(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-12
(45)【発行日】2023-07-21
(54)【発明の名称】液晶表示装置
(51)【国際特許分類】
G09G 3/36 20060101AFI20230713BHJP
G09G 3/20 20060101ALI20230713BHJP
【FI】
G09G3/36
G09G3/20 612U
G09G3/20 621D
G09G3/20 621F
G09G3/20 623Y
G09G3/20 622P
(21)【出願番号】P 2019208165
(22)【出願日】2019-11-18
【審査請求日】2022-08-04
(73)【特許権者】
【識別番号】502356528
【氏名又は名称】株式会社ジャパンディスプレイ
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】尾崎 匡史
(72)【発明者】
【氏名】松島 寿治
【審査官】塚本 丈二
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-123223(JP,A)
【文献】特開2018-136495(JP,A)
【文献】特開2010-160350(JP,A)
【文献】特開2016-071014(JP,A)
【文献】特開2009-080456(JP,A)
【文献】特開2008-309873(JP,A)
【文献】特開2007-078860(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第102201191(CN,A)
【文献】国際公開第2012/137799(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G09G 3/20-3/38
G02F 1/133
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の画素が配置された表示部を有する表示パネルと、
更新前のフレーム画像と更新後のフレーム画像とに基づいて、前記表示パネルにおいてフレーム画像が更新される前に前記複数の画素の一部又は全部に対して所定階調値の画素信号を一括で書き込むかの判定を行う判定回路とを備え
、
前記判定回路は、応答時間に基づいて前記判定を行い、
前記応答時間は、前記更新後のフレーム画像に基づいた画素信号が前記画素に入力されてから当該画素に反映されるまでの時間である
液晶表示装置。
【請求項2】
更新前の階調値と更新後の階調値との組み合わせに基づいて前記応答時間を特定するためのデータを記憶する記憶部を備え、
前記判定回路は、前記データを参照して前記応答時間を特定する
請求項
1に記載の液晶表示装置。
【請求項3】
前記判定回路は、フレーム画像が更新される前に前記所定階調値の画素信号を一括で書き込んだ場合の前記応答時間から前記所定階調値の画素信号を一括で書き込まなかった場合の前記応答時間を差し引いた値と所定の閾値とに基づいて前記判定を行う
請求項
1又は
2に記載の液晶表示装置。
【請求項4】
前記表示部は、複数の部分領域を含み、
前記部分領域は、複数の画素を含み、
前記判定は、前記部分領域毎に行われる
請求項
2又は3に記載の液晶表示装置。
【請求項5】
前記表示部は、複数の部分領域を含み、
前記部分領域は、複数の画素を含み、
前記判定は、前記部分領域毎に行われ、
前記所定の閾値は、前記部分領域毎に設定される
請求項
3に記載の液晶表示装置。
【請求項6】
前記複数の画素は、行列状に配置され、
行方向に並ぶ画素で共有されて前記画素を駆動する駆動信号を伝送する走査線が列方向に複数並び、
フレーム画像の更新によって生じる前記複数の画素に対する画素信号の書き込みにおける書き込み順が前記走査線の並び順に基づいて決定され、
前記判定は、前記表示部のうち、前記書き込み順がより後である5%から50%の範囲内で行われる
請求項1から
3のいずれか一項に記載の液晶表示装置。
【請求項7】
前記判定は、前記表示部のうち、前記書き込み順がより後である10%から20%の範囲内で行われる
請求項
6に記載の液晶表示装置。
【請求項8】
前記判定回路は、前記更新後のフレーム画像に含まれる画素信号が示す階調値に基づいて前記所定階調値に対応する電位を決定する
請求項1から
7のいずれか一項に記載の液晶表示装置。
【請求項9】
複数の画素が配置された表示部を有する表示パネルと、
更新前のフレーム画像と更新後のフレーム画像とに基づいて、前記表示パネルにおいてフレーム画像が更新される前に前記複数の画素の一部又は全部に対して所定階調値の画素信号を一括で書き込むかの判定を行う判定回路とを備え
、
前記判定回路は、前記更新後のフレーム画像に含まれる画素信号が示す階調値に基づいて前記所定階調値に対応する電位を決定する
液晶表示装置。
【請求項10】
前記複数の画素の一部又は全部に対して所定階調値の画素信号が一括で書き込まれる場合、当該複数の画素の一部又は全部には、当該所定階調値の画素信号が一括で書き込まれた後、更新後のフレーム画像に対応する階調値の画素信号が個別に書き込まれる
請求項1から
9のいずれか一項に記載の液晶表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示パネルにおいて、画素の階調値をある階調値から別の階調値へ切り替えるのにかかる時間(応答時間)をより短くする目的で、当該別の階調値へ切り替える前に全ての画素を一括リセットする方法が知られている(例えば特許文献1)。これは、応答時間の短縮によって液晶表示パネルの応答速度をより良くすることを目的としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の一括リセットでは、リセット前に画素に与えられる階調値とリセット後に画素に与えられる階調値との関係によっては却って応答時間をより長くしてしまい、応答速度が悪化するという問題があった。例えば、静止画が連続して表示され続ける場合にフレーム画像の交信ごとにリセットを行うと、却って画素の階調値が不必要に変化してしまうため、リセットを行うことによって応答時間が悪化していた。
【0005】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたもので、応答時間の悪化を抑制できる液晶表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様による液晶表示装置は、複数の画素が配置された表示部を有する表示パネルと、更新前のフレーム画像と更新後のフレーム画像とに基づいて、前記表示パネルにおいてフレーム画像が更新される前に前記複数の画素の一部又は全部に対して所定階調値の画素信号を一括で書き込むかの判定を行う判定回路とを備える。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】
図1は、液晶表示装置の主要構成を示す概略図である。
【
図2】
図2は、表示パネルと光源部との位置関係を示す概略図である。
【
図3】
図3は、表示パネルの主要構成を示す概略図である。
【
図4】
図4は、画素の応答時間と、更新前の階調値(start level)と更新後の階調値(target level)との組み合わせとの関係の一例を示す図である。
【
図5】
図5は、更新前後のフレーム画像で与えられる階調値が異なる画素を示す模式図である。
【
図6】
図6は、セグメント単位でリセット電位が与えられる場合のタイミング制御の例を示す図である。
【
図7】
図7は、動画像の変化に関するユーザの認識の度合いに基づいて設定された表示部内の部分領域の例を示す図である。
【
図8】
図8は、更新後の階調値を書き込む際に応答時間が最短になる階調値に対応する電位の分布と、リセット電位として採用された電位との関係の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下に、本発明の各実施の形態について、図面を参照しつつ説明する。なお、開示はあくまで一例にすぎず、当業者において、発明の主旨を保っての適宜変更について容易に想到し得るものについては、当然に本発明の範囲に含有されるものである。また、図面は説明をより明確にするため、実際の態様に比べ、各部の幅、厚さ、形状等について模式的に表される場合があるが、あくまで一例であって、本発明の解釈を限定するものではない。また、本明細書と各図において、既出の図に関して前述したものと同様の要素には、同一の符号を付して、詳細な説明を適宜省略することがある。
【0009】
(実施形態1)
図1は、液晶表示装置100の主要構成を示す概略図である。液晶表示装置100は、表示パネル30、光源部20、判定回路50等を備える。表示パネル30は、後述する入力信号IPに応じてフレーム画像を表示する液晶表示パネルである。
【0010】
図2は、表示パネル30と光源部20との位置関係を示す概略図である。光源部20は、表示パネル30の一面(背面)と対向するよう設けられ、表示パネル30を照明する光を発する。以下、表示パネル30と光源部20とが対向する方向をZ方向とする。また、Z方向と直交する平面をX-Y平面とする。また、X-Y平面に沿って互いに直交する2方向のうち一方をX方向とし、他方をY方向とする。
【0011】
図1に示す光源部20は、複数の発光領域LBを含む。複数の発光領域LBは、例えばX方向を長手方向とし、Y方向に並ぶ。複数の発光領域LBはそれぞれ光源を有する。各光源は、個別に発光のタイミングを制御可能に設けられる。各光源の動作制御は、光源駆動部21が行う。光源駆動部21は、光源の種類に対応した駆動回路、当該駆動回路が設けられる基板等を有する。例えば、光源がLED(Light Emitting Diode)である場合、当該駆動回路は、所謂LEDドライバIC(Integrated Circuit)として機能する回路である。
【0012】
判定回路50は、入力信号IPに基づいて表示パネル30及び光源部20の動作を制御する。判定回路50は、例えば表示パネル30に接続される各種の配線が設けられたフレキシブルプリント基板又は当該フレキシブルプリント基板に接続される外部の基板に実装される回路であるが、これに限られるものでない。例えば、判定回路50は、表示パネル30の基板に実装されてもよい。判定回路50による動作制御の詳細については後述する。
【0013】
図3は、表示パネル30の主要構成を示す概略図である。表示パネル30は、表示部7と、信号出力回路8と、走査回路9と、VCOM駆動回路10と、タイミングコントローラ13とを備える。
【0014】
表示部7には、複数の画素Pixがマトリクス状に配置されている。画素Pixは、スイッチング素子1と、2つの電極とを含む。
図1では、2つの電極として、画素電極2と、共通電極6とを図示している。画素電極2の電位が個別に制御されることで、表示パネル30に封止された液晶3の配向が画素Pix毎に制御される。
【0015】
画素電極2と共通電極6は、例えば液晶3を挟むようにZ方向に対向するが、画素電極2と共通電極6と液晶3との位置関係はこれに限られるものでない。表示パネル30は、1つの基板に画素電極2と共通電極6が設けられて画素電極2と共通電極6によって発生する電界によって液晶3の配向が制御される構成であってもよい。
【0016】
次に、画素電極2及び共通電極6の電位を制御する仕組みについて説明する。スイッチング素子1は、例えば薄膜トランジスタ(TFT:Thin Film Transistor)等、半導体を用いたスイッチング素子である。スイッチング素子1のソース又はドレインの一方は、2つの電極の一方(画素電極2)と接続される。スイッチング素子1のソース又はドレインの他方が信号線4と接続される。スイッチング素子1のゲートは、走査線5と接続される。走査線5は、走査回路9の制御下で、スイッチング素子1のソース-ドレイン間を開閉するための電位を与える。当該電位の制御は、走査回路9が行う。
【0017】
複数の信号線4は、画素Pixの並び方向のうち一方(X方向)に沿って並ぶ。信号線4は、画素Pixの並び方向のうち他方(Y方向)に沿って延出する。信号線4は、Y方向に並ぶ複数の画素Pixのスイッチング素子1で共有される。複数の走査線5は、Y方向に沿って並ぶ。走査線5は、X方向に沿って延出する。走査線5は、X方向に並ぶ複数の画素Pixのスイッチング素子1で共有される。以下の説明では、走査線の数がrであるものとする(
図5、
図6参照)。rは、2以上の自然数である。
【0018】
なお、
図3では、複数の走査線5のうちY方向の両端に配置されたものの一方を走査線5aとし、他方を走査線5bとしている。実施形態1の走査回路9は、内部にシフトレジスタが設けられており、フレーム画像に対応した画素信号を各画素Pixに書き込むための画素Pixの駆動に際して、一方から他方に向かって走査線5に対する駆動信号の出力を順次行う。すなわち、走査線5を共有する画素Pixの行(画素行)単位で画素Pixの駆動が行われる。なお、走査回路9は、後述するリセット電位を与えるための画素Pixの駆動に際して、複数の走査線5に対して同時に駆動信号を与えることもできるよう設けられる。
【0019】
共通電極6は、VCOM駆動回路10と接続される。VCOM駆動回路10は、共通電極6に共通電位として機能する電位を与える。走査回路9が走査線5に対して駆動信号として機能する電位を与えるタイミングで、信号出力回路8が信号線4に対して後述する画素信号を出力することで、各画素Pixの液晶3の配向を制御する。
【0020】
タイミングコントローラ13は、信号出力回路8、走査回路9及びVCOM駆動回路10の動作タイミングを制御する回路である。具体的には、タイミングコントローラ13は、走査回路9が走査線5に駆動信号を出力するタイミングと、当該走査線5と接続されたスイッチング素子1を含む画素Pixに対する画素信号を信号出力回路8が信号線4に出力するタイミングとを同期させる。また、表示パネル30で画素電極2と共通電極6との電位の高低関係を周期的に切り替える反転駆動が行われる場合、表示パネル30は、VCOM駆動回路10が共通電極6に与える電位と信号出力回路8が画素信号によって画素電極2に与える電位との高低が切り替わるタイミングを制御する。
【0021】
画素信号は、入力信号IPに含まれる。入力信号IPは、液晶表示装置100の外部から入力される信号である。ある1つの画素Pixに割り当てられるRGBの階調値を示す信号を画素信号とすると、表示パネル30が表示するフレーム画像に対応する入力信号IPは、表示部7に設けられた複数の画素Pixに対する複数の画素信号の集合である。
【0022】
画素信号について一例を記載すると、赤(R:Red)、緑(G:Green)、青(B:Blue)の組み合わせで色を再現する所謂RGB信号が画素信号として入力される場合、当該画素信号は、(R,G,B)=(a,b,c)のように表せる階調信号に対応した電位として信号線4に与えられる。a,b,cは、画素信号で採用された階調のビット数に対応した値である。例えば、8ビットの場合、a,b,cはそれぞれ、0~255の範囲内の値で表される。画素信号に含まれる色数及び色の種類、階調値のビット数等については任意であり、適宜変更可能である。1つの画素Pixには、R,G,Bのうち1つの色の階調値に対応した電位が与えられる。
【0023】
以下の説明では、8ビットの階調値を例とする。単に「階調値」と記載した場合、画素信号が示すR,G,Bのいずれかの階調値(a,b又はc)を指す。8ビットの場合、階調値の最低値(0)又は最高値(255)の一方は、画素Pixが表示パネル30からの光を背面側からその反対側(表示面側)に透過する度合いが最低になる階調値である。また、階調値の最低値(0)又は最高値(255)の他方は、画素Pixが光を透過する度合いが最高になる階調値である。
【0024】
時間の経過に伴い、表示パネル30が表示中のフレーム画像に対応する入力信号IPと異なる入力信号IPが入力された場合、当該異なる入力信号IPに応じて画素Pixの一部又は全部に与えられる画素信号が更新されることでフレーム画像の更新が行われる。ここで、フレーム画像の更新による各画素Pixの応答時間は一定でない。応答時間とは、更新後のフレーム画像に基づいた画素信号が画素Pixに入力されてから当該画素Pixに反映されるまでの時間である。より具体的には、応答時間は、画素信号に対応した電位が新たに与えられることで開始した液晶3の配向の変更が完了までの時間として測定される。応答時間は、更新前の階調値と更新後の階調値との組み合わせに対応した時間になる。
【0025】
図4は、画素Pixの応答時間と、更新前の階調値(start level)と更新後の階調値(target level)との組み合わせとの関係の一例を示す図である。
【0026】
図4では、更新前の階調値(start level)及び更新後の階調値(target level)について、0,45,79,118,145,207,255がサンプリングされているが、これに限られるものでない。
図4でサンプリングされた階調値の一部が省略されていてもよいし、他の値がサンプリングされていてもよいし、更新前後の階調値の全部を網羅するようにデータが用意されていてもよい。なお、応答時間の単位は、ミリ秒[ms]である。
図4で例示するように、更新後の階調が最低値(0)又は最高値(255)である場合、それ以外の場合よりも応答時間が短くなる傾向がある。
【0027】
図4を参照して具体例を挙げると、更新後の階調値が最低値(0)である場合、応答時間は最大で2.3[ms]である。また、更新後の階調値が最高値(255)である場合、応答時間は最大で3.3[ms]である。これらに対し、更新後の階調値が118である場合である場合、応答時間は最低でも3.5778[ms]であり、最大で4.6706[ms]である。また、更新後の階調値が145である場合である場合、応答時間は最低でも3.6058[ms]であり、最大で5.3032[ms]である。このように、最低値(0)でも最高値(255)でもない中間値を示す画素信号に対応した電位で画素Pixを制御しようとすると、応答時間がより長くなる傾向がある。
【0028】
また、応答時間は更新前の階調値によっても変わり得る。例えば、更新前の階調値が最高値(255)である場合、応答時間は最大で4.0657[ms]である。また、更新前の階調値が145である場合、応答時間は最大で3.7869[ms]である。
【0029】
図4を参照して説明した応答時間は、あくまである表示パネル30の一形態による応答時間である。応答時間は、表示パネル30の具体的態様に応じて異なる。
【0030】
このような応答時間の傾向から、フレーム画像の更新に応じて、一部又は全部の画素Pixに対して一括で所定階調値に対応する電位を画素Pixに与えてから更新後の階調値に対応した電位を画素Pixに与えることが応答時間の短縮に有効であることがある。以下の説明では、係る所定階調値に対応する電位をリセット電位と記載することがある。リセット電位によって、複数の画素Pixの一部又は全部に対して所定階調値の画素信号が一括で書き込まれる。一方、更新前の階調値と更新後の階調値との組み合わせによっては、リセット電位を与えずに更新後の階調値に対応する電位を画素Pixに与えたほうがよいこともある。以降、複数の画素Pixに対して一括である階調値を書き込むということは、当該複数の画素Pixに対して同時に当該ある階調値に対応する電位を画素Pixに与えることをさすものとする。
【0031】
そこで、判定回路50は、フレーム画像が更新される前に所定階調値の画素信号を一括で書き込んだ場合の応答時間(第1応答時間)を求める。すなわち、第1応答時間は、リセット電位が与えられた画素Pixに対して当該画素Pixに更新後の階調値に対応した電位を画素Pixに与えた場合の応答時間である。また、判定回路50は、所定階調値の画素信号を一括で書き込まなかった場合の応答時間(第2応答時間)を求める。すなわち、第2応答時間は、更新前の階調値に対応した電位が与えられた画素Pixに対して当該画素Pixに更新後の階調値に対応した電位を画素Pixに与えた場合の応答時間である。第1応答時間及び第2応答時間を求める処理は、表示部7に設けられる複数の画素の一部又は全部について行われる。判定回路50は、第1応答時間から第2応答時間を差し引いた値と所定の閾値に基づいて、リセット電位を与える制御を行うか決定する。
【0032】
判定回路50は、メモリ60を有する(
図1参照)。メモリ60は、少なくとも、表示パネル30に表示されている最新のフレーム画像(更新前のフレーム画像)と、当該フレーム画像を更新するために新たに判定回路50に入力されたフレーム画像(更新後のフレーム画像)を記憶する。判定回路50は、メモリ60から更新前のフレーム画像と更新後のフレーム画像を読み出す。判定回路50は、更新前のフレーム画像によって各画素Pixに与えられる階調値と更新後のフレーム画像によって各画素Pixに与えられる階調値とを比較し、更新前後で階調値が異なる画素Pixを抽出する。係る抽出はフレーム画像の全体(全画素Pix)について行ってもよいし、フレーム画像の一部について行ってもよい。実施形態1では、後述する
図5で例示するように、走査回路9による駆動信号の出力の順序が最後になる走査線5と接続されている画素行ym側から数えて所定数(例えば、5)の画素行を係る抽出の範囲とする。
【0033】
図5は、更新前後のフレーム画像で与えられる階調値が異なる画素CP1,CP2を示す模式図である。
図5では、m[本]設けられた走査線5のうち、走査回路9による駆動信号の出力の順序が最後になる走査線5と接続されている画素行ym側から数えて5[行]の画素行に含まれる5[列](x1,x2,x3,x4,x5)の画素列に含まれる5×5の画素行列範囲を例示している。
【0034】
上述のように走査線の数をrとすると、r≧25の場合、
図5に示す画素領域は、表示部7のうち、書き込み順がより後である10%から20%の範囲内に該当する。また、r≧10の場合、
図5に示す画素領域は、表示部7のうち、書き込み順がより後である5%から50%の範囲内に該当する。
【0035】
判定回路50は、更新前後のフレーム画像で異なる階調値が与えられる画素Pix毎に、第1応答時間と第2応答時間を求める。
図5に示す例では、5×5の画素行列範囲に含まれる画素CP1,CP2に対して、更新前後のフレーム画像で異なる階調値が与えられる。従って、判定回路50は、画素CP1と画素CP2とで個別に第1応答時間及び第2応答時間を求める。
【0036】
判定回路50は、
図4に示すような更新前の階調値(start level)と更新後の階調値(target level)との組み合わせとの関係を示すデータを参照可能に設けられている。当該データは、判定回路50が有する記憶部70が保持していてもよいし、判定回路50が参照可能な外部の記憶回路に保持されていてもよい。係る記憶部70又は外部の記憶回路は、応答時間を特定するためのデータを記憶する記憶部として機能する。判定回路50は、係るデータを参照して、更新前後のフレーム画像で異なる階調値が与えられる画素Pix毎に、第1応答時間と第2応答時間を求める。
【0037】
判定回路50は、更新前後のフレーム画像で与えられる階調値が異なる画素Pixの第1応答時間から第2応答時間を差し引いた値を合算し、合算された値(合算値)と閾値との大小を比較する。ここで、画素CP1の第1応答時間をTa´とする。また、画素CP1の第2応答時間をTaとする。また、画素CP2の第1応答時間をTb´とする。また、画素CP2の第2応答時間をTbとする。また、閾値をTthとする。
図5で図示されない画素列には更新前後のフレーム画像で与えられる階調値が異なる画素がないとすると、合算値は、(Ta´-Ta)+(Tb´-Tb)となる。判定回路50は、例えば、合算値が閾値より大きい場合、すなわち、(Ta´-Ta)+(Tb´-Tb)>Tthが成立する場合、リセット電位を一括で与えないものとする。すなわち、この場合、各画素Pixに与えられる電位は、更新前のフレーム画像に対応した電位から、リセット電位を挟まず、更新後のフレーム画像に対応した電位に遷移する。一方、判定回路50は、合算値が閾値以下の場合、すなわち、(Ta´-Ta)+(Tb´-Tb)≦Tthが成立する場合、リセット電位を一括で与えるものとする。すなわち、この場合、各画素Pixに与えられる電位は、更新前のフレーム画像に対応した電位、リセット電位、更新後のフレーム画像に対応した電位の順に遷移する。
【0038】
判定回路50は、リセット電位を一括で与えるか否かの判定結果に応じた制御信号等を表示パネル30に出力する。表示パネル30は、当該制御信号等に応じて動作する。例えば、リセット電位を一括で与えることを示す制御信号が判定回路50からタイミングコントローラ13に出力された場合、判定回路50から信号出力回路8に対してリセット電位に対応した画素信号が与えられる。タイミングコントローラ13は、当該制御信号に応じて、フレーム画像の更新前後のタイミングに介在するタイミングで走査回路9を動作させ、リセット電位が与えられる画素Pixと接続された走査線5(例えば、全ての走査線5)に対する駆動信号の出力を行わせる。タイミングコントローラ13は、当該駆動信号の出力が行われたタイミングに応じて、信号出力回路8からリセット電位を信号線4に出力させる。このようにして、フレーム画像の更新前後にリセット電位を与えるための動作制御が行われる。一方、リセット電位を一括で与えないことを示す制御信号が判定回路50からタイミングコントローラ13に出力された場合、フレーム画像の更新前後にリセット電位を与えるための動作制御は省略される。
【0039】
なお、
図5で図示されない画素列に更新前後のフレーム画像で与えられる階調値が異なる画素Pixが含まれている場合、合算値には、さらに、係る画素Pixの第1応答時間から第2応答時間を差し引いた値が加算される。ここで、更新前後のフレーム画像で与えられる階調値が異なる画素Pixの数(評価画素数)がNであるとすると、リセット電位を一括で与える場合の条件式は、以下の式(1)のようになる。Nは、自然数である。閾値(Tth)は、例えば、事前の測定、シミュレーション等に基づいて、リセット電位を与えた場合に応答時間が悪化しない値として設定されることが望ましい。
【0040】
【0041】
なお、リセット電位を一括で与える場合の条件式は、上述の式(1)に限られない。例えば、以下の式(2)のようにしてもよい。式(2)におけるWn(λm-1,λm)は、(m-1)フレーム目のフレーム画像からmフレーム目のフレーム画像への更新に際して評価画素数(N)として計上された画素Pixのうちn番目の画素Pixに対する更新前後の階調値の差によって生じる色空間座標間の距離に応じた重み付け評価値である。ここで、式(2)におけるWn(λm-1,λm)は、表示パネル30がカラー表示機能を有する場合、1つの色を構成するよう協働する複数の副画素で共有される。一方、式(2)における(Tn´-Tn)は、当該複数の副画素の各々で個別である。当該色空間は、例えばL*a*b*色空間であるが、L*u*v*色空間であってもよい。
【0042】
【0043】
なお、リセット電位を一括で与える対象は、複数の走査線5の全てであってもよいし、セグメント単位であってもよい。セグメント単位である場合、表示部7には、複数のセグメントが設定される。各セグメントは、1以上の画素行を含む。異なるセグメントは、それぞれ異なる発光領域LBが背面側に位置する。言い換えれば、セグメント単位でのリセット電位の制御とは、発光領域LB単位で表示部7を管理した場合のリセット電位の制御である。
【0044】
図6は、セグメント単位でリセット電位が与えられる場合のタイミング制御の例を示す図である。
図6における中間線CLは、走査線5の並び方向(Y方向)における表示部7の中間線を示す。中間線CLを挟んで一方(1)の側が走査線5a側であり、他方(r)の側が走査線5b側であるが、逆でもよい。ここで、他方(r)としているのは、上述のように走査線の数をrとした場合の末尾の番号をさしている。以下の他方(r)についても同様である。
【0045】
図6に示すタイミング制御が採用される場合、走査回路9は、中間線CLに対応する位置の走査線5から駆動信号を与え始め、Y方向の両端側に向かって並行して駆動信号を与える走査線5をシフトさせる。
図6では、中間線CLから一方(1)の側に向かって進行する駆動信号の出力対象のシフトを矢印DL11で示している。また、中間線CLから他方(r)の側に向かって進行する駆動信号の出力対象のシフトを矢印DL12で示している。なお、このような駆動信号のシフトを実現するための走査回路9は単一の回路であってもよいし、中間線CLを挟んで個別に設けられた2つの走査回路9によってもよい。
【0046】
矢印DL11,DL12に従って駆動信号が与えられた走査線5と接続されている画素Pixにはそれぞれ画素信号が書き込まれるが、上述のように応答時間が生じる。
図6では、最大応答時間RTを想定した各画素行の画素Pixの応答完了時間のシフト状況を矢印RL11,RL12で示している。
【0047】
発光領域LBは、対応するセグメントの全画素行が駆動信号の供与及び駆動信号の供与からの最大応答時間RTの経過を完了した後に点灯するよう制御される。
図6では、中間線CLから一方(1)の側に向かって進行するセグメント単位での発光領域LBの点灯期間LB111,LB112,LB113,LB114,LB115を示している。また、中間線CLから他方(r)の側に向かって進行するセグメント単位での発光領域LBの点灯期間LB121,LB122,LB123,LB124,LB125を示している。点灯期間LB111,LB112,LB113,LB114,LB115,LB121,LB122,LB123,LB124,LB125は、少なくとも一部が矢印DL11,DL12の開始時点を起点とする1フレーム期間Fに含まれる。1フレーム期間Fは、1つのフレーム画像の表示に係る期間である。
【0048】
1フレーム期間Fの経過後、次のフレーム画像に対応した画素信号を各画素Pixに書き込むための駆動信号の出力が開始される。
図6では、係る駆動信号の出力対象のシフトを矢印DL21,DL22で示している。
【0049】
セグメント単位でリセット電位の制御が行われる場合、
図6に示すように、各セグメントの発光領域LBの点灯期間後であって、次のフレーム画像に対応した画素信号を各画素Pixに書き込むための駆動信号の出力の開始前にリセット電位を与える一括制御タイミングCP111,CP112,CP113,CP114,CP115,CP121,CP122,CP123,CP124,CP125が設定される。
【0050】
例として、点灯期間LB111で制御される発光領域LBが設けられたセグメントに係る制御を説明する。当該発光領域LBが背面側に設けられた画素Pixの一部又は全部について、判定回路50は、
図5を参照して説明したように、更新前後で階調値が異なる画素Pixの抽出、更新前後のフレーム画像で与えられる階調値が異なる画素Pixの第1応答時間から第2応答時間を差し引いた値の合算、合算された値(合算値)と閾値との比較に基づいたリセット電位の適用に係る判定を行う。リセット電位を与える判定が行われた場合、一括制御タイミングCP111にリセット電位が与えられる。リセット電位が与えられない判定が行われた場合、一括制御タイミングCP111にリセット電位は与えられない。他のセグメントについても、駆動信号が与えられるタイミング、応答完了期間の経過タイミング、点灯期間及び一括制御タイミングが個別である点を除いて、点灯期間LB111で制御される発光領域LBが設けられたセグメントと同様である。
【0051】
なお、リセット電位の適用可否に係る条件式は、上述の式(1)に限られるものでない。例えば、一部又は全部のセグメントで用いられる条件式を他のセグメントと異ならせてもよい。以下の式(3)、式(4)、式(5)、式(6)、式(7)は、それぞれ異なるセグメントで用いられる条件式を例示したものである。式(3)のN1、式(4)のN2、式(5)のN3、式(6)のN4、式(7)のN5はそれぞれ、自然数である。式(3)のTth1、式(4)のTth2、式(5)のTth3、式(6)のTth4、式(7)のTth5は各々の条件式における閾値であり、少なくとも1つは他の閾値と異なる。
【0052】
【0053】
なお、フレームレート、すなわち、1秒間に表示されるフレーム画像の数(フレーム画像の更新回数)は例えば60[Hz]であるが、これに限られるものでなく、任意である。
【0054】
以上、実施形態1によれば、液晶表示装置100は、表示パネル30と、判定回路50とを備える。表示パネル30は、複数の画素Pixが配置された表示部7を有する。判定回路50は、更新前のフレーム画像と更新後のフレーム画像とに基づいて、表示パネル30においてフレーム画像が更新される前に複数の画素Pixの一部又は全部に対して所定階調値の画素信号を一括で書き込むかの判定を行う。
【0055】
これによって、更新前のフレーム画像と更新後のフレーム画像とに基づいて、複数の画素Pixの一部又は全部に対して所定階調値の画素信号を一括で書き込んだ場合に却って応答時間が悪化する場合に所定階調値の画素信号を一括で書き込まない判定を行うことで、応答時間の悪化を抑制できる。
【0056】
また、判定回路50が、更新前のフレーム画像と更新後のフレーム画像とで階調値が異なる画素Pixに対する更新後のフレーム画像に基づいた画素信号の応答時間に基づいて所定階調値の画素信号を一括で書き込むかの判定を行うことで、フレーム画像の更新前後で階調値を変更するための駆動が生じる画素Pixの応答時間が所定階調値の画素信号を一括で書き込む処理によってどのような影響を受けるかに基づいて判定を行える。従って、より確実に応答時間の悪化を抑制できる。
【0057】
また、液晶表示装置100は、更新前の階調値と更新後の階調値との組み合わせに基づいて応答時間を特定するためのデータを記憶する記憶部(例えば、記憶部70)を備え、判定回路50が、当該データを参照して応答時間を特定することで、当該データに基づいてより定量的に応答時間の悪化を抑制できる。
【0058】
また、判定回路50が、フレーム画像が更新される前に所定階調値の画素信号を一括で書き込んだ場合の応答時間(第1応答時間、例えば、Tn´)から所定階調値の画素信号を一括で書き込まなかった場合の応答時間(第2応答時間、例えば、Tn)を差し引いた値と所定の閾値(例えば、Tth)とに基づいて所定階調値の画素信号を一括で書き込むかの判定を行うことで、所定階調値の画素信号を一括で書き込む処理がフレーム画像の更新前後で階調値を変更するための駆動が生じる画素Pixの応答時間に対して与える影響を閾値に基づいて判定可能になる。従って、より定量的に応答時間の悪化を抑制できる。
【0059】
また、表示部7は、複数の部分領域を含み、判定回路50が部分領域毎に所定階調値の画素信号を一括で書き込むかの判定を行うことで、部分領域単位で応答時間の悪化を抑制するための制御を適用できる。この場合、複数の部分領域は、例えばそれぞれ異なる発光領域LBが背面側に設けられた領域であり、各々が1以上の走査線5と複数の画素Pixを含む領域である。
【0060】
また、所定の閾値が部分領域毎に設定されることで、部分領域毎により適したより詳細な条件下での判定に基づいて、部分領域単位で応答時間の悪化を抑制するための制御を適用できる。
【0061】
また、複数の画素Pixが行列状に配置され、行方向(X方向)に並ぶ画素で共有されて画素Pixを駆動する駆動信号を伝送する判定回路50が列方向(Y方向)に複数並び、フレーム画像の更新によって生じる複数の画素Pixに対する画素信号の書き込みにおける書き込み順が走査線5の並び順に基づいて決定され、所定階調値の画素信号を一括で書き込むかの判定が、表示部7のうち、書き込み順がより後である5%から50%の範囲内で行われることで、フレーム画像の更新に際して応答時間の要求がよりシビアになりやすい書き込み順がより後である表示部7内の範囲について応答時間が悪化することによる影響の発生を抑制できる。
【0062】
また、所定階調値の画素信号を一括で書き込むかの判定が、表示部7のうち、書き込み順がより後である10%から20%の範囲内で行われることで、フレーム画像の更新に際して応答時間の要求がよりシビアになりやすい書き込み順がより後である表示部7内の範囲について応答時間が悪化することによる影響の発生を抑制できる。なお、一括で書き込まれる階調値は固定でも可変でもよく、固定の場合の階調値は予め設定されており、可変の場合は後述する変形例に基づいて階調値が決定される。
【0063】
(実施形態2)
次に、実施形態2について説明する。実施形態2に係る説明のうち、実施形態1と同様の構成に関する説明については同じ符号を付して説明を省略することがある。
【0064】
実施形態1の判定回路50は、第1応答時間から第2応答時間を差し引いた値と所定の閾値に基づいて、リセット電位を与える制御を行うか決定していたが、実施形態2の判定回路50は、前記更新前のフレーム画像と前記更新後のフレーム画像とで階調値が異なると判定された画素に基づいてリセット電位を与えるか決定する。
【0065】
具体的には、実施形態2の判定回路50は、更新前のフレーム画像の特徴データと、更新後のフレーム画像の特徴データとを計算する。更新前のフレーム画像の特徴データと更新後のフレーム画像の特徴データが一致している場合、判定回路50は、更新前後のフレーム画像の描画内容に変更がない静止画の描画が連続しているものと判定する。この場合、更新前後のフレーム画像の間にリセット電位が与えられない。一方、更新前のフレーム画像の特徴データと更新後のフレーム画像の特徴データが一致していない場合、判定回路50は、更新前後のフレーム画像の描画内容に変更がある動画の描画が行われているものと判定する。この場合、更新前後のフレーム画像の間にリセット電位が与えられる。
【0066】
特徴データは、例えば更新前後のフレーム画像の一部又は全部の画素Pix(評価画素)に対する画素信号を含むデータのチェックサムでも良いし、係る画素信号を含むデータのCRC(Cyclic Redundancy Check)の値であっても良い。なお、更新前後のフレーム画像で同じ画素Pixに対して出力される更新前後の画素信号の特徴データ同士の一致判定が行われる。また、評価画素が更新前後のフレーム画像の一部の画素Pixである場合、フレーム画像に含まれる全画素信号のうちどの画素信号を抽出するかは任意である。例えば、
図5を参照して説明した例のように、走査回路9による駆動信号の出力の順序が最後になる走査線5と接続されている画素行を含む所定行の画素行に含まれる画素Pixであってもよいし、水平方向(X方向)へ数画素毎に1つ抽出された画素Pixのように間引いて抽出された画素Pixであってもよい。
【0067】
なお、実施形態2でも、
図6を参照して説明したセグメント単位でのリセット電位の制御を適用可能である。この場合、判定回路50は、式(3)から式(7)を用いた判定に代えて、各セグメントに対応する表示部7内の画素領域毎に更新前のフレーム画像の特徴データと、更新後のフレーム画像の特徴データとを計算する。更新前のフレーム画像の特徴データと更新後のフレーム画像の特徴データが一致しているセグメントには、更新前後のフレーム画像の間にリセット電位が与えられない。一方、更新前のフレーム画像の特徴データと更新後のフレーム画像の特徴データが一致していないセグメントには、更新前後のフレーム画像の間にリセット電位が与えられる。
【0068】
実施形態2でセグメント単位でのリセット電位の制御を行う場合、上述の特徴データに基づいた判定に代えて、画素信号(又は画素信号の特徴データ)が一致しない画素Pixの数と閾値とに基づいてリセット電位を与えるか(動画と判定するか)を決定してもよい。当該閾値は、実施形態1における「所定の閾値」とは異なる閾値である。例えば、画素信号(又は画素信号の特徴データ)が一致しない画素Pixがq以上ある場合にリセット電位を与えるよう、セグメント毎に決定してもよい。qは、自然数である。また、全セグメントで共通の閾値(q)の値に代えて、一部又は全部のセグメントにおける閾値を他のセグメントと異なる閾値とするようにしてもよい。また、単純に画素信号(又は画素信号の特徴データ)が一致しない画素Pixの数を計上するだけでなく、計上された当該値に重み付け評価値を乗じた値と閾値とに基づいて決定を行うようにしてもよい。係る重み付け評価値は、例えば、上述の色空間座標間の距離に応じた重み付け評価値と同様の値を利用可能である。
【0069】
また、発光領域LBに対応したセグメント単位でのリセット電位の制御に限らず、専用に設定された表示部7内の部分領域単位でのリセット電位の制御を適用してもよい。
【0070】
一般的に、動画像ではフレーム画像の中央付近に対してユーザの注意が向きやすい傾向がある。従って、係る中央付近の部分領域における応答時間の大小が動画像のコマ送りの視認の容易性に与える影響は、他の部分領域に比して相対的に大きい。一方、係る中央付近から離れた部分領域になるほど、ユーザの注意が向きにくい傾向がある。従って、係る部分領域における応答時間の大小が動画像のコマ送りの視認の容易性に与える影響は、相対的に小さい。
【0071】
図7は、動画像の変化に関するユーザの認識の度合いに基づいて設定された表示部7内の部分領域の例を示す図である。画素信号(又は画素信号の特徴データ)が一致しない画素Pixの数と閾値とに基づいてリセット電位の制御を行う場合、中央部分領域CAにおける閾値を他の部分領域(狭間領域MA及び端部領域SA)の閾値よりも小さい値とすることで、比較的小さな変化が生じた場合でも動画像の描画に対応したリセット電位の適用を行いやすくなる。この場合、端部領域SAにおける閾値を他の部分領域(狭間領域MA及び中央部分領域CA)の閾値よりも大きい値になり、中央部分領域CAと端部領域SAとの狭間領域MAの閾値は、他の領域の閾値の中間的な値になる。
【0072】
以上、特筆した事項を除いて、実施形態2は、実施形態1と同様であってよい。
【0073】
実施形態2によれば、判定回路50は、更新前のフレーム画像と更新後のフレーム画像とで階調値が異なると判定された画素Pixに基づいて所定階調値の画素信号を一括で書き込むかの判定を行う。これによって、時間的に連続するフレーム画像が静止画像であるか動画像であるかに基づいた判定を行うことができ、静止画像である場合に却って応答時間が悪化することを抑制できる。
【0074】
(変形例)
次に、実施形態の変形例について説明する。変形例では、リセット電位は、更新後のフレーム画像に含まれる画素信号が示す階調値に基づいて決定される。
【0075】
変形例の判定回路50は、更新後のフレーム画像に含まれる一部又は全部の画素信号が示す階調値が各画素Pixに書き込まれる前に、当該画素信号が書き込まれる各画素Pixの階調値がどの値になるよう設定されていれば応答時間が最短になるかを画素Pix毎に特定する。係る特定は、例えば
図4に示すようなデータの参照によって行われる。判定回路50は、画素Pix毎に特定された階調値(更新後の階調値を書き込む際に応答時間が最短になる階調値)に対応する電位を画素Pix毎に特定する。判定回路50は、特定された電位の分布に基づいてリセット電位を決定する。
【0076】
図8は、更新後の階調値を書き込む際に応答時間が最短になる階調値に対応する電位の分布と、リセット電位として採用された電位VMとの関係の例を示す図である。判定回路50は、例えば、特定された更新後の階調値を書き込む際に応答時間が最短になる階調値に対応する電位のうち最頻の電位VMをリセット電位として採用する。リセット電位はこれに限られるものでなく、例えば特定された更新後の階調値を書き込む際に応答時間が最短になる階調値に対応する電位の平均とするようにしてもよい。
【0077】
採用するリセット電位の決定に際して、重み付けを行ってもよい。例えば、
図7を参照して説明した一括制御タイミングCPに含まれる画素信号に対応する電位の優先度を他の部分領域に含まれる画素信号に対応する電位よりも大きくするようにしてもよい。また、上述の色空間に基づいた重み付け評価値と同様の考え方に基づいて更新前後で色の変化の度合いがより大きい画素Pixに対する更新後の画素信号に対応する電位の優先度を他の電位よりも大きくするようにしてもよい。
【0078】
変形例における一部の画素信号の取り扱いは、実施形態1と同様であってもよいし、専用のものであってもよい。すなわち、係る一部の画素信号は、
図5を参照して説明した例のように、走査回路9による駆動信号の出力の順序が最後になる走査線5と接続されている画素行を含む所定行の画素行に含まれる画素Pixに対する画素信号であってもよいし、全ての画素信号から一部を間引きした画素信号であってもよい。
【0079】
変形例によれば、判定回路50は、更新後のフレーム画像に含まれる画素信号が示す階調値に基づいて所定階調値に対応する電位を決定する。これによって、より応答時間が短縮されやすい電位を所定階調値に対応する電位として採用可能になる。従って、応答時間の悪化を抑制できる。
【0080】
変形例は、実施形態1にも実施形態2にも適用可能である。また、実施形態1,2及び変形例に限らず、発明の具体的な構成及び制御内容は、特許請求の範囲に記載された特徴を逸脱しない範囲内で適宜変更可能である。
【0081】
例えば、光源部20は、複数の発光領域LBを有する構成に限られず、表示パネル30を全面一括で照明する構成であってもよい。その場合、セグメント単位での発光領域LBの制御とセグメント単位でのリセット電位の制御との組み合わせは行われなれず、表示部7全体でリセット電位の制御が行われる。
【0082】
また、光源部20は、所謂サイドライトであってもよい。その場合、表示パネル30は、所謂反射型の液晶表示パネルとして機能する構成を有する。
【0083】
また、本実施形態において述べた態様によりもたらされる他の作用効果について本明細書記載から明らかなもの、又は当業者において適宜想到し得るものについては、当然に本発明によりもたらされるものと解される。
【符号の説明】
【0084】
5 走査線
20 光源部
30 表示パネル
50 判定回路
70 記憶部
100 液晶表示装置
Pix 画素