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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-12
(45)【発行日】2023-07-21
(54)【発明の名称】電動モータ
(51)【国際特許分類】
   H02K 9/19 20060101AFI20230713BHJP
   H02K 9/197 20060101ALI20230713BHJP
【FI】
H02K9/19 A
H02K9/197
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2021140480
(22)【出願日】2021-08-30
(65)【公開番号】P2023034313
(43)【公開日】2023-03-13
【審査請求日】2022-03-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000010076
【氏名又は名称】ヤマハ発動機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002310
【氏名又は名称】弁理士法人あい特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 仁
【審査官】中島 亮
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-220329(JP,A)
【文献】特開2003-244896(JP,A)
【文献】特開2003-224945(JP,A)
【文献】特開昭59-222057(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 9/00- 9/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ステータコアとコイルとを含むステータであって、前記ステータコアが、回転軸線に沿う軸方向に延びる軸状且つ前記回転軸線を取り囲む環状に構成され、前記回転軸線周りの周方向に間隔を空けて内周に配置された複数のティースと、隣り合うティース間に区画され、前記コイルを収容する複数のスロットとを有し、前記コイルが、前記ステータコアの一対の軸方向端面からそれぞれ前記軸方向に突出する一対のコイルエンドを有する、ステータと、
前記ステータの径方向内方にエアギャップを介して配置され、前記回転軸線周りに回転可能なロータと、
前記ステータと前記ロータとを収容し、第1冷却液ポートと、第2冷却液ポートと、前記第1および第2冷却液ポートの間で冷却液を流動させるように区画された冷却液流路とを有する筒状のハウジングと、を含み、
前記冷却液流路が、
前記一対のコイルエンドの一方を内包し前記回転軸線を取り囲む環状をなし、前記第2冷却液ポートと連通した第1環状流路と、
前記一対のコイルエンドの他方を内包し前記回転軸線を取り囲む環状をなす第2環状流路と、
前記第1環状流路から隔離する状態で前記第1環状流路に隣接配置され且つ前記第1冷却液ポートと連通した第1端部と、前記第2環状流路と連通する第2端部との間に亘って延びた第1連通流路と、
前記第1環状流路と前記第2環状流路とを連通するように、前記第1および第2環状流路の間に亘って延びた第2連通流路と、を含み、
前記第1連通流路は、前記ハウジングの肉厚内に形成され、前記周方向に離間し、前記軸方向に延びる複数の第1軸方向孔を含み、
前記第2連通流路は、前記ハウジングの内周面と前記ステータコアの外周面との間に形成されている、電動モータ。
【請求項2】
前記第1連通流路は、前記第2連通流路よりも径方向外方に配置されている、請求項1に記載の電動モータ。
【請求項3】
前記第1連通流路は、前記第1環状流路よりも径方向外方に配置されている、請求項1または2に記載の電動モータ。
【請求項4】
前記第2連通流路は、前記ステータコアの前記外周面に形成された溝と前記ハウジングの前記内周面とによって形成されている、請求項1~3に記載の電動モータ。
【請求項5】
前記冷却液流路が、前記第1連通流路の前記第1端部を前記第1冷却液ポートに連通させる第1連絡流路をさらに含む、請求項1~のいずれか一項に記載の電動モータ。
【請求項6】
前記冷却液流路が、前記第1環状流路を前記第2冷却液ポートに連通させる第2連絡流路をさらに含む、請求項1~のいずれか一項に記載の電動モータ。
【請求項7】
前記第1冷却液ポートが、冷却液を前記冷却液流路に導入するための冷却液入口であり、
前記第2冷却液ポートが、前記冷却液流路を流動した冷却液を排出するための冷却液出口である、請求項1~のいずれか一項に記載の電動モータ。
【請求項8】
前記ステータコアが、前記ハウジングに圧入または焼き嵌めされている、請求項1~の何れか一項に記載の電動モータ。
【請求項9】
前記ハウジングが、前記ステータコアが嵌合される内周面を有する筒状のハウジング本体と、前記ハウジング本体の前記軸方向の端面を覆う端面を有するカバーハウジングであって、前記第1環状流路の一部を区画するカバーハウジングと、を含み、
前記冷却液流路が、前記第1連通流路の前記第1端部を前記第1冷却液ポートに連通させる第1連絡流路をさらに含み、
前記第1連絡流路が、前記ハウジング本体の前記端面および前記カバーハウジングの前記端面の何れか一方に形成され前記周方向に延びる周方向溝と、前記ハウジング本体の前記端面および前記カバーハウジングの前記端面の他方とによって形成され、前記周方向に延びる周方向流路を含み、
前記周方向流路が、前記第1連通流路の前記第1端部としての、前記複数の第1軸方向孔の第1端部どうしを連結する、請求項に記載の電動モータ。
【請求項10】
前記複数の第1軸方向孔の前記周方向の配置間隔、および前記複数の第1軸方向孔の断面積の少なくとも一方が不均一である、請求項またはに記載の電動モータ。
【請求項11】
前記周方向流路が、一対の周方向端部を含み、
前記冷却液流路が、前記第1環状流路を前記第2冷却液ポートに連通させる第2連絡流路をさらに含み、
前記第2連絡流路が、前記ハウジング本体に形成される第2軸方向孔であって、前記周方向流路の前記一対の周方向端部に対して前記周方向に離隔する位置に配置される一端を有する第2軸方向孔を含む、請求項に記載の電動モータ。
【請求項12】
前記ステータコアの前記外周面に形成され、前記第2連通流路を形成する前記溝が、前記周方向に離間し、前記軸方向に延びる複数の軸方向溝を含む、請求項に記載の電動モータ。
【請求項13】
前記複数の軸方向溝が、前記周方向に等間隔で且つそれぞれ対応するティースの径方向外方に配置されている、請求項12に記載の電動モータ。
【請求項14】
前記複数の軸方向溝のそれぞれが、前記ステータコアの前記軸方向端面に開口する開口を形成し、
前記ハウジングが、前記ステータコアの前記軸方向端面に対して前記開口を避ける位置で当接し、前記ステータコアを前記軸方向に位置決めする突起を含む、請求項12または13に記載の電動モータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、電動モータに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に開示される回転電機では、ケース(ハウジング)の内周面に固定されたホルダの内周面が、ステータコアの外周面に嵌合されている。ホルダの内周面に形成される凹部と、ステータコアの外周面に形成される凹部との間に、冷媒通路が形成される。冷媒通路に冷媒が流通されて、ステータコアが冷却される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2019-68705号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、冷媒通路を形成するために、ハウジングとステータコアとの間に、これらの部材とは別部材であるホルダを介在させる。このため、構造が複雑になる。
【0005】
そこで、この発明の一実施形態では、簡単な構造で冷却性能の高い電動モータを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明の一実施形態は、ステータコアとコイルとを含むステータであって、前記ステータコアが、回転軸線に沿う軸方向に延びる軸状且つ前記回転軸線を取り囲む環状に構成され、前記回転軸線周りの周方向に間隔を空けて内周に配置された複数のティースと、隣り合うティース間に区画され、前記コイルを収容する複数のスロットとを有し、前記コイルが、前記ステータコアの一対の軸方向端面からそれぞれ前記軸方向に突出する一対のコイルエンドを有する、ステータと、記ステータの径方向内方にエアギャップを介して配置され、前記回転軸線周りに回転可能なロータと、前記ステータと前記ロータとを収容し、第1冷却液ポートと、第2冷却液ポートと、前記第1および第2冷却液ポートの間で冷却液を流動させるように区画された冷却液流路とを有する筒状のハウジングと、を含み、前記冷却液流路が、前記一対のコイルエンドの一方を内包し前記回転軸線を取り囲む環状をなし、前記第2冷却液ポートと連通した第1環状流路と、前記一対のコイルエンドの他方を内包し前記回転軸線を取り囲む環状をなす第2環状流路と、前記第1環状流路から隔離する状態で前記第1環状流路に隣接配置され且つ前記第1冷却液ポートと連通した第1端部と、前記第2環状流路と連通する第2端部との間に亘って延びた第1連通流路と、前記第1環状流路と前記第2環状流路とを連通するように、前記第1および第2環状流路の間に亘って延びた第2連通流路と、を含み、前記第1連通流路は、前記ハウジングの肉厚内に形成され、前記周方向に離間し、前記軸方向に延びる複数の第1軸方向孔を含み、前記第2連通流路は、前記ハウジングの内周面と前記ステータコアの外周面との間に形成されている、電動モータを提供する。
【0007】
この構成によれば、第1冷却液ポートと第2冷却液ポートとを有するハウジングが、両冷却液ポートの間で冷却液を流動させるように区画された冷却液流路を有する。このため、ハウジングの冷却を通じて、簡単な構造で電動モータ全体の冷却が可能である。また、前記冷却液流路では、第2連通流路を介して、第1環状流路および第2環状流路の一方から他方へ冷却液が流されることにより、一対のコイルエンドを冷却することができる。このため、ハウジングの冷却と相俟って冷却性能を高くすることができる。
また、前記第1連通流路は、前記ハウジングの肉厚内に形成されており、前記第2連通流路は、前記ハウジングの内周面と前記ステータコアの外周面との間に形成されている。このため、ハウジングの肉厚内に形成される第1連通流路を流れる冷却液によって、ハウジングを効果的に冷却することができる。また、第2連通流路を流れる冷却液によって、ハウジングおよびステータコアを効果的に冷却することができる。
また、前記第1連通流路が、前記周方向に離間し、前記軸方向に延びる複数の第1軸方向孔を含む。第1連通流路が周方向に離間する複数の第1軸方向孔を含むので、ハウジングを冷却する効果が高い。
【0008】
一つの実施形態では、前記第1連通流路は、前記第2連通流路よりも径方向外方に配置されている。この構成によれば、第1連通流路および第2連通流路を、互いに他と干渉することなく、自在にレイアウトすることができる。
【0009】
一つの実施形態では、前記第1連通流路は、前記第1環状流路よりも径方向外方に配置されている。この構成によれば、ハウジングにおいて、第1環状流路よりも径方向外方の部分を第1連通流路の形成に有効に利用することができる。
【0011】
一つの実施形態では、前記第2連通流路は、前記ステータコアの前記外周面に形成された溝と前記ハウジングの前記内周面とによって形成されている。この構成によれば、第1連通流路と第2連通流路とを、互いに他と干渉することなく自在に形成することができる。また、第2連通流路を構成するようにステータコアの外周面に形成される溝を流れる冷却液によって、ステータコアを効果的に冷却することができる。
【0012】
一つの実施形態では、前記冷却液流路が、前記第1連通流路の前記第1端部を前記第1冷却液ポートに連通させる第1連絡流路をさらに含む。この構成によれば、第1連絡流路を介して、第1連通流路の第1端部が、第1冷却液ポートと連通される。
【0013】
一つの実施形態では、前記冷却液流路が、前記第1環状流路を前記第2冷却液ポートに連通させる第2連絡流路をさらに含む。この構成によれば、第2連絡流路を介して、第1環状流路が、第2冷却液ポートと連通される。
【0014】
一つの実施形態では、前記第1冷却液ポートが、冷却液を前記冷却液流路に導入するための冷却液入口であり、前記第2冷却液ポートが、前記冷却液流路を流動した冷却液を排出するための冷却液出口である。この構成によれば、冷却液入口(第1冷却液ポート)から導入された冷却液が、冷却液流路を流れた後、冷却液出口(第2冷却液ポート)から導出される。
【0015】
一つの実施形態では、前記ステータコアが、前記ハウジングに圧入または焼き嵌めされている。この構成によれば、ハウジングの冷却によりハウジングの温度膨張が抑制される。このため、温度上昇に拘らず、ハウジングがステータコアを保持する保持力が低下すること抑制することができる。特に、ハウジングの熱膨張係数がステータコアの熱膨張係数よりも大きい場合に、保持力の低下を抑制する効果が高い。
【0017】
一つの実施形態では、前記ハウジングが、前記ステータコアが嵌合される内周面を有する筒状のハウジング本体と、前記ハウジング本体の前記軸方向の端面を覆う端面を有するカバーハウジングであって、前記第1環状流路の一部を区画するカバーハウジングと、を含み、前記冷却液流路が、前記第1連通流路の前記第1端部を前記第1冷却液ポートに連通させる第1連絡流路をさらに含み、前記第1連絡流路が、前記ハウジング本体の前記端面および前記カバーハウジングの前記端面の何れか一方に形成され前記周方向に延びる周方向溝と、前記ハウジング本体の前記端面および前記カバーハウジングの前記端面の他方とによって形成され、前記周方向に延びる周方向流路を含み、前記周方向流路が、前記第1連通流路の前記第1端部としての、前記複数の第1軸方向孔の第1端部どうしを連結する。
【0018】
この構成によれば、第1冷却液ポートと、ハウジングの肉厚内で周方向に離間する複数の軸方向溝の第1端部とが、第1連絡流路の周方向流路を介して、連通される。周方向流路が、筒状のハウジング本体の軸方向の端面およびカバーハウジングの端面の何れか一方に形成される周方向溝を含む。このため、構造を簡素化することができ、また、ハウジングの冷却効果を高くすることができる。
【0019】
一つの実施形態では、前記複数の第1軸方向孔の前記周方向の配置間隔、および前記複数の第1軸方向孔の断面積の少なくとも一方が不均一である。この構成によれば、周方向の位置によっての冷却効果の偏りを抑制することができる。
【0020】
一つの実施形態では、前記周方向流路が、一対の周方向端部を含み、前記冷却液流路が、前記第1環状流路を前記第2冷却液ポートに連通させる第2連絡流路をさらに含み、前記第2連絡流路が、前記ハウジング本体に形成される第2軸方向孔であって、前記周方向流路の前記一対の周方向端部に対して前記周方向に離隔する位置に配置される一端を有する第2軸方向孔を含む。この構成によれば、周方向に離間する第1軸方向孔と、第2連絡流路としての第2軸方向孔とを好適に配置することができる。
【0021】
一つの実施形態では、前記ステータコアの前記外周面に形成され、前記第2連通流路を形成する前記溝が、前記周方向に離間し、前記軸方向に延びる複数の軸方向溝を含む。この構成によれば、ステータコアの外周面に形成される第2連通流路としての複数の軸方向溝に流される冷却液によって、ステータコアを効果的に冷却することができる。
【0022】
一つの実施形態では、前記複数の軸方向溝が、前記周方向に等間隔で且つそれぞれ対応するティースの径方向外方に配置されている。この構成によれば、ステータコアの外周面に形成される軸方向溝に起因する磁気特性の劣化を抑制することができる。
【0023】
一つの実施形態では、前記複数の軸方向溝のそれぞれが、前記ステータコアの前記軸方向端面に開口する開口を形成し、前記ハウジングが、前記ステータコアの前記軸方向端面に対して前記開口を避ける位置で当接し、前記ステータコアを前記軸方向に位置決めする突起を含む。この構成によれば、ハウジングの突起によって、ステータコアの軸方向端面における軸方向溝の開口を塞ぐことなく、ステータコアを軸方向に位置決めすることができる。
【発明の効果】
【0024】
この発明では、簡単な構造で冷却性能の高い電動モータを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1図1は、この発明の一実施形態に係る電動モータの正面図である。
図2図2は、電動モータの側面図である。
図3図3は、電動モータの縦断面図であり、図1のA-O-C断面図に相当する。
図4図4は、電動モータの縦断面図であり、図1のB-O-C断面図に相当する。
図5図5は、電動モータの横断面図であり、図1のD-D断面図に相当する。
図6図6は、電動モータの拡大横断面図であり、図5の一部を拡大した図に相当する。
図7図7は、電動モータの横断面図であり、図2のE-E断面図に相当する。
図8図8は、電動モータの横断面図であり、図2のF-F断面図に相当する。
図9図9は、電動モータの横断面図であり、図8からコイルを取り除いた図に相当する。
図10図10は、電動モータの横断面図であり、図2のG-G断面図に相当する。
図11図11は、ステータコアの軸方向端面の部分拡大図である。
図12図12は、ステータコア、樹脂部および金属リングを含むステータコアユニットの斜視図である。
図13図13は、ステータコアユニットの平面図である。
図14図14は、ステータコアユニットの側面図である。
図15A図15Aは、ステータコアユニットの縦断面図であり、図13のH-H断面図に相当する。
図15B図15Bは、ステータコアユニットの要部の拡大断面図である。
図16図16は、ステータコアユニットの横断面図であり、図14のI-I断面図に相当する。
図17図17は、セグメントコイルの配置例を示す模式図である。
図18A図18Aは、ステータコアの要部の横断面図であり、樹脂部の成形前にスロットに絶縁紙が配置された状態が示されている。
図18B図18Bは、ステータコアユニットの要部の横断面図であって、図16の一部を拡大した図に相当し、樹脂部が成形された状態が示している。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明を具体化した実施形態を図面に従って説明する。
【0027】
図1は、この発明の一実施形態に係る電動モータ1の正面図である。図2は、電動モータ1の側面図である。図3図5は、電動モータ1の横断面図である。図3は、図1のA-O-C断面図に相当する。図4は、図1のB-O-C断面図に相当する。図5は、図1のD-D断面図に相当する。
【0028】
図1図3に示すように、電動モータ1は、ハウジング2と、ステータ3と、ロータ4と、樹脂部5と、出力軸6とを備える。図3に示すように、ハウジング2は、ステータ3とロータ4とを収容する。出力軸6は、回転軸線K1に沿う軸方向Xに延びている。出力軸6は、ハウジング2によって、回転軸線K1周りに回転可能に支持されている。
【0029】
ロータ4は、出力軸6と一体回転する。ロータ4は、ステータ3の径方向内方R1に、エアギャップAGを介して配置されている。ロータ4は、回転軸線K1周りに回転可能である。ロータ4は、ロータコア40と、ロータコア40に取り付けられた図示しない永久磁石とを含む。
【0030】
ステータ3は、ステータコア30とコイル31とを含む。コイル31は、ステータコア30の軸方向Xの両側に突出する一対のコイルエンドとしての第1コイルエンド31bおよび第2コイルエンド31cを含む。
【0031】
以下では、回転軸線K1と直交し且つ回転軸線K1に向かう方向を径方向内方R1と言う。また、回転軸線K1と直交し且つ回転軸線K1から遠ざかる方向を径方向外方R2と言う。
【0032】
まず、ハウジング2を説明する。
【0033】
ハウジング2は金属製である。ハウジング2は、例えば、アルミニウム材で形成される。図2および図3に示すように、ハウジング2は、筒状のハウジング本体20と、第1カバーハウジング21と、第2カバーハウジング22と、第1冷却液ポート23と、第2冷却液ポート24と、冷却液流路25とを含む。
【0034】
図3に示すように、ハウジング本体20は、外周面20aと、内周面20bと、第1端面20cと、第2端面20dとを含む。第1カバーハウジング21は、固定ボルト11(図2を参照)によって、ハウジング本体20の第1端面20cに締め付け固定される。第2カバーハウジング22は、固定ボルト12(図2を参照)によって、ハウジング本体20の第2端面20dに締め付け固定される。
【0035】
図2のE-E断面図である図7に示すように、第1冷却液ポート23および第2冷却液ポート24のそれぞれは、ハウジング本体20の外周面20aに開口する開口孔により形成されている。第1冷却液ポート23および第2冷却液ポート24のそれぞれには、L字状の管継手16が、例えば、ねじ込み固定されている。
【0036】
図3および図4に示すように、冷却液流路25は、第1冷却液ポート23と第2冷却液ポート24との間で冷却液を流動させるように、ハウジング2によって区画される。第1冷却液ポート23が、冷却液を冷却液流路25に導入するための冷却液入口である。第2冷却液ポート24が、冷却液流路25を流動した冷却液を排出するための冷却液出口である。冷却液流路25は、第1環状流路Q1および第2環状流路Q2と、第1連通流路61および第2連通流路62と、第1連絡流路71および第2連絡流路72とを含む。
【0037】
第1環状流路Q1は、第1コイルエンド31bを内包する。第2環状流路Q2は、第2コイルエンド31cを内包する。第1環状流路Q1および第2環状流路Q2は、回転軸線K1を取り囲む環状をなす環状流路である。第1環状流路Q1および第2環状流路Q2は、冷却液で満たされている。
【0038】
図8は、図2のF-F断面図であり、図9は、図8からコイルを取り除いた図に相当する。図3図8および図9に示すように、第1連絡流路71は、軸方向流路73と、周方向流路74とを含む。周方向流路74は、周方向Yに有端である。周方向流路74は、筒状のハウジング本体20の第1端面20cに形成された周方向溝20eと、第1カバーハウジング21の端面21gとの間に形成されている。周方向溝20eは、周方向Yに有端である。軸方向流路73は、ハウジング本体20の肉厚内を軸方向Xに延びる軸方向孔で形成される。軸方向流路73は、第1冷却液ポート23と連通される一端73aと、周方向流路74と連通される他端73bとを含む。
【0039】
図1のB-O-C断面図である図4に示すように、第1連通流路61は、第1端部61aと第2端部61bとを含む。第1連通流路61は、第1端部61aと第2端部61bとの間に亘って延びる。第1連通流路61は、ハウジング本体20の肉厚内を軸方向Xに延びる。
【0040】
図8に示すように、回転軸線K1周りの周方向Yに離間する複数の第1軸方向孔610で形成される。第1軸方向孔610は、第1連通流路61の第1端部61aに相当する第1端部610aと、第1連通流路61の第2端部61bに相当する第2端部610bとを含む。
【0041】
図2のG-G断面図である図10に示すように、複数の第1軸方向孔610の周方向Yの配置間隔、および複数の第1軸方向孔610の断面積の少なくとも一方が不均一にされている。図10の例では、複数の第1軸方向孔610の周方向Yの配置間隔、および複数の第1軸方向孔610の断面積の双方が不均一とされているが、これに限らず、配置間隔および断面積の何れか一方が不均一にされてもよい。
【0042】
図4に示すように、第1連通流路61の第1端部61aは、第1環状流路Q1から径方向外方R2に離隔する状態で、第1環状流路Q1に隣接して配置される。第1連通流路61は、第1環状流路Q1よりも径方向外方R2に配置されている。
【0043】
第1連絡流路71が、第1端部61aを第1冷却液ポート23(図3および図7を参照)に連通させる。具体的には、図8に示すように、第1連通流路61の第1端部61aは、第1連絡流路71の周方向流路74と連通される。周方向流路74は、複数の第1軸方向孔610(第1連通流路61)の第1端部610aどうしを連結している。
【0044】
図4に示すように、第1連通流路61の第2端部61b(第1軸方向孔610の第2端部610b)は、第2環状流路Q2と連通される。図4および図10に示すように、第1連通流路61の第2端部61bは、ハウジング本体20の内周面20bに形成されて第2カバーハウジング22側に向く環状段部20gに開口されている。
【0045】
図4に示すように、第2連通流路62は、第1環状流路Q1と第2環状流路Q2とを連通するように、第1環状流路Q1と第2環状流路Q2との間に亘って延びる。第2連通流路62は、ハウジング本体20の内周面20bとステータコア30の外周面30cとの間に形成される。具体的には、第2連通流路62は、ステータコア30の外周面30cに形成され、周方向Yに離間する複数の軸方向溝30d(図13を参照)と、ハウジング本体20の内周面20bとによって形成される。第1連通流路61は、第2連通流路62よりも径方向外方R2に配置される。
【0046】
図5の一部を拡大した図6に示すように、第2連通流路62は、第1端部62aと、第2端部62bとを含む。第2連通流路62の第1端部62aは、第1環状流路Q1と連通される。第2連通流路62の第2端部62bは、第2環状流路Q2と連通される。
【0047】
図3に示すように、第2連絡流路72が、第1環状流路Q1を冷却液出口である第2冷却液ポート24に連通させる。第2連絡流路72は、第1端部72aと、第2端部72bとを含む。第2連絡流路72の第1端部72aは、第1環状流路Q1と連通される。第2連絡流路72の第2端部72bは、第2冷却液ポート24と連通される。第2連絡流路72は、ハウジング本体20の肉厚内を軸方向Xに延びる第2軸方向孔720で形成される。第2軸方向孔720は、第2連絡流路72の第1端部72aに相当する第1端部720aと、第2連絡流路72の第2端部72bに相当する第2端部720bとを含む。
【0048】
図2のF-F断面図である図8に示すように、第2軸方向孔720で形成される第2連絡流路72の一端(第1端部72a)は、周方向流路74の一対の周方向端部74a,74bに対して、周方向Yに離間する位置に配置されている。
【0049】
図3および図4に示すように、冷却液流路25は、冷却液入口である第1冷却液ポート23から流入した冷却液を、第1連絡流路71、第2環状流路Q2、第2連通流路62、第1環状流路Q1および第2連絡流路72を順次に介して、冷却液出口である第2冷却液ポート24(図7を参照)へと流動させる。これにより、第1および第2コイルエンド31b,31cが冷却される。また、ハウジング2およびステータコア30が冷却される。
【0050】
図5および図6に示すように、第1カバーハウジング21は、主板21aと、筒状壁21b(第2筒状壁W2)とを含む。主板21aは、外側面21cと、内側面21dと、軸受保持孔21eと、環状突起21fとを含む。
【0051】
環状突起21fは、内側面21dに、回転軸線K1を中心とする環状に形成された突起である。環状突起21fの端面21gが、第1カバーハウジング21の端面に相当する。
【0052】
第1カバーハウジング21の端面21gが、ハウジング本体20の第1端面20cを図示しないガスケットを介して覆う。前記ガスケットが、ハウジング本体20の第1端面20cと第1カバーハウジング21の端面21gとの間を封止する。図示していないが、前記ガスケットは、図8において、周方向流路74を形成する周方向溝20eと第2連絡流路72の第1端部72aの開口とをそれぞれ取り囲むことで、周方向流路74と第2連絡流路72とが連通しないようにしている。
【0053】
図5および図6に示すように、筒状壁21bは、内側面21dから軸方向Xに延設されている。筒状壁21bは、回転軸線K1を取り囲む筒状に形成されている。筒状壁21bは、回転軸線K1を中心とする円筒面を含む外周面21hと、外周面21hに形成された収容溝21jとを含む。収容溝21jには、例えばOリングであるシール部材13が収容される。
【0054】
図5および図6に示すように、第2カバーハウジング22は、主板22aと、筒状壁22b(第2筒状壁W2)とを含む。主板22aは、外側面22cと、内側面22dと、環状突起22fとを含む。
【0055】
環状突起22fは、主板22aの内側面22dに、回転軸線K1を取り囲む環状に形成された突起である。環状突起22fの端面22gが、第2カバーハウジング22の端面に相当する。第2カバーハウジング22の端面22gが、ハウジング本体20の第2端面20dを図示しないガスケットを介して覆う。前記ガスケットが、ハウジング本体20の第2端面20dと第2カバーハウジング22の端面22gとの間を封止する。
【0056】
筒状壁22bは、主板22aの内側面22dから軸方向Xに延設されている。筒状壁22bは、回転軸線K1を取り囲む筒状に形成されている。筒状壁22bは、外周面22hと、内周面22iと、収容溝22jと、軸受保持部22kとを含む。
【0057】
筒状壁22bの外周面22hは、回転軸線K1を中心とする円筒面を含む。収容溝22jは、外周面22hの周方向に延びる。収容溝22jには、例えばOリングであるシール部材14が収容される。筒状壁22bの内周面22iは、回転軸線K1を中心とする円筒面を含む。軸受保持部22kは、筒状壁22bの内周面22iに設けられる。
【0058】
図5に示すように、出力軸6は、第1カバーハウジング21の軸受保持孔21eの内周面および第2カバーハウジング22の軸受保持部22kに保持された一対の軸受15,15を介して、ハウジング2に回転可能に支持されている。一対の軸受15,15は、例えば密封軸受である。ロータ4は、出力軸6と一体回転可能なロータコア40と、ロータコア40に周方向に等間隔に配置された図示しない永久磁石とを含む。
【0059】
次いで、ステータ3を説明する。
【0060】
図5に示すように、ステータ3は、ステータコア30と、コイル31と、絶縁紙32(図18Aも参照)とを含む。ステータコア30は、複数の板状の電磁鋼板が積層されることにより構成される。ステータコア30は、一対の軸方向端面としての第1軸方向端面30aおよび第2軸方向端面30bと、外周面30cと含む。ステータコア30は、ハウジング2(ハウジング本体20)に、圧入または焼き嵌めされる場合がある。
【0061】
図11は、ステータコア30の要部の拡大図である。図11に示すように、ステータコア30は、ヨーク33と、複数のティース34と、複数のスロット35とを有する。ヨーク33は、回転軸線K1に沿う軸方向Xに延びる軸状且つ回転軸線K1を取り囲む環状に形成される。ヨーク33は、外周33aと、内周33bと、一対の軸方向端面33cとを含む。複数のティース34は、回転軸線K1周りの周方向Yに間隔を空けて、ヨーク33の内周33bに配置されている。
【0062】
第2連通流路62を形成するための軸方向溝30d(図8および図12を参照)は、ステータコア30の外周面30c(ヨーク33の外周33a)に、周方向Yに等間隔で配置されている。図11に示すように、軸方向溝30dは、ティース34の径方向外方R2に配置されている。具体的には、軸方向溝30dは、ティース34の周方向Yの中央位置の径方向外方R2に配置されている。軸方向溝30dは、全てのティース34の径方向外方R2に配置されてもよいし、周方向Yに1ないし複数個おきのティース34の径方向外方R2に配置されてもよい。
【0063】
図8に示すように、ハウジング本体20は、内周面20bから径方向内方R1に突出する複数の突起20fを含む。複数の突起20fは、周方向Yに離間している。突起20fは、ステータコア30の第1軸方向端面30aに当接することにより、ステータコア30を軸方向Xに位置決めする。突起20fは、第1軸方向端面30aに開口される軸方向溝30dの開口を避ける位置で、第1軸方向端面30aに当接する。
【0064】
ステータコア30を軸方向Xの位置決めは、組立工程において、図示しない治具を用いて行われてもよい。その場合、突起20fを設ける必要がない。
【0065】
複数のティース34は、ヨーク33の内周33bから、径方向内方R1に突出している。ティース34は、基端34aと、先端34bとを含む。基端34aは、ヨーク33と連結されている。先端34bは、基端34aに対して径方向内方R1に配置される。先端34bは、周方向Yの両側に突出する一対の凸部34cを含む。
【0066】
周方向Yに隣り合うティース34間に、スロット35が形成される。ティース34とスロット35とが、周方向Yに交互に配置される。スロット35は、ステータコア30を軸方向Xに貫通している。
【0067】
スロット35は、コイル収容部35aと、スロット開口部35bとを含む。コイル収容部35aにコイル31が収容される。スロット開口部35bは、隣接するティース34の凸部34cどうしの間に形成される。スロット開口部35bは、コイル収容部35aを径方向内方R1に開放させる。
【0068】
スロット35の内壁面は、底壁面35cと、一対の側壁面35dと、一対の保持壁面35eとを含む。底壁面35cは、ヨーク33の内周33bで形成され、径方向内方R1に向く。一対の側壁面35dは、隣接するティース34の側面で形成され、周方向Yに対向する。一対の保持壁面35eは、一対の凸部34cの壁面であり、径方向外方R2に向く面である。
【0069】
一対の側壁面35dと、底壁面35cとで、一対のコーナ部35fが形成されている。各コーナ部35fを形成する、側壁面35dの部分は、湾曲凹状の内面35gを含む。これにより、各コーナ部35fは、周方向Yに拡げられている。
【0070】
図12は、ステータコア30を含むステータコアユニットUの斜視図である。図13は、ステータコアユニットUの平面図である。図14は、ステータコアユニットUの側面図である。図15Aは、ステータコアユニットUの縦断面図であり、図13のH-H断面図に相当する。図15Bは、図15Aの一部を拡大した拡大断面図である。図16は、図14のI-I断面図である。
【0071】
図12図13および図14に示すように、ステータコアユニットUは、ステータコア30と、樹脂部5と、金属リング7と、絶縁紙32(図15Aおよび図18Aを参照)とを含むユニットである。ステータコアユニットUは、コイル31が装着される前の段階で、サブアセンブリとして形成される。すなわち、製造時において、サブアセンブリとしてのステータコアユニットUに対して、コイル31が装着されることになる。
【0072】
次いで、コイル31を説明する。
【0073】
図5に示すように、コイル31は、被収容部31aと、一対のコイルエンドとしての第1コイルエンド31bおよび第2コイルエンド31cとを有する。被収容部31aは、スロット35のコイル収容部35aに収容される。第1コイルエンド31bおよび第2コイルエンド31cは、それぞれ、ステータコア30の第1軸方向端面30aおよび第2軸方向端面30bから軸方向Xに突出する。
【0074】
コイル31は、複数のスロット35内に一部が収容された状態でステータコア30に装着されている。コイル31は、U相、V相およびW相からなる三相コイルである。各相のコイルは、スロット35に配置される絶縁紙32を介して、ステータコア30と絶縁されている。
【0075】
各相のコイル31は、例えば、複数のセグメントコイル36(図7を参照)を相互に接続することで構成される。図17は、ステータコア30を径方向内方R1から見たときの、セグメントコイル36の配置例を示す模式図である。図17に示すように、セグメントコイル36は、一対の挿入部36aと、架橋部36bと、一対の延設部36c,36dとを含む。一対の挿入部36aは、異なるスロット35に挿入される。架橋部36bは、一対の挿入部36aの一端どうしを連結する。一対の延設部36c,36dは、それぞれ、一対の挿入部36aの他端から延設される。
【0076】
架橋部36bは、ステータコア30の何れか一方の軸方向端面(例えば第1軸方向端面30a)から突き出して配置され、コイルエンドの一部を形成する。一対の延設部36cは、ステータコア30の他方の軸方向端面(例えば第2軸方向端面30b)から突き出して配置され、コイルエンドの一部を形成する。各延設部36c,36dは、他のセグメントコイル36の延設部36c,36dと溶接等によって接続される。
【0077】
具体的には、第1コイルエンド31bにおいて、セグメントコイル36の架橋部36bは、径方向内方R1から見て、軸方向Xに対して互いに逆向きに傾斜する一対の傾斜部36eを含む。一対の傾斜部36eどうしの交差部分に、架橋部36bの頂部36hが形成される。
【0078】
第2コイルエンド31cにおいて、セグメントコイル36が、一方の延設部36cに、傾斜部36fおよび接合端部36jを含む。傾斜部36fは、径方向内方R1から見て軸方向Xに対して傾斜する。接合端部36jは、一方の延設部36cの延設端部を構成しており、例えば軸方向Xに延びる。接合端部36jは、他のセグメントコイル36の接合端部36jと例えば溶接により接合される。
【0079】
また、第2コイルエンド31cにおいて、セグメントコイル36が、他方の延設部36dに、傾斜部36gおよび接合端部36kを含む。傾斜部36gは、径方向内方R1から見て軸方向Xに対して傾斜する。接合端部36kは、他方の延設部36dの延設端部を構成しており、例えば軸方向Xに延びる。接合端部36kは、他のセグメントコイル36の接合端部36kと例えば溶接により接合される。
【0080】
ここで、ステータコア30の第1軸方向端面30aからの、セグメントコイル36の傾斜部36eの最大突出高さをH1とする。また、ステータコア30の第2軸方向端面30bからの、セグメントコイル36の一方の延設部36cの傾斜部36fの最大突出高さをH2とする。また、ステータコア30の第2軸方向端面30bからの、セグメントコイル36の他方の延設部36dの傾斜部36gの最大突出高さをH3とする。
【0081】
次いで、絶縁紙32を説明する。
【0082】
図15Aに示すように、絶縁紙32は、被収容部32aと、一対の突出部32bとを含む。被収容部32aは、スロット35のコイル収容部35aに収容される。一対の突出部32bのそれぞれは、ステータコア30の対応する軸方向端面30a,30bから軸方向Xに突出する。
【0083】
図18Aに示すように、絶縁紙32は、軸方向Xから見て、底部32cと一対の側部32dとを含む溝形に形成されている。絶縁紙32の底部32cが、底壁面35cに沿って配置される。絶縁紙32の一対の側部32dのそれぞれが、対応する側壁面35dに沿って配置される。
【0084】
なお、図示していないが、絶縁紙32に代えて、スロット35の内壁面に被覆される絶縁樹脂層が用いられてもよい。
【0085】
次いで、樹脂部5を説明する。
【0086】
図15Aに示すように、樹脂部5は、ステータコア30と一体に形成される。樹脂部5は、複数の閉塞部51(第3部分。図16を参照)と、一対の筒状壁52(第2部分)と、一対の覆い部53(第1部分)と、複数の補強部54(図18Bを参照)とを含む。各覆い部53は、環状覆い部55と、複数の腕部56とを含む。
【0087】
図16の一部を拡大した図18Bに示すように、各閉塞部51は、対応するスロット35のスロット開口部35bを塞ぐように軸方向Xに延びる。各閉塞部51は、スロット35の内側から、すなわち径方向内方R1から、スロット開口部35bを閉塞する。各閉塞部51は、周方向Yに隣接するティース34の先端34bよりも径方向内方R1へ突出することがないように、スロット開口部35bを塞ぐ。各閉塞部51は、軸方向Xの一端51aおよび他端51bを有する。
【0088】
閉塞部51は、スロット開口部35b内で一対の凸部34cの頂面によって保持されている。また、閉塞部51の一部は、コイル収容部35a内に入り込んでいる。閉塞部51は、コイル収容部35a内で、一対の側壁面35dと、一対の凸部34cの一対の保持壁面35eとによって保持されている。このため、閉塞部51がステータコア30に強固に保持される。
【0089】
図15Aに示すように、一対の筒状壁52は、ステータコア30の軸方向Xの両側に配置されている。一対の筒状壁52は、ステータコア30の対応する第1軸方向端面30aおよび第2軸方向端面30bから軸方向Xに突出している。一対の筒状壁52は、ステータコア30と同心に配置される。各筒状壁52は、軸方向Xの一端52aと、軸方向Xの他端52bとを含む。各筒状壁52の一端52aは、ステータコア30の対応する軸方向端面(第1軸方向端面30aまたは第2軸方向端面30b)と当接する当接部52cを含む。
【0090】
一対の筒状壁52は、複数の閉塞部51と連結される。一方の筒状壁52が、複数の閉塞部51の一端51aと連結される。他方の筒状壁52が、複数の閉塞部51の他端51bと連結される。すなわち、複数の閉塞部51が、一対の筒状壁52どうしを連結している。
【0091】
次いで、金属リング7を説明する。
【0092】
図15Aに示すように、一対の筒状壁52のそれぞれの内周面52dに、金属リング7が保持されている。金属リングは、例えば、ステンレス製である。金属リング7は、外周面7aと、内周面7bと、一端部7cと、他端部7dとを含む。
【0093】
金属リング7の外周面7aの少なくとも一部が、樹脂部5の筒状壁52によって覆われてモールドされている。金属リング7は、筒状壁52と一体化されて、ステータコア30に保持されている。互いに一体化された筒状壁52と金属リング7とを含む第1筒状壁W1が、一対で形成されている。一対の第1筒状壁W1は、ステータコア30と同心に配置されている。樹脂部5の筒状壁52は、第1筒状壁W1の一部を形成する。
【0094】
金属リング7の一端部7cは、ステータコア30の軸方向端面30a,30bに対して、軸方向Xに対向している。金属リング7の一端部7cは、ステータコア30の軸方向端面30a,30bから離隔している。
【0095】
具体的には、図15Bに示すように、筒状壁52の一端52aが、金属リング7の一端部7cとステータコア30の軸方向端面30a,30bとの間に介在する介在部52eを含む。介在部52eは、周方向Yの全周に設けられてもよいし、周方向Yの一部に設けられてもよい。
【0096】
また、図6に示すように、ステータコア30の対応する軸方向端面30a,30bからの軸方向Xの突出高さに関して、コイルエンド31b,31cの最大突出高さが、金属リング7の最大突出高さよりも高くされている。
【0097】
具体的には、図17に示すように、ステータコア30の第1軸方向端面30aからの軸方向Xの突出高さに関して、セグメントコイル36の傾斜部36eの最大突出高さH1(架橋部36bの頂部36hの最大突出高さ)が、第1コイルエンド31bの最大突出高さに相当する。第1コイルエンド31bの最大突出高さ(傾斜部36eの最大突出高さH1)は、金属リング7の最大突出高さH4(図15Aを参照)よりも高くされている。
【0098】
また、ステータコア30の第2軸方向端面30bからの軸方向Xの突出高さに関して、第2コイルエンド31cの最大突出高さは、セグメントコイル36の接合端部36jの最大突出高さおよび接合端部36jの最大突出高さのうちの高い方(互いに等しい高さの場合は双方)に相当する。第2コイルエンド31cの最大突出高さは、金属リング7の最大突出高さH4よりも高くされている。
【0099】
また、ステータコア30の第2軸方向端面30bからの軸方向Xの突出高さに関して、セグメントコイル36の傾斜部36fの最大突出高さH2および傾斜部36gの最大突出高さH3が、金属リング7の最大突出高さH4よりも高くされている。
【0100】
また、セグメントコイル36の各接合端部36j,36kは、ステータコア30の第2軸方向端面30bからの軸方向Xの突出高さに関して、金属リング7の最大突出高さH4よりも高い位置に配置されている。
【0101】
図6に示すように、一方の第1筒状壁W1に対して、第1カバーハウジング21の筒状壁21b(第2筒状壁W2)が、挿入嵌合されている。一方の第1筒状壁W1は、第1カバーハウジング21の筒状壁21bの外周面21hと嵌合される。具体的には、一方の第1筒状壁W1の金属リング7の内周面7bが、第1カバーハウジング21の筒状壁21b(第2筒状壁W2)の外周面21hと嵌合されている。
【0102】
第1カバーハウジング21の筒状壁21b(第2筒状壁W2)の外周面21hの収容溝21jに収容されたシール部材13によって、一方の第1筒状壁W1の金属リング7の内周面7bと、筒状壁21b(第2筒状壁W2)の外周面21hとの間が封止されている。
【0103】
他方の第1筒状壁W1に対して、第2カバーハウジング22の筒状壁22b(第2筒状壁W2)が、挿入嵌合されている。他方の第1筒状壁W1は、第2カバーハウジング22の筒状壁22bの外周面22hと嵌合される。具体的には、他方の第1筒状壁W1の金属リング7の内周面7bが、第2カバーハウジング22の筒状壁22b(第2筒状壁W2)の外周面22hと嵌合されている。
【0104】
第2カバーハウジング22の筒状壁22b(第2筒状壁W2)の外周面22hの収容溝22jに収容されたシール部材14によって、一方の第1筒状壁W1の金属リング7の内周面7bと、筒状壁22b(第2筒状壁W2)の外周面22hとの間が封止されている。
【0105】
ハウジング2は、互いに嵌合される第1筒状壁W1および第2筒状壁W2の径方向外方R2に、第1環状流路Q1および第2環状流路Q2を区画している。第1環状流路Q1および第2環状流路Q2に、第1および第2コイルエンド31b,31cを冷却する冷却液が流される。
【0106】
図15Aに示すように、一対の覆い部53は、対応する筒状壁52と連結され、ステータコア30の一対の軸方向端面(第1軸方向端面30aおよび第2軸方向端面30b)をそれぞれ覆う。図12および図13に示すように、覆い部53に含まれる環状覆い部55は、ヨーク33の軸方向端面33cを覆う。複数の腕部56は、ティース34の軸方向端面34d(図11を参照)に沿う。図15Aに示すように、覆い部53に含まれる複数の腕部56は、筒状壁52の軸方向端部である一端52aと環状覆い部55とを連結する。
【0107】
環状覆い部55は、ヨーク33の軸方向端面33cの一部を覆う。図6および図13に示すように、ヨーク33の軸方向端面33cは、第1環状流路Q1および第2環状流路Q2に露出する露出部33dを含む。露出部33dは、環状覆い部55の径方向外方R2に配置される。
【0108】
図15Aに示すように、絶縁紙32の突出部32bは、覆い部53によって保持される。具体的には、絶縁紙32の突出部32bは、環状覆い部55によって保持される。また、ステータコア30の軸方向端面30a,30bからの軸方向Xの突出高さに関し、覆い部53の最大突出高さに相当する、環状覆い部55の最大突出高さH5が、突出部32bの最大突出高さH6よりも高くされている。
【0109】
図18Bに示すように、補強部54は、各スロット35に一対ずつ配置されている。補強部54は、スロット35の各コーナ部35fに沿って軸方向X(図18Bで紙面と直交する方向)に延び、覆い部53の腕部56と連結される。補強部54は、一対の覆い部53の腕部56どうしを連結している。
【0110】
スロット35に絶縁紙32が挿入される場合、図18Aおよび図18Bに示すように、補強部54は、コーナ部35fの湾曲凹状の内面35gと、絶縁紙32の対応する側部32dとの間を塞ぐように軸方向Xに延びる。
【0111】
この実施形態によれば、図4に示すように、第1冷却液ポート23と第2冷却液ポート24とを有するハウジング2が、両冷却液ポート23,24の間で冷却液を流動させるように区画された冷却液流路25を有する。このため、ハウジング2の冷却を通じて、簡単な構造で電動モータ1の全体の冷却が可能である。また、冷却液流路25では、第2連通流路62を介して、第1環状流路Q1および第2環状流路Q2の一方から他方へ冷却液が流されることにより、一対のコイルエンド31b,31cを冷却することができる。このため、ハウジング2の冷却と相俟って冷却性能を高くすることができる。
【0112】
また、図8に示すように、第1連通流路61は、第2連通流路62よりも径方向外方R2に配置されている。このため、第1連通流路61および第2連通流路62を、互いに他と干渉することなく、自在にレイアウトすることができる。
【0113】
また、図4に示すように、第1連通流路61は、第1環状流路Q1よりも径方向外方R2に配置されている。このため、ハウジング2において、第1環状流路Q1よりも径方向外方R2に配置される部分を第1連通流路61の形成に有効に利用することができる。
【0114】
また、図4および図7に示すように、第1連通流路61は、ハウジング2の肉厚内に形成されている。このため、第1連通流路61を流れる冷却液によって、ハウジング2を効果的に冷却することができる。また、図6および図8に示すように、第2連通流路62は、ハウジング2の内周面(ハウジング本体20の内周面20b)と、ステータコア30の外周面30cとの間に形成されている。このため、第2連通流路62を流れる冷却液によって、ハウジング2およびステータコア30を効果的に冷却することができる。
【0115】
また、第2連通流路62が、ステータコア30の外周面30cに形成された溝(軸方向溝30d)と、ハウジング2の内周面(ハウジング本体20の内周面20b)とによって形成されている。このため、第1連通流路61と第2連通流路62とを、互いに他と干渉することなく自在に形成することができる。また、第2連通流路62を構成するようにステータコア30の外周面30cに形成される軸方向溝30dを流れる冷却液によって、ステータコア30を効果的に冷却することができる。
【0116】
また、図3に示すように、冷却液流路25が、第1連通流路61の第1端部61aを第1冷却液ポート23に連通させる第1連絡流路71を含む。これにより、第1連絡流路71を介して、第1連通流路61の第1端部61aが、第1冷却液ポート23と連通される。
【0117】
また、冷却液流路25が、第1環状流路Q1を第2冷却液ポート24に連通させる第2連絡流路72を含む。これにより、第2連絡流路72を介して、第1環状流路Q1が、第2冷却液ポート24と連通される。
【0118】
また、第1冷却液ポート23が、冷却液を冷却液流路25に導入するための冷却液入口であり、第2冷却液ポート24が、冷却液流路25を流動した冷却液を排出するための冷却液出口である。冷却液入口(第1冷却液ポート23)から導入された冷却液が、冷却液流路25を流れた後、冷却液出口(第2冷却液ポート24)から導出される。
【0119】
また、ステータコア30が、ハウジング2に圧入または焼き嵌めされている。この実施形態では、ハウジング2を冷却することにより、ハウジング2の温度膨張が抑制される。このため、温度上昇に拘らず、ハウジング2がステータコア30を保持する保持力が低下すること抑制することができる。特に、ハウジング2の熱膨張係数が、ステータコア30の熱膨張係数よりも大きい場合に、保持力の低下を抑制する効果が高い。
【0120】
また、図4および図8に示すように、第1連通流路61が、周方向Yに離間し、軸方向Xに延びる複数の第1軸方向孔610を含む。このため、ハウジング2を冷却する効果が高い。
【0121】
また、図8に示すように、第1冷却液ポート23と、ハウジング2の肉厚内で周方向Yに離間する複数の第1軸方向孔610の第1端部610a(第1連通流路61の第1端部61a)とが、第1連絡流路71の周方向流路74を介して連通される。周方向流路74が、筒状のハウジング本体20の第1端面20c(軸方向端面)に形成される周方向溝20eを含む。このため、構造を簡素化することができ、また、ハウジング2の冷却効果を高くすることができる。
【0122】
また、図7に示すように、複数の第1軸方向孔610の周方向Yの配置間隔、および複数の第1軸方向孔610の断面積の少なくとも一方が不均一である。これにより、周方向Yの位置によってのハウジング2に対する冷却効果の偏りを抑制することができる。
【0123】
また、周方向流路74が、一対の周方向端部74a,74bを含む。冷却液流路25が、第1環状流路Q1を第2冷却液ポート24に連通させる第2連絡流路72を含む。第2連絡流路72が、ハウジング本体20に形成される第2軸方向孔720を含む。第2連絡流路72としての第2軸方向孔720は、周方向流路74の一対の周方向端部74a,74bに対して周方向Yに離隔する位置に配置される一端(第1端部720a)を有する。この構成によれば、周方向Yに離間する第1連通流路61としての第1軸方向孔610と、第2連絡流路72としての第2軸方向孔720とを好適に配置することができる。
【0124】
また、ステータコア30の外周面30cに形成され、周方向Yに離間し且つ軸方向Xに延びる複数の軸方向溝30dによって、第2連通流路62が構成される。このため、ステータコア30の外周面30cに形成される複数の軸方向溝30d(第2連通流路62)に流される冷却液によって、ステータコア30を効果的に冷却することができる。
【0125】
また、図11に示すように、複数の軸方向溝30dが、ステータコア30の外周面30cにおいて、周方向Yに等間隔で且つそれぞれ対応するティース34の径方向外方R2に配置されている。このため、ステータコア30の外周面30cに溝を形成することに起因する磁気特性の劣化を抑制することができる。
【0126】
また、図8に示すように、複数の軸方向溝30dのそれぞれが、ステータコア30の第1軸方向端面30aおよび第2軸方向端面30bに開口する開口を形成する。ハウジング2に設けられる突起20fが、ステータコア30の第1軸方向端面30aに対して、前記開口を避ける位置で当接し、ステータコア30を軸方向Xに位置決めする。このため、ハウジング2の突起20fによって、ステータコア30の第1軸方向端面30aにおける軸方向溝30dの開口を塞ぐことなく、ステータコア30を軸方向Xに位置決めすることができる。
【0127】
本発明は、前記実施形態に限定されるものではなく、例えば、第1冷却液ポート23が冷却液出口であり、第2冷却液ポート24が冷却液入口であってもよい。また、ハウジング2とステータコア30とが、互いに等しい熱膨張係数を持つ金属材で形成されてもよい。また、ハウジング2とステータコア30とが、すきま嵌めで嵌合されていてもよい。また、図示していないが、第1連絡流路71の周方向流路74を形成するための周方向溝が、第1カバーハウジング21の端面21gに形成されてもよい。
【0128】
また、第2連通流路62を形成するための溝(例えば軸方向溝)が、ステータコア30の外周面30cに形成されずに、ハウジング本体20の内周面20bに形成されてもよい。また、複数の第1軸方向孔610の周方向Yの配置間隔、および複数の第1軸方向孔610の断面積の双方が均一にされてもよい。
【0129】
その他、本発明は、特許請求の範囲記載の範囲内で種々の変更を施すことができる。
【符号の説明】
【0130】
1 電動モータ
2 ハウジング
3 ステータ
4 ロータ
20 ハウジング本体
20b 内周面
20c 第1端面
20e 周方向溝
20f 突起
23 第1冷却液ポート
24 第2冷却液ポート
25 冷却液流路
30 ステータコア
30a 第1軸方向端面
30b 第2軸方向端面
30c 外周面
30d 軸方向溝
31 コイル
31b 第1コイルエンド
31c 第2コイルエンド
33 ヨーク
33b 内周
34 ティース
35 スロット
61 第1連通流路
61a 第1端部
61b 第2端部
62 第2連通流路
71 第1連絡流路
72 第2連絡流路
72a 第1端部(一端)
74 周方向流路
74a 周方向端部
74b 周方向端部
610 第1軸方向孔
610a 第1端部
720 第2軸方向孔
720a 第1端部
AG エアギャップ
K1 回転軸線
Q1 第1環状流路
Q2 第2環状流路
R1 径方向内方
R2 径方向外方
X 軸方向
Y 周方向
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15A
図15B
図16
図17
図18A
図18B