(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-12
(45)【発行日】2023-07-21
(54)【発明の名称】気泡分離器、および気泡分離器を備える自動車の流体回路
(51)【国際特許分類】
B01D 19/00 20060101AFI20230713BHJP
F01M 11/00 20060101ALI20230713BHJP
F25B 43/00 20060101ALI20230713BHJP
F15B 21/044 20190101ALI20230713BHJP
【FI】
B01D19/00 102
F01M11/00 U
F25B43/00
F15B21/044
(21)【出願番号】P 2019235226
(22)【出願日】2019-12-25
【審査請求日】2022-07-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000151209
【氏名又は名称】マーレジャパン株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】506292974
【氏名又は名称】マーレ インターナショナル ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】MAHLE International GmbH
【住所又は居所原語表記】Pragstrasse 26-46, D-70376 Stuttgart, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】小林 裕貴
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 淑和
(72)【発明者】
【氏名】萩原 剛士
【審査官】瀧 恭子
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-028980(JP,A)
【文献】特開2009-257296(JP,A)
【文献】特開2017-028798(JP,A)
【文献】特開2012-050929(JP,A)
【文献】特開2013-212453(JP,A)
【文献】特開2021-042754(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0128219(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2018/0361290(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2008/0098893(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 19/00-19/04
F01M 11/00-13/06
H02K 9/00-9/28
F25B 43/00-43/04
F15B 21/00-21/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車の流体回路に用いられ、液体中の気泡を分離する気泡分離器であって、
略水平方向に延びる、円柱形の内部空間を有する旋回流形成部と、
前記旋回流形成部の一端に配置され、該旋回流形成部の内周面の接線方向に液体を流入させて該内周面上に旋回流を形成するように開口している、流入口と、
前記旋回流形成部の他端に配置され、前記内周面から接線方向に液体を流出させるように開口している、流出口と、
前記旋回流形成部において液体から分離された気体を該旋回流形成部の外に排出する気体排出口と、
前記旋回流形成部の壁面に設けられた、1つまたは複数の液体滴下ノズルと、
前記旋回流形成部の内部に設けられた、該旋回流形成部と同軸に延びる管状の気柱促進部と、
を備え
、
前記気柱促進部の先端と、該先端に最も近い前記液体滴下ノズルの中心軸までの距離が、前記流入口の内径の1倍以上であることを特徴とする、気泡分離器。
【請求項2】
前記流入口の内径をdとしたとき、前記旋回流形成部の内径Dが1.5d~3dであることを特徴とする、請求項
1に記載の気泡分離器。
【請求項3】
前記気体排出口が、前記旋回流形成部の両端にそれぞれ設けられていることを特徴とする、請求項1
または2に記載の気泡分離器。
【請求項4】
前記液体が、冷却器または冷却システムの冷媒である、請求項1から
3までのいずれか1項に記載の気泡分離器。
【請求項5】
自動車用の粘性流体回路であって、
オイルパンと、
前記オイルパンからオイルを送出するポンプと、
前記ポンプから送出されたオイルから気泡を分離する
ための、請求項1から4までのいずれか1項に記載の気泡分離器と、
モータと、
を備え
、
前
記1つまたは複数の液体滴下ノズルから、
前記気泡分離器によって気泡が分離された液体を前記モータに向けて滴下するように構成されていることを特徴とする、自動車用の粘性流体回路。
【請求項6】
前記オイルは、潤滑油またはオートマチックトランスミッションフルードである、請求項
5に記載の自動車用の粘性流体回路。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体中に含まれる気泡を遠心力によって分離する気泡分離器に関し、また、この気泡分離器を備える、自動車の流体回路に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電気自動車や電車に採用されている駆動用モータなどの、出力密度が比較的大きいモータでは、変速ギアまたはディファレンシャルギアにおける潤滑油や、トランスミッションのATFなどを使用して、モータシャフトやコイルエンド等を冷却するための流体回路からなるモータ冷却システムが採用されている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のような流体回路からなるモータ冷却システムでは、ギアによるオイルの掻き揚げや、モータシャフトやコイルエンドに対するオイルの噴射等に起因して、オイル中に多数の気泡が発生してしまう。オイル中の気泡の量が多くなるほど、ポンプによって冷却対象のモータに圧送されるオイルの実流量が低下するために、モータの冷却効率が低下するという問題が生じる。さらに、気泡が潰れることによる騒音が発生したり、ATFを冷却油として使用する場合には、トランスミッションでは油圧応答性の悪化に伴い変速効率が低下したりするという問題も生じる。
【0005】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであって、液体中に含まれる気泡を効率良く除去する気泡分離器、並びに、そのような気泡分離器を用いることで冷却効率を高めた自動車の流体回路を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明の一実施形態によれば、自動車の流体回路に用いられ、液体中の気泡を分離する気泡分離器であって、略水平方向に延びる、円柱形の内部空間を有する旋回流形成部と、旋回流形成部の一端に配置され、旋回流形成部の内周面の接線方向に液体を流入させて内周面上に旋回流を形成するように開口している、流入口と、旋回流形成部他端に配置され、内周面から接線方向に液体を流出させるように開口している、流出口と、旋回流形成部において液体から分離された気体を旋回流形成部の外に排出する気体排出口と、旋回流形成部の壁面に設けられた、1つまたは複数の液体滴下ノズルと、を備える気泡分離器が提供される。
【0007】
これによると、旋回流形成部内で液体が旋回する間に、遠心力によって液体中に含まれる気泡が分離され、分離された気体は、旋回流形成部に設けられた気体排出口から排出されるので、液体からの脱気を高い効率で行うことができる。そして、脱気された液体を滴下ノズルから滴下することによって、冷却対象を効率良く冷却することができる。
【0008】
旋回流形成部の内部に、該旋回流形成部と同軸に延びる管状の気柱促進部をさらに備えていてもよい。これによると、旋回流形成部内で、液体から分離された気体から成る気柱の形成が促進されるので、一度液体から分離された気体が再び液体に巻き込まれることが少なくなる。よって、脱気効率を一層高めることができる。
【0009】
気柱促進部の先端と、この先端に最も近い液体滴下ノズルの中心軸までの距離が、流入口の内径の1倍以上であると好適である。こうすることで、十分に脱気された液体を滴下ノズルから滴下することができる。
【0010】
流入口の内径をdとしたとき、旋回流形成部の内径Dが1.5d~3dであってもよい。こうすると、旋回流形成部内に、液体から分離された気体から成る気柱が存在する空間が十分に確保されることで、高い脱気効率を達成することができる。
【0011】
気体排出口が、旋回流形成部の両端にそれぞれ設けられていてもよい。これによると、分離された気体を効率良く旋回流形成部から排出することができる。
【0012】
本発明の別の実施形態によると、自動車用の粘性流体回路であって、オイルパンと、オイルパンからオイルを送出するポンプと、ポンプから送出されたオイルから気泡を分離する気泡分離器と、モータと、を備え、気泡分離器は略水平方向に延びるように配置され、ポンプの吐出圧力によりその内部に旋回流を生じるように構成されており、気泡分離器に設けられた1つまたは複数の液体滴下ノズルから、該気泡分離器によって気泡が分離された液体をモータに向けて滴下するように構成されている、自動車用の粘性流体回路が提供される。
【0013】
これによると、気泡分離器によって液体中に含まれる気泡が効率良く除去されるので、滴下ノズルから滴下される液体によってモータを効率良く冷却することができる。また、粘性流体回路を例えばトランスミッションに組み込んだときに、気泡に起因する騒音の低減や、油圧応答性の向上を見込むことができる。
【0014】
オイルは、自動車用の潤滑油またはオートマチックトランスミッションフルードであってもよく、冷却システムまたは冷却器の冷媒であってもよい。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、旋回流形成部内で液体が旋回する間に、遠心力によって液体中に含まれる気体が分離され、脱気された液体を滴下ノズルから滴下することによって、冷却対象を効率良く冷却することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図4】
図2における気泡分離器のA-A線断面図であって、気泡分離器における液体の流れを説明する図である。
【
図5】気泡分離器内での液体と気体の分離状態を示すコンター図である。
【
図6】気柱促進器の有無による脱気効率の違いを表すグラフである。
【
図7】旋回流形成部の内径と脱気効率の関係を表すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明を実施するための一形態について、図面を参照して説明する。
【0018】
図1は、本発明の一実施形態に係る気泡分離器を備える流体回路からなる、モータ冷却システム10の概略回路図である。このモータ冷却システム10は、例えばモータを内蔵する遊星歯車式トランスミッションのケーシング内に組み込まれることが想定されている。図中の実線34、40、46は、例えばATF(オートマチックトランスミッションフルード)であるオイルの流れを表しているが、この流れは概念的なものであり、パイプ等の中を流れるものに限られない。
【0019】
例えば遊星歯車式トランスミッションでは、リングギアなどの回転するギアがオイルを掻き揚げることによって、オイル内に相当量の気泡が混入してしまう。また、冷却のためにオイルをモータに噴射することによっても、オイル内に気泡が混入する。本実施形態に係る気泡分離器は、オイルから気泡を効率的に分離するために設けられている。
【0020】
図1において、オイルパン12は、図示しないケーシングの底部に配置されており、オイル16を収集、蓄積している。ポンプ18は、オイルパン12内のオイル16を、オイルストレーナ14を介して汲み上げ、経路34を介して気泡分離器20に圧送する。経路34には熱交換器42が配置されており、オイルを冷却する。気泡分離器20は、オイルと気体とを分離し、経路40を介してオイルを排出するとともに、経路36、38を介して分離した気体を排出する。気泡分離器20については、
図2において詳述する。
【0021】
気泡分離器20から排出されたオイルは、その後、モータ44の冷却対称要素、例えばモータシャフトに対して噴射またはコイルへ滴下され、これを冷却する。噴射または滴下されたオイルは、経路46を介してオイルパン12に回収される。
【0022】
図2は、気泡分離器20の側面図であり、
図3は、気泡分離器20をその中心軸を通る平面で切断した断面図である。気泡分離器20は、水平方向に延びる、円筒形の旋回流形成部22を有している。旋回流形成部22の一端には、鉛直方向に延びる管状の流入口24が設けられている。流入口24は、ポンプ18から圧送されたオイルを受け入れ、旋回流形成部22内へと送出する役割を有している。流入口24は、旋回流形成部22の内周面の接線方向にオイルを流入させるような位置で、つまり旋回流形成部22の中心軸に対してオフセットした位置で、内周面に開口している。
【0023】
流入口24から流入したオイルは、その速度エネルギーによって、旋回流形成部22の内周面上に旋回流を形成する。この旋回流は、例えば10G以上の遠心力を有しており、
図3中に示すように、螺旋状に旋回しながら旋回流形成部22の他端へと流れる。この旋回中に、オイルと気泡とが受ける遠心力の差によって、オイルが外周側へ、気泡が内周側へと移動するので、オイルと気泡とが分離される。
【0024】
旋回流形成部22の他端には、鉛直方向に延びる管状の流出口26が設けられている。流出口26は、旋回流形成部22内を螺旋状に流れてきたオイルが、内周面の接線方向に流出するような位置で、つまり旋回流形成部22の中心軸に対してオフセットした位置で、内周面に開口している。
【0025】
図4は、
図2中のA-A線に沿った断面図である。
図4に示すように、流入口24によって旋回流形成部22の内周面の接線方向にオイルを流入させ、流出口26によって旋回流形成部22の内周面の接線方向でオイルを流出させることによって、ポンプ18によって圧送されたオイルの運動エネルギーの損失を最小限にしている。
【0026】
オイルから分離された気体は、旋回流形成部22の中心軸付近に集まる。旋回流形成部22の両端には、気体排出口30、32がそれぞれ設けられている。旋回流形成部内で分離された気体は、旋回流形成部22の内部と外部との圧力差によって、気体排出口30、32から排出される。
【0027】
このとき、分離された気体は、旋回流形成部22の中心に集まって気柱を形成する。しかし、形成されたこの気柱の右端が、気体排出口32ではなく、旋回流形成部22の壁面に開口する流出口26につながってしまうと、流出口26付近において気体がオイルに再び巻き込まれてしまうことになる。
【0028】
そのため、旋回流形成部22の内部に、旋回流形成部22と同軸に延びる管状の気柱促進部28が設けられている。この気柱促進部28は、気体排出口32と一体的に形成されていてもよく、この場合、気柱促進部28内の通路29は、気体排出口32を貫通して延びている。
図2中のBで示す区間では、旋回流形成部22と気柱促進部28との間に環状の空間が形成されており、旋回流はこの空間内で内壁に沿って旋回する。
【0029】
このような気柱促進部28を設けると、旋回流形成部22内に形成された気柱の端が、気柱促進部28の先端28aへと導かれるので、気柱の端が流出口26につながるのを防止することができる。したがって、流出口26の付近において、オイルに再び気体が混入することが抑制され、ひいては気泡の分離効率を高めることができる。
【0030】
気泡が分離されたオイルは、流出口26から排出されて、モータの冷却に使用されるが、これに加えて、旋回流形成部22の壁面には、下向きの滴下ノズル50a、50b、50cが設けられている。脱気されたオイルは、滴下ノズル50a、50b、50cからモータ44の冷却対象、例えばコイルエンドに滴下される。滴下ノズル50a、50b、50cは、気柱促進部28と重なる部分、つまり
図2中のBで示す区間に設けられている。滴下ノズルの数や内径は、冷却対象の大きさに応じて適宜選択可能である。
【0031】
気柱促進部28の先端28aと、この先端28aに最も近い液体滴下ノズル50aの中心軸までの距離Lが、流入口の内径dの1倍以上であると好適である。旋回流がこの距離Lを通過する間に、気泡が十分にオイルから分離された状態になっているので、滴下ノズルからのオイルは、冷却効率が高いものとなる。
【0032】
なお、
図1~3では、気泡分離器20が水平方向に延びるように配置されているが、気泡分離器20は、液体滴下ノズル50a~50cから重力によってオイルを滴下できる限り、水平面に対して傾斜して配置されていてもよい。また、液体滴下ノズル50a~50cの向きは、鉛直下向きでなくてもよく、鉛直線に対して角度を有していてもよい。こうすると、冷却対象のより広い面積にオイルを滴下することができる。流入口24および流出口26の向きについても同様に、鉛直下向きでなくてもよい。
【0033】
図5は、油温が80℃であるときの気柱促進部における気泡の分離度合いを、CAE(Computer Aided Engineering)にて求めた気液コンター図である。
図5の右端のバーは、色の濃淡によって液体中の空気含有率を示しており、例えば数値0.10は、空気含有率が10%であることを示している。
【0034】
気柱促進部が存在することによって、旋回流形成部の中央に明瞭な気柱が形成されており、分離された空気が気体排出口を通して排出されていることが分かる。また、滴下ノズルにおいては、空気含有率が10%以下、つまり気泡が90%以上分離されていることが分かる。このため、滴下ノズルから滴下されるオイルは、高い冷却効果を有している。
【0035】
図6は、気柱促進部の有無による脱気効率、すなわち気泡を含む液体から分離できた空気の割合をCAEにて求めたグラフである。これによると、気柱促進部を設けることで、脱気効率が20%程度増大することが分かる。
【0036】
脱気効率は、その他の条件によっても変化する。
図7は、旋回流形成部22の内径Dと流入口24の内径dとの比率D/dと、脱気効率との関係を、CAEにて求めたグラフである。
図7から分かるように、旋回流形成部の内径Dを大きくしていくと、脱気効率は低下している。これは、旋回流形成部の内径Dを大きくすると、形成部の断面積の増加により、内周面上を流れる旋回流の流速が低下してオイルに作用する遠心力が小さくなるので、オイルから分離される空気の量が低下するためである。また、内径Dを小さくしすぎると、圧力損失が増大してしまう。
【0037】
以上の考察から、本願発明者らは、旋回流形成部の内径がD=1.5d~3dであると、脱気効率が最大になることを見い出した。
【0038】
さらに、オイルから分離される気泡は、一定温度下では、PV=nRTで表されるボイル・シャルルの法則にしたがって、低圧では気泡径が大きくなり、高圧では気泡径が小さくなる。気泡径と浮力とは比例関係にあり、気泡径が大きい方が遠心力による影響が大きいため、オイルからの分離が容易である。したがって、低圧環境下でオイルと気泡の遠心分離を行うことが好ましい。
【0039】
以上説明したように、本実施形態によれば、ポンプによって圧送されるオイル内に含まれる気泡を、効率的に除去することが可能である。気泡の除去により、オイルが滴下または噴射されるモータの冷却効率を向上させることができる。
【0040】
また、モータ冷却システムを例えばトランスミッションに組み込んだ場合、気泡が潰れるときに発生する騒音の抑制や油圧応答性の向上を見込むことができる。
【0041】
本実施形態に係る気泡分離器は、非常にコンパクトに形成することができるため、流体回路からなる既存のモータ冷却システムに容易に組み込むことが可能である。また、気泡分離器は、既存のモータ冷却システムに当然備えられているポンプによって圧送されるオイルを利用して気液分離を行うので、動作のための別の要素を必要としない。したがって、システムの設計を大きく変更する必要なしに、例えばトランスミッションのケーシング内に収めることが可能である。
【0042】
また、本実施形態に係る気泡分離器は、簡単に作成することが可能である。例えば、旋回流形成部として太径のパイプを利用し、流入口、流出口、気柱促進器、気体排出口として細径のパイプを適宜これに接合した後、旋回流形成部の壁面に滴下ノズルの孔を穿孔するだけで、気泡分離器を作成することができる。
【0043】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明はこれらの実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、様々な変形、改良が可能である。
【0044】
図1~3では、旋回流形成部22は、内径Dが均一である円筒形として表されているが、ポンプ18から圧送されてきたオイルをその内周面に沿って旋回させることが可能であれば、他の形状であってもよい。例えば、一端から他端に向けて内径が減少する漏斗形であってもよい。
【0045】
上記では、トランスミッションに内蔵された流体回路からなるモータ冷却システムにおける気泡分離器の使用について述べたが、本発明に係る気泡分離器は、液体中に含まれている気泡を分離する必要性がある任意の装置またはシステムに組み込むことが可能である。例えば、エンジンオイルに含まれている気泡の分離にも応用可能である。気泡分離器が装置に組み込まれるとき、旋回流形成部は、円柱形の内部空間を有している限り、独立した部品である必要はない。例えば、装置の筐体に予め形成された円柱形の内部空間を利用してもよい。
【0046】
気液分離の対象となる液体は、ATFや潤滑油のような粘性液体に限られない。例えば、液体は、冷却器または冷却システムの冷媒であってもよい。同様に、分離される気体は空気に限られない。
【符号の説明】
【0047】
10 モータ冷却システム
12 オイルパン
14 オイルストレーナ
16 オイル
18 ポンプ
20 気泡分離器
22 旋回流形成部
24 流入口
26 流出口
28 気柱促進部
30 気体排出口
32 気体排出口
42 熱交換器
44 モータ
50a、50b、50c 滴下ノズル