(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-12
(45)【発行日】2023-07-21
(54)【発明の名称】安定化剤を含有する医薬品の固形製剤
(51)【国際特許分類】
A61K 31/195 20060101AFI20230713BHJP
A61K 9/20 20060101ALI20230713BHJP
A61K 9/30 20060101ALI20230713BHJP
A61K 47/02 20060101ALI20230713BHJP
A61K 47/12 20060101ALI20230713BHJP
A61K 47/22 20060101ALI20230713BHJP
A61K 47/26 20060101ALI20230713BHJP
A61K 47/38 20060101ALI20230713BHJP
A61P 25/00 20060101ALI20230713BHJP
【FI】
A61K31/195
A61K9/20
A61K9/30
A61K47/02
A61K47/12
A61K47/22
A61K47/26
A61K47/38
A61P25/00
(21)【出願番号】P 2020533518
(86)(22)【出願日】2019-07-29
(86)【国際出願番号】 JP2019029580
(87)【国際公開番号】W WO2020027019
(87)【国際公開日】2020-02-06
【審査請求日】2022-05-26
(31)【優先権主張番号】P 2018142885
(32)【優先日】2018-07-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】307010166
【氏名又は名称】第一三共株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100146581
【氏名又は名称】石橋 公樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113583
【氏名又は名称】北野 範子
(74)【代理人】
【識別番号】100161160
【氏名又は名称】竹元 利泰
(74)【代理人】
【識別番号】100119622
【氏名又は名称】金原 玲子
(72)【発明者】
【氏名】荒井 宏明
(72)【発明者】
【氏名】吉永 眞治
(72)【発明者】
【氏名】尾▲崎▼ ゆりか
【審査官】愛清 哲
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/148263(WO,A1)
【文献】特開平02-247126(JP,A)
【文献】国際公開第2014/163132(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/148264(WO,A1)
【文献】国際公開第2009/041453(WO,A1)
【文献】特開平09-169642(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/00-31/80
A61K 9/00- 9/72
A61K 47/00-47/69
A61P 25/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の式(I)を有する化合物である[(1R,5S,6S)-6-(アミノメチル)-3-エチルビシクロ[3.2.0]ヘプト-3-エン-6-イル]酢酸 一ベンゼンスルホン酸塩と、
【化1】
(i)D-マンニトール、
(ii)カルメロースカルシウム、
(iii)クエン酸無水物又はクエン酸水和物(その含有量は、素錠の総重量に対して、クエン酸水和物として換算した場合に、
1.125-2.9重量%である)及び
(iv)α-トコフェロール(その含有量は、素錠の総重量に対して、0.001-1.0重量%である)を含有する医薬用の錠剤。
【請求項2】
α-トコフェロールの含有量が、素錠の総重量に対して、0.005-1.0重量%である、請求項1に記載の錠剤。
【請求項3】
α-トコフェロールの含有量が、素錠の総重量に対して、0.005-0.5重量%である、請求項1に記載の錠剤。
【請求項4】
α-トコフェロールの含有量が、素錠の総重量に対して、0.05-0.5重量%である、請求項1に記載の錠剤。
【請求項5】
式(I)を有する化合物の含有量が、素錠の総重量に対して、フリー体として換算した場合に1.0-5.0重量%である、請求項1-
4のいずれかに記載の錠剤。
【請求項6】
D-マンニトールが、その平均粒子径が120μm以下のD-マンニトールであり、その含有量が、素錠の総重量に対して、75-85重量%である、請求項1-
5のいずれかに記載の錠剤。
【請求項7】
カルメロースカルシウムの含有量が、素錠の総重量に対して、5-15重量%である、請求項1-
6のいずれかに記載の錠剤。
【請求項8】
さらに、ステアリン酸マグネシウムを含有する請求項1-
7のいずれかに記載の錠剤。
【請求項9】
ステアリン酸マグネシウムの含有量が、素錠の総重量に対して、1-3重量%である、請求項
8に記載の錠剤。
【請求項10】
さらに、メタケイ酸アルミン酸マグネシウムと結晶セルロースとを含有する、請求項1-
9のいずれかに記載の錠剤。
【請求項11】
錠剤がフィルムコーティング錠である、請求項1-
10のいずれかに記載の錠剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、安定化剤としてクエン酸無水物又はクエン酸水和物と、α-トコフェロールとを組み合わせて含有し、さらに、[(1R,5S,6S)-6-(アミノメチル)-3-エチルビシクロ[3.2.0]ヘプト-3-エン-6-イル]酢酸 一ベンゼンスルホン酸塩
([(1R,5S,6S)-6-(Aminomethyl)-3-ethylbicyclo[3.2.0]hept-3-en-6-yl]acetic acid
monobenzenesulfonate、以下、「化合物(I)」と称することがある。) を含有する医薬用の固形製剤または、その医薬用の固形製剤の製造方法に関する。
また、本発明は、化合物(I)を含有する医薬用の固形製剤において、安定化剤としてクエン酸無水物又はクエン酸水和物と、α-トコフェロールとを組み合わせて加えることによって、医薬用の固形製剤中における化合物(I)を安定化させる方法に関する。
【背景技術】
【0002】
次の構造式:
【化1】
で示される化合物(I)は、US7947738(特許文献1)に開示されており、α
2δリガンドとして優れた活性を有することから、鎮痛剤、その他の中枢神経系用薬、その他の末梢神経系用薬、骨格筋疾患治療薬等としての利用が期待されている。また、化合物(I)を含有する医薬組成物は、US9675570、US2018-0042878、EP3272346(特許文献2-4)に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】US7947738
【文献】US9675570
【文献】US2018-0042878
【文献】EP3272346
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明者らは、化合物(I)を含有する医薬用の固形製剤について、より優れた安定性を有する医薬用の固形製剤の研究を鋭意継続するなかで、クエン酸無水物又はクエン酸水和物と、α-トコフェロールとを組み合わせて用いた場合に、さらには、それらの成分を特定の含有量及び/又は含有量比で含有させた場合に、特に優れた安定化効果を示すことを見出して、本発明を完成させた。
【課題を解決するための手段】
【0005】
すなわち、本発明は、以下に説明するように、
次の構造式:
【0006】
【0007】
で示される化合物(I)に、クエン酸無水物又はクエン酸水和物と、α-トコフェロールとを組み合わせて用いた場合に、さらには、それらの成分を特定の含有量及び/又は含有量比で含有させた場合に、特に優れた安定化効果を有することを見出したものであり、化合物(I)とクエン酸無水物又はクエン酸水和物とα-トコフェロールとの組み合わせを含有する医薬用の固形製剤(好適には、錠剤)、およびその安定化された医薬用の固形製剤の製造方法である。
【0008】
本発明の好適な態様は以下に示すとおりである。
[1]
以下の式(I)を有する化合物である[(1R,5S,6S)-6-(アミノメチル)-3-エチルビシクロ[3.2.0]ヘプト-3-エン-6-イル]酢酸 一ベンゼンスルホン酸塩と、
【0009】
【化3】
(i) D-マンニトール、
(ii)カルメロースカルシウム、
(iii)クエン酸無水物又はクエン酸水和物(その含有量は、素錠の総重量に対して、クエン酸水和物として換算した場合に、0.01-10重量%である)及び
(iv)α-トコフェロール(その含有量は、素錠の総重量に対して、0.001-1.0重量%である)を含有する医薬用の錠剤。
【0010】
[2]
クエン酸無水物又はクエン酸水和物の含有量が、素錠の総重量に対して、クエン酸水和物として換算した場合に、1.0-5.0重量%である、[1]に記載の錠剤。
[3]
クエン酸無水物又はクエン酸水和物の含有量が、素錠の総重量に対して、クエン酸水和物として換算した場合に、1.125-2.9重量%である、[1]に記載の錠剤。
[4]
α-トコフェロールの含有量が、素錠の総重量に対して、0.005-1.0重量%である、[1]-[3]のいずれかに記載の錠剤。
[5]
α-トコフェロールの含有量が、素錠の総重量に対して、0.005-0.5重量%である、[1]-[3]のいずれかに記載の錠剤。
[6]
α-トコフェロールの含有量が、素錠の総重量に対して、0.05-0.5重量%である、[1]-[3]のいずれかに記載の錠剤。
[7]
式(I)を有する化合物の含有量が、素錠の総重量に対して、フリー体として換算した場合に1.0-5.0重量%である、[1]-[6]のいずれかに記載の錠剤。
[8]
D-マンニトールが、その平均粒子径が120μm以下のD-マンニトールであり、その含有量が、素錠の総重量に対して、75-85重量%である、[1]-[7]のいずれかに記載の錠剤。
[9]
カルメロースカルシウムの含有量が、素錠の総重量に対して、5-15重量%である、[1]-[8]のいずれかに記載の錠剤。
[10]
さらに、ステアリン酸マグネシウムを含有する[1]-[9]のいずれかに記載の錠剤。
[11]
ステアリン酸マグネシウムの含有量が、素錠の総重量に対して、1-3重量%である、[10]に記載の錠剤。
[12]
さらに、メタケイ酸アルミン酸マグネシウムと結晶セルロースとを含有する、[1]-[11]のいずれかに記載の錠剤。
[13]
錠剤がフィルムコーティング錠である、[1]-[12]のいずれかに記載の錠剤。
【発明の効果】
【0011】
本発明は、化合物(I)に、クエン酸無水物又はクエン酸水和物と、α-トコフェロールとを組み合わせて用いた場合に、さらには、それらの成分を特定の含有量及び/又は含有量比で含有させた場合に、特に優れた安定化効果を有することを見出したものであり、化合物(I)とクエン酸無水物又はクエン酸水和物とα-トコフェロールとの組み合わせを含有する医薬用の固形製剤(好適には、錠剤)、およびその安定化された医薬用の固形製剤の製造方法を提供することを特徴とする。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(成分および好適な含有量)
本発明で有効成分として使用される化合物(I)は、その平均粒子径が、60μm(さらに好適には、40μm)以下であることが好適である。
なお、本発明の「平均粒子径」は、レーザー回折・散乱法によって求めた粒度分布における積算値50%での粒径を意味する。
本発明で使用される化合物(I)の含有量は、素錠の総重量に対して、フリー体として換算した場合に、好適には、0.5-40重量%であり、さらに好適には、0.5-25重量%であり、特に好適には、0.5-10重量%(さらに特に好適には、1.0-5.0重量%)である。
【0013】
本発明で、賦形剤とは、製剤に関する一般的な参考書(例えば、「改訂 医薬品添加物ハンドブック」株式会社薬事日報社、2007年2月28日)に記載されているものであって、錠剤等の製剤化において、一定の大きさや濃度にする目的で添加される成分をいう。例えば、アルギン酸アンモニウム、炭酸カルシウム、無水リン酸水素カルシウム、リン酸水素カルシウム二水和物、第三リン酸カルシウム、硫酸カルシウム、結晶セルロース、粉末セルロース、ケイ酸化結晶セルロース、酢酸セルロース、デキストレート、デキストリン、デキストロール、エリスリトール、エチルセルロース、フルクトース、パルミトステアリン酸グリセリン、イソマルト、カオリン、ラクチトール、乳糖一水和物、無水乳糖、スプレードライ乳糖、炭酸マグネシウム、酸化マグネシウム、マルトデキストリン、マルトース、D-マンニトール、ポリメタクリレート、シメチコン、塩化ナトリウム、ソルビトール、デンプン、アルファー化デンプン、白糖、圧縮用砂糖、製菓用砂糖、白糖球状顆粒、スルホブチルエーテルβ-シクロデキストリン、タルク、トレハロース、キシリトールであり、特に好適には、D-マンニトールが挙げられる。
【0014】
本発明で使用されるD-マンニトールの含有量は、素錠の総重量に対して、好適には、50-90重量%であり、より好適には、75-85重量%である。
本発明で使用されるD-マンニトールの平均粒子径は、150μmよりも小さいことが望ましく、好適には、120μm以下である。
【0015】
本発明で、崩壊剤とは、製剤に関する一般的な参考書(例えば、「改訂 医薬品添加物ハンドブック」株式会社薬事日報社、2007年2月28日)に記載されているものであって、体内の水分を吸って膨張するなどして錠剤を崩壊させ有効成分の放出を容易にする目的で添加される成分をいう。例えば、アルギン酸、アルギン酸カルシウム、カルボキシメチルセルロースカルシウム(カルメロースカルシウム)、カルボキシメチルセルロースナトリウム、結晶セルロース、粉末セルロース、キトサン、コロイド状二酸化ケイ素、クロスカルメロースナトリウム、クロスポビドン、グァーガム、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルスターチ、ケイ酸マグネシウムアルミニウムメチルセルロース、ポラクリリンカリウム、ポビドン、アルギン酸ナトリウム、デンプングリコール酸ナトリウム、デンプン、アルファー化デンプンであり、特に好適には、カルメロースカルシウムが挙げられる。
【0016】
本発明で使用されるカルメロースカルシウムの含有量は、素錠の総重量に対して、好適には、2-20重量%であり、好適には、5-15重量%である。
本発明で使用されるステアリン酸マグネシウムの含有量は、素錠の総重量に対して、好適には、0.5-5重量%であり、さらに好適には、1-3重量%である。
【0017】
本発明で使用されるクエン酸無水物又はクエン酸水和物と、α-トコフェロールは、安定化剤の機能を有する。
本発明のクエン酸無水物又はクエン酸水和物の含有量は、素錠の総重量に対して、クエン酸水和物として換算した場合に、好適には、0.01-10重量%であり、さらに好適には、1.0-5.0重量%、より好適には、1.125-2.9重量%であり、特に好適には、1.5-2.9重量%である。
また、本発明のα-トコフェロールの含有量は、素錠の総重量に対して、好適には、0.001-1.0重量%であり、さらに好適には、0.005-1.0重量%、より好適には、0.005-0.5重量%であり、特に好適には、0.05-0.5重量%である。
【0018】
本発明では、さらに、一般的に製剤化に使用される任意の成分として、賦形剤、崩壊剤、結合剤、流動化剤、滑沢剤、着色剤、光沢化剤等を本発明の効果を損なわない範囲で使用してもよい。
【0019】
本発明が錠剤である場合、各成分の好適な含有量の組み合わせは、素錠の総重量に対して、以下のとおりである。
【0020】
化合物(I)(フリー体として換算):0.5-10重量%
D-マンニトール:50-90重量%(平均粒子径が150μmよりも小さい)
カルメロースカルシウム:2-20重量%
ステアリン酸マグネシウム:0.5-5重量%
クエン酸水和物:1.0-5.0重量%;
α-トコフェロール:0.005-1.0重量%
さらに好適には、以下のとおりである。
化合物(I)(フリー体として換算):1.0-5.0重量%
D-マンニトール:75-85重量%(平均粒子径が120μm以下)
カルメロースカルシウム:5-15重量%
ステアリン酸マグネシウム:1-3重量%
クエン酸水和物:1.5-2.9重量%;
α-トコフェロール:0.05-0.5重量%
さらに好適には、さらに、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム0.15-0.3重量%および/または結晶セルロース0.9-4.5重量%を含有する。
【0021】
(固形製剤の製造方法)
本発明の固形製剤は、
(1)有効成分である化合物(I)の粉末を、賦形剤及び/又は崩壊剤等と混合し、安定化剤を必要に応じて賦形剤及び/又は崩壊剤と倍散混合した後混合し、さらに製剤化に必要な助剤(滑沢剤等)を添加する工程、
(2)得られた粒状粉末を打錠機によって圧縮する錠剤化工程、
(3)そして必要に応じて得られた錠剤の表面をコーティングするコーティング工程、等
を順次おこなうことによって、錠剤、コーティング錠剤等として得られるものである。
【0022】
固形製剤の製造方法としては、
(1)有効成分と添加剤を混合し、そのまま打錠機で圧縮成型する直打法、
(2)添加剤を顆粒にし、それに有効成分を混ぜて圧縮成型するセミ直打法、
(3)有効成分と添加剤を乾式法で顆粒として造粒した後、それに滑沢剤等を加えて、圧縮成型する乾式顆粒圧縮法、
(4)有効成分と添加剤を湿式法で顆粒として造粒した後、それに滑沢剤等を加えて、圧縮成型する湿式顆粒圧縮法等が挙げられる。
また、造粒化方法としては、流動造粒法、高速撹拌造粒法、溶融造粒法(melting granulation)などの手段を用いることができる。
本発明においては、有効成分の粉末を造粒することなく、添加剤の一部を造粒して、それらの混合末を、直接打錠することにより、錠剤を調製する方法が好適である。
【0023】
例えば、本発明の錠剤の製造方法は、以下に説明するとおりである。
有効成分である化合物(I)を粉砕して粒子径を整えた後、賦形剤及び/又は崩壊剤を加えて混合する。さらに、安定化剤に必要に応じて賦形剤及び/又は崩壊剤を加えた倍散混合末をつくる。その後、その混合物を整粒機にて篩過した後、滑沢剤を加え、さらに混合した後、打錠機にて打錠して素錠を得る。
得られた素錠は、コーティング装置にてフィルムコーティング錠とする。
【0024】
本発明を実施例によって更に詳細に説明するが、以下の実施例は本発明を説明するためのものであって、本発明をこれら実施例に限定して解してはならないものとする。
【実施例】
【0025】
(実施例1-6)安定化剤1種もしくは2種配合した際の安定化効果の検討
(1)実施例1
(倍散混合)
dl-α-トコフェロール9.4 gとカルメロースカルシウム62.6 gを乳鉢で十分に混合し予混合末とした。予混合末70.3 gとD-マンニトール244.7 gをポリエチレン袋に入れ混合し、500 μmメッシュを用いて篩過してdl-α-トコフェロール倍散混合末とした。
(混合・篩過)
化合物(I)、D-マンニトール、クエン酸水和物、dl-α-トコフェロール倍散混合末を表1に示す配合比率で量り取り、V型混合機(2 L)を用いて回転数39 rpmにて5分間混合した。
コーミル(U-5、φ1.143、QUADRO)を用いて600 rpmで篩過し、篩過末とした。
次いで、表1に示す配合比率でステアリン酸マグネシウムを量り取って篩過末に加え、V型混合機(2 L)を用いて回転数39 rpmにて5分間混合した。
(打錠)
打錠機(Vela5、菊水製作所)を用い、錠剤質量を100 mgとし、打錠圧約7.5 kNにて成型し、素錠を得た(化合物(I)をフリー体として素錠比2.5重量%含有、オブロング錠、8.4×4.4 mm)。
(コーティング)
撹拌機(MAZELA Z、東京理化機器)を用いてOPADRY(登録商標、本明細書では、ヒプロメロース、タルク、酸化チタン、三二酸化鉄、及び、黄色三二酸化鉄の混合物を示す)を精製水に分散し(12.5w/w%)、コーティング液とした。
素錠に、コーティング装置(ハイコーターFZ20、フロイント産業)を用いて、給気温度75℃、給気風量0.6 m3/min、スプレー速度約3.5 g/min、パン回転数25 rpm、排気温度乾燥終点約58℃にてコーティングを施しコーティング錠を得た。
【0026】
(2)実施例2-4のコーティング錠の調製
実施例2-4についても実施例1の調製方法により表1に示す各成分とその含有量により、それぞれのコーティング錠を調製した。
【0027】
(3)実施例5
(倍散混合)
dl-α-トコフェロール17 gとカルメロースカルシウム42.5 gを乳鉢で混合し、予混合末とした。予混合末56.0 gとカルメロースカルシウム280.0 gをハイスピードミキサー(LFS-GS-1J、アーステクニカ)を用いてアジテーター回転数310 rpm、チョッパー回転数3000 rpmにて10分間混合し、dl-α-トコフェロール倍散混合末とした。
(混合・篩過)
化合物(I)、D-マンニトール、クエン酸水和物、dl-α-トコフェロール倍散混合末を表1に示す配合比率で量り取り、V型混合機(2 L)を用いて回転数39 rpmにて10分間混合した。
コーミル(QC-197S、φ1.143、QUADRO)を用いて600 rpmで篩過し、篩過末とした。
次いで、表1に示す配合比率でステアリン酸マグネシウムを量り取って篩過末に加え、V型混合機(2 L)を用いて回転数39 rpmにて5分間混合した。
(打錠)
打錠機(Vela5、菊水製作所)を用い、錠剤質量を200 mgとし、打錠圧約10 kNにて成型し、素錠を得た(化合物(I)をフリー体として素錠比2.5重量%含有、オブロング錠、10.6×5.6 mm)。
(コーティング)
撹拌機(MAZELA Z、東京理化機器)を用いてOPADRY(登録商標)を精製水に分散し(12.5w/w%)、コーティング液とした。
素錠に、コーティング装置(ハイコーターLABO 30、フロイント産業)を用いて、給気温度70℃、給気風量0.8 m3/min、スプレー速度約8 g/min、パン回転数20 rpm、排気温度乾燥終点約60℃にてコーティングを施しコーティング錠を得た。
【0028】
(3)実施例6
実施例6についても実施例5の調製方法により表1に示す各成分とその含有量により、コーティング錠を調製した。
【0029】
(5)比較例1
(混合・篩過)
化合物(I)、D-マンニトール、カルメロースカルシウムを表1に示す配合比率で量り取り、V型混合機(2 L)を用いて回転数39 rpmにて5分間混合した。
コーミル(U-5、φ1.143、QUADRO)を用いて600 rpmで篩過し、篩過末とした。
次いで、表1に示す配合比率でステアリン酸マグネシウムを量り取って篩過末に加え、V型混合機(2 L)を用いて回転数39 rpmにて5分間混合した。
(打錠)
打錠機(Vela5、菊水製作所)を用い、錠剤質量を100 mgとし、打錠圧約7.5 kNにて成型し、素錠を得た(化合物(I)をフリー体として素錠比2.5重量%含有、オブロング錠、8.4×4.4 mm)。
(コーティング)
撹拌機(MAZELA Z、東京理化機器)を用いてOPADRY(登録商標)を精製水に分散し(12.5w/w%)、コーティング液とした。
素錠に、コーティング装置(ハイコーターFZ20、フロイント産業)を用いて、給気温度75℃、給気風量0.6 m3/min、スプレー速度約3.5 g/min、パン回転数25 rpm、排気温度乾燥終点約58℃にてコーティングを施しコーティング錠を得た。
【0030】
【0031】
(6)評価方法と結果
実施例1-6および比較例1の錠剤を、25℃/75%RH/12週開放条件で放置した後、主要分解物である分解物Aおよび分解物BをUHPLC(1290 Infinity、Agilent)で測定した。
【0032】
(UHPLCの分析条件)
測定波長:215 nm
カラム:Sunshell C18(2.1 mmID×100 mm, 2.6 μm, ChromaNik製)
ガードカラム:SecurityGuard ULTRA C18(2.1mmID, Phenomenex製)
クリーンアップカラム:Ghost Trap DS(7.6 mmID×30 mm, 島津製)
カラム温度:45℃
移動相A:0.01 mol/Lリン酸水素二アンモニウム緩衝液(pH 6.2)
移動相B:メタノール/アセトニトリル/0.01 mol/Lリン酸水素二アンモニウム緩衝液(pH 6.2) 混液(9: 3: 4)
分析時間:35分
注入量:3 μL
サンプルクーラー温度:6℃付近の一定温度
(分解物Aおよび分解物Bの化合物(I)に対する相対保持時間)
分解物A:0.3付近の最大値
分解物B:2.0-2.1
【0033】
その結果を表2(分解物Aおよび分解物Bの量(ピーク面積比から算出)、%)に示した。
安定化剤を使用しないコーティング錠(比較例1)と比較して、安定化剤としてdl-α-トコフェロールまたはクエン酸水和物を使用した場合(実施例1-4)に分解物A量が低減した。dl-α-トコフェロールのみを使用した場合(実施例1-2)、クエン酸水和物のみを使用した場合(実施例3-4)と比較して、分解物Aの生成量は約1/2以下となった。しかしながら、dl-α-トコフェロールのみを使用した場合(実施例1-2)、安定化剤を使用しないコーティング錠(比較例1)よりも分解物B量が増加した。一方、安定化剤としてクエン酸水和物のみを使用した場合(実施例3-4)、安定化剤を使用しないコーティング錠(比較例1)よりも分解物B量が低下した。
【0034】
以上より、主にdl-α-トコフェロールが分解物Aを、クエン酸水和物が分解物Bの生成をそれぞれ抑制すること、またdl-α-トコフェロールを多量に添加することで分解物Bの生成が促進されることが明らかとなった。「新有効成分含有医薬品のうち製剤の不純物に関するガイドラインの改定について(平成15年6月24日付医薬審発第0624001号)」(https://www.pmda.go.jp/files/000156811.pdf)に記される「不純物の構造決定が必要とされる閾値 0.2%」を参考に、分解物生成量の基準を0.2%以下と設定した場合、比較例1および実施例1-4において両分解物の生成量が本基準を同時に満たすものはなかった。
一方、安定化剤としてdl-α-トコフェロールおよびクエン酸水和物を使用した場合(実施例5-6)、安定化剤を使用しないコーティング錠(比較例1)と比較して、分解物Aおよび分解物Bの双方の生成量が低減した。特にdl-α-トコフェロール0.5%、クエン酸水和物2.5%を配合した場合(実施例6)、両分解物生成量は設定した基準値0.2%以下となった。
以上より、dl-α-トコフェロールとクエン酸水和物の両者を至適な範囲で添加することで両分解物の生成を抑制できることが明らかになった。
【0035】
【0036】
(実施例7-13)安定化剤配合量による安定化効果検討
(1)実施例7
(倍散混合)
dl-α-トコフェロール80.0 gと結晶セルロース720.0 gとを高速撹拌造粒機(VG-5L、パウレック)を用いてアジテーター回転数280 rpm、チョッパー回転数3000 rpmにて5分間混合し、dl-α-トコフェロール倍散混合末とした。
(混合・篩過)
化合物(I)、D-マンニトール、カルメロースカルシウム、クエン酸水和物、dl-α-トコフェロール倍散混合末、メタケイ酸アルミン酸マグネシウムを表3に示す配合比率で量り取り、V型混合機(5 L)を用いて回転数34 rpmにて10分間混合した。
コーミル(U-5、φ1.143、QUADRO)を用いて1560 rpmで篩過し、篩過末とした。
次いで、表3に示す配合比率でステアリン酸マグネシウムを量り取って篩過末に加え、V型混合機(5 L)を用いて回転数34 rpmにて7分間混合した。
(打錠)
打錠機(Vela5、菊水製作所)を用い、錠剤質量を100 mgとし、打錠圧約9 kNにて成型し、素錠を得た(化合物(I)をフリー体として素錠比2.5重量%含有、オブロング錠、8.4×4.4 mm)。
(コーティング)
撹拌機(MAZELA Z、東京理化機器)を用いてOPADRY(登録商標)を精製水に分散し(12.5w/w%)、コーティング液とした。
素錠に、コーティング装置(ハイコーターLABO 30、フロイント産業)を用いて、給気温度70℃、給気風量0.8 m3/min、スプレー速度約8 g/min、パン回転数20 rpm、排気温度乾燥終点約60℃にてコーティングを施しコーティング錠を得た。
【0037】
(2)実施例8-11
(倍散混合)
dl-α-トコフェロール80.0 gと結晶セルロース720.0 gとを高速撹拌造粒機(VG-5L、パウレック)を用いてアジテーター回転数280 rpm、チョッパー回転数3000 rpmにて5分間混合し、dl-α-トコフェロール倍散混合末とした。
(混合・篩過)
化合物(I)、D-マンニトール、カルメロースカルシウム、カルメロース、クエン酸水和物、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム、dl-α-トコフェロール倍散混合末を表3に示す配合比率で量り取り、V型混合機(5 L)を用いて回転数34 rpmにて10分間混合した。
コーミル(QC-194S、φ1.143、QUADRO)を用いて600 rpmで篩過し、篩過末とした。
次いで、表3に示す配合比率でステアリン酸マグネシウムを量り取って篩過末に加え、V型混合機(5 L)を用いて回転数34 rpmにて7分間混合した。
(打錠)
打錠機(Virgo、菊水製作所)を用い、錠剤質量を200 mgとし、打錠圧約10 kNにて成型し、素錠を得た(化合物(I)をフリー体として素錠比2.5重量%含有、オブロング錠、10.6×5.6 mm)。
(コーティング)
撹拌機(MAZELA Z、東京理化機器)を用いてOPADRY(登録商標)を精製水に分散し(12.5w/w%)、コーティング液とした。
素錠に、コーティング装置(ハイコーターLABO 30、フロイント産業)を用いて、給気温度70℃、給気風量0.8 m3/min、スプレー速度約8 g/min、パン回転数20 rpm、排気温度乾燥終点約60℃にてコーティングを施しコーティング錠を得た。
【0038】
(3)実施例12
(倍散混合)
dl-α-トコフェロール80.0 gと結晶セルロース720.0 gとを高速撹拌造粒機(VG-5L、パウレック)を用いてアジテーター回転数280 rpm、チョッパー回転数3000 rpmにて25分間混合し、dl-α-トコフェロール倍散混合末とした。
(混合・篩過)
化合物(I)、D-マンニトール、カルメロースカルシウム、クエン酸水和物、dl-α-トコフェロール倍散混合末、メタケイ酸アルミン酸マグネシウムを表3に示す配合比率で量り取り、V型混合機(2 L)を用いて回転数39 rpmにて10分間混合した。
コーミル(U-5、φ1.143、QUADRO)を用いて1560 rpmで篩過し、篩過末とした。
次いで、表3に示す配合比率でステアリン酸マグネシウムを量り取って篩過末に加え、V型混合機(2 L)を用いて回転数39 rpmにて7分間混合した。
(打錠)
打錠機(Vela2、菊水製作所)を用い、錠剤質量を100 mgとし、打錠圧約9 kNにて成型し、素錠を得た(化合物(I)をフリー体として素錠比2.5重量%含有、丸錠、6.5 mm)。
(コーティング)
撹拌機(MAZELA Z、東京理化機器)を用いてOPADRY(登録商標)を精製水に分散し(12.5w/w%)、コーティング液とした。
素錠に、コーティング装置(ハイコーターFZ20、フロイント産業)を用いて、給気温度70℃、給気風量0.5 m3/min、スプレー速度約2 g/min、パン回転数20 rpm、排気温度乾燥終点約54℃にてコーティングを施しコーティング錠を得た。
【0039】
(3)実施例13
(倍散混合)
dl-α-トコフェロール120.0 gと結晶セルロース680.0 gとを高速撹拌造粒機(VG-5L、パウレック)を用いてアジテーター回転数280 rpm、チョッパー回転数3000 rpmにて25分間混合し、得られた混合末16.23 gと結晶セルロース33.77 gを乳鉢で5分間混合し、dl-α-トコフェロール倍散混合末とした。
(混合・篩過)
化合物(I)、D-マンニトール、カルメロースカルシウム、クエン酸水和物、dl-α-トコフェロール倍散混合末、メタケイ酸アルミン酸マグネシウムを表3に示す配合比率で量り取り、V型混合機(5 L)を用いて回転数34 rpmにて10分間混合した。
コーミル(U-5、φ1.143、QUADRO)を用いて1560 rpmで篩過し、篩過末とした。
次いで、表3に示す配合比率でステアリン酸マグネシウムを量り取って篩過末に加え、V型混合機(5 L)を用いて回転数34 rpmにて7分間混合した。
(打錠)
打錠機(Vela2、菊水製作所)を用い、錠剤質量を100 mgとし、打錠圧約9 kNにて成型し、素錠を得た(化合物(I)をフリー体として素錠比2.5重量%含有、丸錠、6.5 mm)。
(コーティング)
撹拌機(MAZELA Z、東京理化機器)を用いてOPADRY(登録商標)を精製水に分散し(12.5w/w%)、コーティング液とした。
素錠に、コーティング装置(ドリアコーター300、パウレック)を用いて、給気温度70℃、給気風量1.2 m3/min、スプレー速度約7 g/min、パン回転数20 rpm、排気温度乾燥終点約60℃にてコーティングを施しコーティング錠を得た。
【0040】
【0041】
(3)評価方法と結果
実施例7-13の錠剤を、25℃/75%RH/12週開放条件で放置した後、主要分解物をUHPLC(1290 Infinity、Agilent)にて、上記と同様の分析条件で測定した。なお実施例12のみ25℃/75%RH/3ヵ月開放条件の結果である。
その結果を表4(分解物Aおよび分解物Bの量、%)に示した。この結果、dl-α-トコフェロールを0.005-0.5重量%、クエン酸水和物を1.125-2.9重量%の範囲でそれぞれ組み合わせて配合することで、両分解物の生成量を「新有効成分含有医薬品のうち製剤の不純物に関するガイドラインの改定について(平成15年6月24日付医薬審発第0624001号)」に記される基準値「不純物の構造決定が必要とされる閾値 0.2%」(0.15以上0.25未満)以下に抑えることができた。
【0042】