IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社パイロットコーポレーションの特許一覧

<>
  • 特許-シャープペンシル 図1
  • 特許-シャープペンシル 図2
  • 特許-シャープペンシル 図3
  • 特許-シャープペンシル 図4
  • 特許-シャープペンシル 図5
  • 特許-シャープペンシル 図6
  • 特許-シャープペンシル 図7
  • 特許-シャープペンシル 図8
  • 特許-シャープペンシル 図9
  • 特許-シャープペンシル 図10
  • 特許-シャープペンシル 図11
  • 特許-シャープペンシル 図12
  • 特許-シャープペンシル 図13
  • 特許-シャープペンシル 図14
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-12
(45)【発行日】2023-07-21
(54)【発明の名称】シャープペンシル
(51)【国際特許分類】
   B43K 21/00 20060101AFI20230713BHJP
【FI】
B43K21/00 A
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2019114924
(22)【出願日】2019-06-20
(65)【公開番号】P2021000746
(43)【公開日】2021-01-07
【審査請求日】2022-03-29
(73)【特許権者】
【識別番号】303022891
【氏名又は名称】株式会社パイロットコーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100091982
【弁理士】
【氏名又は名称】永井 浩之
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100105153
【弁理士】
【氏名又は名称】朝倉 悟
(74)【代理人】
【識別番号】100187159
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 英明
(74)【代理人】
【識別番号】100127465
【弁理士】
【氏名又は名称】堀田 幸裕
(72)【発明者】
【氏名】真田 裕右
(72)【発明者】
【氏名】瀬利 伸一
(72)【発明者】
【氏名】河原崎 勇二
(72)【発明者】
【氏名】梶原 巧
(72)【発明者】
【氏名】大西 智温
【審査官】稲荷 宗良
(56)【参考文献】
【文献】実開昭54-033737(JP,U)
【文献】実開昭54-020730(JP,U)
【文献】実開昭57-049258(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B43K 21/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸筒と、
前記軸筒に支持された口金ユニットと、
前記口金ユニットに対して相対移動することで保持した芯を繰り出すチャックを有した芯保持ユニットと、
軸方向に移動可能に設けられ、前記軸筒内における前記チャックの後方に形成された芯収容空間を後方から区画する表示体と、を備え、
少なくとも特定の位置にある前記表示体を前記軸筒の外部から観察可能であり、
前記表示体は、軸方向に延びる表示体本体部と、前記軸方向と非平行な方向に前記表示体本体部から突出したフランジ部と、を有し、
前記軸筒には、前記軸筒の内部を観察可能とする窓部が、前記軸方向において前記表示体が移動可能となる範囲の一部分と重なるようにして設けられ、
前記芯収容空間に収容された予備芯によって前記軸方向における前方から支持された表示体の前記フランジ部は、前記窓部よりも前記軸方向において前方に位置している、シャープペンシル。
【請求項2】
前記軸筒には、前記軸筒の内部を観察可能とする窓部が、前記軸方向において前記表示体が移動可能となる範囲と少なくとも部分的に重なるようにして設けられ、
前記表示体を前記軸方向に移動可能に収容した筒状部分の周方向において窓部と重なる領域の内面に、凹部が形成されている、請求項に記載のシャープペンシル。
【請求項3】
軸筒と、
前記軸筒に支持された口金ユニットと、
前記口金ユニットに対して相対移動することで保持した芯を繰り出すチャックを有した芯保持ユニットと、
軸方向に移動可能に設けられ、前記軸筒内における前記チャックの後方に形成された芯収容空間を後方から区画する表示体と、を備え、
少なくとも特定の位置にある前記表示体を前記軸筒の外部から観察可能であり、
前記表示体は、軸方向に延びる表示体本体部と、前記軸方向と非平行な方向に前記表示体本体部から突出したフランジ部と、を有し、
前記軸筒には、前記軸筒の内部を観察可能とする窓部が、前記軸方向において前記表示体が移動可能となる範囲と少なくとも部分的に重なるようにして設けられ、
前記表示体を前記軸方向に移動可能に収容した筒状部分の周方向において窓部と重なる領域の内面に、凹部が形成されている、シャープペンシル。
【請求項4】
前記軸筒内に前記軸方向に移動可能に設けられ且つ前記軸方向に沿って前方に移動する際に前記芯保持ユニットを前方に押すノックユニットを、更に備え、
前記ノックユニットは、前記表示体を前記軸方向に移動可能に収容する前記筒状部分を含む、請求項2又は3に記載のシャープペンシル。
【請求項5】
前記フランジ部は、前記表示体本体部の周囲を周状に延びている、請求項1~4のいずれか一項に記載のシャープペンシル。
【請求項6】
前記軸筒には、前記軸筒の内部を観察可能とする窓部が、前記軸方向において前記表示体が移動可能となる範囲と少なくとも部分的に重なるようにして設けられ、
前記フランジ部は周方向において前記窓部が設けられた範囲に少なくとも亘って延びている、請求項1~5のいずれか一項に記載のシャープペンシル。
【請求項7】
前記表示体は、前記フランジ部の前記軸方向における後方に位置し前記軸方向と非平行な方向に前記表示体本体部から突出した後方フランジ部を、更に有する、請求項1~6のいずれか一項に記載のシャープペンシル。
【請求項8】
前記後方フランジ部は、前記表示体本体部の後端部分に設けられている、請求項に記載のシャープペンシル。
【請求項9】
前記後方フランジ部は、前記表示体本体部の周囲を周状に延びている、請求項7又は8に記載のシャープペンシル。
【請求項10】
前記軸筒には、前記軸筒の内部を観察可能とする窓部が、前記軸方向において前記表示体が移動可能となる範囲の一部分と重なるようにして設けられ、
前記軸方向において最も前方に移動した表示体の前記後方フランジ部は、前記窓部よりも前記軸方向において後方に位置している、請求項7~9のいずれか一項に記載のシャープペンシル。
【請求項11】
前記表示体を前記軸方向に移動可能に収容した筒状部分に穴が形成されている、請求項1~10のいずれか一項に記載のシャープペンシル。
【請求項12】
前記穴は、前記軸方向において最も後方に移動した表示体よりも前記軸方向において後方に位置している、請求項11に記載のシャープペンシル。
【請求項13】
前記表示体を前記軸方向に移動可能に収容した筒状部分に穴が形成され、
前記穴の前記軸方向に沿った長さは、前記後方フランジ部の前記軸方向に沿った長さよりも長い、請求項7~10のいずれか一項に記載のシャープペンシル。
【請求項14】
前記穴の面積は、前記軸方向に垂直な断面における前記筒状部分と表示体との間の隙間の面積よりも大きい、請求項11~13のいずれか一項に記載のシャープペンシル。
【請求項15】
前記芯保持ユニットに対して前記軸方向に移動可能な重量体を更に備え、
前記重量体は、前方に移動することで前記芯保持ユニットに接触して前記芯保持ユニットを前方に押す、請求項1~14のいずれか一項に記載のシャープペンシル。
【請求項16】
軸筒と、
前記軸筒に支持された口金ユニットと、
前記口金ユニットに対して相対移動することで保持した芯を繰り出すチャックを有した芯保持ユニットと、
軸方向に移動可能に設けられ、前記軸筒内における前記チャックの後方に形成された芯収容空間を後方から区画する表示体と、を備え、
少なくとも特定の位置にある前記表示体を前記軸筒の外部から観察可能であり、
前記軸筒には、前記軸筒の内部を観察可能とする窓部が、前記軸方向において前記表示体が移動可能となる範囲の一部分と重なるようにして設けられ、
前記表示体を前記軸方向に移動可能に収容した筒状部分に穴が形成されている、
前記穴は、前記窓部よりも後方に位置する、シャープペンシル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シャープペンシルに関する。
【背景技術】
【0002】
前端から芯を繰り出し可能なシャープペンシルが知られている。シャープペンシルは、前端から芯を突出させた状態で紙面等への筆記に利用される。シャープペンシルは、軸筒内に予備芯を収容するための芯収容空間を有している。予備芯が無くなった場合には、芯収容空間に予備芯を補充することになる。
【0003】
特許文献1及び特許文献2に開示されたシャープペンシルは、芯収容空間を後方から区画する表示体を有している。表示体は軸方向に移動可能となっている。芯収容空間内に予備芯がない場合、表示体は前方に位置し、芯収容空間内に予備芯がある場合、表示体は後方に位置する。この表示体の位置を軸筒の外部から視認することで、芯収容空間内の予備芯の有無を把握することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開昭54-33737号公報
【文献】特開昭54-20730号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1及び特許文献2のシャープペンシルでは、芯収容空間内の芯粉が、表示体と表示体を移動可能に支持する筒状部分との間に入り込むことがある。この場合、筒状部分の内面が芯粉で汚れてしまい、筒状部分の外部から表示体を観察しにくくなる可能性がある。本発明は、このような点を考慮してなされたものであり、芯収容空間内の芯粉によって表示体の視認性が害されることを効果的に防止することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明による第1のシャープペンシルは、
軸筒と、
前記軸筒に支持された口金ユニットと、
前記口金ユニットに対して相対移動することで保持した芯を繰り出すチャックを有した芯保持ユニットと、
軸方向に移動可能に設けられ、前記軸筒内における前記チャックの後方に形成された芯収容空間を後方から区画する表示体と、を備え、
少なくとも特定の位置にある前記表示体を前記軸筒の外部から観察可能であり、
前記表示体は、軸方向に延びる表示体本体部と、前記軸方向と非平行な方向に前記表示体本体部から突出したフランジ部と、を有する。
【0007】
本発明による第2のシャープペンシルは、
軸筒と、
前記軸筒に支持された口金ユニットと、
前記口金ユニットに対して相対移動することで保持した芯を繰り出すチャックを有した芯保持ユニットと、
軸方向に移動可能に設けられ、前記軸筒内における前記チャックの後方に形成された芯収容空間を後方から区画する表示体と、を備え、
少なくとも特定の位置にある前記表示体を前記軸筒の外部から観察可能であり、
前記表示体を前記軸方向に移動可能に収容した筒状部分に穴が形成されている。
【0008】
本発明による第1及び第2のシャープペンシルにおいて、前記フランジ部の前記軸方向に沿った長さは、1.5mm以下であるようにしてもよい。
【0009】
本発明による第1及び第2のシャープペンシルにおいて、前記フランジ部は、前記表示体本体部の周囲を周状に延びていてもよい。
【0010】
本発明による第1及び第2のシャープペンシルにおいて、
前記軸筒には、前記軸筒の内部を観察可能とする窓部が、前記軸方向において前記表示体が移動可能となる範囲と少なくとも部分的に重なるようにして設けられ、
前記フランジ部は、前記周方向において前記窓部が設けられた範囲に少なくとも亘って延びていてもよい。
【0011】
本発明による第1及び第2のシャープペンシルにおいて、
前記軸筒には、前記軸筒の内部を観察可能とする窓部が、前記軸方向において前記表示体が移動可能となる範囲の一部分と重なるようにして設けられ、
前記芯収容空間に収容された予備芯によって前記軸方向における前方から支持された表示体の前記フランジ部は、前記窓部よりも前記軸方向において前方に位置していてもよい。
【0012】
本発明による第1及び第2のシャープペンシルにおいて、
前記軸筒には、前記軸筒の内部を観察可能とする窓部が、前記軸方向において前記表示体が移動可能となる範囲と少なくとも部分的に重なるようにして設けられ、
前記表示体を前記軸方向に移動可能に収容した筒状部分の周方向において窓部と重なる領域の内面に、凹部が形成されていてもよい。
【0013】
本発明による第1及び第2のシャープペンシルにおいて、前記表示体は、前記フランジ部の前記軸方向における後方に位置し前記軸方向と非平行な方向に前記表示体本体部から突出した後方フランジ部を、更に有するようにしてもよい。
【0014】
本発明による第1及び第2のシャープペンシルにおいて、前記後方フランジ部の前記軸方向に沿った長さは、1.5mm以下であるようにしてもよい。
【0015】
本発明による第1及び第2のシャープペンシルにおいて、前記後方フランジ部は、前記表示体本体部の後端部分に設けられていてもよい。
【0016】
本発明による第1及び第2のシャープペンシルにおいて、前記後方フランジ部は、前記表示体本体部の周囲を周状に延びていてもよい。
【0017】
本発明による第1及び第2のシャープペンシルにおいて、
前記軸筒には、前記軸筒の内部を観察可能とする窓部が、前記軸方向において前記表示体が移動可能となる範囲の一部分と重なるようにして設けられ、
前記軸方向において最も前方に移動した表示体の前記後方フランジ部は、前記窓部よりも前記軸方向において後方に位置していてもよい。
【0018】
本発明による第1及び第2のシャープペンシルにおいて、前記表示体を前記軸方向に移動可能に収容した筒状部分に穴が形成されていてもよい。
【0019】
本発明による第1及び第2のシャープペンシルにおいて、前記穴は、前記軸方向において最も後方に移動した表示体よりも前記軸方向において後方に位置していてもよい。
【0020】
本発明による第1及び第2のシャープペンシルにおいて、
前記表示体を前記軸方向に移動可能に収容した筒状部分に穴が形成され、
前記穴の前記軸方向に沿った長さは、前記後方フランジ部の前記軸方向に沿った長さよりも長くてもよい。
【0021】
本発明による第1及び第2のシャープペンシルにおいて、前記穴の面積は、前記軸方向に垂直な断面における前記筒状部分と表示体との間の隙間の面積よりも大きくてもよい。
【0022】
本発明による第1及び第2のシャープペンシルは、
前記軸筒内に前記軸方向に移動可能に設けられ且つ前記軸方向に沿って前方に移動する際に前記芯保持ユニットを前方に押すノックユニットを、更に備え、
前記ノックユニットは、前記表示体を前記軸方向に移動可能に収容する前記筒状部分を含むようにしてもよい。
【0023】
本発明による第1及び第2のシャープペンシルにおいて、前記軸筒は、前記表示体を前記軸方向に移動可能に収容する前記筒状部分を含むようにしてもよい。
【0024】
本発明による第1及び第2のシャープペンシルにおいて、
前記軸筒内に軸方向に移動可能に設けられた中間筒部材を、更に備え、
前記芯保持ユニットは、前記チャックの前記軸方向における後方に位置して前記芯収容空間の少なくとも一部分を形成し且つ開口した後端を前記中間筒部材内に挿入された芯収容筒を、更に有し、
前記ノックユニットの前記筒状部分は、前記中間筒部材に前記軸方向における後方から挿入されていてもよい。
【0025】
本発明による第1及び第2のシャープペンシルにおいて、前記表示体が前記軸方向に沿って最も後方に移動した状態での前記芯収容空間の後端と、前記口金ユニットの前端と、の間の前記軸方向に沿った長さは、前記芯収容空間内に収容される予備芯の長さの二倍以上であるようにしてもよい。
【0026】
本発明による第1及び第2のシャープペンシルにおいて、前記芯収容空間に収容された予備芯上に支持された表示体を、前記軸筒の外部から観察可能であるようにしてもよい。
【0027】
本発明による第1及び第2のシャープペンシルにおいて、前記芯収容空間に収容された予備芯上に支持される位置よりも前記軸方向に沿って前方に位置する表示体を、前記軸筒の外部から観察可能であるようにしてもよい。
【0028】
本発明による第1及び第2のシャープペンシルにおいて、前記芯収容空間に収容された予備芯上に支持された表示体と、前記芯収容空間に収容された予備芯上に支持される位置よりも前記軸方向に沿って前方に位置する表示体は、前記軸筒の外部から異なる表示として観察可能であるようにしてもよい。
【0029】
本発明による第1及び第2のシャープペンシルにおいて、前記表示体が前記軸方向に沿って最も後方に移動した状態での前記芯収容空間の長さは、前記予備芯の長さよりも長くなっていてもよい。
【0030】
本発明による第1及び第2のシャープペンシルにおいて、前記表示体が前記軸方向に沿って最も前方に移動した状態での前記芯収容空間の長さは、前記予備芯の長さよりも短くなっていてもよい。
【0031】
本発明による第1及び第2のシャープペンシルにおいて、前記表示体は、前記軸方向における前方に開口した凹部を設けられていてもよい。
【0032】
本発明による第1及び第2のシャープペンシルにおいて、前記凹部の前記軸方向に沿った深さは、前記表示体の軸方向に沿った長さの半分よりも大きくてもよい。
【0033】
本発明による第1及び第2のシャープペンシルにおいて、
前記表示体は、前記凹部を区画する内側壁面及び底壁面を有し、
前記底壁面は、前記軸方向に垂直であるようにしてもよい。
【0034】
本発明による第1及び第2のシャープペンシルにおいて、前記芯収容空間の前端と前記口金ユニットの前記前端との間の前記軸方向に沿った長さは、前記予備芯の長さよりも短くなっていてもよい。
【0035】
本発明による第1及び第2のシャープペンシルにおいて、前記芯収容空間の前端と前記口金ユニットの前記前端との間の前記軸方向に沿った長さは、前記予備芯の長さの半分よりも長くなっていてもよい。
【0036】
本発明による第1及び第2のシャープペンシルにおいて、
前記芯収容空間を前記軸方向における前側から区画する前壁面には、一本の芯のみを挿入な可能な内寸法を有し且つ前記チャックに通じる芯送出孔が、開口し、
前記前壁面は、前記軸方向に垂直な方向に沿って前記芯送出孔から離間するにつれて前記軸方向における後方に傾き、
前記前壁面の前記軸方向に対する傾斜角度は、45°より大きく85°未満であるようにしてもよい。
【0037】
本発明による第1及び第2のシャープペンシルにおいて、前記前壁面は回転対称となっていてもよい。
【0038】
本発明による第1及び第2のシャープペンシルにおいて、前記芯収容空間は、軸方向における中間部に、幅が狭くなった縮幅部を有するようにしてもよい。
【0039】
本発明による第1及び第2のシャープペンシルにおいて、前記芯収容空間の前端から前記縮幅部までの前記軸方向に沿った長さは、前記予備芯の長さの半分よりも長く、前記予備芯の長さよりも短くなっていてもよい。
【0040】
本発明による第1及び第2のシャープペンシルは、
前記軸筒内に軸方向に移動可能に設けられた中間筒部材を、更に備え、
前記芯保持ユニットは、前記チャックの前記軸方向における後方に位置して前記芯収容空間の少なくとも一部分を形成し且つ開口した後端を前記中間筒部材内に挿入された芯収容筒を、更に有し、
前記中間筒部材は、筒状本体部と、前記筒状本体部の内面から突出した内方リブと、を有し、前記軸方向に沿って前方に移動する際に前記内方リブが前記芯収容筒の後端面に接触して前記芯保持ユニットを前方に押すようにしてもよい。
【0041】
本発明による第1及び第2のシャープペンシルにおいて、前記内方リブが設けられている位置での前記中間筒部材の内幅は、前記芯収容筒の内幅よりも小さくなっていてもよい。
【0042】
本発明による第1及び第2のシャープペンシルにおいて、前記芯収容空間の前端から前記内方リブまでの前記軸方向に沿った長さは、前記予備芯の長さの半分よりも長く、前記予備芯の長さよりも短くてもよい。
【0043】
本発明による第1及び第2のシャープペンシルにおいて、前記内方リブが設けられている位置での前記中間筒部材の内幅は、前記芯収容筒の内幅よりも大きくてもよい。
【0044】
本発明による第1及び第2のシャープペンシルにおいて、前記内方リブが設けられている位置での前記中間筒部材の内幅は、前記芯収容筒の内幅と同一であるようにしてもよい。
【発明の効果】
【0045】
本発明によれば、芯収容空間内の芯粉によって表示体の視認性が害されることを効果的に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0046】
図1図1は、本発明の一実施の形態を説明するための図であって、予備芯を収容したシャープペンシルの一具体例を示す平面図である。
図2図2は、図1のシャープペンシルを示す縦断面図である。
図3図3は、図1のシャープペンシルの前側部分を示す部分断面図である。
図4図4は、図1のシャープペンシルの後側部分を示す部分断面図である。
図5図5は、図1のシャープペンシルのノックユニットを示す斜視図である。
図6図6は、図1に対応する図であって、予備芯を収容していない状態で図1のシャープペンシルを示す平面図である。
図7図7は、図2に対応する図であって、予備芯を収容していない図6のシャープペンシルを示す縦断面図である。
図8図8は、図2に対応する図であって、予備芯を収容した図1のシャープペンシルを、ノック操作を行った状態で、示す縦断面図である。
図9図9は、図1に対応する図であって、ノック操作を行った状態にある予備芯を収容した図8のシャープペンシルを示す平面図である。
図10図10は、図2に対応する図であって、予備芯を収容していない図1のシャープペンシルを、ノック操作を行った状態で、示す縦断面図である。
図11図11は、図1に対応する図であって、ノック操作を行った状態にある予備芯を収容していない図10のシャープペンシルを示す平面図である。
図12図12は、図2に対応する図であって、芯保持ユニットに保持された芯と芯収容空間内の予備芯とが一直線上に並んでいる状態で図1のシャープペンシルを示す縦断面図である。
図13図13は、図3に対応する図であって、軸方向と非平行な方向への力が芯に加えられた状態を示す図である。
図14図14は、シャープペンシルの一変形例を説明するための横断面図であって、軸方向における窓部が配置された位置での横断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0047】
以下、図面に示された一具体例を参照しながら本発明の一実施の形態について説明する。
【0048】
図1図14は、本発明の一実施の形態を説明するための図であって、一実施の形態に係るシャープペンシルの一具体例を示している。このうち、図1図4は、それぞれ、予備芯を芯収容空間に収容した非ノック状態にあるシャープペンシルを示す平面図、断面図または部分断面図である。
【0049】
本実施の形態によるシャープペンシル10は、軸筒20と、口金ユニット30と、芯保持ユニット40と、表示体70と、を有している。軸筒20は、軸方向ADに開口を有した筒状の部材である。口金ユニット30は、軸筒20の前端開口から前方に突出するようにして、軸筒20に支持されている。芯保持ユニット40は、軸方向ADに移動可能に軸筒20内に保持されている。芯保持ユニット40は、一本の芯LEを保持することができる。芯保持ユニット40は、口金ユニット30に対して軸方向ADに相対移動することで、口金ユニット30に向けて芯LEを繰り出す。シャープペンシル10は、芯保持ユニット40に供給される替え芯としての予備芯SLEを収容する芯収容空間Sを有している。表示体70は、芯収容空間Sを後方から区画する。
【0050】
さらに、図示されたシャープペンシル10は、軸筒20に保持された中間筒部材50、ノックユニット60及びクリップ29を有している。中間筒部材50は、芯保持ユニット40の軸方向ADにおける後方に位置している。中間筒部材50は、軸筒20内に軸方向ADに移動可能に設けられている。ノックユニット60は、芯保持ユニット40を口金ユニット30に対して軸方向ADに相対移動させる際に使用者が操作を入力する部分となる。図示された例において、ノックユニット60は、軸筒20の後端開口から軸筒20内に挿入されている。そして、図示された例において、表示体70は、ノックユニット60によって軸方向ADに移動可能に保持されている。ただし、図示されたシャープペンシル10は一例に過ぎず、ノックユニット60は、軸筒20の軸方向ADにおける中間部から側方に露出した部材であってもよい。また、表示体70は、ノックユニット60ではなく、軸筒20に保持されていてもよいし、中間筒部材50に保持されていてもよい。
【0051】
なお、本明細書では、軸筒20の中心軸線CAが延びる方向(長手方向、縦断面図における上下方向)を軸方向ADとする。図示された例において、軸筒20の中心軸線CAは、芯保持ユニット40が保持した芯LEの中心軸線と一致する。また、軸方向ADと直交する方向を径方向(直径方向)、軸方向ADを中心とした円周方向を周方向とする。さらに、軸方向ADに沿って、筆記する際に紙面等の被筆記面に近接する側を前側(前方)とし、被筆記面から離間する側を後側(後方)とする。また、径方向における外側は、中心軸線CAから離間する側とし、径方向における内側は、中心軸線CAに近接する側とする。すなわち、縦断面図における上方、すなわちノックユニット60の側を後方と表現し、縦断面図における下方、すなわち軸筒の前端開口30a側を前方と表現する。
【0052】
以下、シャープペンシル10を構成する各構成要素について順に説明していく。
【0053】
軸筒20は、上述したように、軸方向ADの両側、すなわち前側及び後側に開口した筒状の部材である。図2に示すように、軸筒20は、前軸筒20A、中間軸筒20B、後軸筒20C、前内側軸筒20D、後内側軸筒20E及び被覆材20Fを有している。前内側軸筒20Dの後端部分と後内側軸筒20Eの前端部分とが嵌合または螺合により固定されている。中間軸筒20Bは、前内側軸筒20Dの後端部分と後内側軸筒20Eの前方部分および中間部分とに、径方向外側から固定されている。後軸筒20Cは、後内側軸筒20Eの後端部分に径方向外側から固定されている。前軸筒20Aの後端部分の内面および前内側軸筒20Dの中間部分における外面に、互いに螺合する螺子が形成されている。前軸筒20A及び前内側軸筒20Dは、螺子を利用して、着脱可能となっている。前軸筒20A、中間軸筒20B、後軸筒20C、前内側軸筒20D及び後内側軸筒20Eは、例えば、樹脂成形物として作製され得る。被覆材20Fは、前軸筒20Aに径方向外側から固定されている。被覆材20Fは、シャープペンシル10の把持部となり、例えばゴムや樹脂からなる。前軸筒20Aが軸筒20の前端開口を形成し、後軸筒20Cが軸筒20の後端開口を形成している。クリップ29は、軸筒20の後軸筒20Cに固定されている。
【0054】
次に、口金ユニット30について説明する。図3によく示されているように、口金ユニット30の大部分は、軸筒20内に配置されている。ただし、口金ユニット30の前端部分は、軸筒20の前端開口から前方に突出している。
【0055】
図示された例において、口金ユニット30は、後述する芯保護機能を確保するため、軸筒20に固定されていない。口金ユニット30は、軸筒20内に軸方向ADに移動可能に配置されている。口金ユニット30と軸筒20との間には、口金付勢部材38が設けられている。口金付勢部材38は、軸筒20に対して口金ユニット30を前方に付勢している。口金付勢部材38は、軸筒20内に配置されている。口金付勢部材38は、例えば圧縮ばね等からなり、前内側軸筒20Dの前端面と口金ユニット30との間で圧縮されている。
【0056】
ただし、軸筒20の内幅(内寸法、図示された例では内径)は、その前端部分において、概ね前方に向けて先細りしている。同様に、口金ユニット30の外幅(外寸法、図示された例では外径)は、概ね前方に向けて先細りしている。この結果、口金ユニット30は、軸筒20の内部から前方へ抜け出さないようになっている。また、口金ユニット30は、軸筒20に対して径方向にも相対移動可能となっている。
【0057】
図3の示すように、口金ユニット30は、軸筒20から前方に突出する口金先端部材31と、口金先端部材31を保持する口金基端部材32と、口金先端部材31及び口金基端部材32の間に設けられた先端付勢部材36と、を有している。口金先端部材31は、軸筒20から前方に突出している。口金先端部材31は、軸方向前方に先細りする筒状の部位である。口金先端部材31の先端部分は、芯LE一本分の内径を有し、一本の芯を支持する先端筒状部31aを有している。先端筒状部31aが、口金ユニット30の前端開口30aを構成している。
【0058】
一方、口金基端部材32は、口金先端部材31を軸方向ADに移動可能に保持している。また、図示された口金基端部材32は、図3に示すように、第1基端部材33、第2基端部材34及び第3基端部材35を有している。第1基端部材33は、第2基端部材34の径方向外側に配置されている。第1基端部材33の後端部分は、第2基端部材34に固定されている。第2基端部材34の前方部分において、第1基端部材33及び第2基端部材34は径方向に隙間をあけている。この隙間部分に、口金先端部材31の後方部分が配置されている。また、第2基端部材34は、芯保持部材37を保持している。芯保持部材37は、貫通孔が形成されたゴム製の部材であり、通過した芯LEを保持することができる。
【0059】
口金先端部材31は、第1基端部材33及び第2基端部材34に対して軸方向ADに相対移動可能となっている。第1基端部材33の前端部分は、前方に向けて先細りしている。したがって、第1基端部材33及び第2基端部材34から前方に突出した口金先端部材31は、第1基端部材33及び第2基端部材34から前方に抜けることを防止されている。また、口金先端部材31と口金基端部材32の第2基端部材34との間に、先端付勢部材36が配置されている。先端付勢部材36は、第2基端部材34に対して口金先端部材31を前方に付勢している。先端付勢部材36は、例えば圧縮ばね等からなる。第1基端部材33及び第2基端部材34は、例えば金属製の部材として形成される。
【0060】
第1基端部材33の後方部分および第2基端部材34の後端部分は、第3基端部材35の前方部分の径方向外側に配置されている。第1基端部材33の後方部分および第2基端部材34の後端部分は、第3基端部材35の前方部分に固定されている。第2基端部材34及び第3基端部材35は、筒状の部材として形成され、芯保持ユニット40の前端部分を収容する。図示された例において、芯保持ユニット40と口金基端部材32の第3基端部材35との間に、チャック付勢部材39が設けられている。チャック付勢部材39は、口金ユニット30及び芯保持ユニット40を軸方向ADに互いから離間するように付勢している。チャック付勢部材39は、例えば圧縮ばね等からなる。第3基端部材35は、例えば樹脂成形物として作製され得る。
【0061】
次に、芯保持ユニット40について説明する。芯保持ユニット40は、芯LEを保持する。芯保持ユニット40は、軸筒20内において、軸方向ADに移動可能となっている。芯保持ユニット40がチャック付勢部材39の付勢力に抗して口金ユニット30に接近すると、芯保持ユニット40は、保持した芯LEを口金ユニット30に向けて一定量繰り出す。本明細書では、芯保持ユニット40を口金ユニット30に向けて前進させるための使用者の操作を、ノック操作と呼ぶ。
【0062】
図示された芯保持ユニット40は、図3に示すように、チャック41、チャック保持部材42、締具43、芯収容筒44、内側補助筒45及び内側誘導部材46を有している。チャック41は、芯LEを解放可能に保持している。チャック41は、複数、例えば三つに分かれた頭部41aを有している。チャック41は、後端部分において、チャック保持部材42の前端部分に固定されている。複数の頭部41aは、環状に形成された締具43を通過している。複数の頭部41aは、前方部分において互いから離間するように形成されている。締具43が前方に移動すると、複数の頭部41aは、その前端部分において互いに接近して芯LEを保持する。締具43が後方に移動すると、複数の頭部41aは、その前端部分において互いから離間して芯LEを解放する。
【0063】
チャック41の複数の頭部41a及び締具43は、口金ユニット30の口金基端部材32内に位置している。口金基端部材32は、締具43の前進を規制する規制段部32aを内面に有している。芯保持ユニット40が口金ユニット30に対して前方に移動する際、締具43が規制段部32aによって前進を規制されるまで、チャック41に保持された芯LEも前進する。規制段部32aによって締具43の前進が規制された状態で芯保持ユニット40が更に前進を継続することで、複数の頭部41aが互いから離間して芯LEを解放する。このようにして、芯保持ユニット40が口金ユニット30に対して前進することで、芯LEを繰り出すことができる。
【0064】
チャック保持部材42は、筒状の部材である。チャック保持部材42は、芯収容筒44を保持している。芯収容筒44は、円筒状の部材である。芯収容筒44は、その前端部分を、チャック保持部材42の後方開口からチャック保持部材42内に挿入されている。そして、芯収容筒44は、チャック保持部材42から後方に延び出している。芯収容筒44の後端は後述する中間筒部材50に挿入されている。芯収容筒44は、中間筒部材50や後述する表示体70とともに、芯収容空間Sを画成する。
【0065】
内側補助筒45及び内側誘導部材46は、芯収容筒44内に挿入されている。内側補助筒45及び内側誘導部材46は、ともに筒状に形成されている。内側補助筒45及び内側誘導部材46は、チャック41に通じる芯送出孔LEAを形成している。芯送出孔LEAは、同時に一本の芯LEのみが通過することができる内径(内寸法)を有している。内側誘導部材46は、内側補助筒45に後方から隣接している。内側誘導部材46は、芯収容空間Sを軸方向ADにおける前側から区画する前壁面FSを形成する。芯送出孔LEAは、前壁面FSにおいて軸方向後方に開口している。
【0066】
図3に示すように、前壁面FSは、軸方向ADに垂直な方向に沿って芯送出孔LEAから離間するにつれて、つまり径方向における外側に向けて、軸方向ADにおける後方に傾いている。このような前壁面FSの傾斜によれば、芯収容空間S内の予備芯SLEを芯送出孔LEAに誘導することが可能となる。また、前壁面FSは、中心軸線CAを中心として回転対称性を有していることが好ましい。とりわけ、前壁面FSは、円錐台の側面の形状を有し、任意の回転角度での回転対称性を有していることが更に好ましい。前壁面FSに回転対称性を付与することで、芯収容空間S内に収容された芯LEの誘導の円滑化を図り、且つ、芯収容空間S内で予備芯SLEが片寄って配置されることを効果的に防止することができる。
【0067】
ただし、本実施の形態では、シャープペンシル10の前方を鉛直方向下方に向けた筆記状態において、表示体70の重さによって芯収容空間S内の予備芯SLEが前方に向けて押される。したがって、チャック41に保持されて後端が芯収容空間Sに突出した芯LEと前壁面FSとの間に、予備芯SLEが楔のように入り込むことによって、芯LEを円滑に繰り出すことが難しくなる可能性がある。この点から、前壁面FSの軸方向ADに対する傾斜角度θxは、従来のシャープペンシルとは異なり、小さ過ぎない方がよい。芯LEの繰り出しを円滑化する観点から、傾斜角度θxは、45°より大きく85°未満であることが好ましく、60°より大きく85°未満であることがより好ましく、70°より大きく85°未満であることが更に好ましく、75°より大きく85°未満であることが最も好ましい。
【0068】
なお、内側補助筒45及び内側誘導部材46を芯収容筒44内に設けることで、芯LEの径に対応した内径(内寸法)を有する芯送出孔LEAが画成されている。内側補助筒45及び内側誘導部材46によれば、一本の芯LEのみが通過し得る芯送出孔LEAを軸方向ADに長く確保することができる。このような芯送出孔LEAによれば、芯保持ユニット40によって保持された芯LEが折れてしまうことを効果的に回避することができる。また、芯保持ユニット40が保持した芯LEを後退させる場合、更には前端開口30aから芯LEを挿入する場合に、芯LEが折れてしまうことも効果的に回避することができる。
【0069】
一例として、チャック41、締具43及び内側誘導部材46は、金属、例えば黄銅によって作製され、チャック保持部材42、芯収容筒44及び内側補助筒45は、樹脂成形物として作製される。ただし、図示された例とは異なり、内側補助筒45は、チャック保持部材42、芯収容筒44及び内側誘導部材46のいずれか一以上と一部品として形成されていてもよく、例えば樹脂を用いて一体成形されていてもよい。内側誘導部材46は、チャック保持部材42、芯収容筒44及び内側補助筒45のいずれか一以上と一部品として形成されていてもよく、例えば樹脂を用いて一体成形されていてもよい。チャック保持部材42は、芯収容筒44、内側補助筒45及び内側誘導部材46のいずれか一以上と一部品として形成されていてもよく、例えば樹脂を用いて一体成形されていてもよい。芯収容筒44は、チャック保持部材42、内側補助筒45及び内側誘導部材46のいずれか一以上と一部品として形成されていてもよく、例えば樹脂を用いて一体成形されていてもよい。
【0070】
次に、中間筒部材50について説明する。図2に戻って、中間筒部材50は、軸筒20内に軸方向ADに移動可能に保持されている。中間筒部材50と軸筒20との間には、中間付勢部材28が設けられている。中間付勢部材28は、その前端を、前内側軸筒20Dの後端面上に支持されている。中間付勢部材28は、軸筒20に対して中間筒部材50を後方に付勢している。中間付勢部材28は、例えば、例えば圧縮ばね等からなる。一方、図4に示すように、後内側軸筒20Eには突起20Eaが設けられている。中間筒部材50がこの突起20Eaと接触することで、中間筒部材50の軸筒20内における移動可能な範囲の後端が画成されている。
【0071】
図4に示すように、中間筒部材50は、全体として、筒状の形状を有している。中間筒部材50は、芯収容空間Sの軸方向ADにおける中間部分を形成している。中間筒部材50は、筒状本体部51と、筒状本体部51の内面から突出した内方リブ52と、筒状本体部51の外面から突出した付勢受けフランジ53と、を有している。筒状本体部51、内方リブ52及び付勢受けフランジ53は、例えば樹脂成形物として一体的成形され得る。付勢受けフランジ53は、中間付勢部材28の後端を受けている。すなわち、中間付勢部材28は、軸筒20の前内側軸筒20Dと中間筒部材50の付勢受けフランジ53との間で圧縮されている。
【0072】
筒状本体部51は、前側筒部51A、後側筒部51B及び中間テーパ部51Cを有している。軸方向ADにおいて、前側筒部51Aは、後側筒部51B及び中間テーパ部51Cの前方に位置している。すなわち、前側筒部51Aは、中間筒部材50の最前方に位置している。付勢受けフランジ53は、前側筒部51Aの外面に設けられている。軸方向ADにおいて、後側筒部51Bは、前側筒部51A及び中間テーパ部51Cの後方に位置している。すなわち、後側筒部51Bは、中間筒部材50の最後方に位置している。中間テーパ部51Cは、軸方向ADにおいて、前側筒部51A及び後側筒部51Bの間に位置している。
【0073】
前側筒部51Aの外幅(外径)及び内幅(内径)は、それぞれ、後側筒部51Bの外幅(外径)及び内幅(内径)よりも小さくなっている。中間テーパ部51Cは、前方に向けて先細りするテーパ状となっている。内方リブ52は、中間テーパ部51Cの延長上に位置している。内方リブ52は、環状に形成されている。
【0074】
図2に示すように、前側筒部51Aは、芯保持ユニット40の芯収容筒44の後端部分を挿入されている。芯収容筒44の後端部分は、前側筒部51A内において、前側筒部51Aに対して軸方向ADに相対移動可能となっている。ノック操作時、中間筒部材50が前進して、内方リブ52が、芯収容筒44の後端面44aに接触するようになる。さらに、中間筒部材50が前進することで、芯収容筒44を含む芯保持ユニット40が、中間筒部材50と同期して前進し、軸方向ADにおいて口金ユニット30に接近する。
【0075】
一方、後側筒部51Bは、ノックユニット60の前端部分を挿入されている。ノックユニット60の前端が中間筒部材50の中間テーパ部51Cに隣接している。ノック操作時、ノックユニット60の前進に同期して、中間筒部材50も前進する。
【0076】
上述したように、中間筒部材50は、芯収容空間Sを構成する。そして、中間筒部材50の内方リブ52は、芯収容空間Sの縮幅部SCを形成する。縮幅部SCは、芯収容空間Sの軸方向ADにおける中間部に位置し、軸方向ADに直交する径方向に沿った芯収容空間Sの幅を局所的に狭くしている。このような芯収容空間Sによれば、芯収容空間S内に収容された予備芯SLEが芯収容空間Sの後方において軸方向に垂直な方向(径方向)に広がることを効果的に防止することができる。これにより、芯収容空間Sに収容された予備芯SLEが軸方向に対して大きく傾斜することを効果的に防止することができる。
【0077】
芯収容空間S内で大きく傾斜した予備芯SLEは、チャック41に保持されて後端が芯収容空間Sに突出した芯LEと前壁面FSとの間に、楔のように入り込み易くなる。したがって、芯収容空間S内の予備芯SLEが大きく傾斜すると、上述したようにチャック41に保持された芯LEの円滑な繰り出しが阻害される可能性がある。このため、内方リブ52による縮幅部SCを設けることで、芯収容空間S内での予備芯SLEの傾斜を緩和し、芯保持ユニット40からの芯LEの繰り出しを円滑化することができる。また、予備芯SLEの後端が広がることを規制されるので、ノックユニット60を後方から中間筒部材50へ容易に挿入することができる。
【0078】
とりわけ図示された中間筒部材50では、図2に示すように、芯収容空間Sの前端から内方リブ52によって形成された縮幅部SCまでの軸方向ADに沿った長さLCは、予備芯SLEの長さLXよりも短くなっている。また、この長さLCは、予備芯SLEの長さLXの半分よりも長くなっており、とりわけ図示された例では予備芯SLEの長さLXの2/3よりも長く、更には予備芯SLEの長さLXの3/4よりも長くなっている。このように縮幅部SCの軸方向ADにおける位置を調節することで、芯収容空間Sに収容された予備芯SLEが軸方向ADに対して大きく傾斜することを有効に防止することができる。
【0079】
なお、本明細書で言及する予備芯SLEの長さLXは、使用前の予備芯SLEの長さを意味している。典型的には、JIS規格(JIS S6005(2019)シャープペンシル用芯)に従い、直径が0.2mm以上1.4mm以下である予備芯SLEの長さLXとして60mmを採用することができ、直径2.0mmである予備芯SLEの長さLXとして130mmを採用することができる。また、JIS規格で許容された芯の長さの公差も考慮すると、直径が0.2mm以上1.4mm以下である予備芯SLEの長さLXとして61mmを採用することができ、直径2.0mmである予備芯SLEの長さLXとして131mmを採用することができる。
【0080】
また、図4によく示されているように、内方リブ52が設けられている位置での中間筒部材50の内幅(内径、内寸法)WXが、芯収容筒44の内幅(内径、内寸法)WYよりも小さくなっている。このような例によれば、芯収容空間Sで予備芯SLEが軸方向ADに対して大きく傾斜することを効果的に抑制することができる。
【0081】
ただし、図示された例に限られず、内方リブ52が設けられている位置での中間筒部材50の内幅WXが、芯収容筒44の内幅WYと同一であるようにしてもよい。この例によれば、芯収容空間Sの縮幅部SCにおける予備芯SLEの詰まりを効果的に防止することができる。また、シャープペンシル10の前端開口30aから芯収容空間S内へ予備芯SLEを挿入する際、縮幅部SCをなす内方リブ52で予備芯SLEが引っ掛かってしまうことを効果的に防止することができる。さらに、内方リブ52が設けられている位置での中間筒部材50の内幅WXを、芯収容筒44の内幅WYよりも大きくしてもよい。この例によれば、さらに、中間筒部材50を介して芯保持ユニット40を安定して軸方向前方に移動させることが可能となる。
【0082】
次に、ノックユニット60について説明する。ノックユニット60は、ノック操作を行う際に、シャープペンシル10の使用者から作用を及ぼされる部分となる。ノックユニット60は、軸筒20の後端開口から軸筒20内に挿入されている。軸筒20内に挿入されたノックユニット60の先端部分は、中間筒部材50の後側筒部51Bに挿入されている。ノックユニット60は、中間筒部材50と嵌合してノックユニット60によって保持されるようになる。また、図5によく示されているように、ノックユニット60は、表示体70を軸方向ADに移動可能に保持している。つまり、図示された例において、ノックユニット60は、表示体70を軸方向ADに移動可能に収容する筒状部分TPを含んでいる。表示体70は、この筒状部分TPにおいて、中間筒部材50に挿入されている。そして、ノックユニット60と表示体70は、芯収容空間Sの一部分を形成している。ここで、図5は、ノックユニット60を示す斜視図である。
【0083】
図示された例において、ノックユニット60は、ノック部材61、キャップ部材65及び付属具66を有している。図4に良く示されているように、ノック部材61は、前方筒状部62、後方筒状部63及び仕切壁部64を有している。ノック部材61は、例えば樹脂成形物として一体的に成形される。前方筒状部62は、後方筒状部63及び仕切壁部64よりも前方に位置している。前方筒状部62は、ノック部材61の最前方となる部分をなしている。後方筒状部63は、前方筒状部62及び仕切壁部64よりも後方に位置している。後方筒状部63は、ノック部材61の最後方となる部分をなしている。前方筒状部62及び後方筒状部63は、筒状の部位として形成されている。
【0084】
さらに、ノックユニット60のノック部材61は、前方筒状部62及び後方筒状部63の間となる位置から径方向外方に突出した側方突出部61aを有している。図示された例において、一対の側方突出部が、180°位相をずらして、互いに対向する位置に配置されている。側方突出部61aは、軸筒20の内面に形成された係合部と係合して、ノックユニット60と軸筒20との周方向における位置決めに利用される。
【0085】
仕切壁部64は、軸方向ADにおいて前方筒状部62と後方筒状部63との間に位置している。仕切壁部64は、軸方向ADと非平行な方向に広がり、ノック部材61の内部を区分けしている。
【0086】
前方筒状部62は、仕切壁部64との組み合わせにおいて、後端が閉鎖された略円筒状部分を形成している。表示体70は、前方筒状部62内に収容されている。表示体70は、前方筒状部62から前方に抜け出すことを防止されている。すなわち、前方筒状部62は、表示体70を軸方向ADに移動可能の保持する筒状部分TPを構成している。前方筒状部62は、表示体70の観察を可能とするため、透明となっている。ここで透明とは、無色透明だけでなく、有色透明も含む。
【0087】
図5に示すように、前方筒状部62の前端部分の外面に、嵌合凸部62aが設けられている。嵌合凸部62aは、中間筒部材50の後側筒部51Bに嵌合することで、ノックユニット60と中間筒部材50との固定に利用される。
【0088】
図4に示すように、後方筒状部63は、仕切壁部64との組み合わせにおいて、後端が閉鎖された略円筒状部分を形成している。後方筒状部63は、仕切壁部64とともに、付属具66の収容空間を形成している。付属具66は、典型的には、誤字を修正するための消しゴムとすることができる。付属具66のその他の例として、ボールペンやマーキングペン、修正テープ、スマートフォンやタブレット端末用のタッチペン等を例示することができる。さらに、シャープペンシル10が、可逆熱変色性マイクロカプセル顔料を含むと共に筆記により可逆熱変色性を有する筆跡を形成可能な固形芯を含む場合には、紙面との摩擦熱により前記固形芯による筆跡の色を変色もしくは消色可能な摩擦部材を付属具66とすることもできる。
【0089】
図4に示すように、キャップ部材65は、後方筒状部63を後方から覆う部材である。キャップ部材65は、付属具66の収容空間を塞ぐことができる。キャップ部材65の内面には、後方筒状部63の外面に形成された外螺子部63aと噛み合う内螺子部65aが形成されている。つまり図示された例において、キャップ部材65をノック部材61に対して周方向に相対回転させることで、キャップ部材65をノック部材61から取り外すことができる。このとき、側方突出部61aが軸筒20の内面に形成された係合部と係合することで、ノック部材61の軸筒20に対する回転が規制されている。したがって、使用者は、一方の手で軸筒20を把持し、他方の手でキャップ部材65を操作することで、キャップ部材65を容易に着脱することできる。
【0090】
次に、表示体70について説明する。図5に示すように、表示体70は、円筒状の外形状を有している。表示体70は、ノック部材61に対して軸方向ADに沿った一定の範囲内を移動可能となるように、ノック部材61の前方筒状部62内に収容されている。図示された例において、表示体70は、図7に実線で示した最前方となる最前方位置と、図7に二点鎖線で示した最後方となる最後方位置と、の間を移動することができる。具体的には、表示体70は、最前方位置において、前方筒状部62の内面に設けられた規制凸部62cと接触し、前方への移動を規制される。また、表示体70は、最後方位置において、仕切壁部64と接触して後方への移動を規制される。
【0091】
表示体70は、芯収容空間Sを後方から区画する。シャープペンシル10の前方が鉛直方向下方に位置するようにして筆記を行うことを想定すると、芯収容空間S内における予備芯SLEの有無に応じて、表示体70の軸方向ADにおける配置が変化する。図示された例において、表示体70が軸方向ADに沿って最も前方に移動した状態での芯収容空間Sの最短長さLSmin図7参照)が予備芯SLEの長さLXより短い、及び、表示体70が軸方向ADに沿って最も後方に移動した状態での芯収容空間Sの最長長さLSMAX図7参照)が予備芯SLEの長さLXよりも長い、という二つの条件の両方が満たされている。
【0092】
そして、軸筒20の外部から、軸方向ADにおける少なくとも特定の位置にある表示体70を観察することができる。とりわけ、軸筒20の外部から、表示体70の軸方向ADにおける位置を確認することができるようになっている。本実施の形態におけるシャープペンシル10では、表示体70の軸方向ADにおける位置を確認することで、芯収容空間S内における予備芯SLEの有無を判断することができるようになっている。
【0093】
図5に示すように、表示体70は、円柱状の外形状を有している。表示体70の軸方向ADにおける位置の確認を容易とするため、表示体70の円筒状の外周面(側面)に表示対象が形成されていることが好ましい。この場合、表示体70の位置を知覚して予備芯SLEの有無を判断することに代え、表示体70によって直接的に予備芯SLEの有無を示す表示を行うことができる。表示体70に形成される表示対象は、図形、パターン、デザイン、色彩、絵、写真、キャラクターなどの絵柄(イメージ)や、文字、マーク、数字等を例示することができる。例えば、表示体70が第1色(例えば赤色)を表示することで、予備芯SLEが無いことを示し、表示体70が第2色(例えば黒色)を表示することで、予備芯SLEが有ることを示すようにしてもよい。
【0094】
図示された例において、軸筒20の内部を観察可能とする窓部22が軸筒20に設けられている。図1から理解され得るように、軸筒20は、窓部22を形成する領域において透明となっており、窓部22以外の領域において不透明となっている。例えば、窓部22を形成する領域以外の軸筒20の領域に、印刷を施すことにより、或いは、加飾用のフィルムを貼り付けることにより、当該領域を不透明とすることができる。このような不透明とするための加工は、前軸筒20A、中間軸筒20B、後軸筒20C、前内側軸筒20D及び後内側軸筒20Eの内面および外面のいずれに行ってもよい。また、窓部22を形成する領域は、軸筒20に設けた穴によって構成されていてもよいし、或いは、軸筒20のうちの不透明とする加工が施されていない領域によって構成されてもよい。
【0095】
なお、窓部22は、見易さの便宜から、縦断面図においても点線ではなく、実線で示している。
【0096】
図1及び図2に示すように、窓部22は、軸方向ADにおいて表示体70が移動可能となる範囲と少なくとも部分的に重なるように配置されている。また、窓部22は、周方向における一部分のみに設けられている。特に図示された例では、一対の窓部22が、対称的な位置に、言い換えると180°位相をずらして配置されている。したがって、表示体70が軸方向ADにおいて窓部22と重なる領域からずれた場合、一対の窓部22およびノックユニット60の透明な前方筒状部62を介して、シャープペンシル10の反対側を視認することができる。このような表示体70の動作があれば、表示体70の存在を意識付けることができ、シャープペンシル10の商品力を向上させることができる。
【0097】
図示された例において、窓部22は、軸方向ADにおいて表示体70が移動可能となる範囲の一部分のみと重なるように配置されている。このような窓部22の配置によれば、窓部22を介して観察される表示体70の領域を、予備芯SLEの有無に応じて変化させることができる、或いは、予備芯SLEの有無に応じて表示体70が窓部22から観察されないようにすることができる。そして、窓部22から観察される状態の変化により、表示体70の軸方向ADにおける位置、及び/又は、芯収容空間S内における予備芯SLEの有無を容易に判断することができる。
【0098】
より具体的には、図1及び図2に示すように、芯収容空間Sに収容された予備芯SLE上に支持された表示体70を、窓部22を介して軸筒20の外部から観察可能となっている。また、芯収容空間Sに収容された予備芯SLE上に支持される位置よりも軸方向ADに沿って前方に位置する表示体70を、軸筒20の外部から観察可能となっている。とりわけ図6及び図7に示すように、最前方位置にある表示体70を、軸筒20の外部から観察可能となっている。そして、芯収容空間Sに収容された予備芯SLE上に支持された表示体70と、芯収容空間Sに収容された予備芯SLE上に支持される位置よりも軸方向ADに沿って前方に位置する表示体70は、軸筒20の外部から、異なる部分を観察されることになることから異なる表示として観察される。したがって、窓部22から観察される表示体70の表示に基づき、予備芯SLEの有無を判断することが可能となっている。
【0099】
ただし、図示された例に限られず、窓部22は、一つだけ設けられるようにしてもよい。窓部22は、周方向における周状に形成されていてもよい。さらに、窓部22は、三以上設けられていてもよい。窓部22が複数設けられる場合、複数の窓部22の軸方向ADにおける配置は、図示された例のように一致していてもよいし、一部分において重複するようにしてもよいし、完全にずれていてもよい。
【0100】
図5に示すように、表示体70は、前側表示部材70Aと、軸方向ADにおける後方から前側表示部材70Aに隣接する後側表示部材70Bと、を有している。前側表示部材70A及び後側表示部材70Bは、互いに嵌合することによって、接続している。前側表示部材70Aの軸方向ADに沿った長さは、後側表示部材70Bの軸方向ADに沿った長さよりも長くなっている。また、表示体70は、軸方向ADにおける前方に開口した凹部74を設けられている。凹部74は、前側表示部材70Aに形成されている。凹部74は、内側壁面74a及び底壁面74bによって画成されている。内側壁面74aは、中心軸線CAを中心とした円筒状の形状を有している。底壁面74bは、軸方向ADと非平行な面によって形成され、典型的には軸方向ADと垂直な面となっている。凹部74の軸方向ADに沿った深さは、表示体70の軸方向ADに沿った長さの半分以上となっている。
【0101】
図2に示すように、シャープペンシル10の前方が鉛直方向下方に位置するようにして筆記を行う場合、表示体70は、芯収容空間S内に予備芯SLEが収容されていると、当該予備芯SLE上に支持される。このとき、図1に示すように、表示体70の前側表示部材70Aが、軸方向ADと垂直な方向に軸筒20の窓部22に対面する。つまり、図1及び図2に示すように、窓部22から前側表示部材70Aの外表面が観察される。一方、芯収容空間Sの予備芯SLEが無い場合、シャープペンシル10の前方が鉛直方向下方に位置する筆記時に、表示体70は、自重によって前方に移動し、図7に実線で示された最前方位置に位置するようになる。このとき、図6及び図7に示すように、表示体70の後側表示部材70Bが、軸方向ADと垂直な方向に軸筒20の窓部22に対面する。つまり、図6に示すように、窓部22から後側表示部材70Bの外表面が観察される。そして、図5に示すように、前側表示部材70A及び後側表示部材70Bの外周面には、異なる表示が設けられている。典型的には、前側表示部材70A及び後側表示部材70Bの外周面は、異なる色となっている。例えば、前側表示部材70A及び後側表示部材70Bは、異なる色の樹脂材料で成形されている。したがって、窓部22から観察される表示、図示された例では窓部22から観察される色に応じて、芯収容空間S内における予備芯SLEの有無を判断することができる。
【0102】
上述したように、表示体70は、円柱状に形成されている。ただし、図5に示すように、表示体70は、略円柱状の表示体本体部71と、表示体本体部71から突出したフランジ部72と、を有している。フランジ部72は、軸方向ADと非平行な方向に表示体本体部71から突出している。図示された例において、フランジ部72は、軸方向ADに垂直な方向に表示体本体部71から突出している。
【0103】
芯収容空間Sには、芯LE及び予備芯SLEが配置される。芯LE及び予備芯SLEが互いに擦れることにより、また、芯LE又は予備芯SLEが芯収容空間Sを画成する壁部等と擦れることにより、芯収容空間S内には芯粉が発生し得る。この芯粉が、表示体70と表示体70を収容する筒状部分TPとの間に入り込むことも考えられる。この場合、芯粉が筒状部分TPの内面に付着し、筒状部分TPが汚れてしまう。結果として、窓部22を介した表示体70の視認性が悪化してしまう。また、芯粉が、軸筒20の外部まで流出してしまうこともある。このような不具合を防止して、表示体70と筒状部分TP(図示された例では、ノック部材61の前方筒状部62)との間に、芯収容空間1内の芯粉が入り込んでしまうことを防止するため、フランジ部72が設けられている。
【0104】
したがって、図4及び図5に示すように、フランジ部72は、表示体70の前端に設けられている。この配置によれば、表示体70と筒状部分TPとの間への芯粉の流入を有効に防止することができる。また、窓部22を介した表示体70の視認性の悪化を回避する観点から、フランジ部72は、周方向において窓部22が設けられた範囲に少なくとも亘って延びている。とりわけ、図示された例において、フランジ部72は、表示体本体部71の周囲を環状に延びている。
【0105】
また、予備芯SLEが芯収容空間Sに収容されている場合、シャープペンシル10の前方を鉛直方向下方とする筆記状態において、表示体70は軸方向ADにおいて概ね一定の位置に配置されるようになる。一方、フランジ部72は、表示体70の移動時に表示体70を収容する筒状部分TPに付着した芯粉を拭き取る又はかき集めることから、フランジ部72には芯粉が付着しやすくなる。結果として、表示体70を収容する筒状部分TPのうちのフランジ部72に対面しやすくなる位置にも、芯粉が局所的に付着しやすくなる。この点を考慮して、図示された例では、図1及び図4に示すように、シャープペンシル10の筆記時に芯収容空間Sに収容された予備芯SLEによって軸方向ADにおける前方から支持された表示体70のフランジ部72は、窓部22よりも軸方向ADにおいて前方に位置している。このようにして窓部22に対してフランジ部72の軸方向ADにおける位置を調節しておくことで、芯粉が付着しやすいフランジ部72が窓部22から観察されない状態に維持することができ、また、窓部22に芯粉が局所的に付着することを効果的に防止することができる。
【0106】
なお、フランジ部72の軸方向ADに沿った長さは1.5mm以下であることが好ましい。フランジ部72の軸方向ADに沿った長さを短くすることで、表示体70を収容する筒状部分TPとフランジ部72とが擦れる面積を小さくすることができる。これにより、表示体70の軸方向ADへの移動時における摩擦を低減し、表示体70の移動を円滑化することができる。また、芯粉が付着した状態となり易いフランジ部72を小型化して、汚れを目立ちにくくすることができる。さらに、筒状部分TPの内面のうちのフランジ部72によって芯粉を擦り付けられ得る領域を効果的に小さくすることができる。
【0107】
さらに、図4及び図5に示すように、表示体70は、フランジ部72に加えて後方フランジ部73も有している。後方フランジ部73は、軸方向ADと非平行な方向に表示体本体部71から突出している。図示された例において、後方フランジ部73は、軸方向ADに垂直な方向に表示体本体部71から突出している。この後方フランジ部73を設けることで、芯収容空間S内の芯粉が軸筒20の外部まで流出することをより効果的に防止することができる。
【0108】
図示された例において、後方フランジ部73は、表示体本体部71の後端に設けられている。後方フランジ部73を表示体本体部71の後端に設けることで、表示体70を収容した筒状部分TPから芯粉が流出することをより効果的に防止することができる。また、芯粉が付着した状態となり易い後方フランジ部73が窓部22を介して視認されることを効果的に抑制することができ、汚れを目立ちにくくすることができる。
【0109】
また、後方フランジ部73は、表示体本体部71の周囲を環状に延びている。後方フランジ部73が表示体本体部71の周囲を周状に延びることで、表示体70を収容した筒状部分TPから芯粉が流出することをより効果的に防止することができる。
【0110】
さらに、予備芯SLEが芯収容空間Sに収容されていない場合、シャープペンシル10の前方を鉛直方向下方とする筆記状態において、表示体70は軸方向ADにおいて最も前方となる最前方位置(図7の実線の位置)に位置するようになる。一方、後方フランジ部73は、表示体70の移動時、後方フランジ部73を収容する筒状部分TPに付着した芯粉を拭き取ることから、芯粉は後方フランジ部73に付着しやすくなる。結果として、表示体70を収容する筒状部分TPのうちの後方フランジ部73に対面しやすくなる位置にも、芯粉が局所的に付着しやすくなる。この点を考慮して、軸方向ADにおいて最も前方となる最前方位置に移動した表示体70の後方フランジ部73は、窓部22よりも軸方向ADにおいて後方に位置していることが好ましい。このようにして窓部22に対して後方フランジ部73の軸方向ADにおける位置を調節しておくことで、芯粉が付着しやすい後方フランジ部73が窓部22から観察されない状態に維持することができ、また、窓部22に芯粉が局所的に付着することを効果的に防止することができる。
【0111】
なお、後方フランジ部73の軸方向ADに沿った長さは1.5mm以下であることが好ましい。後方フランジ部73の軸方向ADに沿った長さを短くすることで、表示体70を収容する筒状部分TPと後方フランジ部73とが擦れる面積を小さくすることができる。これにより、表示体70の軸方向ADへの移動時における摩擦を低減し、表示体70の移動を円滑化することができる。また、芯粉が付着した状態となり易い後方フランジ部73を小型化して、汚れを目立ちにくくすることができる。さらに、筒状部分TPの内面のうちの後方フランジ部73によって芯粉を擦り付けられ得る領域を効果的に小さくすることができる。
【0112】
上述したように、ノックユニット60のノック部材61は、表示体70を軸方向ADに移動可能に収容した筒状部分TPを有している。そして、図4及び図5に良く示されているように、筒状部分TP内での表示体70の軸方向ADへの移動を円滑化するため、筒状部分TPに通気用の穴Hが形成されている。とりわけ図示された例では、一対の穴Hが、対称的な位置に、言い換えると180°位相をずらして配置されている。
【0113】
穴Hは、軸方向ADにおいて最も後方に移動した最後方位置にある表示体70よりも軸方向ADにおいて後方に位置していることが好ましい。この例によれば、表示体70の後方において筒状部分TP内への空気の流入および筒状部分TPからの空気の流出を安定して行うことができる。これにより、筒状部分TP内における表示体70の軸方向ADへの移動を円滑化することができる。
【0114】
別の例として、穴Hが表示体70の軸方向ADにおける移動可能な範囲内に位置している場合には、図4に示す例のように、穴Hの軸方向ADに沿った長さ(例えば直径)は、後方フランジ部73の軸方向ADに沿った長さよりも長くなっていることが好ましい。この例によれば、表示体70の軸方向ADにおける位置によらず、例えば表示体70の後方フランジ部73が穴Hと軸方向ADにおける同一の領域に位置していたとしても、筒状部分TP内への空気の流入および筒状部分TP内からの空気の流出を安定して行うことができる。これにより、筒状部分TP内における表示体70の軸方向ADへの移動を安定かつ円滑化させることができる。なお、フランジ部72が穴Hと軸方向ADにおける同一の領域に位置し得る場合には、同様の理由から、穴Hの軸方向ADに沿った長さ(例えば直径)が、フランジ部72の軸方向ADに沿った長さよりも長くなっていることが好ましい。
【0115】
また、穴Hの平面視における当該穴Hの面積は、軸方向ADに垂直な断面における筒状部分TPと表示体70の最大面積となる部分との間の隙間の面積よりも大きくなっていることが好ましい。図示された例においては、穴Hの面積が、軸方向ADに垂直な断面における筒状部分TP(前方筒状部62)と表示体70のフランジ部72との間の隙間の面積よりも大きくなっており、且つ、軸方向ADに垂直な断面における筒状部分TPと表示体70の後方フランジ部73との間の隙間の面積よりも大きくなっていることが好ましい。さらに、図示された例において、穴Hの面積が、軸方向ADに垂直な断面における筒状部分TP(前方筒状部62)と表示体70の表示体本体部71との間の隙間の面積よりも大きくなっていることが更に好ましい。このような例によれば、筒状部分TP内への空気の流入および筒状部分TPからの空気の流出を有効に安定させることができる。
【0116】
以上において、シャープペンシル10の構成と、表示体70の作用、具体的には予備芯SLEの有無の表示および筒状部分TP内における円滑な移動が可能となることと、を説明した。次に、シャープペンシル10の筆記時における作用について説明する。
【0117】
図示されたシャープペンシル10では、ノック操作として、ノックユニット60を軸方向ADに沿った前方に押す。まず、ノックユニット60が、中間筒部材50とともに、中間付勢部材28の弾発力に抗して前進する。図4に示された中間筒部材50の内方リブ52と芯収容筒44の後端面44aとの間の隙間Gの長さだけ、ノックユニット60及び中間筒部材50が前進すると、内方リブ52と後端面44aとの接触により、中間筒部材50が芯保持ユニット40を前方に押す。さらに、ノック操作が継続し、芯保持ユニット40が前進する。芯保持ユニット40が口金ユニット30に対して前方に相対移動することで、芯保持ユニット40が芯LEを繰り出す。
【0118】
ここで、図8図11は、ノック操作時におけるシャープペンシル10を示している。これらの図において、ノック操作は、シャープペンシル10の前方が鉛直方向における下方に位置する姿勢で実施されることを想定している。
【0119】
図8及び図9には、芯収容空間S内に予備芯SLEを含んだシャープペンシル10が示されている。図示された例では、ノック操作によってノックユニット60が最前方に移動した状態において、窓部22と対面する領域には、表示体70の前側表示部材70Aが大部分を占めているが、後側表示部材70Bがわずかに視認されるようになる。すなわち、芯収容空間S内に予備芯SLEがある場合、ノック操作でノックユニット60を押し切った状態において、窓部22から観察され得る表示体70の表示が変化する。このようなノック操作にともなった表示の変化は、使用者の注意を引いて表示機能を改めて認識させることになり、シャープペンシル10の商品力を向上させることができる。
【0120】
同様に、図10及び図11は、芯収容空間S内に予備芯SLEを含んでいないシャープペンシル10のノック操作時を示している。図示された例では、ノック操作によってノックユニット60が最前方に移動した状態において、窓部22と対面する領域には、表示体70の後側表示部材70Bがわずかに残ることになる。このとき、当該領域の50%を超える大部分に表示体70は対面していない。したがって、一対の窓部22を介してシャープペンシル10の反対側を視認することが可能となる。したがって、芯収容空間S内に予備芯SLEがない場合にも、ノック操作でノックユニット60を押し切った状態において、窓部22から観察され得る表示が変化する。とりわけ窓部22を介してシャープペンシル10の反対側が視認されるといった意外性により、使用者の注意を大きく引くことができる。これにより、使用者に表示機能を改めて認識させることになり、シャープペンシル10の商品力を大きく向上させることができる。
【0121】
また、図示されたシャープペンシル10において、表示体70は圧縮ばね等により付勢されていない。したがって、シャープペンシル10の使用中、シャープペンシル10の前方が鉛直方向における下方に位置する状態と鉛直方向における上方に位置する状態との間で、シャープペンシル10の姿勢(傾き)を変化させることにより、ノックユニット60の筒状部分TP内で表示体70が軸方向ADに移動する。すなわち、シャープペンシル10の傾きを変化させることで、窓部22から観察される表示を変化させることができ、これによっても、使用者に表示機能を改めて認識させて、シャープペンシル10の商品力を向上させることができる。
【0122】
ところで、図2及び図3に示すように、シャープペンシル10は、芯収容筒44に貫通された重量体48を更に有している。重量体48は、金属により作製された筒状の部材である。重量体48は、芯保持ユニット40に対して軸方向ADに移動可能となっている。重量体48は、中間筒部材50に接触するまで後方に移動することができる。また、重量体48は、芯保持ユニット40のチャック保持部材42の後端面に接触するまで前方に移動することができる。重量体48は、シャープペンシル10を前方に振った際に、その慣性力によってチャック保持部材42を含む芯保持ユニット40を口金ユニット30に対して前方に相対移動させる。つまり、シャープペンシル10の使用者は、ノックユニット60を押すことに代えて、前方に振ることによっても芯LEを繰り出すことが可能となる。
【0123】
図示された例では、中間筒部材50が、芯保持ユニット40の後方に設けられ、軸筒20内に軸方向ADに移動可能となっている。そして、中間筒部材50は、筒状本体部51と、筒状本体部51の内面から突出した内方リブ52と、を有し、軸方向ADに沿って前方に移動する際に内方リブ52が芯収容筒44の後端面44aに接触して芯保持ユニット40を前方に押すようになっている。このような中間筒部材50を設けることで、中間筒部材50に対して芯保持ユニット40を軸方向ADに相対移動可能とすることができる。このような構成によれば、中間筒部材50及びこの中間筒部材50に装着され得るノックユニット60を軸方向ADにおいて停止させた状態で、芯保持ユニット40を軸方向ADに移動させる構成とすることができる。例えば、重量体を用いてシャープペンシル10を軸方向ADに振ることで芯LEの繰り出しを行う構成や、芯LEへ力が加えられた際に芯保持ユニット40を後退させて芯LEを保護し得る構成に対して、ノックユニット60に影響を及ぼさない点において、好適である。
【0124】
とりわけ、シャープペンシル10を前後に振った場合、重量体48は後方にも移動する。後方に移動した重量体48は、ノックユニット60ではなく、中間筒部材50に衝突する。中間筒部材50は、軸筒20の後内側軸筒20Eに設けられた突起20Ea(図4参照)によって後方への移動を規制されている。したがって、シャープペンシル10を前後に振った際に、ノックユニット60が軸筒20から抜けてしまうことを効果的に回避することができる。
【0125】
さらに、芯収容空間S内に予備芯SLEが存在する場合には、内方リブ52と芯収容筒44の後端面44aとの隙間G分だけノックユニット60が前進する間、表示体70は予備芯SLEによって下方から支持されている。この間、芯収容筒44を含む芯保持ユニット40の軸方向ADにおける位置は維持されているので、表示体70の軸方向ADにおける位置も変化しない。その後、ノックユニット60が芯保持ユニット40とともに前進することで、表示体70も前進して軸方向ADにおける位置を変化させる。すなわち、使用者のノックユニット60に対する操作に遅れて、表示体70の移動が開始して窓部22から観察される表示体70の表示が変化する。このような表示の切り替わりの意外性によっても、使用者の注意を大きく引くことができる。これにより、使用者に表示機能を改めて認識させることになり、シャープペンシル10の商品力を大きく向上させることができる。
【0126】
なお、芯収容空間S内に予備芯SLEが存在しない場合、表示体70は、ノックユニット60の規制凸部62c(図5参照)によって、下方から支持される。したがって、表示体70は、芯保持ユニット40が停止している間も、ノックユニット60の前進に同期して前進する。すなわち、芯収容空間S内における予備芯SLEの有無に応じて、窓部22から観察される表示体70の表示の切り替わりタイミングが異なる。この点によっても、使用者の注意を引き、シャープペンシル10の商品力を向上させることができる。
【0127】
また図示された例において、芯収容空間Sと芯保持ユニット40のチャック41との間を繋ぐ芯送出孔LEAは、比較的長くなっている。具体的な構成として、チャック41を保持するチャック保持部材42およびチャック保持部材42に保持された芯収容筒44内に、補助筒材(内側補助筒45及び内側誘導部材46)を配置して、芯送出孔LEAを長く確保している。そして、図7に示すように、芯収容空間Sの前端と口金ユニット30の前端との間の軸方向ADに沿った長さLBは、予備芯SLEの長さの半分よりも長くなっており、とりわけ図示された例では予備芯SLEの長さLXの2/3よりも長く、更には予備芯SLEの長さLXの3/4よりも長くなっている。このようなシャープペンシル10によれば、チャック41によって保持された芯LEが軸方向ADに対して大きく傾斜することを効果的に防止することができる。これにより、芯保持ユニット40からの芯LEの繰り出しを円滑に行うことができる。
【0128】
ところで、このシャープペンシル10では、シャープペンシル10の前方が鉛直方向下方に位置するようになる通常の筆記時およびノック操作時に、予備芯SLE上に表示体70が載置される。そして、図3に示すように、前壁面FSは、軸方向ADに垂直な方向に沿って芯送出孔LEAから離間するにつれて軸方向ADにおける後方に傾いている。したがって、芯収容空間S内の予備芯SLEは、表示体70の重さによって押され、芯収容空間Sの前壁面FSに開口した芯送出孔LEAに誘導される。すなわち、表示体70の重さを利用して、芯収容空間S内の予備芯SLEを芯送出孔LEAに円滑に供給することができる。
【0129】
その一方で、図7に示すように、収容空間Sの前端と口金ユニット30の前端との間の軸方向ADに沿った長さLBは、予備芯SLEの長さよりも短い。すなわち、チャック41によって把持された芯LEの消耗量が少ない場合、図2に示すように、当該芯LEは前壁面FSから芯収容空間S内に突出する。したがって、チャック41に保持されて後端が芯収容空間Sに突出した芯LEと前壁面FSとの間に、予備芯SLEが楔のように入り込んで芯LEの円滑な繰り出しが困難になる可能性がある。
【0130】
このような不具合に対して、前壁面FSの軸方向ADに対する傾斜角度θxは、従来のシャープペンシルとは異なり、小さ過ぎない方がよい。芯LEの繰り出しを円滑化する観点から、傾斜角度θxは、45°より大きく85°未満であることが好ましく、60°より大きく85°未満であることがより好ましく、70°より大きく85°未満であることが更に好ましく、75°より大きく85°未満であることが最も好ましい。傾斜角度θxをこのように設定しておくことで、チャック41に保持されて芯収容空間Sまで延びる芯LEと前壁面FSとの間に、表示体70の重さによって押された予備芯SLEの先端が嵌まり込むことを効果的に回避することができる。これにより、芯送出孔LEAに挿入された芯LEの繰り出しが予備芯SLEによって阻害されてしまうことを効果的に抑制することができ、その一方で、芯送出孔LEAから芯LEが軸方向後方に延び出していない場合には、予備芯SLEを芯送出孔LEAへ安定して誘導することができる。
【0131】
なお、図示された例において、前壁面FSは回転対称となっている。とりわけ、前壁面FSは、円錐台の側面状の形状を有している。このような前壁面FSによれば、芯収容空間S内に多数の予備芯SLEを分散して収容することができ、且つ、芯送出孔LEAから芯LEが軸方向後方に延び出していない場合には、予備芯SLEを芯送出孔LEAへ安定して誘導することができる。
【0132】
更にこのような不具合は、芯収容空間S内における予備芯SLEの軸方向ADに対する傾斜角度が大きくなると、顕著となる。そして、本実施の形態では、芯収容空間S内での予備芯SLEの傾斜角度を小さくするための工夫として、芯収容空間Sは、軸方向ADにおける中間部に、内寸法(内幅、内径)が狭くなった縮幅部SCを有している。とりわけ図示された例において、縮幅部SCは、中間筒部材50の内方リブ52によって形成されている。そして、内方リブ52が設けられている位置での中間筒部材50の内幅(内径)は、芯収容筒44の内幅(内径)よりも小さくなっている。このような内方リブ52によって構成される縮幅部SCを設けることで、芯収容空間Sに収容された予備芯SLEが軸方向ADに対して大きく傾斜することを効果的に防止することができる。したがって、チャック41に保持されて芯収容空間Sまで延びる芯LEと芯収容空間Sを前方から区画する前壁面FSとの間に、表示体70の重さによって押された予備芯SLEの先端が楔のように嵌まり込むことを効果的に回避することができる。結果として、ノック操作時における芯LEの繰り出しを安定且つ円滑とすることができる。あわせて、芯収容空間Sに収容された予備芯SLEが後端において広がることを効果的に防止することができる。したがって、ノックユニット60の中間筒部材50への取り付けを容易かつ安定して行うことができる。
【0133】
特に図示された例では、芯収容空間Sの前端から縮幅部SCまでの軸方向ADに沿った長さLC(図2参照)は、予備芯SLEの長さの半分よりも長くなっている。このように縮幅部SCの軸方向における位置を調節することで、芯収容空間Sに収容された予備芯SLEが軸方向に対して大きく傾斜することを有効に防止することができる。また、芯収容空間Sに収容された予備芯SLEが後端において広がることを有効に防止することができる。
【0134】
ただし上述したように、図示された例とは異なり、内方リブ52が設けられている位置での中間筒部材50の内幅が芯収容筒44の内幅よりも大きくなっていてもよい。このような中間筒部材50によれば、芯収容空間Sの内方リブ52が設けられている位置において、芯LEが詰まってしまうことを効果的に防止することができる。また、口金ユニット30から新しい予備芯SLEをシャープペンシル10内に挿入して芯収容空間S内に芯LEを補充した場合に、芯LEが内方リブ52で引っ掛かってしまうことを効果的に防止することができる。
【0135】
さらに、図示された例とは異なり、内方リブ52が設けられている位置での中間筒部材50の内幅が芯収容筒44の内幅と同一であるようにしてもよい。このような中間筒部材50によれば、芯収容空間Sの内方リブ52が設けられている位置において、芯LEが詰まってしまうことを効果的に防止することができる。また、口金ユニット30から新しい予備芯SLEをシャープペンシル10内に挿入して芯収容空間S内に芯LEを補充する場合や、中間筒部材50を介して芯収容筒44へ芯LEを補充する場合に、芯LEが内方リブ52で引っ掛かってしまうことを効果的に防止することができる。さらに、中間筒部材50を介して芯保持ユニット40を安定して軸方向前方に移動させることができる。
【0136】
次に、予備芯SLEの補充について説明する。芯収容空間Sに予備芯SLEを補充する場合、シャープペンシル10からノックユニット60を後方に引き抜く。ノックユニット60を引き抜くことで、図4から理解され得るように、軸筒20内で後方に向けて中間筒部材50が露出する。中間筒部材50は、最後方側に、幅広の(拡径した)後側筒部51Bを位置している。この後側筒部51B内に予備芯SLEを挿入することで、予備芯SLEは、前方に向けて先細りした中間テーパ部51Cを介して、前側筒部51A及び芯収容筒44に誘導される。予備芯SLEを挿入した後、ノックユニット60を軸筒20の後方に挿入する。上述したように、中間筒部材50の内方リブ52によって、芯収容空間Sに収容された複数の予備芯SLEが後端において広がることが防止される。これにより、窓部22および中間筒部材50に誘導されるようにして、ノックユニット60をシャープペンシル10に容易に取り付けることができる。
【0137】
ところで、シャープペンシル10の前端開口30aから予備芯SLEを挿入することも考えられる。このとき、図12に示すように、前端開口30aから新たに挿入された予備芯SLEの後端上に、芯収容空間S内に既に収容されていた予備芯SLEの先端が重なることも想定され得る。つまり、シャープペンシル10内において、二本の予備芯SLEが軸方向ADに直列に並ぶことが想定され得る。そして、後方に位置する予備芯SLEは、前方に位置する予備芯SLEによって、芯収容空間Sの前壁面FSから後方に押し込まれる。ここで、芯収容空間Sの軸方向への長さが十分でない場合、前方に位置する予備芯SLEの後端面と芯収容空間Sを後方から区画する後壁面BSとの間に、後方に位置する予備芯SLEが挟まれる。結果として、二本の予備芯SLEのいずれかが折れてしまう可能性がある。また、このような不具合は、シャープペンシル10の前端開口30aから予備芯SLEを挿入する場合だけでなく、長く繰り出した芯LEを再びシャープペンシル10内に戻す際にも生じ得る。
【0138】
そこで、本実施の形態では、表示体70が軸方向ADに沿って最も後方に移動した状態(図7に二点鎖線で示した最後方位置)での芯収容空間Sの後端と、口金ユニット30の前端と、の間の軸方向ADに沿った長さLA(図7参照)は、芯収容空間S内に収容される予備芯SLEの長さLX(図2参照)の二倍以上となっている。したがって、チャック41に保持された芯LEの後端に予備芯SLEが軸方向ADに重なって配置された場合にも、表示体70が後方に移動することで、当該予備芯SLEを芯収容空間Sに収容することが可能となる。例えば、口金ユニット30から新しい予備芯SLEをシャープペンシル10内に挿入した場合や、口金ユニット30から繰り出した芯LEをシャープペンシル10内に戻した場合に、芯を最後まで押し込むことができなくなることや、芯収容空間で芯が折れてしまうといったことを、効果的に回避することができる。
【0139】
なお、図示の例においては、ノックユニット60が中間筒部材50とともに芯保持ユニット40に向けて前方に相対移動することができる。このときの相対移動量は、非ノック時(ノックユニット60を押していない状態)における、芯収容筒44の後端面44aと中間筒部材50の内方リブ52との軸方向ADに沿った隙間Gの長さとなる。したがって、図示された例では、表示体70が軸方向ADに沿って最も後方に移動した状態での芯収容空間Sの後端と、口金ユニット30の前端と、の間の軸方向ADに沿った長さLA(図7参照)が、芯収容空間S内に収容される予備芯SLEの長さLX(図2参照)の二倍の長さと、非ノック時における隙間Gの長さと、を足し合わせた長さ以上となっていることが、芯を最後まで後方に押し込むことができなくなることや芯収容空間で芯が折れてしまうといった不具合の回避に対して、より好ましい。ただし、ノック操作を行った場合、通常、後方に位置する予備芯SLEは、芯送出孔LEAに挿入された前方の芯LEの後端から、軸方向ADと非平行な方向にずれるように誘導される。したがって、長さLA(図7参照)が、予備芯SLEの長さLXの二倍の長さと、非ノック時における隙間Gの長さと、を足し合わせた長さ以上となることは、必須の条件ではなく、長さLA(図7参照)が予備芯SLEの長さLXの二倍の長さ以上となっていることで、有効に不具合に対処し得る。なお、隙間Gの軸方向ADにおける長さは、芯収容空間Sを前方から区画する前壁面FSと、芯収容空間Sを後方から区画する表示体70を軸方向ADに移動可能に収容した筒状部分TPとの、軸方向ADへの相対移動可能な長さとも呼べる。
【0140】
また、通常のノック操作中、芯保持ユニット40の締具43が口金ユニット30の規制段部32aに接触することで、チャック41の先端部41aは芯LEを解放する。チャック41から解放された芯LEは、芯保持部材37によって静止した状態に保持される。つまり、一回のノック操作によって繰り出される芯の長さは、一回のノック操作時に芯保持ユニット40が前進する長さよりも短い。そして、芯LEの後方に予備芯SLEが直列に並んでいる場合、ノックユニット60と共に前進する表示体70が、予備芯SLEを介して芯LEを前方に押し出すようになることが想定される。つまり、チャック41に保持された芯LEに後方から重なった予備芯SLEを、ノック操作時に、ノックユニット60及び表示体70によって押してしまい、一回のノック操作で繰り出される長さよりも長く芯LEが繰り出されてしまうといった不具合が生じかねない。このような不具合を回避して、一回のノック操作で繰り出される芯の長さを一定にする観点から、表示体70が軸方向ADに沿って最も後方に移動した状態での芯収容空間Sの後端と、口金ユニット30の前端と、の間の軸方向ADに沿った長さLA(図7参照)が、芯収容空間S内に収容される予備芯SLEの長さLX(図2参照)の二倍の長さに、一回のノック操作時に芯保持ユニット40が前進する長さと一回のノック操作で予定された芯の繰り出し長さとの差を、足し合わせた長さ以上となっているとより好ましい。
【0141】
とりわけ上述したシャープペンシル10では隙間Gが設定されている。したがって、一回のノック操作で繰り出される芯の長さを一定にする観点において、長さLA(図7参照)が、予備芯SLEの長さLX(図2参照)の二倍の長さに、一回のノック操作時に芯保持ユニット40が前進する長さと一回のノック操作時に予定された芯の繰り出し長さとの差と、隙間Gの長さと、を足し合わせた長さ以上になっていることが更に好ましい。
【0142】
更に安全を見ると、表示体70が軸方向ADに沿って最も後方に移動した状態での芯収容空間Sの後端と、口金ユニット30の前端と、の間の軸方向ADに沿った長さLA(図7参照)が、芯収容空間S内に収容される予備芯SLEの長さLX(図2参照)の二倍の長さに、一回のノック操作時にノックユニット60が前進する長さを足し合わせた長さとなっていることが更に好ましい。言い換えると、表示体70が軸方向ADに沿って最も後方に移動した状態での芯収容空間Sの後端と、口金ユニット30の前端と、の間のノック操作時における軸方向ADに沿った長さが、芯収容空間S内に収容される予備芯SLEの長さLX(図2参照)の二倍の長さ以上となっていることが更に好ましい。このような設定によれば、芯保持ユニット40に保持された芯LEの後端に予備芯SLEが軸方向ADに並んだとしても、予備芯SLEが折れてしまうことや、一回のノック操作で繰り出される長さよりも大きく芯LEが繰り出されてしまうことを、より安定して防止することができる。
【0143】
ただし、上述したように、ノック操作を行った場合、通常、後方に位置する予備芯SLEは、芯送出孔LEAに挿入された前方の芯LEの後端から、軸方向ADと非平行な方向にずれるように誘導される。したがって、長さLA(図7参照)が、予備芯SLEの長さLXの二倍の長さよりも長くなることは、より好ましい条件ではあって必須の条件ではなく、長さLA(図7参照)が予備芯SLEの長さLXの二倍の長さ以上となっていることで、予備芯SLEの破損を防止するといった有効な作用効果を奏することが可能となる。
【0144】
以上のように、図示されたシャープペンシル10では、表示体70が軸方向ADに沿って最も後方に移動した状態(最後方位置)での芯収容空間Sの後端と口金ユニット30の前端との間の軸方向ADに沿った長さLAを十分に長く確保している。しかしながら、表示体70は、軸方向ADにおける前方に開口した凹部74を設けられている。この具体例によれば、表示体70の凹部74が芯収容空間Sの一部として機能する。したがって、シャープペンシル10の軸方向ADに沿った長さの大型化を抑制しながら、芯収容空間Sの軸方向ADに沿った長さを十分長く確保することができる。また併せて、表示体70の外周面上に軸方向に大きく広がる表示スペースを確保することができる。
【0145】
とりわけ、図示された例において、凹部74の軸方向ADに沿った深さLDは、表示体70の軸方向ADに沿った長さLLの半分よりも大きくなっている。この条件は、シャープペンシル10の軸方向ADに沿った長さの大型化を抑制しながら、表示体70の表示スペースを大きくし且つ芯収容空間Sの長さを長くする上で、優位な条件となる。したがって、このような表示体70を用いることで、シャープペンシル10の軸方向ADに沿った長さの大型化を抑制しながら、表示体70の表示スペースを有効に大きくし且つ芯収容空間Sの長さを有効に長くすることができる。
【0146】
図示された例において、表示体70は、凹部74を区画する内側壁面74a及び底壁面74bを有している。そして、芯収容空間Sの後壁面BSを形成する底壁面74bは、軸方向ADと非平行な面となっている。とりわけ図示された例において、底壁面74bは軸方向ADに垂直な面となっている。したがって、芯収容空間Sは軸方向ADに直交する方向に幾らか広がり、且つ、芯収容空間S内に収容された予備芯SLEは後壁面BSによって軸方向ADに垂直な方向への移動を誘導される。これにより、チャック41に保持された芯LEに予備芯SLEが後方から接触して軸方向ADに並んだ状態を、解消しやすくすることができる。
【0147】
なお、図示された例に限られず、底壁面74bは、軸方向ADに対して傾斜した面となっていてもよい。底壁面74bは、径方向外方に向けて後方となるように傾斜した面であってもよいし、径方向外方に向けて前方となるように傾斜した面であってもよい。底壁面74bが径方向外方に向けて後方となるように傾斜した面となっている場合、芯収容空間Sに収容された予備芯SLEを、中心軸線CAから径方向外方に分散させることができる。底壁面74bが径方向外方に向けて前方となるように傾斜した面となっている場合、芯収容空間Sに収容された予備芯SLEを径方向において中心軸線CAに集めて、芯送出孔LEAへの予備芯SLEの誘導を更に円滑化させることができる。
【0148】
ところで、筆記を行う際、通常、シャープペンシル10は、中心軸線CAが紙面の法線方向に対して傾斜するように、使用者によって把持される。このため、前端開口30aから突出した筆記芯LEには、軸方向ADの成分と軸方向ADに垂直な方向への成分とを含む筆圧が加えられる。図示されたシャープペンシル10は、このような筆圧から筆記芯LEを保護する機能を有している。以下、図13を参照して、シャープペンシル10が筆記芯LEを保護する際の作用について説明する。図13は、筆記芯LEに対して軸方向ADに垂直な方向(径方向)に所定の値より大きい力(筆圧)が加えられている状態での、図1のシャープペンシル10の前方部分を示す縦断面図である。
【0149】
図13に示すように、筆記芯LEに高い筆圧が加えられると、軸方向ADに垂直な方向に沿った筆圧の成分によって、口金ユニット30が全体的に中心軸線CAに対して傾動する。このとき、口金ユニット30の口金基端部材32が、軸筒20の内面に接触するようになる。具体的には、第1基端部材33のテーパ壁部33aが、前軸筒20Aの誘導肩部20Aaに接触する。第1基端部材33のテーパ壁部33aは、口金基端部材32の前端部分を構成している。テーパ壁部33aは、前方に向けて先細りする円錐台の側面と同様の外形状を有している。一方、誘導肩部20Aaは、軸筒20の内方に突出する突出部として形成されている。誘導肩部20Aaは、前軸筒20Aの前方部分に設けられ、軸方向ADに垂直な方向にテーパ壁部33aと対面している。テーパ壁部33aが誘導肩部20Aaに押し付けられることで、口金ユニット30の口金基端部材32は、口金付勢部材38の弾発力に抗して、軸筒20に対して後方に移動する。このとき、口金基端部材32に同期して、口金基端部材32に保持された芯保持ユニット40も軸筒20に対して軸方向後方に相対移動する。
【0150】
一方、口金ユニット30の口金先端部材31は、先端付勢部材36によって、口金基端部材32に対して前方に付勢されている。したがって、口金先端部材31は、口金基端部材32に対して前方に相対移動し、軸筒20に前端部分に接触した状態に維持される。結果として、芯保持ユニット40に保持された筆記芯LEは後方に移動し、口金先端部材31は軸方向ADにおける位置を概ね維持することができる。これにより、前端開口30aから突出した筆記芯LEの長さが短くなり、この芯LEが折れてしまうことを効果的に回避することができる。
【0151】
軸方向ADに沿った筆圧が筆記芯LEに加えられた場合、芯LEを保持した芯保持ユニット40と口金ユニット30の口金基端部材32が、口金付勢部材38の弾発力に抗して、軸筒20に対して後方に移動する。この際、口金先端部材31は、先端付勢部材36によって、口金基端部材32に対して前方に付勢されている。結果として、芯保持ユニット40に保持された筆記芯LEは後方に移動し、口金先端部材31は軸方向ADにおける位置を概ね維持することができる。これにより、前端開口30aから突出した筆記芯LEの長さが短くなり、この芯LEが折れてしまうことを効果的に回避することができる。
【0152】
以上に説明してきた一実施の形態において、シャープペンシル10は、軸筒20と、軸筒20の前端に支持された口金ユニット30と、口金ユニット30に対して相対移動することで保持した芯LEを口金ユニット30に向けて繰り出すチャック41を有した芯保持ユニット40と、軸方向ADに移動可能に設けられた表示体70と、を有している。表示体70は、軸筒20内におけるチャック41の後方に形成された芯収容空間Sを後方から区画する。少なくとも特定の位置にある表示体70を軸筒20の外部から観察可能となっている。
【0153】
とりわけ一実施の形態において、表示体70が軸方向ADに沿って最も後方に移動した状態での芯収容空間Sの後端と口金ユニット30の前端との間の軸方向ADに沿った長さLAは、芯収容空間S内に収容される未使用の予備芯LXの長さの二倍以上となっている。したがって、チャック41に保持された芯LEの後端に予備芯SLEが軸方向ADに重なって配置された場合にも、表示体70が後方に移動することで、当該予備芯SLEを芯収容空間Sに収容することが可能となる。例えば、口金ユニット30から新しい予備芯SLEをシャープペンシル10内に挿入した場合や、口金ユニット30から繰り出した芯LEをシャープペンシル10内に戻した場合に、芯LEを最後まで押し込むことができなくなることや、芯収容空間Sで芯が折れてしまうといったことを、効果的に回避することができる。
【0154】
また、以上に説明してきた一実施の形態において、芯収容空間Sを軸方向ADにおける前側から区画する前壁面FSには、一本の芯のみを挿入な可能な内径(内寸法、内幅)を有し且つチャック41に通じる芯送出孔LEAが、開口している。前壁面FSは、軸方向ADに垂直な方向に沿って芯送出孔LEAから離間するにつれて軸方向ADにおける後方に傾いている。前壁面FSの軸方向ADに対する傾斜角度θxは、45°より大きく85°未満となっている。したがって、芯送出孔LEAに向けて芯収容空間Sが軸方向前方に先細りするよう、芯収容空間Sを軸方向前方から区画する前壁面FSは傾斜している。このような前壁面FSによれば、芯収容空間S内の予備芯SLEを芯送出孔LEAに向けて誘導することができる。その一方で、予備芯SLEは表示体70の重さによって軸方向前方に押されている。このため、芯送出孔LEAに前方部分が挿入されて芯収容空間Sに後方部分が延び出した芯LEと、前壁面FSとの間に、表示体70の重さによって予備芯SLEが楔のように押し込まれることも想定される。この場合、芯送出孔LEAに挿入された芯の繰り出しが、予備芯SLEによって阻害される可能性もある。ただし、ここで説明した具体例によれば、前壁面FSの軸方向ADに対する傾斜角度θxが45°より大きく設定されている。したがって、チャック41に保持されて芯収容空間Sまで延びる芯LEと前壁面FSとの間に、表示体70の重さによって押された予備芯SLEの先端が嵌まり込むことを効果的に回避することができる。これにより、芯送出孔LEAに挿入された芯の繰り出しが予備芯SLEによって阻害されてしまうことを効果的に抑制することができ、その一方で、芯送出孔LEAから芯が軸方向後方に延び出していない場合には、予備芯SLEを芯送出孔LEAへ安定して誘導することができる。
【0155】
さらに以上に説明してきた一実施の形態において、芯収容空間Sは軸方向ADにおける中間部に幅が狭くなった縮幅部SCを有している。このような芯収容空間Sによれば、芯収容空間Sに収容された予備芯SLEが軸方向ADに対して大きく傾斜することを効果的に防止することができる。したがって、チャック41に保持されて芯収容空間Sまで延びる芯と芯収容空間Sを前方から区画する前壁面FSとの間に、表示体70の重さによって押された予備芯SLEの前端が楔のように嵌まり込むことを効果的に回避することができる。結果として、ノック操作時における芯の繰り出しを安定且つ円滑とすることができる。また、芯収容空間Sに収容された予備芯SLEが後端において広がることを効果的に防止することができるので、ノックユニット60の取り付けを安定して容易に行うことができる。
【0156】
さらに上述した一実施の形態の一具体例において、シャープペンシル10は、軸筒20内に軸方向ADに移動可能に設けられた中間筒部材50を更に有している。芯保持ユニット40は、チャック41の軸方向ADにおける後方に位置して芯収容空間Sの少なくとも一部分を形成し且つ開口した後端を中間筒部材50内に挿入された芯収容筒44を、更に有している。中間筒部材50は、筒状本体部51と、筒状本体部51の内面から突出した内方リブ52と、を有している。軸方向ADに沿って前方に移動する際に内方リブ52が芯収容筒44の後端面44aに接触して芯保持ユニット40を前方に押す。このような具体例において、軸筒20に支持された中間筒部材50を設けることで、中間筒部材50に対して芯保持ユニット40を軸方向ADに相対移動可能とすることができる。このような構成によれば、中間筒部材50およびこの中間筒部材50に装着され得るノックユニット60を軸方向ADにおいて停止させた状態で、芯保持ユニット40を軸方向ADに移動させる構成とすることができる。例えば、重量体48を用いてシャープペンシル10を軸方向ADに振ることで芯LEの繰り出しを行う構成や、筆記時に芯LEへ力が加えられた際に芯保持ユニット40を後退させて芯LEを保護し得る構成に対して、好適である。
【0157】
さらに、ノック操作時、中間筒部材50の軸方向ADへの移動が開始してから芯保持ユニット40が軸方向ADへ移動を開始する迄の間、芯収容空間Sに予備芯SLEがある場合には表示体70は停止したままであり、芯収容空間Sに予備芯SLEがない場合には表示体70は中間筒部材50とともに移動する。このように表示体70が意外性のある動作を行うことで、表示体70が使用者の注意を引くことができ、表示体70を設けたシャープペンシル10の商品力を効果的に向上させることができる。
【0158】
さらに、以上に説明してきた一実施の形態において、表示体70は、軸方向ADに延びる表示体本体部71と、表示体本体部71の前端部分に設けられ軸方向ADと非平行な方向に表示体本体部71から突出したフランジ部72と、を有している。フランジ部72を設けることで、表示体70と、表示体70を軸方向ADに移動可能に収容する筒状部分TPとの間に、芯収容空間S内の芯粉が入り込んでしまうことを効果的に防止することができる。これにより、筒状部分TPの内面が芯粉で汚れてしまい、筒状部分TPの外部から表示体70を観察しにくくなることを効果的に回避することができる。また、軸筒20の外部まで芯粉が流出してしまうことも効果的に回避することができる。
【0159】
上述した一実施の形態の一具体例において、フランジ部72は、表示体本体部71の前端部分に設けられている。フランジ部72を表示体本体部71の前端部分に設けることで、表示体70と筒状部分TPとの間に芯粉が入り込むことを効果的に防止することができる。また、表示体本体部71の前端部分において芯粉の侵入を防止することができるので、筒状部分TPの内面に表示体70によって芯粉が擦り付けられることを効果的に防止することができる。
【0160】
上述した一実施の形態の一具体例において、フランジ部72は表示体本体部71の周囲を周状に延びている。フランジ部72が表示体本体部71の周囲を周状に延びることで、表示体70と筒状部分TPとの間に芯粉が入り込むことを効果的に防止することができる。
【0161】
上述した一実施の形態の一具体例において、軸筒20には、軸筒20の内部を観察可能とする窓部22が、軸方向ADにおいて表示体70が移動可能となる範囲と少なくとも部分的に重なるようにして設けられている。窓部22は、軸筒20の周方向における一部分のみに設けられている。フランジ部72は、周方向において窓部22が設けられた範囲に少なくとも亘って延びている。窓部22に対応してフランジ部72を設けることにより、窓部22と表示体70との間への芯粉の侵入を効果的に防止することができる。これにより、表示体70を観察するための窓部22への芯粉の付着を効果的に防止することができる。
【0162】
上述した一実施の形態の一具体例において、表示体70は、フランジ部72の軸方向ADにおける後方に位置し軸方向ADと非平行な方向に表示体本体部71から突出した後方フランジ部73を、更に有している。後方フランジ部73を表示体本体部71に設けることで、表示体70を軸方向ADに移動可能に収容した筒状部分TPから芯粉が流出して、当該芯粉がシャープペンシル10の外部に飛散することをより効果的に防止することができる。
【0163】
さらに、以上に説明してきた一実施の形態において、表示体70を軸方向ADに移動可能に収容した筒状部分TPに通気用の穴Hが形成されている。したがって、筒状部分TP内における表示体70の軸方向ADへの移動を円滑化することができる。これにより、予備芯SLEの有無に応じて表示体70の配置が軸方向ADに迅速に変化するようになり、芯収容空間Sにおける予備芯SLEの有無を表示体70の配置によって高精度に表示することが可能となる。また、表示体70の軸方向ADへの移動を円滑化することができるので、表示体70と筒状部分TPとの間の隙間、例えば表示体70のフランジ部72や後方フランジ部73と筒状部分TPとの間の隙間を小さくすることができる。これにより、芯粉が表示体70と筒状部分TPとの間に流入することを効果的に防止することができる。
【0164】
具体例を参照して一実施の形態を説明してきたが、これらの具体例が一実施の形態を限定することを意図していない。上述した一実施の形態は、その他の様々な具体例で実施されることが可能であり、その要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更、追加等を行うことができる。
【0165】
以下、図面を参照しながら、変形の一例について説明する。以下の説明および以下の説明で用いる図面では、上述した具体例と同様に構成され得る部分について、上述の具体例における対応する部分に対して用いた符号と同一の符号を用いるとともに、重複する説明を省略する。
【0166】
例えば上述した具体例において、軸筒20には、軸筒20の内部を観察可能とする窓部22が、軸方向ADにおいて表示体70が移動可能となる範囲と少なくとも部分的に重なるようにして設けられている例を示した。窓部22は、軸筒20の周方向における一部の領域に位置している。この例において、図14に示すように、表示体70を軸方向ADに移動可能に収容した筒状部分TPの周方向において窓部22と同一となる領域の内面に、凹部23が形成されていてもよい。ここで図14は、シャープペンシル10の一変形例を説明するための横断面図(軸方向ADに垂直な面に沿った断面図)であって、軸方向ADにおける窓部22が配置された位置での横断面図である。図14に示された例において、筒状部分TPの内面は、周方向における窓部22と同一となる領域において、表示体70のフランジ部72,73から離間するようになる。これにより、筒状部分TPのうちの窓部22に対面する領域の内面に、芯粉が付着することを効果的に防止することができ、結果として、窓部22を通して芯粉の汚れが視認されることを効果的に防止することができる。
【0167】
また図示された例において、ノックユニット60が、表示体70を軸方向ADに移動可能に保持する筒状部分TPを構成する例を示したが、既に説明したように、この例に限られない。軸筒20が、表示体70を軸方向ADに移動可能に収容する筒状部分TPを構成するようにしてもよい。
【0168】
さらに図示された例において、表示体70が筒状部分TP内に軸方向ADに移動可能に支持されている例を示した。この例において、表示体70が軸方向における前方に付勢されるようにしてもよい。このような例によれば、シャープペンシル10の前方が、鉛直方向における下方に位置する場合だけでなく、鉛直方向における上方に位置する場合にも、表示体70の位置によって、芯収容空間S内における予備芯SLEの有無を表示することができる。
【0169】
さらに図示された例において、キャップ部材65がノック部材61に螺合し、ノックユニット60が中間筒部材50に回転不可能に嵌合する例を示したが、この例に限られず、ノックユニット60が中間筒部材50に螺合し、キャップ部材65がノック部材61に回転不可能に嵌合するようにしてもよい。
【0170】
なお、以上において上述した一実施の形態に対するいくつかの変形例を説明してきたが、当然に、複数の変形例を適宜組み合わせて適用することも可能である。
【符号の説明】
【0171】
10 シャープペンシル
20 軸筒
20A 前軸筒
20Aa 誘導肩部
20B 中間軸筒
20C 後軸筒
20D 前内側軸筒
20E 後内側軸筒
20F 被覆材
22 窓部
23 凹部
28 中間付勢部材
29 クリップ
30 口金ユニット
30a 前端開口
31 口金先端部材
31a 先端筒状部
32 口金基端部材
32a 規制段部
33 第1基端部材
33a テーパ壁部
34 第2基端部材
35 第3基端部材
36 先端付勢部材
37 芯保持部材
38 口金付勢部材
39 チャック付勢部材
40 芯保持ユニット
41 チャック
41a 頭部
42 チャック保持部材
43 締具
44 芯収容筒
44a 後端面
45 内側補助筒
46 内側誘導部材
48 重量体
50 中間筒部材
51 筒状本体部
51A 前側筒部
51B 後側筒部
51C 中間テーパ部
52 内方リブ
53 付勢受けフランジ
60 ノックユニット
61 ノック部材
61a 側方突出部
62 前方筒状部
62a 嵌合凸部
62c 規制凸部
63 後方筒状部
63a 外螺子部
64 仕切壁部
65 キャップ部材
65a 内螺子部
66 付属具
70 表示体
70A 前側表示部材
70B 後側表示部材
71 表示体本体部
72 フランジ部
73 後方フランジ部
74 凹部
74a 内側壁面
74b 底壁面
S 芯収容空間
SC 縮幅部
LE 芯
SLE 予備芯
AD 軸方向
CA 中心軸線
θx 傾斜角度
LA 長さ
LB 長さ
LC 長さ
LX 長さ
LSMAX 長さ
LSmin 長さ
LL 長さ
LD 深さ
FS 前壁面
LEA 芯送出孔
H 穴
TP 筒状部分
BS 後壁面
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14