(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-12
(45)【発行日】2023-07-21
(54)【発明の名称】工作機械
(51)【国際特許分類】
B23B 13/04 20060101AFI20230713BHJP
B23B 25/06 20060101ALI20230713BHJP
【FI】
B23B13/04
B23B25/06
(21)【出願番号】P 2020552604
(86)(22)【出願日】2019-10-24
(86)【国際出願番号】 JP2019041781
(87)【国際公開番号】W WO2020085454
(87)【国際公開日】2020-04-30
【審査請求日】2022-04-26
(31)【優先権主張番号】P 2018202338
(32)【優先日】2018-10-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2018241512
(32)【優先日】2018-12-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000001960
【氏名又は名称】シチズン時計株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000137856
【氏名又は名称】シチズンマシナリー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100154003
【氏名又は名称】片岡 憲一郎
(72)【発明者】
【氏名】野口 賢次
(72)【発明者】
【氏名】御園 春彦
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 敏之
【審査官】久保田 信也
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-174179(JP,A)
【文献】特開平07-009201(JP,A)
【文献】特開2004-50303(JP,A)
【文献】実開昭52-55929(JP,U)
【文献】特開2008-246648(JP,A)
【文献】独国特許出願公開第102016122746(DE,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23B 13/04
B23B 25/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1把持手段を備えた第1主軸と、
第2把持手段を備え、背面主軸台に設けられて前記第1主軸に対向する第2主軸と、
長尺の棒材を前記第1主軸に供給する棒材供給部と、
前記棒材を加工する工具を備えた加工手段と、を有
し、
前記第1把持手段に把持させた前記棒材に対して前記加工手段により所定の加工及び突っ切り加工を連続的に行うとともに突っ切り加工により突っ切った前記棒材を前記第2把持手段に把持させるように構成された工作機械であって、
前記背面主軸台に設けられ、前記第1主軸から旧材として脱抜した前記棒材である第2材を把持可能なワーククランプ装置と、
前記ワーククランプ装置により把持された前記第2材と前記第1把持手段により把持された前記棒材供給部によって新たに供給された棒材である第1材の互いに対向する端部を接合して前記第2材と前記第1材とを1つの棒材とする接合手段と、を有
し、
前記第2材を前記第1主軸から前記ワーククランプ装置に移すときに、前記背面主軸台とともに移動する前記第2把持手段に把持されたワークに前記工具を追従させて所定の加工を行うように構成されていることを特徴とする工作機械。
【請求項2】
前記第1把持手段に把持させた前記1つの棒材に対して前記加工手段により所定の加工及び突っ切り加工を連続的に行うとともに突っ切り加工により突っ切った加工材を前記第2把持手段に把持させ、前記加工材に対する前記加工手段による所定の加工と、前記第2材と前記第1材との前記接合手段による接合とを同時に行うことを特徴とする、請求項1に記載の工作機械。
【請求項3】
前記ワーククランプ装置が、前記第2材を把持するクランプ側把持手段を有し、
前記クランプ側把持手段の内径と前記第1把持手段の内径とが同一である、請求項1または2に記載の工作機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工作機械に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、棒材供給部から第1主軸に供給された長尺の棒材を第1主軸の把持手段で把持し、当該棒材に対して工具を用いて所定の加工及び突っ切り加工を順次行うことで、棒材から多数の製品を連続的に加工するようにした工作機械が知られている。
【0003】
また、このような工作機械として、第1主軸と、第1主軸に対向する第2主軸とを備え、棒材が製品の加工を行うことが困難な長さとなったときに、当該棒材を旧材として第1主軸から脱抜して第2主軸に受け渡すとともに棒材供給部から第1主軸に新たな棒材を新材として供給し、第2主軸の把持手段で把持した旧材と第1主軸の把持手段で把持した新材の互いに対向する端部を、例えば凹凸嵌合ないし摩擦圧接等の手段によって接合することで旧材と新材とを1つの棒材としてから、当該棒材に対して工具を用いた所定の加工及び突っ切り加工を順次行うことで旧材を無駄なく利用するようにした工作機械が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記従来の工作機械では、旧材を第1主軸から第2主軸に受け渡した後、第1主軸と第2主軸の両方を用いて旧材と新材との接合を行うようにしているので、第2主軸の把持手段が旧材を把持している間は、棒材に対して工具を用いた所定の加工を行うことができないという問題点があった。
【0006】
本発明は、上記課題を鑑みて成されたものであり、その目的は、第2主軸が旧材を把持している間も棒材に対して工具を用いた所定の加工を行う構成とすることが可能な工作機械を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の工作機械は、第1把持手段を備えた第1主軸と、第2把持手段を備え、背面主軸台に設けられて前記第1主軸に対向する第2主軸と、長尺の棒材を前記第1主軸に供給する棒材供給部と、前記棒材を加工する工具を備えた加工手段と、を有し、前記第1把持手段に把持させた前記棒材に対して前記加工手段により所定の加工及び突っ切り加工を連続的に行うとともに突っ切り加工により突っ切った前記棒材を前記第2把持手段に把持させるように構成された工作機械であって、前記背面主軸台に設けられ、前記第1主軸から旧材として脱抜した前記棒材である第2材を把持可能なワーククランプ装置と、前記ワーククランプ装置により把持された前記第2材と前記第1把持手段により把持された前記棒材供給部によって新たに供給された棒材である第1材の互いに対向する端部を接合して前記第2材と前記第1材とを1つの棒材とする接合手段と、を有し、前記第2材を前記第1主軸から前記ワーククランプ装置に移すときに、前記背面主軸台とともに移動する前記第2把持手段に把持されたワークに前記工具を追従させて所定の加工を行うように構成されていることを特徴とする。
【0008】
本発明の工作機械は、上記構成において、前記第1把持手段に把持させた前記1つの棒材に対して前記加工手段により所定の加工及び突っ切り加工を連続的に行うとともに突っ切り加工により突っ切った加工材を前記第2把持手段に把持させ、前記加工材に対する前記加工手段による所定の加工と、前記第2材と前記第1材との前記接合手段による接合とを同時に行うのが好ましい。
【0009】
本発明の工作機械は、上記構成において、前記ワーククランプ装置が、前記第2材を把持するクランプ側把持手段を有し、前記クランプ側把持手段の内径と前記第1把持手段の内径とが同一であるのが好ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、第2主軸が旧材を把持している間も棒材に対して工具を用いた所定の加工を行う構成とすることが可能な工作機械を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の一実施形態である工作機械の構成を概略で示す説明図である。
【
図2】(a)は、棒材に所定の加工を行っている状態を簡略化して示す説明図であり、(b)は、棒材から製品を加工した状態を簡略化して示す説明図である。
【
図3】(a)は、棒材の加工が完了した状態を簡略化して示す説明図であり、(b)は、旧材を正面主軸から背面主軸に受け渡すとともに正面主軸に新材を供給した状態を簡略化して示す説明図である。
【
図4】(a)は、新材の正面チャックからの突出長さを測定している状態を簡略化して示す説明図であり、(b)は、同図(a)に示す状態から正面主軸及び背面主軸を互いに接近する方向に移動させて旧材と新材の互いに対向する端面を当接させた状態を簡略化して示す説明図である。
【
図5】(a)は、
図4(b)に示す状態から背面チャックを開いた状態で背面主軸を正面主軸の側に移動させた状態を簡略化して示す説明図であり、(b)は、同図(a)に示す状態から、旧材を背面チャックで把持した状態で背面主軸を正面主軸から離れる方向に移動させて、旧材の端面と新材の端面とに凹部を加工した状態を簡略化して示す説明図である。
【
図6】(a)は、旧材と新材とを摩擦圧接している状態を簡略化して示す説明図であり、(b)は、摩擦圧接した旧材と新材の接合部に対してバリ取り加工を行っている状態を簡略化して示す説明図であり、(c)は、バリ取り加工の完了後の棒材の状態を簡略化して示す説明図である。
【
図7】(a)は、旧材と新材とを摩擦圧接した棒材を正面主軸の側に引き込んだ状態を簡略化して示す説明図であり、(b)は、旧材と新材とを摩擦圧接した棒材の正面チャックからの突出長さを測定している状態を簡略化して示す説明図である。
【
図8】(a)は、旧材と新材とを接合した棒材に所定の加工を行っている状態を簡略化して示す説明図であり、(b)は、旧材と新材とを接合した棒材から製品を加工した状態を簡略化して示す説明図である。
【
図9】(a)は、旧材と新材とを接合した棒材の接合部が正面チャックに位置した状態を簡略化して示す説明図であり、(b)は、正面主軸を軸方向に移動させて棒材の接合部以外の部分を正面チャックで把持した状態で所定の加工を行っている状態を簡略化して示す説明図であり、(c)は、旧材と新材とを接合した棒材を突っ切り加工した状態を簡略化して示す説明図である。
【
図10】(a)は、旧材と新材とを接合した棒材の接合部がガイドブッシュに位置した状態を簡略化して示す説明図であり、(b)は、棒材を接合部よりも新材の側において突切り加工している状態を簡略化して示す説明図である。
【
図11】(a)~(c)は、接合部の軸方向位置を測定する他の方法を示す説明図である。
【
図12】(a)、(b)は、旧材と新材とを摩擦圧接した棒材を棒材供給部により正面主軸の側に引き込む手順を簡略化して示す説明図である。
【
図13】(a)、(b)は、ワーククランプ装置を設けた工作機械において、最終の製品を背面チャックで把持しつつ旧材をワーククランプ装置により把持して引き抜く手順を簡略化して示す説明図である。
【
図14】(a)、(b)は、ワーククランプ装置を設けた工作機械において、棒材に対する所定の加工と、旧材と新材との接合とを同時に行う手順を簡略化して示す説明図である。
【
図15】(a)、(b)は、ワーククランプ装置を設けた工作機械において、旧材をワーククランプ装置により把持して正面主軸から引き抜きつつ背面チャックにより把持した最終の製品に対する所定の加工を行う手順を簡略化して示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面に基づいて、本発明の一実施の形態である工作機械1について詳細に例示説明する。
【0013】
図1に示す工作機械1は、長尺の棒材Wをワークとして加工する自動旋盤(CNC旋盤)であり、第1主軸としての正面主軸10と、第2主軸としての背面主軸20とを有している。
【0014】
正面主軸10と背面主軸20は、正面主軸10の軸線と背面主軸20の軸線とが平行となるように、互いに対向して配置されている。以下、正面主軸10と背面主軸20の軸線に平行な方向をZ軸方向とし、Z軸方向に直交する方向をX軸方向とし、Z軸方向及びX軸方向に直交する方向をY軸方向とする。
【0015】
基台2上には、例えばガイドレール機構等の正面側移動機構3によってZ軸方向に移動自在に正面主軸台11が設置されている。正面主軸10は、正面主軸台11に棒材Wを把持して回転自在に支持され、主軸モータによって回転駆動される。主軸モータとしては、例えば、正面主軸台11の内部において、正面主軸台11と正面主軸10との間に構成されるビルトインモータを採用することができる。
【0016】
基台2上には、例えばガイドレール機構等の背面側移動機構4によってZ軸方向に移動自在に背面主軸台21が設置されている。背面主軸20は、背面主軸台21に棒材Wを把持して回転自在に支持され、主軸モータによって回転駆動される。主軸モータとしては、例えば、背面主軸台21の内部において、背面主軸台21と背面主軸20との間に構成されるビルトインモータを採用することができる。
【0017】
基台2と正面主軸台11との間または基台2と背面主軸台21との間には、正面主軸10を背面主軸20に対してX軸方向に相対移動させるX軸移動機構が設置される。また、基台2と正面主軸台11との間または基台2と背面主軸台21との間には、正面主軸10を背面主軸20に対してY軸方向に相対移動させるY軸移動機構が設置される。
【0018】
正面主軸10の先端には、第1把持手段としての正面チャック12が開閉自在に設けられている。正面チャック12は、チャックスリーブ13の内側に収容されている。チャックスリーブ13が正面主軸10の先端側に向けてスライド移動すると、チャックスリーブ13のテーパ面により正面チャック12のテーパ面が押圧されて、正面チャック12は閉じられる。反対に、チャックスリーブ13が正面主軸10の基端側に向けてスライド移動すると、チャックスリーブ13のテーパ面による正面チャック12のテーパ面への押圧が解除され、正面チャック12は開かれる。正面主軸10は、正面チャック12を開いた状態として棒材Wを挿入し、正面チャック12を閉じることによって棒材Wを把持することができる。
【0019】
背面主軸20の先端には、第2把持手段としての背面チャック22が開閉自在に設けられている。背面チャック22は、チャックスリーブ23の内側に収容されている。チャックスリーブ23が背面主軸20の先端側に向けてスライド移動すると、チャックスリーブ23のテーパ面により背面チャック22のテーパ面が押圧されて、背面チャック22は閉じられる。反対に、チャックスリーブ23が背面主軸20の基端側に向けてスライド移動すると、チャックスリーブ23のテーパ面による背面チャック22のテーパ面への押圧が解除され、背面チャック22は開かれる。背面主軸20は、背面チャック22を開いた状態として棒材Wを挿入し、背面チャック22を閉じることによって棒材Wを把持することができる。
【0020】
チャックスリーブ13、23のスライド駆動機構は、本発明を限定するものではなく、種々の構成のものを採用することができる。
【0021】
正面主軸10と背面主軸20の間には、ガイドブッシュ30が設けられている。ガイドブッシュ30は、基台2に設置されたガイドブッシュ支持台31に装着され、正面主軸10と同軸に配置されている。ガイドブッシュ30は、ガイドブッシュ支持台31に対して軸線方向に位置調節されることで、棒材Wの外径に対応した内径に調節される。ガイドブッシュ30は、棒材WをZ軸方向に移動自在にガイドすることができる。
【0022】
工作機械1は、加工手段としての加工部40を備えている。加工部40は、棒材Wを加工する工具41を備えている。工具41は刃物台42に保持されている。刃物台42は、工具41がガイドブッシュ30の前方に配置され、ガイドブッシュ支持台31にX軸方向及びY軸方向に移動自在に支持されている。刃物台42のZ軸方向の位置は一定である。刃物台42には、工具41として、例えば外径切削バイトや突っ切りバイトなどが搭載されており、これらは、刃物台42の例えばX軸方向への移動により、加工内容に応じて適宜切り替えられる。
【0023】
また、工作機械1は、加工手段として背面側固定加工部43を備えている。背面側固定加工部43は、棒材Wを加工する複数(3本)の背面加工用の工具44を備えている。工具44は、それぞれ背面刃物台45を介して基台2に固定されており、背面主軸20(背面主軸台21)のY軸方向への移動により、加工内容に応じて適宜切り替えることができる。
【0024】
さらに、工作機械1は、加工手段としての背面側移動加工部46を備えている。背面側移動加工部46は、棒材Wを加工する工具47を備えている。工具47は刃物台48に保持されている。刃物台48は、基台2にX軸方向及びY軸方向に移動自在に支持されている。刃物台48のZ軸方向の位置は一定である。刃物台48には、工具47として、例えば外径切削バイトや突っ切りバイトなどが搭載されており、これらは、刃物台48の例えばX軸方向への移動により、加工内容に応じて適宜切り替えられる。
【0025】
工作機械1は、正面主軸10の後方に配置される棒材供給部(バーフィーダー)50を備えている。棒材供給部50は、棒材Wの後端を把持するフィンガー51と、フィンガー51をZ軸方向に駆動する駆動ロッド52とを備えている。棒材供給部50は、正面主軸10に棒材Wを、順次供給することができる。また、棒材供給部50は、正面主軸10から背面主軸20の側に突出する棒材Wを、正面主軸10の側に引き込むことができる。
【0026】
工作機械1は、制御部60を備えている。制御部60は、例えばCPU(中央演算処理装置)やメモリ等の記憶手段を備えたマイクロコンピュータで構成されたものとすることができる。制御部60は、正面主軸10(正面主軸台11、正面チャック12を含む)、背面主軸20(背面主軸台21、背面チャック22を含む)、加工部40、背面側固定加工部43、背面側移動加工部46及び棒材供給部50の各作動を統合制御することができる。
【0027】
より具体的には、制御部60は、正面チャック12や背面チャック22に把持させた棒材Wに対して加工部40、背面側固定加工部43及び背面側移動加工部46により所定の加工及び突っ切り加工を連続的に行って複数の製品を得るように、正面主軸10、背面主軸20、棒材供給部50、加工部40、背面側固定加工部43及び背面側移動加工部46を作動させる製品加工手段としての機能を有している。
【0028】
また、制御部60は、製品加工手段としての機能による棒材Wの加工完了後に、棒材Wを正面主軸10から旧材W1として脱抜して背面主軸20に受け渡すように、正面主軸10及び背面主軸20を作動させる旧材授受手段としての機能を有している。
【0029】
さらに、制御部60は、旧材W1が脱抜された正面主軸10に棒材供給部50から新たな棒材Wを新材W2として供給して正面チャック12に把持させるように、正面主軸10及び棒材供給部50を作動させる新材供給手段としての機能を有している。
【0030】
さらに、制御部60は、背面チャック22により背面主軸20に把持された旧材W1と正面チャック12により正面主軸10に把持された新材W2の互いに対向する端部を接合して旧材W1と新材W2とを1つの棒材W3とする接合手段としての機能を有している。
【0031】
さらに、制御部60は、接合手段としての機能により旧材W1と新材W2とを接合してなる棒材W3の旧材W1の部分を背面主軸20から脱抜して正面主軸10の側に引き込むように正面主軸10、背面主軸20及び棒材供給部50を作動させる引込み手段としての機能を有している。
【0032】
さらに、制御部60は、引込み手段としての機能により正面主軸10に引き込まれて正面チャック12により把持された棒材W3に対して、上記した製品加工手段としての機能により、所定の加工及び突っ切り加工を連続的に行うように、正面主軸10、背面主軸20、棒材供給部50、加工部40、背面側固定加工部43及び背面側移動加工部46の作動を制御する機能を有している。
【0033】
さらに、制御部60は、旧材W1と新材W2とを接合してなる棒材W3を、引込み手段としての機能により、正面主軸10に引き込んで正面チャック12により把持した後、棒材W3に対して、製品加工手段としての機能により最初の加工を行う際に、正面チャック12が棒材W3の旧材W1からなる部分を把持するように、正面主軸10、背面主軸20及び棒材供給部50の作動を制御する機能を有している。
【0034】
さらに、制御部60は、製品加工手段としての機能により、旧材W1と新材W2とを接合してなる棒材W3に対する所定の加工及び突っ切り加工を連続的に行う際に、正面チャック12が、棒材W3の旧材W1と新材W2との接合部80以外の部分を把持するように、正面主軸10(正面チャック12)を移動させる把持部移動手段としての機能を有している。
【0035】
さらに、制御部60は、製品加工手段としての機能により、旧材W1と新材W2とを接合してなる棒材W3に対する所定の加工及び突っ切り加工を連続的に行う際、旧材W1と新材W2との接合部80がガイドブッシュ30に位置したときに、棒材W3を接合部80よりも新材W2の側において突切り加工するように、正面主軸10、背面主軸20、棒材供給部50及び加工部40の作動を制御する機能を有している。
【0036】
工作機械1は、上記制御を行う際に、正面チャック12が、棒材W3の旧材W1と新材W2との接合部80の軸方向位置を認識するために、
図7(b)に示す位置認識手段としての測定棒61、または
図11(c)に示す位置認識手段としての旧材位置測定端子62を備えた構成とすることができる。
【0037】
次に、上記構成を有する工作機械1により、長尺の棒材Wから多数の製品Pを連続的に加工する手順について説明する。当該手順は、上記の通り、工作機械1の各部が制御部60によって統合制御されることにより行われる。
【0038】
図2~
図11においては、正面主軸10及び背面主軸20を省略し、正面チャック12及び背面チャック22のみを示すが、正面チャック12の移動は正面主軸10の移動とともに行われ、背面チャック22の移動は背面主軸20の移動とともに行われるものとする。
【0039】
図2(a)に示すように、棒材供給部50によって正面主軸10の基端側から正面主軸10に棒材Wが供給されると、正面チャック12によって棒材Wが把持される。正面主軸10(正面チャック12)に把持された棒材Wは、ガイドブッシュ30から所定の長さで背面主軸20の側に突き出した状態とされる。この状態で正面主軸10が主軸モータにより回転駆動されることで棒材Wが回転する。回転する棒材Wに対して、加工部40の選択された工具41をY軸線方向(切込み方向)に移動させて棒材Wに切り込ませるとともに正面主軸10(正面主軸台11)をZ軸線方向(送り方向)に移動させることで、棒材Wに所定の加工(切削加工)を行うことができる。
【0040】
正面主軸10に把持された棒材Wに対する所定の加工を行った後、背面主軸20を正面主軸10と同軸上に配置し、正面主軸10に把持された棒材Wの端部を背面主軸20の背面チャック22によって把持させ、この状態で棒材Wを工具41により突っ切り加工することによって、突っ切った棒材Wを正面主軸10から背面主軸20に受け渡すことができる。
【0041】
図2(b)に示すように、正面主軸10から受け渡されて背面チャック22によって背面主軸20に保持された棒材Wに対して、さらに加工を行うこともできる。この場合、背面主軸20のY軸方向やZ軸方向への移動によって、背面側固定加工部43の選択された工具44により棒材Wを加工(切削加工)することができる。さらに、背面側移動加工部46の工具47によって棒材Wを加工することもできる。当該加工により、棒材Wは製品Pとされる。完成した製品Pは、背面主軸20から取り出されて次工程に搬送される。
【0042】
背面主軸20による棒材Wの加工中、正面主軸10の側では、棒材供給部50により棒材Wが繰り出され、前記のように再度、正面主軸10における棒材Wに対する所定の加工及び突っ切り加工が行われる。同様に、棒材Wを繰り出し、所定の加工及び突っ切り加工を繰り返し行うことで、一本の長尺の棒材Wから所定の形状の複数の製品Pを得ることができる。
【0043】
図3(a)に示すように、棒材Wから複数の製品Pが加工され、棒材Wが正面主軸10の正面チャック12によって把持された状態では加工を行うことができない長さとなると、棒材Wの加工が完了し、棒材Wは残材として旧材W1となる。
【0044】
棒材Wの加工が完了して旧材W1が発生すると、背面主軸20が正面主軸10に近接するように移動する。旧材W1の正面チャック12による把持が解除され、旧材W1を背面チャック22が把持する。そして、旧材W1を背面チャック22に把持させることによって、旧材W1が正面主軸10から背面主軸20に受け渡される。旧材W1を受け取った背面主軸20は、旧材W1を把持した状態で正面主軸10から離れるようにZ軸方向に移動する。次いで新たな棒材Wが新材W2として棒材供給部50から正面主軸10に供給される。新材W2が、正面チャック12により把持されて、
図3(b)に示す状態となる。
【0045】
次に、旧材W1と新材W2との接合が行われるが、その際、接合後の棒材W3における接合部80の軸方向位置を認識するための手順が合わせて行われる。
【0046】
まず、
図4(a)に示すように、新材W2の背面主軸20の側を向く先端が工具41によって端面加工される。ここで、工具41はガイドブッシュ支持台31に支持されてZ軸方向の位置(Z1-0)が決まっており、正面チャック12のZ軸位置(Z1-1)も正面チャック12を位置制御する制御部60によって認識されているので、制御部60は、正面チャック12からの新材W2の突出長さAを算出することができる。
【0047】
次に、正面主軸10及び背面主軸20を互いに接近するようにZ軸方向に移動させ、
図4(b)に示すように、旧材W1と新材W2の互いに対向する端面を当接させる。このとき、背面主軸20をトルクスキップ(端面同士が当接した時の背面側移動機構4におけるモータのトルク変化を検知して背面主軸の移動を停止する)の状態とすることで、旧材W1と新材W2の互いに対向する端面が当接したときに旧材W1ないし新材W2の背面主軸20ないし正面主軸10に対する位置ずれや正面主軸10のZ軸方向への移動が生じないようにしている。
【0048】
次に、
図5(a)に示すように、端面同士が当接した状態のまま背面チャック22を開いて、背面主軸20を正面主軸10の側に移動させた後、旧材W1のより新材W2に近い先端側の部分を背面チャック22に把持させる。そして、旧材W1を背面チャック22で把持した状態で背面主軸20を正面主軸10から離れるようにZ軸方向に移動させ、互いに離れた旧材W1の端面と新材W2の端面とに、それぞれ工具41ないし工具44等を用いて凹部70、71を加工する。
【0049】
次に、背面チャック22に把持された旧材W1と正面チャック12に把持された新材W2の互いに対向する端部(凹部70、71が形成された端面)が摩擦圧接される。摩擦圧接は、例えば以下の手順で行うことができる。
【0050】
まず、背面主軸20をトルクスキップの状態で正面主軸10の側に向けてZ軸方向に移動させ、
図6(a)に示すように、旧材W1の端面と新材W2の端面とを互いに当接させる。次いで、旧材W1の端面と新材W2の端面とを互いに当接した位置から、背面主軸20をさらに所定の距離(例えば0.3mm)だけ正面主軸10の側に向けてZ軸方向に移動させ、旧材W1の端面と新材W2の端面とを互いに所定の圧力で当接させた状態とする。そして、この状態で例えば正面主軸10を回転させずに停止させたまま背面主軸20のみを所定の速度で回転させることで、旧材W1の端面と新材W2の端面との間に摩擦熱を生じさせ、当該端面を加熱する。
【0051】
本実施の形態では、正面主軸10を回転させずに停止させたまま背面主軸20のみを所定の速度で回転させることで正面主軸10と背面主軸20とを相対回転させて旧材W1の端面と新材W2の端面との間に摩擦熱を生じさせるようにしているが、背面主軸20を回転させずに停止させたまま正面主軸10のみを所定の速度で回転させることで旧材W1の端面と新材W2の端面との間に摩擦熱を生じさせるようにしてもよく、正面主軸10と背面主軸20とを互いに反対方向に回転させることで旧材W1の端面と新材W2の端面との間に摩擦熱を生じさせるようにしてもよく、正面主軸10と背面主軸20とを同一方向に異なる速度で回転させることで旧材W1の端面と新材W2の端面との間に摩擦熱を生じさせるようにしてもよい。
【0052】
旧材W1の端面と新材W2の端面との間に生じる摩擦熱によって旧材W1の端面と新材W2の端面とが所定の温度に至ると、正面主軸10と背面主軸20の相対回転を停止させ、正面主軸10と背面主軸20とを互いに接近する方向に相対移動させて、旧材W1の端部と新材W2の端部とを、所定の圧力(アプセット圧)でZ軸方向に押し付ける。これにより、
図6(b)に示すように、旧材W1と新材W2とが互いの軸方向端面を接合面とした接合部80により接合されて1つの棒材W3とされる。
【0053】
図6(b)に示すように、摩擦圧接された棒材W3の接合部80には、旧材W1及び新材W2の摩擦熱によって軟化した部分が圧接の際に径方向外側に押し出されることによりバリ90が生じる。工作機械1は、旧材W1と新材W2との摩擦圧接が完了した後、工具41を用いて棒材W3からバリ90を取り除くための切削加工を実施する。当該切削加工は、棒材W3を正面主軸10ないし背面主軸20の少なくとも何れか一方で保持したまま、当該保持をしている正面主軸10ないし背面主軸20を回転させつつ工具41をバリ90に押し当てることで容易に行うことができる。
【0054】
バリ90を取り除くための切削加工が行われることにより、
図6(c)に示すように、棒材W3の外周面の接合部80を挟んだ両側には、棒材W3の外周面よりも小径の縮径部81が生じる。
【0055】
本実施の形態では、旧材W1の端面と新材W2の端面とに凹部70、71を加工することにより摩擦圧接を容易に行い得るようにしているが、凹部70、71を加工することなく摩擦圧接を行うようにしてもよい。
【0056】
旧材W1と新材W2とが接合されて棒材W3とされると、
図7(a)に示すように、背面チャック22の棒材W3の把持を解除し、棒材W3の新材W2の部分を把持している正面チャック12を正面主軸10とともに背面主軸20から離れるようにZ軸方向に移動させる。これにより、棒材W3を正面主軸10の側に引き込み、背面主軸20から脱抜させる。
【0057】
次に、
図7(b)に示すように、背面主軸20をZ軸方向及びY軸方向に移動させて、背面主軸20の背面主軸台21に固定されている測定棒61の先端を旧材W1の正面主軸10とは反対側を向く後端面にトルクスキップの状態で当接させる。
【0058】
ここで、測定棒61は背面主軸20の背面主軸台21に固定されていることから、背面主軸20を位置制御する制御部60は、測定棒61の先端のZ軸方向の位置を認識することができる。また、上記の通り、制御部60は正面チャック12のZ軸方向の位置も認識することができる。したがって、測定棒61の先端を旧材W1の後端面に当接させることで、制御部60は、棒材W3の正面チャック12からの突出長さBを算出することができる。
【0059】
棒材W3を構成する旧材W1と新材W2は摩擦接合時に接合部分において端部が押し潰されているが、その潰れ長さαは摩擦圧接時における正面主軸10と背面主軸20とのZ軸方向への相対的な移動量等から算出することができる。
【0060】
したがって、制御部60は、棒材W3における旧材W1からなる部分の長さLを、L=B-A+α/2で算出することができる。当該長さLは、棒材W3の先端から接合部80までの距離に相当するので、制御部60は棒材W3における接合部80のZ軸方向の位置を認識することができる。また、棒材W3の突っ切り加工が繰り返し行われたとしても、制御部60は当該突っ切り加工が行なわれる位置を認識することができるので、突っ切り加工後の棒材W3における接合部80の軸方向位置を常に認識することができる。
【0061】
棒材W3における接合部80のZ軸方向の位置の算出が完了すると、棒材W3の端面を工具41で加工し、工具41で端面を押さえながら正面チャック12を開いた状態で正面主軸10が背面主軸20に近づくようにZ軸方向に移動する。そして、
図8(a)に示すように、正面チャック12は、棒材W3の旧材W1からなる部分を把持する。そして、
図8(a)、
図8(b)に示すように、この状態で正面主軸10を主軸モータにより回転駆動して棒材W3を回転させ、加工部40の選択された工具41をY軸線方向(切込み方向)に移動させて棒材W3に切り込ませるとともに正面主軸10(正面主軸台11)をZ軸線方向(送り方向)に移動させて棒材W3に対する所定の加工(切削加工)及び突っ切り加工を連続的に行って、棒材W3から複数の製品Pを加工する。
【0062】
ここで、本実施の形態の工作機械1では、
図8(a)に示すように、旧材W1と新材W2とが接合された棒材W3に対して、製品Pを形成するための最初の加工を行う際に、棒材W3の旧材W1からなる部分を正面チャック12によって把持するようにしている。したがって、当該加工の際に、工具41による加工部分と正面チャック12により把持される部分との間に強度の弱い接合部80が位置することがないようにして、棒材W3の旧材W1からなる部分を正面チャック12により確実に保持した状態で加工を行うことができる。これにより、棒材W3の旧材W1からなる部分を精度よく加工することができる。
【0063】
一方、旧材W1と新材W2とが接合された棒材W3に対して、製品Pを形成するための所定の加工及び突っ切り加工を連続して行っていくと、
図9(a)に示すように、正面チャック12の軸方向位置と棒材Wの接合部80の軸方向位置とが一致する場合がある。正面チャック12の軸方向位置と棒材Wの接合部80の軸方向位置とが一致すると、正面チャック12により棒材W3を確実に把持することができなくなって棒材W3の加工精度が低下する虞がある。特に、旧材W1と新材W2とを摩擦圧接により接合した後、バリ90を切除する加工を行った場合には、棒材W3の外周面の接合部80を挟んだ両側に、棒材W3の外周面よりも小径の縮径部81が生じることになるので、正面チャック12により棒材W3の接合部80の部分を把持すると、正面チャック12と接合部80ないし縮径部81との間に隙間が生じて棒材W3にガタつきが生じ、棒材W3の加工精度が大きく低下する虞がある。
【0064】
これに対し、本実施の形態の工作機械1では、制御部60は、棒材W3に対する所定の加工及び突っ切り加工を連続的に行っているときに、正面チャック12の軸方向位置と棒材W3の接合部80の軸方向位置とが一致する場合には、正面主軸10(正面チャック12)を棒材W3ないし工具41に対して相対的にZ軸方向に移動させてから正面チャック12により棒材W3の新材W2からなる部分を把持させる制御を行う。これにより、
図9(b)、
図9(c)に示すように、棒材W3の旧材W1と新材W2との接合部80以外の部分を正面チャック12で把持した状態で、すなわち正面チャック12により棒材W3を確実に保持した状態で工具41による所定の加工及び突っ切り加工を行うことができる。よって、棒材W3を精度よく加工することができる。
【0065】
制御部60は、上記した測定棒61を用いた手順によって、棒材W3における接合部80の軸方向位置を常に正確に認識することができる。制御部60は、正確に認識した棒材W3における接合部80の軸方向位置に基づいて、正面チャック12を、棒材W3の旧材W1と新材W2との接合部80以外の部分を把持するように、正面主軸10のZ軸方向への移動を正確に制御することができる。したがって、正面チャック12により棒材W3をより確実に保持させて、棒材W3をより精度よく加工することができる。
【0066】
制御部60は、旧材W1と新材W2とを摩擦圧接により接合した後、バリ90を切除する加工を行った場合において、正面チャック12の軸方向位置と棒材W3の縮径部81の軸方向位置とが一致した場合にも、正面主軸10をZ軸方向に移動させる構成とするのが好ましい。これにより、正面チャック12が、棒材W3の接合部80の部分だけでなく縮径部81の部分を把持することをもなくして、棒材W3をより確実に精度よく加工することができる。
【0067】
本実施の形態では、正面チャック12の軸方向位置と棒材Wの接合部80の軸方向位置とが一致する場合に、正面主軸10(正面チャック12)を背面主軸20から離れる方向に移動させて正面チャック12により棒材W3の新材W2からなる部分を把持させるようにしている。この場合、正面主軸10ないし正面チャック12の移動スペースの制約を少なくして、所望の距離だけ正面チャック12をZ軸方向に移動させることができる。
【0068】
一方、正面チャック12の軸方向位置と棒材Wの接合部80の軸方向位置とが一致する場合に、正面主軸10(正面チャック12)を背面主軸20に近づく方向に移動させてから正面チャック12により棒材W3の旧材W1からなる部分を把持させるようにしてもよい。この場合、棒材W3のより加工部分に近い位置を正面チャック12によって保持することができる。これにより、棒材W3を正面チャック12によりさらに確実に保持して、棒材W3をより精度よく加工することができる。
【0069】
工作機械1がガイドブッシュ30を備えた構成である場合には、制御部60は、棒材W3に対する所定の加工及び突っ切り加工を連続的に行っているときに、
図10(a)に示すように、棒材Wの接合部80の軸方向位置がガイドブッシュ30に位置した場合に、
図10(b)に示すように、棒材W3に対する所定の加工を完了して、棒材W3を接合部80よりも新材W2の側において突切り加工する制御を行う構成とすることができる。これにより、棒材W3の接合部80を有する部分が製品Pとして加工されることを防止することができる。
【0070】
このとき、制御部60は、ガイドブッシュ30により接合部80が支持されないように、予め、接合部80の軸方向位置に基づいて、棒材Wの旧材W1からなる部分からの製品Pの加工数を設定する構成とすることもできる。
【0071】
この場合においても、棒材Wの縮径部81がガイドブッシュ30に位置した場合に、棒材W3に対する所定の加工を完了して、棒材W3を接合部80よりも新材W2の側において突切り加工する制御を行うようにしてもよい。これにより、棒材W3の縮径部81を有する部分が製品Pとして加工されることを防止することができる。
【0072】
制御部60に接合部80のZ軸方向の位置を認識させるための方法としては、上記した測定棒61を用いた方法に限らず、種々の方法ないし構成を採用可能である。
【0073】
例えば、
図11(a)に示すように、旧材W1を背面主軸20に受け渡した後、摩擦接合を行う前に、背面側位置出しプレート72によって旧材W1の背面チャック22からの突出し量を測定するとともに正面側位置出しプレート73によって新材W2の正面チャック12からの突出し量を測定し、
図11(b)に示すように、必要に応じて旧材W1の端面及び新材W2の端面に加工を施した後、
図11(c)に示すように、旧材W1の端面と新材W2の端面とを当接させるとともに旧材位置測定端子62によって旧材W1の後端面の位置を測定し、正面チャック12及び背面チャック22のZ軸方向の位置と、旧材W1の背面チャック22からの突出し量、新材W2の正面チャック12からの突出し量及び旧材位置測定端子62によって測定された旧材W1の後端面の位置とに基づいて接合部80の位置を算出するようにしてもよい。
【0074】
また、制御部60に接合部80のZ軸方向の位置を認識させるための方法としては、上記に限らず、例えば、旧材W1と新材W2とを接合した棒材W3をカメラで撮影し、当該撮影画像を画像認識処理することで接合部80のZ軸方向の位置を検出する方法、光学的な位置検出センサを用いて接合部80のZ軸方向の位置を検出する方法、制御部60の加工プログラムに基づいて接合部80のZ軸方向の位置を検出する方法、棒材Wの加工長に基づいて接合部80のZ軸方向の位置を算出する方法など、種々の方法を採用することができる。
【0075】
前記実施の形態では、旧材W1と新材W2とを接合して1つの棒材W3とした後、
図7(a)に示すように、正面チャック12により棒材W3を把持したまま背面チャック22の棒材W3の把持を解除した状態として正面主軸10を背面主軸20から離れる方向に向けてZ軸方向に移動させることにより、棒材W3を背面主軸20から引き抜くようにしているが、上記の通り、棒材供給部50は、正面主軸10から背面主軸20の側に突出する棒材Wを正面主軸10の側に引き込む機能を有しているので、当該機能を用いて、
図12(a)に示すように、旧材W1と新材W2とを接合して1つの棒材W3とした後に、
図12(b)に示すように、正面主軸10をZ軸方向に移動させることなく、棒材供給部50により棒材W3を旧材W1の長さだけ正面主軸10の側に向けて移動させることで、当該棒材W3を背面主軸20から引き抜く構成とすることもできる。この場合、引込み手段としての制御部60は、棒材W3の旧材W1の部分を背面主軸20から脱抜して正面主軸10の側に引き込むように、正面主軸10、背面主軸20及び棒材供給部50の作動を制御する。
【0076】
より具体的には、
図12(a)に示すように、旧材W1と新材W2とが接合されて棒材W3とされると、正面チャック12の棒材W3の把持と背面チャック22の棒材W3の把持が共に解除されるとともに、棒材供給部50のフィンガー51により棒材W3の後端が把持され、この状態で、
図12(b)に示すように、駆動ロッド52により駆動されてフィンガー51が背面主軸20から離れる後退方向に向けてZ軸方向に旧材W1の長さだけ移動する。これにより、棒材W3を棒材供給部50により正面主軸10の側に引き込み、背面主軸20から脱抜させることができる。
【0077】
このように、
図12(a)、(b)に示す構成によれば、正面主軸10がZ軸方向に移動できない固定主軸に構成された工作機械においても、旧材W1と新材W2とを接合した棒材W3を背面主軸20から引き抜くことができる。
【0078】
棒材W3を背面主軸20から引き抜いた後は、
図8(a)、
図8(b)に示すのと同様に、正面主軸10を主軸モータにより回転駆動して棒材W3を回転させ、加工部40の選択された工具41をY軸線方向(切込み方向)に移動させて棒材W3に切り込ませるとともに正面主軸10(正面主軸台11)をZ軸線方向(送り方向)に移動させて棒材W3に対する所定の加工(切削加工)及び突っ切り加工を連続的に行って、棒材W3から複数の製品Pを加工することができる。
【0079】
また、
図12に示す構成においては、棒材供給部50により棒材W3を旧材W1の長さだけ移動させるようにしているので、移動後の棒材W3を、加工部40等による加工に適した所定量だけ正面主軸10から突出した状態にすることができる。これにより、当該移動後すぐに、背面主軸20から脱抜されて正面主軸10の正面チャック12により把持された棒材W3に対して、加工部40により、製品Pを形成するための所定の加工及び突っ切り加工を行なうことができる。
【0080】
前記実施の形態では、旧材W1を把持するのが背面主軸20の背面チャック22であるが、背面主軸20の軸線と平行な軸を有して背面主軸20に設置されたワーククランプ装置24を設けることも可能である。
【0081】
より具体的には、
図13(a)に示すように、背面主軸20の背面主軸台21に、軸線が背面主軸20の軸線と平行となるように背面主軸20に並べてワーククランプ装置24を設けることができる。ワーククランプ装置24は、背面チャック22と同様の構成を有するクランプチャック(クランプ側把持手段)24aを備えている。クランプチャック24aの内径は正面チャック12の内径と同一となっており、ワーククランプ装置24はクランプチャック24aにより正面主軸10から脱抜した旧材W1を把持することができる。
【0082】
これに対し、背面チャック22は、その内径が正面チャック12の内径よりも小さい構成とされ、正面チャック12に把持されて正面主軸10において加工部40により所定の加工が施されることで背面主軸20の側に向く先端の外径が棒材Wの外径よりも小さく加工されたワーク(製品P)を、背面チャック22により把持することができるようになっている。
【0083】
背面主軸台21に背面主軸20に加えてワーククランプ装置24を設けた構成においては、ワーククランプ装置24が旧材W1を把持し、正面主軸10の正面チャック12が新材W2を把持してお互いの端面を当接させて摩擦圧接を行い、棒材W3を形成する構成とすることができる。
【0084】
すなわち、
図13(a)に示すように、正面主軸10で加工されて棒材Wから突っ切った最終のワーク(製品P)を背面主軸20の背面チャック22に把持させる。次に、
図13(b)に示すように、旧材W1の正面チャック12による把持を解除するとともに旧材W1をワーククランプ装置24のクランプチャック24aで把持させ、その状態で背面主軸台21を正面主軸10から離れるようにZ軸方向に移動させて旧材W1を正面主軸10から脱抜させる。次いで、
図14(a)に示すように、新たな棒材Wを新材W2として棒材供給部50から正面主軸10に供給し、新材W2を正面チャック12により把持させる。そして、
図5、
図6に示す場合と同様の手順で、旧材W1と新材W2の互いに対向する端面を当接させ、旧材W1と新材W2とを摩擦圧接する。これにより、
図14(b)に示すように、旧材W1と新材W2とが互いの軸方向端面を接合面として接合された1つの棒材W3とすることができる。
【0085】
このとき、背面主軸台21には、背面主軸20とワーククランプ装置24とが設けられているので、
図14(b)に示すように、旧材W1と新材W2との摩擦圧接と、背面主軸20の背面チャック22で把持した最終のワーク(製品P)に対する背面側移動加工部46の工具47による所定の加工とを同時に行うことができる。これにより、旧材W1と新材W2との摩擦圧接を完了するまでの時間を短縮することができる。
【0086】
また、背面主軸台21に背面主軸20に加えてワーククランプ装置24を設けた構成では、旧材W1を背面主軸台21に設けたワーククランプ装置24のクランプチャック24aで把持する構成とすることができるので、背面主軸20の背面チャック22の内径を、正面主軸10で加工されたワーク(製品P)に合わせて正面主軸10の正面チャック12の内径よりも小さくすることが可能となる。これにより、工作機械1を、種々の形状の製品Pの製造に適合させることができる。
【0087】
さらに、背面主軸台21に背面主軸20に加えてワーククランプ装置24を設けた構成では、背面主軸20の背面チャック22で把持した最終のワーク(製品P)に対する背面側移動加工部46の工具47による所定の加工を、
図15(a)に示すように、棒材W3を正面主軸10で加工した最終のワーク(製品P)を正面主軸10から背面主軸20に受け渡した後、継続して行うことも可能である。すなわち、
図15(a)に示すように、最終のワーク(製品P)を正面主軸10から背面主軸20に受け渡した後、最終のワーク(製品P)に対する背面側移動加工部46の工具47による所定の加工を開始し、
図15(b)に示すように、旧材W1をワーククランプ装置24のクランプチャック24aで把持して正面主軸10から脱抜させる間においても、背面主軸20ないし背面主軸台21とともに移動する最終のワーク(製品P)に工具47を追従させて当該工具47による所定の加工を継続して行う。これにより、旧材W1の正面主軸10からの脱抜を完了するまでの時間を短縮することができる。
【0088】
このように、背面主軸台21に、背面主軸20に加えてワーククランプ装置24を設けた構成とした場合には、背面主軸20が旧材W1を把持している間も、棒材である最終の製品Pに対して背面側移動加工部46の工具47による所定の加工を行うことが可能な構成とすることができる。
【0089】
また、背面主軸台21に背面主軸20に加えてワーククランプ装置24を設けた構成では、正面チャック12の内径とワーククランプ装置24の内径を同一とし、背面主軸20の背面チャック22の内径を、正面主軸10で加工されたワーク(製品P)に合わせることにより、最終のワーク(製品P)を正面主軸10から背面主軸20に受け渡した後に最終のワークを搬出した後で旧材W1と新材W2との摩擦圧接をワーククランプ装置24と正面チャック12との間で行うことが可能である。
【0090】
本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることはいうまでもない。
【0091】
例えば、前記実施の形態では、旧材W1と新材W2とを摩擦圧接により接合するようにしているが、これに限らず、例えば旧材W1と新材W2の何れか一方の端部に凹部を設け、旧材W1と新材W2の何れか他方に凸部を設け、これらを嵌合させることで旧材W1と新材W2とを接合するなど、その接合の手段は種々変更可能である。
【0092】
前記実施の形態においては、工作機械1はガイドブッシュ30を備えているが、ガイドブッシュ30を備えない構成とすることもできる。
【符号の説明】
【0093】
1 工作機械
2 基台
3 正面側移動機構
4 背面側移動機構
10 正面主軸(第1主軸)
11 正面主軸台
12 正面チャック(第1把持手段)
13 チャックスリーブ
20 背面主軸(第2主軸)
21 背面主軸台
22 背面チャック(第2把持手段)
23 チャックスリーブ
24 ワーククランプ装置
24a クランプチャック(クランプ側把持手段)
30 ガイドブッシュ
31 ガイドブッシュ支持台
40 加工部(加工手段)
41 工具
42 刃物台
43 背面側固定加工部(加工手段)
44 工具
45 背面刃物台
46 背面側移動加工部(加工手段)
47 工具
48 刃物台
50 棒材供給部
51 フィンガー
52 駆動ロッド
60 制御部
61 測定棒(位置認識手段)
62 旧材位置測定端子(位置認識手段)
70 凹部
71 凹部
72 背面側位置出しプレート
73 正面側位置出しプレート
80 接合部
81 縮径部
90 バリ
W 棒材
W1 旧材
W2 新材
W3 棒材
P 製品
A 突出長さ
B 突出長さ
α 潰れ長さ
L 長さ