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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-12
(45)【発行日】2023-07-21
(54)【発明の名称】トウ開繊繊維集合体の製造方法
(51)【国際特許分類】
   D02J 1/18 20060101AFI20230713BHJP
   A61F 13/15 20060101ALI20230713BHJP
   A61F 13/53 20060101ALI20230713BHJP
   D06H 7/02 20060101ALI20230713BHJP
【FI】
D02J1/18 Z
A61F13/15 321
A61F13/15 351A
A61F13/53 300
D06H7/02
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2019163988
(22)【出願日】2019-09-09
(65)【公開番号】P2021042486
(43)【公開日】2021-03-18
【審査請求日】2022-08-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000110044
【氏名又は名称】株式会社リブドゥコーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】110002837
【氏名又は名称】弁理士法人アスフィ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】三好 弘明
【審査官】鈴木 祐里絵
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-003206(JP,A)
【文献】特表2007-518890(JP,A)
【文献】特開2010-053459(JP,A)
【文献】特開2007-002390(JP,A)
【文献】特開昭56-168743(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F13/15-13/84
A61L15/16-15/64
D01F11/00-13/04
D02G1/00-3/48
D02J1/18
D06B1/00-23/30
D06C3/00-29/00
D06G1/00-5/00
D06H1/00-7/24
D06J1/00-1/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
トウ開繊繊維の連続体を搬送路に沿って搬送する第1工程と、
前記第1工程で搬送されたトウ開繊繊維の連続体を、可変ロールを介して、一対の搬送ロールの間に挟んで引き取る第2工程と、
前記第2工程で得られたトウ開繊繊維の連続体を所定間隔で切断して、トウ開繊繊維の集合体を得る切断工程とを有し、
前記可変ロールは、ロール表面にトウ開繊繊維の連続体が保持され、トウ開繊繊維の連続体の保持方向およびその反対方向に移動可能となっており、
前記可変ロールは、トウ開繊繊維の連続体から受ける力が大きくなるほど、前記保持方向の反対方向に変位するように構成されているとともに、前記保持方向の反対方向に変位するほど前記保持方向に向かう力が作用するように構成されていることを特徴とするトウ開繊繊維集合体の製造方法。
【請求項2】
前記可変ロールは鉛直方向に移動可能に形成され、トウ開繊繊維の連続体が前記可変ロールの鉛直下方側のロール表面に保持されている請求項1に記載のトウ開繊繊維集合体の製造方法。
【請求項3】
前記可変ロールは、ロール表面の周方向に沿って複数の凸部が設けられている請求項1または2に記載のトウ開繊繊維集合体の製造方法。
【請求項4】
前記可変ロールと前記搬送ロールの間に固定ロールが設けられ、トウ開繊繊維の連続体が前記固定ロールのロール表面に保持されている請求項1~3のいずれか一項に記載のトウ開繊繊維集合体の製造方法。
【請求項5】
前記固定ロールは、ロール表面の周方向に沿って複数の凸部が設けられている請求項4に記載のトウ開繊繊維集合体の製造方法。
【請求項6】
前記搬送路は、トウ開繊装置の出側に設けられている請求項1~5のいずれか一項に記載のトウ開繊繊維集合体の製造方法。
【請求項7】
前記トウ開繊装置からのトウ開繊繊維の連続体の排出速度は、前記搬送ロールのトウ開繊繊維の連続体の引取速度よりも速く、
前記第1工程においてトウ開繊繊維の連続体を搬送路に沿って搬送する間に、トウ開繊繊維の連続体が搬送方向に圧縮される請求項6に記載のトウ開繊繊維集合体の製造方法。
【請求項8】
前記第2工程で得られたトウ開繊繊維の連続体をシート部材の連続体と重ねる工程をさらに有し、
前記切断工程において、トウ開繊繊維の連続体をシート部材の連続体とともに所定間隔で切断して、トウ開繊繊維の集合体を得る請求項1~7のいずれか一項に記載のトウ開繊繊維集合体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トウ開繊繊維集合体の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
トウ開繊繊維は、長繊維の束であるトウを開繊することによって得られ、非常に嵩高な繊維集合体として形成される。トウ開繊繊維は、そのような性質を利用して、水分を速やかに吸収したり、透過させることができ、例えば使い捨ておむつ等の吸収性物品の構成部材に適用することができる。
【0003】
トウの開繊方法として、例えば特許文献1には、搬送されるトウの複数本の繊維を、気体開繊装置の少なくとも1つの開繊室において、気体により開繊する方法が開示されている。特許文献2には、第1ニップロールと第2ニップロールとの周速差によってトウを伸張し、第2ニップロールと第3ニップロールとの周速差によってトウを収縮する開繊装置と、この開繊装置で開繊したトウを、水平方向を向く開口を通して吸引し、エアによって拡幅する拡幅箱とを有するトウの加工設備が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2018-3206号公報
【文献】特開2006-152485号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
トウ開繊繊維は嵩高に形成されるため、その連続体を搬送路に沿って搬送すると、トウ開繊繊維の連続体が不規則に滞留して搬送方向に不均質に圧縮されやすくなる。そのため、トウ開繊繊維の連続体を所定間隔で切断してトウ開繊繊維集合体を得る場合、個々のトウ開繊繊維集合体の質量が大きくばらつくおそれがある。
【0006】
本発明は前記事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、トウ開繊繊維の連続体を所定間隔で切断してトウ開繊繊維集合体を得る際に、質量のばらつきが抑えられたトウ開繊繊維集合体を得ることができるトウ開繊繊維集合体の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決することができた本発明のトウ開繊繊維集合体の製造方法とは、トウ開繊繊維の連続体を搬送路に沿って搬送する第1工程と、第1工程で搬送されたトウ開繊繊維の連続体を、可変ロールを介して、一対の搬送ロールの間に挟んで引き取る第2工程と、第2工程で得られたトウ開繊繊維の連続体を所定間隔で切断して、トウ開繊繊維の集合体を得る切断工程とを有し、可変ロールは、ロール表面にトウ開繊繊維の連続体が保持され、トウ開繊繊維の連続体の保持方向およびその反対方向に移動可能となっており、可変ロールは、トウ開繊繊維の連続体から受ける力が大きくなるほど、前記保持方向の反対方向に変位するように構成されているとともに、前記保持方向の反対方向に変位するほど前記保持方向に向かう力が作用するように構成されているところに特徴を有する。
【0008】
本発明の製造方法によれば、搬送路でトウ開繊繊維の連続体が不均質に圧縮されても、搬送路から搬送ロールに搬送される間に可変ロールによってトウ開繊繊維の連続体の目付のばらつきを調整することができる。具体的には、搬送路でのトウ開繊繊維の連続体の滞留量が増加すると、搬送路から搬送ロールまでのトウ開繊繊維の連続体の道のりが短くなって、可変ロールがトウ開繊繊維の連続体の保持方向の反対方向に変位するが、それがトリガーとなって可変ロールにはトウ開繊繊維の連続体の保持方向に向かう力が作用し、トウ開繊繊維の連続体が可変ロールによって搬送方向に引き伸ばされる。その結果、搬送ロールによって引き取られるトウ開繊繊維の連続体は、目付のばらつきが抑えられたものとなる。そのため、これを所定間隔で切断して得られるトウ開繊繊維の集合体も、質量のばらつきが抑えられたものとなる。
【0009】
可変ロールは鉛直方向に移動可能に形成され、トウ開繊繊維の連続体が可変ロールの鉛直下方側のロール表面に保持されていることが好ましい。このように可変ロールが構成されていれば、搬送路から送り出されたトウ開繊繊維の連続体の目付を調整することが容易になる。
【0010】
可変ロールは、ロール表面の周方向に沿って複数の凸部が設けられていることが好ましい。これにより、トウ開繊繊維の連続体が可変ロールのロール表面で滑りにくくなり、搬送路から送り出されたトウ開繊繊維の連続体の目付を可変ロールによってより正確に調整しやすくなる。
【0011】
可変ロールと搬送ロールの間には固定ロールが設けられ、トウ開繊繊維の連続体が固定ロールのロール表面に保持されるものであってもよい。固定ロールを設けることにより、トウ開繊繊維の連続体をより安定して搬送することができるとともに、トウ開繊繊維の連続体の目付を可変ロールによって調整することがさらに容易になる。
【0012】
固定ロールは、ロール表面の周方向に沿って複数の凸部が設けられていることが好ましい。このように固定ロールが構成されていれば、トウ開繊繊維の連続体が固定ロールのロール表面で滑りにくくなるため、可変ロールにトウ開繊繊維の連続体の保持方向に向かう力が作用した際に、トウ開繊繊維の連続体が可変ロールによって適切に引き伸ばされやすくなり、トウ開繊繊維の連続体の目付を調整することが容易になる。
【0013】
搬送路は、トウ開繊装置の出側に設けられていることが好ましい。トウ開繊装置の出側に搬送路が設けられていれば、トウ開繊繊維の連続体が不均質に圧縮される箇所が限定されるため、その後可変ロールによってトウ開繊繊維の連続体の目付を調整することが容易になる。
【0014】
トウ開繊装置からのトウ開繊繊維の連続体の排出速度は、搬送ロールのトウ開繊繊維の連続体の引取速度よりも速く設定し、第1工程においてトウ開繊繊維の連続体を搬送路に沿って搬送する間に、トウ開繊繊維の連続体が搬送方向に圧縮されるようにしてもよい。これにより、搬送ロールによって引き取られるトウ開繊繊維の連続体の目付を増やすことができるとともに、可変ロールによって目付のばらつきを抑えることができる。
【0015】
本発明の製造方法は、第2工程で得られたトウ開繊繊維の連続体をシート部材の連続体と重ねる工程をさらに有し、切断工程において、トウ開繊繊維の連続体をシート部材の連続体とともに所定間隔で切断して、トウ開繊繊維の集合体を得るようにしてもよい。トウ開繊繊維の連続体をシート部材の連続体とともに切断することにより、トウ開繊繊維の連続体を所望の位置でより正確に切断することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明の製造方法によれば、搬送路でトウ開繊繊維の連続体が不均質に圧縮されても、搬送路から搬送ロールに搬送される間に可変ロールによってトウ開繊繊維の連続体の目付のばらつきを抑えることができる。そのため、これを所定間隔で切断して得られるトウ開繊繊維の集合体も、質量のばらつきが抑えられたものとなる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明のトウ開繊繊維集合体の製造方法で用いられる製造設備の構成例を表す。
図2】本発明のトウ開繊繊維集合体の製造方法で用いられる製造設備の構成例を表す。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明は、トウ開繊繊維の連続体を所定間隔で切断してトウ開繊繊維の集合体を得る方法に関するものである。トウ開繊繊維は、長繊維の束であるトウを開繊すること、すなわち1本1本の繊維にほぐすことにより得られる。このようなトウ開繊繊維から形成された繊維集合体は、嵩高なものとなるため、トウ開繊繊維の繊維間隙を利用して水分を速やかに吸収させたり、透過させることができる。また、トウ開繊繊維を構成する長繊維の配向方向に沿って吸収した水分を拡散することができるため、トウ開繊繊維集合体のより広い範囲で水分を吸収あるいは透過させることが可能となる。そのため、トウ開繊繊維集合体は、このような性質を利用して、使い捨ておむつ等の吸収性物品の構成部材等に適用することができる。例えば、トウ開繊繊維集合体を吸収性物品の吸収体に適用したり、吸収体の肌面側に設置するシート部材に適用したり、あるいは吸収性物品と併用されるシート状物品に適用したりすることができる。吸収性物品と併用されるシート状物品としては、特開2016-59740号公報に開示される補助シート等が挙げられる。
【0019】
トウ開繊繊維の構成繊維としては、セルロース系半合成繊維を用いることが好ましい。セルロース系半合成繊維は、セルロースを化学的に処理して変性させて得られる繊維であり、代表的にはアセテート繊維が知られている。セルロース系半合成繊維は、セルロース骨格が有する親水性に由来して、水分との馴染みに優れるものとなる。一方、セルロース系半合成繊維は、セルロースの水酸基が置換されることにより、水酸基による水素結合のネットワークが低減し、繊維集合体としたときにより嵩高に形成されるものとなる。
【0020】
トウ開繊繊維の繊度は特に限定されないが、トウ開繊繊維がある程度嵩高に形成されるとともに、実用上十分な強度を有するようにする点から、例えば、0.1dtex~10dtexであればよい。トウ開繊繊維の連続体は、3,000~1,000,000本のトウ開繊繊維が束ねられたものとして取り扱われることが好ましい。
【0021】
トウ開繊繊維は、製造の際、開繊前のトウが連続体として形成されることに起因して、トウ開繊繊維も連続体として取り扱われる。トウ開繊繊維は上記に説明したように嵩高に形成されるため、その連続体を搬送路に沿って搬送すると、搬送路との接触によってトウ開繊繊維の連続体が不規則に滞留して、搬送方向に不均質に圧縮されやすくなる。そのため、トウ開繊繊維の連続体を所定間隔で切断してトウ開繊繊維集合体を得る場合、個々のトウ開繊繊維集合体の質量が大きくばらつきやすくなる。
【0022】
トウ開繊繊維の搬送路がトウ開繊装置の出側(排出口)に設けられたものである場合は、トウ開繊装置から排出されたトウ開繊繊維の連続体を搬送路に沿って搬送する間に搬送方向に圧縮して目付を増やすことができる。しかしこの場合も、トウ開繊繊維の連続体が搬送路で不規則に滞留することによって不均質に圧縮され、これを所定間隔で切断して得られた個々のトウ開繊繊維集合体は質量に大きなばらつきが生じやすくなる。
【0023】
そこで本発明では、搬送路に沿って搬送されたトウ開繊繊維の連続体を所定間隔で切断してトウ開繊繊維集合体を得る際に、得られるトウ開繊繊維集合体の質量のばらつきを抑えるために、次のようにトウ開繊繊維集合体を製造している。すなわち本発明のトウ開繊繊維集合体の製造方法は、トウ開繊繊維の連続体を搬送路に沿って搬送する第1工程と、第1工程で搬送されたトウ開繊繊維の連続体を、可変ロールを介して、一対の搬送ロールの間に挟んで引き取る第2工程と、第2工程で得られたトウ開繊繊維の連続体を所定間隔で切断して、トウ開繊繊維集合体を得る切断工程とを有するものであって、可変ロールは、ロール表面にトウ開繊繊維の連続体が保持され、トウ開繊繊維の連続体の保持方向およびその反対方向に移動可能となっており、可変ロールは、前記保持方向に向かう力がかかっているとともに、トウ開繊繊維の連続体から受ける力が大きくなるほど前記保持方向の反対方向に変位するように構成されている。以下、各工程について詳しく説明する。
【0024】
第1工程では、トウ開繊繊維の連続体を搬送路に沿って搬送する。搬送路に沿って搬送されるトウ開繊繊維の連続体は、長繊維の束であるトウを開繊することにより得られたものであれば特に限定されないが、トウ開繊装置から排出されたものであることが好ましい。従って、第1工程における搬送路は、トウ開繊装置の出側に設けられたものであることが好ましい。トウ開繊装置から排出されたばかりのトウ開繊繊維の連続体は、搬送方向に対して未圧縮の状態となるのに対し、トウ開繊繊維の連続体は搬送路に沿って搬送される間に一部が滞留し圧縮される傾向となる。本発明では、トウ開繊繊維の連続体が搬送路に沿って搬送される間に圧縮されて目付が不均質化しても、その後の第2工程において、トウ開繊繊維の連続体の目付を調整することができる。
【0025】
トウ開繊装置からは、一定速度でトウ開繊繊維の連続体が排出されることが好ましい。なお、トウ開繊装置からのトウ開繊繊維の連続体の排出速度は、後段の第2工程における搬送ロールのトウ開繊繊維の連続体の引取速度よりも速いものであってもよい。この場合、トウ開繊繊維の連続体が搬送路に沿って搬送される間に、トウ開繊繊維の連続体が搬送方向に圧縮されることで、搬送路から送り出されるトウ開繊繊維の連続体の目付を全体的に高めることができる。
【0026】
トウ開繊装置は気体開繊装置を含むことが好ましく、気体開繊装置の出側にトウ開繊繊維の連続体の搬送路が設けられることが好ましい。気体開繊装置では気体(例えば空気)を吹き込むことによってトウが開繊され、これによりトウを構成する繊維どうしの間隙をより広げることが可能となる。その結果、より嵩高に形成されたトウ開繊繊維の連続体が得られる。
【0027】
トウ開繊装置は、気体開繊装置の上流側に、開繊ロール群が設けられることが好ましい。開繊ロール群は、一対の第1開繊ロールとその下流側に一対の第2開繊ロールを少なくとも含むことが好ましく、トウの連続体を一対の第1開繊ロール間に挟むとともに一対の第2開繊ロール間に挟み、第2開繊ロールを第1開繊ロールよりも周速度が速くなるように回転させることでトウの連続体を搬送方向に伸張させ、トウを構成する繊維をほぐすことができる。開繊ロール群は、第2開繊ロールの下流側に一対の第3開繊ロールを含んでいてもよく、この場合、トウの連続体を一対の第3開繊ロールの間にさらに挟み、第3開繊ロールを第2開繊ロールよりも周速度が遅くなるように回転させることで、トウを構成する繊維をさらにほぐしやすくなる。
【0028】
上記に説明した気体開繊装置や開繊ロール群の詳細は、特開2018-3206号公報の「気体開繊装置」、「第1開繊ロール対」、「第2開繊ロール対」や、特開2006-152485号公報の「拡幅箱」、「第1ニップロール」、「第2ニップロール」、「第3ニップロール」の説明を参照することができる。
【0029】
トウ開繊繊維の連続体が搬送される搬送路は、トウ開繊繊維の連続体が搬送路と接触しながら搬送されるように構成されていることが好ましい。このような観点から、搬送路は、水平方向または水平方向に対して上方または下方に45°以内に延びるように設けられていることが好ましく、当該角度は30°以内がより好ましく、15°以内がさらに好ましく、5°以内がさらにより好ましい。搬送路においてトウ開繊繊維の連続体を搬送方向に圧縮させる場合は、搬送路は、水平方向または水平方向に対して上方に延びるように設けられていることが好ましい。
【0030】
搬送路は、例えば、面状に形成され、面状に形成された搬送路上をトウ開繊繊維の連続体が搬送されてもよい。搬送路は筒状に形成され、筒状に形成された搬送路の内部をトウ開繊繊維の連続体が搬送されてもよい。搬送路が筒状に形成される場合は、トウ開繊繊維の連続体が搬送路からはみ出たり、過度に嵩が増えることを抑えることができる点で好ましい。この場合、筒状の搬送路の断面形状(搬送方向に対する垂直断面の形状)は特に限定されず、円形、楕円形、多角形(例えば、四角形や六角形)、角の丸まった多角形(例えば、角の丸まった四角形や角の丸まった六角形)等が挙げられる。筒状の搬送路の周面は、面状に形成されているものに限定されず、例えば網状や格子状や縞状に形成されていてもよい。例えば、搬送方向に延びる複数の棒状部材が周方向に間隔を空けて配置されることによって、筒状の搬送路が形成されていてもよい。
【0031】
搬送路はコンベアから構成されていてもよい。コンベアとしては、ベルトコンベアやローラーコンベア等が挙げられる。搬送路がコンベアから構成されていれば、コンベアの搬送速度を調整することによって、搬送路におけるトウ開繊繊維の連続体の圧縮の程度を調整することができる。
【0032】
第1工程では、上記のようにトウ開繊繊維の連続体を搬送路に沿って搬送することにより、トウ開繊繊維の連続体が搬送路の途中で滞留したり、目付が不均質化する傾向となる。あるいは、第1工程において、搬送路でトウ開繊繊維の連続体を滞留させることによってトウ開繊繊維の連続体の目付を増やすこともできるが、この場合、トウ開繊繊維の連続体が搬送方向に不均質に滞留することによって、目付が不均質化しやすくなる。
【0033】
第2工程では、第1工程において搬送路に沿って搬送されたトウ開繊繊維の連続体を、可変ロールを介して、一対の搬送ロールの間に挟んで引き取る。第2工程では、第1工程で搬送路を搬送した際に目付が不均質化されたトウ開繊繊維の連続体に対して、目付の不均質を解消するために、可変ロールを介して、搬送ロールによってトウ開繊繊維の連続体を引き取る。
【0034】
可変ロールは、ロール表面にトウ開繊繊維の連続体が保持され、トウ開繊繊維の連続体の保持方向(以下、「方向V」と称する場合がある)およびその反対方向(以下、「方向W」と称する場合がある)に移動可能となっている。一方、搬送ロールは、第1搬送ロールと第2搬送ロールの一対のロールから構成され、トウ開繊繊維の連続体を第1搬送ロールと第2搬送ロールの間に挟んで送り出すことで、搬送路に沿って搬送されたトウ開繊繊維の連続体が可変ロールを介して引き取られるように構成されている。可変ロールは搬送路と搬送ロール間に設けられ、搬送ロールによりトウ開繊繊維の連続体が引き取られ、搬送路と搬送ロールの間で可変ロールと接触しながら搬送されることによって、可変ロールが回転するように構成されている。なお、搬送路から搬送ロールの間において、トウ開繊繊維の連続体は、可変ロールと後述する固定ロールを除き、非接触の状態で搬送される。
【0035】
搬送ロールは一定の周速度で回転していることが好ましく、これによりトウ開繊繊維の連続体を一定速度で引き取ることができる。一方、搬送路では、トウ開繊繊維の連続体が不規則に滞留することによって、搬送路から送り出されるトウ開繊繊維の連続体の速度にばらつきが生じるとともに、トウ開繊繊維の連続体が搬送方向に圧縮されて目付が不均質なものとなる。そこで本発明では、このような目付のばらつきを解消するために、可変ロールは、トウ開繊繊維の連続体から受ける力が大きくなるほど方向W(すなわちトウ開繊繊維の連続体の保持方向と反対方向)に変位するとともに、可変ロールが方向Wに変位するほど、可変ロールに方向V(すなわちトウ開繊繊維の連続体の保持方向)に向かう力がかかるように構成されている。このように可変ロールを構成することにより、搬送ロールによって引き取られるトウ開繊繊維の連続体の目付のばらつきを抑えることができる。これについて以下に詳しく説明する。
【0036】
可変ロールはロール表面にトウ開繊繊維の連続体が保持されており、可変ロールはトウ開繊繊維の連続体から方向Wに向かう力を受け、これにより可変ロールは方向Wに変位するように構成されている。可変ロールがトウ開繊繊維の連続体から方向Wに受ける力は、搬送路でのトウ開繊繊維の連続体の滞留量の増減によって影響を受ける。すなわち、トウ開繊繊維の連続体は、搬送路を進むほど滞留しやすくなり目付が増える傾向となるが、この際、トウ開繊繊維の連続体の搬送路での滞留量が増加すると、搬送路から搬送ロールまでのトウ開繊繊維の連続体の道のりが短くなり、可変ロールがトウ開繊繊維の連続体から方向Wに受ける力が大きくなる。逆に、トウ開繊繊維の連続体の搬送路での滞留量が減少すると、搬送路から搬送ロールまでのトウ開繊繊維の連続体の道のりが長くなり、可変ロールがトウ開繊繊維の連続体から方向Wに受ける力が小さくなる。そして、可変ロールはトウ開繊繊維の連続体から受ける力が大きくなるほど、方向Wに変位するように構成されているとともに、可変ロールが方向Wに変位するほど、可変ロールには方向V(すなわち方向Wの反対方向)に向かう力が作用するように構成されている。
【0037】
可変ロールは上記のように構成されることによって、搬送路でのトウ開繊繊維の連続体の滞留量が増加した場合、搬送路から搬送ロールまでのトウ開繊繊維の連続体の道のりが短くなって可変ロールが方向Wに変位するが、それがトリガーとなって可変ロールには方向V(すなわち方向Wの反対方向)に向かう力が作用するため、搬送路から送り出されたトウ開繊繊維の連続体は可変ロールによって搬送方向に引き伸ばされることとなる。可変ロールは、方向Wに変位するほど、すなわち搬送路から搬送ロールまでのトウ開繊繊維の連続体の道のりがより短くなるほど、方向Vに向かってより大きい力が作用するため、搬送路から送り出されたトウ開繊繊維の連続体は可変ロールによって搬送方向により引き伸ばされることとなる。その結果、トウ開繊繊維の連続体は搬送路で滞留することによって目付が部分的に増加するものの、搬送路から送り出された後にトウ開繊繊維の連続体が可変ロールによって引き伸ばされることで、部分的に増加した目付が減少し、搬送ロールによって引き取られるトウ開繊繊維の連続体の目付のばらつきを抑えることができる。
【0038】
可変ロールが、方向V(すなわちトウ開繊繊維の連続体の保持方向)に向かう力が作用するようにするために、可変ロールの軸受けにはバネやゴムなどの弾性体が設けられることが好ましい。また、可変ロールの軸受けの位置を油圧や電子制御することによって、可変ロールに方向Vに向かう力が作用するようにしてもよい。
【0039】
可変ロールは、鉛直方向に対して搬送路よりも下方に設置されていることが好ましい。このように可変ロールが設置されていれば、搬送路から送り出されたトウ開繊繊維の連続体の目付を調整することが容易になり、特に目付の大きいトウ開繊繊維の連続体を得ることが容易になる。なお、水平方向に対しては、可変ロールは搬送路の延在方向の延長上に設置されることが好ましい。
【0040】
可変ロールの移動方向は、可変ロールの搬送路と搬送ロールに対する位置関係に応じて適宜設定すればよいが、可変ロールは鉛直方向に移動可能に形成されていることが好ましい。また、トウ開繊繊維の連続体は可変ロールの鉛直下方側のロール表面に保持されていることが好ましい。これにより、搬送路から送り出されたトウ開繊繊維の連続体の目付を調整することが容易になる。
【0041】
可変ロールは、ロール表面の周方向に沿って複数の凸部が設けられていることが好ましい。すなわち、可変ロールのロール表面には、複数の凸部が周方向に沿って列状に設けられ、凸部列を形成していることが好ましい。このように可変ロールが構成されていれば、トウ開繊繊維の連続体が可変ロールのロール表面で滑りにくくなり、搬送路から送り出されたトウ開繊繊維の連続体の目付を可変ロールによってより正確に調整しやすくなる。また、トウ繊維の連続体が可変ロールのロール表面で幅方向に広がった状態で搬送されやすくなる。可変ロールのロール表面に周方向に沿って設けられた凸部列は、幅方向に複数列設けられることがより好ましい。
【0042】
可変ロールを通過したトウ開繊繊維の連続体は、一対の搬送ロールによって引き取られる。トウ開繊繊維の連続体を一対の搬送ロールの間に挟んで送り出すことで、トウ開繊繊維の連続体の厚みが所定値以下に抑えられ、次の切断工程でトウ開繊繊維の連続体の切断が容易になる。また、トウ開繊繊維の連続体を一定速度で送り出すことが容易になる。搬送ロールは、上述したように第1搬送ロールと第2搬送ロールから構成されるが、第1搬送ロールと第2搬送ロールの一方または両方のロール表面には、周方向および/または幅方向に沿って複数の凸部が設けられていてもよい。
【0043】
可変ロールと搬送ロールの間には固定ロールが設けられ、トウ開繊繊維の連続体が固定ロールのロール表面に保持されるものであってもよい。固定ロールを設けることにより、トウ開繊繊維の連続体をより安定して搬送することができるとともに、トウ開繊繊維の連続体の目付を可変ロールによって調整することがさらに容易になる。
【0044】
固定ロールは、鉛直方向に対して可変ロールよりも上方に設置されることが好ましい。換言すれば、可変ロールは、鉛直方向に対して固定ロールよりも下方に設置されることが好ましい。このように固定ロールが設置されていれば、可変ロールによってトウ開繊繊維の連続体の目付を調整することが容易になる。
【0045】
固定ロールは、ロール表面の周方向に沿って複数の凸部が設けられていることが好ましい。すなわち、固定ロールのロール表面には、複数の凸部が周方向に沿って列状に設けられ、凸部列を形成していることが好ましい。このように固定ロールが構成されていれば、トウ開繊繊維の連続体が固定ロールのロール表面で滑りにくくなるため、可変ロールに方向Vに向かう力が作用した際に、トウ開繊繊維の連続体が可変ロールによって適切に引き伸ばされやすくなり、トウ開繊繊維の連続体の目付を調整することが容易になる。また、トウ繊維の連続体が固定ロールのロール表面で幅方向に広がった状態で搬送されやすくなる。固定ロールのロール表面に周方向に沿って設けられた凸部列は、幅方向に複数列設けられることがより好ましい。
【0046】
固定ロールが設置される場合、搬送ロールは、鉛直方向に対して、固定ロールよりも上方に設置されてもよく、下方に設置されてもよく、同程度の高さに設置されてもよい。一方、固定ロールが設置されない場合は、搬送ロールは、鉛直方向に対して、可変ロールよりも上方に設置されることが好ましく、これにより、可変ロールによってトウ開繊繊維の連続体の目付を調整することが容易になる。
【0047】
搬送ロールによって引き取られたトウ開繊繊維の連続体は、切断工程において所定間隔で切断することにより、トウ開繊繊維集合体が得られる。このようにして得られたトウ開繊繊維集合体は、第2工程で搬送ロールによって引き取られたトウ開繊繊維の連続体の搬送方向の目付のばらつきが抑えられる結果、質量のばらつきが抑えられたものとなる。
【0048】
切断工程において、トウ開繊繊維の連続体は搬送方向に対して所定間隔で切断される。トウ開繊繊維集合体を吸収性物品の構成部材に適用したり、吸収性物品と併用されるシート状物品に適用する場合は、トウ開繊繊維の連続体は、例えば10cm以上80cm以下の間隔で切断されることが好ましい。
【0049】
切断工程では、トウ開繊繊維の連続体が他の部材とともに切断されてもよい。例えば、トウ開繊繊維の連続体がシート部材(例えば、不織布やティッシュ)の上に載せられ、当該シート部材とともにトウ開繊繊維の連続体が切断されたり、トウ開繊繊維の連続体がシート部材に筒状に包まれて、当該シート部材とともにトウ開繊繊維の連続体が切断されてもよい。従ってこの場合、本発明の製造方法は、第2工程で得られたトウ開繊繊維の連続体をシート部材の連続体と重ねる工程をさらに有し、切断工程において、トウ開繊繊維の連続体をシート部材の連続体とともに所定間隔で切断して、トウ開繊繊維の集合体を得るようにすることが好ましい。トウ開繊繊維の連続体をシート部材の連続体とともに切断することにより、トウ開繊繊維の連続体を所望の位置でより正確に切断することができる。
【0050】
次に、本発明のトウ開繊繊維集合体の製造方法について、図面を参照して説明する。なお本発明は、図面に示された実施態様に限定されるものではない。
【0051】
図1には、本発明のトウ開繊繊維集合体の製造方法に用いられる製造設備の構成例を示した。本発明のトウ開繊繊維集合体の製造方法は、図1に示すように、トウ開繊繊維の連続体1を搬送路11に沿って搬送する第1工程21と、第1工程21で搬送されたトウ開繊繊維の連続体2を、可変ロール12を介して、一対の搬送ロール14の間に挟んで引き取る第2工程22と、第2工程22で得られたトウ開繊繊維の連続体3を所定間隔で切断して、トウ開繊繊維の集合体4を得る切断工程23とを有する。
【0052】
第1工程21では、トウ開繊繊維の連続体1を搬送路11に沿って搬送する。図1では、搬送路11は、トウ開繊装置15の出側に接続して搬送路11が設けられており、トウ開繊装置15では、トウの連続体5が開繊されて嵩高に形成されたトウ開繊繊維の連続体1が得られる。搬送路11では、トウ開繊装置15から押し出されたトウ開繊繊維の連続体1が非伸張状態で搬送され、その間にトウ開繊繊維の連続体1が搬送方向に不均質に圧縮される。
【0053】
第2工程22では、搬送路11に沿って搬送されたトウ開繊繊維の連続体2が、可変ロール12を介して、搬送ロール14によって引き取られる。搬送ロール14は、第1搬送ロール14Aと第2搬送ロール14Bから構成され、トウ開繊繊維の連続体2が第1搬送ロール14Aと第2搬送ロール14Bの間に挟まれて送り出される。
【0054】
可変ロール12は、ロール表面にトウ開繊繊維の連続体2が保持され、トウ開繊繊維の連続体2の保持方向Vとその反対方向Wに移動可能となっている。図1では、可変ロール12は鉛直方向に移動可能に形成され、トウ開繊繊維の連続体2が可変ロール12の鉛直下方側のロール表面に保持されている。可変ロール12は、トウ開繊繊維の連続体2から受ける力が大きくなるほど方向Wに変位するように構成されているとともに、方向Wに変位するほど方向Vに向かう力が作用するように構成されている。
【0055】
このように可変ロール12が構成されることにより、搬送路11においてトウ開繊繊維の連続体1が搬送方向に不均質に圧縮されて目付のばらつきが生じても、搬送路11から搬送ロール14に搬送される間に可変ロール12によってトウ開繊繊維の連続体2の目付のばらつきを調整することができる。具体的には、搬送路11でトウ開繊繊維の連続体1の滞留量が増加すると、搬送路11から搬送ロール14までのトウ開繊繊維の連続体2の道のりが短くなって可変ロール12が方向Wに変位するが、それがトリガーとなって可変ロール12には方向Vに向かう力が作用するため、トウ開繊繊維の連続体2は可変ロール12によって搬送方向に引き伸ばされる。可変ロール12は、トウ開繊繊維の連続体2の道のりが短くなって方向Wに変位するほど、方向Vに向かってより大きい力が作用し、トウ開繊繊維の連続体2がより引き伸ばされる。その結果、搬送ロール14によって引き取られるトウ開繊繊維の連続体2の目付のばらつきを抑えることができる。
【0056】
切断工程23では、搬送ロール14から送り出されたトウ開繊繊維の連続体3を所定間隔で切断して、トウ開繊繊維の集合体4を得る。図1では、トウ開繊繊維の連続体3がコンベア上を搬送され、その間に切断カッター16によって搬送方向に所定間隔で切断されることにより、個々のトウ開繊繊維の集合体4が得られる。
【0057】
トウ開繊装置15からのトウ開繊繊維の連続体1の排出速度は、搬送ロール14のトウ開繊繊維の連続体2の引取速度よりも速く設定してもよい。この場合、トウ開繊繊維の連続体1が搬送路11に沿って搬送される間に搬送路11で一部滞留することにより、トウ開繊繊維の連続体1を搬送方向に圧縮することができる。これにより、搬送ロール14によって引き取られるトウ開繊繊維の連続体2の目付を増やすことができるとともに、可変ロール12によって目付のばらつきを抑えることができる。
【0058】
図2には、図1に示したトウ開繊繊維集合体の製造設備に対し、固定ロールを設けた製造設備の構成例を示した。なお図2の説明において、図1と重複する部分は説明を省く。
【0059】
図2に示すように、可変ロール12と搬送ロール14の間に固定ロール13を設けることが好ましい。この場合、第2工程22では、搬送路11に沿って搬送されたトウ開繊繊維の連続体2が、可変ロール12と固定ロール13を介して、搬送ロール14によって引き取られることとなる。固定ロール13を設けることにより、トウ開繊繊維の連続体2をより安定して搬送することができるとともに、トウ開繊繊維の連続体2の目付を可変ロール12によって調整することがさらに容易になる。
【符号の説明】
【0060】
1~3:トウ開繊繊維の連続体
4:トウ開繊繊維の集合体
5:トウの連続体
11:搬送路
12:可変ロール
13:固定ロール
14:搬送ロール、14A:第1搬送ロール、14B:第2搬送ロール
15:トウ開繊装置
16:切断カッター
21:第1工程
22:第2工程
23:切断工程
図1
図2