(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-12
(45)【発行日】2023-07-21
(54)【発明の名称】溶媒の組合せを使用する生体高分子の加工方法
(51)【国際特許分類】
A61K 9/00 20060101AFI20230713BHJP
A61K 47/36 20060101ALI20230713BHJP
【FI】
A61K9/00
A61K47/36
(21)【出願番号】P 2020542213
(86)(22)【出願日】2018-10-09
(86)【国際出願番号】 IB2018057790
(87)【国際公開番号】W WO2019073363
(87)【国際公開日】2019-04-18
【審査請求日】2021-09-14
(31)【優先権主張番号】102017009801.8
(32)【優先日】2017-10-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】520128266
【氏名又は名称】ソリープラス ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【氏名又は名称】市川 さつき
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【氏名又は名称】服部 博信
(74)【代理人】
【識別番号】100123766
【氏名又は名称】松田 七重
(72)【発明者】
【氏名】アンデルセン リヒャルト ドルフ
(72)【発明者】
【氏名】アソグバ-ザント アネッテ
(72)【発明者】
【氏名】マルツェヴァ エレナ
(72)【発明者】
【氏名】フォークト アンドレアス
【審査官】辰己 雅夫
(56)【参考文献】
【文献】特表2015-502354(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K9/00-9/72
A61K47/00-47/69
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
生体高分子を加工する方法であって、
乾燥微粒子形態の生体高分子を用意する工程を含み、
少なくとも1つの医薬品有効成分を用意する工程を含んでもよく、
溶媒の単相多成分系を用意する工程であって、溶媒系が、前記生体高分子に対する良溶媒である少なくとも1つの溶媒及び前記生体高分子に対する貧溶媒である少なくとも1つの溶媒を含
み、貧溶媒が、生体高分子の完全な溶解を妨げるのに有効な量で溶媒系に存在する、工程と、
乾燥微粒子形態の生体高分子と溶媒の単相多成分系とを混合する工程
であって、少なくとも1つの医薬品有効成分を混合してもよく、混合により生体高分子の膨潤がもたらされるが生体高分子は完全には溶解しない工程と、
少なくとも1つの医薬品有効成分が混合されていてもよい、生体高分子及び溶媒の混合物を、機械的な手段により均質化
して均質な膨潤を有する生体高分子マトリックスを生成する工程と
を含む、方法。
【請求項2】
前記生体高分子マトリックスから過剰な溶媒を除去する工程をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
生体高分子がヒアルロン酸である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
生体高分子がヒアルロン酸またはその塩であり、良溶媒が水であり、貧溶媒がエタノールまたはイソプロパノールである、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
生体高分子マトリックスをキャビティまたは型中で加圧し、キャビティまたは型から除去する前、またはその後に、乾燥および/または凝固することをさらに含む、請求項
4に記載の方法。
【請求項6】
生体高分子マトリックスでマイクロニードルを形成することをさらに含む、請求項
4に記載の方法。
【請求項7】
生体高分子マトリックスでフィルムを形成することをさらに含む、請求項
4に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(優先権の主張)
このPCT国際特許出願は、本明細書において、2017年10月12日に出願された独国優先権特許出願第102017009801.8号に対する優先権を主張し、その内容すべては、全体として本明細書に組み込まれる。
本発明は、主に、溶媒/溶媒混合物、または多相溶媒系を用いる生体高分子の加工方法に関し、これを用いることで、前記高分子の機械的および定性的な特徴を変更することができ、前記高分子をより容易に加工することができる。
【背景技術】
【0002】
医薬製剤または医薬は、典型的には、賦形剤を用いて好適なガレノス形態へと変換される、1つまたは複数の活性物質からなる。活性成分は、ヒトまたは動物の対象に対する、薬理学的か、免疫学的か、または新陳代謝の活性効果を有することもあり、1つまたは複数の疾患の予防、処置、または治療に役立つ。活性成分は、天然由来であってもよく、合成的に、または生物工学的組み換え方法により生成してもよい。
前記活性成分を効率的で妥当性のある様式に適用可能とするために、良好なガレノス製剤が必要であり、これは、活性物質のタイプ、量、および意図される影響に依存する。公知の薬物製剤の例は、固体(錠剤、散剤、坐薬、硬カプセル剤、軟カプセル剤、マイクロニードル等)、半固体(クリーム剤、軟膏剤、乳剤、ゲル剤、懸濁剤等)、および液体(液剤、フォーム等)であり、様々な手法(例えば、経口、頬側、血管内、筋肉内、眼内、皮下、局所、膣、直腸、鼻腔等)に適用できる。これらの多数の剤形、活性成分の広い範囲、ならびに正しい投薬量および良好なバイオアベイラビリティで十分な期間にわたって活性成分を適用するのが必要なため、ガレノス製剤および薬物送達の本分野における新規な発展に対する高い需要がある。特に、生物学的製剤の適用に関しては、それらを加工する際に薬物を破壊しない新規な製剤が必要である。
(生体)高分子には多数の多様な利点(それに限定されるものではないが、高い生体適合性、良好な生分解性、環境に対する少ない悪影響、天然資源からの抽出による生成、活性薬剤に対する低い反応性、および高分子タイプに依存する他多数の利点を含む)があるため、化粧品および医薬分野においては多くの様々な製品に関して高い必要性が存在する。しかしながら、前記生体高分子のタイプ、量、および意図される使用に基づいて、加工の問題および品質の問題を、典型的には、解決しなければならない。これらの問題は、例えば、無菌性、生成における再現可能な品質、分解生成物の安定性、純度、および忌避等を含む。
上記に鑑み、生体高分子を利用するための改善された加工法のための、意義深く、長年にわたるがいまだに満たされていない必要性が存在する。
【発明の概要】
【0003】
本発明は、その中に少なくとも1つの医薬品有効成分が存在する、特定の代表的な方法および製剤、例えば、本明細書に記載される特定の方法および製剤を企図していることが理解されよう。
本発明は、医薬品有効成分が、方法もしくは加工の間のいかなる時点にも存在しないまたは使用されない、他の代表的な方法、加工、および製剤も企図しており、したがって、本発明は、医薬品有効成分が最終的な製剤中に存在しない製剤も企図していることも理解されよう。したがって、特定の代表的な方法、加工、および製剤が本明細書に記載される場合、本発明は、そのような方法、加工、および製剤が、適切かつ好適に、必要または要望に応じて適合または修正されてもよく、その結果、医薬品有効成分が、方法または加工の間のいかなる時点にも存在しないかまたは使用されず、その結果、医薬品有効成分が、最終的な製剤中に存在しないことも企図していることも理解されよう。
したがって、そのいくつかの例が本明細書に記載される本発明の方法および加工は、少なくとも1つの医薬品有効成分を含むことが任意であるように、実行および実装できることが理解されよう。
【0004】
本発明の一実施形態では、生体高分子を加工する方法は、乾燥微粒子形態の生体高分子を用意する工程と;任意に、少なくとも1つの医薬品有効成分を用意する工程と;溶媒の単相多成分系を用意する工程と;混合物を、機械的な手段により均質化する工程とを含む。別の実施形態では、方法は、過剰な溶媒を除去する工程をさらに含む。さらに別の実施形態では、生体高分子はヒアルロン酸である。
本発明の別の実施形態では、生体高分子を加工する方法は、乾燥微粒子形態の生体高分子を用意する工程と;任意に、少なくとも1つの医薬品有効成分を用意する工程と;溶媒の多相系を用意する工程と;用意した成分を、機械的エネルギーの供給により均質な混合物が得られるまで均質化する工程とを含む。別の実施形態では、方法は、過剰な溶媒の除去をさらに含む。さらに別の実施形態では、生体高分子はヒアルロン酸である。
特定の実施形態が、乾燥微粒子形態の少なくとも1つの医薬品有効成分を利用する一方で、本発明は、本発明の方法、加工、および製剤が、他の実施形態では、他のあらゆるタイプの物理的状態で存在する1つまたは複数の医薬品有効成分、ならびに必要または要望に応じてあらゆる好適かつ適切な溶媒系に溶解する医薬品有効成分を利用する場合もあることも企図していることも理解されよう。
【図面の簡単な説明】
【0005】
【
図1】生体高分子を加工する1つの代表的な方法を図示する図である。
【
図2】生体高分子を加工する別の代表的な方法を図示する図である。
【発明を実施するための形態】
【0006】
ここで、本発明の様々な態様および実施形態に詳細に言及する。本発明の特定の好ましい実施形態の以下の述語および説明は、本発明の原理の理解を促進するように提供される。しかしながら、本発明を限定することが意図されないこと、ならびに本発明の原理のさらなる改変、修正、および応用も含まれていることが理解されるであろう。例えば、製造の例のために本明細書に記載されている情報(それに限定されるものではないが、成分の量、装置パラメーター、反応条件等を含む)は、本発明の全範囲を例示する目的のためだけのものである。
製作、製造、加工、または生成などの用語は、本明細書において交換可能に使用されてもよい。
本発明に従って、さらに加工することにより多くの可能な製品を得ることができる高分子ベース原材料を、例えば、活性物質の適用のため、化粧的活性物質の効率的な投与のため、身体への移植のため、創傷被覆のため等に生成できる。
本発明が、その中に少なくとも1つの医薬品有効成分が存在する、特定の代表的な方法および製剤、例えば、本明細書に記載される特定の方法および製剤を企図していることが理解されよう。
【0007】
本発明は、医薬品有効成分が、方法もしくは加工の間のいかなる時点にも存在しないまたは使用されない、他の代表的な方法、加工、および製剤も企図しており、したがって、本発明は、医薬品有効成分が最終的な製剤中に存在しない製剤も企図することも理解されよう。したがって、特定の代表的な方法、加工、および製剤が本明細書に記載される場合、本発明は、そのような方法、加工、および製剤が、適切かつ好適に、必要または要望に応じて適合または修正されてもよく、その結果、医薬品有効成分が、方法または加工の間のいかなる時点にも存在しないかまたは使用されず、その結果、医薬品有効成分が、最終的な製剤中に存在しないことも企図していることも理解されよう。
【0008】
したがって、そのいくつかの例が本明細書に記載される本発明の方法および加工は、少なくとも1つの医薬品有効成分を含むことが任意であるように、実行および実装できることが理解されよう。
本発明の一実施形態では、生体高分子を加工する方法は、乾燥微粒子形態の生体高分子を用意する工程と;任意に、乾燥微粒子形態の少なくとも1つの医薬品有効成分を用意する工程と;溶媒の単相多成分系を用意する工程と;混合物を、機械的な手段により均質化する工程とを含む。別の実施形態では、方法は、過剰な溶媒を除去する工程をさらに含む。さらに別の実施形態では、生体高分子はヒアルロン酸である。
本発明の別の実施形態では、生体高分子を加工する方法は、乾燥微粒子形態の生体高分子を用意する工程と;任意に、乾燥微粒子形態の少なくとも1つの医薬品有効成分を用意する工程と;溶媒の多相系を用意する工程と;用意した成分を、機械的エネルギーの供給により均質な混合物が得られるまで均質化する工程とを含む。別の実施形態では、方法は、過剰な溶媒を除去する工程をさらに含む。さらに別の実施形態では、生体高分子はヒアルロン酸である。
特定の実施形態が、乾燥微粒子形態の少なくとも1つの医薬品有効成分を利用する一方で、本発明は、本発明の方法および加工が、他の実施形態では、他のあらゆるタイプの物理的状態で存在する1つまたは複数の医薬品有効成分、ならびに必要または要望に応じてあらゆる好適かつ適切な溶媒系に溶解する医薬品有効成分を利用する場合もあることも企図していることも理解されよう。
【0009】
本発明に従って、高分子もしくは生体高分子(または、複数形では、高分子(polymers)もしくは生体高分子(biopolymers))は、それに限定されるものではないが、以下の物質、または物質のクラス:鎖の長さまたは分子量などの異なる材料パラメーターを有する、タンパク質、多糖、炭化水素、核酸、アプタマー、コラーゲン、コラーゲン-n-ヒドロキシスクシンイミド、フィブリン、ゼラチン、アルブミン、アルギネート、血漿タンパク質、乳タンパク質、カゼイン、タンパク質ベース高分子、ヒアルロン酸、キトサン、ペクチン、アラビアゴムおよび他のゴム、カゼイン、乳漿タンパク、グルテン、デンプン、セルロース、ポリ乳酸のような薬学的または化粧用途のための合成ポリマー、ポリグリコール酸、植物および微生物の細胞溶解物、前記高分子のコポリマーおよび/または誘導体および/または混合物および/または化学修飾体、ならびにそれらの任意の組合せ、のうちの1つまたは複数を含むことができることが理解されよう。
高分子は、例えば、賦形剤(例えば、活性成分の組み込みおよび加工のため)として、基礎製剤物質(例えば、化粧品のため)として、または別個の活性成分として利用されてもよい。
【0010】
本発明に従って使用または組み込まれることもある薬物の代表的な活性成分またはクラスは、それに限定されるものではないが、1つまたは複数の免疫グロブリン、免疫グロブリンの断片または画分、免疫グロブリン、またはそのような合成、半合成、もしくは生合成の断片もしくは画分を模倣する合成物質、キメラ化、ヒト化、またはヒトモノクローナル抗体、Fabフラグメント、融合タンパク質または受容体拮抗薬(例えば、抗TNF-α、インターロイキン-1、インターロイキン-6等)、抗血管新生活性物質(例えば、抗TNF-α、VEGF、抗PDGF等)、細胞内シグナル伝達阻害剤(例えば、JAK1、3阻害剤およびSYK阻害剤)、3kDa以上の分子量を有するペプチド、リボ核酸(RNA)、デオキシリボ核酸(DNA)、プラスミド、ペプチド核酸(PNS)、ステロイド、コルチコステロイド、副腎皮質抑制剤(adrenocorticostatic)、抗生物質、抗うつ薬、抗真菌剤、交感神経遮断剤、アンドロゲンまたは抗アンドロゲン、抗貧血剤、タンパク同化ステロイド、麻酔剤、蘇生薬、抗アレルギー薬、抗不整脈剤、抗アテローム硬化活性物質、抗線維素溶解剤、抗痙攣剤、抗炎症性物質、抗コリン作用薬、抗ヒスタミン剤、抗高血圧剤物質、抗低血圧剤物質、抗凝固剤、防腐剤、抗出血物質、抗筋無力症剤、消炎剤、抗マラリア剤、解熱剤、β-受容体拮抗薬、カルシウムチャネル拮抗薬、細胞、細胞分化因子、ケモカイン、化学療法薬、補酵素、細胞毒性薬、細胞増殖阻害剤、酵素およびそれらの合成および生合成類似物質、グルココルチコイド、成長因子、止血薬、ホルモン、その合成および生合成類似物質、免疫抑制薬、免疫刺激剤、マイトジェン、マイトジェンの生理学的または薬理学的阻害剤、鉱質コルチコイド、筋弛緩剤、麻薬、神経伝達物質、神経伝達物質の前駆体、オリゴヌクレオチド、ペプチド、(パラ)交感神経模倣薬、(パラ)交感神経遮断剤、タンパク質、鎮静剤、鎮痙剤、血管収縮剤、血管拡張剤、ワクチン、ベクター、ウイルス、ウイルス様粒子、抗ウイルス剤、創傷治癒促進剤、ならびにこれらの物質の組合せを含む。
代表的な溶媒系、溶媒混合物、多相溶媒系または混合物が、本明細書に記載されている。これらは、それに限定されるものではないが、異なる官能基を有し、したがって異なる溶媒特性(流動学的、物理化学的、化学的等)を有する、1つまたは複数の液体、無機、または有機物質、またはそれらの混合物を含む。
【0011】
本発明は、高分子物質に対しての異なる親和性または溶解特性を有する溶媒混合物または多相溶媒系と合わせて、1つまたは複数の(生体)高分子物質の使用を企図する。重要なことは、使用する物質に対する溶媒特性が乏しい溶媒と合わせて使用される高分子のために、良好な基質/良好な溶媒である溶媒を使用することである。高分子物質(凍結乾燥されることもある)の乾燥粉末は、溶媒系に混合され、それにより、高分子の膨潤または溶解がもたらされる。出発材料に対して溶媒特性が乏しい系に含有される溶媒は、完全な溶解を妨げ、混合物全体の相分離および正の流動学的特性の原因となる。その後、この混合物全体は、機械的方法(それに限定されるものではないが、撹拌システム、押出機、ロータリー切削加工、3D印刷加工等を含む)により、少しの努力で、混合または均質化することができる。続く方法は、製品を製造するためのマスターバッチの様々な使用を可能とする。
【0012】
本発明の加工は、再現性が高い結果を生み、従来使用されてきた高分子の加工法に対していくつかの利点を有する。高分子に対する親和性が乏しい溶媒の使用は、適切かつ容易に制御可能(溶媒混合物/系の割合により)な流動学的特性を有する高度に濃縮した多相系の調製を可能とする。それらは、より低い高分子濃度で、ゲル、または高粘度の高分子構造の形成を妨げ、これにより、さらなる機械的加工を妨害し、乾燥挙動に悪影響を及ぼす。さらに、溶媒の物理化学的特性を利用して、製作におけるさらなる利点を達成することができる。したがって、エタノールまたはイソプロパノールなどの溶媒は、60%以下の濃度でさえ、高分子マトリックス中で発生するコロニー形成単位の数を最小化(殺菌効果)するために使用することができるが、これは、高分子物質に対するより高い親和性を有する残存溶媒が吸収され、エタノール濃度が上昇するからである。さらに、そのような溶媒の使用は、蒸気圧の増加による極めて加速された乾燥挙動、および過剰な低親和性溶媒を除去し、かつ圧縮成型を用いて高分子マトリックスに再使用する能力を可能とする。
【0013】
本発明の方法はまた、薬学的に許容可能な条件下で実行することができ、かつ無菌製品、または好適な品質および純度の製品をもたらすことができる。
さらに、本発明はまた、化粧品および製薬市場のための、本発明に従って得られる製剤(それに限定されるものではないが、動物およびヒトに活性成分を適用するための、ケア用品、医療製品、およびガレノス調製物を含む)を使用することも企図している。
【0014】
好ましい高分子材料は、性質上のその特別な立ち位置、および特性の好ましいプロファイル(高い生体適合性、高い生分解性、静菌性の特性、生物学的薬剤の安定化、血液凝固および創傷治癒に対する有益な効果、および水の吸収による皮膚外観の一般的な改善、ならびに栄養特性)という理由から、本発明に従って、異なる分子量を有するヒアルロン酸である。しかしながら、それは、主要な出発物質として見なされず、かつ他の高分子/生体高分子、およびそれらの混合物または誘導体と置き換えることもできる。
【0015】
さらに、1つまたは複数の活性物質は、様々な手法で、好適な活性成分を含有する高分子マトリックスを生成するために、ベース混合物に添加することができる。例えば、活性成分は、溶媒混合物または多相溶媒系に溶解または分散させることができ、したがって、マトリックスへと均質に分布する、または乾燥ポリマー粉末に固体状態で添加され、好適な機械的均質化により分布する。したがって、半固体(懸濁剤、乳剤、多相溶媒系)の、ならびに(乾燥および成型工程後の)乾燥状態(坐薬、錠剤、ねじ、またはマイクロニードルなどのすべての形状の固体を含む)の多種多様なガレノス製剤を製作することができる。
本発明の好ましい実施形態では、基礎混合物を調製した後の機械的加工法は、従来加工されてきた材料、およびそれらの特性に依存し、製品指向である。
【0016】
乾燥は、様々な温度で、および標準または高い機械的圧力または大気圧下で、例えば、ステンレス鋼キャビティまたはシリコーンキャビティなどの適切に形作られた型で実行できる。
本発明の好ましい実施形態では、本発明の方法を用いて得られる固体は、活性成分を含んでいようがいまいが、その後、さらなる機械的加工法(それに限定されるものではないが、フライス加工、切断、旋削、微粒子のためのロータリー切削法等を含む)を適用することにより、所望の外観、形状、サイズ、および構造に至ることができる。
【0017】
(加工法の実施例)
特定の実施形態が乾燥微粒子形態の少なくとも1つの医薬品有効成分を利用する一方で、本発明は、本発明の方法、加工、および製剤が、他の実施形態では、他のあらゆるタイプの物理的状態で存在する1つまたは複数の医薬品有効成分、ならびに必要または要望に応じてあらゆる好適かつ適切な溶媒系に溶解する医薬品有効成分を利用する場合もあることも企図していることも理解されよう。
(代表的な加工の実施例A:)
以下の物質を、好適な容器中に入れ、適宜加工する:
・ 乾燥微粒子形態の高分子
・ (任意:乾燥微粒子形態の賦形剤)
・ (任意:乾燥微粒子形態の活性成分)
・ 溶媒の単相多成分系
・ 機械的な手段による混合物の均質化
・ (任意:高分子塊に対する溶媒特性が乏しい過剰な溶媒の除去)
(代表的な加工の実施例B:)
以下の物質を、好適な容器中に入れ、適宜加工する:
・ 乾燥微粒子形態の高分子
・ (任意:乾燥微粒子形態の賦形剤)
・ (任意:乾燥微粒子形態の活性成分)
・ 溶媒(混和性でない溶媒)の多相系
・ 均質な混合物が得られるまでの機械的エネルギーの供給による用意した成分の均質化
・ (任意:圧力、空気循環の増大等による、高分子塊に対する溶媒特性が乏しい過剰な溶媒の除去)
(代表的な加工の実施例C:)
以下の物質を、好適な容器中に入れ、適宜加工する:
・ 乾燥微粒子形態の高分子
・ 溶解した活性物質または賦形剤を含む溶媒の単相多成分系
・ 均質な混合物が得られるまでの機械的エネルギーの供給による用意した成分の混合
・ (任意:圧力、空気循環の増大等による、高分子塊に対する溶媒特性が乏しい過剰な溶媒の除去)
(代表的な生成の実施例D:)
以下の物質を、好適な容器中に入れ、適宜加工する:
・ 乾燥微粒子形態の高分子
・ 溶解した活性物質または賦形剤を含む溶媒の多相系
・ 均質な混合物が得られるまでの機械的エネルギーの供給による用意した成分の混合
・ (任意:圧力、空気循環の増大等による、高分子塊に対する溶媒特性が乏しい過剰な溶媒の除去)
(代表的な生成の実施例E:)
以下の物質を、好適な容器中に入れ、適宜加工する:
・ 乾燥微粒子形態の高分子
・ (任意:乾燥微粒子形態の賦形剤)
・ (任意:乾燥微粒子形態の活性成分)
・ 高分子/物質混合物に対する溶媒特性が乏しい溶媒
・ 均質な混合物が得られるまでの機械的エネルギーの供給による用意した成分の混合(保存を目的とした懸濁液の調製)
・ 含有する固体を溶解または膨潤させる溶媒を添加して、直接使用する前に系を活性化させる
【0018】
(実施例A~Dのさらなる加工の代表的な実施例:)
3D印刷:異なる溶媒混合物の助けを得て、基礎混合物の特別な流動学的特性を設定することができ、その後、コンピュータ制御の3D印刷を用いて(例えば、押出ノズルを介して)所望の形状へと至らせ、乾燥により凝固させることができる。
キャビティ中での成型:実施例A~Eにおいて言及される基礎混合物は、様々な材料(例えば、シリコーン、ステンレス鋼、固体樹脂、無機材料等)で作られるキャビティまたは型中で、短期または永続的な圧力下でプレス加工し、型から除去する前、またはその後に、乾燥/凝固することができる。溶媒のいかなる残留物も、これらの手段により除去することができる。
【0019】
試薬/反応条件によるさらなる加工:実施例A~Eに言及された基礎混合物は、ポリマー分子に、共有結合的にまたはイオン結合的に組み合わせる/結合させるために、それを調製した後に他の試薬と混合できるか、または特異的反応条件にさらすことができる。これにより、後の溶解工程を減速させるか、または材料のさらなる物理化学的特性を追加/補足することができた。
機械的加工:実施例A~Eに言及された基礎混合物を、フライス加工、切断、または切り曲げ加工を用いて、それらの乾燥および凝固後に、機械的にさらに加工して、あらゆる所望の形状の固体を生成することができる。さらに、凝固体を、定義した粒子径および粒子表面で、好適な研削方法を用いて微粒子形態にすることができる。
(さらに加工する場合およびしない場合の、実施例A~Eに言及された基礎混合物の使用の代表的な実施例:)
マイクロニードル:考えられる限りのすべての形状および幾何学的形状、ニードルの数、ならびにパッチサイズの、マイクロニードル/マイクロニードルのアレイの陰/雌型へと圧入することにより、高分子マイクロニードルを、局所的な経皮的または皮内的適用のために作ることができる。
【0020】
この場合、純粋に化粧用の製剤は、想像できるもの(活性成分を含まない)、および製薬市場で使用するための製剤(本明細書に記載される活性成分の1つまたは複数を含む)である。マイクロニードルは、例えば、局所適用(例えば、それに限定されるものではないが、かゆいか、過敏性か、もしくは炎症性の皮膚領域、昆虫咬傷、感染症、または疾患等)、または身体の全体にわたる薬物放出(例えば、排他的ではないが、ワクチン適用、BCSクラス3の生物学的に非常に強力な医薬品有効成分(API)の適用等のため)に使用することができる。このタイプのマイクロニードルはまた、より長い時間皮膚領域に付着させられる、または身体の適所に短期だけとどまるように、接着層が設けられるか、天然の接着層を有する場合もある。
【0021】
異なる厚さのフィルム:ベース材料を、圧力を使用して包帯または絆創膏ベースにそれらを適用することにより、異なる厚さのフィルムに加工することができる。そのようなフィルムは、創傷被覆材(例えば、それに限定されるものではないが、濡れた創傷、熱傷、または、乾燥した皮膚領域等)として、または薬物の経皮送達のための薬物含有パッチとしての用途を見出すこともある。これらのフィルムのさらなる用途は、創傷治癒プロセスを湿潤または刺激するための体腔への組み込みを含む。
固体の物体:既に本明細書において言及された方法を用いるさらなる加工により、様々なサイズおよび形状の高分子固体を生成することができる。これらは:クランプ、ねじ、スキャフォールド、固体剤形、くし、装飾品、血管閉塞、釘、ボタンなどを含む様々な用途を見出すことができる。使用される高分子に応じて、人体への導入/移植は、機械的安定化、または1つもしくは複数の活性物質の投与のために考えられる。
生体高分子の安定した懸濁液:実施例Eにおいて言及されるように、高分子の安定した懸濁液を、粒子径および粒子表面に関して前に定義した高分子粒子を用いて調製することができる。そのような懸濁液は、例えば、排他的に、皮膚領域の剥脱/剥皮のための、栄養油および定義したヒアルロン酸粒子からなる場合もある。続いて、準乳濁液を、水を適用することにより形成でき、これにより、皮膚にさらなる保湿および栄養特性がもたらされる。加えて、活性物質は、経皮的に適用するために油または粒子に組み込むことができる。
【0022】
(マトリックスおよび固体の物体を調製するための実施例)
(ヒアルロン酸Na(高分子量)を含む基礎混合物の調製:)
5.067gのヒアルロン酸Na(1.5MDaの高分子量)を、IKA Tube Millを使用し、25,000rpmで、15秒間均質化することにより、8.3mlの70%イソプロパノール水溶液と混合させる。5分後、溶液に含有される水により、高分子マトリックスの均質な膨潤が達成される。
このように得られた基礎混合物を、シリコーンキャビティへと圧入する一方で、過剰量のイソプロパノールが、乾燥の間に/圧力下で塊から現われる。
さらに、圧入した高分子体を、60℃で、24時間、乾燥炉中で乾燥させる。
【0023】
(ヒアルロン酸Na(低分子量)を含む基礎混合物の調製)
5.007gのヒアルロン酸Na(4500Daの低分子量)を、撹拌することにより、8.3mlの70%イソプロパノール水溶液と、ボール中で混合させる。5分の膨潤時間後に、マトリックスを、シリコーン型へと圧をかけることにより(過剰なイソプロパノールを除去することにより)形作り、60℃で乾燥させる。