(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-12
(45)【発行日】2023-07-21
(54)【発明の名称】コンクリートの打重ね評価装置およびコンクリートの打重ね評価測定方法
(51)【国際特許分類】
G01N 3/40 20060101AFI20230713BHJP
G01N 3/00 20060101ALI20230713BHJP
G01N 33/38 20060101ALI20230713BHJP
【FI】
G01N3/40 B
G01N3/00 M
G01N33/38
(21)【出願番号】P 2020085867
(22)【出願日】2020-05-15
【審査請求日】2022-07-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000206211
【氏名又は名称】大成建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】弁理士法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】松元 淳一
(72)【発明者】
【氏名】直町 聡子
(72)【発明者】
【氏名】堀口 賢一
(72)【発明者】
【氏名】新藤 竹文
【審査官】前田 敏行
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-102204(JP,A)
【文献】実開昭60-111935(JP,U)
【文献】特開平08-015113(JP,A)
【文献】特開2000-080635(JP,A)
【文献】特開2013-101070(JP,A)
【文献】特開平10-077626(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0226044(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 3/40
G01N 3/00
G01N 33/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
左右に把持部を有した本体部と、
前記本体部の下方に配設された目盛付きの貫入棒と、
前記本体部と前記貫入棒との間に介設された荷重計と、
前記荷重計の測定結果を表示する表示部と、を備え
るコンクリートの打重ね評価装置であって、
前記本体部は、土台と、前記土台から左右に延設された把持部と、を有し、
前記土台は、上面が底面に対して傾斜した側面視台形状の部材からなり、
前記表示部は、前記土台の上面に固定されて、前記荷重計から延設されたケーブルが接続されていることを特徴とする、コンクリートの打重ね評価装置。
【請求項2】
前記貫入棒は、複数の棒部材を連結することにより形成されていることを特徴とする、請求項1に記載のコンクリートの打重ね評価装置。
【請求項3】
前記貫入棒の先端に、着脱可能な突き部を備えていることを特徴とする、請求項1または請求項2に記載のコンクリートの打重ね評価装置。
【請求項4】
前記貫入棒が、軸棒と、前記軸棒に外装された筒状の目盛棒と、を備えていることを特徴とする、請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載のコンクリートの打重ね評価装置。
【請求項5】
左右に把持部を有した本体部と、前記本体部の下方に配設された目盛付きの貫入棒と、前記本体部と前記貫入棒との間に介設された荷重計と、前記荷重計の測定結果を表示する表示部と、を備えるコンクリートの打重ね評価装置を利用したコンクリートの打重ね評価測定方法であって、
前記貫入棒をコンクリートに差し込んで前記貫入棒の貫入深さを測定するとともに、前記貫入棒を差し込んだ際の荷重を測定する工程と、
前記荷重により測定貫入抵抗値を算出する工程と、
前記測定貫入抵抗値に、コンクリートの貫入抵抗値をモルタルの貫入抵抗値に換算するための係数β及びモルタルの貫入抵抗値をプロクター貫入抵抗値に換算するための係数αを乗じてプロクター貫入抵抗値を算出する工程と、を備えていることを特徴とする、コンクリートの打重ね評価測定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンクリートの打重ね評価装置および打重ね評価測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
コンクリート構造物を構築する場合には、コンクリートを打ち重ねることで、打重ね継面にコールドジョイントが発生することがないように、コンクリートを打ち重ねるタイミングを適切に判断する必要がある。コンクリートを打ち重ねるタイミングを設定する方法として、当該コンクリートのモルタル分の貫入抵抗値と、コンクリートの貫入深さを測定して、この測定結果を利用して判断する場合がある。具体的には、実験室でモルタル供試体を利用して、プロクター貫入試験機により貫入抵抗値(プロクター貫入抵抗値)を測定する。また、施工現場ではスランプ試験用の突き棒をコンクリートに差し込み、差し込むことができる深さ(貫入深さ)を測定する。そして、貫入抵抗値と貫入深さとの関係を定めて、打ち重ねに適した状態であるか否かを判断する(例えば、非特許文献1参照)。この場合、全ての使用配合において、貫入抵抗値と貫入深さの関係を定めて、実施工時の管理値を得るための事前試験が必要となる。
また、従来の突き棒を利用した方法は、技術者の感覚が作用してしまい、技術者によって測定値にばらつき(個人差)が生じて、定量的な測定ができないおそれがある。また、室内試験と現場試験との両方を行う必要があるため、作業に手間がかかる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【文献】平川勝彦、他3名、「スランプ試験方法に用いる突き棒の人力貫入による許容打重ね時間評価方法とその実施工への適用」、コンクリート工学年次論文集、Vol.24, No.1, p.1047-1052、2002年
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、ばらつきのない定量的な測定を簡易に実施することを可能としたコンクリートの打重ね評価装置およびコンクリートの打重ね評価測定方法を提案することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
このような課題を解決する本発明のコンクリートの打重ね評価装置は、左右に把持部を有した本体部と、前記本体部の下方に配設された目盛付きの貫入棒と、前記本体部と前記貫入棒との間に介設された荷重計と、前記荷重計の測定結果を表示する表示部とを備えるものである。前記本体部は、土台と、前記土台から左右に延設された把持部とを有している。前記土台は上面が底面に対して傾斜した側面視台形状の部材からなり、前記表示部は前記土台の上面に固定されて、前記荷重計から延設されたケーブルが接続されている。
かかるコンクリートの打重ね評価装置によれば、貫入棒をコンクリートに差し込む際に左右の把持部を把持できるので、貫入棒の垂直性を保持し易くなる。そのため、測定結果が安定し、定量的な測定が可能となる。また、貫入棒に目盛が付してあるため、貫入深さを目視で確認できる。
前記貫入棒が、複数の棒部材を連結することにより形成されていれば、貫入棒の長さ調節が可能となる。そのため、打込み高さが大きい場合や施工サイクル(ロット)ごとに打重ね面までの深さが異なる場合であっても、状況に応じて貫入棒の長さを変化させることが可能である。
また、前記貫入棒の先端に、着脱可能な突き部を備えていれば、コンクリートに含まれる骨材の大きさに応じて突き部を変更できるので、安定した測定が可能となる。
また、前記貫入棒が、軸棒と、前記軸棒に外装された筒状の目盛棒とを備えていれば、目盛りの向きを測定者が見やすい方向に変更することが可能となるので、測定作業を行い易くなる。
【0006】
また、本発明のコンクリートの打重ね評価測定方法は、前記コンクリートの打重ね評価装置を利用するものであって、前記貫入棒をコンクリートに差し込んで前記貫入棒の貫入深さを測定するとともに、貫入棒を差し込んだ際の荷重を測定する工程と、前記荷重に基づいて測定貫入抵抗値を算出する工程と、前記測定貫入抵抗値にコンクリートの貫入抵抗値をモルタルの貫入抵抗値に換算するための係数β及びモルタルの貫入抵抗値をプロクター貫入抵抗値に換算するための係数αを乗じてプロクター貫入抵抗値を算出する工程とを備えている。
かかるコンクリートの打重ね評価測定方法によれば、本発明のコンクリートの打重ね評価装置を利用して、貫入深さと貫入抵抗値とを同時に定量的に測定することができ、また、プロクター貫入抵抗値を算出することで、従来の測定方法を利用した場合と同様の判断基準によりコンクリートを打ち重ねるタイミングを評価することができる。
【発明の効果】
【0007】
本発明のコンクリートの打重ね評価装置およびコンクリートの打重ね評価測定方法によれば、コンクリートを打ち重ねることによりコンクリート構造物を構築する場合において、コンクリートを打ち重ねるタイミングを、ばらつきなく、定量的かつ簡易に評価することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】第一実施形態のコンクリートの打重ね評価装置を示す図であって、(a)は正面図、(b)は側面図である。
【
図3】他の形態に係る把持部の形状を示す平面図である。
【
図4】第一実施形態の貫入棒の各部材を示す図であって、(a)は軸棒の正面図、(b)は目盛棒の正面図である。
【
図5】(a)~(c)は他の形態に係る突き部を示す斜視図である。
【
図6】コンクリートの打重ね評価測定方法を示すフローチャートである。
【
図7】コンクリートの打重ね評価装置による実験結果であって、注水からの経過時間と貫入深さの関係を示すグラフである。
【
図8】コンクリートの打重ね評価装置による実験結果であって、コンクリートの貫入抵抗値とモルタルの貫入抵抗値との関係を示すグラフである。
【
図9】第二実施形態のコンクリートの打重ね評価装置を示す正面図である。
【
図10】第二実施形態の貫入棒の各部材を示す図であって、(a)は軸棒の正面図、(b)は目盛棒の正面図である。
【
図11】(a)および(b)は目盛棒部材の端部の例を示す斜視図である。
【
図12】(a)は第三実施形態のコンクリートの打重ね評価装置を示す正面図、(b)は貫入棒の分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、複数段のコンクリートを積層することにより所定形状のコンクリート構造物を構築する場合において、打設コンクリートの上面にコンクリートを打ち重ねるタイミングを評価するために使用するコンクリートの打重ね評価装置1の実施形態について説明する。
【0010】
<第一実施形態>
図1に第一実施形態のコンクリートの打重ね評価装置1を示す。
図1に示すように、第一実施形態のコンクリートの打重ね評価装置1は、本体部2と、貫入棒3と、荷重計4と、表示部5とを備えている。
本体部2は、
図2に示すように、土台21と、土台21から左右に延設された把持部22,22とを有している。土台21は、アルミニウム合金製で、上面が底面に対して傾斜した、側面視台形状の部材である。なお、土台21の形状は限定されるものではなく、例えば、側面視三角形状(三角柱状)であってもよい。また、土台21の上面は、必ずしも底面に対して傾斜している必要はなく、土台21は四角柱状であってもよい。また、土台21は、中空の部材であってもよいし、底板と左右の縦板により形成された正面視凹字状の部材であってもよい。また、土台21を構成する材料は限定されるものではなく、例えば、ステンレス鋼やスチールであってもよい。
【0011】
把持部22は土台21に固定されたアルミニウム合金製の棒状部材からなる。把持部22は、測定者が両手で掴むことができるように、土台21の左右に設けられたいわゆるハンドルである。左右の把持部22は、土台21の左右の側面にそれぞれ固定され状態で、土台21の側方に延設されている。なお、左右の把持部22,22は、土台21を貫通した一本の棒状部材の左右の端部であってもよい。また、把持部22を構成する部材の形状は限定されるものではなく、例えば、環状であってもよいし(
図3(a)参照)、T字状であってもよい(
図3(b)参照)。また、把持部22を構成する材料は、所定の強度を有していれば限定されるものではなく、例えば、ステンレス鋼、スチール、木材、合成樹脂等であってもよい。
【0012】
貫入棒3は、
図1に示すように、本体部2の下側に配設されている。本実施形態の貫入棒3は、軸棒31と、軸棒31に外装された筒状の目盛棒32と、軸棒31の先端に着脱可能に設けられた突き部33とを備えている。
軸棒31は、所定の長さのステンレス製棒からなる。
図4(a)に軸棒31を示す。本実施形態の軸棒31の外径は16mmとするが、軸棒31の外径寸法は限定されるものではない。
図4(a)に示すように、軸棒31の上端には、雄ネジ部34が形成されている。また、軸棒31の下端面には、ネジ加工が施された凹部(雌ネジ部35)が形成されている。なお、軸棒31の端部の構造は限定されるものではなく、例えば、上端部に雌ネジ部35が形成され、下端部に雄ネジ部34が形成されていてもよいし、上端部と下端部の両方に雄ネジ部34または雌ネジ部35が形成されていてもよい。また、雄ネジ部34または雌ネジ部35は、必要に応じて形成すればよい。さらに、軸棒31を構成する材料はステンレス鋼に限定されるものではなく、例えばアルミニウム合金であってもよい。
【0013】
目盛棒32は、ステンレス鋼製の円筒状部材からなる。
図4(b)に目盛棒32を示す。目盛棒32は、雄ネジ部34を除いた軸棒31の長さと同じ長さを有している。本実施形態の目盛棒32の内径は16mm、外径は20mmである。目盛棒32として、軸棒31の外径と同等以上の内径を有する部材を使用することで、目盛棒32を軸棒31に外装した際に、軸棒31を中心として回転可能となる。目盛棒32の内径は、突き部33の外径よりも小さくすることが好ましい。このようにすると、突き部33によって目盛棒32の脱落を阻止できる。なお、目盛棒32の形状寸法は、軸棒31に応じて決定すればよい。
図4(b)に示すように、目盛棒32(貫入棒3)の外面には目盛が付されている。目盛棒32の目盛は、突き部33の高さを含めた貫入棒3の先端からの長さとする。
【0014】
図4(a)に示すように、本実施形態の突き部33は、目盛棒32の外径と同等の外径(20mm)を有した円柱状部材からなる。突き部33の外径は、目盛棒32の外径以下であることが好ましい。突き部33の下端は平らで、突き部33の上端には軸棒31の雌ネジ部35に螺着可能な雄ネジ部34が形成されている。突き部33を軸棒31の下端に螺着すると、突き部33の上面が目盛棒32の下端に当接する。なお、突き部33の上端の形状は、軸棒31との接合形式に応じて形成すればよく、例えば、軸棒31の下端に雄ネジ部34が形成されている場合には雌ネジ部35が形成されていればよく、また、治具などを介して軸棒31と接合する場合には雄ネジ部34を省略してもよい。
突き部33の外面には目盛りが付されている。突き部33の目盛りは、突き部33の下端をゼロとしている。また、突き部33の目盛りは、突き部33の全周に記されている。なお、突き部33の目盛は、突き部33の外面に刻印されていてもよし、印字されていてもよい。
なお、突き部33の形状は限定されるものではなく、測定対象のコンクリート(配合、骨材量、骨材寸法等)に応じて変更可能である。突き部33の形状は、例えば、下端に向かうにしたがって直径が小さくなる円錐状(
図5(a)参照)や半球状(
図5(b)参照)等であってもよいし、下端が貫入棒3の外径よりも大きな拡径部を有していてもよい(
図5(c)参照)。
【0015】
荷重計4は、
図1に示すように、本体部2と貫入棒3との間に介設されている。荷重計4の上面は、土台21の下面に固定されており、荷重計4の下面には貫入棒3が固定されている。本実施形態では、荷重計4として容量200N(最小値0.05N)の圧縮型ロードセルを使用する。なお、荷重計4の容量は200Nに限定されるものではない。また、荷重計4の形式は、圧縮型ロードセルに限定されるものではない。
荷重計4は、ボルトを介して土台21に固定されている。なお、荷重計4と土台21との固定方法は限定されるものではなく、例えば、アタッチメント等の治具を介して固定してもよい。
荷重計4は、アタッチメント41を介して貫入棒3の上端に固定されている。アタッチメント41は、貫入棒3(目盛棒32)よりも大きな外径を有した円柱状部材からなり、アタッチメント41の下面には雌ネジ部42が形成されている。雌ネジ部42には、貫入棒3の上端に形成された雄ネジ部34を螺着可能である。貫入棒3をアタッチメント41に固定すると、目盛棒32の上端が、アタッチメント41に下面に当接する。すなわち、目盛棒32は、アタッチメント41と突き部33とによって挟持された状態となる。なお、アタッチメント41の下面の形状は、貫入棒3の断面形状よりも大きな形状であることが好ましい。アタッチメント41の形状は円柱状に限定されるものではなく、例えば直方体状であってもよい。また、荷重計4と貫入棒3との固定方法は限定されるものではなく、例えば、荷重計4に貫入棒3の雄ネジを直接螺着してもよい。
【0016】
表示部5は、荷重計4の測定結果を表示する。本実施形態の表示部5は、
図1に示すように、本体部2の土台21上に固定されている。表示部5は、面ファスナー(図示せず)を介して、土台21に着脱可能に取り付ける。なお、表示部5と土台21との固定方法は限定されるものではなく、例えば、ボルトや治具を利用して固定してもよい。
表示部5には、荷重計4から延設されたケーブル43が接続されている。表示部5は、ケーブル43を介して送信された荷重計4に測定結果を表示する。
【0017】
次に、本実施形態のコンクリートの打重ね評価装置1を利用したコンクリートの打重ね評価測定方法について説明する。本実施形態のコンクリートの打重ね評価測定方法は、
図6に示すように、測定工程S1と、測定値算出工程S2と、換算値算出工程S3とを備えている。
測定工程S1では、貫入棒3を既打設コンクリートに差し込んで、貫入深さを測定するとともに荷重を測定する。貫入棒3を既打設コンクリートに差し込む際には、測定者が左右の把持部22,22をそれぞれ右手と左手で握った状態で、貫入棒3の鉛直性を保持した状態で行う。そして、貫入棒を差し込んだ際の荷重が表示部に表示されたら、これを読み取る。また、貫入棒3を差し込める深さまで押し込んだら、既打設コンクリートの表面(上面)における目盛棒32の目盛を読み取ることにより貫入深さを測定する。
【0018】
測定値算出工程S2では、式1により、測定された荷重から測定貫入抵抗値を算出する。本実施形態のコンクリートの打重ね評価装置1による測定値は、荷重(N)であるため、荷重から突き部33の底面積を除して測定貫入抵抗値に換算する。なお、表示部5が、測定貫入抵抗値を自動的に計算して表示するようにしてもよい。
測定貫入抵抗値(N/mm2)=荷重(N)÷突き部底面の面積(mm2) ・・・式1
【0019】
換算値算出工程S3ではプロクター貫入抵抗値と換算貫入深さを算出する。
プロクター貫入抵抗値は、測定貫入抵抗値に係数αおよび係数βを乗じて算出する。測定貫入抵抗値は、コンクリートに貫入棒を差し込んだ際の抵抗値であるため、係数αβを乗じることで、モルタルに対するプロクター貫入抵抗値に換算する。係数βは、本実施形態のコンクリートの打重ね評価装置1を利用してコンクリートの貫入抵抗値を測定した場合とモルタルの貫入抵抗値を測定した場合の関連性により求めた係数である。また、係数αは、コンクリートの打重ね評価装置1を利用して測定したモルタルの貫入抵抗値とプロクター貫入試験機を利用して測定したモルタルの貫入抵抗値との関連性により求めた係数である。
換算貫入深さは、貫入深さの測定値に係数γを乗じて算出する。本実施形態の貫入棒3(目盛棒32)の外径φ1(20mm)は、一般的に貫入深さ測定に使用される突き棒の外径φ2と異なるため、貫入深さの測定値に係数γ(=φ2/φ1)を乗じることで、コンクリートの打重ね評価装置1により測定した貫入深さの測定値を、突き棒を使用した場合の値に換算する。
【0020】
以上、本実施形態のコンクリートの打重ね評価装置1とコンクリートの打重ね評価測定方法によれば、貫入深さと貫入抵抗値とを同時に定量的に測定することができるため、効率的である。また、室内試験を要することなく、現場において貫入深さと貫入抵抗値を把握できるため、打重ねのタイミングを評価することができる。
また、プロクター貫入抵抗値を算出することで、従来の測定方法を利用した場合と同様の判断基準によりコンクリートを打ち継ぐタイミングを評価することができる。
【0021】
また、貫入棒3をコンクリートに差し込む際に左右の把持部22,22を把持できるので、貫入棒3の垂直性を保持し易くなる。そのため、測定者によって測定結果にばらつきが生じることを抑制し、その結果、測定結果が安定し、定量的な測定が可能となる。
また、貫入棒3に目盛が付してあるため、貫入深さを目視で確認できる。貫入棒3の目盛棒32は、軸棒31に対して回転可能であるため、目盛りの向きを測定者が見やすい方向に変更することができる。
また、貫入棒3の先端に固定された突き部33を変更すれば、コンクリートの配合(例えば骨材の大きさ)等に応じた測定が可能となる。
さらに、土台21の上面が傾斜しているため、表示部5の表示面が、把持部22を掴んでいる測定者から確認しやすい。
【0022】
次に、本実施形態のコンクリートの打重ね評価装置1を利用して、コンクリートへの貫入深さと貫入抵抗値を測定した結果について説明する。
(1)貫入深さ
表1に示す配合により生成したコンクリートに対して貫入棒3を差し込んだ場合の貫入深さを測定した(実施例)。また、比較例として、従来のスランプ試験用の突き棒を同じ配合のコンクリートに差し込んで貫入深さを測定した。
図7にコンクリートの注水時間と貫入深さとの関係を示す。
【0023】
【0024】
図7に示すように、コンクリートの打重ね評価装置1による貫入深さと、突き棒による貫入深さは、同様の傾向を示す結果となった。そのため、室内試験や現場計測で蓄積されたデータに基づいて設定された係数γ(=突き棒による貫入深さφ2÷コンクリートの打重ね評価装置1による貫入深さφ1)を、コンクリートの打重ね評価装置1による貫入深さに乗ずることで、従来の測定方法で使用する突き棒の貫入深さを算出することができることが確認できた。そのため、コンクリートの打重ね評価装置1を利用した場合であっても、係数γを乗じることで、従来の測定方法を利用した場合と同様の判断基準によりコンクリートを打ち継ぐタイミングを評価することができる。
【0025】
(2)貫入抵抗値
次に本実施形態のコンクリートの打重ね評価装置1を利用して、表1に示す配合のコンクリートの貫入抵抗値と、表1の配合のコンクリートをスクリーニングしたモルタルの貫入抵抗値とを測定した。試験結果を
図8に示す。
図8は経過時間が同じモルタルの貫入抵抗値とコンクリートの貫入抵抗値との関係を示すグラフである。
図8に示すように、モルタルの貫入抵抗値とコンクリートの貫入抵抗値は概ね比例関係にある。この結果、コンクリートの貫入抵抗値に対して、所定の係数β(
図8の場合はβ=1)を乗じることで、モルタルの貫入抵抗値に換算可能であることが確認できた。また、プロクター貫入抵抗値は、モルタルに対してプロクター貫入試験機を利用して貫入抵抗値を測定した値であるため、本実施形態のコンクリートの打重ね評価装置1を利用して測定したモルタルの貫入抵抗値と同等の線形を示すと推測される。そのため、コンクリートの打重ね評価装置1を利用して測定したモルタルの貫入抵抗値に係数αを乗じることで、プロクター貫入抵抗値を算出可能であると推測される。したがって、係数αと係数βをコンクリートの打重ね評価装置1を利用して測定したコンクリートの貫入抵抗値に乗ずることで、プロクター貫入抵抗値を算出すれば、従来の測定方法を利用した場合と同様の判断基準によりコンクリートを打ち継ぐタイミングを評価することができる。
【0026】
<第二実施形態>
第二実施形態では、コンクリートを打ち重ねることにより、測定者の位置(足場)から測定対象となるコンクリートの上面までの高さが変化する場合について説明する。
図9に第二実施形態のコンクリートの打重ね評価装置1を示す。
図9に示すように、第二実施形態のコンクリートの打重ね評価装置1は、本体部2と、貫入棒3と、荷重計4と、表示部5とを備えている。なお、第二実施形態のコンクリートの打重ね評価装置1の本体部2、荷重計4および表示部5の構成は、第一実施形態で示したものと同様なため、詳細な説明は省略する。
【0027】
貫入棒3の上端は、
図9に示すように、アタッチメント41を介して荷重計4の下面に固定されている。本実施形態の貫入棒3は、軸棒31と、軸棒31に外装された筒状の目盛棒32と、軸棒31の先端に着脱可能に設けられた突き部33とを備えている。なお、突き部33の詳細は、第一実施形態で示した突き部33と同様なため、詳細な説明は省略する。
図10(a)に軸棒31、
図10(b)に目盛棒32を示す。
【0028】
軸棒31は、
図10(a)に示すように、複数の軸棒部材36を軸方向に連結することにより所定の長さに形成されている。軸棒31(貫入棒3)は、軸棒部材36の本数を増減することで所定の長さに変更可能であるため、測定対象となるコンクリートの高さ位置に応じた長さに調整することができる。軸棒部材36は、例えば所定の長さのステンレス製棒からなる。軸棒部材36の上端には、雄ネジ部34が形成されている。また、軸棒部材36の下端面には、ネジ加工が施された凹部(雌ネジ部35)が形成されている。なお、軸棒部材36の端部の構造は限定されるものではなく、例えば、上端部に雌ネジ部35が形成され、下端部に雄ネジ部34が形成されていてもよいし、上端部と下端部の両方に雄ネジ部34または雌ネジ部35が形成されていてもよい。また、雄ネジ部34または雌ネジ部35は、必要に応じて形成すればよい。さらに、軸棒部材36を構成する材料はステンレス鋼に限定されるものではなく、例えばアルミニウム合金であってもよい。
【0029】
目盛棒32は、
図10(b)に示すように、複数の目盛棒部材37を軸方向に連結することにより所定の長さに形成されている。目盛棒32(貫入棒3)は、目盛棒部材37の本数を増減することで所定の長さに変更可能であるため、測定対象となるコンクリートの高さ位置に応じた長さに調整することができる。
目盛棒部材37は、雄ネジ部34を除いた軸棒部材36と同等の長さのステンレス鋼製の円筒状部材からなる。目盛棒部材37の内径は軸棒部材36の外径と同等以上である。目盛棒部材37の外面には目盛りが付されている。目盛棒部材37の目盛りは、突き部33の高さを含めた貫入棒3の先端からの長さとする。また、目盛棒部材37の目盛りは上下の目盛棒部材37の目盛りと連続している。目盛棒部材37の上端と下端には、上下に配設された他の目盛棒部材37の端部と係合する係合部が形成されていてもよい。係合部としては、例えば、
図11(a)に示すように、一方の目盛棒部材37の端部から突出して、他方の目盛棒部材37の内部に挿入可能な突起37aであってもよい。また、係合部は、
図11(b)に示すように、一方の目盛棒部材37の端面から突出する環状の凸部37bと他方の目盛棒部材37の端面に形成された凹部37cであってもよい。
【0030】
第二実施形態のコンクリートの打重ね評価装置1を利用したコンクリートの打重ね評価方法は、第一実施形態で示した内容と同様なため、詳細な説明は省略する。
第二実施形態のコンクリートの打重ね評価装置1によれば、複数の軸棒部材36および目盛棒部材37を連結することで貫入棒3の長さ調節が可能となる。そのため、打込み高さが大きい場合や施工サイクル(ロット)ごとに打継面までの深さが異なる場合であっても、状況に応じて貫入棒3の長さを変化させることが可能である。
その他の第二実施形態のコンクリートの打重ね評価装置1の作用効果は、第一実施形態で示した内容と同様なため、詳細な説明は省略する。
【0031】
<第三実施形態>
第三実施形態のコンクリートの打重ね評価装置1は、貫入棒3として目盛りが付された棒材を使用する点において第一実施形態および第二実施形態のコンクリートの打重ね評価装置1と異なっている。
図12に第三実施形態のコンクリートの打重ね評価装置1を示す。
図12(a)に示すように、第三実施形態のコンクリートの打重ね評価装置1は、本体部2と、貫入棒3と、荷重計4と、表示部5とを備えている。なお、第三実施形態のコンクリートの打重ね評価装置1の本体部2、荷重計4および表示部5の構成は、第一実施形態で示したものと同様なため、詳細な説明は省略する。
【0032】
貫入棒3の上端は、アタッチメント41を介して荷重計4の下面に固定されている。本実施形態の貫入棒3は、ステンレス製の棒材(ロッド)を備えている。棒材の下端部には突き部33が設けられている。突き部33の詳細は、第一実施形態で示した突き部33と同様なため、詳細な説明は省略する。
貫入棒3の外面には目盛が付されている。貫入棒3の目盛は、突き部33の高さを含めた長さとする。
図12(b)に示すように、貫入棒3の上端には、雄ネジ部34が形成されている。また、貫入棒3の下端面には、ネジ加工が施された凹部(雌ネジ部35)が形成されている。なお、貫入棒3の端部の構造は限定されるものではなく、例えば、上端部に雌ネジ部35が形成され、下端部に雄ネジ部34が形成されていてもよいし、上端部と下端部の両方に雄ネジ部34または雌ネジ部35が形成されていてもよい。また、雄ネジ部34または雌ネジ部35は、必要に応じて形成すればよい。さらに、貫入棒3を構成する材料はステンレス鋼に限定されるものではなく、例えばアルミニウム合金であってもよい。また、貫入棒3は、複数の棒部材を軸方向に連結することにより長さが調整可能であってもよい。
【0033】
第三実施形態のコンクリートの打重ね評価装置1によれば、貫入棒3の外面に目盛りが付されているため、軸棒31と目盛棒32とを組み合わせる場合に比べて、メンテナンスが容易である。また、複数の棒部材を軸方向に連結して長さを変更する場合にであっても、長さの変更作業(棒部材同士の脱着)が容易である。
この他の第三実施形態のコンクリートの打重ね評価装置1の作用効果は、第一実施形態で示した内容と同様なため、詳細な説明は省略する。
【0034】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、前述の実施形態に限られず、前記の各構成要素については本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更が可能である。
前記各実施形態では、貫入棒3の先端に突き部33が着脱可能に設けられているものとしたが、突き部33は、必ずしも着脱可能である必要はなく、貫入棒3の先端に固定されていてもよい。
貫入棒3の目盛りは、必ずしも全長にわたって表示されている必要はなく、コンクリートに挿入される区間にのみ表示されていてもよい。
貫入棒3(目盛棒32)に付された目盛りは、貫入棒3の全周にわたって記されていてもよいし、貫入棒3の一部に軸方向に沿って記されていてもよい。また、貫入棒3(目盛棒32)の目盛りは外面に印字されていてもよいし、刻印されていてもよい。
前記実施形態では、突き部33の全周に目盛りが記されている場合について説明したが、突き部33の一部のみ(一部の方向から視認可能な部分)に形成されていてもよい。なお、目盛りが一部に形成されている場合には、貫入棒3の目盛りの位置に合うように、突き部33を貫入棒3の下端に取り付ける。
突き部33の高さは既知なため、突き部33の目盛りは省略してもよい。
突き部33を設けずに、貫入棒3の下端部からの寸法が目盛りに表示されるようにしても良い。
荷重計4および表示部5は、無線通信機能を備えていてもよい。こうすることで、荷重計4の測定値(荷重)をコンピュータ等に送信し、当該コンピュータによって荷重を貫入抵抗値に換算した後、この貫入抵抗値を表示部5で表示することができる。
【符号の説明】
【0035】
1 コンクリートの打重ね評価装置
2 本体部
21 土台
22 把持部
3 貫入棒
31 軸棒
32 目盛棒
33 突き部
34 雄ネジ部
35 雌ネジ部
36 軸棒部材(棒部材)
37 目盛棒部材(棒部材)
4 荷重計
41 アタッチメント
42 雌ネジ部
43 ケーブル
5 表示部