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特許7312753レーザ投影システムを用いた風力タービンブレードの製作のための半自動レイアッププロセス
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  • 特許-レーザ投影システムを用いた風力タービンブレードの製作のための半自動レイアッププロセス 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-12
(45)【発行日】2023-07-21
(54)【発明の名称】レーザ投影システムを用いた風力タービンブレードの製作のための半自動レイアッププロセス
(51)【国際特許分類】
   B29C 70/38 20060101AFI20230713BHJP
   B29C 70/16 20060101ALI20230713BHJP
   F03D 1/06 20060101ALI20230713BHJP
   F03D 80/00 20160101ALI20230713BHJP
【FI】
B29C70/38
B29C70/16
F03D1/06 A
F03D80/00
【請求項の数】 20
(21)【出願番号】P 2020536223
(86)(22)【出願日】2018-12-28
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-03-11
(86)【国際出願番号】 US2018067896
(87)【国際公開番号】W WO2019133832
(87)【国際公開日】2019-07-04
【審査請求日】2021-12-27
(31)【優先権主張番号】62/611,803
(32)【優先日】2017-12-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】520005303
【氏名又は名称】ティーピーアイ コンポジッツ,インコーポレーティッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】サリミ,アミルホセイン
(72)【発明者】
【氏名】ラミレズ,カルロス
【審査官】北澤 健一
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第06000801(US,A)
【文献】特表2001-521839(JP,A)
【文献】特表2012-512765(JP,A)
【文献】米国特許第07080441(US,B2)
【文献】米国特許出願公開第2017/0041582(US,A1)
【文献】米国特許第03992240(US,A)
【文献】米国特許出願公開第2007/0236354(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 70/00 -70/88
F03D 1/00 -80/80
G03B 21/00 -21/10
G03B 21/12 -21/13
G03B 21/134-21/30
G03B 33/00 -33/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複合構造体の製造のためのシステムであって、
輪郭形成された表面を有するモールドと、
レイアップ投影発生器であって、前記レイアップ投影発生器は、
複数のモールド部分を画定し、
複数のレイアップセグメントの寸法を特定し、
前記モールドの第1の部分におけるレイアップセグメントのシーケンスを指定し、
前記モールドの第2の部分におけるレイアップセグメントの前記シーケンスを指定し、前記モールドの前記第2の部分におけるレイアップセグメントの前記シーケンスは、前記モールドの第1の部分における前記レイアップセグメントと同期される、レイアップ投影発生器と、
複数のレイアップセグメントの境界を前記モールド上に視覚的に描写する投影装置と、
レイアップセグメントを前記モールドの少なくとも1つの部分に搬送するレイアップ搬送機構と、を備えるシステム。
【請求項2】
前記投影装置は、複数のレイアップセグメントの前記境界を前記モールド上へ同時に描写する、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記投影装置は、各レイアップセグメントの前記境界を前記モールド上へ順次描写する、請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
前記モールドの第1の部分は、風力タービンブレードの根元部分を画定する、請求項1に記載のシステム。
【請求項5】
前記モールドの第2の部分は、風力タービンブレードの先端部分を画定する、請求項1に記載のシステム。
【請求項6】
前記モールドの第1の部分におけるレイアップセグメントの密度が、前記モールドの第2の部分におけるレイアップセグメントの前記密度よりも高い、請求項1に記載のシステム。
【請求項7】
モールドの前記第1の部分におけるレイアップセグメントのための前記レイアップ搬送機構が、前記モールドの前記第2の部分におけるレイアップセグメントのための前記レイアップ搬送機構とは異なる、請求項1に記載のシステム。
【請求項8】
前記レイアップ投影発生器は、前記モールドの上方に配置される、請求項1に記載のシステム。
【請求項9】
前記レイアップ投影発生器及びモールドは、相対移動するように構成される、請求項1に記載のシステム。
【請求項10】
前記投影装置は、光学レーザを介してレイアップセグメントの前記境界を投影する、請求項1に記載のシステム。
【請求項11】
複合構造体の製造方法であって、
輪郭形成された表面を有するモールドを提供することと、
レイアップ投影発生器を提供することであって、前記レイアップ投影発生器は、
複数のモールド部分を画定し、
複数のレイアップセグメントの寸法を特定し、
前記モールドの第1の部分におけるレイアップセグメントのシーケンスを指定し、前記モールドの前記第1の部分におけるレイアップセグメントの前記シーケンスは、一連のサブタスクとして構成され、各サブタスクは開始及び終了を有し、第1のサブタスクの終了点は次の順次のサブタスクの開始の前に生じ、
前記モールドの第2の部分におけるレイアップセグメントの前記シーケンスを指定し、前記モールドの前記第2の部分におけるレイアップセグメントの前記シーケンスは、前記モールドの第1の部分における前記レイアップセグメントと同期される、レイアップ投影発生器を提供することと、
複数のレイアップセグメントの境界を前記モールド上に投影することと、
レイアップセグメントを前記モールドの少なくとも1つの部分に搬送することと、を含む方法。
【請求項12】
前記モールドの第1の部分は、風力タービンブレードの根元部分を画定する、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記モールドの第2の部分は、風力タービンブレードの先端部分を画定する、請求項11に記載の方法。
【請求項14】
前記モールドの前記第1の部分におけるレイアップセグメントは、前記モールドの前記第2の部分におけるレイアップセグメントよりも速い速度で投影される、請求項11に記載の方法。
【請求項15】
前記モールドの前記第1の部分における各レイアップセグメントは、固有の境界投影を有する、請求項11に記載の方法。
【請求項16】
前記モールドの前記第2部分における複数のレイアップセグメントは、前記モールドの前記第1の部分におけるシーケンスの少なくとも2つのサブタスク全体を通して、前記モールドの前記第2の部分上に投影されたままである、請求項11に記載の方法。
【請求項17】
レイアップセグメントの前記シーケンスは、所定の時間間隔である、請求項11に記載の方法。
【請求項18】
前記複合構造体を製造するためのサイクル時間は、レイアップセグメントの前記シーケンスに基づいて定義される、請求項11に記載の方法。
【請求項19】
前記レイアップ投影発生器は、前記モールドの上方に配置される、請求項11に記載の方法。
【請求項20】
前記レイアップ投影発生器及びモールドは、相対移動するように構成される、請求項11に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2017年12月29日出願の米国仮出願第62/611,803号の35 U.S.C§119(e)に基づく優先権の利益を主張するものであり、その全体の内容は参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
開示される主題の分野
開示される主題は、複合構造体を製造するためのシステムに関する。特に、開示される主題は、風力タービンブレードを製造するシステム及び対応する方法に関する。特に、本開示の主題は、風力ブレード製造における従来のレイアップ(layup)プロセスを半自動組立ライン型プロセスに変換する。本明細書に開示されるシステムは、光学(例えば、レーザ)投影システムを含み、この光学投影システムは生産ペースの調整及び制御を提供し、リーン生産(lean manufacturing)ツールとしての標準作業の実施を容易にする。
【発明の概要】
【0003】
開示される主題の目的及び利点は以下の説明に記載され、以下の説明から明らかになり、また、開示される主題の実施によって理解される。開示される主題のさらなる利点は、本明細書及び特許請求の範囲において、並びに添付の図面から特に示される方法及びシステムによって実現され、達成される。
【0004】
これら及び他の利点を達成し、開示される主題の目的に従って、具体化されかつ広く説明されるように、開示される主題は、輪郭形成された表面(contoured surface)を有するモールド(mold)と、レイアップ投影発生器であって、複数のモールド部分(mold section)を画定し、複数のレイアップセグメントの寸法を特定し、モールドの第1の部分(section)におけるレイアップセグメントのシーケンスを指定し、モールドの第2の部分におけるレイアップセグメントのシーケンスを指定し、モールドの第2の部分におけるレイアップセグメントのシーケンスが、モールドの第1の部分におけるレイアップセグメントと同期する、レイアップ投影発生器と、を備える複合構造体の製造システムを含む。また、本システムは、複数のレイアップセグメントの境界をモールド上に視覚的に描写する投影装置と、レイアップセグメントをモールドの少なくとも1つの部分に搬送するレイアップ搬送機構と、を有する。
【0005】
いくつかの実施形態では、投影装置は、複数のレイアップセグメントの境界をモールド上へ同時に描写する。いくつかの実施形態では、投影装置は、各レイアップセグメントの境界をモールド上へ順次描写する。
【0006】
いくつかの実施形態では、モールドの第1の部分(section)が風力タービンブレードの根元部分(root portion)を画定し、モールドの第2の部分(section)が風力タービンブレードの先端部分(tip portion)を画定する。
【0007】
いくつかの実施形態では、モールドの第1の部分におけるレイアップセグメントの密度が、モールドの第2の部分におけるレイアップセグメントの密度よりも高い。
【0008】
いくつかの実施形態では、モールドの第1の部分におけるレイアップセグメントのためのレイアップ搬送機構が、モールドの第2の部分におけるレイアップセグメントのためのレイアップ搬送機構とは異なる。
【0009】
いくつかの実施形態では、レイアップ投影発生器がモールドの上方に配置され、レイアップ投影発生器及びモールドは相対移動するように構成される。
【0010】
いくつかの実施形態では、投影装置は、光学レーザを介してレイアップセグメントの境界を投影する。
【0011】
開示される主題は、輪郭形成された表面を有するモールドを提供することと、レイアップ投影発生器を提供することであって、レイアップ投影発生器は、複数のモールド部分を画定し、複数のレイアップセグメントの寸法を特定し、モールドの第1の部分におけるレイアップセグメントのシーケンスを指定し、モールドの第1の部分におけるレイアップセグメントのシーケンスは、一連のサブタスクとして構成され、各サブタスクは開始及び終了を有し、次の順次のサブタスクの開始前に生じる第1のサブタスクの終了点を有し、モールドの第2の部分におけるレイアップセグメントのシーケンスを指定し、モールドの第2の部分におけるレイアップセグメントのシーケンスは、モールドの第1の部分におけるレイアップセグメントと同期する、レイアップ投影発生器を提供することと、複数のレイアップセグメントの境界をモールド上に投影することと、モールドの少なくとも1つの部分にレイアップセグメントを搬送することと、を含む、複合構造体の製造方法を含む。
【0012】
いくつかの実施形態では、モールドの第1の部分が風力タービンブレードの根元部分を画定し、モールドの第2の部分が風力タービンブレードの先端部分を画定する。
【0013】
いくつかの実施形態では、モールドの第1の部分におけるレイアップセグメントが、モールドの第2の部分におけるレイアップセグメントよりも速い速度で投影される。
【0014】
いくつかの実施態様では、モールドの第1の部分における各レイアップ部分は、固有の境界投影を有する。いくつかの実施形態では、モールドの第2の部分における複数のレイアップセグメントは、モールドの第1の部分におけるシーケンスの少なくとも2つのサブタスク全体を通して、第2のモールド部分上に投影されたままである。
【0015】
いくつかの実施形態では、レイアップセグメントのシーケンスは、所定の時間間隔である。さらに、複合構造体を製造するためのサイクル時間は、レイアップセグメントのシーケンスに基づいて定義することができる。
【0016】
いくつかの実施形態では、レイアップ投影発生器は、レイアップ投影発生器及びモールドが相対移動するように構成された状態で、モールドの上方に配置される。
【0017】
前述の一般的な説明及び以下の詳細な説明はいずれも例示的なものであり、特許請求される開示される主題のさらなる説明を提供することが意図されていることを理解されたい。
【0018】
本明細書に組み込まれ、その一部を構成する添付の図面は、開示される主題の方法及びシステムを例示し、さらに理解するために含まれる。説明と共に、図面は、開示される主題の原理を説明する役割を果たす。
【図面の簡単な説明】
【0019】
本明細書で説明される主題の様々な態様、特徴、及び実施形態の詳細な説明は、添付の図面を参照して提供され、添付の図面は以下で簡単に説明される。図面は例示的なものであり、必ずしも一定の縮尺で描かれているわけではなく、いくつかの構成要素及び特徴は、明確にするために誇張されている。図面は本主題の様々な態様及び特徴を示し、本主題の1つ又は複数の実施形態又は例を全体的に又は部分的に示すことができる。
【0020】
図1】開示される主題に係るレーザ投影システムを用いた風力タービンブレードの製造のための半自動化レイアッププロセスの概略図である。
【0021】
図2】本開示の例示的な実施形態の概略図であり、風力タービンブレードモールド内に投影された種々のレイアップセグメントを有することを示す。
【0022】
図3A】モールド内に堆積され、その上にレイアップラベルが投影されたレイアップセグメントの図である。
図3B】モールド内に堆積され、その上にレイアップラベルが投影されたレイアップセグメントの図である。
図3C】モールド内に堆積され、その上にレイアップラベルが投影されたレイアップセグメントの図である。
【0023】
図4】例示的なレイアップ搬送カートの図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
ここで、開示される主題の例示的な実施形態を詳細に参照し、その一例を添付の図面に示す。開示される主題の方法及び対応するステップは、システムの詳細な説明と併せて説明される。
【0025】
風の運動エネルギーを抽出し、それを発電機に伝えるブレードは、風力タービンシステムの最も重要な構成要素の一つである。ブレードの幾何学的形状、構造的強度及び重量がタービンシステムの効率に直接影響するので、設計者は、構造物の長さを長くし、重量を軽くしながら、ブレードの空力特性に優れることを絶えず試みている。この動的な設計環境に追従するためには、製造方法にも同様に、継続的な多大な改善を与えることが必要である。風力タービンブレード製造業者の最終的な目的は、リーン生産技術の実施と共に新しく出現する製造技術を採用することで、生産性と効率を高めつつブレードの品質を改善することである。
【0026】
組立ライン型の作業は、最終製品を作製するためにサブタスクが順次実行される半自動化プロセスである。製造から製品開発、さらには管理まで、この方法論は、スループットを増加させるために広く採用されている。開示される主題の態様は、特有の組立ライン方法論を用いて風力ブレード製造を改善する新規なシステムを導入し、詳細化することである。投影技術(例えば、モールドに沿って戦略的に配置された3Dレーザ)を利用することにより、開示されるシステムは、従来の完全に手動の重ね合わせレイアッププロセスを半自動組立ライン型作業に変換する。このアプローチの結果、レイアッププロセスは、手続き的(procedural)モードからシーケンスモードに移行し、一連のタスクが設定された順序で隣り合うように構成される。この配置の利点は、品質からサイクル時間、生産性、コミュニケーション及び材料の流れまでの広い範囲にわたって見ることができる。
【0027】
樹脂注入法を用いた複合風力タービンブレードの製造は、レイアップ、注入、及び型閉めの3つの主なステップから成る。前者のレイアップは、図らずも最も人材集約的なステップであり、最終製品の品質に最も大きな影響を及ぼす。この一連のサブプロセスでは、注入プロセスが始まる前に、様々な異なる補強材及びコア材料がモールドの内側に配置される。このステップを最適化することにより、品質と生産性の両方が大幅に改善される。本開示の主題は、この目標を達成するためのシステム及び対応する方法を導入することを目的とする。
【0028】
従来のレイアッププロセスでは、作業指示手順に従って、生産作業者(production associates)は補強層を様々なモールド位置に配置する。この手続き的アプローチでは、重要な要素は、労働バランスを維持し、各サブタスクに最適化された労働力を割り当てることである。生産作業者は、この種の手続き的な作業において制約下にあるという事実のために、標準作業手順の実行を実施することは極めて困難であり、したがって、根本原因の分析を面倒なタスクにする品質問題を追跡することは困難である。その結果、このばらつきにより製造作業における偏差が生じ、ブレードの構造的完全性及び性能を損なう可能性がある。
【0029】
本開示の一態様によれば、すべてのレイアップパターンに対するレーザ投影ファイルが生成される(図1のステップ1)。レイアップパターンは、単一のレイアップセグメント、又は隣接するセグメントの1つ又は複数の境界線(border)/境界(boundary)に沿って接合することができる複数のレイアップセグメントから構成することができる。また、ブレードの根元部分(root section)は、先端部分(tip section)よりも多くのレイアップセグメントを含み、多くの場合、より複雑な幾何学的形状を有する。例えば、根元部分は多くの場合、先端部分のレイアップセグメントよりも大きい曲率半径を有する荷重支持構成要素(例えば、根元インサート)を有する。根元部分はすべての主要な構造層を含んでいるが、先端要素はリフト及び位置決めの目的で、主に局部的な補強層で構成されている(図2)。
【0030】
したがって、ブレードの根元付近の補強層の密度がより高いので、本開示の主題のいくつかの実施形態では、各モールド及びその対応する補強材料が2つの別個の部分又は領域、例えば根元及び先端(図2の破線)に分割される(図1、ステップ2)。図2に例示的な分割線が示されているのはほぼスパン中央であり、したがって、根元部分及び先端部分がほぼ同等の長さで描かれている。しかしながら、第1(例えば、根元)及び第2(例えば、先端)の部分の分割は、各部分の様々な複雑さに応じて、所望に応じてスケーリングできることを理解されたい。また、ブレードは、ブレード長さに沿って変動するレイアップセグメントの複雑さを追跡するために、必要に応じて任意の数の部分に分割することができる。言い換えれば、システムは、ブレードスパンに沿って変化するレイアップ密度又は勾配に適応するのに必要な任意の数の部分を使用することができる。
【0031】
本開示の別の態様によれば、根元部分におけるレイアップタスクは、完了のための所定の時間間隔で定義される。いくつかの実施形態では、この所定の時間間隔が標準的な作業ガイドライン(例えば、所与の従業員数にわたる完了の平均時間)に基づく。追加的に又は代替的に、システムは例えば、機械学習アルゴリズムを介して、レイアップ投影のシーケンスを確立するように訓練することができる。例えば、各タスクの完了時間を記録しつつ、各タスクを手動で実行できる。これは、例えば、オペレータ数、シフト(午前対夕方)、レイアップ材料の種類、ブレードモデル等のパラメータを反復ごとに変化させながら、何回も実行することができる。その結果、特定の持続時間(例えば、平均値、中央値など)を、各レイアップ投影のためのシーケンス期間として設定することができる。さらに、シーケンス時間決定と共に、根元部分に配置される各レイアップセグメントの寸法が特定される。
【0032】
例示的な実施形態では、根元部分におけるレイアップタスクは、2つのステップが互いに重ならない一連のクローズドサブタスクとして順序付けられる(図1のステップ4)。各サブタスクは、開始点と終了点で定義され、次の順次のサブタスクの開始前に第1のサブタスクの終了点が発生する。場合によっては、第1のタスクの終了点が次の順次のサブタスクの開始点と一致することがある。例示的なサブタスクは、ブレードの根元部分内に補強層の各固有ピースをレイアップするプロセスである。対照的に、互いに続くサブタスクは、本明細書でさらに詳細に説明するように、先端部分内で同一の投影(projection)を共有してもよいし共有しなくてもよい。
【0033】
いくつかの実施形態では、先端部分レイアップタスクは、根元部分のタスクの順序付けと並行して定義することができる(図1のステップ3)。先端部分レイアップタスクは、モールドのこの部分内に配置されたレイアップセグメントが典型的には密度が低く、これにより根元部分と比較して完成するのに負担及び時間がより少ないので、より遅いペースで実行されるように設計することができる。効率を最適化するために、モールドの先端部分のレイアップセグメントのシーケンスは、先端レイアップセグメントのシーケンスが完了すると同時に根元レイアップセグメントのシーケンスが完了するように、モールドの根元部分のレイアップセグメントと同期される。例えば、根元部分に10個の投影(projection)があり、先端部分に5個の投影(projection)のみがある(各タスクが完了するのに等しい時間を必要とする)実施形態では、先端部分の各投影が根元部分の2個の投影と相関する(すなわち、持続時間全体にわたって)。このシナリオでは、根元部分内に合計10のサブタスク(レイアップ投影の数に等しい)がある。根元部分レイアップ及び先端部分レイアップは(根元部分が2倍のタスク/レイアップを受けた状態で)一斉に開始し、終了する。最終的に、根元部分レイアップのすべてのシーケンスが完了すると、レイアッププロセス全体が終了する。
【0034】
上述の順序付けタスク(レイアップ持続時間、設置場所、及び設置順序を定義することを含むことができる)が完了すると、オーバーヘッド光学システムを利用して、各ステップのレイアップパターンを(例えば、レーザを介して)投影する(図1のステップ5)。例示的な光学システムは米国特許出願第16/023,891号に提供されており、その全内容は、参照により本明細書に組み込まれる。いくつかの実施形態では、ブレードスパン全体に沿ったレイアップパターンを視覚的に描くために、単一のオーバーヘッド投影装置を使用することができる。いくつかの実施形態では、複数のオーバーヘッド投影装置を使用して、選択部分専用の投影装置のサブセットを用いてレイアップパターンを視覚的に描くことができる。いくつかの実施形態では、投影装置のサブセットが種々のモールド部分のまわりに均等に分布される(例えば、根元部分のために1つの投影装置、及び先端部分のために1つの投影装置)。他の実施形態では、根元部分がより高密度で複雑なレイアップ構成を必要とするので、モールドの先端部分よりもモールドの根元部分の周りに、より高濃度の投影装置を使用することができる。いくつかの実施形態では、約4~5個の投影装置がモールドの根元部分の周りに使用され、約3~4個の投影装置がモールドの先端部分の周りに使用される。加えて、投影装置は、モールド部分に対して相対移動(例えば、X、Y、Z軸のいずれか又は全てに沿った回転及び/又は並進)するように構成することができる。また、各レイアップ投影装置は、互いに対して独立して移動するように構成することができる。
【0035】
本開示の一態様によれば、根元部分の各レイアップパターンに固有の投影ファイルをマッピングすることができる。図2は、本開示の例示的な実施形態を示し、根元部分における3つの投影ファイル(ステップi-1、ステップi、及びステップi+1)を示し、各レイアップセグメント(それぞれXA、XB、及びXC)は、固有の寸法/境界を有するように示されている。根元部分の大きさに起因して、補強層は、典型的には全てが一体として敷設されるわけではない。代わりに、根元部分レイアップセグメントは、翼弦方向に区分される(図示の実施形態では3つの部分:XA、XB、及びXCで示される)。これらの根元部分と、それらが前縁側にあるか後縁側にあるかによって、レイアッププロセスの順序が決まる。赤い線は、各セグメントの境界を示す。
【0036】
対照的に、複数の投影ファイルは、根元に比べて先端の層の数が少ないことを補償するために、先端部分において同一のレイアップパターンを共有する。図2は、本開示の例示的な実施形態を示し、先端部分の3つの投影ファイル(ステップi-1、ステップi、及びステップi+1)を示し、2つのレイアップパターン、例えば、共通の寸法/境界を有するように示される先端セグメント「TA」(ステップi-1及びステップiに示される境界を参照)を有する。いくつかの実施形態では、先端部分におけるこの共通のレイアップパターンは、投影される固定数の介在パターンに基づいて繰り返される。いくつかの実施形態では、この共通のレイアップパターンは、不均一に繰り返される。図2に示される例示的な実施形態では、単一のレイアップセグメントのみが、任意の所与のステップの間、モールドの根元部分に投影される。したがって、レイアップセグメントXAのみが根元部分のステップi-1の間に投影され、レイアップセグメントXBのみが根元部分のステップiの間に投影され、レイアップセグメントXCのみが根元部分のステップi+1の間に投影される。
【0037】
逆に、先端部分は、複数のステップにわたって共通のレイアップ投影を維持することができる。例えば、先端セグメントTAはステップi-1の間に先端部分に投影されることができ、この同じセグメントTAは、ステップiの間にも投影されたままとすることができる。後続のレイアップセグメントが先端部分に投影されるとき、この後続のレイアップセグメント、例えばTCは、ステップi+1で投影される(そして、前に投影されたセグメントTAは完了したと予想されるので除去される)。
【0038】
いくつかの実施形態では、根元部分は、任意のステップ/タスク中に投影される単一のレイアップセグメントのみを有することができ、一方、先端部分は、単一のステップ/タスク中に示される複数の(例えば、4までの)投影を有することができる。この構成は、モールドのこの部分(図2)における労働力の割当てを減少させることができるという点で有利である。投影装置は、投影ペースに合わせて、シーケンスプロセスを、オペレータが手動レイアッププロセスを実行するよう課される半自動運転に変更する(図1のステップ6)。
【0039】
追加的に又は代替的に、いくつかの実施形態では、レイアップパターンの投影が同時に(すなわち、一度にすべて)実行されてもよく、又はパターンは一度に1つずつ選択的かつ個別に投影されてもよい。さらに、選択パターン描画モードにあるとき、あるパターンから別のパターンへの切り替えは、例えば、リモートコントローラによって実行され得る。
【0040】
さらに、本開示のシステムは、各レイアップセグメントをモールドに搬送するためのレイアップ搬送機構を有する。いくつかの実施形態では、複数のレイアップセグメントは、バルクでモールドに搬送され、他の実施形態では、必要に応じて、又はジャストインタイムのスケジュールでレイアップセグメントを搬送する。いくつかの実施形態では、複数のレイアップ搬送機構(例えば、コンベヤシステム)を使用することができ、先端部分専用のものを1つ、根元部分専用のものを1つ使用することができる。レイアップ搬送機構は、例えば、ブレードスパンと平行に、ブレードモールドに対して移動するように構成することができる。加えて、いくつかの実施形態では、レイアップ搬送機構は、ブレードを翼弦方向に横断させて、レイアップセグメントの、モールド内のその指定された/投影された位置への直接の分配を容易にすることができる。
【0041】
図3~4は、図4の可動カート100として構成された例示的なレイアップ搬送機構を示す。レイアップ搬送機構100は、複数の別個のホルダを有し、各ホルダは特定のレイアップ材料の供給物(10、20など)を保持し、分配するように指定される。レイアップ材料のスピンドル(10、20など)は、例えば材料の種類、プライ(ply)の厚さ、スピンドルの長さなど、さまざまなパラメータに基づいて識別できる。各ホルダには、レイアッププロセス中にモールド内で照明/描写されるレイアップ投影ラベルに対応する識別コードが付されている。
【0042】
例えば、図3Aはモールドの根元部分におけるレイアップ投影を示し、ここで、プライの識別コード「6AB」が(ピンクで示される、そのレイアップセグメントの境界/境界線と共に)モールド上に投影される。この識別コード「6AB」は、レイアップ搬送機構100のどのホルダが適切なレイアップ材料のスピンドルを含み、このシーケンス中に適用されるべきであるかをオペレータに知らせる。使用中、オペレータはレイアップ搬送機構100上の一致するスピンドルラベル「6AB」を探し、所望のレイアップセグメントを取得し、次いで、そのレイアップセグメントの物理的境界/境界線が投影された境界に一致するように(シーケンス投影によって割り当てられた時間枠内で)、そのレイアップセグメントをモールド内に設置する。
【0043】
次に、図3Bに示すように、オペレータは、モールドの根元部分におけるレイアップ投影を観察し、ここで、プライの識別コード「7A」が(緑色で示される、そのレイアップセグメントの境界/境界線と共に)モールド上に投影される。同様に、オペレータは、レイアップ搬送機構100上の一致するスピンドルラベル「7A」を探し、所望のレイアップセグメントを取得し、次いで、そのレイアップセグメントの物理的境界/境界線が投影された境界に一致するように(シーケンス投影によって割り当てられた時間枠内で)、そのレイアップセグメントをモールド内に設置する。
【0044】
図3Cは、識別コード「L 3B」が(ピンクで示される、そのレイアップセグメントの境界/境界線と共に)モールド上に投影される、モールドの先端部分における例示的なレイアップ投影を示す。ここでも、オペレータは、レイアップ材料の同様にコード化された(codified)供給物の位置を特定し、そのレイアップセグメントの物理的境界/境界線が投影された境界と一致するように(シーケンスプロジェクションによって割り当てられた時間枠内で)、モールド内に設置するための適切なサイズを選択する。
【0045】
図4に示すように、レイアップ搬送機構100は、多数の指定スキームを含む識別コードの表を有することができる(例えば、「L」などの接頭辞は「Lower Mold」を示すことができ、数字は、モールド内のシーケンス順序及び/又は位置を示し、色は、材料の種類、相対的な複雑さ、又はシーケンス時間間隔などの追加情報をオペレータに伝える)。
【0046】
本開示の主題では、投影装置/コントローラが、所定の時間間隔スキームに従って投影ファイルを自動的に変更するように装備される。これらのタイムスロットは、各プロセスステップについての標準作業の実施に基づいて推定される(いくつかの実施形態では、例えば、生産チームメンバーの数、作業シフト、及び生産チームスキルレベルのパラメータの関数である生産性時間マージンを含むことができる)。このマージンを使用して、オペレータがそのレイアップセグメントの設置を完了するのに適切な/十分な時間だけレイアップパターンを投影し、次に、次のレイアップ投影に進み、それによってオペレータが予測された総合サイクル時間に従うペースを維持できるようにすることによって、様々なサイクル時間パターンを生産フロアで実施することができる。レイアッププロセスの終わりに、全サイクル時間は、全てのレーザ投影時間間隔の合計に等しくなる。したがって、本開示は、製造業者がブレードのレイアップのための全サイクル時間を、確実に、かつ動作の開始に先立って正確に予測することを可能にする。
【0047】
順序付けられたレイアップパターンの自動投影は、生産のためのサイクル時間を設定するだけでなく、オペレータがプロセスステップを切り替えたり、シーケンスの順序を変更したりするための余地又は自由度を残さないので、標準作業の実施を強制する。これは、製造における一貫性を達成し、ブレードの品質向上に不可欠なトレーサビリティを最大化する上での鍵となる要素である。
【0048】
本開示の別の態様によれば、いくつかの実施形態では、生産が遅れ、自動化された投影ペースに追いつかない場合のための手順を組み込むことができる(図1のステップ7)。これは、生産性の問題又は予期しない材料品質の問題などの問題に起因する可能性がある。この状況に対処するために、警告システムをスーパバイザに提供することができる。いくつかの実施形態では、一旦起動されると、この信号は自動投影を直ちに停止し、問題は生産スーパバイザに注意を喚起する。問題が解決されると、投影は進行中のサブステップに一致するように戻ることができ、自動プロセスが再開される。
【0049】
この点に関し、追加のガイダンスをオペレータに提供して、アラームを作動させる切迫した危険性をオペレータに警告することができる。例えば、レイアップパターンを視覚的キュー(例えば、頻度を増加させて点滅させる)で描写して、その特定のレイアップパターンに対する割り当てられた時間間隔が満了しようとしていることをオペレータに知らせることができる。追加的に又は代替的に、選択されたレイアップパターンを最初に色分けされたパターンでアウトライン化して、この特定のレイアップパターンの時間が増加/減少し、複雑さが増し、又はオペレータによる何らかの特別な動作を必要とすることをオペレータに警告することができる。
【0050】
したがって、開示される主題によれば、本明細書に開示される半自動化レイアッププロセスは、風力タービンブレードなどの成形複合材の生産性及び生産効率を改善する(ただし、開示されるシステム及び方法は、任意の成形複合構造体に使用できることを理解されたい)。さらに、開示される最適化方法は、製造フロア上のコミュニケーション及び材料の流れを容易にしつつ、標準作業手順の実施を可能にする。
【0051】
開示される主題は、特定の好ましい実施形態に関して本明細書に記載されているが、当業者は、開示される主題に対して、その範囲から逸脱することなく、様々な修正及び改善がなされ得ることを理解するであろう。したがって、開示される主題は、添付の特許請求の範囲及びそれらの均等物の範囲内にある修正及び変形を含むことが意図される。
【0052】
さらに、開示される主題の1つの実施形態の個々の特徴は、本明細書で論じられるか、又は、他の実施形態においてではなく、1つの実施形態の図面に示されてもよく、1つの実施形態の個々の特徴は、別の実施形態の1つ又は複数の特徴、又は複数の実施形態からの特徴と組み合わされてもよいことが明らかである。
図1
図2
図3A
図3B
図3C
図4