(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-12
(45)【発行日】2023-07-21
(54)【発明の名称】水素センサおよび水素センサの生産方法、測定デバイスならびに水素濃度を測定する方法
(51)【国際特許分類】
G01N 27/04 20060101AFI20230713BHJP
G01N 5/02 20060101ALI20230713BHJP
【FI】
G01N27/04 F
G01N5/02 Z
(21)【出願番号】P 2020105072
(22)【出願日】2020-06-18
【審査請求日】2022-02-25
(32)【優先日】2019-06-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】520220397
【氏名又は名称】マテリオン ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100118913
【氏名又は名称】上田 邦生
(74)【代理人】
【識別番号】100142789
【氏名又は名称】柳 順一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100163050
【氏名又は名称】小栗 眞由美
(74)【代理人】
【識別番号】100201466
【氏名又は名称】竹内 邦彦
(72)【発明者】
【氏名】マリオン ヴィーネッケ
【審査官】村田 顕一郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-035613(JP,A)
【文献】特開平01-307636(JP,A)
【文献】特表2012-507037(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2009/0188316(US,A1)
【文献】JIANG et al.,Low Concentration Response Hydrogen Sensors Based on Wheatstone Bridge,Sensors,Volume 19, Issue 5,2019年03月04日
【文献】小林 直樹 Naoki Kobayashi,ひずみセンサ一体型ブリッジ構造水素ガスセンサ,平成23年電気学会全国大会講演論文集 [CD-ROM] 平成23年電気学会全国大会講演論文集 (第3分冊) The 2011 Annual Meeting Record I.E.E.Japan 2011 ANNUAL MEETING RECORD I.E.E.JAPAN,2011年03月18日
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 27/00-27/10
G01N 27/14-27/24
G01N 5/00-5/04
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
雰囲気中の水素濃度を測定する測定デバイスであって、
測定ユニットと、
雰囲気中の水素濃度を測定する水素センサ
と、
を備え、
該水素センサが、基板を備え、該基板上に、水素吸収センサ媒体が前記雰囲気と連通するセンサ領域において薄膜として適用され、前記センサ媒体が、その体積を前記センサ媒体中の水素濃度に応じて変化させ、前記体積の変化により、前記センサ媒体によって前記基板に導入された機械的歪みの変動が生じ、前記基板が、少なくとも前記センサ領域内でピエゾ抵抗半導体であ
り、
前記測定ユニットが、前記基板のオーム抵抗、特に、前記センサ領域内の前記基板のオーム抵抗を測定するように、かつ、前記測定されたオーム抵抗の値から前記雰囲気中の水素濃度を決定するように構成される測定デバイス。
【請求項2】
前記センサ媒体が、金属または金属合金である請求項1に記載の
測定デバイス。
【請求項3】
前記センサ媒体が、パラジウム、イットリウム、スカンジウム、ランタニド、アクチニド、酸化タングステンおよび/または酸化バナジウムを含む請求項1または2に記載の
測定デバイス。
【請求項4】
前記センサ媒体が、パラジウム合金、または以下の材料、すなわち、パラジウム、イットリウム、スカンジウム、ランタニド、アクチニド、酸化タングステンおよび酸化バナジウムのうちの1つまたは複数からなる混合物、合金もしくは化合物である請求項1または2に記載の
測定デバイス。
【請求項5】
前記センサ媒体が、パラジウムおよび金からなる合金(Pd
xAu
y合金)またはパラジウムおよびニッケルからなる合金(Pd
xNi
y合金)であり
、金またはニッケルの部分が0.5at%から50at%の間(Pd
99.5Au
0.5合金からPd
50Au
50合金、またはPd
99.5Ni
0.5合金からPd
50Ni
50合金)にある請求項1から4のいずれか一項に記載の
測定デバイス。
【請求項6】
前記センサ媒体が、500nm未満である膜厚を有する薄膜
である請求項1から5のいずれか一項に記載の
測定デバイス。
【請求項7】
前記膜厚が、5nmから100nmの間である請求項6に記載の測定デバイス。
【請求項8】
前記膜厚が、5nmから20nmの間である請求項7に記載の測定デバイス。
【請求項9】
前記センサ媒体が、スパッタ堆積によって製作された薄膜である請求項1から
8のいずれか一項に記載の
測定デバイス。
【請求項10】
雰囲気中の水素濃度を測定する方法であって、
水素吸収センサ媒体を前記雰囲気にさらすステップであって、前記センサ媒体が、基板のセンサ領域において薄膜として適用され、前記基板が、少なくとも前記センサ領域内でピエゾ抵抗半導体である、さらすステップと、
前記基板のオーム抵抗、特に、前記センサ領域内の前記基板のオーム抵抗を測定するステップと、
前記測定されたオーム抵抗の値から前記雰囲気中の水素濃度を決定するステップと、
を含む方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、雰囲気中の水素濃度を測定する水素センサであって、基板を備え、基板上に、水素吸収センサ媒体が雰囲気と連通するセンサ領域において薄膜として適用される、水素センサに関し、センサ媒体は、その体積をセンサ媒体中の水素濃度に応じて変化させ、前記体積の変化により、センサ媒体によって基板に導入された機械的歪みの変動が生じる。さらに、本発明は、雰囲気中の水素濃度を測定する測定デバイスであって、測定ユニットとそのような水素センサとを備える測定デバイスに関する。さらに、本発明は、そのような水素センサを生産する方法に関する。最後に、本発明は、雰囲気中の水素濃度を測定する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
水素濃度を空気中などガス中で測定することができる水素センサが、様々な変形で知られている。数多くの市販の水素センサは、わずかな物理的効果に基づいており、物理的効果は測定可能である。これらの物理的効果のうちの1つは、水素を吸収する異なる材料の機能である。センサとして使用される材料中に溶解された水素の量に応じて、測定可能な物理的特性のうちの1つまたは複数が変化する。
【0003】
センサ材料の光学的特性の変化が使用される水素センサが知られている(特許文献1参照)。この文書から知られているセンサの場合、センサ媒体が、電磁放射により照射され、センサ媒体の透過係数が、検出器を用いて測定される。したがって、ある材料がセンサ媒体として使用され、その透過係数は、センサ媒体の測定雰囲気中の水素濃度に応じて変動する。測定された透過係数は、雰囲気中の水素濃度の尺度として使用される。
【0004】
上面に熱的に生成された酸化物層を有するシリコン・ウェーハ上に構造化電極が適用される水素センサが開示されている(特許文献2参照)。水素感受性の半導体酸化物膜(SnO2でドープされたIn2O3)が、その上に適用される。この水素感受性の膜は、例えば、ゾルゲル法で適用される。さらに、この膜の上面には水素選択性膜が設けられる。半導体酸化物膜の電気的特性の変化が、水素濃度の定量的尺度として使用される。
【0005】
別の水素センサが知られている(特許文献3参照)。基板として働くポリマー膜、接着促進膜または層、および接着促進膜または層の上に適用されたパラジウム膜からなる薄膜系が提供される。したがって、パラジウム膜が水素含有雰囲気にさらされた場合、パラジウム膜はその体積を変化させる。この体積の変化により、上記に説明した薄膜系で作り上げられる機械的歪みが生じる。薄膜系は、湾曲バーとして設計される。さらに、機械的歪みにより、湾曲バーが水素濃度に応じて多かれ少なかれ強力に湾曲する。
【0006】
パラジウムからなる膜が基本材料として酸化亜鉛(ZnO)に適用される別の水素センサが知られている(特許文献4参照)。水素を吸収し次第、パラジウムが体積の変化を受ける、前に説明した効果は、機械力を酸化亜鉛に及ぼすためにこのセンサによって使用される。酸化亜鉛が圧電効果を示すので、受動センサを設けることができる。酸化亜鉛に対する圧電歪みは、パラジウム膜がさらされる水素濃度の直接的尺度である。
【0007】
パラジウムの切替可能な物理的特性は、解剖学的レベルで金属中の格子間に溶けている、金属原子と水素との間の相互作用から生じる。水素濃度、すなわち、金属格子中に溶解された水素の量に応じて、材料の体積膨張に関連した、パラジウムの格子定数が変化する。効果は可逆である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】独国特許出願第102006018767号明細書
【文献】米国特許第7,791,150号明細書
【文献】韓国特許第20180074100号明細書
【文献】中国特許第108872314号明細書
【発明の概要】
【0009】
水素センサの改善、測定デバイスの改善ならびに水素濃度を測定する方法の改善、およびそのような水素センサを生産する方法の改善を提供することが本発明の目的である。
【0010】
この目的は、雰囲気中の水素濃度を測定する水素センサであって、基板を備え、基板上に、水素吸収センサ媒体が、雰囲気と連通するセンサ領域において薄膜として適用される、水素センサによって解決され、センサ媒体は、その体積をセンサ媒体中の水素濃度に応じて変化させ、前記体積の変化により、センサ媒体によって基板に導入された機械的歪みの変動が生じ、この水素センサは、基板が、少なくともセンサの領域内でピエゾ抵抗半導体であるという点において開発される。
【0011】
本発明の態様による水素センサの場合、大きい測定範囲の水素濃度を測定することができる。さらに、センサは、他のガスに対する任意の交差感受性を有さず、高速の反応時間を示す。センサは、水素吸収によるセンサ媒体の体積変化を使用する。センサ媒体は、可変機械的歪みを導入し、可変機械的歪みとは、基板内への異なるレベルまたは強度における歪み、水素濃度に応じた歪みを意味する。半導体のピエゾ抵抗特性も使用されるので、機械的歪み、したがって水素濃度は、容易におよび非常に精密に測定することができる。有利には、ピエゾ抵抗半導体のセンサ領域内の機械的歪みは、例えば、半導体上にホイートストーン・ブリッジの形で抵抗構造体を設けることによって、電気的に測定することができる。
【0012】
別の実施形態によれば、センサ媒体は金属または金属合金であることが提供される。
【0013】
別の実施形態によれば、ピエゾ抵抗半導体はシリコンであることが提供される。言い換えれば、水素センサの基板は、少なくともセンサ領域においてシリコンからなる。
【0014】
さらに、センサ媒体は、パラジウム、イットリウム、スカンジウム、ランタニド、アクチニド、酸化タングステンおよび/または酸化バナジウムを含むことが特に提供される。
【0015】
別の実施形態によれば、センサ媒体はパラジウム合金、または以下の材料、すなわち、パラジウム、イットリウム、スカンジウム、ランタニド、アクチニド、酸化タングステンおよび酸化バナジウムのうちの1つまたは複数からなる混合物、合金もしくは化合物であることが提供される。
【0016】
別の有利な実施形態によれば、センサ媒体はパラジウムおよび金からなる合金(PdxAuy合金)、またはパラジウムおよびニッケルからなる合金(PdxNiy合金)であることが提供され、特に、金またはニッケルの部分が、0.5at%から50at%(Pd0.5Au99.5合金からPd50Au50合金、またはPd0.5Ni99.5合金からPd50Ni50合金)の間にある。
【0017】
センサ媒体は水素を吸収し、水素原子が、センサ媒体の原子格子中の格子間に取り込まれる。これは特にセンサ媒体としてのパラジウムまたはパラジウム合金の使用に、ならびに他のすべての引用材料に当てはまる。
【0018】
原子格子中への水素原子の取り込みの間、それ自体が知られている、異なる物理的効果が起きる。しかし、本発明による水素センサによって具体的に使用されていないこれらの効果のうちの1つは、α相からβ相への転移である。これはパラジウムまたはパラジウム合金がセンサ媒体として使用されたときに当てはまる。α相が金属的に不透明であるが、パラジウムのβ相は透明であり、または少なくともα相よりも透明である。この相転移は、センサ媒体として使用されるパラジウム中の水素濃度を光学的に測定するために使用することができる。しかし、これは、測定信号が利用可能となるまでにα相からβ相への転移が起きなければならないという技術的不利点を有する。同じことが、α相が金属的に導電性であり、β相が半導電性であるという物理的効果に基づく測定に当てはまる。相転移は、この効果を使用するセンサにおいても起きなければならない。例えば、パラジウム中のα相は、最大1.68at%の水素濃度まで存在する。これは、上記に説明した相転移を使用するそのようなセンサの場合、低い水素濃度を測定することができないか、または測定できても困難だけが伴うことを意味する。
【0019】
上記に概説した技術的不利点は、有利には、本発明の態様によるセンサを用いて克服される。例えば、パラジウムはα相にあり、すなわち、低い水素濃度が与えられているが、センサ媒体の体積の変化が、格子間に取り込まれた水素原子から起きる。格子定数の変化に関連しているこの体積の変化により、センサ膜が機械的歪みを基板上にさらす。この歪みは、基板のピエゾ抵抗効果を使用して測定することができる。したがって、本発明の態様によるセンサの場合、優れた精度で低い水素濃度を検出することが可能である。
【0020】
上記に説明した物理的および技術的効果は、例としてパラジウムだけを使用して説明する。それらは、言及した他の材料においても起きるが、より大きいまたはより小さい効果を伴う。
【0021】
水素センサは、薄膜として構成されたセンサ媒体が500nm未満である膜厚を有し、特に、膜厚が5nmから100nmの間であり、さらに特に、膜厚が5nmから20nmの間であるという点において、有利にはさらに開発される。
【0022】
前述の膜厚は、実際面で有利であると証明されている。一方では、十分に大きい機械的歪みを、指示範囲内の膜厚を有するセンサ膜を用いて発生させることができ、したがって、測定可能な効果が基板のセンサ範囲内で起きる。他方では、膜を生産する取り組みが管理可能である。適用されたセンサ膜の層間剥離は、大きい膜厚では頻繁に観察可能であるが、起きない。
【0023】
さらに、別の実施形態による水素センサは、センサ媒体がスパッタ堆積を用いて製作される薄膜であるという点において、さらに開発される。
【0024】
好ましくはDCマグネトロン・スパッタ堆積を用いる生産であるスパッタ堆積の代替案として、物理的気相成長法、レーザ蒸着などの他の薄膜技術を使用することができる。
【0025】
別の実施形態によれば、水素センサは、カバー膜がセンサ媒体の上に存在するという点において、さらに開発される。カバー膜は、カバー膜なしでは雰囲気と接触するセンサ媒体の表面に設けられる。カバー膜は水素に対して浸透性である。例えば、カバー膜は、CVD(化学的気相成長法)によって製作されたSiO2膜であることができる。カバー膜は、雰囲気中の攻撃的成分に対する保護膜として働くことができる。カバー膜は、基板の弾性力学特性と、センサ媒体からなる水素吸収膜とを互いに調和させるのに使用することもできる。
【0026】
さらに、目的は、雰囲気中の水素濃度を測定する測定デバイスであって、測定ユニットを備える測定デバイスによって解決され、測定デバイスは、前述の実施形態のうちの1つまたは複数による水素センサによって開発され、水素センサのセンサ媒体は雰囲気と連通し、測定ユニットは、基板のオーム抵抗、特に、センサ領域内の基板のオーム抵抗を測定するように、および測定されたオーム抵抗の値から雰囲気中の水素濃度を決定するように構成される。
【0027】
実際に、センサ膜によって基板に導入された機械的歪みは、抵抗のオーム抵抗、または、例えば、ホイートストーン・ブリッジ回路を使用して、基板中のセンサ領域において形成されたまたは存在するそれらの差を使用してそのような測定デバイスにおいて推論される。機械的歪みを引き起こすセンサ膜の体積の膨張/変化は、機械的歪みの値から推論することができる。この体積の変化は、次いで、センサ媒体によって吸収された水素の量と直接的に相関する。センサ媒体中の水素の濃度が、水素濃度が測定される雰囲気と平衡状態にあるという有効な仮定の下で、この雰囲気中に存在する水素濃度は、測定されたオーム抵抗を使用して直接推論することができる。
【0028】
さらに、同じまたは同様の利点が、水素センサに関してすでに上記に述べたように、測定デバイスに適用される。
【0029】
目的は、前述の実施形態のうちの1つまたは複数による水素センサを生産する方法によってさらに解決され、この方法は、センサ媒体がスパッタ堆積を用いて、特に、マグネトロン・スパッタ堆積を用いて、または物理的気相成長法によって薄膜として基板上に堆積されるという点において開発される。
【0030】
スパッタ堆積を用いるセンサ層の生産は、高効率の方法であると証明されている。
【0031】
目的は、以下のステップ、すなわち、
・水素吸収センサ媒体を雰囲気にさらすステップであって、センサ媒体が、基板のセンサ領域において薄膜として適用され、基板が、少なくともセンサ領域内でピエゾ抵抗半導体である、さらすステップと、
・基板のオーム抵抗、特に、センサ領域内の基板のオーム抵抗を測定するステップと、
・測定されたオーム抵抗の値から雰囲気中の水素濃度を決定するステップと、
によって開発される、雰囲気中の水素濃度を測定する方法によっても解決される。
【0032】
水素センサに関してすでに述べたものと同じまたは同様の利点が、水素濃度を測定する方法にも適用される。
【0033】
他の実施形態によれば、材料が、ピエゾ抵抗半導体として使用され、そのk値が≧2であり、特に、≧5であり、さらに特に、≧10であり、および、またさらに特に、≧25である。本明細書の文脈内で、k値は初期長からの長さの膨張関連変化からなる商と、半導体の抵抗測定経路上の初期抵抗からの抵抗の膨張関連変化との間の比例因子であると理解される。この関係は以下の方程式によっても説明される。
ΔR/R=k*ΔL/L
【0034】
前述の方程式において、Rは長さLに沿って測定されたセンサ領域におけるピエゾ抵抗半導体のオーム抵抗である。ΔRは長さΔLの変化によって引き起こされたオーム抵抗の変化である。長さΔLの変化は、センサ媒体によってこの領域に導入された機械的歪みの結果としてのセンサ領域における基板の変形の結果である。
【0035】
本発明の他の特徴は、特許請求の範囲および添付の図面とともに、本発明による実施形態の説明から明らかとなるであろう。本発明による実施形態は、個々の特徴またはいくつかの特徴の組合せを実現することができる。
【0036】
本発明の範囲内で、「特に(in particular)」、または「好ましくは(preferably)」によって指定される特徴は、任意選択の特徴であると理解される。
【0037】
図面を参照して例示的な実施形態に基づいて本発明の概念を制限することなく本発明を以下に説明し、それによって、本文に、より詳細に説明していない本発明によるすべての詳細に関して明確に図面を参照する。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【
図1】水素センサを有する測定デバイスを示す概略的に簡略化した断面図であり、センサ媒体は水素の濃度にさらされない。
【
図2】この測定デバイスを示す、やはり概略的に簡略化した断面図であり、センサ媒体は水素の濃度にさらされる。
【
図3】水素センサの概略的に簡略化した平面図である。
【
図4】別の水素センサの概略的に簡略化した斜視図である。
【
図5】ホイートストーン・ブリッジ回路の形で接続されるピエゾ抵抗半導体のセンサ領域内で測定された抵抗の回路の簡略化した回路図である。
【
図6】本発明の態様による水素センサを使用して実施された、時間に応じて雰囲気中の異なる水素濃度の測定の例を示すグラフである。
【
図7】本発明の態様による水素センサを使用して実施された、時間に応じて雰囲気中の異なる水素濃度の測定の例を示すグラフである。
【
図8】本発明の態様による水素センサを使用して実施された、時間に応じて雰囲気中の異なる水素濃度の測定の例を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0039】
図面において、同じまたは同様の要素および/または部分を、いずれの場合にも同じ参照番号を用いて提供し、したがって、再提供は常に省略する。
【0040】
概略的に簡略化した断面図において、
図1は、雰囲気4中の水素濃度を測定する測定デバイス2を示す。雰囲気4は、チャネルや接続部などを介して別の雰囲気または水素濃度が測定される雰囲気と接触している。この目的のために、測定デバイス2における雰囲気4を遮断するように、および接続部を介して他の測定雰囲気に雰囲気4を結合するように適切な処置が取られる。測定デバイス2は、例えば、コンピュータ、マイクロコントローラ、または別のユニットにおいて実装される適切なソフトウェア手段である測定ユニット6をさらに備える。測定ユニットは、オーム抵抗を測定するように構成され、この点に関して、例えば、とりわけ電圧源と電圧測定デバイスとを備える。測定デバイス2は、雰囲気4中の水素濃度を測定するように構成される水素センサ8をさらに備える。水素センサ8は、基板10を備え、基板10上に、水素吸収センサ媒体14が、雰囲気4と連通するセンサ領域12において薄膜として適用される。
【0041】
例だけとして、雰囲気4は、センサ領域12の底部側に配列される。センサ媒体14はセンサ領域12の上面上に薄膜として適用され、水素濃度が測定される雰囲気4はそれに応じて上面に配置されることも提供される。しかし、センサ膜14は、例えば、シリコン膜として構成されたセンサ領域12の片側だけに配置され、こちら側、すなわち、センサ膜は水素含有雰囲気4と連通することが必然的に提供される。
【0042】
センサ媒体14は、例えば、金属または金属合金である。センサ媒体14は、例えば、パラジウム、イットリウム、スカンジウム、ランタニド、アクチニド、酸化タングステンまたは酸化バナジウムを含む薄膜であり、これらの材料の合金および混合物も提供される。特に、センサ媒体14は、同時スパッタリング堆積によって生産される、パラジウムおよび金(PdAu)からなる、またはパラジウムおよびニッケル(PdNi)からなる合金であることが提供される。これを達成するために、基板10は、スパッタリング・システムのレシーバに導入され、PdAuまたはPdNi膜が基板10上に直接適用される。
【0043】
基板10上に薄膜として適用されたセンサ媒体14の膜厚dは、例えば、500nm未満であり、さらに、それは、例えば、5nmから100nmの間、および、さらに、例えば、5nmから20nmの間である。
【0044】
センサ媒体14は、その体積をセンサ媒体14中に存在する水素濃度に応じて変化させる材料である。この体積の変動により、センサ媒体14によってセンサ領域12における基板10に導入された機械的歪みが変化する。
図1と2との比較がこの効果を示す。
【0045】
図2は、測定デバイス2をやはり概略的に簡略化した断面図で示し、センサ媒体14が、雰囲気4中に存在する水素の濃度にさらされる。これは、センサ媒体14が膨張し、この膨張が、明確さのために誇張して示す、センサ領域12における基板10の概略的湾曲をもたらすことを意味する。センサ媒体14が基板10の対向する上面に配置された場合、それは対向する方向に湾曲する。基板10は、少なくともセンサ領域12においてピエゾ抵抗半導体である。センサ媒体14中に生じる機械的歪みにより、基板10が少なくともセンサ領域12においてやはり機械的歪みにさらされる。これらの機械的歪みは、ピエゾ抵抗効果を使用することによって測定ユニット6によって検出することができる。これを達成するために、測定ユニット6は、図に示していない電気的接続部を経由して基板10に接触する。
【0046】
測定ユニット6は、オーム抵抗、または、それぞれ、少なくともセンサ領域12において、基板10のオーム抵抗の変化を測定する。雰囲気4中の水素濃度は、測定されたオーム抵抗の値から推論することができる。
【0047】
図3は、水素センサ8の概略的に簡略化した平面図を示す。例として、
図3は、水素センサ8の基板10の、その上にセンサ媒体14がセンサ領域12において適用される側の平面図を示す。基板10は、導電パッド16を備え、導電パッド16を経由して、水素センサ8が測定ユニット6と接触する。導電パッド16を用いて、ホイートストーン・ブリッジ回路の形で接続される抵抗R1、R2の変化を決定することが可能である。
【0048】
図4は、別の水素センサ8の概略的に簡略化した斜視図を示す。センサ領域12内で、これは、矢印で示すように、水素含有雰囲気4にさらされる底部側から適用されたセンサ媒体14を備える。センサ媒体14によって引き起こされた機械的歪みは、抵抗測定の助けにより検出され、導電パッド16において傍受が行われ、傍受によって、基板10のオーム抵抗をセンサ領域12において測定することができる。この場合も、回路は、例えば、ホイートストーン・ブリッジ回路の形であることができる。そうすることにおいて、導電パッド16aの間の抵抗が抵抗R2として測定され、導電パッド16bの間の抵抗が抵抗R1として測定される。
【0049】
図5は、例えば、ホイートストーン・ブリッジ回路の形で接続されるピエゾ抵抗半導体のセンサ領域12内で測定された、オーム抵抗R1とR2との回路の概略的に簡略化した回路図を示す。電圧が、2つの端子18に印加され、電圧分配器として接続された抵抗R1、R2の対角電圧またはブリッジ電圧Uaが測定される。ブリッジ電圧Uaの変化が、抵抗R1、R2の変化の尺度であり、したがって、センサ媒体14によってセンサ領域12における基板10に導入された機械的歪みの直接的尺度である。したがって、雰囲気4中の水素濃度は、ブリッジ電圧Uaから直接読み取ることができる。
【0050】
図6から8は、時間tに応じた雰囲気4中の異なる水素濃度の測定の例を示す。電圧は、垂直軸上にボルトで示すが、水平軸は時間tを秒で示す。垂直軸上に示す電圧は、センサ領域12において優位である機械的歪みの直接的尺度であり、したがって、雰囲気4中の水素濃度の直接的尺度でもある。水素センサ8が大きい測定範囲内の非常に一定の測定結果を供給することが明確に分かる。
図6において、測定は、空気中の1vol%の水素の濃度から開始し、10vol%まで増加する。
図7に示す測定において、空気中の水素の1vol%および10vol%の濃度も測定される。
図6および7の測定は、それぞれ73分に相当する4400秒の最大持続時間にわたって実行された。
図8は、水素濃度が1vol%から10vol%の間で測定された別の測定を示す。水素センサ8は、高い感度、高速の応答挙動(
図6)、時間に対する安定した測定値(
図6)および大部分が再現可能である測定結果(
図7および8)を明白に示す。
【0051】
単独で図面から取られたものを含む、すべての言及した特徴、ならびに他の特徴と組み合わせて開示される個々の特徴は、単独でおよび組み合わせて本発明に不可欠とみなされる。本発明による実施形態は、個々の特徴またはいくつかの特徴の組合せによって実現することができる。
【符号の説明】
【0052】
2 測定デバイス
4 雰囲気
6 測定ユニット
8 水素センサ
10 基板
12 センサ領域
14 センサ媒体
16、16a、16b 導電パッド
18 端子
d 膜厚
R1、R2 抵抗
Ua ブリッジ電圧