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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-12
(45)【発行日】2023-07-21
(54)【発明の名称】電動モータ
(51)【国際特許分類】
   H02K 9/197 20060101AFI20230713BHJP
   H02K 9/19 20060101ALI20230713BHJP
【FI】
H02K9/197
H02K9/19 A
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2021140479
(22)【出願日】2021-08-30
(65)【公開番号】P2023034312
(43)【公開日】2023-03-13
【審査請求日】2022-03-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000010076
【氏名又は名称】ヤマハ発動機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002310
【氏名又は名称】弁理士法人あい特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 仁
【審査官】中島 亮
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-224945(JP,A)
【文献】特開2003-244896(JP,A)
【文献】特開2008-042959(JP,A)
【文献】特開昭59-222057(JP,A)
【文献】特開2016-220329(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 9/00- 9/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ステータコアとコイルとを含むステータであって、前記ステータコアが、回転軸線に沿う軸方向に延びる軸状且つ前記回転軸線を取り囲む環状のヨークと、前記回転軸線周りの周方向に間隔を空けて前記ヨークの内周に配置された複数のティースと、隣り合うティース間に区画された複数のスロットとを有し、各スロットが、前記コイルを収容するコイル収容部と前記コイル収容部を径方向内方へ開放させるスロット開口部とを有し、前記コイルが、前記ステータコアの軸方向端面から前記軸方向に突出するコイルエンドを有する、ステータと、
前記ステータの径方向内方にエアギャップを介して配置され、前記回転軸線周りに回転可能なロータと、
前記ステータコアと一体に形成される樹脂部であって、前記スロット開口部を塞ぐように前記軸方向に延びる閉塞部と、前記閉塞部に連結され、前記ステータコアの前記軸方向端面よりも前記軸方向に突出し、前記ステータコアと同心に配置される筒状壁とを有する、樹脂部と、
前記ステータと前記ロータとを収容するハウジングであって、前記筒状壁の径方向外方に、前記コイルエンドを冷却する冷却液が流されるコイルエンド冷却流路を区画する、ハウジングと、を含み、
前記樹脂部が、前記筒状壁に連結され、前記ステータコアの前記軸方向端面を覆う覆い部を含み、
前記覆い部が、前記ヨークの軸方向端面を覆う環状覆い部を含み、
前記覆い部が、前記ティースの軸方向端面に沿い、前記筒状壁の軸方向端部と前記環状覆い部とを連結する腕部を含み、
前記各スロットが、前記軸方向から見て、前記ヨークの前記内周と前記ティースの壁面とで形成されるコーナ部を含み、
前記樹脂部が、前記コーナ部に沿って前記軸方向に延び、前記腕部と連結される補強部を含む、電動モータ。
【請求項2】
前記環状覆い部が、前記ヨークの前記軸方向端面の一部を覆い、
前記ヨークの前記軸方向端面が、前記コイルエンド冷却流路に露出する露出部を含む、請求項に記載の電動モータ。
【請求項3】
前記露出部が、前記環状覆い部の径方向外方で前記コイルエンド冷却流路に露出する、請求項に記載の電動モータ。
【請求項4】
前記覆い部が、前記ステータコアの前記軸方向の両側に一対配置されており、
前記補強部が、前記一対の覆い部の前記腕部どうしを連結する、請求項に記載の電動モータ。
【請求項5】
ステータコアとコイルとを含むステータであって、前記ステータコアが、回転軸線に沿う軸方向に延びる軸状且つ前記回転軸線を取り囲む環状のヨークと、前記回転軸線周りの周方向に間隔を空けて前記ヨークの内周に配置された複数のティースと、隣り合うティース間に区画された複数のスロットとを有し、各スロットが、前記コイルを収容するコイル収容部と前記コイル収容部を径方向内方へ開放させるスロット開口部とを有し、前記コイルが、前記ステータコアの軸方向端面から前記軸方向に突出するコイルエンドを有する、ステータと、
前記ステータの径方向内方にエアギャップを介して配置され、前記回転軸線周りに回転可能なロータと、
前記ステータコアと一体に形成される樹脂部であって、前記スロット開口部を塞ぐように前記軸方向に延びる閉塞部と、前記閉塞部に連結され、前記ステータコアの前記軸方向端面よりも前記軸方向に突出し、前記ステータコアと同心に配置される筒状壁とを有する、樹脂部と、
前記ステータと前記ロータとを収容するハウジングであって、前記筒状壁の径方向外方に、前記コイルエンドを冷却する冷却液が流されるコイルエンド冷却流路を区画する、ハウジングと、
前記筒状壁によって外周面が覆われて前記ステータコアに保持される金属リングと、
を含む、電動モータ。
【請求項6】
前記ステータが、前記コイル収容部に配置される絶縁紙を含み、前記絶縁紙が、前記ステータコアの前記軸方向端面から前記軸方向に突出する突出部であって、前記覆い部によって保持される突出部を含む、請求項の何れか一項に記載の電動モータ。
【請求項7】
前記ステータコアの前記軸方向端面からの突出高さに関し、前記覆い部の最大突出高さが、前記突出部の最大突出高さよりも高い、請求項に記載の電動モータ。
【請求項8】
前記ハウジングが、前記ステータコアが挿入嵌合される筒状のハウジング本体を備え、
前記ステータコアの外周面と前記ハウジング本体の内周面との間に、前記コイルエンド冷却流路と連通する連通流路が形成される、請求項1~の何れか一項に記載の電動モータ。
【請求項9】
前記連通流路が、前記ティースの径方向外方で前記ステータコアの前記外周面に形成される軸方向溝で区画される、請求項に記載の電動モータ。
【請求項10】
前記コイルエンド冷却流路が、前記冷却液で満たされる、請求項1~の何れか一項に記載の電動モータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、電動モータに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に開示される回転電機では、ステータの内周とロータとの間の隙間であるエアギャップに、ステータ収容室とロータ収容室とを分割する円筒状の隔壁部材が設けられる。隔壁部材の軸方向の両端が、ステータとロータとを収容するハウジングに、液密的に支持される。ハウジングに設けられた導入口を介して、外部からステータ収容室に冷媒が供給される。また、ハウジングに設けられた導出口を介して、ステータ収容室から外部へ冷媒が導出される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】2010-213412号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1では、冷媒がロータ収容室へ侵入することが隔壁部材によって防止される。このため、機械損失の増大を抑制して、回転電機の性能の低下を抑制できるという利点がある。
【0005】
しかしながら、隔壁部材がエアギャップに配置されるため、エアギャップが大きくなる。このため、磁束密度が低下して、回転電機の性能が低下する。
【0006】
そこで、本発明の一実施形態では、性能の高い電動モータを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明の一実施形態は、ステータコアとコイルとを含むステータであって、前記ステータコアが、回転軸線に沿う軸方向に延びる軸状且つ前記回転軸線を取り囲む環状のヨークと、前記回転軸線周りの周方向に間隔を空けて前記ヨークの内周に配置された複数のティースと、隣り合うティース間に区画された複数のスロットとを有し、各スロットが、前記コイルを収容するコイル収容部と前記コイル収容部を径方向内方へ開放させるスロット開口部とを有し、前記コイルが、前記ステータコアの軸方向端面から前記軸方向に突出するコイルエンドを有する、ステータと、前記ステータの径方向内方にエアギャップを介して配置され、前記回転軸線周りに回転可能なロータと、前記ステータコアと一体に形成される樹脂部であって、前記スロット開口部を塞ぐように前記軸方向に延びる閉塞部と、前記閉塞部に連結され、前記ステータコアの前記軸方向端面よりも前記軸方向に突出し、前記ステータコアと同心に配置される筒状壁とを有する、樹脂部と、前記ステータと前記ロータとを収容するハウジングであって、前記筒状壁の径方向外方に、前記コイルエンドを冷却する冷却液が流されるコイルエンド冷却流路を区画する、ハウジングと、を含み、前記樹脂部が、前記筒状壁に連結され、前記ステータコアの前記軸方向端面を覆う覆い部を含み、前記覆い部が、前記ヨークの軸方向端面を覆う環状覆い部を含み、前記覆い部が、前記ティースの軸方向端面に沿い、前記筒状壁の軸方向端部と前記環状覆い部とを連結する腕部を含み、前記各スロットが、前記軸方向から見て、前記ヨークの前記内周と前記ティースの壁面とで形成されるコーナ部を含み、前記樹脂部が、前記コーナ部に沿って前記軸方向に延び、前記腕部と連結される補強部を含む、電動モータを提供する。
【0008】
この構成によれば、樹脂部が、スロットにおいてスロット開口部を塞ぐように軸方向に延びる閉塞部を含む。樹脂部が、閉塞部に連結され、ステータコアの軸方向端面よりも軸方向に突出する筒状部を含み、該筒状部の径方向外方に、コイルエンド冷却流路が区画される。閉塞部によって、スロット内からロータ側へ冷却液が侵入することが抑制され、機械損失の増大が抑制される。また、閉塞部がスロット開口部に配置されるため、エアギャップの大きさを自在に設定できる。このため、性能を高くすることができる。
【0009】
また、前記樹脂部が、前記筒状壁に連結され、前記ステータコアの前記軸方向端面を覆う覆い部を含む。この構成によれば、覆い部を設けることにより、筒状壁の保持剛性を高くすることができる。
【0010】
また、前記覆い部が、前記ヨークの軸方向端面を覆う環状覆い部を含む。この構成によれば、ヨークの軸方向端面を覆う環状覆い部によって、筒状壁の保持剛性をより高くすることができる。
また、前記覆い部が、前記ティースの軸方向端面に沿い、前記筒状壁の軸方向端部と前記環状覆い部とを連結する腕部を含む。この構成によれば、ティースの軸方向端面に沿う腕部によって、筒状壁の軸方向端部と環状覆い部とを連結する。このため、筒状部の保持剛性を高くすることができる。
また、前記各スロットが、前記軸方向から見て、前記ヨークの前記内周と前記ティースの壁面とで形成されるコーナ部を含み、前記樹脂部が、前記コーナ部に沿って前記軸方向に延び、前記腕部と連結される補強部を含む。この構成によれば、スロットのコーナ部に沿って軸方向に延びる補強部が腕部と連結される。このため、腕部をステータコアに保持する保持力を高めることができる。
【0011】
1つの実施形態では、前記環状覆い部が、前記ヨークの前記軸方向端面の一部を覆い、前記ヨークの前記軸方向端面が、前記コイルエンド冷却流路に露出する露出部を含む。この構成によれば、環状覆い部がヨークの軸方向端面の一部を覆うことによって、筒状壁の保持剛性を確保する。且つ、ヨークの軸方向端面の露出部がコイルエンド冷却流路に露出することにより、冷却性能を向上することができる。
【0012】
1つの実施形態では、前記露出部が、前記環状覆い部の径方向外方で前記コイルエンド冷却流路に露出する。この構成によれば、露出部の面積を広くすることができる。このため、冷却性能が向上する。
【0015】
1つの実施形態では、前記覆い部が、前記ステータコアの前記軸方向の両側に一対配置されており、前記補強部が、前記一対の覆い部の前記腕部どうしを連結する。この構成によれば、ステータコアの軸方向の両側に配置される一対の覆い部の腕部どうしが、補強部によって連結される。このため、一対の覆い部をステータコアに保持する保持力を高めることができる。
【0016】
この発明の一実施形態はステータコアとコイルとを含むステータであって、前記ステータコアが、回転軸線に沿う軸方向に延びる軸状且つ前記回転軸線を取り囲む環状のヨークと、前記回転軸線周りの周方向に間隔を空けて前記ヨークの内周に配置された複数のティースと、隣り合うティース間に区画された複数のスロットとを有し、各スロットが、前記コイルを収容するコイル収容部と前記コイル収容部を径方向内方へ開放させるスロット開口部とを有し、前記コイルが、前記ステータコアの軸方向端面から前記軸方向に突出するコイルエンドを有する、ステータと、前記ステータの径方向内方にエアギャップを介して配置され、前記回転軸線周りに回転可能なロータと、前記ステータコアと一体に形成される樹脂部であって、前記スロット開口部を塞ぐように前記軸方向に延びる閉塞部と、前記閉塞部に連結され、前記ステータコアの前記軸方向端面よりも前記軸方向に突出し、前記ステータコアと同心に配置される筒状壁とを有する、樹脂部と、前記ステータと前記ロータとを収容するハウジングであって、前記筒状壁の径方向外方に、前記コイルエンドを冷却する冷却液が流されるコイルエンド冷却流路を区画する、ハウジングと、前記筒状壁によって外周面が覆われて前記ステータコアに保持される金属リングと、を含む、電動モータを提供する。この構成によれば、筒状壁の保持剛性を高くすることができる。
【0017】
1つの実施形態では、前記ステータが、前記コイル収容部に配置される絶縁紙を含み、前記絶縁紙が、前記ステータコアの前記軸方向端面から前記軸方向に突出する突出部であって、前記覆い部によって保持される突出部を含む。この構成によれば、絶縁紙の突出部の姿勢が安定する。このため、ステータコアとコイルとを確実に絶縁できる。
【0018】
1つの実施形態では、前記ステータコアの前記軸方向端面からの突出高さに関し、前記覆い部の最大突出高さが、前記突出部の最大突出高さよりも高い。この構成によれば、ステータコアとコイルとを確実に絶縁できる。
【0019】
1つの実施形態では、前記ハウジングが、前記ステータコアが挿入嵌合される筒状のハウジング本体を備え、前記ステータコアの外周面と前記ハウジング本体の内周面との間に、前記コイルエンド冷却流路と連通する連通流路が形成される。この構成によれば、連通流路を流れる冷却液により、ステータコアを直接、冷却することができる。
【0020】
1つの実施形態では、前記連通流路が、前記ティースの径方向外方で前記ステータコアの前記外周面に形成される軸方向溝で区画される。この構成によれば、簡単な構造で、ステータコアを直接、冷却することができる。
【0021】
1つの実施形態では、前記コイルエンド冷却流路が、前記冷却液で満たされる。この構成によれば、冷却効果が高い。
【発明の効果】
【0022】
この発明よれば、性能の高い電動モータを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1図1は、この発明の一実施形態に係る電動モータの正面図である。
図2図2は、電動モータの側面図である。
図3図3は、電動モータの縦断面図であり、図1のA-O-C断面図に相当する。
図4図4は、電動モータの縦断面図であり、図1のB-O-C断面図に相当する。
図5図5は、電動モータの横断面図であり、図1のD-D断面図に相当する。
図6図6は、電動モータの拡大横断面図であり、図5の一部を拡大した図に相当する。
図7図7は、電動モータの横断面図であり、図2のE-E断面図に相当する。
図8図8は、電動モータの横断面図であり、図2のF-F断面図に相当する。
図9図9は、電動モータの横断面図であり、図8からコイルを取り除いた図に相当する。
図10図10は、電動モータの横断面図であり、図2のG-G断面図に相当する。
図11図11は、ステータコアの軸方向端面の部分拡大図である。
図12図12は、ステータコア、樹脂部および金属リングを含むステータコアユニットの斜視図である。
図13図13は、ステータコアユニットの平面図である。
図14図14は、ステータコアユニットの側面図である。
図15A図15Aは、ステータコアユニットの縦断面図であり、図13のH-H断面図に相当する。
図15B図15Bは、ステータコアユニットの要部の拡大断面図である。
図16図16は、ステータコアユニットの横断面図であり、図14のI-I断面図に相当する。
図17図17は、セグメントコイルの配置例を示す模式図である。
図18A図18Aは、ステータコアの要部の横断面図であり、樹脂部の成形前にスロットに絶縁紙が配置された状態が示されている。
図18B図18Bは、ステータコアユニットの要部の横断面図であって、図16の一部を拡大した図に相当し、樹脂部が成形された状態が示している。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明を具体化した実施形態を図面に従って説明する。
【0025】
図1は、この発明の一実施形態に係る電動モータ1の正面図である。図2は、電動モータ1の側面図である。図3図5は、電動モータ1の横断面図である。図3は、図1のA-O-C断面図に相当する。図4は、図1のB-O-C断面図に相当する。図5は、図1のD-D断面図に相当する。
【0026】
図1図3に示すように、電動モータ1は、ハウジング2と、ステータ3と、ロータ4と、樹脂部5と、出力軸6とを備える。図3に示すように、ハウジング2は、ステータ3とロータ4とを収容する。出力軸6は、回転軸線K1に沿う軸方向Xに延びている。出力軸6は、ハウジング2によって、回転軸線K1周りに回転可能に支持されている。
【0027】
ロータ4は、出力軸6と一体回転する。ロータ4は、ステータ3の径方向内方R1に、エアギャップAGを介して配置されている。ロータ4は、回転軸線K1周りに回転可能である。ロータ4は、ロータコア40と、ロータコア40に取り付けられた図示しない永久磁石とを含む。
【0028】
ステータ3は、ステータコア30とコイル31とを含む。コイル31は、ステータコア30の軸方向Xの両側に突出する一対のコイルエンドとしての第1コイルエンド31bおよび第2コイルエンド31cを含む。
【0029】
以下では、回転軸線K1と直交し且つ回転軸線K1に向かう方向を径方向内方R1と言う。また、回転軸線K1と直交し且つ回転軸線K1から遠ざかる方向を径方向外方R2と言う。
【0030】
まず、ハウジング2を説明する。
【0031】
ハウジング2は金属製である。ハウジング2は、例えば、アルミニウム材で形成される。図2および図3に示すように、ハウジング2は、筒状のハウジング本体20と、第1カバーハウジング21と、第2カバーハウジング22と、第1冷却液ポート23と、第2冷却液ポート24と、冷却液流路25とを含む。
【0032】
図3に示すように、ハウジング本体20は、外周面20aと、内周面20bと、第1端面20cと、第2端面20dとを含む。第1カバーハウジング21は、固定ボルト11(図2を参照)によって、ハウジング本体20の第1端面20cに締め付け固定される。第2カバーハウジング22は、固定ボルト12(図2を参照)によって、ハウジング本体20の第2端面20dに締め付け固定される。
【0033】
図2のE-E断面図である図7に示すように、第1冷却液ポート23および第2冷却液ポート24のそれぞれは、ハウジング本体20の外周面20aに開口する開口孔により形成されている。第1冷却液ポート23および第2冷却液ポート24のそれぞれには、L字状の管継手16が、例えば、ねじ込み固定されている。
【0034】
図3および図4に示すように、冷却液流路25は、第1冷却液ポート23と第2冷却液ポート24との間で冷却液を流動させるように、ハウジング2によって区画される。第1冷却液ポート23が、冷却液を冷却液流路25に導入するための冷却液入口である。第2冷却液ポート24が、冷却液流路25を流動した冷却液を排出するための冷却液出口である。冷却液流路25は、第1コイルエンド冷却流路Q1および第2コイルエンド冷却流路Q2と、第1連通流路61および第2連通流路62と、第1連絡流路71および第2連絡流路72とを含む。
【0035】
第1コイルエンド冷却流路Q1は、第1コイルエンド31bを内包する。第2コイルエンド冷却流路Q2は、第2コイルエンド31cを内包する。第1コイルエンド冷却流路Q1および第2コイルエンド冷却流路Q2は、回転軸線K1を取り囲む環状をなす環状流路である。第1コイルエンド冷却流路Q1および第2コイルエンド冷却流路Q2は、冷却液で満たされている。
【0036】
図8は、図2のF-F断面図であり、図9は、図8からコイルを取り除いた図に相当する。図3図8および図9に示すように、第1連絡流路71は、軸方向流路73と、周方向流路74とを含む。周方向流路74は、周方向Yに有端である。周方向流路74は、筒状のハウジング本体20の第1端面20cに形成された周方向溝20eと、第1カバーハウジング21の端面21gとの間に形成されている。周方向溝20eは、周方向Yに有端である。軸方向流路73は、ハウジング本体20の肉厚内を軸方向Xに延びる軸方向孔で形成される。軸方向流路73は、第1冷却液ポート23と連通される一端73aと、周方向流路74と連通される他端73bとを含む。
【0037】
図1のB-O-C断面図である図4に示すように、第1連通流路61は、第1端部61aと第2端部61bとを含む。第1連通流路61は、第1端部61aと第2端部61bとの間に亘って延びる。第1連通流路61は、ハウジング本体20の肉厚内を軸方向Xに延びる。
【0038】
図8に示すように、回転軸線K1周りの周方向Yに離間する複数の第1軸方向孔610で形成される。第1軸方向孔610は、第1連通流路61の第1端部61aに相当する第1端部610aと、第1連通流路61の第2端部61bに相当する第2端部610bとを含む。
【0039】
図2のG-G断面図である図10に示すように、複数の第1軸方向孔610の周方向Yの配置間隔、および複数の第1軸方向孔610の断面積の少なくとも一方が不均一にされている。図10の例では、複数の第1軸方向孔610の周方向Yの配置間隔、および複数の第1軸方向孔610の断面積の双方が不均一とされているが、これに限らず、配置間隔および断面積の何れか一方が不均一にされてもよいし、また、配置間隔および断面積の双方が均一にされてもよい。
【0040】
図4に示すように、第1連通流路61の第1端部61aは、第1コイルエンド冷却流路Q1から径方向外方R2に離隔する状態で、第1コイルエンド冷却流路Q1に隣接して配置される。第1連通流路61は、第1コイルエンド冷却流路Q1よりも径方向外方R2に配置されている。
【0041】
第1連絡流路71が、第1端部61aを第1冷却液ポート23(図3および図7を参照)に連通させる。具体的には、図8に示すように、第1連通流路61の第1端部61aは、第1連絡流路71の周方向流路74と連通される。周方向流路74は、複数の第1軸方向孔610(第1連通流路61)の第1端部610aどうしを連結している。
【0042】
図4に示すように、第1連通流路61の第2端部61b(第1軸方向孔610の第2端部610b)は、第2コイルエンド冷却流路Q2と連通される。図4および図10に示すように、第1連通流路61の第2端部61bは、ハウジング本体20の内周面20bに形成されて第2カバーハウジング22側に向く環状段部20gに開口されている。
【0043】
図4に示すように、第2連通流路62は、第1コイルエンド冷却流路Q1と第2コイルエンド冷却流路Q2とを連通するように、第1コイルエンド冷却流路Q1と第2コイルエンド冷却流路Q2との間に亘って延びる。第2連通流路62は、ハウジング本体20の内周面20bとステータコア30の外周面30cとの間に形成される。具体的には、第2連通流路62は、ステータコア30の外周面30cに形成され、周方向Yに離間する複数の軸方向溝30d(図13を参照)と、ハウジング本体20の内周面20bとによって形成される。第1連通流路61は、第2連通流路62よりも径方向外方R2に配置される。
【0044】
図5の一部を拡大した図6に示すように、第2連通流路62は、第1端部62aと、第2端部62bとを含む。第2連通流路62の第1端部62aは、第1コイルエンド冷却流路Q1と連通される。第2連通流路62の第2端部62bは、第2コイルエンド冷却流路Q2と連通される。
【0045】
図3に示すように、第2連絡流路72が、第1コイルエンド冷却流路Q1を冷却液出口である第2冷却液ポート24に連通させる。第2連絡流路72は、第1端部72aと、第2端部72bとを含む。第2連絡流路72の第1端部72aは、第1コイルエンド冷却流路Q1と連通される。第2連絡流路72の第2端部72bは、第2冷却液ポート24と連通される。第2連絡流路72は、ハウジング本体20の肉厚内を軸方向Xに延びる第2軸方向孔720で形成される。第2軸方向孔720は、第2連絡流路72の第1端部72aに相当する第1端部720aと、第2連絡流路72の第2端部72bに相当する第2端部720bとを含む。
【0046】
図2のF-F断面図である図8に示すように、第2軸方向孔720で形成される第2連絡流路72の一端(第1端部72a)は、周方向流路74の一対の周方向端部74a,74bに対して、周方向Yに離間する位置に配置されている。
【0047】
図3および図4に示すように、冷却液流路25は、冷却液入口である第1冷却液ポート23から流入した冷却液を、第1連絡流路71、第2コイルエンド冷却流路Q2、第2連通流路62、第1コイルエンド冷却流路Q1および第2連絡流路72を順次に介して、冷却液出口である第2冷却液ポート24(図7を参照)へと流動させる。これにより、第1および第2コイルエンド31b,31cが冷却される。また、ハウジング2およびステータコア30が冷却される。
【0048】
図5および図6に示すように、第1カバーハウジング21は、主板21aと、筒状壁21b(第2筒状壁W2)とを含む。主板21aは、外側面21cと、内側面21dと、軸受保持孔21eと、環状突起21fとを含む。
【0049】
環状突起21fは、内側面21dに、回転軸線K1を中心とする環状に形成された突起である。環状突起21fの端面21gが、第1カバーハウジング21の端面に相当する。
【0050】
第1カバーハウジング21の端面21gが、ハウジング本体20の第1端面20cを図示しないガスケットを介して覆う。前記ガスケットが、ハウジング本体20の第1端面20cと第1カバーハウジング21の端面21gとの間を封止する。図示していないが、前記ガスケットは、図8において、周方向流路74を形成する周方向溝20eと第2連絡流路72の第1端部72aの開口とをそれぞれ取り囲むことで、周方向流路74と第2連絡流路72とが連通しないようにしている。
【0051】
図5および図6に示すように、筒状壁21bは、内側面21dから軸方向Xに延設されている。筒状壁21bは、回転軸線K1を取り囲む筒状に形成されている。筒状壁21bは、回転軸線K1を中心とする円筒面を含む外周面21hと、外周面21hに形成された収容溝21jとを含む。収容溝21jには、例えばOリングであるシール部材13が収容される。
【0052】
図5および図6に示すように、第2カバーハウジング22は、主板22aと、筒状壁22b(第2筒状壁W2)とを含む。主板22aは、外側面22cと、内側面22dと、環状突起22fとを含む。
【0053】
環状突起22fは、主板22aの内側面22dに、回転軸線K1を取り囲む環状に形成された突起である。環状突起22fの端面22gが、第2カバーハウジング22の端面に相当する。第2カバーハウジング22の端面22gが、ハウジング本体20の第2端面20dを図示しないガスケットを介して覆う。前記ガスケットが、ハウジング本体20の第2端面20dと第2カバーハウジング22の端面22gとの間を封止する。
【0054】
筒状壁22bは、主板22aの内側面22dから軸方向Xに延設されている。筒状壁22bは、回転軸線K1を取り囲む筒状に形成されている。筒状壁22bは、外周面22hと、内周面22iと、収容溝22jと、軸受保持部22kとを含む。
【0055】
筒状壁22bの外周面22hは、回転軸線K1を中心とする円筒面を含む。収容溝22jは、外周面22hの周方向に延びる。収容溝22jには、例えばOリングであるシール部材14が収容される。筒状壁22bの内周面22iは、回転軸線K1を中心とする円筒面を含む。軸受保持部22kは、筒状壁22bの内周面22iに設けられる。
【0056】
図5に示すように、出力軸6は、第1カバーハウジング21の軸受保持孔21eの内周面および第2カバーハウジング22の軸受保持部22kに保持された一対の軸受15,15を介して、ハウジング2に回転可能に支持されている。一対の軸受15,15は、例えば密封軸受である。ロータ4は、出力軸6と一体回転可能なロータコア40と、ロータコア40に周方向に等間隔に配置された図示しない永久磁石とを含む。
【0057】
次いで、ステータ3を説明する。
【0058】
図5に示すように、ステータ3は、ステータコア30と、コイル31と、絶縁紙32(図18Aも参照)とを含む。ステータコア30は、複数の板状の電磁鋼板が積層されることにより構成される。ステータコア30は、一対の軸方向端面としての第1軸方向端面30aおよび第2軸方向端面30bと、外周面30cと含む。ステータコア30は、ハウジング2(ハウジング本体20)に、圧入または焼き嵌めされる場合がある。
【0059】
図11は、ステータコア30の要部の拡大図である。図11に示すように、ステータコア30は、ヨーク33と、複数のティース34と、複数のスロット35とを有する。ヨーク33は、回転軸線K1に沿う軸方向Xに延びる軸状且つ回転軸線K1を取り囲む環状に形成される。ヨーク33は、外周33aと、内周33bと、一対の軸方向端面33cとを含む。複数のティース34は、回転軸線K1周りの周方向Yに間隔を空けて、ヨーク33の内周33bに配置されている。
【0060】
第2連通流路62を形成するための軸方向溝30d(図8および図12を参照)は、ステータコア30の外周面30c(ヨーク33の外周33a)に、周方向Yに等間隔で配置されている。図11に示すように、軸方向溝30dは、ティース34の径方向外方R2に配置されている。具体的には、軸方向溝30dは、ティース34の周方向Yの中央位置の径方向外方R2に配置されている。軸方向溝30dは、全てのティース34の径方向外方R2に配置されてもよいし、周方向Yに1ないし複数個おきのティース34の径方向外方R2に配置されてもよい。
【0061】
図8に示すように、ハウジング本体20は、内周面20bから径方向内方R1に突出する複数の突起20fを含む。複数の突起20fは、周方向Yに離間している。突起20fは、ステータコア30の第1軸方向端面30aに当接することにより、ステータコア30を軸方向Xに位置決めする。突起20fは、第1軸方向端面30aに開口される軸方向溝30dの開口を避ける位置で、第1軸方向端面30aに当接する。
【0062】
ステータコア30を軸方向Xの位置決めは、組立工程において、図示しない治具を用いて行われてもよい。その場合、突起20fを設ける必要がない。
【0063】
複数のティース34は、ヨーク33の内周33bから、径方向内方R1に突出している。ティース34は、基端34aと、先端34bとを含む。基端34aは、ヨーク33と連結されている。先端34bは、基端34aに対して径方向内方R1に配置される。先端34bは、周方向Yの両側に突出する一対の凸部34cを含む。
【0064】
周方向Yに隣り合うティース34間に、スロット35が形成される。ティース34とスロット35とが、周方向Yに交互に配置される。スロット35は、ステータコア30を軸方向Xに貫通している。
【0065】
スロット35は、コイル収容部35aと、スロット開口部35bとを含む。コイル収容部35aにコイル31が収容される。スロット開口部35bは、隣接するティース34の凸部34cどうしの間に形成される。スロット開口部35bは、コイル収容部35aを径方向内方R1に開放させる。
【0066】
スロット35の内壁面は、底壁面35cと、一対の側壁面35dと、一対の保持壁面35eとを含む。底壁面35cは、ヨーク33の内周33bで形成され、径方向内方R1に向く。一対の側壁面35dは、隣接するティース34の側面で形成され、周方向Yに対向する。一対の保持壁面35eは、一対の凸部34cの壁面であり、径方向外方R2に向く面である。
【0067】
一対の側壁面35dと、底壁面35cとで、一対のコーナ部35fが形成されている。各コーナ部35fを形成する、側壁面35dの部分は、湾曲凹状の内面35gを含む。これにより、各コーナ部35fは、周方向Yに拡げられている。
【0068】
図12は、ステータコア30を含むステータコアユニットUの斜視図である。図13は、ステータコアユニットUの平面図である。図14は、ステータコアユニットUの側面図である。図15Aは、ステータコアユニットUの縦断面図であり、図13のH-H断面図に相当する。図15Bは、図15Aの一部を拡大した拡大断面図である。図16は、図14のI-I断面図である。
【0069】
図12図13および図14に示すように、ステータコアユニットUは、ステータコア30と、樹脂部5と、金属リング7と、絶縁紙32(図15Aおよび図18Aを参照)とを含むユニットである。ステータコアユニットUは、コイル31が装着される前の段階で、サブアセンブリとして形成される。すなわち、製造時において、サブアセンブリとしてのステータコアユニットUに対して、コイル31が装着されることになる。
【0070】
次いで、コイル31を説明する。
【0071】
図5に示すように、コイル31は、被収容部31aと、一対のコイルエンドとしての第1コイルエンド31bおよび第2コイルエンド31cとを有する。被収容部31aは、スロット35のコイル収容部35aに収容される。第1コイルエンド31bおよび第2コイルエンド31cは、それぞれ、ステータコア30の第1軸方向端面30aおよび第2軸方向端面30bから軸方向Xに突出する。
【0072】
コイル31は、複数のスロット35内に一部が収容された状態でステータコア30に装着されている。コイル31は、U相、V相およびW相からなる三相コイルである。各相のコイルは、スロット35に配置される絶縁紙32を介して、ステータコア30と絶縁されている。
【0073】
各相のコイル31は、例えば、複数のセグメントコイル36(図7を参照)を相互に接続することで構成される。図17は、ステータコア30を径方向内方R1から見たときの、セグメントコイル36の配置例を示す模式図である。図17に示すように、セグメントコイル36は、一対の挿入部36aと、架橋部36bと、一対の延設部36c,36dとを含む。一対の挿入部36aは、異なるスロット35に挿入される。架橋部36bは、一対の挿入部36aの一端どうしを連結する。一対の延設部36c,36dは、それぞれ、一対の挿入部36aの他端から延設される。
【0074】
架橋部36bは、ステータコア30の何れか一方の軸方向端面(例えば第1軸方向端面30a)から突き出して配置され、コイルエンドの一部を形成する。一対の延設部36cは、ステータコア30の他方の軸方向端面(例えば第2軸方向端面30b)から突き出して配置され、コイルエンドの一部を形成する。各延設部36c,36dは、他のセグメントコイル36の延設部36c,36dと溶接等によって接続される。
【0075】
具体的には、第1コイルエンド31bにおいて、セグメントコイル36の架橋部36bは、径方向内方R1から見て、軸方向Xに対して互いに逆向きに傾斜する一対の傾斜部36eを含む。一対の傾斜部36eどうしの交差部分に、架橋部36bの頂部36hが形成される。
【0076】
第2コイルエンド31cにおいて、セグメントコイル36が、一方の延設部36cに、傾斜部36fおよび接合端部36jを含む。傾斜部36fは、径方向内方R1から見て軸方向Xに対して傾斜する。接合端部36jは、一方の延設部36cの延設端部を構成しており、例えば軸方向Xに延びる。接合端部36jは、他のセグメントコイル36の接合端部36jと例えば溶接により接合される。
【0077】
また、第2コイルエンド31cにおいて、セグメントコイル36が、他方の延設部36dに、傾斜部36gおよび接合端部36kを含む。傾斜部36gは、径方向内方R1から見て軸方向Xに対して傾斜する。接合端部36kは、他方の延設部36dの延設端部を構成しており、例えば軸方向Xに延びる。接合端部36kは、他のセグメントコイル36の接合端部36kと例えば溶接により接合される。
【0078】
ここで、ステータコア30の第1軸方向端面30aからの、セグメントコイル36の傾斜部36eの最大突出高さをH1とする。また、ステータコア30の第2軸方向端面30bからの、セグメントコイル36の一方の延設部36cの傾斜部36fの最大突出高さをH2とする。また、ステータコア30の第2軸方向端面30bからの、セグメントコイル36の他方の延設部36dの傾斜部36gの最大突出高さをH3とする。
【0079】
次いで、絶縁紙32を説明する。
【0080】
図15Aに示すように、絶縁紙32は、被収容部32aと、一対の突出部32bとを含む。被収容部32aは、スロット35のコイル収容部35aに収容される。一対の突出部32bのそれぞれは、ステータコア30の対応する軸方向端面30a,30bから軸方向Xに突出する。
【0081】
図18Aに示すように、絶縁紙32は、軸方向Xから見て、底部32cと一対の側部32dとを含む溝形に形成されている。絶縁紙32の底部32cが、底壁面35cに沿って配置される。絶縁紙32の一対の側部32dのそれぞれが、対応する側壁面35dに沿って配置される。
【0082】
なお、図示していないが、絶縁紙32に代えて、スロット35の内壁面に被覆される絶縁樹脂層が用いられてもよい。
【0083】
次いで、樹脂部5を説明する。
【0084】
図15Aに示すように、樹脂部5は、ステータコア30と一体に形成される。樹脂部5は、複数の閉塞部51(第3部分。図16を参照)と、一対の筒状壁52(第2部分)と、一対の覆い部53(第1部分)と、複数の補強部54(図18Bを参照)とを含む。各覆い部53は、環状覆い部55と、複数の腕部56とを含む。
【0085】
図16の一部を拡大した図18Bに示すように、各閉塞部51は、対応するスロット35のスロット開口部35bを塞ぐように軸方向Xに延びる。各閉塞部51は、スロット35の内側から、すなわち径方向内方R1から、スロット開口部35bを閉塞する。各閉塞部51は、周方向Yに隣接するティース34の先端34bよりも径方向内方R1へ突出することがないように、スロット開口部35bを塞ぐ。各閉塞部51は、軸方向Xの一端51aおよび他端51bを有する。
【0086】
閉塞部51は、スロット開口部35b内で一対の凸部34cの頂面によって保持されている。また、閉塞部51の一部は、コイル収容部35a内に入り込んでいる。閉塞部51は、コイル収容部35a内で、一対の側壁面35dと、一対の凸部34cの一対の保持壁面35eとによって保持されている。このため、閉塞部51がステータコア30に強固に保持される。
【0087】
図15Aに示すように、一対の筒状壁52は、ステータコア30の軸方向Xの両側に配置されている。一対の筒状壁52は、ステータコア30の対応する第1軸方向端面30aおよび第2軸方向端面30bから軸方向Xに突出している。一対の筒状壁52は、ステータコア30と同心に配置される。各筒状壁52は、軸方向Xの一端52aと、軸方向Xの他端52bとを含む。各筒状壁52の一端52aは、ステータコア30の対応する軸方向端面(第1軸方向端面30aまたは第2軸方向端面30b)と当接する当接部52cを含む。
【0088】
一対の筒状壁52は、複数の閉塞部51と連結される。一方の筒状壁52が、複数の閉塞部51の一端51aと連結される。他方の筒状壁52が、複数の閉塞部51の他端51bと連結される。すなわち、複数の閉塞部51が、一対の筒状壁52どうしを連結している。
【0089】
次いで、金属リング7を説明する。
【0090】
図15Aに示すように、一対の筒状壁52のそれぞれの内周面52dに、金属リング7が保持されている。金属リングは、例えば、ステンレス製である。金属リング7は、外周面7aと、内周面7bと、一端部7cと、他端部7dとを含む。
【0091】
金属リング7の外周面7aの少なくとも一部が、樹脂部5の筒状壁52によって覆われてモールドされている。金属リング7は、筒状壁52と一体化されて、ステータコア30に保持されている。互いに一体化された筒状壁52と金属リング7とを含む第1筒状壁W1が、一対で形成されている。一対の第1筒状壁W1は、ステータコア30と同心に配置されている。樹脂部5の筒状壁52は、第1筒状壁W1の一部を形成する。
【0092】
金属リング7の一端部7cは、ステータコア30の軸方向端面30a,30bに対して、軸方向Xに対向している。金属リング7の一端部7cは、ステータコア30の軸方向端面30a,30bから離隔している。
【0093】
具体的には、図15Bに示すように、筒状壁52の一端52aが、金属リング7の一端部7cとステータコア30の軸方向端面30a,30bとの間に介在する介在部52eを含む。介在部52eは、周方向Yの全周に設けられてもよいし、周方向Yの一部に設けられてもよい。
【0094】
また、図6に示すように、ステータコア30の対応する軸方向端面30a,30bからの軸方向Xの突出高さに関して、コイルエンド31b,31cの最大突出高さが、金属リング7の最大突出高さよりも高くされている。
【0095】
具体的には、図17に示すように、ステータコア30の第1軸方向端面30aからの軸方向Xの突出高さに関して、セグメントコイル36の傾斜部36eの最大突出高さH1(架橋部36bの頂部36hの最大突出高さ)が、第1コイルエンド31bの最大突出高さに相当する。第1コイルエンド31bの最大突出高さ(傾斜部36eの最大突出高さH1)は、金属リング7の最大突出高さH4(図15Aを参照)よりも高くされている。
【0096】
また、ステータコア30の第2軸方向端面30bからの軸方向Xの突出高さに関して、第2コイルエンド31cの最大突出高さは、セグメントコイル36の接合端部36jの最大突出高さおよび接合端部36jの最大突出高さのうちの高い方(互いに等しい高さの場合は双方)に相当する。第2コイルエンド31cの最大突出高さは、金属リング7の最大突出高さH4よりも高くされている。
【0097】
また、ステータコア30の第2軸方向端面30bからの軸方向Xの突出高さに関して、セグメントコイル36の傾斜部36fの最大突出高さH2および傾斜部36gの最大突出高さH3が、金属リング7の最大突出高さH4よりも高くされている。
【0098】
また、セグメントコイル36の各接合端部36j,36kは、ステータコア30の第2軸方向端面30bからの軸方向Xの突出高さに関して、金属リング7の最大突出高さH4よりも高い位置に配置されている。
【0099】
図6に示すように、一方の第1筒状壁W1に対して、第1カバーハウジング21の筒状壁21b(第2筒状壁W2)が、挿入嵌合されている。一方の第1筒状壁W1は、第1カバーハウジング21の筒状壁21bの外周面21hと嵌合される。具体的には、一方の第1筒状壁W1の金属リング7の内周面7bが、第1カバーハウジング21の筒状壁21b(第2筒状壁W2)の外周面21hと嵌合されている。
【0100】
第1カバーハウジング21の筒状壁21b(第2筒状壁W2)の外周面21hの収容溝21jに収容されたシール部材13によって、一方の第1筒状壁W1の金属リング7の内周面7bと、筒状壁21b(第2筒状壁W2)の外周面21hとの間が封止されている。
【0101】
他方の第1筒状壁W1に対して、第2カバーハウジング22の筒状壁22b(第2筒状壁W2)が、挿入嵌合されている。他方の第1筒状壁W1は、第2カバーハウジング22の筒状壁22bの外周面22hと嵌合される。具体的には、他方の第1筒状壁W1の金属リング7の内周面7bが、第2カバーハウジング22の筒状壁22b(第2筒状壁W2)の外周面22hと嵌合されている。
【0102】
第2カバーハウジング22の筒状壁22b(第2筒状壁W2)の外周面22hの収容溝22jに収容されたシール部材14によって、一方の第1筒状壁W1の金属リング7の内周面7bと、筒状壁22b(第2筒状壁W2)の外周面22hとの間が封止されている。
【0103】
ハウジング2は、互いに嵌合される第1筒状壁W1および第2筒状壁W2の径方向外方R2に、第1コイルエンド冷却流路Q1および第2コイルエンド冷却流路Q2を区画している。第1コイルエンド冷却流路Q1および第2コイルエンド冷却流路Q2に、第1および第2コイルエンド31b,31cを冷却する冷却液が流される。
【0104】
図15Aに示すように、一対の覆い部53は、対応する筒状壁52と連結され、ステータコア30の一対の軸方向端面(第1軸方向端面30aおよび第2軸方向端面30b)をそれぞれ覆う。図12および図13に示すように、覆い部53に含まれる環状覆い部55は、ヨーク33の軸方向端面33cを覆う。複数の腕部56は、ティース34の軸方向端面34d(図11を参照)に沿う。図15Aに示すように、覆い部53に含まれる複数の腕部56は、筒状壁52の軸方向端部である一端52aと環状覆い部55とを連結する。
【0105】
環状覆い部55は、ヨーク33の軸方向端面33cの一部を覆う。図6および図13に示すように、ヨーク33の軸方向端面33cは、第1コイルエンド冷却流路Q1および第2コイルエンド冷却流路Q2に露出する露出部33dを含む。露出部33dは、環状覆い部55の径方向外方R2に配置される。
【0106】
図15Aに示すように、絶縁紙32の突出部32bは、覆い部53によって保持される。具体的には、絶縁紙32の突出部32bは、環状覆い部55によって保持される。また、ステータコア30の軸方向端面30a,30bからの軸方向Xの突出高さに関し、覆い部53の最大突出高さに相当する、環状覆い部55の最大突出高さH5が、突出部32bの最大突出高さH6よりも高くされている。
【0107】
図18Bに示すように、補強部54は、各スロット35に一対ずつ配置されている。補強部54は、スロット35の各コーナ部35fに沿って軸方向X(図18Bで紙面と直交する方向)に延び、覆い部53の腕部56と連結される。補強部54は、一対の覆い部53の腕部56どうしを連結している。
【0108】
スロット35に絶縁紙32が挿入される場合、図18Aおよび図18Bに示すように、補強部54は、コーナ部35fの湾曲凹状の内面35gと、絶縁紙32の対応する側部32dとの間を塞ぐように軸方向Xに延びる。
【0109】
この実施形態によれば、樹脂部5が、スロット35においてスロット開口部35bを塞ぐように軸方向Xに延びる閉塞部51(図18Bを参照)を含む。また、図6に示すように、樹脂部5が、閉塞部51に連結され、ステータコア30の軸方向端面(第1軸方向端面30aおよび第2軸方向端面30b)よりも軸方向Xに突出する筒状壁52を含む。筒状壁52の径方向外方R2に、第1コイルエンド冷却流路Q1および第2コイルエンド冷却流路Q2が区画される。このため、閉塞部51によって、スロット35内からロータ4側へ冷却液が侵入することが抑制され、機械損失の増大が抑制される。また、図18Bに示すように、閉塞部51がスロット開口部35bに配置されてスロット開口部35bをスロット35の内側から塞ぐため、エアギャップAG(図6を参照)の大きさを自在に設定できる。このため、性能を高くすることができる。
【0110】
また、図6および図12に示すように、樹脂部5が、筒状壁52に連結され、ステータコア30の軸方向端面30a,30bを覆う覆い部53を含む。覆い部53を設けることにより、筒状壁52の保持剛性を高くすることができる。
【0111】
また、覆い部53が、ステータコア30のヨーク33の軸方向端面33cを覆う環状覆い部55を含む。環状覆い部55によって、筒状壁52の保持剛性をより高くすることができる。
【0112】
また、環状覆い部55が、ヨーク33の軸方向端面33cの一部を覆うことによって、筒状壁52の保持剛性を確保する。且つ、ヨーク33の軸方向端面33cの露出部33dが、第1コイルエンド冷却流路Q1および第2コイルエンド冷却流路Q2に露出することにより、冷却性能を向上することができる。
【0113】
また、露出部33dが、環状覆い部55の径方向外方R2で第1コイルエンド冷却流路Q1および第2コイルエンド冷却流路Q2に露出する。このため、露出部33dの面積を広くすることができ、冷却性能が向上する。
【0114】
また、図13に示すように、覆い部53が、ティース34の軸方向端面34d(図11参照)に沿う腕部56を含む。腕部56が、図15Aに示すように、筒状壁52の軸方向端部(一端52a)と環状覆い部55とを連結する。このため、筒状壁52の保持剛性を高くすることができる。
【0115】
また、図11に示すように、スロット35においてヨーク33の内周33bとティース34の壁面とで形成されるコーナ部35fを含む。図18Bに示すように、樹脂部5が、コーナ部35fに沿って軸方向Xに延び、腕部56(図12を参照)と連結される補強部54を含む。このため、腕部56をステータコア30に保持する保持力を高めることができる。
【0116】
また、図15Aに示すように、ステータコア30の軸方向Xの両側に配置される一対の覆い部53の腕部56どうしが、補強部54(図18Bを参照)によって連結される。このため、一対の覆い部53をステータコア30に保持する保持力を高めることができる。
【0117】
また、図15Aに示すように、樹脂部5の筒状壁52によって外周面7aが覆われる金属リング7が、筒状壁52とともにステータコア30に保持される。このため、筒状壁52の保持剛性を高くすることができる。
【0118】
また、スロット35のコイル収容部35aに配置される絶縁紙32が、ステータコア30の軸方向端面30a,30bから軸方向Xに突出する突出部32bを含む。突出部32bが、覆い部53(具体的には、環状覆い部55)によって保持される。このため、絶縁紙32の突出部32bの姿勢が安定する。このため、ステータコア30とコイル31とを確実に絶縁できる。
【0119】
また、図15Aに示すように、ステータコア30の軸方向端面30a,30bからの軸方向Xの突出高さに関し、覆い部53(環状覆い部55)の最大突出高さH5が、絶縁紙32の突出部32bの最大突出高さH6よりも高い。このため、ステータコア30とコイル31とを確実に絶縁できる。
【0120】
また、図4に示すように、ステータコア30の外周面30cと筒状のハウジング本体20の内周面20bとの間に、コイルエンド冷却流路Q1,Q2と連通する連通流路(第2連通流路62)が形成される。このため、連通流路(第2連通流路62)を流れる冷却液により、ステータコア30を直接、冷却することができる。冷却性能を向上することができる。
【0121】
また、連通流路(第2連通流路62)が、ティース34の径方向外方R2でステータコア30の外周面30cに形成される軸方向溝30d(図11を参照)で区画される。このため、ステータコア30の外周面30cに軸方向溝を設けることに起因する磁気特性の劣化を抑制することができる。また、簡単な構造で、ステータコア30を直接、冷却することができる。
【0122】
また、コイルエンド冷却流路Q1,Q2が、冷却液で満たされる。このため、冷却効果が高い。
【0123】
本発明は、前記実施形態に限定されるものではなく、例えば、樹脂部5の補強部54が、設けられなくてもよい。また、コイル31を構成するセグメントコイル36が、導体の表面を絶縁層で被覆した導線で形成される場合、絶縁紙32が設けられなくてもよい。また、筒状壁52によってモールドされる金属リング7が設けられなくてもよい。また、第2連通流路62を形成するための溝(例えば軸方向溝)が、ステータコア30の外周面30cに形成されずに、ハウジング本体20の内周面20bに形成されてもよい。
【0124】
その他、本発明は、特許請求の範囲記載の範囲内で種々の変更を施すことができる。
【符号の説明】
【0125】
1 電動モータ
2 ハウジング
3 ステータ
4 ロータ
5 樹脂部
7 金属リング
7a 外周面
20 ハウジング本体
20b 内周面
23 第1冷却ポート
24 第2冷却ポート
25 冷却液流路
30 ステータコア
30a 第1軸方向端面
30b 第2軸方向端面
30c 外周面
30d 軸方向溝
31 コイル
31b 第1コイルエンド
31c 第2コイルエンド
32 絶縁紙
32b 突出部
33 ヨーク
33b 内周
33c 軸方向端面
33d 露出部
34 ティース
34d 軸方向端面
35 スロット
35a コイル収容部
35b スロット開口部
35f コーナ部
51 閉塞部
52 筒状壁
52a 一端(軸方向端部)
53 覆い部
54 補強部
55 環状覆い部
56 腕部
62 第2連通流路
AG エアギャップ
H5 最大突出高さ
H6 最大突出高さ
K1 回転軸線
Q1 第1コイルエンド冷却流路
Q2 第2コイルエンド冷却流路
R1 径方向内方
R2 径方向外方
X 軸方向
Y 周方向
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15A
図15B
図16
図17
図18A
図18B