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特許7312778試料加工装置の調整方法および試料加工装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-12
(45)【発行日】2023-07-21
(54)【発明の名称】試料加工装置の調整方法および試料加工装置
(51)【国際特許分類】
   H01J 37/305 20060101AFI20230713BHJP
   H01J 37/20 20060101ALI20230713BHJP
   G01N 1/28 20060101ALI20230713BHJP
【FI】
H01J37/305 A
H01J37/20 A
G01N1/28 G
G01N1/28 F
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2021036229
(22)【出願日】2021-03-08
(65)【公開番号】P2022136554
(43)【公開日】2022-09-21
【審査請求日】2022-06-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000004271
【氏名又は名称】日本電子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090387
【弁理士】
【氏名又は名称】布施 行夫
(74)【代理人】
【識別番号】100090398
【弁理士】
【氏名又は名称】大渕 美千栄
(74)【代理人】
【識別番号】100161540
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 良伸
(72)【発明者】
【氏名】小塚 心尋
【審査官】小林 幹
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/033591(WO,A1)
【文献】特開2005-091094(JP,A)
【文献】特開2016-081878(JP,A)
【文献】特開2006-269342(JP,A)
【文献】特開2009-097934(JP,A)
【文献】国際公開第2020/230182(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01J 37/00-37/36
G01N 1/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料にイオンビームを照射するイオン源と、試料をスイングさせるスイング機構と、イオンビームの照射位置に試料の目標加工位置を合わせるための位置合わせ用カメラと、前記位置合わせ用カメラで取得された画像を表示する表示部と、を含む、試料加工装置の調整方法であって、
前記スイング機構のスイング軸に対して前記位置合わせ用カメラの位置が固定された状態で、試料に形成されたイオンビームの照射痕を、前記位置合わせ用カメラで観察し観察画像を取得する工程と、
前記照射痕の位置に基づいて前記観察画像から前記表示部に表示される表示画像を切り出すことによって、前記イオンビームの照射位置と前記表示画像の視野の位置を合わせる工程と、
を含む、試料加工装置の調整方法。
【請求項2】
請求項1において、
前記イオンビームの照射位置と前記表示画像の視野の位置を合わせる工程では、前記イオンビームの照射位置が前記表示画像の視野の中心に位置するように、前記観察画像から前記表示画像を切り出す、試料加工装置の調整方法。
【請求項3】
請求項1または2において、
前記位置合わせ用カメラは、前記観察画像の視野の中心を前記スイング軸が通るように固定される、試料加工装置の調整方法。
【請求項4】
請求項3において、
前記表示部に、前記スイング軸を示す画像を、前記表示画像に重ねて表示する、試料加工装置の調整方法。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれか1項において、
前記表示部に、前記スイング軸と前記イオンビームの照射位置との間の距離が許容範囲を超える範囲を示す画像を、前記表示画像に重ねて表示する、試料加工装置の調整方法。
【請求項6】
請求項1ないし5のいずれか1項において、
前記表示部に、前記イオンビームの照射位置と照射範囲を示す画像を、前記表示画像に重ねて表示する、試料加工装置の調整方法。
【請求項7】
試料にイオンビームを照射するイオン源と、
試料をスイングさせるスイング機構と、
イオンビームの照射位置に試料の目標加工位置を合わせるための位置合わせ用カメラと、
前記位置合わせ用カメラで取得された画像を表示する表示部と、
前記位置合わせ用カメラの観察画像から表示画像を切り出して、前記表示部に表示させる表示制御部と、
を含み、
前記表示制御部は、前記観察画像から前記表示画像を切り出す位置を変更することによって、前記表示画像の視野を変更し、
前記表示制御部は、
試料に形成されたイオンビームの照射痕の位置の情報を取得する処理と、
前記照射痕の位置の情報に基づいて前記観察画像から前記表示画像を切り出して、前記イオンビームの照射位置と前記表示画像の視野の位置を合わせる処理と、
を行う、試料加工装置。
【請求項8】
請求項7において、
前記表示画像の視野を変更する操作を受け付ける操作部を含み、
前記表示制御部は、前記操作部からの操作情報に基づいて前記観察画像から前記表示画像を切り出す位置を変更することによって、前記表示画像の視野を変更する、試料加工装置。
【請求項9】
請求項において、
前記表示制御部は、
前記照射痕の大きさの情報を取得する処理と、
前記照射痕の位置の情報および前記照射痕の大きさの情報に基づいて、前記イオンビームの照射位置と照射範囲を示す画像を前記表示部に表示させる処理と、
を行う、試料加工装置。
【請求項10】
請求項において、
前記イオン源におけるイオンビームの照射条件ごとに、前記照射痕の位置の情報および前記照射痕の大きさの情報が記憶された記憶部を含む、試料加工装置。
【請求項11】
試料にイオンビームを照射するイオン源と、
試料をスイングさせるスイング機構と、
イオンビームの照射位置に試料の目標加工位置を合わせるための位置合わせ用カメラと、
前記位置合わせ用カメラで取得された画像を表示する表示部と、
前記位置合わせ用カメラの観察画像から表示画像を切り出して、前記表示部に表示させる表示制御部と、
を含み、
前記表示制御部は、前記観察画像から前記表示画像を切り出す位置を変更することによって、前記表示画像の視野を変更し、
前記表示制御部は、前記スイング機構のスイング軸を示す画像を、前記表示画像に重ねて前記表示部に表示させる、試料加工装置。
【請求項12】
試料にイオンビームを照射するイオン源と、
試料をスイングさせるスイング機構と、
イオンビームの照射位置に試料の目標加工位置を合わせるための位置合わせ用カメラと、
前記位置合わせ用カメラで取得された画像を表示する表示部と、
前記位置合わせ用カメラの観察画像から表示画像を切り出して、前記表示部に表示させる表示制御部と、
を含み、
前記表示制御部は、前記観察画像から前記表示画像を切り出す位置を変更することによって、前記表示画像の視野を変更し、
前記表示制御部は、前記スイング機構のスイング軸と前記イオンビームの照射位置との間の距離が許容範囲を超える範囲を示す画像を、前記表示画像に重ねて前記表示部に表示させる、試料加工装置。
【請求項13】
請求項7ないし12のいずれか1項において、
前記位置合わせ用カメラは、試料を観察可能な状態に配置可能であり、
前記位置合わせ用カメラが試料を観察可能な状態に配置されたときに、前記位置合わせ用カメラは、前記観察画像の視野の中心を前記スイング機構のスイング軸が通るように固定される、試料加工装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、試料加工装置の調整方法および試料加工装置に関する。
【背景技術】
【0002】
イオンビームを用いて試料を加工する試料加工装置として、試料の断面を加工するためのクロスセクションポリッシャ(登録商標)や、薄膜試料を作製するためのイオンスライサ(登録商標)などが知られている。このような試料加工装置は、例えば、特許文献1に開示されている。
【0003】
このような試料加工装置では、加工を行う前に、イオンビームの照射位置に位置合わせ用カメラの視野が合うように、位置合わせ用カメラの位置を調整する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2005-91094号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
位置合わせ用カメラの調整は、例えば、以下のようにして行われる。まず、テスト試料を試料加工装置の試料ステージにセットし、イオンビームの照射位置を決める。テスト試料としては、例えば、酸化膜付きのシリコンウェハなどを用いることができる。
【0006】
次に、試料室チャンバーを真空排気し、テスト試料にイオンビームを照射する。これにより、テスト試料にイオンビームの照射痕がつく。
【0007】
次に、位置合わせ用カメラをセットして、イオンビームの照射痕を観察する。そして、イオンビームの照射痕が、位置合わせ用カメラの視野の中心に一致するように、位置合わせ用カメラの位置を機械的に調整する。これにより、位置合わせ用カメラの視野の中心とイオンビームの照射位置を一致させる。最後に、テスト試料を試料ステージから取り外す。
【0008】
以上の工程により、位置合わせ用カメラの調整を行うことができる。
【0009】
位置合わせ用カメラの調整の後、試料を試料ステージにセットし、試料の目標加工位置が位置合わせ用カメラの視野の中心に一致するように、試料の位置を調整する。これにより、試料の目標加工位置にイオンビームを照射できる。
【0010】
試料加工装置では、試料の加工断面に形成される凹凸を低減するために、試料をスイングさせながら試料にイオンビームを照射する。このような試料加工装置において、スイング軸とイオンビームの照射位置との間の距離が許容範囲を超えて大きくなると、加工中の試料を観察するための加工観察用カメラの視野から加工位置が外れてしまう場合がある。加工観察用カメラの視野から加工位置が外れてしまうと、加工終了のタイミングを正確に判断できない。
【0011】
上述した位置合わせ用カメラの調整を行うと、位置合わせ用カメラの位置が移動するため、スイング軸の位置が分からなくなってしまう。そのため、スイング軸とイオンビームの照射位置との間の距離が許容範囲を超えているのか否かを判断できなくなってしまう。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明に係る試料加工装置の調整方法の一態様は、
試料にイオンビームを照射するイオン源と、試料をスイングさせるスイング機構と、イオンビームの照射位置に試料の目標加工位置を合わせるための位置合わせ用カメラと、前記位置合わせ用カメラで取得された画像を表示する表示部と、を含む、試料加工装置の調整方法であって、
前記スイング機構のスイング軸に対して前記位置合わせ用カメラの位置が固定された状態で、試料に形成されたイオンビームの照射痕を、前記位置合わせ用カメラで観察し観察画像を取得する工程と、
前記イオンビームの照射痕の位置に基づいて前記観察画像から前記表示部に表示される表示画像を切り出すことによって、前記イオンビームの照射位置と前記表示画像の視野の位置を合わせる工程と、
を含む。
【0013】
このような試料加工装置の調整方法では、イオンビームの照射位置と表示画像の視野の位置を合わせても、位置合わせ用カメラの観察画像の視野とスイング軸の位置関係が変わらない。そのため、スイング軸の位置を容易に特定できる。したがって、スイング軸とイオンビームの照射位置との間の距離が許容範囲を超えているのか否かを容易に判断できる。
【0014】
本発明に係る試料加工装置の一態様は、
試料にイオンビームを照射するイオン源と、
試料をスイングさせるスイング機構と、
イオンビームの照射位置に試料の目標加工位置を合わせるための位置合わせ用カメラと、
前記位置合わせ用カメラで取得された画像を表示する表示部と、
前記位置合わせ用カメラの観察画像から表示画像を切り出して、前記表示部に表示させる表示制御部と、
を含み、
前記表示制御部は、前記観察画像から前記表示画像を切り出す位置を変更することによって、前記表示画像の視野を変更し、
前記表示制御部は、
試料に形成されたイオンビームの照射痕の位置の情報を取得する処理と、
前記照射痕の位置の情報に基づいて前記観察画像から前記表示画像を切り出して、前記イオンビームの照射位置と前記表示画像の視野の位置を合わせる処理と、
を行う
本発明に係る試料加工装置の一態様は、
試料にイオンビームを照射するイオン源と、
試料をスイングさせるスイング機構と、
イオンビームの照射位置に試料の目標加工位置を合わせるための位置合わせ用カメラと、
前記位置合わせ用カメラで取得された画像を表示する表示部と、
前記位置合わせ用カメラの観察画像から表示画像を切り出して、前記表示部に表示させる表示制御部と、
を含み、
前記表示制御部は、前記観察画像から前記表示画像を切り出す位置を変更することによって、前記表示画像の視野を変更し、
前記表示制御部は、前記スイング機構のスイング軸を示す画像を、前記表示画像に重ねて前記表示部に表示させる
本発明に係る試料加工装置の一態様は、
試料にイオンビームを照射するイオン源と、
試料をスイングさせるスイング機構と、
イオンビームの照射位置に試料の目標加工位置を合わせるための位置合わせ用カメラと、
前記位置合わせ用カメラで取得された画像を表示する表示部と、
前記位置合わせ用カメラの観察画像から表示画像を切り出して、前記表示部に表示させる表示制御部と、
を含み、
前記表示制御部は、前記観察画像から前記表示画像を切り出す位置を変更することによって、前記表示画像の視野を変更し、
前記表示制御部は、前記スイング機構のスイング軸と前記イオンビームの照射位置との間の距離が許容範囲を超える範囲を示す画像を、前記表示画像に重ねて前記表示部に表示させる
【0015】
このような試料加工装置では、観察画像から表示画像を切り出す位置を変更することによって表示画像の視野を変更することができるため、イオンビームの照射位置と表示画像の視野の位置を合わせても、位置合わせ用カメラの観察画像の視野とスイング軸の位置関係が変わらない。そのため、スイング軸の位置を容易に特定できる。したがって、スイング軸とイオンビームの照射位置との間の距離が許容範囲を超えているのか否かを容易に判断できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】試料加工装置の構成を示す図。
図2】試料加工装置の構成を示す図。
図3】画像処理装置の構成を示す図。
図4】実施形態に係る試料加工装置の調整方法の一例を示すフローチャート。
図5】位置合わせ用カメラでテスト試料を観察している様子を示す図。
図6】観察画像および表示画像を説明するための図。
図7】イオンビームの照射位置と表示視野の位置を合わせる工程を説明するための図。
図8】イオンビームの照射位置と表示視野の位置を合わせる工程を説明するための図。
図9】スイング軸とイオンビームの照射位置が一致している場合の加工観察用カメラの観察画像を示す図。
図10】スイング軸とイオンビームの照射位置がずれている場合の加工観察用カメラの画像を示す図。
図11】スイング軸とイオンビームの照射位置がずれている場合の加工観察用カメラの画像を示す図。
図12】スイング軸とイオンビームの照射位置がずれている場合の加工観察用カメラの画像を示す図。
図13】スイング軸とイオンビームの照射位置との間の距離が許容範囲を超える範囲を示す画像を説明するための図。
図14】スイング軸とイオンビームの照射位置との間の距離が許容範囲を超える範囲を示す画像を説明するための図。
図15】スイング軸とイオンビームの照射位置との間の距離が許容範囲を超える範囲を示す画像を説明するための図。
図16】スイング軸とイオンビームの照射位置との間の距離が許容範囲を超える範囲を示す画像を説明するための図。
図17】表示制御部の処理を説明するための図。
図18】表示制御部の処理を説明するための図。
図19】表示制御部の処理を説明するための図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の好適な実施形態について図面を用いて詳細に説明する。なお、以下に説明する実施形態は、特許請求の範囲に記載された本発明の内容を不当に限定するものではない。また、以下で説明される構成の全てが本発明の必須構成要件であるとは限らない。
【0018】
1. 試料加工装置
本発明の一実施形態に係る試料加工装置の調整方法について説明する。以下では、まず、本実施形態に係る試料加工装置の調整方法に用いられる試料加工装置について図面を参照しながら説明する。
【0019】
図1および図2は、本実施形態に係る試料加工装置の調整方法に用いられる試料加工装置100の構成を示す図である。図1および図2には、互いに直交する3つの軸として、X軸、Y軸、およびZ軸を図示している。
【0020】
試料加工装置100は、試料Sにイオンビームを照射して試料Sを加工し、観察や分析用の試料を作製するイオンビーム加工装置である。試料加工装置100は、例えば、試料の断面を加工するためのクロスセクションポリッシャ(登録商標)である。
【0021】
試料加工装置100は、例えば、走査電子顕微鏡(SEM)や、透過電子顕微鏡(TEM)、走査透過電子顕微鏡(STEM)などの電子顕微鏡用の試料を作製するために用いられる。また、試料加工装置100は、例えば、電子プローブマイクロアナライザー(EPMA)やオージェマイクロプローブなどの試料を作製するために用いられる。
【0022】
試料加工装置100は、図1および図2に示すように、イオン源10と、試料ステージ引出機構20と、試料ステージ30と、スイング機構40と、位置合わせ用カメラ50と、加工観察用カメラ60と、試料室チャンバー70と、画像処理装置80と、を含む。なお、図1は、試料ステージ引出機構20を開いて試料室72から試料ステージ30を引き出している状態を示し、図2は、試料ステージ引出機構20を閉じて試料室72に試料ステージ30を押し入れている状態を示している。
【0023】
イオン源10は、イオンビームを発生させる。イオン源10は、試料Sにイオンビームを照射する。イオン源10は、試料室チャンバー70の上部に取り付けられている。イオン源10は、例えば、イオン銃である。イオン源10は、所定の加速電圧でイオンビームを加速させて放出する。イオンビームとしては、例えば、Arイオンビームを用いることができる。イオンビームの径は、例えば、数百μm程度である。
【0024】
試料ステージ引出機構20は、試料室チャンバー70に開閉可能に取り付けられている。試料ステージ引出機構20は、試料室チャンバー70の蓋を構成している。試料ステージ引出機構20には試料ステージ30が取り付けられている。試料ステージ引出機構20を開くことで、図2に示すように、試料室72から試料ステージ30を引き出すことができる。これにより、試料室チャンバー70内を大気開放できる。また、試料ステージ引出機構20を開くことで、位置合わせ用カメラ50が試料Sの上に位置し、位置合わせ用カメラ50で試料Sを観察できる。
【0025】
試料ステージ引出機構20を閉じることで、図1に示すように、試料ステージ30を試料室72に押し入れることができる。これにより、試料室チャンバー70を気密にすることができる。この状態で、不図示の排気装置を動作させることによって試料室72は真空排気され、試料室72を真空状態(減圧状態)にできる。また、試料ステージ引出機構20を閉じることで、イオン源10が試料Sの上に位置し、イオン源10から放出されたイオンビームで試料Sを加工できる。
【0026】
試料ステージ30は、スイング機構40に取り付けられている。試料ステージ30は、加工対象となる試料Sを支持する。試料ステージ30は、X移動機構32と、Y移動機構34と、を有している。X移動機構32は、試料SをX軸に沿って移動させることができる。Y移動機構34は、試料SをY軸に沿って移動させることができる。X移動機構32およびY移動機構34によって、試料Sを水平方向に2次元的に移動させることができる。これにより、試料Sの位置合わせを行うことができる。図示はしないが、試料加工装置100は、イオンビームを遮蔽する遮蔽板を備えており、試料ステージ30で支持された試料Sは、遮蔽板から突き出た部分がスパッタリングされる。
【0027】
スイング機構40は、試料ステージ引出機構20に取り付けられている。試料ステージ引出機構20を開くことで、スイング機構40が引き出され、試料ステージ30が引き出される。
【0028】
スイング機構40は、試料ステージ30をスイング軸A(傾斜軸)まわりに傾斜させる。スイング機構40は、一定の周期で、試料ステージ30をスイング軸Aまわりに傾斜させることで、試料Sをスイングさせる。図示の例では、スイング軸Aは、Y軸に平行な軸である。
【0029】
位置合わせ用カメラ50は、試料ステージ引出機構20の上端部に取り付けられている。位置合わせ用カメラ50は、例えば、光学顕微鏡に取り付けられたカメラである。すなわち、位置合わせ用カメラ50が取得した画像は、光学顕微鏡で観察された画像である。位置合わせ用カメラ50は、イオンビームの照射位置に試料Sの目標加工位置を合わせるためのカメラである。位置合わせ用カメラ50で取得された観察画像は、画像処理装置80に送られる。
【0030】
位置合わせ用カメラ50は、試料ステージ引出機構20が開いた状態では、試料Sを観察可能な位置に配置される。試料ステージ引出機構20が開いた状態では、位置合わせ用カメラ50の光軸は、Z軸に平行である。位置合わせ用カメラ50は、試料ステージ引出
機構20が閉じた状態では、カメラ傾倒機構52によって試料室72の外に配置される。
【0031】
加工観察用カメラ60は、試料室72の外に配置されている。加工観察用カメラ60は、試料室チャンバー70に設けられた観察窓74を通して試料室72内を観察可能である。加工観察用カメラ60の光軸は、Y軸に平行である。加工観察用カメラ60で撮影された画像は、画像処理装置80に送られる。
【0032】
試料室チャンバー70内には、試料ステージ30が配置されている。試料室72は、試料室チャンバー70内の空間である。試料室72において、試料Sにイオンビームが照射される。
【0033】
画像処理装置80は、位置合わせ用カメラ50で撮影された画像を表示部に表示させる処理を行う。画像処理装置80は、位置合わせ用カメラ50の観察画像の一部を切り出して表示画像を生成し、生成した表示画像を表示部に表示させる。また、画像処理装置80は、加工観察用カメラ60で撮影された画像を表示部に表示させる処理を行う。
【0034】
図3は、画像処理装置80の構成を示す図である。
【0035】
画像処理装置80は、処理部82と、操作部84と、表示部86と、記憶部88と、を含む。
【0036】
操作部84は、ユーザーが操作情報を入力するためのものであり、入力された操作情報を処理部82に出力する。操作部84の機能は、キーボード、マウス、ボタン、タッチパネル、タッチパッドなどのハードウェアにより実現することができる。
【0037】
表示部86は、処理部82によって生成された画像を表示する。表示部86の機能は、LCD、CRT、操作部84としても機能するタッチパネルなどにより実現できる。
【0038】
記憶部88は、処理部82の各部としてコンピュータを機能させるためのプログラムや各種データを記憶している。また、記憶部88は、処理部82のワーク領域としても機能する。記憶部88の機能は、ハードディスク、RAM(Random Access Memory)などにより実現できる。
【0039】
処理部82の機能は、各種プロセッサ(CPU、DSP等)などのハードウェアで、プログラムを実行することにより実現できる。処理部82は、位置合わせ用画像取得部820と、加工用画像取得部822と、表示制御部824と、を含む。
【0040】
位置合わせ用画像取得部820は、位置合わせ用カメラ50で撮影された画像を取得する。位置合わせ用画像取得部820は、位置合わせ用カメラ50から送られた画像データを受け付ける。
【0041】
加工用画像取得部822は、加工観察用カメラ60で撮影された画像を取得する。加工用画像取得部822は、加工観察用カメラ60から送られた画像データを受け付ける。
【0042】
表示制御部824は、位置合わせ用画像取得部820で取得された位置合わせ用カメラ50の画像データを受け取り、位置合わせ用カメラ50の観察画像の一部を切り出して表示画像を生成し、生成した表示画像を表示部86に表示させる。
【0043】
ここで、位置合わせ用カメラ50は、高画素数のカメラであり、低倍率のレンズが取り付けられている。そのため、位置合わせ用カメラ50では、広い視野の観察画像を高解像
度で取得できる。したがって、広い視野の観察画像から表示画像を切り出すことができ、かつ、高解像度の表示画像を得ることができる。
【0044】
また、表示制御部824は、加工用画像取得部822で取得された加工観察用カメラ60の画像データを受け取り、加工観察用カメラ60で撮影された画像を表示部86に表示させる。
【0045】
2. 試料加工装置の調整方法
試料加工装置100では、スイング軸Aの位置は固定されている。また、図2に示す試料ステージ引出機構20を開いた状態において、位置合わせ用カメラ50の位置は固定されている。位置合わせ用カメラ50は、スイング軸Aが位置合わせ用カメラ50の観察画像の視野の中心を通る位置に固定される。そのため、試料ステージ引出機構20を開いた状態において、位置合わせ用カメラ50の観察画像の視野は固定されており、常に、位置合わせ用カメラ50の観察画像の視野の中心をスイング軸Aが通る。
【0046】
このように、試料加工装置100では、イオンビームの照射位置に対して位置合わせ用カメラ50の位置を調整するための調整機構を備えていない。
【0047】
したがって、試料加工装置100では、図2に示す試料ステージ引出機構20を開いた状態の表示画像の視野の中心が、図1に示す試料ステージ引出機構20を閉じた状態のイオン源10の光軸に一致するように調整される。これにより、表示画像の視野の中心に試料Sの目標加工位置を合わせることで、当該目標加工位置をイオンビームの照射位置に合わせることができる。表示画像は、表示制御部824が位置合わせ用カメラ50の観察画像の一部を切り出して生成した画像である。
【0048】
以下では、イオンビームの照射位置に表示画像の視野を合わせるための調整方法について説明する。
【0049】
図4は、本実施形態に係る試料加工装置の調整方法の一例を示すフローチャートである。
【0050】
まず、図2に示すように試料ステージ引出機構20を開き、テスト試料を試料ステージ30にセットして、イオンビームの照射位置を決める(S100)。テスト試料としては、例えば、酸化膜付きのシリコンウェハを用いることができる。
【0051】
次に、図1に示すように試料ステージ引出機構20を閉じて試料室72を気密に封止し、試料室72を真空排気する(S102)。
【0052】
次に、テスト試料にイオンビームを照射して、テスト試料にイオンビームの照射痕を形成する(S104)。酸化膜付きのシリコンウェハにイオンビームを照射することで、酸化膜が除去されシリコンが露出する。これにより、テスト試料にイオンビームの照射痕が形成される。
【0053】
次に、試料室72を大気開放し、図2に示すように、試料ステージ引出機構20を開いて試料ステージ30を引き出し、位置合わせ用カメラ50をセットする(S106)。これにより、位置合わせ用カメラ50でテスト試料を観察可能となる。
【0054】
図5は、位置合わせ用カメラ50でテスト試料を観察している様子を示す図である。図6は、位置合わせ用カメラ50の観察画像I2、および表示画像I4を説明するための図である。なお、図5に示す観察視野2は位置合わせ用カメラ50の観察画像I2の視野で
あり、図5に示す表示視野4は表示部86に表示される表示画像I4の視野である。
【0055】
試料ステージ引出機構20を開いて試料ステージ30を引き出すことで、図5および図6に示すように、位置合わせ用カメラ50でイオンビームの照射痕Tを観察することができる。位置合わせ用カメラ50は観察視野2の観察画像I2を取得し、表示制御部824は観察画像I2の一部を切り出して表示画像I4を生成し、当該表示画像I4を表示部86に表示させる。
【0056】
ここで、位置合わせ用カメラ50は、試料ステージ引出機構20を開いた状態では、スイング軸Aが位置合わせ用カメラ50の観察視野2の中心を通る位置に固定される。そのため、表示制御部824は、スイング軸Aと一致するように、観察視野2の中心を通る仮想のスイング軸VAを観察画像I2上に描画する。スイング軸VAは、表示画像I4に重ねて表示部86に表示される。すなわち、スイング軸VAは、表示画像I4上に表示されている。このように試料加工装置100では、スイング軸Aが可視化される。
【0057】
次に、スイング軸Aとイオンビームの照射位置との間の距離が許容範囲を超えているか否かを判定する(S108)。
【0058】
スイング軸Aとイオンビームの照射位置との間の距離は、スイング軸Aに垂直な方向、すなわちX方向におけるスイング軸Aとイオンビームの照射位置との間の距離である。試料加工装置100では、図6に示すように、表示部86には、表示画像I4およびスイング軸VAが表示されているため、表示画像I4上におけるスイング軸VAと照射痕Tとの間の距離を計測することで、スイング軸Aとイオンビームの照射位置との間の距離を知ることができる。
【0059】
スイング軸Aとイオンビームの照射位置との間の距離が許容範囲を超えていると判定した場合(S110のYes)、スイング軸Aとイオンビームの照射位置との間の距離が許容範囲内となるように、イオン源10の位置を調整する(S112)。イオン源10の位置の調整は、イオン源10を組み立てなおしたり、イオン源10の位置調整機構を用いて位置を調整したりすることで行われる。
【0060】
イオン源10の位置の調整の後、工程S100に戻って、工程S102、工程S104、工程S106、工程S108、工程S110、および工程S112を行う。このように、工程S110において、スイング軸Aとイオンビームの照射位置との間の距離が許容範囲を超えていないと判定されるまで、工程S100、工程S102、工程S104、工程S106、工程S108、工程S110、および工程S112を繰り返す。
【0061】
スイング軸Aとイオンビームの照射位置との間の距離が許容範囲を超えていないと判定した場合(S110のNo)、イオンビームの照射位置と表示視野4の位置を合わせる(S114)。
【0062】
図7および図8は、イオンビームの照射位置と表示視野4の位置を合わせる工程を説明するための図である。なお、図7図5に対応し、図8図6に対応している。
【0063】
本工程では、イオンビームの照射位置と表示視野4の中心が一致するように、表示視野4を変更する。試料加工装置100では、試料ステージ引出機構20を開いた状態では、位置合わせ用カメラ50の観察視野2は固定されている。そのため、位置合わせ用カメラ50の観察画像I2から表示画像I4を切り出す位置を変更することによって、イオンビームの照射位置と表示視野4の位置を合わせる。ここでは、表示視野4の中心にイオンビームの照射位置が位置するように、観察画像I2から表示画像I4を切り出す位置を変更
する。これにより、表示視野4の中心とイオンビームの照射位置とが一致する。
【0064】
例えば、操作部84を介して表示視野4を変更する指示が入力されると、表示制御部824は、観察画像I2から当該指示に応じた位置で表示画像I4を切り出して表示画像I4を表示部86に表示させる。操作部84がタッチパネルの場合、表示視野4の中心を示すマーカーに照射痕Tが重なるように、表示画像I4上でドラック操作することで、表示視野4を変更する指示を入力できる。
【0065】
このように、操作部84は、観察画像I2から表示画像I4を切り出す位置を変更することによって表示視野4を変更する操作を受け付ける。表示制御部824は、操作部84からの操作情報を受け付け、当該操作情報に基づいて観察画像I2から表示画像I4を切り出す位置を変更して表示画像I4を生成し、表示部86に表示させる。
【0066】
次に、表示視野4の位置の情報を記録する(S116)。すなわち、観察画像I2上における表示画像I4を切り出す位置の座標情報を記録する。そして、テスト試料を試料ステージ30から取り外す。
【0067】
以上の工程により、試料加工装置100の調整を行うことができる。
【0068】
このようにして、試料加工装置100の調整を行った後に、試料の加工目標位置をイオンビームの照射位置に合わせる。
【0069】
具体的には、図2に示すように、試料ステージ引出機構20を開いて試料ステージ30を引き出した状態にする。次に、加工対象となる試料を試料ステージ30にセットし、加工目標位置が表示視野4の中心に位置するように、試料ステージ30の位置を調整する。次に、図1に示すように、試料ステージ引出機構20を閉じて、試料室72を真空排気し、イオン源10からイオンビームを照射する。これにより、イオンビームが加工目標位置に照射される。
【0070】
なお、上記では、イオンビームの照射位置と表示視野4の中心を合わせる場合について説明したが、イオンビームの照射位置と表示視野4の任意の位置を合わせてもよい。イオンビームの照射位置と表示画像の任意の位置を合わせる場合も、上記の調整方法と同様に行うことができる。
【0071】
3. 効果
本実施形態に係る試料加工装置の調整方法は、イオン源10と、試料Sをスイングさせるスイング機構40と、イオンビームの照射位置に試料Sの目標加工位置を合わせるための位置合わせ用カメラ50と、位置合わせ用カメラ50で取得された画像を表示する表示部86と、を含む、試料加工装置の調整方法であって、スイング機構40のスイング軸Aに対して位置合わせ用カメラ50の位置が固定された状態で、試料Sに形成されたイオンビームの照射痕Tを、位置合わせ用カメラ50で観察し観察画像I2を取得する工程と、イオンビームの照射痕Tの位置に基づいて観察画像I2から表示画像I4を切り出すことによって、イオンビームの照射位置と表示画像I4の視野の位置を合わせる工程と、を含む。
【0072】
このような試料加工装置100の調整方法では、イオンビームの照射位置と表示画像I4の視野の位置を合わせても、位置合わせ用カメラ50の観察視野2とスイング軸Aの位置関係が変わらない。そのため、観察視野2内においてスイング軸Aの位置を容易に特定できる。したがって、スイング軸Aとイオンビームの照射位置との間の距離が許容範囲を超えているのか否かを容易に判断できる。
【0073】
図9は、スイング軸Aとイオンビームの照射位置が一致している場合の加工観察用カメラ60の画像を示す図である。図10図12は、スイング軸Aとイオンビームの照射位置がずれている場合の加工観察用カメラ60の画像を示す図である。なお、図12は、スイング軸Aとイオンビームの照射位置のずれ量が最も大きく、図10は、スイング軸Aとイオンビームの照射位置のずれ量が最も小さい。なお、図9図12では、それぞれ試料Sの傾斜角θが0°の場合(θ=0°)、傾斜角θが-30°の場合(θ=-30°)、傾斜角θが+30°の場合(θ=+30°)を図示している。
【0074】
図9に示すように、スイング軸Aとイオンビームの照射位置が一致している場合、加工位置は加工観察用カメラ60の視野内であり、加工観察用カメラ60で加工位置を確認できる。また、図10に示すように、スイング軸Aとイオンビームの照射位置のずれが小さく、スイング軸Aとイオンビームの照射位置との間の距離が許容範囲を超えていない場合、加工位置は加工観察用カメラ60の視野内であり、加工観察用カメラ60で加工位置を確認できる。
【0075】
しかしながら、図11および図12に示すように、スイング軸Aとイオンビームの照射位置のずれが大きく、スイング軸Aとイオンビームの照射位置との間の距離が許容範囲を超えている場合には、加工位置が加工観察用カメラ60の視野から外れてしまい、加工位置を確認できない。特に、加工終了のタイミングを加工観察用カメラ60の画像から画像処理により自動で判断する場合、加工位置が視野から外れてしまうと、加工終了のタイミングを正確に判断できなくなってしまう。
【0076】
本実施形態に係る試料加工装置の調整方法では、上述したように、位置合わせ用カメラ50の観察視野2とスイング軸Aとの位置関係が変わらないため、スイング軸Aとイオンビームの照射位置との間の距離が許容範囲か否かを容易に判定できる。したがって、本実施形態では、加工中に、加工位置が加工観察用カメラ60の視野から外れてしまうことを防ぐことができる。
【0077】
本実施形態に係る試料加工装置の調整方法では、イオンビームの照射位置と表示視野4の位置を合わせる工程では、イオンビームの照射位置が表示視野4の中心に位置するように、観察画像I2から表示画像I4を切り出す。そのため、加工目標位置を、表示視野4の中心に配置することで、加工目標位置にイオンビームを照射することができる。
【0078】
本実施形態に係る試料加工装置の調整方法では、位置合わせ用カメラ50は、観察視野2の中心をスイング軸Aが通るように固定されている。そのため、スイング軸Aと位置合わせ用カメラ50の位置関係が変わらない。したがって、観察視野2の中心を常にスイング軸Aが通り、スイング軸Aを容易に特定できる。
【0079】
本実施形態に係る試料加工装置の調整方法では、表示部86に、スイング軸Aを示す画像である仮想のスイング軸VAを表示画像I4に重ねて表示させる。そのため、スイング軸Aを可視化できる。
【0080】
試料加工装置100は、イオン源10と、試料Sをスイングさせるスイング機構40と、イオンビームの照射位置に試料の目標加工位置を合わせるための位置合わせ用カメラ50と、位置合わせ用カメラ50で取得された画像を表示する表示部86と、位置合わせ用カメラ50の観察画像I2から表示画像I4を切り出して、表示部86に表示させる表示制御部824と、を含み、表示制御部824は、観察画像I2から表示画像I4を切り出す位置を変更することによって、表示視野4を変更する。
【0081】
そのため、試料加工装置100では、観察画像I2から表示画像I4を切り出す位置を変更することによって、イオンビームの照射位置と表示視野4の位置を合わせることができる。
【0082】
試料加工装置100は、表示視野4を変更する操作を受け付ける操作部84を含み、表示制御部824は、操作部84からの操作情報に基づいて観察画像I2から表示画像I4を切り出す位置を変更することによって、表示視野4を変更する。そのため、試料加工装置100では、観察画像I2から表示画像I4を切り出す位置を変更することによって、イオンビームの照射位置と表示視野4の位置を合わせることができる。
【0083】
試料加工装置100では、表示制御部824は、スイング軸Aを示す画像である仮想のスイング軸VAを、表示画像I4に重ねて表示部86に表示させる。そのため、試料加工装置100では、スイング軸VAを可視化できる。
【0084】
試料加工装置100では、位置合わせ用カメラ50は、試料を観察可能な状態に配置可能であり、位置合わせ用カメラ50が試料を観察可能な状態に配置されたときに、位置合わせ用カメラ50は、観察視野2の中心をスイング軸Aが通るように固定される。そのため、試料加工装置100では、スイング軸Aと位置合わせ用カメラ50の位置関係が変わらない。したがって、観察視野2の中心を常にスイング軸Aが通り、スイング軸Aを容易に特定できる。
【0085】
4. 変形例
次に、本実施形態に係る試料加工装置の調整方法の変形例について説明する。以下では、上述した本実施形態に係る試料加工装置の調整方法の例と異なる点について説明し、同様の点については説明を省略する。
【0086】
4.1. 第1変形例
上述した実施形態では、図4に示すスイング軸Aとイオンビームの照射位置との間の距離が許容範囲を超えているか否かを判定する工程S108において、表示画像I4上におけるスイング軸VAと照射痕Tとの間の距離を計測した。これに対して、第1変形例では、スイング軸Aとイオンビームの照射位置との間の距離が許容範囲を超える範囲を示す画像を、表示画像I4に重ねて表示する。
【0087】
図13図16は、スイング軸Aとイオンビームの照射位置との間の距離が許容範囲を超える範囲を示す画像I8を説明するための図である。図13および図15は、位置合わせ用カメラ50でイオンビームの照射痕Tを観察している様子を図示している。なお、図13は、スイング軸Aとイオンビームの照射位置とが一致している場合であり、図15は、スイング軸Aとイオンビームの照射位置との間の距離が許容範囲を超えている場合である。また、図14は、図13で示す位置合わせ用カメラ50の観察画像I2を示し、図16は、図15で示す位置合わせ用カメラ50の観察画像I2を示している。
【0088】
図13および図15に示すように、スイング軸Aとイオンビームの照射位置との間の距離が許容範囲を超える範囲8は、X方向において、スイング軸Aから距離が許容範囲よりも大きい範囲である。
【0089】
図14および図16に示すように、観察画像I2上の許容範囲を超える範囲8に相当する領域に、画像I8を描画することで、スイング軸Aとイオンビームの照射位置との間の距離が許容範囲を超えているか否かを容易に判定できる。画像I8は、例えば、網掛け、ハッチングなどである。画像I8は、許容範囲を超える範囲8を色や明暗で区別する画像であってもよい。
【0090】
図16に示すように、イオンビームの照射痕Tの少なくとも一部が画像I8に重なっている場合には、スイング軸Aとイオンビームの照射位置との間の距離が許容範囲を超えていると判断できる。
【0091】
第1変形例では、表示制御部824は、表示部86に、スイング軸Aとイオンビームの照射位置との間の距離が許容範囲を超える範囲8を示す画像I8を、表示視野4に重ねて表示させる。そのため、スイング軸Aとイオンビームの照射位置との間の距離が許容範囲を超えているか否かを容易に判定できる。
【0092】
なお、図14および図16に示す例では、画像I8は、許容範囲を超える範囲8に網掛けやハッチングを行うことで許容範囲を超える範囲8を示していたが、画像I8は、これに限定されない。例えば、画像I8は、許容範囲内に網掛けやハッチングを行うことで許容範囲を超える範囲8を示してもよい。
【0093】
4.2. 第2変形例
第2変形例では、イオンビームの照射位置とスイング軸Aとの間の距離が許容範囲を超えているか否かを判定する判定工程S108、イオンビームの照射位置と表示視野4の位置を合わせる位置合わせ工程S114、および表示視野4の位置情報を記憶する記憶工程S116を、画像処理装置80が行う。すなわち、試料加工装置100では、判定工程S108、位置合わせ工程S114、および記憶工程S116が自動で行われる。図17図19は、表示制御部824の処理を説明するための図である。
【0094】
4.2.1. 判定工程S108
表示制御部824は、観察画像I2からイオンビームの照射痕Tを画像認識し、照射痕Tの位置の情報および照射痕Tの大きさ(輪郭)の情報を取得する。表示制御部824は、例えば、あらかじめ図17に示す照射痕Tが形成される前の観察画像I2を取得し、図17に示す照射痕Tが形成される前の観察画像I2と図6に示す照射痕Tが形成された後の観察画像I2を比較することによって、照射痕Tの位置の情報および照射痕Tの大きさの情報を取得する。照射痕Tの位置の情報および照射痕Tの大きさの情報は、記憶部88に記録される。
【0095】
表示制御部824は、図18に示すように、照射痕Tの位置の情報および照射痕Tの大きさの情報に基づいて表示画像I4上にイオンビームの照射位置と照射範囲を示す画像I9を表示させる。画像I9は、図示の例では、照射痕Tの位置に描画された、照射痕Tの大きさの円である。
【0096】
表示制御部824は、照射痕Tの位置の情報に基づいて、スイング軸Aとイオンビームの照射位置との間の距離が許容範囲を超えているか否かを判定する。
【0097】
表示制御部824は、スイング軸Aとイオンビームの照射位置との間の距離が許容範囲を超えていると判定した場合、イオン源10の位置の調整を実施するように通知を行う。この通知は、例えば、表示部86にメッセージを表示することで行われる。
【0098】
表示制御部824は、スイング軸Aとイオンビームの照射位置との間の距離が許容範囲を超えていないと判定した場合、自動で、位置合わせ工程S114を行うことを通知する。この通知は、例えば、表示部86にメッセージを表示することで行われる。
【0099】
なお、表示制御部824は、自動で位置合わせを行ってもよいか否かを確認するためのメッセージを表示部86に表示し、自動で位置合わせを行ってもよいと確認ができた場合
にのみ、自動で位置合わせを行ってもよい。
【0100】
上記のように、第2変形例では、表示制御部824は、位置合わせ用カメラ50で撮影されたテスト試料に形成されたイオンビームの照射痕Tの観察画像I2を取得する処理と、観察画像I2からイオンビームの位置の情報およびイオンビームの大きさの情報を取得する処理と、位置の情報および大きさの情報に基づいて表示部86にイオンビームの照射位置と照射範囲を示す画像I9を表示する処理と、を行う。そのため、試料の目標加工位置をイオンビームの照射位置に合わせるときには、画像I9を目印として位置合わせを行うことができる。したがって、容易に、加工目標位置をイオンビームの照射位置に合わせることができる。
【0101】
なお、目標加工位置をイオンビームの照射位置に合わせるときには、表示部86に表示される表示画像I4の一部を拡大して表示することができる。これにより、目標加工位置を正確に確認できる。表示画像I4の一部を拡大して表示する場合であっても、拡大された表示画像I4上には画像I9が重ねて表示されるため、イオンビームの照射位置を容易に確認できる。
【0102】
4.2.2. 位置合わせ工程S114
表示制御部824は、図19に示すように、照射痕Tの位置の情報および照射痕Tの大きさの情報に基づいて、観察画像I2から表示画像I4を切り出して、表示画像I4を表示部86に表示させる。表示制御部824は、例えば、照射痕Tが表示画像I4の視野の中心に位置するように、観察画像I2から表示画像I4を切り出して、表示画像I4を表示部86に表示させる。
【0103】
このように、表示制御部824は、イオンビームの照射痕Tの位置の情報を取得する処理と、照射痕Tの位置の情報に基づいて観察画像I2から表示画像I4を切り出す位置を決定し、イオンビームの照射位置と表示視野4の位置を合わせる処理と、を行う。そのため、試料加工装置100では、自動で、イオンビームの照射位置と表示視野4の位置を合わせることができる。
【0104】
4.2.3. 記憶工程S116
表示制御部824は、観察画像I2上における表示画像I4を切り出す位置の情報を記憶部88に記憶させる。また、表示制御部824は、照射痕Tの位置の情報および照射痕Tの大きさの情報を、記憶部88に記憶させる。
【0105】
4.2.4. 効果
第2変形例では、表示制御部824は、試料に形成されたイオンビームの照射痕Tの位置の情報を取得する処理と、照射痕Tの位置の情報に基づいて観察画像I2から表示画像I4を切り出して、イオンビームの照射位置と表示画像I4の視野の位置を合わせる処理と、を行う。そのため、第2変形例では、自動で、イオンビームの照射位置と表示画像I4の視野の位置を合わせることができる。
【0106】
第2変形例では、表示制御部824は、照射痕Tの大きさの情報を取得する処理と、照射痕Tの位置の情報および照射痕Tの大きさの情報に基づいてイオンビームの照射位置と照射範囲を示す画像I9を表示部86に表示させる処理と、を行う。そのため、第2変形例では、試料の目標加工位置をイオンビームの照射位置に合わせるときには、画像I9を目印として位置合わせを行うことができる。したがって、容易に、加工目標位置をイオンビームの照射位置に合わせることができる。
【0107】
4.3. 第3変形例
試料加工装置100では、イオン源10に設定されるイオンビームの照射条件によって、イオンビームの照射範囲(径)や照射位置が変わる。イオンビームの照射条件は、例えば、イオンを加速するための加速電圧の条件を含む。加速電圧が高いほど、イオンビームの径が小さくなる。また、イオンビームの条件は、例えば、イオンビームを集束させる電極に印加される電圧の条件を含む。当該電極に印加される電圧を変更することで、イオンビームの径を変更できる。
【0108】
このように、イオンビームの位置およびイオンビームの照射範囲は、イオンビームの照射条件によって変わる。そのため、上述した「4.2.1. 記憶工程S116」において、記憶部88には、イオンビームの照射条件ごとに、照射痕Tの位置の情報および照射痕Tの大きさの情報が記憶される。これにより、表示制御部824は、イオンビームの照射条件に合わせて、画像I9を表示できる。
【0109】
例えば、イオンビームの照射位置に試料の目標加工位置を合わせる場合に、イオン源10に対してイオンビームの照射条件を設定すると、表示制御部824は、記憶部88から設定されたイオンビームの照射条件に対応する照射痕Tの位置の情報および照射痕Tの大きさの情報を読み出し、当該照射痕Tの位置の情報および照射痕Tの大きさの情報に基づいて画像I9を表示部86に表示させる。
【0110】
この結果、画像I9の位置に、目標加工位置を合わせれば、イオンビームの照射位置に目標加工位置を合わせることができる。したがって、容易に、イオンビームの照射位置に目標加工位置を合わせることができる。
【0111】
4.4. 第4変形例
上述した実施形態では、試料加工装置が断面試料を作製するためのクロスセクションポリッシャ(登録商標)である場合について説明したが、試料加工装置は薄膜試料を作製するためのイオンスライサ(登録商標)であってもよい。イオンスライサ(登録商標)は、イオンビームを遮蔽するためのシールドベルトを備えており、シールドベルトでイオンビームを遮蔽することで試料を薄片化できる。
【0112】
なお、上述した実施形態及び変形例は一例であって、これらに限定されるわけではない。例えば各実施形態及び各変形例は、適宜組み合わせることが可能である。
【0113】
本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、さらに種々の変形が可能である。例えば、本発明は、実施形態で説明した構成と実質的に同一の構成を含む。実質的に同一の構成とは、例えば、機能、方法、及び結果が同一の構成、あるいは目的及び効果が同一の構成である。また、本発明は、実施形態で説明した構成の本質的でない部分を置き換えた構成を含む。また、本発明は、実施形態で説明した構成と同一の作用効果を奏する構成又は同一の目的を達成することができる構成を含む。また、本発明は、実施形態で説明した構成に公知技術を付加した構成を含む。
【符号の説明】
【0114】
10…イオン源、20…試料ステージ引出機構、30…試料ステージ、32…X移動機構、34…Y移動機構、40…スイング機構、50…位置合わせ用カメラ、52…カメラ傾倒機構、60…加工観察用カメラ、70…試料室チャンバー、72…試料室、74…観察窓、80…画像処理装置、82…処理部、84…操作部、86…表示部、88…記憶部、100…試料加工装置、820…位置合わせ用画像取得部、822…加工用画像取得部、824…表示制御部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19