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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-12
(45)【発行日】2023-07-21
(54)【発明の名称】部品装着機
(51)【国際特許分類】
   H05K 13/08 20060101AFI20230713BHJP
【FI】
H05K13/08 Q
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2021501178
(86)(22)【出願日】2019-02-19
(86)【国際出願番号】 JP2019006050
(87)【国際公開番号】W WO2020170328
(87)【国際公開日】2020-08-27
【審査請求日】2021-06-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000237271
【氏名又は名称】株式会社FUJI
(74)【代理人】
【識別番号】110000604
【氏名又は名称】弁理士法人 共立特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】石川 賢三
(72)【発明者】
【氏名】馬場 恒星
【審査官】福島 和幸
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-283572(JP,A)
【文献】特開平11-272854(JP,A)
【文献】特開2013-172038(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 13/00-13/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
部品を保持する1または複数の保持部材を昇降可能に支持する装着ヘッドと、
前記装着ヘッドに設けられ、カメラ視野に収められた撮像対象を撮像するカメラ装置と、
前記保持部材、前記保持部材に保持された前記部品、および前記装着ヘッドの構成部材の少なくとも1つを含む3以上の前記撮像対象ごとに対応した光路を形成するとともに、前記撮像対象が前記カメラ視野における行方向および前記行方向に直交する列方向に並んで前記カメラ視野に収められるように3以上の前記光路を集約する光学装置と、
を備え、
3以上の前記撮像対象は、前記装着ヘッドを基準として所定方向から撮像される前記保持部材または前記保持部材に保持された前記部品であり、
前記光学装置は、3以上の前記撮像対象のうち2つの第一撮像対象および第二撮像対象を上下方向および左右方向が互いに反転された状態で前記列方向に並んで前記カメラ視野に収め、
前記光学装置は、
前記第一撮像対象の写像に対して前記第二撮像対象の写像が上下方向および左右方向に反転され且つ上下方向に並べられた第一結合写像を前記カメラ装置側に反射する第一反射部材と、
3以上の前記撮像対象のうち前記第一撮像対象および前記第二撮像対象を除いた残りの前記撮像対象の写像に対して前記第一結合写像が左右方向に並べられた第二結合写像を前記カメラ装置側に反射する第二反射部材と、
を有する部品装着機。
【請求項2】
前記光学装置は、3以上の前記光路の長さが前記カメラ装置の被写界深度に基づく許容範囲に収まるように、3以上の前記光路を形成する、請求項1に記載の部品装着機。
【請求項3】
部品を保持する1または複数の保持部材を昇降可能に支持する装着ヘッドと、
前記装着ヘッドに設けられ、カメラ視野に収められた撮像対象を撮像するカメラ装置と、
前記保持部材、前記保持部材に保持された前記部品、および前記装着ヘッドの構成部材の少なくとも1つを含む3以上の前記撮像対象が前記カメラ視野における行方向および前記行方向に直交する列方向に並んで前記カメラ視野に収められるように3以上の前記撮像対象の位置関係を光学的に変更する光学装置と、
を備え、
3以上の前記撮像対象は、前記装着ヘッドを基準として所定方向から撮像される前記保持部材または前記保持部材に保持された前記部品であり、
前記光学装置は、3以上の前記撮像対象のうち2つの第一撮像対象および第二撮像対象を上下方向および左右方向が互いに反転された状態で前記列方向に並んで前記カメラ視野に収め、
前記光学装置は、
前記第一撮像対象の写像に対して前記第二撮像対象の写像が上下方向および左右方向に反転され且つ上下方向に並べられた第一結合写像を前記カメラ装置側に反射する第一反射部材と、
3以上の前記撮像対象のうち前記第一撮像対象および前記第二撮像対象を除いた残りの前記撮像対象の写像に対して前記第一結合写像が左右方向に並べられた第二結合写像を前記カメラ装置側に反射する第二反射部材と、
を有する部品装着機。
【請求項4】
前記装着ヘッドは、4以上の前記保持部材を支持し、
前記光学装置は、4つの前記撮像対象を前記行方向および前記列方向に2つずつ並んで前記カメラ視野に収める、請求項1-3の何れか一項に記載の部品装着機。
【請求項5】
前記第一反射部材は、前記装着ヘッドにおける前記第一撮像対象および前記第二撮像対象の配置方向の中央部に設けられる、請求項1-4の何れか一項に記載の部品装着機。
【請求項6】
前記部品装着機は、前記カメラ装置の撮像により取得された画像データの基準位置に対して前記第一撮像対象および前記第二撮像対象の少なくとも一方に前記行方向または前記列方向の変位が生じている場合に、前記画像データにおける前記第一撮像対象および前記第二撮像対象の位置関係に基づいて前記変位の発生原因を推定する画像処理部をさらに備える、請求項1-5の何れか一項に記載の部品装着機。
【請求項7】
前記画像処理部は、前記画像データにおける前記第一撮像対象および前記第二撮像対象が初期の間隔を維持している場合に、前記変位の発生原因を前記第二反射部材の設置誤差と推定する、請求項6に記載の部品装着機。
【請求項8】
前記画像処理部は、前記画像データにおける前記第一撮像対象および前記第二撮像対象が初期の間隔を維持していない場合に、前記変位の発生原因を、前記第一反射部材よりも前記第一撮像対象または前記第二撮像対象側に設けられた光学部材の設置誤差、若しくは前記保持部材の昇降方向の位置決め誤差と推定する、請求項6または7に記載の部品装着機。
【請求項9】
前記保持部材は、供給される負圧エアにより前記部品を吸着して保持する吸着ノズルである、請求項1-8の何れか一項に記載の部品装着機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、部品装着機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
部品装着機は、吸着ノズルにより保持した部品を基板に装着する装着処理を実行する。特許文献1には、吸着ノズルを側方から撮像可能なカメラ装置を備える部品装着機が開示されている。この部品装着機は、カメラ装置の撮像により取得された画像データに基づいて吸着ノズルに保持された部品の状態を認識する。特許文献1の部品装着機は、カメラ装置が同時に4つの吸着ノズルを撮像可能とする光路を形成する光学装置を備える。これにより、特許文献1の図6に示されるように、同一の画像データには4つの吸着ノズルが含まれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2009-283572号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のような構成において、撮像対象とする吸着ノズルの数が増加するほど画像データの左右方向における個々の吸着ノズルの占有領域が狭くなる。そのため、光学装置を構成する反射部材などを高精度に設置することが求められる。また、個々の吸着ノズルの専有領域が狭くなると、部品の寸法や保持状態によっては吸着ノズルに保持された部品の一部が画像データに収まらなくなるおそれがある。
【0005】
本明細書は、カメラ装置が3以上の撮像対象を同時に撮像可能とするとともに、画像データの左右方向における個々の撮像対象の占有領域を十分に確保することができる部品装着機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本明細書は、部品を保持する1または複数の保持部材を昇降可能に支持する装着ヘッドと、カメラ視野に収められた撮像対象を撮像するカメラ装置と、3以上の前記撮像対象を前記カメラ視野における行方向および前記行方向に直交する列方向に並べて前記カメラ視野に収める光路を形成して、前記カメラ装置が3以上の前記撮像対象を同時に撮像可能とする光学装置と、を備える部品装着機を開示する。
【発明の効果】
【0007】
このような構成によると、カメラ装置のカメラ視野に3以上の撮像対象が行方向および列方向に並んで同時に撮像可能となるように複数の光路が集約される。これにより、上記のカメラ装置の撮像により取得した画像データには、3以上の撮像対象が左右方向および上下方向にずれて収まることになる。よって、従来のように複数の撮像対象が左右方向に並んで画像データに収められる構成と比較して、画像データの左右方向における個々の撮像対象の占有領域を十分に確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施形態における部品装着機の構成を示す模式図である。
図2】装着ヘッドの一部を模式的に示す側面図である。
図3図2のIII方向矢視図である。
図4】光学装置により形成される光路を展開して示す側方図である。
図5】カメラ装置の撮像により取得された画像データを示す図である。
図6】撮像の対象物の写像とカメラ装置のカメラ視野との関係を示す図である。
図7】部品装着機による画像処理を示すフローチャートである。
図8A】変形態様における3つの撮像対象を並べた第一態様の画像データを示す図である。
図8B】変形態様における3つの撮像対象を並べた第二態様の画像データを示す図である。
図9】変形態様における4つの撮像対象を並べた画像データを示す図である。
図10】変形態様における6つの撮像対象を並べた画像データを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
1.部品装着機1の構成
部品装着機1は、図1に示すように、基板搬送装置11、部品供給装置12、部品移載装置13、部品カメラ41、基板カメラ42、ヘッドカメラユニット50、および制御装置70を備える。以下の説明において、水平方向あって部品装着機1の左右方向をX方向とし、X方向に交差する水平方向であって部品装着機1の前後方向をY方向とし、X方向およびY方向に直交する鉛直方向(図1の前後方向)をZ方向とする。
【0010】
基板搬送装置11は、ベルトコンベアおよび位置決め装置などにより構成される。基板搬送装置11は、基板90を搬送方向へと順次搬送するとともに、基板90を機内の所定位置に位置決めする。基板搬送装置11は、装着処理が終了した後に、基板90を部品装着機1の機外に搬出する。部品供給装置12は、基板90に装着される部品を供給する。部品供給装置12は、複数のスロット121にセットされたフィーダ122を備える。フィーダ122は、多数の部品が収納されたキャリアテープを送り移動させて、部品を採取可能に供給する。
【0011】
部品移載装置13は、部品供給装置12により供給された部品を、基板搬送装置11により機内に搬入された基板90上の所定の装着位置まで移載する。部品移載装置13のヘッド駆動部131は、直動機構により移動台132を水平方向(X方向およびY方向)に移動させる。移動台132には、図示しないクランプ部材により装着ヘッド20が交換可能に固定される。
【0012】
装着ヘッド20は、部品供給装置12により供給される部品を保持する1または複数の保持部材を昇降可能に支持する。本実施形態において、装着ヘッド20は、8つの保持部材を支持する。装着ヘッド20は、保持部材により部品を採取して、基板90の所定の装着位置に装着する。上記の保持部材としては、例えば供給される負圧エアにより部品を吸着して保持する吸着ノズル24(図2を参照)や、部品をクランプして保持するチャックなどが採用され得る。装着ヘッド20の詳細構成については後述する。
【0013】
部品カメラ41、基板カメラ42、およびヘッドカメラユニット50は、CMOSなどの撮像素子を有するデジタル式の撮像装置である。部品カメラ41、基板カメラ42およびヘッドカメラユニット50は、制御信号に基づいて撮像を行い、当該撮像により取得した画像データを送出する。部品カメラ41は、装着ヘッド20の吸着ノズル24に保持された部品を下方から撮像可能に構成される。基板カメラ42は、基板90を上方から撮像可能に構成される。
【0014】
ヘッドカメラユニット50は、図2に示すように、装着ヘッド20の内部に設けられ、移動台132の移動に伴って装着ヘッド20と一体的に移動する。ヘッドカメラユニット50は、装着処理において対象物の撮像を行う。本実施形態において、ヘッドカメラユニット50は、吸着ノズル24および保持された部品を側方から撮像可能に構成される。ヘッドカメラユニット50の詳細構成については後述する。
【0015】
制御装置70は、主として、CPUや各種メモリ、制御回路により構成される。制御装置70は、基板90に部品を装着する装着処理を実行する。本実施形態において、制御装置70は、図1に示すように、画像処理部71を有する。画像処理部71は、ヘッドカメラユニット50などの撮像により取得した画像データに対して所定の画像処理を行う。具体的には、画像処理部71は、取得した画像データに対して例えば二値化やエッジ処理などを実行する。そして、画像処理部71は、吸着ノズル24の先端における部品の有無や吸着ノズル24に対する部品の姿勢などを認識する。
【0016】
制御装置70は、装着処理において、各種センサから出力される情報や測定値、画像処理部71による画像処理の結果、基板90上の装着位置を指定する制御プログラムなどに基づいて、装着ヘッド20の動作を制御する。これにより、装着ヘッド20に支持された吸着ノズル24の位置および角度が制御される。また、本実施形態において、画像処理部71は、取得した画像データに基づいて、吸着ノズル24を昇降させる昇降装置としての駆動装置の動作異常やヘッドカメラユニット50の光学装置60の設置異常などの検出に用いられる。画像処理部71による画像処理の詳細については後述する。
【0017】
2.装着ヘッド20の詳細構成
装着ヘッド20は、図2に示すように、ヘッド本体21、駆動装置22、ロータリヘッド23、吸着ノズル24、およびハウジング25を備える。ヘッド本体21は、移動台132に着脱可能に設けられるフレーム部材である。駆動装置22は、装着ヘッド20に設けられた種々の被駆動部を動作させるモータやアクチュエータである。
【0018】
ロータリヘッド23は、ヘッド本体21に対して鉛直軸(Z軸)に平行なR軸周りに回転可能に設けられる。ロータリヘッド23は、R軸と同心の円周上において周方向に等間隔に複数(例えば、8本)のシリンジをZ方向に摺動可能に且つ回転可能に保持する。吸着ノズル24は、シリンジの下端部に取り付けられる。これにより、ロータリヘッド23は、複数の吸着ノズル24をヘッド本体21に対して昇降可能に、且つR軸に平行で吸着ノズル24の中心を通るθ軸周りに回転可能に支持する。
【0019】
吸着ノズル24は、負圧エアを供給されて部品を吸着する保持部材である。複数の吸着ノズル24は、駆動装置22の駆動に伴ってロータリヘッド23が回転することにより、R軸周りの規定角度に角度決めされる。また、吸着ノズル24は、駆動装置22の動作によりθ軸周りに回転(自転)し、回転角度や回転速度を制御される。さらに、複数の吸着ノズル24のうち昇降位置H0(図3を参照)に割り出された吸着ノズル24は、駆動装置22の動作によりZ方向に昇降し、Z方向位置や移動速度を制御される。
【0020】
ハウジング25は、ヘッド本体21やヘッドカメラユニット50などを収容可能に箱状に形成される。ハウジング25の下部は、ロータリヘッド23に支持された複数の吸着ノズル24に保持された部品を、部品カメラ41が下方から撮像可能となるように開口している。上記のような構成からなる装着ヘッド20は、部品装着機1の制御装置70と通信可能に接続される。装着ヘッド20は、制御装置70から入力した指令や装着ヘッド20内の各種センサの検出値などに基づいて、駆動装置22の動作を制御される。
【0021】
以下では、図3に示すように、装着ヘッド20により昇降される昇降位置H0を基準にそれぞれの吸着ノズル24が割り出される位置を、時計回りに第一待機位置H1から第七待機位置H7とする。第一待機位置H1は、ロータリヘッド23の回転により昇降位置H0に次回割り出さる予定の吸着ノズル24を待機させる位置である。なお、第七待機位置H7は、ロータリヘッド23の回転により昇降位置H0に7回後に割り出される予定の吸着ノズル24を待機させる位置であり、また昇降位置H0に前回割り出された吸着ノズル24を待機させる位置でもある。
【0022】
3.ヘッドカメラユニット50の詳細構成
ヘッドカメラユニット50は、上記のように、移動台132の移動に伴って装着ヘッド20と一体的に移動する。ヘッドカメラユニット50は、制御装置70による撮像指令に基づいて、吸着ノズル24および吸着ノズル24に保持された部品91を側方から撮像する。撮像による画像データ80(図5を参照)は、制御装置70に送出され、部品91の保持検査などに用いられる。
【0023】
ヘッドカメラユニット50は、図2に示すように、カメラ装置51、ブラケット52、光源53、背景部材54、および光学装置60を備える。カメラ装置51は、本実施形態において、光軸が鉛直軸(Z軸)に平行となるようにブラケット52を介してヘッド本体21に設けられる。カメラ装置51は、装着ヘッド20に設けられ、カメラ視野95(図6を参照)に収められた撮像対象を撮像する。本実施形態において、カメラ装置51は、光源53により光を照射された吸着ノズル24および吸着ノズル24に保持された部品91を撮像対象とする。
【0024】
ブラケット52は、カメラ装置51をヘッド本体21に固定する固定部材である。光源53は、ブラケット52に配置され、カメラ装置51による撮像の際に光を照射する。本実施形態において、光源53は、ロータリヘッド23の中心方向(R軸に向かう方向)に紫外線を放射する複数の発光ダイオードなどにより構成される。また、光源53は、第一待機位置H1、第三待機位置H3、第五待機位置H5、および第七待機位置H7に位置決めされた4つの吸着ノズル24に対して光を照射する。
【0025】
背景部材54は、円柱状に形成され、円筒状の外周面において紫外線を吸収して可視光を放射する蛍光層が形成される。背景部材54は、ロータリヘッド23の下端にR軸と同軸となるように配置される。背景部材54は、ロータリヘッド23と一体的に回転する。背景部材54は、カメラ装置51の撮像により取得される画像データ80における背景となる部材である。
【0026】
光学装置60は、3以上の撮像対象ごとに対応した光路を形成するとともに、撮像対象がカメラ視野95における行方向(図5の左右方向)および行方向に直交する列方向(図5の上下方向)に並んでカメラ視野95に収められるように3以上の光路を集約する。換言すると、光学装置60は、3以上の撮像対象がカメラ視野95における行方向および行方向に直交する列方向に並んでカメラ視野95に収められるように3以上の撮像対象の位置関係を光学的に変更する。
【0027】
ここで、ヘッドカメラユニット50のカメラ装置51は、保持部材(例えば吸着ノズル24)、保持部材に保持された部品91、および装着ヘッド20の構成部材の少なくとも1つを含む3以上を撮像対象とする。本実施形態において、カメラ装置51は、第一待機位置H1、第三待機位置H3、第五待機位置H5、および第七待機位置H7に位置決めされた4つの吸着ノズル24またはこれらに保持された部品91を撮像対象とする。
【0028】
そして、光学装置60は、図5に示すように、4つの撮像対象を行方向および列方向に2つずつ並んでカメラ視野95に収める構成を採用する。さらに、光学装置60は、4つの撮像対象のうち2つの第一撮像対象(第一待機位置H1の吸着ノズル24)および第二撮像対象(第三待機位置の吸着ノズル24)を上下方向および左右方向が互いに反転された状態で列方向に並んでカメラ視野95に収める。同様に、光学装置60は、4つの撮像対象のうち残りの2つ(第七待機位置の吸着ノズル24、第五待機位置H5の吸着ノズル24)を互いに反転された状態で列方向に並んでカメラ視野95に収める。
【0029】
具体的には、光学装置60は、左右方向(図3の上下方向)に一対の前側対物ミラー61A,61B,61Cと、一対の後側対物ミラー62A,62B,62Cと、一対のサイドプリズム63と、一対の第一サイドミラー64と、一対の第二サイドミラー65と、中央プリズム66と、中央ミラー67とを有する。なお、光学装置60は、概ね左右対称に構成されるため、ここでは左側(図3の上側)の構成について説明する。
【0030】
図3および図4に示すように、3つの前側対物ミラー61A,61B,61Cは、背景部材54を背景とし、且つ第一待機位置H1の吸着ノズル24および部品91のシルエット像を写像81(図5を参照)とする光路を形成する光学部材である。この光路により、写像81がサイドプリズム63に前側から入射される。一方で、3つの後側対物ミラー62A,62B,62Cは、背景部材54を背景とし、且つ第三待機位置H3の吸着ノズル24および部品91のシルエット像を写像82とする光路を形成する光学部材である。この光路により写像82がサイドプリズム63に後側から入射される。
【0031】
サイドプリズム63は、入射した2つの写像81,82を上下方向に結合して上方に屈折させた光路を形成する。このとき、第一撮像対象の写像81に対して第二撮像対象の写像82が上下方向および左右方向に反転され且つ上下方向に並べられた第一結合写像85A(図5を参照)が生成される。第一結合写像85Aにおいて、それぞれの写像81,82の左右方向および上下方向のずれは、3つの前側対物ミラー61A,61B,61C、および3つの後側対物ミラー62A,62B,62Cの設置誤差に起因して発生し得る。
【0032】
第一サイドミラー64は、サイドプリズム63から入射した第一結合写像85Aをカメラ装置51側に反射する第一反射部材である。第一サイドミラー64は、装着ヘッド20における第一撮像対象および第二撮像対象の配置方向(装着ヘッド20の前後方向、図3の左右方向)の中央部に設けられる。第二サイドミラー65は、第一サイドミラー64から入射した第一結合写像85Aを装着ヘッド20の左右方向の中央側に反射する。これにより、第一結合写像85Aが中央プリズム66に左側から入射される。また、上述した構成と概ね左右対称に形成された右側の構成により、第一結合写像85Bが中央プリズム66に右側から入射される。
【0033】
上記の第一結合写像85Bは、図5に示すように、第三撮像対象の写像83に対して第四撮像対象の写像84が上下方向および左右方向に反転され且つ上下方向に並べられた写像である。中央プリズム66は、入射した2つの第一結合写像85A,85Bを左右方向に結合して前側に屈折させた光路を形成する。このとき2つの第一結合写像85A,85Bが左右方向に並べられた第二結合写像86が生成される。
【0034】
中央ミラー67は、中央プリズム66から入射した第二結合写像86をカメラ装置51側に反射する第二反射部材である。上記のような構成の光学装置60により、4つの光路が集約されて、第二結合写像86がカメラ装置51のカメラ視野95に収められる。換言すると、4つの撮像対象は、光学装置60によりその位置関係を光学的に変更されて、カメラ装置51のカメラ視野95に収められる。そして、カメラ装置51の撮像によって、4つの撮像対象の写像81-84が行方向および列方向に2つずつ並んだ画像データ80が取得される。
【0035】
ここで、画像データ80により部品91を撮像対象に含める場合には、カメラ視野95において当該部品91を確実に収めるために必要な占有領域は、吸着ノズル24のθ軸を中心とし、部品91の長手方向の長さを半径とした円に当該部品91の設計的な公差を加えた理想領域より大きいことが望ましい。これは、吸着ノズル24が部品91の中央部からずれた長手方向の端部に接触して保持する場合があることに起因する。
【0036】
そのため、従来のように3以上の撮像対象を左右方向に並べて画像データを生成すると、個々の撮像対象の占有領域が上記の理想領域よりも小さくなるおそれがある。また、個々の撮像対象の占領領域を確保できたとしても理想領域との差が小さい場合には、光路を形成する光学部材に要求される設置精度が高くなる。
【0037】
これに対して、上記のような構成の光学装置60によると、3以上の撮像対象が画像データ80において左右方向および上下方向にずれて収まることになる。これにより、従来のように3以上の撮像対象を左右方向に並べて画像データ生成した構成と比較して、画像データ80の左右方向における個々の撮像対象の占有領域を十分に確保することができる。さらに、個々の撮像対象の占有領域と理想領域との差を大きくできるので、光学装置60に要求される設置精度の高まりを抑制できる。
【0038】
また、上記の光学装置60は、4つの光路の長さがカメラ装置51の被写界深度に基づく許容範囲に収まるように、4つの光路を形成する。詳細には、第一撮像対象(第一待機位置H1の吸着ノズル24)は、第二撮像対象(第三待機位置H3の吸着ノズル24)よりもカメラ装置51に近い位置にあるが、それぞれの写像81,82がサイドプリズム63を経由する光路を辿ることにより、光路の長さが概ね等しくなるように調整される。
【0039】
そして、4つの光路の長さは、ある程度の差を含み得るが、カメラ装置51の被写界深度に基づく許容範囲に収まる。これにより、カメラ装置51は、撮像処理の際にピント調整を行うことなく、4つの撮像対象のそれぞれにピントが合った状態で同時に撮像可能に構成される。よって、ヘッドカメラユニット50に固定焦点タイプを採用でき、設備コストの低減を図ることができる。ヘッドカメラユニット50は、図5に示すような画像データ80をカメラ装置51の撮像により生成し、制御装置70へと送出する。
【0040】
4.画像処理部71による画像処理
画像処理部71は、取得した画像データ80に対して例えば二値化やエッジ処理などを実行する。そして、画像処理部71は、4つの吸着ノズル24の有無、形状、昇降方向の位置などを認識する。さらに、画像処理部71は、4つの吸着ノズル24の先端における部品91の有無、形状、吸着ノズル24に対する部品91の姿勢などを認識する。
【0041】
制御装置70は、上記のような画像処理の結果に基づいて、例えば吸着ノズル24のメンテナンスの要否、駆動装置22の動作の正否を判定する。さらに、制御装置70は、画像処理の結果に基づいて、装着処理における部品91の姿勢に応じた装着動作を制御するとともに、装着の正否を判定する。このように、部品装着機1は、ヘッドカメラユニット50を用いた画像処理によって装着前後の吸着ノズル24等の状態を認識し、装着精度の向上を図っている。
【0042】
ところで、画像処理部71は、例えば装着ヘッド20の駆動装置22が正常に動作しているのか否かを判定するために、吸着ノズル24の昇降方向の位置を認識する。具体的には、画像処理部71は、図6に示すように、画像データ80の基準位置Pに対して吸着ノズル24が上下方向に変位した場合に、駆動装置22の動作異常により吸着ノズル24の昇降方向の位置決め誤差が生じているものと推定できる。
【0043】
しかしながら、装着処理が繰り返し実行されるなどして光学装置60を構成する光学部材に設置誤差が発生することがある。そうすると、駆動装置22が正常に動作しているにも関わらず、吸着ノズル24が画像データ80の基準位置Pに対して上下方向に変位したとして、駆動装置22の動作異常と誤認する可能性がある。これに対して、本実施形態の部品装着機1は、光学装置60および画像処理部71により上記の誤認を防止する構成を採用する。
【0044】
具体的には、光学装置60は、上記のような構成により第一撮像対象(第一待機位置H1の吸着ノズル24)の写像81に対して第二撮像対象(第三待機位置H3の吸着ノズル24)の写像82が上下方向および左右方向に反転され且つ上下方向に並べられた第一結合写像85Aを生成する。また、制御装置70は、装着ヘッド20にヘッドカメラユニット50が取り付けられた際に、正常な初期状態を画像データ80に基づいて定義し記憶する。
【0045】
上記の初期状態には、図6に示すように、画像データ80の基準位置Pに対する2つの写像81,82の行方向の距離Ls1,Ls2および列方向の距離Lv1,Lv2(本実施形態において、基準位置Pから吸着ノズル24の先端までの各距離)が含まれる。なお、初期状態には、写像81,82の傾きを含めてもよい。
【0046】
そして、画像処理部71は、カメラ装置51の撮像により取得された画像データ80の基準位置Pに対して第一撮像対象および第二撮像対象の少なくとも一方に行方向または列方向の変位が生じているか否か判定する。変位が生じている場合に、画像処理部71は、画像データ80における第一撮像対象および第二撮像対象の位置関係に基づいて変位の発生原因を推定する。
【0047】
具体的には、画像処理部71は、装着処理の実行中にヘッドカメラユニット50により画像データ80を取得した場合に、図7に示すような画像処理を実行する。画像処理部71は、先ず画像データ80に複数の吸着ノズル24のうち少なくとも1つが基準位置Pに対して変位しているか否かを判定する(S11)。具体的には、画像処理部71は、現在の画像データ80における2つの写像81,82の行方向の距離Ls1,Ls2および列方向の距離Lv1,Lv2を算出し、初期状態に対する変化量が許容範囲を超えているか否かによって、変位の有無を判定する。
【0048】
ここで、全ての吸着ノズル24に変位が生じていない場合には(S11:No)、画像処理部71は、この処理を終了し、画像データ80を用いた各種の認識処理を実行する。一方で、少なくとも1つの吸着ノズル24が基準位置Pに対して変位している場合には(S11:Yes)、第一、第二撮像対象の行方向の行間隔Nsおよび列方向の列間隔Nvを算出する(S12)。
【0049】
次に、画像処理部71は、画像データ80における第一撮像対象および第二撮像対象が初期の間隔(Ls1+Ls2、Lv1+Lv2)を維持しているか否かを判定する。ここで、変位が生じているにも関わらず、現在の行間隔Nsが初期の行方向の間隔(Ls1+Ls2)と等しく、現在の列間隔Nvが初期の列方向の間隔(Lv1+Lv2)と等しい場合には、カメラ視野95に対して第二結合写像86が全体としてシフトしていることになる(図6の基準位置Pcを有するカメラ視野95cを参照)。
【0050】
そこで、第一撮像対象および第二撮像対象が初期の間隔を維持している場合には(S13:Yes)、画像処理部71は、第二結合写像86が生成された後の光路を形成する光学部材、即ち中央ミラー67の設置誤差を変位の発生原因と推定してエラー処理を実行する(S21)。具体的には、画像処理部71は、例えば中央ミラー67の角度調整を行うように作業者に通知する。
【0051】
一方で、第一撮像対象および第二撮像対象が初期の間隔を維持していない場合には(S13:No)、画像処理部71は、第一撮像対象および第二撮像対象が初期の行方向の間隔(Ls1+Ls2)を維持しているか否かを判定する。ここで、現在の行間隔Nsが初期の行方向の間隔(Ls1+Ls2)と異なり、現在の列間隔Nvが初期の列方向の間隔(Lv1+Lv2)と等しい場合には、カメラ視野95に対して第一結合写像85がシフトしていることになる。
【0052】
そこで、第一撮像対象および第二撮像対象が初期の行方向の間隔(Ls1+Ls2)を維持していない場合には(S14:No)、画像処理部71は、第一結合写像85が生成される前の光路を形成する光学部材、即ち前側対物ミラー61A,61B,61C、および後側対物ミラー62A,62B,62Cの設置誤差を変位の発生原因と推定してエラー処理を実行する(S22)。具体的には、画像処理部71は、例えば上記の光学部材の角度調整を行うように作業者に通知する。
【0053】
また、現在の行間隔Nsが初期の行方向の間隔(Ls1+Ls2)と等しく、現在の列間隔Nvが初期の列方向の間隔(Lv1+Lv2)と異なる場合には、例えば吸着ノズル24が上昇端まで上昇していないなど、昇降方向の位置決め誤差が生じていることになる。そこで、第一撮像対象および第二撮像対象が初期の行方向の間隔(Ls1+Ls2)を維持している場合には(S14:Yes)、画像処理部71は、昇降装置としての駆動装置22の動作誤差と推定してエラー処理を実行する(S23)。具体的には、画像処理部71は、例えば駆動装置22やロータリヘッド23のメンテナンスを行うように作業者に通知する。
【0054】
5.実施形態の構成による効果
実施形態の部品装着機1は、カメラ視野95に収められた撮像対象を撮像するカメラ装置51と、3以上の撮像対象ごとに対応した光路を形成するとともに、撮像対象がカメラ視野95における行方向および行方向に直交する列方向に並んでカメラ視野95に収められるように3以上の光路を集約する光学装置60と、を備える。
【0055】
また、実施形態の部品装着機1は、カメラ視野95に収められた撮像対象を撮像するカメラ装置51と、3以上の撮像対象がカメラ視野95における行方向および行方向に直交する列方向に並んでカメラ視野95に収められるように3以上の撮像対象の位置関係を光学的に変更する光学装置60と、を備える。
【0056】
このような構成によると、カメラ装置51のカメラ視野95に3以上の撮像対象が行方向および列方向に並んで同時に撮像可能となるように複数の光路が集約される。これにより、上記のカメラ装置51の撮像により取得した画像データ80には、3以上の撮像対象が左右方向および上下方向にずれて収まることになる。よって、従来のように複数の撮像対象が左右方向に並んで画像データに収められる構成と比較して、画像データ80の左右方向における個々の撮像対象の占有領域を十分に確保することができる。
【0057】
6.実施形態の変形態様
実施形態において、ヘッドカメラユニット50は、装着ヘッド20に支持された8つの吸着ノズル24のうち4つの吸着ノズル24およびこれらに保持された部品91を撮像対象とした。これに対して、ヘッドカメラユニット50は、3以上の撮像対象を撮像可能とするように3以上の光路を集約する光学装置60を備える構成であれば、種々の態様を採用できる。
【0058】
なお、本明細書において、撮像対象とは、吸着ノズル24(保持部材)、吸着ノズル24(保持部材)に保持された部品91、および装着ヘッド20の構成部材の少なくとも1つを含む。よって、ヘッドカメラユニット50は、吸着ノズル24に換えて、保持部材として別種のチャックを撮像対象としてもよい。また、装着ヘッド20の構成部材には、例えば吸着ノズル24を支持するシリンジ、シリンジの外周側に設けられ吸着ノズル24の支持状態の維持に用いられるカラーなどが含まれ得る。
【0059】
また、光学装置60は、3以上の撮像対象の各写像について行方向に2行以上、列方向2列以上となるように光路を集約し、換言すると3以上の撮像対象の位置関係を光学的に変更するものであれば種々の態様を採用できる。具体的には、光学装置60は、撮像対象が3つである場合に、図8A図8Bに示すように、3つ撮像対象がカメラ視野95に並べるように構成されてもよい。
【0060】
さらに、光学装置60は、撮像対象が4つである場合に、図9に示すように、カメラ視野95の中央部を空けて、その周囲に4つの撮像対象がカメラ視野95に並べるように構成されてもよい。また、光学装置60は、撮像対象が6つである場合に、図10に示すように、カメラ視野95における行方向に2行、列方向に3列となるように6つの撮像対象がカメラ視野95に並べられるように構成されてもよい。この態様では、実施形態にて例示した構成に加えて、写像87,88を結合して第一結合写像85Cがカメラ視野95の行方向の中央に生成される。
【0061】
また、本明細書において、同一の保持部材、または同一の保持部材に保持された同一の部品91を、装着ヘッド20を基準として互いに異なる所定方向から撮像する場合には、別々の撮像対象として扱う。つまり、例えば1つの吸着ノズル24を互いに異なる3方向から撮像するように3以上の撮像対象を設定してもよいし、また4つの撮像対象のうち2つは、同一の吸着ノズル24を別角度から撮像するように3以上の撮像対象を設定しもよい。
【0062】
実施形態において、画像処理部71は、部品装着機1の制御装置70に組み込まれる態様を例示した。これに対して、画像処理部71は、装着ヘッド20に設けられたヘッドカメラユニット50の内部に組み込まれる構成としてもよい。これらの態様については、ヘッドカメラユニット50の処理負荷、通信速度、ユニット重量などを勘案して適宜選択され得る。
【符号の説明】
【0063】
1:部品装着機、 20:装着ヘッド、 21:ヘッド本体、 22:駆動装置、 23:ロータリヘッド、 24:吸着ノズル(撮像対象)、 25:ハウジング、 50:ヘッドカメラユニット、 51:カメラ装置、 52:ブラケット、 53:光源、 54:背景部材、 60:光学装置、 61A,61B,61C:前側対物ミラー(光学部材)、 62A,62B,62C:後側対物ミラー(光学部材)、 63:サイドプリズム、 64:第一サイドミラー(第一反射部材)、 65:第二サイドミラー、 66:中央プリズム、 67:中央ミラー(第二反射部材)、 70:制御装置、 71:画像処理部、 80:画像データ、 81-84:写像、 85:第一結合写像、 86:第二結合写像、 90:基板、 91:部品(撮像対象)、 95:カメラ視野
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8A
図8B
図9
図10