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特許7312768電子操縦アンテナシステムのためのビームアライメントにおいての、または、そのビームアライメントに関係する改善
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-12
(45)【発行日】2023-07-21
(54)【発明の名称】電子操縦アンテナシステムのためのビームアライメントにおいての、または、そのビームアライメントに関係する改善
(51)【国際特許分類】
   H04B 7/08 20060101AFI20230713BHJP
   H01Q 1/28 20060101ALI20230713BHJP
   H01Q 3/30 20060101ALI20230713BHJP
   G01S 3/48 20060101ALN20230713BHJP
   G01S 7/02 20060101ALN20230713BHJP
【FI】
H04B7/08 422
H01Q1/28
H01Q3/30
G01S3/48
G01S7/02 216
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2020562718
(86)(22)【出願日】2019-05-03
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-09-09
(86)【国際出願番号】 GB2019051238
(87)【国際公開番号】W WO2019215430
(87)【国際公開日】2019-11-14
【審査請求日】2021-12-22
(31)【優先権主張番号】1807538.2
(32)【優先日】2018-05-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】520342068
【氏名又は名称】ハンファ・フェーザ・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100162846
【弁理士】
【氏名又は名称】大牧 綾子
(72)【発明者】
【氏名】シュチェパニク,ジョン・ポール
(72)【発明者】
【氏名】シュライバー,フィリップ
(72)【発明者】
【氏名】マヨ,リチャード・ハモンド
【審査官】川口 貴裕
(56)【参考文献】
【文献】特表2011-528522(JP,A)
【文献】特表2014-510422(JP,A)
【文献】特開平11-274976(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0105054(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 7/08
H01Q 1/28
H01Q 3/30
G01S 3/48
G01S 7/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のアンテナ素子を備える受信電子操縦アンテナシステムの中でビームを自動アライメントする方法であって、
コードのリストを用意するステップであって、各々のコードは、それぞれの送信エンティティにより送信される信号内に埋め込まれ、前記送信される信号を前記送信エンティティから生じたものとして識別する、用意するステップと、
送信機を選択し、前記送信機に対する対応するコードを識別するステップと、
各々のアンテナ素子に対して、
第1の通信信号を受信するステップと、
前記複数のアンテナ素子の各々により受信される第1の通信信号の複合である第2の信号を受信するステップと、
前記第1の通信信号、および前記複数のアンテナ素子の各々により受信される前記第1の通信信号の複合である前記第2の信号を、前記識別されるコードと相関させて、第1および第2の出力信号をそれぞれ生成するステップと、
前記第1および第2の出力信号を比較し、前記第1の出力信号と前記第2の出力信号との間の差を最小化するための位相シフトおよび/または時間遅延を決定するステップと、
前記位相シフトおよび/または時間遅延を前記第1の受信される通信信号に適用するステップと
を含む、方法。
【請求項2】
前記第1の出力信号および前記第2の出力信号を比較するステップは、アルゴリズムの実行によって実行され、前記アルゴリズムは、反復的に実行される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記コードは、相互相関を最小化するために直交する、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記コードを、前記コードが、固定されたフレーミング構造の中で送信されるように、前記送信される信号内に埋め込む、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記固定されたフレーミング構造を、GPSティックと同期させる、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記コードを、前記送信される信号内に、前記コードを前記信号上に重ね合わせることにより埋め込む、請求項4または5に記載の方法。
【請求項7】
前記コードを、前記送信される信号内に、前記コードを前記信号とインターリーブすることにより埋め込む、請求項4または5に記載の方法。
【請求項8】
前記電子操縦アンテナシステムは、1つまたは複数のフェーズドアレイアンテナを含む、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記電子操縦アンテナシステムの前記アンテナ素子は、移動する能力がある乗物に設けられる、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記乗物を、航空機、自動車、列車、および、ヨットなどの船舶を含む群から選択する、請求項に記載の方法。
【請求項11】
前記受信電子操縦アンテナシステムを、前記選択された送信機に対応するコードの相関させられるパワーを最大化するために走査することができる、複数のビーム幅およびゲインを有するように構成する、請求項1から1のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記電子操縦アンテナシステムは、複数のアンテナ素子を備え、前記アルゴリズムを実行して、前記選択された送信機に対応する前記コードの前記相関させられるパワーを最大化し、以て、前記ビームを、前記選択された送信機にアライメントするステップは、前記各々のアンテナ素子の中で起こる、請求項2に記載の方法。
【請求項13】
前記位相シフトおよび/または時間遅延を前記第1の受信される通信信号に適用するステップは、前記選択された送信機に対応する前記コードの前記相関させられるパワーを最大化し、以て、前記電子操縦アンテナシステムの受信ビームを、前記選択された送信機にアライメントする、請求項1から1のいずれかに記載の方法。
【請求項14】
コードのリストからのコードを信号内へと埋め込むように、および、前記埋め込まれたコードを内包する前記信号を送信するように構成される少なくとも1つの送信エンティティと、
少なくとも1つの受信アンテナを備え、請求項1から1のいずれかに記載の方法を行うように構成される受信電子操縦アンテナシステムと
を備え、
コードの前記リストは、前記受信電子操縦アンテナシステムに対して用意されるコードの前記リストと同じであり、前記埋め込まれたコードは、前記送信エンティティを識別する、システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、潜在的には、ただし排他的にではなく、フェーズドアレイアンテナを含む、電子操縦アンテナシステムのためのビームアライメントに対する改善に関し、特に、改善された自動アライメント技法に関する。
【背景技術】
【0002】
電子操縦アンテナシステム、特にフェーズドアレイアンテナを含む電子操縦アンテナシステムは、複数の異なるエンティティからの送信を検出することができる場合があり、問題が、これらのエンティティからの送信の間で区別することにおいて生まれる場合がある。これらの問題点を解決することに対する1つの手法は、所望の送信機のおおよその位置に関する先験的な知識に基づいて反復することである。おおよその位置に関するこの知識を使用して、フェーズドアレイを、空の関連性のある扇形区域内の最も強い信号に収束し、その信号を追尾するように構成する場合がある。しかしながら、所望の信号が、空のその扇形区域内の最も強い信号でないならば、アンテナは、誤った送信機に合焦(focus)する場合がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明が生まれたのは、この背後の事情を背景にしてのことである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明によれば、複数のアンテナ素子を備える受信電子操縦アンテナシステムの中でビームを自動アライメントする方法であって、コードのリストを用意するステップであって、各々のコードは、それぞれの送信エンティティにより送信される信号内に埋め込まれ、送信される信号を前記送信エンティティから生じたものとして識別する、用意するステップと、送信機を選択し、その送信機に対する対応するコードを識別するステップとを含む、方法を提供する。
【0005】
方法は、各々のアンテナ素子に対して、第1の通信信号を受信するステップと、複数のアンテナ素子の各々により受信される第1の通信信号を表す第2の信号を受信するステップと、第1および第2の信号を識別されるコードと相関させて、第1および第2の出力信号を生成するステップと、第1および第2の出力信号を比較し、第1の出力信号と第2の出力信号との間の差を最小化するための位相シフトおよび/または時間遅延を決定するステップと、位相シフトおよび/または時間遅延を第1の受信される通信信号に適用するステップとをさらに含む。
【0006】
有利には、一部の実施形態において、位相シフトおよび/または時間遅延を第1の受信される通信信号に適用するステップは、選択された送信機に対応するコードの相関させられるパワーを最大化し、以て、アンテナシステムの受信ビームを、選択された送信機にアライメントする。
【0007】
本明細書において定義される際の用語「相関させる」は、任意のプロセスであって、それにより、信号を、別の信号と比較して、または組み合わせて、それらの2つの信号の間の類似性に比例する出力を生成する、任意のプロセスを指すことを意味する。
【0008】
本明細書において言及される第1の通信信号は、チャネルにより規定される連続的な信号であり、同じチャネル上で受信される連続的な信号の任意の部分は、同じ第1の通信信号の一部分を含む。
【0009】
さらには、本発明の方法を行うためのシステムであって、コードのリストからのコードを信号内へと埋め込むように、および、埋め込まれたコードを内包する信号を送信するように構成される少なくとも1つの送信エンティティと、少なくとも1つの受信アンテナを備える受信電子操縦アンテナシステムとを備え、コードのリストは、受信電子操縦アンテナシステムに対して用意されるコードのリストと同じであり、埋め込まれたコードは、送信エンティティを識別する、システムを提供する。
【0010】
コードを各々の送信される信号内に埋め込むことであって、コードは送信エンティティを識別する、埋め込むこと、コードのリストを用意すること、送信機を選択し、その送信機に対する対応するコードを識別すること、反復的収束アルゴリズムを実行して、選択された送信機に対応するコードの相関させられるパワーを最大化し、以て、受信ビームを、選択された送信機にアライメントすること。
【0011】
本発明は、それゆえに、エンティティのおおよその位置の先験的な知識なしでの効率的な信号取得を可能なものにする。この信号取得は、初期の走査が空全体を取り入れることになるビームポインティングに対する開ループ手法である。
【0012】
方法は、埋め込まれたコードを探索するステップを含むので、その方法は、システムが、そのシステムのビームを、存在する最も強い信号ではない送信される信号にアライメントすることを可能とする。そのため、方法は、システムが、いくつもの他の送信エンティティの存在下で、選定されたエンティティから信号を自律的および自動的に取得することを可能にする。
【0013】
コードは、相互相関を最小化するために直交する場合がある。それゆえに、各々のコードを、任意の2つのコードの相互相関が最小化されるように、他のコードに直交するように選択する。この選択することには、求められないコードが、所望のコードと相関し、所望のコードを、コードの間の相関に起因して実際的に可視でなくすることを防止する意図がある。
【0014】
方法を、GPSシステムまたは慣性航法信号(INS)システムの中で展開する場合がある。
【0015】
コードを、それらのコードが、固定されたフレーミング構造の中で送信されるように、送信される信号内に埋め込む場合がある。特に、固定されたフレーミング構造を、GPSティック(tick)と同期させる場合がある。GPSティックを、一般的に、毎秒のパルスとして提供し、フレーミング構造を、このパルスを基につくり上げることができる。
【0016】
一部の実施形態において、コードを、送信される信号内に、コードを信号上に重ね合わせることにより埋め込む。重ねられたコードを、求められるデータ帯域の中で、ただし、求められるデータより低いパワーで連続的に送信する場合がある。例えば、コードは、位相シフトキー(PSK)サブキャリアである場合がある。
【0017】
一部の実施形態において、コードを、送信される信号内に、コードを信号とインターリーブすることにより埋め込む。インターリーブされたコードを、求められるデータストリームの中で、時間多重化された方式の何らかの形式で、求められるデータと同じパワーで送信する場合がある。
【0018】
一部の実施形態において、コードを、別個のチャネル上で、狭帯域幅ビーコンの形式で、あらかじめ決定された周波数で提供する。そのようなビーコンを、各々の衛星上で、衛星が複数の送信される信号を提供している場合があるとしても提供することになる。
【0019】
電子操縦可能アンテナシステムは、静止衛星またはLEO衛星である場合がある、複数の衛星を含む場合がある。
【0020】
本方法は、LEO衛星のコンステレーションからデータを受信することに対して特に適切であり、なぜならば、異なるアンテナに対するアンテナのアライメントは、異なるLEO衛星が地球上の電子操縦可能アンテナの視界に入る際の、頻繁な必要事項であるからである。
【0021】
本方法は、さらには、地球の表面に相対的に移動している電子操縦可能アンテナシステムにおいてデータを受信することに対して特に適切である。そのようなシステムは、地球の表面を横断して、または、地球の表面の上方を移動している、およびそれゆえに、静止衛星に相対的に移動している、航空機または船または列車または他の乗物上に位置する場合がある。
【0022】
電子操縦可能アンテナシステムは、地球の表面に相対的に移動する能力がある複数の乗物を含む場合がある。これらの乗物を、航空機、自動車、列車、および、ヨットなどの船舶を含む群から選択する場合がある。
【0023】
電子操縦可能アンテナシステムは、複数の地球上の基地局を含む場合がある。
【0024】
システムを、選択されたコードを内包する信号の相関させられるパワーを最大化するために走査することができる、複数のビーム幅およびゲインを有するように構成する場合がある。方法は、それゆえに、可視の空を2つの半分体へと分割し、どちらの半分体内に所望の送信機が位置するかを決定するステップの初期の反復を含む場合がある。第2の反復を、次いで、より高いゲインを伴う、より狭いビーム幅を使用して、所望の送信機を内包する空の半分体を2つの半分体、実際的には可視の空の四半分へと実際的に分割し、どちらの部分内に所望の送信機が位置するかを決定して達成することになる。さらなる反復が、各々、視界とされる空の扇形区域を実際的に半分にすることを、ビームが送信機の位置に合焦させられるまで行って、後に続くことになり、こうして、送信機からの送信されるビームの効率的な受信を可能にする。
【0025】
本方法を、マルチビームシステムの中で展開する場合があり、システムの中の各々のビームを、異なるコードに関して相関し、それゆえに、異なる送信エンティティに対してビーム形成するように導く場合がある。この方法は、アンテナと送信機との間に相対的な移動があるときに特に適切であり、なぜならば、好ましい送信機を切り替えることが、システムの機能性の所要の部分であることになるからである。例えば、LEO衛星のコンステレーションから送信を受信する地球上の電子操縦可能アンテナに対して、マルチビームシステムの中の1つのビームが、第1のLEO衛星を追尾する場合があり、一方で、第2のビームが、シーケンス内の次のLEO衛星、すなわち、最適な場所をとることになる次の衛星を探索し、こうして、地球上の電子操縦可能アンテナの視界の中を通過する衛星のコンステレーションを通しての効率的な移行を可能にする。
【0026】
このマルチビーム機能性は、さらには、静止衛星から送信を受信する、移動する乗物上に設けられる電子操縦可能アンテナに対して非常に有用であることになる。
【0027】
本発明を、今から、単に例として、および、添付図面を参照して、さらに、およびより詳しく説明することになり、それらの例および図面において、本願では、フェーズドアレイアンテナを電子操縦可能アンテナの例と考える。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】本発明の方法を実施するように構成されるフェーズドアレイアンテナシステムを示す図である。
図2】本発明の方法を実施するように構成されるさらなるフェーズドアレイアンテナシステムを示す図である。
図3】例フェーズドアレイアンテナシステムを示す図である。
図4】本発明の方法を実施するように構成されるさらなるフェーズドアレイアンテナシステムを示す図である。
図5図4のフェーズドアレイアンテナシステムのより詳細な例構成を示す図である。
図6】信号フレーム構造であって、その構造の中に埋め込まれるコードを伴う、信号フレーム構造を示す図である。
図7】サブキャリアとして埋め込まれるコードを伴う信号を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
フェーズドアレイアンテナは、複数の素子を備え、それらの素子の各々が、可視の空全体を視界とする能力がある。一部の実施形態において、アンテナは、1000を超過する、2500を超過する、または、5000を超過さえする素子を有する場合がある。フェーズドアレイアンテナを、電磁通信信号を送出および受信するときの、改善されたゲインおよび信号対雑音比をもたらすために使用することができる、パネルとして構成することができる。フェーズドアレイアンテナシステムは、1つまたは複数のフェーズドアレイアンテナパネルを備える場合があり、それらのパネルは、LEOまたは静止衛星などの、電磁通信信号の送信機または受信機に、最大ゲインのそれらのパネルのビームを自動的に合焦させる。
【0030】
フェーズドアレイアンテナシステムを合焦させることは、受信機として作動するフェーズドアレイアンテナの帯域幅を低減する。受信機が受ける雑音は、システムの帯域幅に比例する。例として、帯域幅を10分の1に低減するならば、信号対雑音比を10dBだけ改善する。アンテナシステムの帯域幅を、例えばビーム幅、入力インピーダンス、パターン、偏波、サイドローブレベル、ゲイン、ビーム方向、放射効率などのアンテナ特性が容認可能な値の中にある、周波数の範囲と考えることができる。
【0031】
ビームを、相対的な位相シフトおよび/または時間遅延をセットするために使用されるフィードバック信号を生成することにより、信号の中に埋め込まれた所望のコードを伴う選択された送信機に合焦させ、それらの位相シフトおよび/または時間遅延を、アンテナシステムが遠距離通信において使用されるときに、素子の通常の機能実行の一部分である変調/復調動作の一部分として使用される、素子の各々と関連付けられる局部制御可能発振器に適用する。
【0032】
フィードバック信号を、個々の素子の出力信号を複数の他の素子の出力信号の平均を表す「コンセンサス(consensus)出力信号」と比較することにより生成することができる。
【0033】
フィードバック信号は、個々の素子の出力信号が、複数の他の素子の出力信号と同じである、または、複数の他の素子の出力信号と同じ値を表すまで、個々の素子と関連付けられる局部位相シフタおよび/または時間遅延生成器の相対的な位相を調節する。この調節は、選択されたコードを内包する信号の相関させられるパワーを最大化する目標関数に基づき、その目標関数は、それゆえに、ビームが、選択された送信エンティティに合焦することを引き起こすことになる。このステップを、最小二乗平均アルゴリズムまたは遺伝的アルゴリズムを含む、ただしそれらに制限されない、反復的収束アルゴリズムにより実施する場合がある。各々の個々の素子が他の素子と同じ出力信号を提供するとき、局部位相シフタおよび/または時間遅延生成器を、選択された通信信号と十分に位相アライメントされると考える場合がある。
【0034】
信号と関連付けられる雑音の存在は、反復的収束アルゴリズムの使用を必要とするものであり、なぜならば、単一の算出は、信号と関連付けられる雑音により乱されることになるからである。
【0035】
コンセンサス出力信号の使用は、より正確なフィードバック信号が生成されることを可能にすることができるものであり、なぜならば、コンセンサス信号と関連付けられる総体的な雑音は、個々の素子において受信される個々の信号の雑音より少ないからである。
【0036】
システムは、複数個のビームを有する場合があり、本方法は、それゆえに、第1のビームが、第1の選択された送信エンティティにアライメントされ、第2のビームが、識別情報コードが知られている代替的な送信機の完全な一覧表を求めて捜索し、第1のビームを参照して、その一覧表を調整するように構成されるように動作する場合がある。方法は、特定の順序で、知られているシーケンスのコードに合焦することにより、単一の選択されたコードに単に合焦しないステップを含む場合がある。第2のビームが、知られている送信機のすべてを追跡しているならば、コードシーケンスは、アンテナがビーム形成すべきである次の選択されたコードの識別情報を定めることができる。
【0037】
本方法を行うように構成されるフェーズドアレイアンテナシステム10の例を、図1において示す。システムは、各々が信号を送信する複数の送信機20を備える。フェーズドアレイ30が、送信機20のすべてから信号を受信する。受信された信号を、すべて相関器40内へと給送する。システム10は、さらには、異なる送信機20に対応するコードのリスティング50を備える。ユーザは、マルチプレクサ60によって所望の信号を指示する。この選択を、相関器40に、先へと給送し、その相関器40は、所望のコードに対応する信号を識別し、そのコードと関連付けられる信号を外に給送する。
【0038】
例示される例において、4つの送信機20:A、B、C、およびDがある。各々の送信機20は、識別コードを含む信号を送信する。送信機Aは、信号AおよびコードAを送信し、送信機Bは、信号Bおよびコードbを送信し、送信機Cは、信号CおよびコードCを送信し、送信機Dは、信号DおよびコードDを送信する。ユーザは、「マックス(mux)」60によってコードBを選択し、コードBの詳細が、リスティング50から引き出される。コードBの詳細を、相関器40に、先へと給送し、その相関器40は、受信される総体的な信号から、コードBと関連付けられる信号、すなわち信号Bを抽出する。この信号Bを、次いで、システムから出力する。
【0039】
受信される所望の信号の強度を最適化するために、アレイ30を、選択された信号に向けて操縦する。アルゴリズムを、相関器の中で実行して、選択された送信機に対応するコードを内包する信号の相関させられるパワーを最大化し、以て、ビームを、選択された送信機にアライメントする。ビームを、可視の空の中の所望の送信機の場所の何らの先験的な知識もなしに操縦することができるように、アルゴリズムは、反復的に収束するアルゴリズムである場合がある。
【0040】
この構成は、既存の電子操縦アンテナシステムへの付加機器として適切である。その状況は、システムが、どのようにビーム形成すべきかに関する先験的な知識を所有することを要求する。この構成を、既存の電子操縦アンテナに対して設けることにより、システム較正に対する必要性がないことになる。しかしながら、複雑さを低減する、下記で論じられるような、より手際のよい解決策がある。
【0041】
図2は、方法を行うように構成されるフェーズドアレイアンテナシステム10のさらなる例を示す。システム10は、図1において示されるシステムと実質的に同じ構成物部分を備え、類する参照番号が、それゆえに、両方の線図に適用される。図1および2それぞれにおいて示される2つのシステムは、同様の方法を動作させる。動作させられる方法の間の主な違いは、図2において、相関器45を、フェーズドアレイ30の中の各々の素子35に対して設けるということである。所望の信号の選択、および操縦を、それゆえに、素子35ごとを基にして達成し、これらの素子を、ビーム形成ネットワーク42において組み合わせる。
【0042】
図1の構成は、相関器の数の低減により現実化される複雑さの低減に起因して、よりコスト効果が高く、実現するのがより容易であるが、図2の構成は、ビーム形成プロセスにおいてのいくつかの問題を解決する。
【0043】
図2の実施形態の利点をより良好に解説するために、各々の素子35に対する相関器45を伴うフェーズドアンテナの例構成を、最初に、図3に関して説明することになる。このフェーズドアレイアンテナシステムは、WO2010/007442において、より詳細に説明されるフェーズドアレイアンテナシステムと同様であり、その特許文献は、本明細書においてその特許文献の全体が組み込まれている。
【0044】
図3は、通信信号34を受信するように構成される複数の素子35を備えるフェーズドアレイアンテナシステム10の例構成を示し、それらの素子35の各々は、相関器45を伴って構成され、バス36に結合され、そのバス36は、素子35のすべての出力の複合物を表す、大域的な組み合わされた信号を搬送する。
【0045】
バス36からの複合値を表す信号を、各々の素子35への入力信号として提供する。各々の素子35は、次いで、その素子35の相関器45を使用して、その素子35自体の誤差信号37を、バス36からの複合信号、および、その素子35のそれぞれの、素子の出力信号を使用して内部的に生成する。誤差信号37は、位相誤差信号、または時間誤差信号、または、位相誤差および時間誤差を含む複合信号であることがある。この誤差信号37を、次いで、局部位相シフタおよび/または時間遅延生成器38により使用して、素子35に対する、位相シフトされた、および/または、時間遅延させられた出力信号を生成する。
【0046】
バス36上の信号を、「コンセンサス信号」と考える場合があり、なぜならば、その信号は、複数の素子35により出力される信号の指示を提供し、個々の素子の出力を、フェーズドアレイアンテナ内の他の素子との一致/調和へと至らせるために使用されるからである。
【0047】
この例において、各々の素子35と関連付けられるそれぞれの局部位相シフタおよび/または時間遅延生成器に提供される誤差信号を、バス36上の出力信号の値を素子の出力信号と比較するための、および、その比較を表すアナログフィードバック信号を生成する、素子35により実施される処理の結果として生成する。
【0048】
バス36上の信号は、すべての素子35により出力される電流信号の重ね合わせを含む。素子35により出力される電流信号の重ね合わせは、出力ベースバンド信号の平均値の指示を提供する場合がある。
【0049】
例として、100個の素子をバス36に結合し、それらの素子のうちの80個が、正電流を伴うベースバンド出力信号を提供し、残りの20個の素子が、負電流を伴うベースバンド出力信号を提供するならば、出力バス上の100個のベースバンド電流信号の重ね合わせは、正電流を表す複合信号をもたらすことになる。この複合信号を、素子の各々により、その素子のベースバンド出力が何であるべきかの指標として使用することができる。出力バス上の信号を、全体としてのフェーズドアレイアンテナに対する、その時点においての最も普通の出力信号の指示と考える場合がある。
【0050】
アナログフィードバック信号を付与して、素子35Aに適用されるべきである相対的な位相および/または時間遅延をセットするとき、素子35Aを、第1のアンテナ素子と考え、素子35Bから素子35Cの素子の各々を、第2のアンテナ素子と考える。第2のアンテナ素子において受信される信号を、第1のアンテナ素子に適用される位相シフトおよび/または時間遅延を決定するときに使用する。
【0051】
同様に、アナログフィードバックを素子35Bに付与するとき、第1のアンテナ素子と考えられるのは素子35Bであり、他の素子のすべては、第2のアンテナ素子と考えられる、等々である。アンテナ素子35の各々を、第1のアンテナ素子と考えることを、他の第2のアンテナ素子の各々において受信される信号の関数として、そのアンテナ素子35に適用されるべきである位相シフトおよび/または時間遅延を決定するときに行うことができると理解されるであろう。
【0052】
一旦各々の素子をアライメントすると、その素子は、その素子の局部コンステレーションを、コンセンサスコンステレーション、バス36とアライメントするために必要である、局部位相シフタおよび/または時間遅延生成器38と、受信される通信信号34との間の所要の関係性を維持する場合がある。フェーズドアレイアンテナを、光の速度/データシンボル周期との関係において小さいと想定する。
【0053】
このプロセスを、経時的に、および、フェーズドアレイシステム内のすべての素子35の間で繰り返すとき、結果は、システムが、入来する信号の方向においてのビーム形成を収束させ、最大化するためのものである。
【0054】
しかしながら、上記で述べたように、この手法に関するいくつかの問題がある。
【0055】
第1の問題は、ビームが、知られている方向において初期に形成されるように、各々のアンテナ素子35の局部位相シフタおよび/または時間遅延生成器38を、互いに合致しているようにセットするために、システムの開始状態の「先験的な」知識を有する必要性である。
【0056】
すなわち、図3に関して説明される手法において、システムを、無作為の未定義の状態で初期化するならば、バス36により搬送される、結果的に生じる大域的なコンセンサス信号は、各々の素子の信号の無作為の合計であり、強め合うように合計する結果ではないことになる。この手法は、各々の素子においての相関器プロセスが、程よい時間期間内に各々の素子の誤差信号を算出するために苦労することになるという手段である。
【0057】
第2の問題は、一旦アンテナの局部位相シフタおよび/または時間遅延生成器38が合致していても、送信エンティティ、例えば送信衛星が、フェーズドアレイアンテナ10に関してどこにあるかの知識を有する必要性があり、その知識を有することは、ビームをその方向においてアライメントし、アンテナゲインを使用して、所望の信号を、空内のすべての他の所望でない信号に勝るように増幅するためのことであるということである。
【0058】
アレイがすでにビーム形成され、所望の信号が主ビームの中にあるならば、アンテナゲインは、この信号が、大域的なコンセンサス信号上の他の信号より際立って高いことを可能にすることになる。素子の局部位相シフタおよび/または時間遅延生成器38は、次いで、それゆえに、いかなる他のものよりもむしろ、この信号に関して誤差を生み出すことになる。
【0059】
しかしながら、所望の信号が主ビームの中または付近にないならば、アンテナゲインは、所望の信号を増幅しないことになり、ゆえに、アレイに入射するすべての信号は、同様のレベルでのものであることがある。そのような状況において、アルゴリズムは、その時点においての、および、必ずしも所望の信号ではない、最も強い信号に収束することを開始することになる。
【0060】
アルゴリズムが、正しい信号に収束し、ゆえに、正しい方向においてビーム形成するということを保証するために、各々の素子内の相関器45が、より正確な誤差信号37を生み出すことができるように、所望の信号を増幅する、または、すべての他の信号を減衰させる必要性がある。この増幅または減衰を、コードマスクフィルタ(code mask filter)41を素子の各々に追加することにより達成することができる。
【0061】
図4および5は、相関器45が、アンテナ素子35の各々において処理されている、受信される信号に適用される、本発明による例フェーズドアレイアンテナシステム10を例示する。
【0062】
特に、図4は、本発明の方法を行うためのシステムを例示し、図5は、図4において示されるシステムの具体的な例構成を例示する。
【0063】
コードマスクフィルタ41は、処理される信号34をフィルタリングして、上記で説明されたような選択された送信エンティティにより埋め込まれたコードを内包する信号を分離し、こうして、所望の衛星信号が、アレイにおいて受信される他の求められない信号に関してフィルタリング除去されることを可能にする。
【0064】
この構成において、バス36により搬送される大域的なコンセンサス信号は、調和させられたコンセンサス信号になり、すべてのアンテナ素子35は、その素子にたまたま入射するどの信号に対しても、知覚される値を出力することとは対照的に、フィルタリングされた信号に対する、それらの素子の知覚される値を出力する。
【0065】
図5の例において、所望の衛星を特定するコード入力46を、各々の素子35内へとロードする。次いで、各々の素子35において、局部的に受信される信号を受け取り、この信号をコード入力46と相関させて、角度アルファ43を生み出す、第1の相関器45Aがある。さらには、バス36により搬送される調和させられた大域的なコンセンサス信号を受け取り、この信号をコード入力46と相関させて、角度ベータ44を生み出す、第2の相関器45Bがある。アルファ43およびベータ44を比較することにより、誤差プロセッサ39は、各々の素子35においてアルファ43とベータ44との間の差を最小化するための誤差信号37を生成することができる。
【0066】
フィルタリングされた局部的に受信される信号、および、調和させられた大域的なコンセンサス信号を利用する他の相関アルゴリズムを、さらには使用する場合がある。
【0067】
図6および7は、コードを信号の中に埋め込むことができる、2つの異なる手立てを概略的に示す。図4において、信号フレーム構造を、複数のシンボルSを含むように線図で例示する。コードシンボルCを、これらの信号シンボルの間に挿入する。コードシンボルCは、信号シンボルの間に、あらかじめ決定された割合で出現する。割合を、あらかじめ決定し、プロトコルにおいて提示することになる。コードシンボルCは、そのコードシンボルCが1つの信号シンボルと置き換わるように、周波数プロファイル、および、信号シンボルSに対応する時間においての長さを有する。
【0068】
図7において、信号SのパワーP(y軸)および周波数f(x軸)プロファイルを例示する。コードCを、より低いパワー、および、より制限された周波数帯域で、信号Sのエンベロープの中に埋め込む。このコードCを、信号Sのもとで絶えず送信する。
【0069】
本発明を、いくつもの実施形態を参照して例として説明したが、本発明を、開示される実施形態に限定しないということ、および、代替的な実施形態を、添付される特許請求の範囲において定義されるような本発明の範囲から逸脱することなく構築することができることを、当業者はさらに理解するであろう。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7