(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-12
(45)【発行日】2023-07-21
(54)【発明の名称】負荷時タップ切換器及び電圧調整装置
(51)【国際特許分類】
H02J 3/12 20060101AFI20230713BHJP
H01F 29/04 20060101ALI20230713BHJP
【FI】
H02J3/12
H01F29/04 501D
H01F29/04 502F
H01F29/04 502L
(21)【出願番号】P 2020077606
(22)【出願日】2020-04-24
【審査請求日】2022-10-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000000262
【氏名又は名称】株式会社ダイヘン
(74)【代理人】
【識別番号】100114557
【氏名又は名称】河野 英仁
(74)【代理人】
【識別番号】100078868
【氏名又は名称】河野 登夫
(72)【発明者】
【氏名】前田 博宣
【審査官】木村 励
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-117084(JP,A)
【文献】特開2018-157710(JP,A)
【文献】特開2018-124625(JP,A)
【文献】特開平7-264777(JP,A)
【文献】特開昭49-30841(JP,A)
【文献】特開2018-57135(JP,A)
【文献】特開2000-66740(JP,A)
【文献】特開2020-135769(JP,A)
【文献】特表2015-511034(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 3/12
H02J 3/00
H01F 29/04
H01F 29/02
G05F 1/24
G05F 1/20
G05F 1/10
H02M 5/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
タップ付変圧器の1又は複数の巻線が有するタップを切り換えて選択するための切換スイッチを備え、前記巻線について選択されたタップを結線して単相又は3相の交流を出力する負荷時タップ切換器であって、
前記交流の線間に接続された半導体スイッチと、
常閉接点を有するリレーを含み、該常閉接点を介して供給される前記半導体スイッチの両端電圧に基づいて前記半導体スイッチを点弧させる点弧回路と、
前記切換スイッチをオン/オフして前記タップを切り換えると共に、前記リレーを制御して前記常閉接点を開成及び閉成させる制御部と、
前記交流の線電流を検出する電流検出部と
を備え、
前記制御部は、前記電流検出部の検出結果が所定の閾値より大きい場合、前記切換スイッチをオフすると共に、前記常閉接点を閉成させる負荷時タップ切換器。
【請求項2】
前記交流の線間に接続された限流抵抗器及び矯絡用スイッチの直列回路を更に備え、
前記制御部は、
前記矯絡用スイッチをオン/オフするようにしてあり、
前記常閉接点を閉成させる場合、前記矯絡用スイッチをオン又はオフの何れかにする
請求項1に記載の負荷時タップ切換器。
【請求項3】
前記点弧回路は、供給された電圧を分圧して前記半導体スイッチのゲートに印加する分圧回路を含む請求項1又は請求項2に記載の負荷時タップ切換器。
【請求項4】
前記半導体スイッチは、トライアック又は逆並列に接続されたサイリスタを含む請求項1から請求項3の何れか1項に記載の負荷時タップ切換器。
【請求項5】
前記タップ付変圧器は、1つの巻線を有する単巻変圧器である請求項1に記載の負荷時タップ切換器。
【請求項6】
単相又は3相の交流を電源から負荷に配電する配電線に二次巻線が直列に接続される直列変圧器と、
請求項1から請求項5の何れか1項に記載の負荷時タップ切換器と、
前記配電線に一次巻線が並列に接続された前記タップ付変圧器と
を備え、
前記直列変圧器は、前記負荷時タップ切換器が切り換えた前記タップ付変圧器のタップに一次巻線が接続される電圧調整装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、変圧器のタップを切換スイッチにより切り換える負荷時タップ切換器及び該負荷時タップ切換器を含む電圧調整装置に関する。
【背景技術】
【0002】
いわゆる間接切換方式による電圧調整装置は、二次巻線が配電線に直列に接続される直列変圧器と、一次巻線が配電線に並列に接続され、二次巻線に複数のタップが設けられた調整変圧器と、該複数のタップを切り換えて直列変圧器の一次巻線に接続するタップ切換器とを備えている。
【0003】
タップ切換器は、直列変圧器の一次巻線に接続するタップを切り換えるための切換スイッチと、タップ切換を行う過程でタップ間に流れる矯絡電流を制限する限流抵抗器等の限流素子と、該限流素子のタップ間への接続及び切り離しを行う矯絡用スイッチとを有する。限流抵抗器及び矯絡用スイッチは直列に接続されている。タップ切換器は、切換スイッチ及び矯絡用スイッチを所定のシーケンスでオンオフすることにより、調整変圧器から直列変圧器の一次巻線に印加する調整電圧の大きさ及び極性を切り換える。
【0004】
限流抵抗器及び矯絡用スイッチの直列回路には、機械接点を有する電磁接触器等の開閉器が並列に接続されている(特許文献1参照)。この開閉器は、切換スイッチが制御不能になった場合及び配電線における短絡事故等の原因によってタップ切換器に大電流が流れた場合に閉路されるようになっている。この場合の機械接点としては、電源喪失の場合に閉路されるようにb接点(常閉接点)が用いられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に開示された開閉器は、形状が比較的大きく、且つ高価である上に、小容量の電圧調整装置に用いるには過剰な遮断容量を有するものであった。
【0007】
本発明は斯かる事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、小規模且つ低コストの構成によって切換スイッチを保護することが可能な負荷時タップ切換器及び電圧調整装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様に係る負荷時タップ切換器は、タップ付変圧器の1又は複数の巻線が有するタップを切り換えて選択するための切換スイッチを備え、前記巻線について選択されたタップを結線して単相又は3相の交流を出力する負荷時タップ切換器であって、前記交流の線間に接続された半導体スイッチと、常閉接点を有するリレーを含み、該常閉接点を介して供給される前記半導体スイッチの両端電圧に基づいて前記半導体スイッチを点弧させる点弧回路と、前記切換スイッチをオン/オフして前記タップを切り換えると共に、前記リレーを制御して前記常閉接点を開成及び閉成させる制御部と、前記交流の線電流を検出する電流検出部とを備え、前記制御部は、前記電流検出部の検出結果が所定の閾値より大きい場合、前記切換スイッチをオフすると共に、前記常閉接点を閉成させる。
【0009】
本態様にあっては、タップ付変圧器の1又は複数の巻線が有するタップを制御部が切換スイッチで切り換えて選択し、選択されたタップが結線されて単相又は3相の交流が出力される。交流出力の線間には半導体スイッチの両端が接続されている。該半導体スイッチの点弧回路には自身に含まれるリレーの常閉接点を介して半導体スイッチの両端の電圧が供給される。交流出力の線電流が所定の閾値より大きい場合、制御部が切換スイッチをオフし、且つリレーの常閉接点を閉成させる。これにより、出力側から切換スイッチに過電流が流れた場合に、リレーの常閉接点が閉成されて点弧回路におけるリレーを除く回路に交流の線間電圧が供給されるため、点弧回路が半導体スイッチを点弧させる。即ち、オフした切換スイッチに流れていた過電流を半導体スイッチがバイパスするため、切換スイッチが過電流から保護される。
【0010】
本発明の一態様に係る負荷時タップ切換器は、前記交流の線間に接続された限流抵抗器及び矯絡用スイッチの直列回路を更に備え、前記制御部は、前記矯絡用スイッチをオン/オフするようにしてあり、前記常閉接点を閉成させる場合、前記矯絡用スイッチをオン又はオフの何れかにする。
【0011】
本態様にあっては、半導体スイッチを点弧させるためにリレーの常閉接点を閉成させる場合、切換スイッチをオフするのに加えて矯絡用スイッチをオン又はオフの何れかにする。矯絡用スイッチをオンした場合は、リレーの応答の遅れに伴って一時的に過電圧が発生することが防止される。矯絡用スイッチをオフした場合は、矯絡用スイッチが過電流から保護されると共に、過電流による過電圧が半導体スイッチの両端及び点弧回路に集中的に印加されて半導体スイッチがより速やかに点弧する。
【0012】
本発明の一態様に係る負荷時タップ切換器は、前記点弧回路は、供給された電圧を分圧して前記半導体スイッチのゲートに印加する分圧回路を含む。
【0013】
本態様にあっては、点弧回路に含まれるリレーの常閉接点を介して供給された電圧が分圧されて半導体スイッチのゲートに印加される。これにより、分圧比を適当に1に近付けた場合は、半導体スイッチの点弧角が0に近づくため、半導体スイッチによる切換スイッチの保護がより確実なものとなる。
【0014】
本発明の一態様に係る負荷時タップ切換器は、前記半導体スイッチは、トライアック又は逆並列に接続されたサイリスタを含む。
【0015】
本態様にあっては、双方向に導通するトライアック、又は単一方向に導通するサイリスタを逆並列に接続したサイリスタの組合せが半導体スイッチに含まれている。これにより、汎用的なトライアック又はサイリスタで構成された半導体スイッチが、双方向に導通可能となり、切換スイッチの保護に好適に用いられる。
【0016】
本発明の一態様に係る負荷時タップ切換器は、前記タップ付変圧器は、1つの巻線を有する単巻変圧器である。
【0017】
本態様にあっては、タップ付変圧器が単巻変圧器であるため、構成が簡略化されるが、タップ切換の制御は複巻変圧器を用いた場合と同様で済む。
【0018】
本発明の一態様に係る負荷時タップ切換器は、単相又は3相の交流を電源から負荷に配電する配電線に二次巻線が直列に接続される直列変圧器と、上述の負荷時タップ切換器と、前記配電線に一次巻線が並列に接続された前記タップ付変圧器とを備え、前記直列変圧器は、前記負荷時タップ切換器が切り換えた前記タップ付変圧器のタップに一次巻線が接続される。
【0019】
本態様にあっては、直列変圧器の二次巻線が配電線に直列接続され、タップ付変圧器の一次巻線が配電線に並列接続される。そして、負荷時タップ切換器が切り換えたタップ付変圧器のタップが直列変圧器の一次巻線に接続される。即ち、タップ付変圧器のタップを切り換えることにより、配電線の電圧が調整される。従って、半導体スイッチによって切換スイッチが保護される負荷時タップ切換器を、電圧調整装置に適用することができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、小規模且つ低コストの構成によって切換スイッチを保護することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】実施形態1に係る負荷時タップ切換器を含む電圧調整装置の構成例を示すブロック図である。
【
図3】タップ位置とオンにする切換スイッチとの関係を示す図表である。
【
図4】実施形態1に係る点弧回路の構成例を示す回路図である。
【
図5】変流器の計測結果に基づいてリレーを制御する制御部の処理手順を示すフローチャートである。
【
図6】実施形態2に係る負荷時タップ切換器を含む電圧調整装置の構成例を示すブロック図である。
【
図7】実施形態2に係る点弧回路の構成例を示す回路図である。
【
図8】変形例1に係る点弧回路の構成例を示す回路図である。
【
図9】実施形態3に係る負荷時タップ切換器を含む電圧調整装置の構成例を示すブロック図である。
【
図10】変形例2に係る負荷時タップ切換器を含む電圧調整装置の構成例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明をその実施形態を示す図面に基づいて詳述する。
(実施形態1)
図1は、実施形態1に係る負荷時タップ切換器3aを含む電圧調整装置100aの構成例を示すブロック図である。電圧調整装置(SVR=Step Voltage Regulator)100aは、紙面左側の電源から供給される単相交流の電圧を調整し、紙面右側の負荷へ、配電線1u,1vを介して単相交流を配電する。
【0023】
電圧調整装置100aは、配電線1u,1vそれぞれに二次巻線112,122が直列に接続される直列変圧器1aと、配電線1u,1vに一次巻線21が並列に接続される調整変圧器2a(タップ付変圧器に相当)とを備える。電圧調整装置100aは、更に、調整変圧器2aの二次巻線22及び直列変圧器1aの一次巻線111,121の間に設けられた負荷時タップ切換器(以下、単にタップ切換器とも言う)3aを備える。タップ切換器3a及び調整変圧器2aが、負荷時タップ切換変圧器200aを構成する。
【0024】
直列変圧器1aは、二次巻線112,122それぞれに一次巻線111,121が対応している。一次巻線111,121は、それぞれ二次巻線112,122に互いに逆位相の電圧が誘起するように並列に接続されている。二次巻線112,122それぞれの上記負荷側の端子に対応する一次巻線111,121の端子をu1,v1とする。また、二次巻線112,122それぞれの上記電源側の端子に対応する一次巻線111,121の端子をu2,v2とする。
【0025】
調整変圧器2aは、一次巻線21が配電線1u,1v間に接続されている。一次巻線21に対応する二次巻線22は、一端及び他端から引き出されたタップt1及びt3と,一端及び他端の間から引き出された中間のタップt2とを有する。二次巻線22は、タップt1~t3の何れか1つがタップ切換器3aを介して直列変圧器1aの一次側の端子u2,v1に接続され、該1つと同一又は異なる他の1つがタップ切換器3aを介して直列変圧器1aの一次側の端子u1,v2に接続される。同一のタップが直列変圧器1aの一次側の各端子に接続されるのは、後述する素通しタップの場合である。
【0026】
調整変圧器2aの一次巻線21に印加される電圧を計測するために、配電線1u,1v間には計測用変圧器PT1の一次巻線が接続されている。計測用変圧器PT1に代えて、例えば抵抗分圧等の手段を用いて配電線1u,1v間の電圧を検出してもよい。
【0027】
タップ切換器3aは、調整変圧器2aの二次巻線22のタップt1~t3を切り換えるための6つの切換スイッチThA,ThB,ThC,Th1,Th2,Th3を有する。タップ切換器の構成は
図1に示すものに限定されず、例えば、直列変圧器1aに印加する電圧の極性を切り換える極性切換用タップ選択スイッチを含む構成であってもよい。
【0028】
タップ切換器3aは、更に、上記各切換スイッチの切り換えを制御する制御部31aと、制御部31aからの駆動信号に基づいて各切換スイッチをオンに駆動する駆動部32aとを有する。制御部31aには、計測用変圧器PT1の二次巻線、及び後述する変流器CT1(電流検出部に相当)の二次巻線が接続されている。制御部31aと計測用変圧器PT1及び変流器CT1との接続、並びに駆動部32aと各切換スイッチとの接続は、図示を省略する。
【0029】
制御部31aは、不図示のCPU(Central Processing Unit )を有し、予めROM(Read Only Memory )に記憶された制御プログラムに従って、電圧の調整を制御する。一時的に発生した情報はRAM(Random Access Memory )に記憶される。制御部31aは、また、経過時間を計測するためのタイマカウンタを有する。
【0030】
二次巻線22のタップt1は、保護用のヒューズ(不図示:以下同様)を介して切換スイッチThA及びTh1の一端に接続され、タップt2は、ヒューズを介して切換スイッチThB及びTh2の一端に接続され、タップt3は、ヒューズを介して切換スイッチThC及びTh3の一端に接続されている。切換スイッチThA,ThB,ThCの他端同士は、接続線3uを介して直列変圧器1aの一次側の端子u1及びv2に接続されている。切換スイッチTh1,Th2,Th3_Uの他端同士は、接続線3vを介して直列変圧器1aの一次側の端子u2及びv1に接続されている。
【0031】
接続線3u及び3v間には、限流抵抗器RS及び矯絡用スイッチThSの直列回路と、トライアックTr1(半導体スイッチに相当)の両端とが接続されている。トライアックTr1の両端には点弧回路Tg1が接続されており、点弧回路Tg1にはトライアックTr1の両端電圧が供給されている。点弧回路Tg1の出力はトライアックTr1のゲートに接続されている。
【0032】
接続線3uにおけるトライアックTr1及び上記直列回路との接続点よりも出力側には、タップ切換器3aが出力する単相交流の線電流を計測するために、変流器CT1の一次巻線が結合している。CT1の一次巻線を接続線3vに結合させて、単相交流の線電流を計測するようにしてもよい。
【0033】
矯絡用スイッチThSは、二次巻線22のタップt1~t3を切り換える過程で、限流抵抗器RSを介してタップ間を矯絡させておくために、タップ間への限流抵抗器RSの接続及び切り離しを行うためのものである。トライアックTr1は、過電流が検出されて各切換スイッチが保護される場合、又はタップ切換器3aの運用が停止される場合に点弧される。この場合、直列変圧器1aの一次側の端子u1,u2間及び端子v1,v2間が矯絡されるため、直列変圧器1aの一次側が開放状態になることが防止される。
【0034】
変流器CT1を上述の位置に設けることにより、切換スイッチ及び矯絡用スイッチThSに流れる電流を計測することができる。トライアックTr1が点弧した場合は、変流器CT1により、直列変圧器1aの一次巻線111,121からトライアックTr1に流れる電流を計測することができる。このため、例えば配電線1u,1vにおける短絡事故発生時に、配電線1u,1vに流れる最大電流を算出することができる。トライアックTr1に流れる電流を検出する必要がない場合は、変流器CT1を設ける位置は上述の位置に限定されず、接続線3uにおけるトライアックTr1との接続点よりも二次巻線22に近い位置であってもよい。
【0035】
次に、各スイッチの構成を、切換スイッチThAを例として説明する。他の切換スイッチ及び矯絡用スイッチThSについても同様である。
図2は、切換スイッチThAの構成例を示す回路図である。切換スイッチThAは、アノードからカソードへ一方向に導通するサイリスタThAa及びThAbを逆並列に接続してなる。サイリスタThAaのアノード及びサイリスタThAbのカソードは、接続線3uに接続されている。サイリスタThAaのカソード及びサイリスタThAbのアノードは、調整変圧器2aの二次巻線22のタップt1に接続されている。サイリスタThAa及びThAbのゲートは、駆動部32aに接続されている。駆動部32aからトリガ信号が各サイリスタのゲートに印加された場合、切換スイッチThAは双方向に導通する。切換スイッチThAを1つのトライアックで構成してもよい。
【0036】
次に、オンにする切換スイッチの組合せについて説明する。
図3は、タップ位置とオンにする切換スイッチとの関係を示す図表である。切換スイッチの組合せは7通りあり、これらの組合せをタップ1からタップ7までのタップ位置で表す。例えば、タップ位置をタップ1にした場合、切換スイッチThC及びTh1がオンする。これにより、二次巻線22のタップt1が接続線3vに接続され、タップt3が接続線3uに接続される。この場合、タップt1及びt3間の巻数が二次巻線22の巻数に等しくなり、タップ切換器3aが出力する電圧の大きさが最大となる。
【0037】
タップ2からタップ3までについては、タップ間の巻数が段階的に少なくなるようなタップの組合せに応じて、2つのタップを接続線3u及び3vに接続する切換スイッチが決まる。例えば、タップ位置をタップ3にした場合、切換スイッチThC及びTh2がオンする。これにより、二次巻線22のタップt2が接続線3vに接続され、タップt3が接続線3uに接続される。この場合、タップt2及びt3間の巻数が0を除いて最小となり、タップ切換器3aが出力する電圧の大きさが0を除いて最小となる。
【0038】
タップ位置をタップ4にした場合、切換スイッチThA及びTh1がオンする。これにより、二次巻線22のタップt1が接続線3u及び3vに接続される。この場合、タップ切換器3aが出力する電圧が0となる。これが、いわゆる素通しタップである。なお、素通しタップにするための切換スイッチは、切換スイッチThA及びTh1に限定されず、切換スイッチThB及びTh2でもよいし、切換スイッチThC及びTh3でもよい。
【0039】
タップ5からタップ7までについては、タップ間の巻数が段階的に多くなるようなタップの組合せに応じて、2つのタップを接続線3u及び3vに接続する切換スイッチが決まる。例えば、タップ位置をタップ7にした場合、切換スイッチThA及びTh3がオンする。これにより、二次巻線22のタップt1が接続線3uに接続され、タップt3が接続線3vに接続される。この場合、タップt1及びt3間の巻数が二次巻線22の巻数に等しくなり、タップ切換器3aが出力する電圧の大きさが最大となる。但し、タップ1の場合と比較して、出力される電圧の位相が反転する。
【0040】
前述のとおり、タップ切換によって接続線3u及び3vに接続される2つのタップに係るタップ間の巻数は、タップ位置に応じて決まる、換言すれば、タップ位置に応じて、調整変圧器2aの巻数比が決まる。ここで言う巻数比は、タップ切換によって接続線3u及び3vに接続される2つのタップに係るタップ間の巻数に対する一次巻線21の巻数の比である。そこで、
図3に示すように、タップ1からタップ7までのタップ位置と、NT1からNT7までの巻数比とを対応付けておく。但し、タップ位置がタップ4の場合、上記の定義による巻数比の算出は不能となるから、タップ位置と巻数比との対応付けは行わない。
【0041】
本実施形態1にあっては、
図3に示すタップ位置と、オンにする切換スイッチ及び巻数比とを対応付けたテーブルが、制御部31aのROMに予め記憶されている。タップ位置を上げ下げする毎にこのテーブルを参照して、オンにすべき切換スイッチを示す情報と巻数比とを読み出すことにより、タップ切換の処理が容易に行える。
【0042】
次に、電源側からの交流電圧に加算又は減算される電圧について説明する。
図3を用いて説明したように、タップ位置がタップ1からタップ3までの何れかである場合と、タップ位置がタップ5からタップ7までの何れかである場合とでは、タップ切換器3aが出力する電圧の位相が互いに反転する。ここでは、タップ位置がタップ4からタップ7までの間にある場合について説明する。
【0043】
タップ位置がタップ4からタップ7までの間にある場合、接続線3vに対する接続線3uの電圧は、配電線1vに対する配電線1uの電圧と同相になる。即ち、直列変圧器1aの一次巻線111の端子u2に対する端子u1の電圧は、配電線1vに対する配電線1uの電圧と同相になる。また、一次巻線121の端子v2に対する端子v1の電圧は、配電線1vに対する配電線1uの電圧と逆相になる。従って、接続線3u及び3v間の電圧が直列変圧器1aの一次巻線111,121に印加されることにより、二次巻線112,122から配電線1u,1vに配電される電圧が昇圧されて負荷側に配電される。
【0044】
以上のことから、タップ位置をタップ1からタップ7まで切り換えることにより、電源側からの単相交流を降圧した電圧から昇圧した電圧まで段階的に調整して負荷側に配電することができる。制御部31aは、計測用変圧器PT1により、配電線1u,1v間の電圧を検出し、検出した電圧が不感帯を逸脱した場合に、タップ位置を上げ下げすることによって、配電線1u,1v間電圧が基準電圧に近づくように調整する。
【0045】
次に、過電流の検出及び過電流からの保護について説明する。配電線1u,1vの負荷側で外部短絡故障が発生した場合、直列変圧器1aの二次巻線112,122に流れる短絡電流に比例する過電流が、一次巻線111,121からタップ切換器3aの切換スイッチ及び/又は矯絡用スイッチThSに流れる。この過電流により、切換スイッチ及び矯絡用スイッチThSが破壊するのを防止するために、変流器CT1により過電流が検出された場合は、制御部31aが点弧回路Tg1を制御してトライアックTr1を自己点弧させる。但し、トライアックTr1の破壊耐量は、各切換スイッチ及び矯絡用スイッチThSの破壊耐量よりも十分に大きい。
【0046】
図4は、実施形態1に係る点弧回路Tg1の構成例を示す回路図である。点弧回路Tg1は、b接点(常閉接点)を有するリレーRe1と、抵抗器R1及びR2の直列回路である分圧回路Dv1とを含んでいる。リレーRe1のb接点の一端は、トライアックTr1の主端子T2に接続されている。リレーRe1のb接点の他端は、分圧回路Dv1における抵抗器R1側の一端に接続されている、分圧回路Dv1における抵抗器R2側の他端は、トライアックTr1の主端子T1に接続されている。分圧回路Dv1の分圧点は、トライアックTr1のゲートに接続されている。この構成により、分圧回路Dv1には、リレーRe1のb接点を介してトライアックTr1の両端電圧が供給される。
【0047】
分圧回路Dv1が、トライアックTr1の主端子T1に対する主端子T2の電圧を分圧するものであると見做した場合、分圧比を1に近づけることにより、主端子T2に印加される正又は負の電圧の大部分がゲートに印加されることとなり、トライアックTr1の点弧角を0に近づけることができる。分圧回路Dv1に含まれる抵抗器R1の抵抗値は、ゲートに対してトライアックTr1を点弧させるゲートトリガ電圧より高い電圧が印加されてゲートトリガ電流より十分大きい電流が流れるように、且つピークゲートトリガ電圧を越える電圧が印加されたりピークトリガ電流を越える電流が流れたりすることがないように決定される。分圧回路Dv1に含まれる抵抗器R2は、実質的にはトライアックTr1のゲート並列抵抗として機能する。
【0048】
制御部31aは、リレーRe1を制御してb接点を開成及び閉成させる。制御部31aによる初期化処理にてリレーRe1のb接点が開成されるため、タップ切換器3aの運用状態では、トライアックTr1のゲートに電圧は印加されない。制御部31aは、変流器CT1によって過電流を検出した場合、各切換スイッチ及び矯絡用スイッチThSをオフし、且つリレーRe1のb接点を閉成させる。これにより、過電流による過電圧がトライアックTr1の両端及び分圧回路Dv1に集中的に印加されてトライアックTr1が速やかに点弧し、オフした切換スイッチ及び/又は矯絡用スイッチThSに流れていた過電流をトライアックTr1がバイパスするため、各切換スイッチ及び矯絡用スイッチThSが過電流から保護される。
【0049】
制御部31aの電源が喪失した場合であっても、b接点が自律的に閉成するため、上記と同様にトライアックTr1が点弧する。配電線1u,1vの負荷側での外部短絡故障が発生してトライアックTr1が点弧した場合、少なくとも2秒後には変電所側で短絡が検知されて送電が遮断されるため、トライアックTr1は、最大でも2秒間だけ過電流に耐える容量があればよい。
【0050】
以下では、上述した制御部31aの動作を、それを示すフローチャートを用いて説明する。
図5は、変流器CT1の計測結果に基づいてリレーRe1を制御する制御部31aの処理手順を示すフローチャートである。
図5の処理は、タップ切換器3aの運用中に、例えば60Hzの1周期より短い周期で起動され、制御部31aに含まれるROMに予め格納されている制御プログラムに従って、CPUにより実行される。
【0051】
図5の処理が起動された場合、制御部31aのCPUは、変流器CT1から取得した計測結果に基づいて、タップ切換器3aが出力する交流の線電流を検出し(S11)、検出した線電流が所定の閾値より大きいか否かを判定する(S12)。変流器CT1の計測結果は、ピークホールドされることが好ましい。線電流が所定の閾値より大きくない場合(S12:NO)、CPUはそのまま
図5の処理を終了する。
【0052】
線電流が所定の閾値より大きい場合(S12:YES)、CPUは、矯絡用スイッチThSをオフし(S13)、各切換スイッチをオフし(S14)、更にリレーRe1を制御してb接点を閉成させた(S15)後、
図5の処理を終了する。ステップS13からS15の処理は順序を入れ替えてもよい。ステップS13で矯絡用スイッチThSをオフするのは、たまたまタップ切換の最中であった場合に、一時的に矯絡用スイッチがオンしている期間が存在するためである。
【0053】
上述のフローチャートによれば、矯絡用スイッチThSをオフしてからリレーRe1のb接点が実際に閉成されるまでには、リレーRe1の応答時間だけ遅れが生じ、この応答時間より短い時間だけ直列変圧器1aの一次巻線111,121が開放となって、過電圧が生じる可能性がある。この過電圧が無視できない場合は、ステップS13にて矯絡用スイッチThSをオンしてもよい。これにより、リレーRe1の応答の遅れに伴う一時的な過電圧が発生することが防止される。但し、トライアックTr1が点弧するまでの間は過電流が矯絡用スイッチThS及び限流抵抗器RSにバイパスされ、その分だけトライアックTr1の両端及び分圧回路Dv1に印加される電圧が低下するため、トライアックTr1の点弧角が大きくなることに留意する必要がある。
【0054】
以上のように本実施形態1によれば、調整変圧器2aの二次巻線22が有するタップt1,t2,t3を制御部31aが6つの切換スイッチThX(X=1,2,3,A,B,C)で切り換えて選択し、選択されたタップが結線されて単相交流が出力される。交流出力の線間にはトライアックTr1の両端が接続されている。トライアックTr1の点弧回路Tg1には自身に含まれるリレーRe1のb接点を介してトライアックTr1の両端の電圧が供給される。交流出力の線電流が所定の閾値より大きい場合、制御部31aが各切各換スイッチをオフし、且つリレーRe1のb接点を閉成させる。これにより、タップ切換器3aの出力側から切換スイッチに過電流が流れた場合に、リレーRe1のb接点が閉成されて点弧回路Tg1におけるリレーRe1を除く回路に交流の線間電圧が供給されるため、点弧回路Tg1がトライアックTr1を双方向に点弧させる。従って、オフした切換スイッチに流れていた過電流をトライアックTr1がバイパスするため、少なくとも切換スイッチThXを過電流から保護することが可能となる。
【0055】
また、実施形態1によれば、トライアックTr1を点弧させるためにリレーRe1のb接点を閉成させる場合、各切換スイッチをオフするのに加えて矯絡用スイッチThSをオン又はオフの何れかにする。矯絡用スイッチThSをオンした場合は、リレーRe1の応答の遅れに伴って一時的に過電圧が発生するのを防止することができる。矯絡用スイッチThSをオフした場合は、矯絡用スイッチThSが過電流から保護されると共に、過電流による過電圧がトライアックTr1の両端及び点弧回路Tg1に集中的に印加されるため、トライアックTr1をより速やかに点弧させることができる。
【0056】
更に、実施形態1によれば、点弧回路Tg1に含まれるリレーRe1のb接点を介して供給された電圧が分圧されてトライアックTr1のゲートに印加される。従って、分圧比を適当に1に近付け、且つ抵抗器R1の抵抗値を適当に小さく選択した場合は、トライアックTr1の点弧角が0に近づくため、トライアックTr1による切換スイッチThXの保護がより確実なものとなる。
【0057】
更に、実施形態1によれば、双方向に導通するトライアックTr1が半導体スイッチに含まれている。従って、汎用的なトライアックTr1で構成された半導体スイッチを双方向に導通可能にして、切換スイッチThXの保護に好適に用いることができる。
【0058】
更に、実施形態1によれば、直列変圧器1aの二次巻線112,122が配電線1u,1vに直列接続され、調整変圧器2aの一次巻線21が配電線1u,1vに並列接続される。そして、タップ切換器3aが切り換えた調整変圧器2aのタップが直列変圧器1aの一次巻線111,121に接続される。即ち、調整変圧器2aのタップt1,t2,t3を切り換えることにより、配電線1u,1vの電圧が調整される。従って、トライアックTr1によって切換スイッチThXが過電流から保護されるタップ切換器3aを、電圧調整装置100aに適用することができる。
【0059】
なお、実施形態1にあっては、タップ切換器3aが出力する交流の線間に半導体スイッチであるトライアックTr1を接続したが、このトライアックTr1に代えて、素通しタップにするための切換スイッチを用いてもよい。例えば、
図3に示す例では、切換スイッチThA及びTh1それぞれの両端に点弧回路Tg1と同等の点弧回路を並列的に接続しておき、
図5に示すフローチャートのステップS15にて、これらの点弧回路に含まれるリレーのb接点を閉成させればよい。但し、切換スイッチThA及びTh1は、他の切換スイッチと比較して破壊耐量が十分大きいものとする。
【0060】
(実施形態2)
実施形態1が、半導体スイッチにトライアックTr1を用いる形態であるのに対し、実施形態2は、半導体スイッチに2つのサイリスタを用いる形態である。
図6は、実施形態2に係る負荷時タップ切換器3bを含む電圧調整装置100bの構成例を示すブロック図である。
【0061】
電圧調整装置100bは、直列変圧器1aと、調整変圧器2aと、負荷時タップ切換器(タップ切換器)3bとを備える。タップ切換器3b及び調整変圧器2aが、負荷時タップ切換変圧器200bを構成する。
【0062】
タップ切換器3bは、6つの切換スイッチThA,ThB,ThC,Th1,Th2,Th3と、上記各切換スイッチの切り換えを制御する制御部31bと、制御部31bからの駆動信号に基づいて各切換スイッチをオンに駆動する駆動部32aとを有する。
【0063】
接続線3u及び3v間には、限流抵抗器RS及び矯絡用スイッチThSの直列回路と、逆並列に接続されたサイリスタThPa,ThPb(半導体スイッチに相当)の両端とが接続されている。サイリスタThPa,ThPbの両端には点弧回路Tg2が接続されており、点弧回路Tg2にはサイリスタThPa,ThPbの両端電圧が供給されている。点弧回路Tg2の出力はサイリスタThPa,ThPbのゲートに接続されている。サイリスタThPaは、アノード,カソードそれぞれが接続線3v,3uに接続されている。サイリスタThPbは、アノード,カソードそれぞれが接続線3u,3vに接続されている。その他、実施形態1に対応する箇所には同様の符号を付してその説明を省略する。
【0064】
図7は、実施形態2に係る点弧回路Tg2の構成例を示す回路図である。点弧回路Tg2は、b接点を有するリレーRea,Rebと、抵抗器R1a及びR2aの直列回路である分圧回路Dvaと、抵抗器R1b及びR2bの直列回路である分圧回路Dvbとを含んでいる。リレーReaのb接点の一端は、サイリスタThPaのアノードに接続されている。リレーReaのb接点の他端は、分圧回路Dvaにおける抵抗器R1a側の一端に接続されている、分圧回路Dvaにおける抵抗器R2a側の他端は、サイリスタThPaのカソードに接続されている。分圧回路Dvaの分圧点は、サイリスタThPaのゲートに接続されている。サイリスタThPaのゲート・カソード間には、逆方向のゲート電圧をクランプするダイオードDaが並列に接続されている。この構成により、分圧回路Dvaには、リレーReaのb接点を介してサイリスタThPaの両端電圧が供給される。
【0065】
一方、リレーRebのb接点の一端は、サイリスタThPbのアノードに接続されている。リレーRebのb接点の他端は、分圧回路Dvbにおける抵抗器R1b側の一端に接続されている、分圧回路Dvbにおける抵抗器R2b側の他端は、サイリスタThPbのカソードに接続されている。分圧回路Dvbの分圧点は、サイリスタThPbのゲートに接続されている。サイリスタThPbのゲート・カソード間には、逆方向のゲート電圧をクランプするダイオードDbが並列に接続されている。この構成により、分圧回路Dvbには、リレーRebのb接点を介してサイリスタThPbの両端電圧が供給される。
【0066】
分圧回路Dvaが、サイリスタThPaのカソードに対するアノードの電圧を分圧するものであると見做した場合、分圧比を1に近づけることにより、アノードに印加される電圧の大部分がゲートに印加されることとなり、サイリスタThPaの点弧角を0に近づけることができる。分圧回路Dvaに含まれる抵抗器R1aの抵抗値は、ゲートに対してサイリスタThPaを点弧させるゲートトリガ電圧より高い電圧が印加されてゲートトリガ電流より十分大きい電流が流れるように、且つピークゲートトリガ電圧を越える電圧が印加されたりピークトリガ電流を越える電流が流れたりすることがないように決定される。分圧回路Dvaに含まれる抵抗器R2aは、実質的にはサイリスタThPaのゲート並列抵抗として機能する。
【0067】
同様に、分圧回路Dvbが、サイリスタThPbのカソードに対するアノードの電圧を分圧するものであると見做した場合、分圧比を1に近づけることにより、アノードに印加される電圧の大部分がゲートに印加されることとなり、サイリスタThPbの点弧角を0に近づけることができる。分圧回路Dvbに含まれる抵抗器R1bの抵抗値は、ゲートに対してサイリスタThPbを点弧させるゲートトリガ電圧より高い電圧が印加されてゲートトリガ電流より十分大きい電流が流れるように、且つピークゲートトリガ電圧を越える電圧が印加されたりピークトリガ電流を越える電流が流れたりすることがないように決定される。分圧回路Dvbに含まれる抵抗器R2bは、実質的にはサイリスタThPbのゲート並列抵抗として機能する。
【0068】
制御部31bは、リレーRea,Rebを制御してb接点を開成及び閉成させる。制御部31bによる初期化処理にてリレーRea,Rebのb接点が開成されるため、タップ切換器3bの運用状態では、サイリスタThPa,ThPbのゲートに電圧は印加されない。制御部31bは、変流器CT1によって過電流を検出した場合、リレーRea,Rebのb接点を閉成させる。これにより、サイリスタThPa,ThPbが交互に点弧して、各切換スイッチ及び矯絡用スイッチThSを過電流から保護する。制御部31bの電源が喪失した場合であっても、b接点が自律的に閉成するため、上記と同様にサイリスタThPa,ThPbが点弧する。
【0069】
上述した制御部31bの動作を示すフローチャートは、実施形態1の
図5に示すものと同様であるため、図示を省略する。なお、ステップS15では、リレーRea,Rebの両方について、b接点を閉成させればよい。
【0070】
以上のように本実施形態2によれば、調整変圧器2aの二次巻線22が有するタップt1,t2,t3を制御部31bが6つの切換スイッチThX(X=1,2,3,A,B,C)で切り換えて選択し、選択されたタップが結線されて単相交流が出力される。交流出力の線間にはサイリスタThPa,ThPbの両端が接続されている。サイリスタThPa,ThPbの点弧回路Tg2には自身に含まれるリレーRea,Rebそれぞれのb接点を介してサイリスタThPa,ThPbの両端の電圧が供給される。交流出力の線電流が所定の閾値より大きい場合、制御部31bが各切換スイッチをオフし、且つリレーRea,Rebのb接点を閉成させる。これにより、タップ切換器3bの出力側から切換スイッチに過電流が流れた場合に、リレーRea,Rebのb接点が閉成されて点弧回路Tg2におけるリレーRea,Rebを除く回路に交流の線間電圧が供給されるため、点弧回路Tg2がサイリスタThPa,ThPbを交互に点弧させる。従って、オフした切換スイッチに流れていた過電流をサイリスタThPa,ThPbがバイパスするため、少なくとも切換スイッチThXを過電流から保護することが可能となる。
【0071】
また、実施形態2によれば、点弧回路Tg2に含まれるリレーRea,Rebそれぞれのb接点を介して供給された電圧が分圧されてサイリスタThPa,ThPbのゲートに印加される。従って、分圧比を適当に1に近付け、且つ抵抗器R1a,R1bの抵抗値を適当に小さく選択した場合は、サイリスタThPa,ThPbの点弧角が0に近づくため、サイリスタThPa,ThPbによる切換スイッチThXの保護がより確実なものとなる。
【0072】
更に、実施形態2によれば、単一方向に導通するサイリスタThPa,ThPbを逆並列に接続したサイリスタの組合せが半導体スイッチに含まれている。従って、汎用的なサイリスタThPa,ThPbで構成された半導体スイッチを双方向に導通可能にして、切換スイッチThXの保護に好適に用いることができる。
【0073】
なお、実施形態1及び2にあっては、半導体スイッチとしてトライアックTr1及びサイリスタThPa,ThPbを用いたが、これに限定されるものではない。例えば、半導体スイッチとしてIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor )又はFET(Field effect transistor )を用いることもできる。
【0074】
(変形例1)
実施形態2は、2つの分圧回路Dva,Dvbが点弧回路Tg2に含まれる形態であるのに対し、変形例1は、1つの分圧回路Dvcが点弧回路Tg3に含まれる形態である。変形例1に係る電圧調整装置の構成は、実施形態2に係る電圧調整装置100bと比較して点弧回路Tg3の構成のみが異なるため、電圧調整装置のブロック構成は図示を省略する。
【0075】
図8は、変形例1に係る点弧回路Tg3の構成例を示す回路図である。点弧回路Tg3は、b接点を有するリレーRecと、抵抗器R2b、R1c及びR2aが直列的に接続された分圧回路Dvcとを含んでいる。リレーRecのb接点の一端は抵抗器R2aの一端に接続されている。抵抗器R2aの他端はサイリスタThPaのカソードに接続されている。リレーRecのb接点の他端は、抵抗器R1cを介して抵抗器R2bの一端に接続されている。抵抗器R2bの他端はサイリスタThPbのカソードに接続されている。リレーRecのb接点の一端及び抵抗器R2aの一端の接続点は、サイリスタThPaのゲートに接続されている。抵抗器R1cの一端及び抵抗器R2bの一端の接続点は、サイリスタThPbのゲートに接続されている。サイリスタThPaのゲート・カソード間には、逆方向のゲート電圧をクランプするダイオードDaが並列に接続されている。サイリスタThPbのゲート・カソード間には、逆方向のゲート電圧をクランプするダイオードDbが並列に接続されている。この構成により、分圧回路Dvcには、リレーRecのb接点を介してサイリスタThPa,ThPbの両端電圧が供給される。
【0076】
リレーRecのb接点が閉成された状態での分圧回路Dvcが、サイリスタThPaのカソードに対するアノードの電圧を分圧するものであると見做した場合、抵抗器R1c及びR2aによる分圧比を1に近づけることにより、アノードに印加される電圧の大部分がゲートに印加されることとなり、サイリスタThPaの点弧角を0に近づけることができる。この場合、抵抗器R2bは両端がダイオードDbによって短絡されている。
【0077】
一方、リレーRecのb接点が閉成された状態での分圧回路Dvcが、サイリスタThPbのカソードに対するアノードの電圧を分圧するものであると見做した場合、抵抗器R1c及びR2bによる分圧比を1に近づけることにより、アノードに印加される電圧の大部分がゲートに印加されることとなり、サイリスタThPbの点弧角を0に近づけることができる。この場合、抵抗器R2aは両端がダイオードDaによって短絡されている。抵抗器R1cの抵抗値は、実施形態2の
図7における抵抗器R1a,R1bと同等であり、実施形態2の場合と同様のゲート電圧及びゲート電流を考慮して決定される。
【0078】
制御部31bは、実施形態1におけるリレーRe1と同様に、リレーRecを制御してb接点を開成及び閉成させる。制御部31bによる初期化処理にてリレーRecのb接点が開成されるため、タップ切換器3bの運用状態では、サイリスタThPa,ThPbのゲートに電圧は印加されない。制御部31bは、変流器CT1によって過電流を検出した場合、リレーRecのb接点を閉成させる。これにより、サイリスタThPa,ThPbが交互に点弧して、各切換スイッチ及び矯絡用スイッチThSを過電流から保護する。
【0079】
上述した制御部31bの動作を示すフローチャートは、実施形態1の
図5に示すものと同様であるため、図示を省略する。なお、ステップS15では、リレーRecについて、b接点を閉成させればよい。
【0080】
以上のように本変形例1によれば、サイリスタThPa,ThPbの点弧回路Tg3には自身に含まれるリレーRecのb接点を介してサイリスタThPa,ThPbの両端の電圧が供給される。交流出力の線電流が所定の閾値より大きい場合、制御部31bが各切換スイッチをオフし、且つリレーRecのb接点を閉成させる。これにより、タップ切換器3bの出力側から切換スイッチに過電流が流れた場合に、リレーRecのb接点が閉成されて点弧回路Tg3におけるリレーRecを除く回路に交流の線間電圧が供給されるため、点弧回路Tg3がサイリスタThPa,ThPbを交互に点弧させる。従って、オフした切換スイッチに流れていた過電流をサイリスタThPa,ThPbがバイパスするため、少なくとも切換スイッチThXを過電流から保護することが可能となる。
【0081】
また、変形例1によれば、点弧回路Tg3に含まれるリレーRecのb接点を介して供給された電圧が分圧されてサイリスタThPa,ThPbのゲートに印加される。従って、分圧比を適当に1に近付け、且つ抵抗器R1cの抵抗値を適当に小さく選択した場合は、サイリスタThPa,ThPbの点弧角が0に近づくため、サイリスタThPa,ThPbによる切換スイッチThXの保護がより確実なものとなる。
【0082】
(実施形態3)
実施形態1及び2は、負荷時タップ切換器3a及び3bが単相交流を出力する形態であるのに対し、実施形態3は、負荷時タップ切換器3cが3相交流を出力する形態である。
図9は、実施形態3に係る負荷時タップ切換器3cを含む電圧調整装置100cの構成例を示すブロック図である。電圧調整装置100cは、紙面左側の電源から供給されるU相,V相,W相の3相交流の電圧を調整し、紙面右側の負荷へ、配電線1u,1v,1wを介してu相,v相,w相の3相交流を配電する。
【0083】
電圧調整装置100cは、配電線1u,1v,1wそれぞれに二次巻線112,122,132が直列に接続される直列変圧器1cと、配電線1u,1v,1wに一次巻線211,221,231がΔ結線される調整変圧器2c(タップ付変圧器に相当)とを備える。電圧調整装置100cは、更に、調整変圧器2cの二次巻線212,222,232及び直列変圧器1cの一次巻線111,121,131の間に設けられた負荷時タップ切換器(タップ切換器)3cを備える。タップ切換器3c及び調整変圧器2cが、負荷時タップ切換変圧器200cを構成する。
【0084】
直列変圧器1cは、二次巻線112,122,132それぞれに一次巻線111,121,131が対応している。一次巻線111,121,131はΔ結線されている。二次巻線112,122,132それぞれの上記負荷側の端子に対応する一次巻線111,121,131の端子をu1,v1,w1とする。また、二次巻線112,122,132それぞれの上記電源側の端子に対応する一次巻線111,121,131の端子をu2,v2,w2とする。
【0085】
調整変圧器2cは、一次巻線211が配電線1u,1v間に、一次巻線221が配電線1v,1w間に、一次巻線231が配電線1w,1u間にそれぞれ接続されている。一次巻線211,221,231のそれぞれには、二次巻線212,222,232が対応している。
【0086】
二次巻線212,222,232のそれぞれは、一端及び他端から引き出されたタップt1及びt4と,一端及び他端の間から引き出された中間のタップt2及びt3とを有する。二次巻線212,222,232のそれぞれは、タップt1~t4の何れか1つがタップ切換器3cを介して直列変圧器1cの一次側の端子u2,v2,w2と、端子v1,w1,u1とに接続され、該1つと同一又は異なる他の1つが中性点Nとしてアースに接続される。即ち、調整変圧器2cの二次巻線212,222,232は、タップ切換器3cを介してY結線される。
【0087】
調整変圧器2cの一次巻線211,221,231に印加される電圧を計測するために、配電線1u,1v、1wには計測用変圧器PT1,PT2がV結線されている。即ち、配電線1u及び1v間には計測用変圧器PT1の一次巻線が接続されており、配電線1v及び1w間には計測用変圧器PT2の一次巻線が接続されている。後述する制御部31cが計測用変圧器PT1,PT2から計測結果を取得することにより、一次巻線211,221,231に印加される電圧を検出する。
【0088】
タップ切換器3cは、調整変圧器2cの二次巻線212のタップt1~t4を切り換えるための8つの切換スイッチThA_U,ThB_U,ThC_U,ThD_U,Th1_U,Th2_U,Th3_U,Th4_Uと、二次巻線222のタップt1~t4を切り換えるための8つの切換スイッチThA_V,ThB_V,ThC_V,ThD_V,Th1_V,Th2_V,Th3_V,Th4_Vと、二次巻線232のタップt1~t4を切り換えるための8つの切換スイッチThA_W,ThB_W,ThC_W,ThD_W,Th1_W,Th2_W,Th3_W,Th4_Wとを有する。
【0089】
タップ切換器3cは、更に、上記各切換スイッチの切り換えを制御する制御部31cと、制御部31cからの駆動信号に基づいて各切換スイッチをオンに駆動する駆動部32cとを有する。
【0090】
二次巻線212のタップt1は、保護用のヒューズ(不図示:以下同様)を介して切換スイッチThA_U及びTh1_Uの一端に接続され、タップt2は、ヒューズを介して切換スイッチThB_U及びTh2_Uの一端に接続され、タップt3は、ヒューズを介して切換スイッチThC_U及びTh3_Uの一端に接続され、タップt4は、切換スイッチThD_U及びTh4_Uの一端に接続されている。切換スイッチThA_U,ThB_U,ThC_U,ThD_Uの他端同士は、中性点Nに接続されている。切換スイッチTh1_U,Th2_U,Th3_U,Th4_Uの他端同士は、接続線3uを介して直列変圧器1cの一次側の端子u2及びv1に接続されている。接続線3uは、タップ切換器3cからU相に対応する交流電圧を出力するものであり、その位相をOUと表す。
【0091】
二次巻線222のタップt1は、ヒューズを介して切換スイッチThA_V及びTh1_Vの一端に接続され、タップt2は、ヒューズを介して切換スイッチThB_V及びTh2_Vの一端に接続され、タップt3は、ヒューズを介して切換スイッチThC_V及びTh3_Vの一端に接続され、タップt4は、切換スイッチThD_V及びTh4_Vの一端に接続されている。切換スイッチThA_V,ThB_V,ThC_V,ThD_Vの他端同士は、中性点Nに接続されている。切換スイッチTh1_V,Th2_V,Th3_V,Th4_Vの他端同士は、接続線3vを介して直列変圧器1cの一次側の端子v2及びw1に接続されている。接続線3vは、タップ切換器3cからV相に対応する交流電圧を出力するものであり、その位相をOVと表す。
【0092】
二次巻線232のタップt1は、ヒューズを介して切換スイッチThA_W及びTh1_Wの一端に接続され、タップt2は、ヒューズを介して切換スイッチThB_W及びTh2_Wの一端に接続され、タップt3は、ヒューズを介して切換スイッチThC_W及びTh3_Wの一端に接続され、タップt4は、切換スイッチThD_W及びTh4_Wの一端に接続されている。切換スイッチThA_W,ThB_W,ThC_W,ThD_Wの他端同士は、中性点Nに接続されている。切換スイッチTh1_W,Th2_W,Th3_W,Th4_Wの他端同士は、接続線3wを介して直列変圧器1cの一次側の端子w2及びu1に接続されている。接続線3wは、タップ切換器3cからW相に対応する交流電圧を出力するものであり、その位相をOWと表す。
【0093】
接続線3u及び3v間には、限流抵抗器R_UV及び矯絡用スイッチThS_UVの直列回路と、トライアックTr_UV(半導体スイッチに相当)の両端とが接続されている。トライアックTr_UVの両端には点弧回路Tg_UVが接続されており、点弧回路Tg_UVにはトライアックTr_UVの両端電圧が供給されている。点弧回路Tg_UVの出力はトライアックTr_UVのゲートに接続されている。接続線3uにおけるトライアックTr_UV及び上記直列回路との接続点よりも出力側には、タップ切換器3cが出力するOU相の線電流を計測するために、変流器CT_U(電流検出部に相当)の一次巻線が結合している。
【0094】
接続線3v及び3w間には、限流抵抗器R_VW及び矯絡用スイッチThS_VWの直列回路と、トライアックTr_VW(半導体スイッチに相当)の両端とが接続されている。トライアックTr_VWの両端には点弧回路Tg_VWが接続されており、点弧回路Tg_VWにはトライアックTr_VWの両端電圧が供給されている。点弧回路Tg_VWの出力はトライアックTr_VWのゲートに接続されている。接続線3wにおけるトライアックTr_VW及び上記直列回路との接続点よりも出力側には、タップ切換器3cが出力するOW相の線電流を計測するために、変流器CT_W(電流検出部に相当)の一次巻線が結合している。
【0095】
トライアックTr_UV,Tr_VWは、過電流が検出されて各切換スイッチが保護される場合、又はタップ切換器3cの運用が停止される場合に点弧される。この場合、直列変圧器1cの一次側の端子u1,u2間、v1,v2間及び端子w1,w2間が矯絡されるため、直列変圧器1cの一次側が開放状態になることが防止される。
【0096】
変流器CT_U,CT_Wを上述の位置に設けることにより、切換スイッチ及び矯絡用スイッチThS_UV,ThS_VWに流れる電流を計測することができる。トライアックTr_UV,Tr_VWが点弧した場合は、変流器CT_U,CT_Wにより、直列変圧器1cの一次巻線111,121,131からトライアックTr_UV,Tr_VWに流れる電流を計測することができる。
【0097】
次に、過電流の検出及び過電流からの保護について説明する。配電線1u,1v,1wの負荷側で外部短絡故障が発生した場合、直列変圧器1cの二次巻線112,122,132に流れる短絡電流に比例する過電流が、一次巻線111,121,131からタップ切換器3cの切換スイッチ及び/又は矯絡用スイッチThS_UV,ThS_VWに流れる。この過電流により、切換スイッチ及び矯絡用スイッチThS_UV,ThS_VWが破壊するのを防止するために、変流器CT_U,CT_Wにより過電流が検出された場合は、制御部31cが点弧回路Tg_UV,Tg_VWを制御してトライアックTr_UV,Tr_VWを点弧させる。点弧回路Tg_UV,Tg_VWの構成は、実施形態1の
図4に示す点弧回路Tg1と同様であるため、図示及びその説明を省略する。
【0098】
制御部31cは、点弧回路Tg_UV,Tg_VWそれぞれに含まれるリレーRe1を制御してb接点を開成及び閉成させる。制御部31cによる初期化処理にてリレーRe1のb接点が開成されるため、タップ切換器3cの運用状態では、トライアックTr_UV,Tr_VWのゲートに電圧は印加されない。制御部31cは、変流器CT_U,CT_Wによって過電流を検出した場合、各切換スイッチ及び矯絡用スイッチThS_UV,ThS_VWをオフし、且つリレーRe1のb接点を閉成させる。これにより、過電流による過電圧がトライアックTr_UV,Tr_VWの両端及び分圧回路Dv1,Dv1に集中的に印加されてトライアックTr_UV,Tr_VWが双方向に速やかに点弧し、オフした切換スイッチ及び/又は矯絡用スイッチThS_UV,ThS_VWに流れていた過電流をトライアックTr_UV,Tr_VWがバイパスする。このため、各切換スイッチ及び矯絡用スイッチThS_UV,ThS_VWが過電流から保護される。
【0099】
上述した制御部31cの動作を示すフローチャートは、実施形態1の
図5に示すものと同様であるため、図示を省略する。なお、ステップS11では、変流器CT_U,CT_Wについて線電流を検出する。ステップS12では、検出した線電流の何れかが所定の閾値より大きいか否かを判定する。ステップS15では、2つのリレーRe1,Re1の両方について、b接点を閉成させればよい。
【0100】
以上のように本実施形態3によれば、調整変圧器2cの二次巻線212,222,232それぞれが有するタップt1,t2,t3,t4を制御部31cが8つの切換スイッチThY_U(Y=1,2,3,4,A,B,C,D),ThY_V,ThY_Wで切り換えて選択し、選択されたタップ同士がY結線されて3相交流が出力される。交流出力のOU相・OV相の線間にはトライアックTr_UVの両端が接続されている。また、交流出力のOV相・OW相の線間にはトライアックTr_VWの両端が接続されている。交流出力のU相又はW相の線電流が所定の閾値より大きい場合、制御部31cが各切換スイッチをオフし、且つ点弧回路Tg_UV,Tg_VWそれぞれに含まれるリレーRe1のb接点を閉成させる。これにより、タップ切換器3cの出力側から切換スイッチに過電流が流れた場合に、リレーRe1のb接点が閉成されて点弧回路Tg_UV,Tg_VWにおけるリレーRe1を除く回路に交流の線間電圧が供給されるため、点弧回路Tg_UV,Tg_VWそれぞれがトライアックTr_UV,Tr_VWを双方向に点弧させる。従って、オフした切換スイッチに流れていた過電流をトライアックTr_UV,Tr_VWがバイパスするため、少なくとも切換スイッチThYを過電流から保護することが可能となる。
【0101】
また、実施形態3によれば、直列変圧器1cの二次巻線112,122,132が配電線1u,1v,1wに直列接続され、調整変圧器2cの一次巻線211,221,231が配電線1u,1v,1wに並列接続される。そして、タップ切換器3cが切り換えた調整変圧器2cのタップが直列変圧器1cの一次巻線111,121,131に接続される。即ち、調整変圧器2cのタップt1,t2,t3,t4を切り換えることにより、配電線1u,1v,1wの電圧が調整される。従って、トライアックTr_UV,Tr_VWによって切換スイッチThYが過電流から保護されるタップ切換器3cを、電圧調整装置100cに適用することができる。
【0102】
なお、実施形態3にあっては、調整変圧器2cの二次巻線がタップ切換器3cを介してY結線され、直列変圧器1cの一次巻線111,121,131がΔ結線されている場合を例に説明したが、これに限定されるものではない。例えば、調整変圧器2cの二次巻線212,222,232がタップ切換器を介してΔ結線され、直列変圧器1cの一次巻線111,121,131がY結線されている場合であっても、タップ切換器から3相の交流電圧が出力される。また、調整変圧器の二次巻線212,222がタップ切換器を介してV結線され、直列変圧器1cの一次巻線111,121,131がY結線されている場合であっても、タップ切換器から3相の交流電圧が出力される。これらの場合にも、実施形態3の場合と同様にトライアックTr_UV,Tr_VW及び点弧回路Tg_UV,Tg_VWを2相の線間に接続して、少なくとも切換スイッチThYを過電流から保護することが可能である。
【0103】
(変形例2)
実施形態1が、一次巻線21及び二次巻線22を有する複巻変圧器を調整変圧器2aに用いる形態であるのに対し、変形例2は、1つの巻線20を有する単巻変圧器を調整変圧器2dに用いる形態である。
図10は、変形例2に係る負荷時タップ切換器3aを含む電圧調整装置100dの構成例を示すブロック図である。
【0104】
電圧調整装置100dは、直列変圧器1aと、調整変圧器2dと、負荷時タップ切換器(タップ切換器)3aとを備える。タップ切換器3a及び調整変圧器2dが、負荷時タップ切換変圧器200dを構成する。
【0105】
調整変圧器2dは、巻線20の両端が配電線1u,1v間に接続されている。巻線20は、一端及び他端から引き出されたタップt1及びt3と,一端及び他端の間から引き出された中間のタップt2とを有する。巻線20は、タップt1~t3の何れか1つがタップ切換器3aを介して直列変圧器1aの一次側の端子u2,v1に接続され、該1つと同一又は異なる他の1つがタップ切換器3aを介して直列変圧器1aの一次側の端子u1,v2に接続される。
【0106】
電圧調整装置100dと、実施形態1に係る電圧調整装置100aとの違いは、調整変圧器2dと調整変圧器2aとの違いのみである。即ち、電圧調整装置100dでは、配電線1u,1vに接続された巻線20からタップt1~t3が引き出されているため、配電線1u,1vと、タップ切換器3aとが絶縁されていない。しかしながら、タップ切換器3aにおける制御部31aの制御は、実施形態1の場合と全く同様に行うことができる。
【0107】
以上のように本変形例2によれば、調整変圧器2dが単巻変圧器であるため、構成が簡略化されるが、タップ切換の制御は複巻変圧器を用いた場合と同様で済む。この場合の作用・効果は、明らかに実施形態1によるものと同等である。
【0108】
今回開示された実施形態は、全ての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上述した意味ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。また、各実施形態で記載されている技術的特徴は、お互いに組み合わせることが可能である。
【符号の説明】
【0109】
1u,1v,1w 配電線、 100a,100b,100c 電圧調整装置、 1a,1c 直列変圧器、 111,121,131 一次巻線、 112,122,132 二次巻線、 u1,u2,v1,v2,w1,w2 端子、 200a,200b,200c 負荷時タップ切換変圧器、 2a,2c 調整変圧器(タップ付変圧器)、 21,211,221,231 一次巻線、 22,212,222,232 二次巻線、 t1,t2,t3,t4 タップ、 3a,3b,3c 負荷時タップ切換器(タップ切換器)、 31a,31b,31c 制御部、 32a,32c 駆動部、 Th1,Th2,Th3,ThA,ThB,ThC,Th1_U,Th2_U,Th3_U,Th4_U,ThA_U,ThB_U,ThC_U,ThD_U 切換スイッチ、 3u,3v,3w 接続線、 ThS,ThS_UV,ThS_VW 矯絡用スイッチ、 RS,R_UV,R_VW 限流抵抗器、 PT1,PT2 計測用変圧器、 CT1,CT_U,CT_W 変流器、 Tr1,Tr_UV,Tr_VW トライアック、 ThAa,ThAb,ThPa,ThPb サイリスタ、 Tg1,Tg2,Tg3,Tg_UV,Tg_VW 点弧回路、 Re1,Rea,Reb,Rec リレー、 R1,R2,R1a,R1b,R1c,R2a,R2b 抵抗器、 Da,Db ダイオード