することで、それぞれの空間Saが連通せずに互いに分離する。
【0047】
図5は、第2実施形態に係る第1耐火物の模式図である。第1実施形態においては、例えば耐火物32を曲げるなどして収納部30の周囲に巻き付けることで、収納部30及び火災防護対象ケーブル28の形状に合わせた形状の空間Sが形成されていた。一方、第2実施形態に係る第1耐火物60は、モジュール状に形成されており、空間Saの形状が予め設定されている。そして、空間Saの形状が異なる第1耐火物60が複数準備されており、床下構造14aの施工時に、火災防護対象ケーブル28のレイアウトに合う空間Saが形成された第1耐火物60を選定して使用する。
図5では、空間Saが方向Yに沿って形成される第1耐火物60Sと、方向Xにおける両端側の空間Saが途中から方向Xに向かうように形成される第1耐火物60Tとを組み合わせて、空間Sa同士を連結する例を挙げている。このように空間Saの形状が異なる第1耐火物60を組み合わせて空間Sa同士を連結することで、火災防護対象ケーブル28のレイアウトに合う空間Saを形成することができる。ただし、
図5における第1耐火物60S、60Tと、形成される空間Saの形状とは、一例である。
【0048】
このように、空間Saの形状が異なる第1耐火物60を複数準備しておくことで、火災防護対象ケーブル28に第1耐火物60を選定することで火災防護対象ケーブル28の設置を行うことができ、耐火物を曲げたり加工したりして火災防護対象ケーブル28の形状に合わせる作業が不要となる。
【0049】
なお、
図4及び
図5においては、1つの第1耐火物60に複数(ここでは4つ)の空間Saが形成されており、それぞれの空間Saに収納部30が設けられる、第1耐火物60に形成される空間Saの数は任意である。例えば、1つの空間Saが形成される第1耐火物60を並べて、それぞれの第1耐火物60の空間Sa内に収納部30を設けてもよい。また、
図4の例では、第2耐火物62の方向Zにおける上側の表面は、第2床22の方向Zにおける下側の表面と接しているが、第2耐火物62の上側の表面と第2床22の下側の表面とが接しておらず、第2耐火物62と第2床22との間に空間が形成されていてもよい。
【0050】
次に、床下構造14aの施工方法について説明する。
図6は、第2実施形態に係る床下構造の施工方法の例を説明する模式図である。
図6に示すように、床下構造14aを施工する場合、第1床20と第2床22との間の空間S内に、第1耐火物60を設ける(ステップS20)。第1耐火物60として、火災防護対象ケーブル28のレイアウトに合う空間Saのものが選択されて、空間S内に配置される。そして、第1耐火物60の方向Zにおける上方側から、第1耐火物60の空間Sa内に、収納部30の本体部40を設置する(ステップS22)。そして、本体部40内に火災防護対象ケーブル28と火災検知器50と消火設備52とを設置する(ステップS24;ケーブル設置ステップ)。火災防護対象ケーブル28と火災検知器50と消火設備52とを設置したら、蓋部42を閉じて、収納部30内を閉空間とする。次に、第1耐火物60の表面60A上に第2耐火物62を設置して耐火物32aを形成して、第1耐火物60と第2耐火物62とにより、すなわち耐火物32aにより、空間Saを閉空間として、収納部30(火災防護対象ケーブル28)を覆う(ステップS26;耐火物設置ステップ)。これにより、火災防護対象ケーブル28が別の系統の火災防護対象ケーブル28から分離される。
【0051】
なお、床下構造14aの施工方法は、
図6の例に示したものに限られない。例えば、第2床22を設置する前にステップS20、S22、S24、S26を実行して、ステップS26で耐火構造26を施工した後に、第2床22を設置してもよい。また、ステップS22において、最初に空間Sa内に収納部30を設けてから、収納部30内に火災防護対象ケーブル28などを収納したが、火災防護対象ケーブル28などを収納した状態の収納部30を、空間Sa内に設置してもよい。また、収納部30を設けない場合は、火災防護対象ケーブル28と火災検知器50と消火設備52とを第1耐火物60の空間Sa内に設置した後に、第1耐火物60の表面60A上に第2耐火物62を設置する。
【0052】
以上説明したように、第2実施形態に係る耐火物32aは、火災防護対象ケーブル28を配置するための空間Saが形成される第1耐火物60と、空間Saを覆う第2耐火物62と、を含む。第2実施形態に係る耐火物32aによると、空間Sa内に火災防護対象ケーブル28を配置して、第2耐火物62で空間Saを覆うことで、火災防護対象ケーブル28を覆うことが可能となり、例えば、火災防護対象ケーブル28を覆うために耐火物を曲げるなどの作業が不要となり、火災防護対象ケーブル28の配置を容易に行う事が可能となる。さらに、空間Saの形状が異なるモジュール状の第1耐火物60を準備しておくことで、空間Saの形状が異なる第1耐火物60を複数組み合わせて、火災防護対象ケーブル28のレイアウトに合わせた空間Saを形成することが可能となり、火災防護対象ケーブル28の配置を容易に行う事が可能となる。
【0053】
以上、本発明の実施形態を説明したが、この実施形態の内容により実施形態が限定されるものではない。また、前述した構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のもの、いわゆる均等の範囲のものが含まれる。さらに、前述した構成要素は適宜組み合わせることが可能である。さらに、前述した実施形態の要旨を逸脱しない範囲で構成要素の種々の省略、置換又は変更を行うことができる。
【符号の説明】
【0054】
1 原子力設備
10 中央制御室
12 制御システム
14 床下構造
20 第1床
22 第2床
24 柱部材
26 耐火構造
28 火災防護対象ケーブル
30 収納部
32 耐火物