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特許7312658外壁パネル引き寄せ補助具及び外壁パネル取り付け方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-12
(45)【発行日】2023-07-21
(54)【発明の名称】外壁パネル引き寄せ補助具及び外壁パネル取り付け方法
(51)【国際特許分類】
   E04B 2/90 20060101AFI20230713BHJP
【FI】
E04B2/90
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2019177896
(22)【出願日】2019-09-27
(65)【公開番号】P2021055325
(43)【公開日】2021-04-08
【審査請求日】2022-09-01
(73)【特許権者】
【識別番号】390037154
【氏名又は名称】大和ハウス工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】松原 悟志
(72)【発明者】
【氏名】尾山 誠
(72)【発明者】
【氏名】林 哲平
【審査官】須永 聡
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-102338(JP,A)
【文献】特開2016-164337(JP,A)
【文献】実開平02-001362(JP,U)
【文献】特開昭62-041868(JP,A)
【文献】特開2017-180051(JP,A)
【文献】実開昭60-029859(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B 2/56-2/70
E04B 2/88-2/96
E04B 1/58
E04G 21/14-21/22
E04F 13/00-13/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下階の梁に第一外壁パネル取り付け金具が取り付けられ、上階の梁に第二外壁パネル取り付け金具が取り付けられており、該第一外壁パネル取り付け金具の備える案内係合溝に対して、外壁パネルを構成するフレームに取り付けられている取り付けボルトが落とし込まれて係合され、該第二外壁パネル取り付け金具の備えるボルト孔に対して、該フレームの備えるボルト孔が位置合わせされ、双方の該ボルト孔にボルトが挿通されてボルト固定されるに当たり、該外壁パネルの上部を該第二外壁パネル取り付け金具に引き寄せる際に適用される、外壁パネル引き寄せ補助具であって、
前記上階の梁の下方フランジの室内側の箇所を把持する二つで一組の把持片と、少なくとも一組の該把持片が固定される第一基材と、により構成される先行設置部材と、
前記外壁パネルの上端に係合される係合片と、前記第一基材に接合される第二基材と、該係合片と該第二基材とを繋いで双方の離間を調整自在な連結棒と、により構成される後行設置部材と、を有し、
前記下方フランジに取り付けられている前記先行設置部材に対して、前記外壁パネルの上端に前記係合片が係合されている前記後行設置部材を引き寄せ、前記第一基材に前記第二基材を接合することにより、前記外壁パネル引き寄せ補助具が形成されるとともに、前記外壁パネルを構成する前記フレームの上部が前記第二外壁パネル取り付け金具に当接されることを特徴とする、外壁パネル引き寄せ補助具。
【請求項2】
前記先行設置部材は、前記一組の把持片を二組備え、該二組の把持片が前記第一基材に取り付けられていることを特徴とする、請求項1に記載の外壁パネル引き寄せ補助具。
【請求項3】
前記第一基材と前記第二基材の対応する位置にそれぞれボルト孔が開設されており、双方の該ボルト孔が位置合わせされてボルトが螺合されることにより、前記先行設置部材と前記後行設置部材が接合されることを特徴とする、請求項1又は2に記載の外壁パネル引き寄せ補助具。
【請求項4】
前記後行設置部材が把持部を備えていることを特徴とする、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の外壁パネル引き寄せ補助具。
【請求項5】
前記上階の梁の下方フランジの室内側の箇所に、請求項1乃至4のいずれか一項に記載の外壁パネル引き寄せ補助具を構成する前記先行設置部材を取り付ける、先行設置部材取り付け工程と、
前記外壁パネルを建物躯体に沿ってスライドさせ、下階の梁に取り付けられている第一外壁パネル取り付け金具の備える案内係合溝に対して、該外壁パネルを構成するフレームに取り付けられている取り付けボルトを落とし込んで係合させ、前記外壁パネル引き寄せ補助具を構成する前記後行設置部材の有する前記係合片を該外壁パネルの上端に係合させ、該後行設置部材を室内側へ引き寄せ、前記第一基材に前記第二基材を接合することにより前記外壁パネル引き寄せ補助具を形成し、前記第二外壁パネル取り付け金具の備えるボルト孔に対して、前記フレームの備えるボルト孔を位置合わせし、双方の該ボルト孔にボルトを挿通してボルト固定する、外壁パネル引き寄せ取り付け工程と、を有することを特徴とする、外壁パネル取り付け方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、外壁パネル引き寄せ補助具及び外壁パネル取り付け方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば都市部において鉄骨造の建物を施工するに当たり、施工対象の建物の外壁と隣地境界との間には、足場の組立てに十分なスペースがない場合が往々にしてある。あるいは、仮に足場を組むことができたとしても、足場と外壁設置位置との間に外壁パネルが入り込むスペースや、さらには、外壁パネルを設置するためのスペースがない場合がある。
【0003】
通常、足場と外壁設置位置との間に十分なスペースがある場合は、クレーン等の重機にて吊り上げられた外壁パネルがこのスペースに落とし込まれ、足場上にいる作業員は、外壁パネルをその下方が外壁設置位置側に向くようにして斜め姿勢とし、外壁パネルの下端に取り付けられている取り付けボルトを、各階の外壁設置位置の下方に取り付けられている下方取り付け金具の有する溝に対してまず設置する。そして、この取り付けボルトと溝との係合部を支点として、外壁パネルの上方を外壁設置位置側に起こし、外壁パネルの上方を屋外側から室内側へ面外方向に回動させることにより、外壁パネルの上端に開設されているボルト孔を、外壁設置位置にある上方取り付け金具の有するボルト孔に位置合わせする。双方のボルト孔が位置合わせされることにより貫通孔が形成され、この貫通孔にボルトを挿通し、ナット締めすることにより、外壁パネルの取り付けが行われる。
【0004】
すなわち、この施工では、外壁パネルの下端が固定されてここを支点として、外壁パネルの上方が屋外側から室内側へ円弧を描いて面外の動きで回動しながら設置されることから、外壁設置位置と足場との間には、ある程度余裕のあるスペースが必要になる。
【0005】
そこで、上記するように足場を設置するスペースがない狭小敷地においても、外壁パネルを好適に施工することのできる建築方法が提案されている。具体的には、建物の躯体を構成する下階天井梁及び上階天井梁の長手方向に延びるように、それぞれ案内レールを設ける。一方、下階外壁パネル及び上階外壁パネルの上端部には、案内レールに引っ掛けられるハンガーを取り付ける。そして、それぞれのハンガーを各天井梁の案内レールに引っ掛けることにより、各外壁パネルは各天井梁に吊り下げられた状態となる。この吊り下げ状態においてハンガーを案内レールに沿ってスライドさせることにより、各外壁パネルを所定の取り付け位置に移動させる。この取り付け位置において、各外壁パネルを屋内側からボルト等により固定する建築方法である(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2008-127927号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に記載の建築方法によれば、足場を設置するスペースがない狭小敷地においても、外壁パネルを施工することができる。しかしながら、下階天井梁及び上階天井梁の長手方向に延びるようにそれぞれ案内レールを設け、下階外壁パネル及び上階外壁パネルの上端部にそれぞれ案内レールに引っ掛けられるハンガーを取り付け、それぞれのハンガーを各天井梁の案内レールに引っ掛けて各外壁パネルを吊り下げ、ハンガーを案内レールに沿ってスライドさせることから、仮設部材が大掛かりなものとなり、仮設部材の製作コストに関して課題がある。さらに、大掛かりな仮設部材の設置と外壁パネル設置後の仮設部材の取り外しには、多大な手間と時間を要するといった課題がある。
【0008】
また、建設に従事する作業員が不足している昨今、例えば、外壁パネルの吊り下げを行う一人の重機のオペレータと、外壁パネルを建物躯体に設置する一人の作業員の二人体制で施工を行う状況が頻出し得る。このような場合に、重機にて外壁パネルを所定の設置位置まで横引きした後、作業員が例えば外壁パネルの下端を設置位置に設置できたとしても、外壁パネルの上端が建物躯体の面外方向に若干傾いている場合に、外壁パネルの上端を建物躯体側に引き寄せる必要があり、この外壁パネルの上端の引き寄せには労力を要する。
【0009】
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、足場を設置するスペースがない狭小敷地においても、大掛かりな仮設部材の設置や取り外しを不要としながら、効率的に外壁パネルを引き寄せながら取り付けることを可能とした、外壁パネル引き寄せ補助具と、この外壁パネル引き寄せ補助具を用いる外壁パネル取り付け方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記目的を達成すべく、本発明による外壁パネル引き寄せ補助具の一態様は、
下階の梁に第一外壁パネル取り付け金具が取り付けられ、上階の梁に第二外壁パネル取り付け金具が取り付けられており、該第一外壁パネル取り付け金具の備える案内係合溝に対して、外壁パネルを構成するフレームに取り付けられている取り付けボルトが落とし込まれて係合され、該第二外壁パネル取り付け金具の備えるボルト孔に対して、該フレームの備えるボルト孔が位置合わせされ、双方の該ボルト孔にボルトが挿通されてボルト固定されるに当たり、該外壁パネルの上部を該第二外壁パネル取り付け金具に引き寄せる際に適用される、外壁パネル引き寄せ補助具であって、
前記上階の梁の下方フランジの室内側の箇所を把持する二つで一組の把持片と、少なくとも一組の該把持片が固定される第一基材と、により構成される先行設置部材と、
前記外壁パネルの上端に係合される係合片と、前記第一基材に接合される第二基材と、該係合片と該第二基材とを繋いで双方の離間を調整自在な連結棒と、により構成される後行設置部材と、を有し、
前記下方フランジに取り付けられている前記先行設置部材に対して、前記外壁パネルの上端に前記係合片が係合されている前記後行設置部材を引き寄せ、前記第一基材に前記第二基材を接合することにより、前記外壁パネル引き寄せ補助具が形成されるとともに、前記外壁パネルを構成する前記フレームの上部が前記第二外壁パネル取り付け金具に当接されることを特徴とする。
【0011】
本態様によれば、上階の梁の下方フランジに固定される先行設置部材と、外壁パネルの上端に係合されて該外壁パネルを引き寄せて先行設置部材に接合される後行設置部材とを備えていることにより、下階の梁の第一外壁パネル取り付け金具に下端が取り付けられている外壁パネルの上部を、この下方の取り付け箇所を支点として、後行設置部材にて外壁パネルを回動させながら引き寄せることができ、効率的かつ可及的に少ない労力にて外壁パネルを引き寄せながら、上階と下階の梁に外壁パネルを取り付けることができる。
【0012】
例えば重機にて垂下された外壁パネルを外壁設置ラインに沿って面内方向(外壁の幅方向)に移動(スライド、横引き)させながら、外壁パネルの下方の隅角部に取り付けられている取り付けボルトを、下階の梁の上面に取り付けられている第一外壁パネル取り付け金具の案内係合溝に落とし込んで係合させる。例えば、下階の梁が土台梁である場合は、上階の梁は一階と二階の間の階間梁となり、下階の梁が一階と二階の間の階間梁である場合は、上階の梁は二階と三階の間の階間梁となる。
【0013】
第一外壁パネル取り付け金具の具体的な構成の一例は、例えばH形鋼により形成される土台梁等の下階の梁の上方フランジに接合される固定片と、固定片に対して直交して外壁パネルを構成するフレームに当接する当接片と、を有し、当接片には、下方に向かって徐々に近接する二つのテーパー状の案内部と、二つの案内部の下端を繋ぐ下方に落ち込んだ係合部とを備えている案内係合溝が、間隔を置いて左右に二つ開設されている。そして、相互に隣接する外壁パネルの下方の隅角部にある取り付けボルトがそれぞれ、二つの案内係合溝に落とし込まれて係合するようになっている。第一外壁パネル取り付け金具の有する当接片において、二つの案内係合溝が間隔を置いて左右に二つ開設されていることにより、それぞれの案内係合溝には、隣接する二つの外壁パネルの一方の外壁パネルの右下隅角部の取り付けボルトと、他方の外壁パネルの左下隅角部の取り付けボルトがそれぞれ係合される。また、固定片は、例えば土台梁の上方フランジの上面に対して、ボルト等により接合される。水平方向に延出する梁の例えば上面に載置される、水平方向に延出する固定片に対して、鉛直方向に建て込まれる外壁パネルに当接する当接片が直交する態様で立ち上っており、この立ち上がり姿勢の当接片の上端に臨むようにして二つの案内係合溝が開設されている。
【0014】
一方、第二外壁パネル取り付け金具の具体的な構成の一例は、第一外壁パネル取り付け金具の構成に加えて、当接片において、二つの案内係合溝の下方にそれぞれ二つのボルト孔が開設されており、この二つのボルト孔に対して、相互に隣接する外壁パネルの上方の隅角部にあるボルト孔が位置合わせされ、ボルトが挿通されてボルト固定されるようになっている。第二外壁パネル取り付け金具は、上階の外壁パネルの有する四つの隅角部のうち、下方の左右端の隅角部にある取り付けボルトが取り付けられるとともに、下階の外壁パネルの有する四つの隅角部のうち、上方の左右端の隅角部にあるボルト孔が第二外壁パネル取り付け金具の有するボルト孔と位置合わせされてボルト固定される取り付け金具である。例えば、一階と二階の間の階間梁(もしくは床梁であって、例えばH形鋼により形成される)の下方フランジの下面に対して、第二外壁パネル取り付け金具の有する固定片がボルト接合される。
【0015】
本態様の外壁パネル引き寄せ補助具においては、先行設置部材を構成する二つで一組の把持片が上階の梁の下方フランジの室内側の箇所を挟み、例えばこれら二つの把持片を繋ぐ蝶ボルトを捻じ込むことにより、二つの把持片にて当該下方フランジを容易かつ迅速に把持することができ、先行設置部材を上階の梁の下方フランジの室内側の箇所に固定することができる。
【0016】
また、後行設置部材を構成する係合片と第二基材との間の離間は、例えば、係合片及び第二基材に螺合している連結棒を少なくとも係合片及び第二基材の一方に対して回転させることにより、容易に調整することが可能である。そして、この離間は、外壁パネルの上端に係合させるに当たり、後行設置部材を先行設置部材に接合した際に引き寄せた外壁パネルが鉛直姿勢となるように予め調整されている。
【0017】
下階の梁に固定されている第一外壁パネル取り付け金具の備える案内係合溝に、外壁パネルの下端の取り付けボルトが係合されており、この外壁パネルの上端に対してその構成要素である係合片が係合された後行設置部材を作業員が引き寄せると、この下端を支点として、外壁パネルが回動しながらその上方が建物躯体側に引き寄せられる。そして、作業員が先行設置部材と後行設置部材を接合して外壁パネル引き寄せ補助具を形成した際には、自動的に、外壁パネルの立ち姿勢が形成される。さらに、このように外壁パネルの立ち姿勢が形成された際には、外壁パネル取り付け金具の備えるボルト孔に対して、外壁パネルを構成するフレームの備えるボルト孔が自動的に位置合わせされており、作業員は双方のボルト孔にボルトを捻じ込むことにより、外壁パネルを建物躯体にボルト固定することができる。
【0018】
また、本発明による外壁パネル引き寄せ補助具の他の態様において、前記先行設置部材は、前記一組の把持片を二組備え、該二組の把持片が前記第一基材に取り付けられていることを特徴とする。
【0019】
本態様によれば、先行設置部材が二組の把持片を有することにより、二組の把持片により、先行設置部材にて上階の梁の下方フランジの室内側の箇所を安定的に把持することができる。
【0020】
また、本発明による外壁パネル引き寄せ補助具の他の態様において、前記第一基材と前記第二基材の対応する位置にそれぞれボルト孔が開設されており、双方の該ボルト孔が位置合わせされてボルトが螺合されることにより、前記先行設置部材と前記後行設置部材が接合されることを特徴とする。
【0021】
本態様によれば、第一基材と第二基材の対応する位置にボルト孔が開設され、双方のボルト孔が位置合わせされてボルトが螺合されることにより、引き寄せてきた後行設置部材を先行設置部材に対して速やかでかつ強固に接合することができる。
【0022】
また、本発明による外壁パネル引き寄せ補助具の他の態様において、前記後行設置部材が把持部を備えていることを特徴とする。
【0023】
本態様によれば、後行設置部材が把持部を備えていることにより、後行設置部材による外壁パネルの良好な引き寄せ性が保証される。
【0024】
また、本発明による外壁パネル取り付け方法の一態様は、
前記上階の梁の下方フランジの室内側の箇所に、前記外壁パネル引き寄せ補助具を構成する前記先行設置部材を取り付ける、先行設置部材取り付け工程と、
前記外壁パネルを建物躯体に沿ってスライドさせ、下階の梁に取り付けられている第一外壁パネル取り付け金具の備える案内係合溝に対して、該外壁パネルを構成するフレームに取り付けられている取り付けボルトを落とし込んで係合させ、前記外壁パネル引き寄せ補助具を構成する前記後行設置部材の有する前記係合片を該外壁パネルの上端に係合させ、該後行設置部材を室内側へ引き寄せ、前記第一基材に前記第二基材を接合することにより前記外壁パネル引き寄せ補助具を形成し、前記第二外壁パネル取り付け金具の備えるボルト孔に対して、前記フレームの備えるボルト孔を位置合わせし、双方の該ボルト孔にボルトを挿通してボルト固定する、外壁パネル引き寄せ取り付け工程と、を有することを特徴とする。
【0025】
本態様によれば、本態様の外壁パネル引き寄せ補助具を適用することにより、効率的に外壁パネルを引き寄せながら、上階の梁と下階の梁に対して外壁パネルを取り付けることができる。
【発明の効果】
【0026】
以上の説明から理解できるように、本発明の外壁パネル引き寄せ補助具及び外壁パネル取り付け方法によれば、足場を設置するスペースがない狭小敷地においても、大掛かりな仮設部材の設置や取り外しを不要としながら、効率的に外壁パネルを引き寄せながら取り付けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】第一外壁パネル取り付け金具の一例を背面斜め方向から見た斜視図である。
図2】第一外壁パネル取り付け金具の一例が土台梁の上方フランジに取り付けられている状態を示す斜視図である。
図3】第二外壁パネル取り付け金具の一例を正面斜め方向から見た斜視図である。
図4】第一外壁パネル取り付け金具の一例と第二外壁パネル取り付け金具の一例がそれぞれ、階間梁の上方フランジと下方フランジに取り付けられている状態を示す斜視図である。
図5】外壁パネルの一例を背面斜め方向から見た斜視図である。
図6】実施形態に係る外壁パネル引き寄せ補助具の一例の分解斜視図である。
図7】実施形態に係る外壁パネル取り付け方法の一例を説明する工程図であって、一階と二階の外壁パネルの一部が取り付けられ、さらに、階間梁の下方フランジの室内側に外壁パネル引き寄せ補助具を構成する先行設置部材が取り付けられている状態を示す正面図である。
図8】階間梁の下方フランジの室内側に取り付けられている外壁パネル引き寄せ補助具を室内側の上方から見た斜視図である。
図9図7に続く外壁パネル取り付け方法の一例を説明する工程図であって、外壁パネルを横引きしている状態を示す正面図である。
図10図9に続く外壁パネル取り付け方法の一例を説明する工程図であって、外壁パネルの下端が土台梁に取り付けられている第一外壁パネル取り付け金具に係合され、外壁パネルの上端が屋外側に倒れている状態において、外壁パネルの上端に外壁パネル引き寄せ補助具を構成する後行設置部材の一部を係合させ、引き寄せている状態を示す縦断面図である。
図11図10に続く外壁パネル取り付け方法の一例を説明する工程図であって、後行設置部材を完全に引き寄せ、先行設置部材と後行設置部材をボルト接合するとともに、階間梁に取り付けられている第二外壁パネル取り付け金具と外壁パネルをボルト接合している状態を示す縦断面図である。
図12図10に続く外壁パネル取り付け方法の一例を説明する工程図であって、外壁パネルが取り付けられ、外壁パネル引き寄せ補助具が取り外されている状態を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、実施形態に係る外壁パネル引き寄せ補助具の一例と外壁パネル取り付け方法の一例について、添付の図面を参照しながら説明する。尚、本明細書及び図面において、実質的に同一の構成要素については、同一の符号を付することにより重複した説明を省く場合がある。
【0029】
[第一外壁パネル取り付け金具]
はじめに、図1及び図2を参照して、実施形態に係る外壁パネル取り付け方法において用いられる第一外壁パネル取り付け金具の一例と、この第一外壁パネル取り付け金具が土台梁に取り付けられている構成について説明する。ここで、図1は、第一外壁パネル取り付け金具の一例を背面斜め方向から見た斜視図であり、図2は、第一外壁パネル取り付け金具の一例が土台梁の上方フランジに取り付けられている状態を示す斜視図である。
【0030】
図1に示すように、第一外壁パネル取り付け金具10は、土台梁30をはじめとする梁(図2参照)に接合される固定片11と、固定片11に対して直交して外壁パネルフレーム54(図5参照)に当接する当接片12と、二つの対向するフランジ13とを有し、これらが一体に成形されている。図1に示す当接片12においては、外壁パネルフレーム54と当接する面と反対側の背面が示されている。
【0031】
当接片12には、下方に向かって徐々に近接する二つのテーパー状の案内部14と、二つの案内部14の下端を繋ぐ円弧状もしくは半トラック状の係合部15とを備えている案内係合溝16が、間隔を置いて左右に二つ開設されている。
【0032】
また、固定片11には、梁30等に開設されているボルト孔に位置決めされ、ボルトが挿通される複数の固定片ボルト孔17が開設されている。
【0033】
第一外壁パネル取り付け金具10は、例えば鋳造や鍛造により一体に成形され、案内係合溝16や固定片ボルト孔17も、第一外壁パネル取り付け金具10の成形と同時に成形されてもよいし、後加工として切断加工されることにより形成されてもよい。
【0034】
図2に示すように、H形鋼により形成される梁30の上方フランジ31の所定位置には、二つのボルト孔(図示せず)が一組として複数組開設されており、上方フランジ31の上面に固定片11が載置され、一組のボルト孔に対して一組の固定片ボルト孔17が位置決めされ、ボルトが挿通されてボルトナット60により接合される。図2に示すように、梁30の上方フランジ31の上面に第一外壁パネル取り付け金具10が固定された状態において、当接片12は上方フランジ31に直交する鉛直方向に延設した姿勢となる。ここで、図示する梁30は土台梁であるが、第一外壁パネル取り付け金具10は、その他、一階と二階の間や、二階と三階の間等における上階の階間梁にも図示例と同様の態様で接合される。
【0035】
図2に示すように、重機(図示せず)にて垂下された外壁パネル(図示せず)を、上下の梁(例えば、下方にある土台梁と、上方にあって一階と二階の間にある階間梁)に沿って、外壁の幅方向(面内方向)であるX1方向にスライドさせることにより、正面視矩形の外壁パネルの有する四つの隅角部のうち、下方の隅角部にある取り付けボルトは、一方の案内係合溝16の案内部14にX2方向に案内される。案内部14にX2方向に案内された取り付けボルトが、さらに係合部15にX3方向に落とし込まれることにより、外壁パネルの下方の隅角部は、第一外壁パネル取り付け金具10を介して下方の土台梁30に固定される。
【0036】
[第二外壁パネル取り付け金具]
次に、図3を参照して、実施形態に係る外壁パネル取り付け方法において用いられる第二外壁パネル取り付け金具の一例について説明するとともに、図4を参照して、既に説明した第一外壁パネル取り付け金具とこの第二外壁パネル取り付け金具が階間梁に取り付けられている構成について説明する。ここで、図3は、第二外壁パネル取り付け金具の一例を正面斜め方向から見た斜視図であり、図4は、第一外壁パネル取り付け金具の一例と第二外壁パネル取り付け金具の一例がそれぞれ、階間梁の上方フランジと下方フランジに取り付けられている状態を示す斜視図である。
【0037】
図3に示すように、第二外壁パネル取り付け金具20は、一枚の鋼板が階段状に曲げ加工されることにより形成される、最上段にあって水平方向に延設する固定片21と、最下段にあって鉛直方向に延設する当接片22Bと、途中段にあって、略コの字状に曲げ加工された当接片22Aと、を有する。そして、当接片22Aが階段状の途中位置にて溶接接合されることにより、固定片21と当接片22A,22Bが一体とされ、さらに、これらの側方において一対のフランジ23が溶接接合されることにより、第二外壁パネル取り付け金具20が形成される。
【0038】
上方にある当接片22Aには、下方に向かって徐々に近接する二つのテーパー状の案内部24と、二つの案内部24の下端を繋ぐ円弧状もしくは半トラック状の係合部25とを備えている案内係合溝26が、間隔を置いて左右に二つ開設されている。一方、下方にある当接片22Bのうち、二つの案内係合溝26の直下にはそれぞれ、ボルト孔28が開設されている。
【0039】
図4に示すように、H形鋼により形成される階間梁40の上方フランジ41の所定位置には、図2を参照して既に説明したように、二つの第一外壁パネル取り付け金具10が接合されている。一方、階間梁40の下方フランジ42の所定位置(第一外壁パネル取り付け金具10に対応する位置)には、二つのボルト孔(図示せず)が一組として複数組開設されており、下方フランジ42に固定片21が当接され、一組のボルト孔に対して一組の固定片ボルト孔27が位置決めされ、ボルトが挿通されてボルトナット60により接合される。ここで、第二外壁パネル取り付け金具20が固定される梁40には、一階と二階の間や、二階と三階の間等における上階の階間梁が含まれる。
【0040】
図2に示すように、重機(図示せず)にて垂下された外壁パネル(図示せず)を、上下の梁に沿ってX1方向にスライドさせ、第一外壁パネル取り付け金具10の有する一方の案内係合溝16に対して、外壁パネルの下方の隅角部にある取り付けボルトが係合された際には、外壁パネルの有するボルト58(図5参照)が、図3に示す第二外壁パネル取り付け金具20の有する当接片22Bに開設されている一方のボルト孔28に位置合わせされる。そして、相互に位置合わせされたボルト孔28とボルト孔58により形成される連通孔に対し、第二外壁パネル取り付け金具20の背面側から固定ボルト59(図5参照)を螺合することにより、外壁パネルの上方の隅角部が第二外壁パネル取り付け金具20を介して階間梁40に固定される。
【0041】
尚、図4に示す階間梁40が、一階と二階の間の階間梁40であるとした場合、二階の外壁パネルの下方の隅角部は、階間梁40の上方フランジ41に固定されている第一外壁パネル取り付け金具10の有する案内係合溝16に対して、上方取り付けボルト56が係合され、さらに、階間梁40の下方フランジ42に固定されている第二外壁パネル取り付け金具20の有する案内係合溝26に対して、下方取り付けボルト57が係合されることになる。
【0042】
[外壁パネル]
次に、図5を参照して、実施形態に係る外壁パネル取り付け方法において用いられる外壁パネルの一例について説明する。ここで、図5は、外壁パネルの一例を背面方向から見た斜視図である。
【0043】
外壁パネル50は、井桁状の外壁パネルフレーム54(フレームの一例)と、外壁パネルフレーム54に対して縦下地材54aを介して固定されている外壁面材55とを有する。
【0044】
外壁パネルフレーム54は、左右一対の縦桟51と、上下一対の横桟52と、一対の縦桟51の間に配設されている中間縦桟53とを有し、各部材が相互に溶接や釘留め、ビス留め等されることにより形成されている。
【0045】
外壁面材55は、サイディング材から形成されており、複数の縦柄目地55aと横柄目地55bをその表面に備えている。このサイディング材としては、窯業系サイディング、アルミや鋼板からなる金属系サイディング、天然木を加工してなる木質系サイディング、塩化ビニル樹脂等からなる樹脂系サイディングなどが挙げられる。
【0046】
縦桟51の上端近傍にはボルト孔58が開設され、上記するように、このボルト孔58に対して第二外壁パネル取り付け金具20の有するボルト孔28(図3又は図4参照)が位置決めされて連通孔を形成した後、固定ボルト59が連通孔に螺合されるようになっている。
【0047】
一方、縦桟51の下端近傍には、上下に二つの取り付けボルト56,57(上方取り付けボルトと下方取り付けボルト)が取り付けられている。図示するように、取り付けボルト56,57には、一対の円形フランジの間にボルトが配設されており、一方の円形フランジにおいてはこのボルトが貫通して、ボルトの先端が縦桟51に螺合されるようになっている。一対の円形フランジの間のボルトが、第一外壁パネル取り付け金具10や第二外壁パネル取り付け金具20の有する案内係合溝16、26に係合され、その際に、一対の円形フランジは当接片12,22Aを挟むことにより、外壁パネルががたつくことなく、第一外壁パネル取り付け金具10等に固定される。
【0048】
尚、図5に示す外壁パネル50はそれぞれ、以下で詳説するように、二階以上の上階に取り付けられる外壁パネルである。一方、一階にて使用される外壁パネルは50A(図9参照)は、以下で詳説するように、図5に示す外壁パネル50から、上方取り付けボルト56を取り除いた外壁パネルである。
【0049】
[実施形態に係る外壁パネル引き寄せ補助具]
次に、図6を参照して、実施形態に係る外壁パネル引き寄せ補助具の一例について説明する。ここで、図6は、実施形態に係る外壁パネル引き寄せ補助具の一例の分解斜視図である。
【0050】
図6に示すように、外壁パネル引き寄せ補助具90は、建物躯体に対して最初に取り付けられる先行設置部材70と、外壁パネルの上端を引き寄せながら先行設置部材70に接合される後行設置部材80とを有し、それぞれの構成部材はいずれも鋼材(鋼板等)や鋼ボルト等により形成されている。
【0051】
先行設置部材70は、把持片74と、第一基材77とを有し、把持片74は、第一把持片71及び第二把持片72と、これらを繋ぐ蝶ナット73とにより構成され、第一基材77は、左右にある二つの把持片74を載置する基台片75と、基台片75の中央位置において下方に垂下する被接合片76とにより構成される。
【0052】
ここで、第一把持片71は、細長で平面視長方形の鋼板が略Z形(Z形の立ち上り片は垂直)に曲げ加工等されることにより形成される。さらに、略Z形の長手方向に沿う両端が外側に曲げ加工されることにより、左右に補強リブ71aが形成されている。そして、第一把持片71の上片が基台片75にボルトナット等により固定される。
【0053】
一方、第二把持片72は、細長で平面視長方形の鋼板がL形に曲げ加工等されることにより形成され、その長手方向に沿う両端が外側に曲げ加工されることにより、左右に補強リブ72aが形成されている。
【0054】
第一把持片71の立ち上り片には上下方向に延びる長孔71bが開設されており、第二把持片72の立ち上り片の背面側には円形フランジとボルトからなる係合突起72bが取り付けられており、当該ボルトが長孔71bに挿通され、円形フランジが長孔71bに係合することにより、第一把持片71の立ち上り片に対して第二把持片72が上下方向にスライド自在に双方が接合される。第一把持片71に対して第二把持片72がスライドすることにより、これらの間に配設された梁の下方フランジの一部を把持することができる。
【0055】
第一把持片71の下片にはボルト孔71cが開設され、第二把持片72の下片におけるボルト孔71cに対応する位置にはボルト孔72cが開設されており、双方のボルト孔71c、72cに対して蝶ナット73が下方から螺合している。
【0056】
一方、基台片75は、正面視形状が逆Ω状を呈しており、細長の鋼板を曲げ加工等することにより形成される。より具体的には、水平な中央片75aと、中央片75aの左右端から上方に立ち上がる立ち上がり片75bと、立ち上がり片75bの上端から外側へ水平方向に延びる張り出し片75cとを有し、左右の張り出し片75cの上面にそれぞれ把持片74を構成する第一把持片71の上片が載置され、ボルトナット等により接合される。
【0057】
基台片75の中央片75aから下方に垂下する被接合片76には、ボルト孔76aが開設されている。
【0058】
作業員は、現場において、二組の把持片74を構成するそれぞれの第一把持片71と第二把持片72の間に梁の下方フランジの一部を把持させた後、双方の蝶ナット73を下方から締め付けることにより、梁の下方フランジに対して先行設置部材70を安定的かつ強固に取り付けることができる。
【0059】
一方、後行設置部材80は、外壁パネルの上端に係合される係合片85と、第一基材77に接合される第二基材83と、係合片85と第二基材83とを繋いで双方の離間を調整する連結棒86とを有する。
【0060】
第二基材83は、基台片81と接合片82とを有する。基台片81は、鋼板がL形に曲げ加工等されることにより形成され、水平片81aと水平片81aの一端から垂下する垂下片81bとを有する。そして、垂下片81bの外側面には、作業員が把持する矩形枠状の把持部84が溶接やボルト接合等により取り付けられている。
【0061】
接合片82は、細長で平面視長方形の鋼板が略Z形(Z形の立ち片は垂直)に曲げ加工等されることにより形成され、水平方向に延びる水平片82aと、水平片82aの一端から上方に立ち上がる立ち上がり片82bと、水平片82aの他端から垂下される垂下片82cとを有し、略Z形の長手方向に沿う両端が外側に曲げ加工されることにより、左右に補強リブ82dが形成されている。そして、水平片82aが基台片81の水平片81aに載置され、双方が溶接やボルト接合等により取り付けられている。
【0062】
接合片82の立ち上がり片82bにはボルト孔82eが開設されており、先行設置部材70と後行設置部材80の接合に際しては、被接合片76に対して立ち上がり片82bが当接され、相互に位置決めされた双方のボルト孔76a、82eに頭付きボルト91が螺合されるようになっている。
【0063】
係合片85も、細長で平面視長方形の鋼板が略Z形(Z形の立ち片は垂直)に曲げ加工等されることにより形成され、水平方向に延びる水平片85aと、水平片85aの一端から上方に立ち上がる立ち上がり片85bと、水平片85aの他端から垂下される垂下片85cとを有し、略Z形の長手方向に沿う両端が外側に曲げ加工されることにより、左右に補強リブ85dが形成されている。
【0064】
連結棒86は全螺子ボルトにより形成されており、接合片82の垂下片82cに開設されているボルト孔(図示せず)に対して連結棒86の一端が螺合し、連結棒86の他端が係合片85の立ち上がり片85bに開設されているボルト孔(図示せず)に対して螺合することにより、後行設置部材80が構成される。
【0065】
現場にて後行設置部材80を使用して外壁パネルの上端を引き寄せるに当たり、連結棒86を回転させて第二基材83もしくは係合片85をスライドさせることにより、垂下片81bと立ち上がり片85bとの間の離間t1を所望に調整する。具体的には、外壁パネルを引き寄せ、先行設置部材70と後行設置部材80を相互に接合して外壁パネル引き寄せ補助具90を形成した際に、外壁パネルが鉛直姿勢を形成するように離間t1が設定される。
【0066】
[実施形態に係る外壁パネルの取り付け方法]
次に、図7乃至図12を参照して、実施形態に係る外壁パネルの取り付け方法の一例について説明する。ここで、図7図9乃至図12は順に実施形態に係る外壁パネルの取り付け方法の一例の工程図を示す図である。より具体的には、図7は、一階と二階の外壁パネルの一部が取り付けられ、さらに、階間梁の下方フランジの室内側に外壁パネル引き寄せ補助具を構成する先行設置部材が取り付けられている状態を示す正面図である。また、図9は、外壁パネルを横引きしている状態を示す正面図であり、図10は、外壁パネルの下端が土台梁に取り付けられている第一外壁パネル取り付け金具に係合され、外壁パネルの上端が屋外側に倒れている状態において、外壁パネルの上端に外壁パネル引き寄せ補助具を構成する後行設置部材の一部を係合させ、引き寄せている状態を示す縦断面図である。また、図11は、後行設置部材を完全に引き寄せ、先行設置部材と後行設置部材をボルト接合するとともに、階間梁に取り付けられている第二外壁パネル取り付け金具と外壁パネルをボルト接合している状態を示す縦断面図である。さらに、図12は、外壁パネルが取り付けられ、外壁パネル引き寄せ補助具が取り外されている状態を示す正面図である。
【0067】
まず、図7に示すように、鉄筋コンクリート製の基礎35の上に土台梁30が固定され、土台梁30の上方フランジ31の所定位置には、複数の第一外壁パネル取り付け金具10が外壁パネルの幅の離間を有して固定されている。図7には、一階の外壁パネル50Aと二階の外壁パネル50が、第一外壁パネル取り付け金具10及び第二外壁パネル取り付け金具20を介して既に途中まで取り付けられている状態を示している。尚、一階の外壁パネル50Aは、図5を参照して説明した二階の外壁パネル50から、既述するように上方取り付けボルト56を取り除いた外壁パネルである。
【0068】
一階の外壁パネル50Aは、土台梁30に固定されている第一外壁パネル取り付け金具10の有する案内係合溝16に取り付けボルト57が係合し、階間梁40に固定されている第二外壁パネル取り付け金具20の有するボルト孔28にボルト孔58が位置決めされて連通孔が形成され、固定ボルト59が連通孔に螺合することにより固定されている。
【0069】
一方、二階の外壁パネルの下方の隅角部は、階間梁40の上方フランジ41に固定されている第一外壁パネル取り付け金具10の有する案内係合溝16に対して、上方取り付けボルト56が係合されている。さらに、階間梁40の下方フランジ42に固定されている第二外壁パネル取り付け金具20の有する案内係合溝26に対して、下方取り付けボルト57が係合されている。
【0070】
尚、図7では、二階の外壁パネル50の上端の固定態様の図示が省略されているが、図示する階間梁40の上方には、例えばさらに別途の階間梁があり、この階間梁の下方フランジには、図示する階間梁40と同様に第二外壁パネル取り付け金具20が取り付けられており、この第二外壁パネル取り付け金具20の有するボルト孔28にボルト孔58が位置決めされて連通孔が形成され、固定ボルト59が連通孔に螺合することにより固定されている。
【0071】
このように、二階の外壁パネル50の下方の隅角部が、階間梁40の上下にある第一外壁パネル取り付け金具10と第二外壁パネル取り付け金具20を介して二箇所で係合することにより、外壁パネル50の下方が面外方向(図7の紙面に直交する方向)に傾動(偏心)することが解消され、かつ外壁パネル50の下方を梁40に強固に固定することができる。
【0072】
次に、図7に示す一階の外壁パネル50Aの側方に別途の外壁パネル50Aを取り付けるに当たり、図6に示す外壁パネル引き寄せ補助具90を構成する先行設置部材70を、階間梁40の下方フランジ42の室内側の箇所に取り付ける。図7においては、階間梁40に取り付けられている左右の第二外壁パネル取り付け金具20の略中央位置に先行設置部材70が取り付けられている。
【0073】
図8に示すように、二組の把持片74を構成するそれぞれの第一把持片71と第二把持片72の間に階間梁40の下方フランジ42の一部を把持させた後、双方の蝶ナット73を下方から締め付けることにより、階間梁40の下方フランジ42に対して先行設置部材70を安定的かつ強固に取り付けることができる(以上、先行設置部材取り付け工程)。
【0074】
次に、図9に示すように、重機(図示せず)にて垂下された外壁パネル50Aを、上下の土台梁30と階間梁40等に沿って、外壁の幅方向(面内方向)であるX1方向に横引きすることにより、正面視矩形の外壁パネル50Aの有する四つの隅角部のうち、下方の隅角部にある取り付けボルト57が、左右にある二つの第一外壁パネル取り付け金具10の有するそれぞれの案内係合溝16に係合される。
【0075】
このように、外壁パネル50Aの下方の隅角部にある取り付けボルト57は、左右にある二つの第一外壁パネル取り付け金具10に係合されるものの、外壁パネル50Aの上端は、例えば図10に示すように、建物躯体の面外方向に若干傾いている場合が往々にしてある。図10においては、外壁パネル50Aが、鉛直線Lに対して角度θだけ前方に傾いている状態を示している。
【0076】
この外壁パネル50Aの上端を建物の室内側に引き寄せるに当たり、外壁パネル引き寄せ補助具90を構成する連結棒86を回転させ、第二基材83もしくは係合片85をスライドさせることにより(図6参照)、垂下片81bと立ち上がり片85bとの間の離間t1を所望に調整する。具体的には、外壁パネル50Aを引き寄せ、先行設置部材70と後行設置部材80を相互に接合して外壁パネル引き寄せ補助具90を形成した際に、外壁パネル50Aが鉛直姿勢を形成するように離間t1を設定する。
【0077】
そして、同図10に示すように、作業員(図示せず)は後行設置部材80の把持部84を把持して係合片85を外壁パネル50Aの上端に係合させ、外壁パネル50Aの上端を室内側へY1方向に引き寄せる。この際、外壁パネル50Aの下端は土台梁30に取付けられている第一外壁パネル取り付け金具10に係合していることから、この係合箇所を回動支点として、外壁パネル50Aの上端は回動しながら室内側へ引き寄せられる。
【0078】
そして、図11に示すように、先行設置部材70の被接合片76に対して後行設置部材80の立ち上がり片82bを当接させる。このように被接合片76と立ち上がり片82bが当接した状態において、双方に開設されているボルト孔76a、82eが位置合わせされて連通孔を形成する。そして、この連通孔に対して頭付きボルト91をY2方向に螺合することにより、先行設置部材70と後行設置部材80が接合され、外壁パネル引き寄せ補助具90が形成される。
【0079】
また、外壁パネル50Aが引き寄せられて鉛直姿勢が形成された際に、外壁パネル50Aの上方の隅角部にあるボルト孔58は、階間梁40の下方フランジ42に取り付けられている第二外壁パネル取り付け金具20の有するボルト孔28に位置決めされ、ボルト孔58、28により連通孔が形成されている。この連通孔に固定ボルト59をY3方向に螺合することにより、外壁パネル50Aの上端が第二外壁パネル取り付け金具20を介して階間梁40に固定される(以上、外壁パネル引き寄せ取り付け工程)。
【0080】
外壁パネル50Aが階間梁40に固定された後、図12に示すように、外壁パネル引き寄せ補助具90を取り外し、次に設置される外壁パネル50Aに対応する位置に外壁パネル引き寄せ補助具90が再度取り付けられ、外壁パネル50Aの取り付けが同様の方法で行われる。
【0081】
このように、第一外壁パネル取り付け金具10と第二外壁パネル取り付け金具20を用いた外壁パネルの取り付け方法によれば、上下の梁30,40に対して外壁の幅方向から外壁パネル50,50Aをスライドさせながら設置することができる。そのため、足場を設置するスペースがない狭小敷地においても、効率的に外壁パネルを取り付けることができる。
【0082】
また、各図からも明らかなように、第一外壁パネル取り付け金具10と第二外壁パネル取り付け金具20は、比較的シンプルな構成であり、かつその寸法も大きなものとはならないことから、製作コストも安価になる。また、第一外壁パネル取り付け金具10と第二外壁パネル取り付け金具20は、仮設部材であると同時に本設部材でもあることから、外壁パネル設置後にその取り外しは不要である。
【0083】
さらに、外壁パネル引き寄せ補助具90を適用することにより、効率的かつ可及的に少ない労力にて外壁パネル50A(50)を引き寄せながら、上階と下階の梁30,40に対して外壁パネル50A(50)を取り付けることができる。
【0084】
尚、上記実施形態に挙げた構成等に対し、その他の構成要素が組み合わされるなどした他の実施形態であってもよく、ここで示した構成に本発明が何等限定されるものではない。この点に関しては、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で変更することが可能であり、その応用形態に応じて適切に定めることができる。
【符号の説明】
【0085】
10:第一外壁パネル取り付け金具
11:固定片
12:当接片
13:フランジ
14:案内部
15:係合部
16:案内係合溝
17:固定片ボルト孔
20:第二外壁パネル取り付け金具
21:固定片
22A,22B:当接片
23:フランジ
24:案内部
25:係合部
26:案内係合溝
27:固定片ボルト孔
28:ボルト孔
30:土台梁(梁)
31:上方フランジ
35:基礎
40:階間梁(梁)
41:上方フランジ
42:下方フランジ
45:出隅柱
50,50A:外壁パネル
51:縦桟
52:横桟
53:中間縦桟
54:外壁パネルフレーム(フレーム)
54a:縦下地材
55:外壁面材
55a:縦柄目地
55b:横柄目地
56:上方取り付けボルト(取り付けボルト)
57:下方取り付けボルト(取り付けボルト)
58:ボルト孔
59:固定ボルト
60:ボルトナット
70:先行設置部材
71:第一把持片
72:第二把持片
73:蝶ボルト
74:把持片
75:基台片
76:被接合片
77:第一基材
80:後行設置部材
81:基台片
82:接合片
83:第二基材
84:把持部
85:係合片
86:連結棒
90:外壁パネル引き寄せ補助具
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12