(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-12
(45)【発行日】2023-07-21
(54)【発明の名称】物品をカットして濾過管を作製するレーザーカットシステム
(51)【国際特許分類】
B23K 26/382 20140101AFI20230713BHJP
B23K 26/00 20140101ALI20230713BHJP
B23K 26/142 20140101ALI20230713BHJP
B23K 26/16 20060101ALI20230713BHJP
【FI】
B23K26/382
B23K26/00 N
B23K26/142
B23K26/16
(21)【出願番号】P 2021517226
(86)(22)【出願日】2019-09-26
(86)【国際出願番号】 US2019053313
(87)【国際公開番号】W WO2020069231
(87)【国際公開日】2020-04-02
【審査請求日】2021-05-27
(32)【優先日】2018-09-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】518185956
【氏名又は名称】シンフュエル アメリカズ コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100126572
【氏名又は名称】村越 智史
(72)【発明者】
【氏名】リー, ヨンワン
【審査官】黒石 孝志
(56)【参考文献】
【文献】特開昭54-011592(JP,A)
【文献】実開平01-153873(JP,U)
【文献】特開昭60-223692(JP,A)
【文献】特開2012-086243(JP,A)
【文献】実開平05-049186(JP,U)
【文献】特開平07-236987(JP,A)
【文献】特開2005-211962(JP,A)
【文献】特開2017-131966(JP,A)
【文献】特開昭52-069091(JP,A)
【文献】特開昭51-17153(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 26/00 - 26/70
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
物品をカットするレーザーカットシステムであって、複数のスロット、穴および孔のうち少なくとも1つをそれぞれの物品にカットするよう構成されており、前記レーザーカットシステムは、
レーザービームを放出する放出システムであって、レーザービームを提供するよう構成されているレーザー源と、少なくとも1つのミラーと、集光用対物レンズと、ガス源と、放出ノズルとを有する放出システムを備え、
前記放出ノズルは、前記物品に向けて、前記ガス源から供給されるガスおよび前記レーザー源から供給される前記レーザービームを放出して、前記複数のスロット、穴および孔のうち少なくとも1つを前記物品に沿って所定のパターンでカットするよう構成されており、前記物品は、前記放出ノズルに対して長手軸に沿った長手方向に延びるように構成され、
前記レーザーカットシステムはさらに、
前記レーザービームによってカットされるそれぞれの物品を保持する第1のステージであって、(a)前記物品に向けて前記ガスおよび前記レーザービームを放出している間に前記長手軸を中心に前記物品を軸回転させ、さらに、(b)前記複数のスロット、複数の穴および/または複数の孔をカットするために、前記レーザービームが前記物品に対して放出される際に前記放出ノズルに対して前記物品を前記長手軸に沿った長手方向に移動させるように構成されている第1のステージと、
前記第1ステージで保持された前記物品に対して前記放出ノズルを相対的に移動させ、前記物品の長手方向に対して直交して移動するように構成される第2のステージと、
前記レーザービームおよび前記ガス源のアクチュエーション、ならびに、前記第1のステージおよび前記第2のステージの移動を制御するコントローラと、
前記物品の内部に対して真空封止および真空を実現し、前記レーザービームによるカットの実行中に前記物品からカットされるスラグを前記物品の内部を通じて除去する真空源と、
前記真空源に接続され前記真空封止および真空を維持し易くするための真空ボックスであって、
前記真空ボックス内において前記真空封止および真空を維持しつつ、前記レーザービームによるカットの実行中に前記物品が真空ボックス内を
通って前記長手方向に移動
し前記真空ボックスの外に出るように構成される真空ボックスと、
を備えるレーザーカットシステム。
【請求項2】
前記物品は管であり、前記レーザーカットシステムは、それぞれの壁に、および、それぞれの管の壁を貫通するように複数のスロット、穴および孔のうち少なくとも1つをカットして、流体から固体を濾過するよう構成されている濾過管を作製するよう構成されている、請求項1に記載のレーザーカットシステム。
【請求項3】
前記第1のステージは、第1のサブステージおよび第2のサブステージを有し、前記第1のサブステージは、前記物品を前記長手軸を中心に軸回転させるよう構成されており、前記第2のサブステージは前記物品を前記長手軸に沿った長手方向に移動させるよう構成されており、前記第1のサブステージは前記第2のサブステージの上方に配置されている、請求項1に記載のレーザーカットシステム。
【請求項4】
前記放出システムの前記少なくとも1つのミラーは、第1のミラーおよび第2のミラーを有し、前記第1のミラーおよび前記第2のミラーの両方は、前記レーザービームを方向付けるべく、回転可能なマウントを利用して回転するよう構成されている、請求項1に記載のレーザーカットシステム。
【請求項5】
カメラおよびリレーレンズをさらに備え、前記カメラは、前記物品に対して相対的に前記放出ノズルの配置を決定することにより前記レーザービームの配置を決定するために前記放出ノズルの画像を撮像するよう構成されており、前記リレーレンズは前記カメラ用に前記放出ノズルの前記画像を結像させるよう構成されている、請求項1に記載のレーザーカットシステム。
【請求項6】
前記レーザービームのうち前記物品をカットするために用いられたエネルギーの割合を測定するモニタリングデバイスをさらに備える、請求項1に記載のレーザーカットシステム。
【請求項7】
冷却剤源および冷却剤放出ノズルを有する冷却剤格納部をさらに備え、前記冷却剤放出ノズルは、前記放出ノズルに隣接して配置されており、前記冷却剤放出ノズルは、前記物品のカットを実行している間に前記物品に対して冷却剤を放出するよう構成されている、請求項1に記載のレーザーカットシステム。
【請求項8】
前記長手方向に前記物品の移動をガイドするガイドトラックおよびボールベアリングをさらに備える、請求項1に記載のレーザーカットシステム。
【請求項9】
前記コントローラは、複数の行のスロット、穴および孔のうち少なくとも1つが前記物品に設けられるように前記レーザービームに対して相対的に前記第1のステージの移動を制御するよう構成されており、カットされた後において隣接する行は互い違いになっている、請求項1に記載のレーザーカットシステム。
【請求項10】
レーザーカットシステムを利用して物品に複数のスロット、穴および孔のうち少なくとも1つをカットする方法であって、前記レーザーカットシステムは、レーザービームを放出する放出システムを備え、前記放出システムは、レーザービームを供給するよう構成されているレーザー源と、少なくとも1つのミラーと、集光用対物レンズと、ガス源と、放出ノズルとを有し、前記放出ノズルは、前記物品に向けて、前記ガス源から供給されるガスおよび前記レーザー源から供給される前記レーザービームを放出して、前記複数のスロット、穴および孔のうち少なくとも1つを前記物品に沿って所定のパターンでカットするよう構成されており、前記物品は、前記放出ノズルに対して長手軸に沿った長手方向に延びるように構成され、前記レーザーカットシステムはさらに、前記レーザービームによってカットされるそれぞれの物品を保持する第1のステージであって、(a)前記物品に向けて前記ガスおよび前記レーザービームを放出する間に前記長手軸を中心に前記物品を軸回転させ、および、(b)前記物品に前記複数のスロット、複数の穴および/または複数の孔をカットするために、前記レーザービームが前記物品に対して放出される際に前記放出ノズルに対して前記物品を前記長手軸に沿った長手方向に移動させるように構成されている第1のステージと、前記第1ステージで保持された前記物品に対して前記放出ノズルを相対的に移動させ、前記物品の長手方向に対して直交して移動するように構成されたための第2のステージと、前記レーザービームおよび前記ガス源のアクチュエーション、および、前記第1のステージおよび前記第2のステージの移動を制御するコントローラと、前記物品の内部に対して真空封止および真空を実現し、前記レーザービームによるカットの実行中に前記物品からカットされるスラグを前記物品の内部を通じて除去する真空源と、前記真空源に接続され前記真空封止および真空を維持し易くするための真空ボックスであって、
前記真空ボックス内において前記真空封止および真空を維持しつつ、前記レーザービームによるカットの実行中に前記物品が真空ボックス内を
通って前記長手方向に移動
し前記真空ボックスの外に出るように構成される真空ボックスと、
を備え、前記方法は、
前記物品を前記第1のステージに載置することと、
前記第2のステージを利用して前記物品に対して相対的に前記放出ノズルを移動させることと、
前記コントローラを制御して、前記物品に向けて前記ガスおよび前記レーザービームを放出して、前記複数のスロット、穴および孔のうち少なくとも1つを前記物品に沿って前記所定のパターンでカットすることと、
前記真空源を用いて前記物品の前記内部を通じて前記物品からカットされる前記スラグを除去することと
を含み、
前記コントローラは、前記レーザービームが放出されている間、前記第1のステージを利用して、前記物品が常に前記長手軸を中心に軸回転し、前記長手軸に沿った長手方向に移動するよう、前記物品の移動を制御する、
方法。
【請求項11】
前記レーザービームが放出されている間に前記物品を軸回転させて長手に移動させることで、前記物品にはらせん状のカットパターンでスロット、穴および孔のうち少なくとも1つがカットされる、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記物品は管であり、前記レーザーカットシステムは、それぞれの管の壁に、および、それぞれの管の壁を貫通するように複数のスロット、穴および孔のうち少なくとも1つをカットして、流体から固体を濾過するよう構成されている濾過管を作製するよう構成されている、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
前記第1のステージは、第1のサブステージおよび第2のサブステージを有し、前記第1のサブステージは、前記物品を前記長手軸を中心に軸回転させるよう構成されており、前記第2のサブステージは前記物品を前記長手軸に沿った長手方向に移動させるよう構成されており、前記第1のサブステージは前記第2のサブステージの上方に配置されている、請求項10に記載の方法。
【請求項14】
前記放出システムの前記少なくとも1つのミラーは、第1のミラーおよび第2のミラーを有し、前記第1のミラーおよび前記第2のミラーの両方は、前記レーザービームを方向付けるための回転可能なマウントを利用して回転するよう構成されており、前記方法はさらに、前記レーザービームを方向付けるために前記回転可能なマウントを中心に前記第1のミラーおよび/または前記第2のミラーのうち少なくとも一方を回転させることを含む、請求項10に記載の方法。
【請求項15】
カメラおよびリレーレンズをさらに備え、前記カメラは、前記物品に対して相対的に前記放出ノズルの配置を決定することにより前記レーザービームの配置を決定するために前記放出ノズルの画像を撮像するよう構成されており、前記リレーレンズは前記カメラ用に前記放出ノズルの前記画像を結像させるよう構成されている、請求項10に記載の方法。
【請求項16】
前記レーザービームのうち前記物品をカットするために用いられたエネルギーの割合を測定するモニタリングデバイスをさらに備え、前記方法はさらに、前記カットの実行中に、前記レーザービームのうち前記物品をカットするために用いられたエネルギーの割合を測定することと、測定された前記エネルギーの割合に基づいて前記コントローラを利用して前記ガス源からの前記ガスおよび前記レーザービームのうち少なくとも一方を制御することとを含む、請求項10に記載の方法。
【請求項17】
冷却剤源および冷却剤放出ノズルを有する冷却剤格納部をさらに備え、前記方法はさらに、前記冷却剤放出ノズルを利用して前記物品に対して、前記物品のカットを実行している間に、前記冷却剤を放出することを含む、請求項10に記載の方法。
【請求項18】
前記長手方向に前記物品の移動をガイドするガイドトラックおよびボールベアリングをさらに備える、請求項10に記載の方法。
【請求項19】
前記コントローラは、複数の行のスロット、穴および孔のうち少なくとも1つが前記物品に設けられるように前記レーザービームに対して相対的に前記第1のステージの移動を制御するよう構成されており、カットされた後において隣接する行は互い違いになっている、請求項11に記載の方法。
【請求項20】
前記冷却剤放出ノズルは、前記物品のカットを実行している間に前記物品の内面に前記冷却剤を注入して前記物品の表面の冷却及び前記物品の内部のスラグの除去を促進するように構成される、請求項
7に記載のレーザーカットシステム。
【請求項21】
前記冷却剤を放出することは、前記物品のカットを実行している間に前記冷却剤を前記物品の内面に注入して前記物品の表面の冷却及び前記物品の内部のスラグの除去を促進することを含む、請求項17に記載の方法。
【請求項22】
前記レーザービームによるカットの実行中に、前記物品が移動および回転する際、前記真空ボックスのチャンバと前記物品との間の真空封止を維持する調整部を更に備える、請求項1に記載のレーザーカットシステム。
【請求項23】
前記レーザーカットシステムは、前記レーザービームによるカットの実行中に、前記物品が移動および回転する際、前記真空ボックスのチャンバと前記物品との間の真空封止を維持する調整部を更に備える、請求項10に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、米国特許仮出願第62/738,853号(出願日:2018年9月28日)の利益を主張するものであり、この米国特許仮出願の開示は、参照により全体として明示的に本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
本開示は概して、物品をカットするレーザーカットシステムに関する。
【0003】
濾過は、石油やガスの処理から食品加工業に至るまで、さまざまな産業用の流体(気体または液体)から固体を分離するために通常用いられる重要な方法である。濾過を利用するほとんどの工業プロセスにおいては、濾過媒体の取り替え頻度が非常に高く、大幅なコスト増や使用済み濾過媒体の固形廃棄物の処理または回収の問題の発生につながる。
【0004】
工業用途で現在利用可能な濾過媒体は多岐にわたる。濾過管で作製される濾過部材および濾過アセンブリは、多くのさまざまな産業において液体から固体を濾過する上で有用であった。
【0005】
濾過管そのもの、そして、濾過管の細孔に欠陥がないように濾過管を作製することは、濾過プロセスの精度を左右する重要な点である。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の態様として、管等の物品をカットして濾過部材を作製するレーザーカットシステムを提供することが挙げられる。当該レーザーカットシステムは、複数のスロット、穴および孔のうち少なくとも1つをそれぞれの物品または管にカットするよう構成されている。当該システムは、レーザービームを放出するための放出システムを備える。当該放出システムは、レーザービームを供給するよう構成されているレーザー源と、少なくとも1つのミラーと、集光用対物レンズと、ガス源と、放出ノズルとを有する。放出ノズルは、物品に向けて、ガス源から供給されるガスおよびレーザー源から供給されるレーザービームを放出して、複数のスロット、穴および孔のうち少なくとも1つを物品に沿って所定のパターンでカットするよう構成されている。当該システムには、長手方向にレーザービームでカットするよう各物品を保持する第1のステージが設けられている。第1のステージは、(a)当該物品に向かってガスおよびレーザービームが放出されている間、物品を軸回転させるよう構成されていると共に、(b)レーザービームが物品に放出されると放出ノズルに対して相対的に長手に物品を移動させるよう構成されている。当該システムには、第1のステージが保持している物品に対して相対的に放出ノズルを移動させる第2のステージが設けられている。コントローラは、レーザービームおよびガス源のアクチュエーション、および、第1のステージおよび第2のステージの移動を制御する。
【0007】
別の態様によると、上述したレーザーカットシステムを利用して、管等の物品に複数のスロット、穴および孔のうち少なくとも1つをカットする方法が提供される。当該方法は、物品を第1のステージに載置することと、第2のステージを用いて物品に対して相対的に放出ノズルを移動させることと、コントローラを制御して、物品に向けて、レーザービームおよびガスを放出することで、複数のスロット、穴および孔のうち少なくとも1つを所定のパターンで物品に沿ってカットすることとを含む。レーザービームを放出している間、コントローラは、第1のステージを利用して物品が常に長手に移動し軸回転するよう物品の移動を制御する。
【0008】
本開示の上記以外の特徴および効果は、以下の詳細な説明、図面および特許請求の範囲により明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本明細書で説明する実施形態に応じた、スロット、穴および孔のうち少なくとも1つを物品または管にカットするレーザーカットシステムを示す概略図である。
【0010】
【
図2】作動中で物品をカットしている
図1のレーザーカットシステムの一部を斜めから見た様子を示す詳細図である。
【0011】
【
図3】
図1のレーザーカットシステムに設けられている空気接続を示す概略図である。
【0012】
【
図4】ある実施形態に応じた、物品または管にカットされるパターンの例を示す図である。
【0013】
【
図5】ある実施形態に応じた、物品または管にカットされるスロット、穴または細孔のレイアウト例を示す詳細図である。
【0014】
【
図6】別の実施形態に応じた、物品または管にカットするパターンの別の例を示す図である。
【
図7】別の実施形態に応じた、物品または管にカットするパターンの別の例を示す図である。
【0015】
【
図8】ある実施形態に応じた、
図1のレーザーカットシステムの構成要素を示す詳細図である。
【0016】
【
図9A】ある実施形態に応じた、フレームに設けられるレーザーカットシステムを示す等大図である。
【0017】
【
図9B】
図9Aに示されるレーザーカットシステムの構成要素を示す詳細図である。
【0018】
【
図10】ある実施形態に応じた、
図1のレーザーカットシステムで使用されるよう構成されている真空を示す概略図である。
【0019】
【
図11】実施形態に応じた、
図1のレーザーカットシステムで利用されるスラグ捕捉装置の一例を示す概略図である。
【
図12】実施形態に応じた、
図1のレーザーカットシステムで利用されるスラグ捕捉装置の一例を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本明細書で開示するレーザーカットシステム100または装置、および、その利用方法は、物品に対してカットまたはスロット形成を行うよう構成されている。以下に記載する実施形態では、レーザーカットシステム100は、管をカットして濾過管、つまり、マイクロスロット、マイクロ穴またはマイクロ細孔(本明細書ではそれぞれ単に、「スロット」「穴」および「細孔」とも呼ぶ)が設けられている管を作製するものとして説明されており、これらの管は、流体および固体等の材料を濾過すると、流体から固体を濾過するよう構成されている。。特に、本明細書で説明するシステムまたは装置は、予め作製された管の壁部にマイクロスロット/細孔を穿孔するために用いられる。しかし、開示しているレーザーカットシステム100は、複数の種類の物品をカットするために用いられるとしてよく、単に管をカットすること、および/または、このような物品にスロット、穴および孔のうち少なくとも1つをカットすることに限定されるべきではない。
【0021】
本開示は、システムそのものに加え、当該システムを利用して物品または管をカットする方法も説明している。一実施形態によると、物品または管にカットされるスロットパターンは、レーザーパルスと、同時に実行される回転方向および直線方向のステージ移動とを同期させて実行する。
【0022】
図1は、「システム100」とも呼ばれるレーザーカットシステム100を示す概略図である。システム100は、レーザービームを放出するための放出システム102を備える。放出システム102は、レーザービーム106を供給するよう構成されているレーザー源104と、少なくとも1つのミラーと、集光用対物レンズ108と、ガス源110と、放出ノズル112(またはレーザーヘッド)とを有する。
【0023】
レーザー源104は、ラック114に取り付けられているとしてよく、レーザー源104から放出ノズル112へとレーザー光を向けるための外装(armored)ファイバーケーブルを含むレーザー出力カプラ116を有する。ある実施形態において、レーザー源104は、70ワットの準連続発振(QCW)ファイバーIRレーザーである。ある実施形態において、当該ケーブルは、放出ノズル112を500ワットのファイバーIRレーザー(1070nm)源へと接続するために用いられるとしてよい。別の実施形態において、レーザー源104は、1000ワットのファイバーIRレーザーである。さらに別の実施形態において、レーザー源104は2つ以上利用するとしてもよい。カットに利用するレーザーの種類は限定されない。例えば、レーザー源104は、ファイバーレーザー、または、超高速レーザー(つまり、ピコ秒パルスレーザー)またはグリーンレーザー等の別のタイプのレーザーであってもよい。ある実施形態において、レーザー源104に用いられるレーザーの種類は、カット対象の材料の種類および/または所望のレーザーパワーに基づいて決まるとしてよい。
【0024】
システム100には、レーザービーム106の方向を決定して反射する少なくとも1つのミラーが設けられている。
図1に図示した実施形態において、システム100には2つのミラーM1およびM2が図示されており、レーザービーム106の経路に設置されている。第2のミラーを追加することでさらに、ビームアライメントが円滑になる。ミラーM1およびM2は共に、回転可能なキネマティックマウント(不図示)によって回転するよう構成されている。ミラーM1およびM2の角度は、例えば、レーザービーム106の方向を設定し直すべく、コントローラ118を用いて回転または調整するとしてよい。
図1に図示しているように、レーザービーム106は、カプラ116から第1のミラーM1に向けて方向付けられているとしてよい。ビーム106は、ミラーM1で反射され(例えば、例示に過ぎないが、同図では水平方向に反射されるように図示されている)、その後第2のミラーM2で反射され(例えば、例示に過ぎないが、同図では放出ノズル112に向けて垂直方向下向きに方向付けられているものとして図示されている)。ある実施形態において、ビームエネルギーの95%以上が第2のミラーM2で反射され放出ノズル112に向かう。ある実施形態において、レーザービームのエネルギーのうち一部は、ミラーM2を透過して任意で設けられるモニタリングデバイス132(後述)に吸収されるとしてよい。ある実施形態によると、エネルギーのうち約1%から約5%がミラーM2を透過する。別の実施形態では、レーザービームのエネルギーのうち約4%がミラーを透過してモニタリングデバイス132に入射する。
【0025】
集光用対物レンズ108は、第2のミラーM2から反射されたレーザービームを受光して、レーザービームを放出ノズル112に向ける縮小レンズであってよい。ある実施形態によると、レンズ108は30mmから300mmの範囲内であってよい。別の実施形態では、レンズ108は50mmから80mmの範囲内であるとしてよい。さらに別の実施形態では、50mm、75mmまたは85mmの対物レンズをレンズ108として利用するとしてよい。
【0026】
放出ノズル112は、レーザービーム106およびガス源110から供給される圧縮/加圧ガスを、カット対象の物品または管の表面に向けて(例えば、複数のスロット、穴および孔のうち少なくとも1つを管に沿って所定のパターンでカットするべく)、放出および/または方向付けるよう設計されているガスアシストノズルである。レーザーと共にノズル112を通じて加圧ガスを方向付けることによって、加圧ガスは、物品からカットにより分離する材料を押し出して移動させることが可能となる。例えば、金属(例えば、ステンレス鋼)の管をカットする場合、放出ノズル112から放出されるレーザー光ビームは管135の金属で吸収されるので、この金属が液化する。このように溶解した金属は、放出ノズル112から放出されるガスによって管135の内部に吹き付けられるか、または、管の周囲の外囲環境に放散されることがある。
【0027】
ある実施形態において、ガス源110から供給されるガスは浄化または精製されたものであり、乾燥している(例えばほう点が約摂氏-40度で、炭化水素が0.1ppm未満の)ゼログレードの空気で、高圧条件下で放出するべく圧縮可能である。ガス源110は、放出ノズルの投入側に供給する空気ノズル(不図示)に、例えば、ホースまたはパイプ設備によって、接続されている空気タンクであってよい。
図2は、一実施形態を図示しており、システムのうち、ガス源110(不図示)からガスを供給するべく、放出ノズル112に隣接している一部に対して方向付けられると共に接続されているガスライン111を示す図である。レーザーと共に利用するガスとしては純化空気が望ましいが、他のガスを利用するとしてもよい。例えば、別の実施形態では、ガス源110からのガスは酸素と窒素の混合物である。さらに別の実施形態では、ガスは純窒素(N2)または純酸素(O2)である。ガス源110は、ガス(空気)を放出ノズル112に供給することに加えて、ガス/空気をシステム100のその他の構成要素に供給するとしてもよい。ガスの供給および流れに関しては、
図3を参照しつつさらに詳細に後述する。
【0028】
任意で、ガス源110および/またはシステムのその他の構成要素に対応付けられるコンプレッサー(不図示)をシステムに設けるとしてよい。そのような構成要素としては、これらに限定されないが、システムに対応付けられている空気圧を利用した構成要素等が挙げられる。
【0029】
上述したように、一実施形態に応じて、放出ノズル112はカットまたはスロット形成のために物品または管の上方に配置するとしてよい。一実施形態において、放出ノズル112は、垂直方向の移動、つまり、矢印Zで示すよう上下方向に移動するよう構成されているモーションステージ120またはZステージに設置されているとしてよい。垂直モーションステージ120へ放出ノズル112を設置することで、カット対象の物品または管135の表面に対してずらして、カットヘッドの高さおよびノズルを調整することが可能となる。ある実施形態によると、物品は、放出ノズル112の下方に、水平方向に長手が延伸するよう配置される。垂直モーションステージ120は、物品または管の水平面に対して相対的に、上下方向において垂直に移動するとしてよい。ある実施形態によると、モーションステージ120は、管/物品がシステム内に載置されると、ステージを移動させて定位置に、例えば、カット対象の管の表面に対して相対的にロックするためのモータ(不図示)およびブレーキシステム(不図示)を有する。ブレーキシステムまたはロックは、一実施形態によると、モータが停止した場合またはそうでなければ起動されない場合に、Zステージ120上のペイロードが下方にずれないように構成されているとしてよい。ステージ120の移動およびロックは、コントローラ118が制御するとしてよい。別の実施形態では、手動で調整可能なZステージ120が利用されるとしてよい。
【0030】
ある実施形態によると、集光用対物レンズ108もまた、Zステージ120に対して、直接または間接的に取り付けられているとしてよい。したがって、Zステージは、集光用対物レンズ108も管135の上方で上下に移動させるとしてよい。
【0031】
物品または管は、物品ステージ122によって保持され制御されるとしてよい。物品ステージ122は、一実施形態において、リニアステージおよび回転ステージを組み合わせたものであってよい。上述したように、ある実施形態において、管135は、長手が水平方向に延在するように(例えば、X方向において、軸A-Aに沿って)放出ノズル112の下方で、保持されるとしてよい。物品ステージ122は、直線移動ステージ126またはXステージの上方に取り付けられている回転ステージ124またはUステージを含むとしてよい。このような構成とすることで、管の位置の同時2軸制御、つまり、管の回転および並進の制御が可能になる。Uステージ124は、ガスおよびレーザービームを放出ノズル112から放出している間、物品を軸回転させるように、つまり、
図1に図示しているように軸A-Aの周りをまたは軸A-Aを中心として回転させるように構成されている。その一方、Xステージ126は放出ノズル112に対して相対的に長手に物品を並進または移動させるよう構成されているとしてよい。つまり、Xステージ126は、ノズル112に対して相対的に、一方の端から他方の端へと、軸A-Aに沿ってX方向において水平方向に管を移動させるよう構成されているとしてよい。本明細書で開示する実施形態に応じて、X方向における物品または管の長手移動はさらに、把持機構(
図8、
図9Aおよび
図9Bを参照しつつ後述する)によって円滑になるとしてよい。ある実施形態では、Uステージ124は、物品または管を軸回転させると同時に、管を保持および開放するべく、(
図1および
図3に概略的に示し、
図10に図示している)一体的な空気コレット125を含む。
【0032】
システム100はさらに、3軸全てに沿って物品ステージ122のステージ124、126およびモーションステージ120に電力を供給し制御するべく、モーションアンプおよび/またはサーボドライブ(不図示)を備える。ある実施形態において、バックラッシュの問題を実質的に抑制および/または無くすべく、ステージと共にダイレクトドライブモータおよび一体的なエンコーダを、利用するとしてよい。ある実施形態において、リニアステージ126は最高速度が約2,000mm/sで、回転ステージ124は最高速度が約600rpmである。
【0033】
当該システムのステージおよび/またはフレームに対応付けられているその他の特徴、例えば、ベアリングおよびガイドレールについては後述する。
【0034】
コントローラ118は、システム100のさまざまな構成要素を制御する。例えば、レーザー源104およびガス源110から出射するレーザービームのアクチュエーション、および、物品ステージ122およびモーションステージ120の移動を制御する。コントローラ118のその他の機能(例えば、冷却剤の制御)もまた本明細書中で説明するとしてよい。コントローラは、例えば、ユーザインターフェース要素を含むプロセッサまたはパーソナルコンピュータ(PC)として用意されるとしてよい。このコンピュータは汎用コンピュータでも特定用途向けコンピュータでもよい。本明細書に記載されているさまざまな構成要素およびそれらの機能性を実装するために、コンピュータハードウェアおよびソフトウェアプラットフォームを使用するとしてよい。コンピュータは、1つまたは複数のプロセッサとして、プログラム命令を実行する中央処理装置を含んでもよい。コントローラ118は、例えば、所定のパターンのスロット、穴および孔のうち少なくとも1つが管の表面にカットされるよう管135を移動させつつ(例えば、回転させつつ、および、水平方向に移動させつつ)管135をカットするべくレーザービーム106を方向付けるよう構成されているモーション制御プログラムがプログラミングまたは格納されているとしてよい。ある実施形態において、レーザー源104から供給されるビーム106のパルスは、パルス同期出力フィーチャを利用してコントローラ118で制御される。パルス同期出力フィーチャは、モーション制御プログラムの一部であり、直線(X)軸および回転(U)軸の両方で移動量が一定量に到達するとレーザーパルスをトリガする。例えば、一実施形態では、1ミクロンの移動毎に1つのレーザーパルスがレーザー源104から出力されるとしてよい。データストレージがメモリ(RAMまたはROM)等の有形で非一時的な媒体として、通信バスと共に、コンピュータまたはコントローラに設けられてもよい。本明細書に開示されているカット方法は、コントローラ118に関連付けられた記憶媒体に格納されてもよい。有形で非一時的なストレージ型の媒体としては、ソフトウェアプログラミング用のストレージを提供し得る、本明細書に説明されるシステムの構成要素のうちコンピュータ、(複数の)プロセッサ等、または、これらに関連付けられるモジュールに対するメモリまたはその他のストレージのうち、いずれかまたは全てが挙げられる。
【0035】
ある実施形態において、チャック(不図示)およびアライメント部(不図示)が放出ノズル112の近傍に設けられるとしてよい。例えば、チャックは放出ノズルに隣接して設置されるとしてよく、スロット、穴および孔のうち少なくとも1つをレーザーカットで作製するべく管または物品が供給され回転させられると、その表面を把持し易くなるよう構成されているとしてよい。アライメント部は、放出ノズル112に隣接して設けられるとしてよく、例えば、チャックに対して物品を載置して把持するよう構成されているとしてよい。一実施形態において、アライメント部は、バネによってバネ荷重が加えられるプランジャーを含むとしてよく、当該プランジャーは、カットのため定位置に管を把持するべく管を垂直方向上向きに押し上げるよう構成されているとしてよい。別の実施形態では、レーザーカットの対象である管/材料の長さに対応するためにボールベアリングを利用する。ボールベアリングによって、ハンドリングが容易になり、生産速度が早くなる。一実施形態では、アライメント部は、管を指示するよう設けられている1または複数のボールベアリングセットを含む。一実施形態において、上側ボールベアリングセットおよび下側ボールベアリングセット170を設ける。
図8は、このような例を図示している。ある実施形態では、上側ボールセットは、固定されており、チャックまたは同様の支持面に設けられているとしてよい(
図9Aおよび
図9Bを参照しつつ後述するベアリング支持ブラケット176等)。一方、下側セットは全方位移動ボールを含む。ある実施形態では、下側セットは、管に対して相対的に移動するよう構成されているとしてよく、一実施形態では、上下に移動するべく、そして、管を容易に搬入および搬出できるよう管の表面に対して近接および離間するよう移動するべく、空気シリンダでアクチュエーションされるとしてよい。さらに、空気シリンダを利用することで、圧縮空気レギュレータまたはコンプレッサ(不図示)を利用して、調整可能な締め付け力を得るとしてよい。上側スチールボールは、コントローラ118のモーションプログラムによって、管を空気チャック125に向かって移動させるべく下側ボールがアクチュエーションされると、ハードストップ(例えば、遊びなし)を実現するとしてよい。これによって、放出ノズル112に対して管を垂直方向においてより正確に位置決めすることができる。アライメント部および/またはベアリングは、X方向および軸A-Aを中心としたU方向において、および、放出ノズル112に対して相対的に、管135の把持および誘導を円滑化するべく、フレームおよび/または物品ステージ122上に設けられるとしてよい。
【0036】
ある実施形態において、放出システム102は任意で、物品をカットすることを目的としてレーザービームをさらに調整して集光するべく、
図1に概略的に示すリレーレンズ128およびカメラ130を備えるとしてよい。レンズ128およびカメラ130は、ミラーM2の上方に配置されているとしてよく、放出ノズル112と垂直方向に位置合わせされているとしてよい。ある実施形態において、リレーレンズ128およびカメラ130は、同軸ビデオ型顕微鏡の一部であってよい。カメラ130は、管に対して相対的に、放出ノズル112の配置を決定するべく、結果的にレーザービームの配置を決定するべく、放出ノズル112を撮像するよう構成されている。ある実施形態では、カメラ130はCCDビデオカメラである。リレーレンズ128は、カメラ130のために、放出ノズルの画像を集光するよう構成されている。リレーレンズ128は、ビデオ顕微鏡法用に設計されている一のレンズまたはレンズ群であってよく、画像を反転させて顕微鏡の光学距離を長くする。
【0037】
一実施形態では、近赤外線(NIR)ニュートラルデンシティーフィルタ(不図示)を、散乱NIR光の一部を遮蔽するべく、ビデオ顕微鏡に追加するとしてよい。このようなフィルタを利用することで、スロットカット加工中の撮像が改善されるとしてよい。
【0038】
任意で、システム100は、レーザービームのうち物品または管をカットするために用いられているエネルギーの割合を測定するモニタリングデバイス132を備えるとしてよい。上述したように、ある実施形態において、レーザービームのエネルギーのうち一部は、ミラーM2を透過してモニタリングデバイス132に吸収されるとしてよい。一実施形態では、モニタリングデバイスはサーモパイル型の電力モニタまたはレーザーモニタである。サーモパイル型電力モニタは、レーザーが発生させる熱の量を測定するよう構成されているとしてもよいし、または、これに代えて、レーザーが発生させている光の量を測定するよう構成されているとしてもよい。モニタリングデバイス132は、専用のハウジング内に設けられるとしてよく、レーザービームの一部を受光するよう第2のミラーM2に対して相対的にシステム100の内部に配置または設置されるとしてよい。
【0039】
冷却剤源134(
図1に概略的に示す)および冷却剤放出ノズル136(
図1および
図10に概略的に図示する)を含む冷却剤格納ユニットもまた、一実施形態に応じて、レーザーカットシステム100の一部として任意で設けられるとしてよい。冷却剤源134から供給される冷却剤は、レーザーカットの対象である管(または物品)の一部または表面または材料を冷却するために用いられるとしてよい。冷却剤はさらに、溶解した金属が管または物品の外側に再度堆積しないよう抑制する。例えば、一実施形態では、冷却剤放出ノズル136は、カット中またはスロット作製中に管の表面に冷却剤を吐出または出力するよう配置されるとしてよい(例えば、
図1の概略図を参照のこと)。冷却剤放出ノズル136は、例えば、放出ノズル112に隣接して配置されるとしてよい。ある実施形態では、冷却剤放出ノズル136の吐出口は、カット対象の物品または管の表面に対して相対的に、例えば、冷却剤が表面に供給されるように、位置決めされるとしてよい。
【0040】
別の実施形態では、冷却剤放出ノズル136の吐出口は任意で、
図10に図示しているように、真空または空気ノズルに対して相対的に、位置決めされるとしてよい。冷却剤は、空気と組み合わせることで、例えば、カット中またはスロット作製中に、管の内面へと注入される混合物を形成するとしてよい。これによって、カット中の管の表面を冷却し易くなると同時に、加工中/カット中に管の内部に蓄積されたスラグ材料を移動または除去することが容易になるとしてよい。
【0041】
ある実施形態では、冷却剤放出ノズル134は、吐出口から冷却剤を噴射するよう構成されている。別の実施形態では、冷却剤放出ノズル134は、冷却剤を流出させるよう構成されている。一実施形態では、冷却剤は水である。空気対水の比率、または、空気対冷却剤の比率は、さまざまとしてよい。例えば、
図10に図示しているように、水を0%から100%の割合で空気と組み合わせて、管内に注入するとしてよい。
【0042】
冷却剤(例えば、水)は、冷却剤格納エリアに集めて格納するとしてよい。さらに、カット中に管から除去されたスラグ材料は、このエリアに、または、真空源178(後述する)を利用して、集められるとしてよい。一実施形態では、冷却剤は、閉ループ構成で、再利用するべく濾過して再循環させるとしてよい。別の実施形態では、冷却剤は開ループ構成で提供される。空気/ガスおよび冷却剤/水の処理フローによって、物品に対して実行されるレーザーカットをより均質化することができる。このため、ガスの流れをモニタリングするとしてよい。
【0043】
図3は、ガス源110への接続を図示している空気力学概略図であり、放出ノズル112(本明細書ではガスアシストノズルと呼ぶ)、冷却剤放出ノズル136および回転ステージ124の空気コレット125、ならびに、これらに対応付けられている多くのモニタリングデバイスまたはセンシングデバイスへのガスの伝送を含む。ガスは、ガス源110およびコンプレッサから所望の圧力で供給される(例えば、150psig)圧縮ガスまたは加圧ガスであってよく、例えば、高純度空気であってよい。ある実施形態では、nDriveアンプを、放出ノズル112、ノズル136および空気コレット125への圧縮空気の伝送を制御しているソレノイドバルブ146、152に接続しているとしてよい。
図3の概略図に示すように、ガスをガス源110からコンプレッサ(不図示)および/またはレギュレータ(不図示)へと伝送するとしてよく、そして、空気コレット125に接続されているソレノイドバルブ146に伝送するとしてよい。1または複数のフィルタレギュレータ148が、コレット125に供給されるガスの量を制御するべく、バルブ146とコレット125との間に設けられているとしてよい。ある実施形態では、アシストガス準備システム(不図示)は、ウォーターセパレータ―、複数の空気フィルタおよび脱水膜を有する。アシストガス準備システムは、放出ノズル112においてアシストガスに必要な清潔で乾燥した空気を生成するために用いられるとしてよい。ソレノイドバルブ152も、ノズル112および136へのガスの流入を制御するべく利用されるとしてよい。電源からのデジタル出力150および154はそれぞれ、ソレノイドバルブ146および152に接続されて、ソレノイドを駆動する。圧力スイッチ(不図示)が、圧力の制御および圧力低下の際のレーザーの保護を円滑化するべく、ソレノイド146、152の一方または両方に対して設けられ接続されているとしてよい。そして、空気/ガスは放出ノズル112に伝送されるとしてよい。ある実施形態では、放出ノズル112は、0-60標準立方フィート/時(scfh)の流量計158と、それに対応付けられれている0-100ポンド/平方インチ(psig)圧力ゲージ160とを含む。「psig」の末尾の「g」は、絶対圧力に対して、「ゲージ圧力」、または、大気圧を上回る圧力を表している。冷却剤放出ノズル136の吐出口からの噴射または出力は、ガス源110からの圧縮空気と、冷却剤源134からの冷却剤(水)とを混合させることで得られるとしてよい。したがって、圧縮空気が約150psigという圧力で供給される場合、0-30scfh流量計156を利用してノズル136への流入を測定するとしてよい。ある実施形態では、圧縮ガス/空気の流入をさらに絞り、測定するべく、ノズル112、136に対応付けられている流量計156、158と組み合わせて、流量絞り部162を利用するとしてよい。冷却剤放出ノズル136への冷却剤の流入の測定は、静脈内点滴筒(不図示)で実現するとしてもよい。
【0044】
図1のシステム100の動作の概要は以下の通りである。管または物品を物品ステージ122の内部または上方に載置する。必要に応じて、放出ノズル112は、モーションステージ120を利用して管表面に対して相対的に移動させて、ステージ120をロックする。レーザーは、コントローラ118のモーションプログラム内でトリガされる。コントローラ118はさらに、レーザーと共に、ガス源110からノズル112を介してガスを供給することにより、管に沿って所定のパターンでスロット、穴および孔のうち少なくとも1つをカットにより作製する。レーザービームが放出されている間、コントローラ118は、物品ステージ122を利用して物品が常に長手軸(A-A)を中心に軸回転し、長手軸(A-A)に沿って直線状または長手に移動するよう、つまり、U方向およびX方向に移動するよう、物品の移動を制御する。
【0045】
ある実施形態によると、物品または管に所定のパターンでスロットをカットするための方法は、らせん動きパターンまたはらせん動き方式でスロットをカットすることを含む。
図4は、ある実施形態に応じた、物品または管にカットされるスロットパターン500および502の例を示す図である。以下で説明するような一実施形態によると、スロットは管の軸方向に対して90度の角度(つまり、X方向における軸A-Aに対して90度)でカットされる。上述したように、スロットは、レーザーがパルス状に供給されて管または物品の表面に、そして、表面を貫通するようにスロット、穴、細孔をカットする間、物品または管を(らせん状に)回転させることによって常に動かすことで、そして、放出源102/レーザーに対して相対的に(例えば、一方向に)直線状または長手に物品または管を移動させることで、管の円周に沿って1つの連続したらせんとしてカットされるとしてよい。長手方向またはX方向の管の移動は、軸A-Aに沿った全体的に一方向での移動である。例えば、
図9Aに図示している実施形態例を参照すると、管135の長手方向の移動は、放出源102と相対的に見ると左から右である。同様に、同時に行われる管の軸方向または回転方向の移動、つまり、U方向の移動も一方向の移動であってよい。つまり、軸A-Aを中心とした時計回りまたは半時計周りの移動であってよい。回転方向および長手方向の移動がどの方向かに関わらず、管は、(コントローラで制御されて)スロット、穴および孔のうち少なくとも1つを予め決まったまたは定められたパターンでカットするようレーザーがパルス状に供給され方向付けられている間、これらの方向に同時且つ連続的に移動する。これによって、カット加工用に上述したような「らせん移動」が実現される。
【0046】
図4のスロットパターン500および502は、上述のらせん移動方式を利用して管または物品にカットしたパターンを2次元で表したものである。スロットパターン500は、スロットが軸方向に平行な複数の行として設けられている例を図示しており、行同士の間には長手方向に間隔が設けられている。パターン502において、スロットは、結果として得られるパターンで隣接する複数の行およびスロットが互い違いになっているよう、物品にカットされるとしてよい。
図5は、パターン502におけるこのような行の一部を詳細に示す図である。カットされたスロットの行504、506および508は、長手方向の長さがLであるスロットを含む。長手方向の間隔Sが、同一行の複数のスロット間に設けられている。隣接する行の間には軸方向に距離Dが画定されており、例えば、行506は行504から距離Dだけ離間しており、行508は行506から距離Dだけ離間しており、以下同様である。これに加えて、隣接する行は、軸方向に互い違いになっており、つまり、行506は行504に対してずれており、行508は行506に対してずれている。一実施形態では、行504および508のように一つおきの行は同様であるとしてよい。隣接する行をずらす量はさまざまであるとしてよい。一実施形態では、第2の行(例えば、行506)は、軸方向に約50%、第1の行(例えば、行504)からずれている。別の実施形態では、隣接する行は約25%ずれているとしてよい。パターン502で図示しているように、スロット群同士の間またはスロットセット同士の間には、補強領域を設けるとしてもよい。補強領域は、スロットセットの間に空間を形成するように長手に管を移動させることで、形成される。
【0047】
図6および
図7は、物品または管にスロット、穴および孔のうち少なくとも1つをカットする別の方法を示す。
図6に図示している一実施形態において、当該方法は一の長さのスロットをカットした後、管にスロットをカットするべく次の径方向位置まで(U方向に)管を回転させて、スロットをカットし、これを繰り返す移動方式を含む。この方式では一般的に、回転させる度に、軸A-Aに沿って管を並進移動(つまり、前後)させることが必要になる。つまり、スロットがカットされ、管を長手に(X方向に)移動させた後、回転させる(または逆でもよい、つまり、回転させた後に長手に移動させる)。そして、次のスロットをカットした後、長手に移動させて回転させる。以下同様である。
【0048】
別の実施形態では、当該方法は、回転させる前に、1行につき複数のスロットをカットしている間、長手に一回移動させることを含む移動方式を含む。例えば、
図7に図示しているように、管を、回転させることなく、長手方向に(X方向に)移動させるとしてよい。その結果、放出システム102のレーザーが第1の行の複数のスロットをカットする。この後、第1の行が完成した後、管を次の径方向位置まで(U方向に)回転させて、回転後のこの位置に保持するとしてよい。この後、第2の行の複数のスロットを、長手に管を移動させて管にカットするとしてよく、その後再度回転させる。このようなプロセスを全ての行についてカットするまで繰り返す。
【0049】
一実施形態では、管の軸A-Aに対して0度の角度で長さLが延在するようスロットをカットするとしてよい。
図5に図示しているような別の実施形態では、スロットは、カット方式に関係なく、管の軸A-Aに対して相対的に90度でカットするとしてよい。
図6および
図7に図示しているような別の実施形態では、移動方式またはカット方式が何であろうと、スロットは管の軸A-Aから45度の角度でカットされるとしてよい。つまり、軸A-Aに対して45度の角度で長さを位置決めすることになる。言うまでもなく、このような角度および位置は、例示に過ぎず、これに限定されることを意図したものではない。スロットの長さLの配置および/またはカットの際の角度については上記以外、例えば、30度、60度、75度等も実現可能であると理解されたい。
【0050】
ステージ、レーザーおよび管の相対的な移動に関しては、
図8から
図10を参照しつつ記載する内容からさらに理解されたい。
【0051】
ある実施形態では、システム100は、濾過管を作製するべく、管の表面に、そして、管の表面を貫通するようにスロット、穴および孔のうち少なくとも1つをカットするよう構成されているとしてよい。システム10が加工およびカットする管の種類および寸法は限定されない。例えば、カット対象の管の内径(ID)および/または外形(OD)は多岐にわたるとしてよい。ある実施形態では、管の直径(OD)は9.5mmであるとしてよい。別の実施形態では、管の直径(OD)は25.4mmであるとしてよい。さらに、システム100がカットする管の壁の厚みは、限定する必要はない。システム100は、例えば、壁の厚みが0.25mm、0.3mm、および/または、0.4mmの管に対してカットまたはスロット作製を行うとしてよい。スロット作製対象の管の長さは、例えば、1.1メートル、1.64メートル(1640mm)等、さまざまであるとしてよい。
【0052】
管にカットするスロット、穴および孔のうち少なくとも1つの寸法(例えば、幅および長さ)は、限定することを意図していない。ある実施形態では、システム100は、約10マイクロメートルから約50マイクロメートルの範囲内の幅を持つスロット、穴および孔のうち少なくとも1つをカットするために用いられるとしてよい。別の実施形態では、スロット、穴および孔のうち少なくとも1つの幅は、約30マイクロメートルから約50マイクロメートルの範囲内であるとしてよい。このような範囲は一例に過ぎず、カットの寸法を決して限定するものではない。
【0053】
管の全体的な空隙率は、ある実施形態によると、レーザーカットを実行した後では約15%から約20%の間であるとしてよい。
【0054】
ある実施形態では、管は、完全焼なましの硬度を持つステンレススチール(SS)を材料としている。一実施形態では、管は321グレードSSを材料とする。別の実施形態では、管は304グレードSSを材料とする。
【0055】
ある実施形態では、本機械は、目標空隙率が15%のマイクロスロッティングされた長さが1-1.64メートルの管を1時間以内に製造するように設計されていてもよい。一実施形態では、システム100は、スロット、穴および/または孔の空隙率の範囲が約1%以上約50%以下、スロット/穴/孔の長さが約0.1mm以上約10mm以下、スロット/穴/孔の幅が約1μm以上約1000μm以下の範囲になるよう管をカットするように構成されている。別の実施形態では、システム100がカットする管の空隙率の範囲は約5%~約25%、スロットの長さは約0.5mm~約3.0mm、スロットの幅は約10μm~約100μmであるとしてよい。管は、幅が約30μm~約50μm、長さが約1mmのマイクロスロット、穴および孔のうち少なくとも1つを有するとしてよい。本システムでカットおよび加工される管の長さはさまざまであるとしてよい。
【0056】
スロットの長さ、角度および位置は、予め算出されてサーボ-エンコーダカウントに変換されるとしてよい。これらのエンコーダカウントは、レーザー照射のためのアレイマスクを構築するために用いられる。マスクアレイは、動いている間、レーザーがエンコーダ除外領域内にある場合にはレーザー照射を停止するために用いられる。逆に、レーザーがこれらの領域にない場合には、照射/放出が可能となる。レーザーは、照射領域内である場合、所望のカット処理に応じて決まるが、変調波またはCWとなる。照射シーケンスの開始時点および終了時点において均質的にカットを行えるよう、加速および減速のために照射禁止領域を長く残しておく。
【0057】
システム100の構成要素の説明に戻ると、
図8は、一実施形態における、スタビライザ管、カッティングノズルカバー、または、囲い板(シュラウド)164が任意で、例えば、スロット作製中またはカット中に放出されるスラグと水分または冷却剤とを収集するべく、そして、他のハードウェアを被覆して破片が当たらないようにするべく、デリバリーノズル112の先端部の周囲の領域に設けられていることを示している。囲い板164は、スロット作製/カットプロセスを実行している間に発生する破片を全て、または、大半を遮蔽し、実質的に破片がガイドボールベアリング、ステージ124および126、ならびに、管を保持している周囲の構成要素に到達しないようにして、これらが損傷しないよう保護するとしてよい。
図8は、放出システム102の一部から垂直方向下向きに延在する円筒形状の囲い板164の一実施形態を示す。この円筒は、放出ノズル112の周囲に配置されるとしてよい。さらに、囲い板164には、カット対象の物品または管135の形状を収容できるよう構成されている1または複数の切り欠き部166があるとしてよい。
図8に図示した実施形態例によると、囲い板164の円筒には切り欠き部166が2つ設けられていて、管135の長手方向の長さまたは大きさがその中に収まる。ある実施形態では、各切り欠き部166は、管135の表面に隣接して、または、当該表面上に載置するべく、管135の湾曲した外面が収まるように、湾曲してサイズが決まっているとしてよい。
【0058】
冷却剤および/またはスラグ材料が集まると、必要に応じて、囲い板164からおよび/または管135の内部から定期的に除去するとしてよい。これに代えて、囲い板164は省略するとしてもよい。
【0059】
ある実施形態に応じて、管135は、1または複数の空気ベアリング(不図示)によって、X方向に、そして、A-A軸を中心としてU方向に誘導されるとしてよい。1または複数の空気ベアリングは、回転ステージ124と並んでいるとしてよく、放出ノズル112の両側に配置されているとしてよい。別の実施形態では、上述したように、そして、
図8に図示しているように、1または複数のボールベアリングセット170(例えば、上側セットおよび下側セット)を含むアライメント部が、管を支持するよう放出ノズル112に隣接して設けられるとしてよい。同様に上述しているが、一実施形態において、ブッシングおよび/またはボールベアリングは、管がシステム100内に配置される場合に、そして、レーザー源104によってカットされる際、管の長さを支持するよう設けられているとしてよい。例えば、
図8、
図9Aおよび
図9Bに図示している1または複数のボールベアリングセットは、管135の保持およびX方向およびA-A軸を中心としたU方向の誘導が容易になるよう、フレームおよび/または物品ステージ122に設けられているとしてよい。より具体的には、
図9Aに図示した実施形態では、レーザーカットシステム100はフレーム174に取付られているテーブル面172上に配置されているとしてよい。テーブル面172の水平面から垂直に上方に延びる多数の管ベアリング支持ブラケット176が、テーブル面172に沿って間隔を置いて配置されているとしてよい。ベアリング支持ブラケット176はそれぞれ、管の表面を支持すると共にレーザーヘッドの近傍で管をガイドするために角度を付けて設けられた一組の全方向移送ボール170を含んでもよい。一実施形態では、ブラケット176の少なくともいくつかは、互いに対して斜めに配置されたボールを有する。別の実施形態では、ボール170は、管の表面を下から支えるために実質的に垂直に配置されてもよい。一例を挙げると、物品ステージ122を超えて管が延在する場合に、投入ブラケットおよび送出ブラケット176が管を支持するべく設けられているとしてよい。
【0060】
ベアリング支持ブラケット176は、レーザーカットシステム100が管135の表面にスロット、穴および細孔をカットするためのパルスレートで提供される際に、長手方向(X方向)における、そして、軸A-Aを中心とした回転方向(U方向)における管の移動をガイドするためのガイドトラックとして機能する。これらのガイドトラック/ブラケット176はさらに、管受け渡し領域(つまり、ステージに隣接した領域であり、レーザー源の放出ノズルの下方/向こう側の領域)を超えて管が延在すると、管の重量および長さを支持する。管が湾曲すると放出ノズル112に対する管の位置に影響が及ぶ可能性があるので、管表面がレーザービームの焦点からずれることになり、このようなガイドトラックを設けることでさらに、エラーを少なくすることを容易にして、カットおよびスロット作製の品質を改善するとしてよい。
【0061】
一実施形態によると、移送ボール170はシーリングされることによりスラグによる損傷が発生しにくくなるとしてもよい。
【0062】
図8はさらに、レーザーシステム100で利用されるロボット状の機械的把持機構182を図示する。把持機構182は、コントローラ118で制御するとしてよく、管135を保持または把持するよう、管135を移動させるよう、および/または、場合によっては、管135の回転中にガイドとして機能するよう構成されているとしてよい。把持機構182は、2つのフィンガー部184、例えば、上側フィンガー部および下側フィンガー部を持つとしてよい。各フィンガー部は、管(または物品)を収納するための切り欠き部186が設けられている。例えば、切り欠き部186は、管135の外面が収まるよう円形であるとしてもよいし、または、丸みを帯びているとしてよい。当業者であれば通常理解しているであろうが、このような把持機構は、フィンガー部184が、開位置(
図8および
図9Bに図示されている)と閉位置(フィンガー部184が互いに向かって近接するよう移動して物品またはこの場合は管を把持する位置)との間で互いに相対的に移動するよう構成されている。したがって、このような詳細については本明細書では記載を省略する。
図9Aおよび
図9Bに図示しているように、把持機構182はブラケット188を用いてテーブル172に取り付けるとしてよい。
【0063】
把持機構182は、移動方式を利用してレーザー源104でカットする際に、管135を直線状に移動および回転させるべく、回転ステージ124の空気コレット125(そして、任意で、リニアステージ126)と協働するよう構成されている。ある実施形態において、把持機構182は、レーザー源104を用いたカット/パルス供給の実行中、空気コレット125/回転ステージ124が軸A-Aを中心としてU方向に管を回転させている間にX方向に管を長手に移動させるよう構成されている。
【0064】
放出ノズル112がガスを吹き付けることで管135からカットおよび/または溶解した材料を、例えば、管135自体の内壁へと移動させるよう構成されているので、ある程度のスラグが内部に蓄積するとしてよい。このようなスラグが管壁の内側に蓄積されないようにするため、一実施形態において、管135の端部へと真空力を加えることを目的として真空源178またはブロワを設けるとしてよい。例えば、
図10に図示しているように、一実施形態において、真空源178はシステムの送出側に設けられるとしてよい。別の実施形態では、
図9Aに図示しているように、真空源178はシステムの投入側(つまり、ステージと同じ側)に設けられている。真空を印加することで、レーザーで管をカットする際に、スラグおよび/または冷却剤および/または空気冷却剤混合物をカットゾーンおよび管から除去し易くなるとしてよい。真空は自動洗浄フィルタを含むとしてよく、これによって管を加工する毎にフィルタを変更することなくスロット作製機械を継続的に作動させることが可能となる。自動洗浄フィルタはさらに、発生するスラグの量による詰まりに関する問題を解決することにもつながるとしてよい。
【0065】
別の実施形態では、加圧送風口および真空吸着口をシステム100に設けるとしてよい。例えば、
図10に図示しているように、圧縮空気または加圧空気が第1の端部において送風口を介して管に吸入されるとしてよく、源178から真空吸着口を介した真空力が反対側の端部に供給されるとしてよい。
【0066】
一実施形態において、スラグ搬送プロセスの一環として浸漬セパレータを利用するとしてよい。このような浸漬セパレータは、液体(例えば、水)を利用して(空気、水またはこれらの混合物の)流れから、ブロワまたは真空に到達する前に、スラグを分離して除去するとしてよい。
【0067】
図9Aに戻ると、一実施形態に応じた、カットゾーンからスラグを除去することを目的としてシステムの投入側において真空ボックス179に接続されている真空源178を利用した例を図示している。より具体的に説明すると、この例では、真空ボックス179が放出システム102およびテーブル面172の左側に設けられている。真空ボックス179は、接続部192およびホース190を利用して真空源178に接続されている。このように左側に真空を配置することで、裏側または未カット側を通じて管からスラグを回収することができるようになる。この真空ボックス178を設けることでさらに、カット処理を実行中に管の全長にわたって真空を維持し易くなる。このため、カット時のスラグ除去がより効果的に行えるようになる。スラグはカットノズル112から搬送され、管135(の内部)を通って、真空ボックス179を介して、ホース190を通って真空178へと到達する。
【0068】
真空ボックス179は、真空封止デバイスであって、真空封止内部チャンバ、および、出口と回転ステージ124/空気コレット125との間に設けられる調整部180を含む。調整部180は、例えば、管135よりも大きくその周囲を取り囲む管の形状で設けられているとしてよい。調整部180は、カット中に管135が移動および回転する際、ボックスのチャンバと管135との間の真空封止を維持する。調整部180は、例えば、管135と共に真空ボックス179のチャンバを通り抜けるように移動するよう構成されているとしてよい。例えば、カット処理に向けて管135を用意する際、管135の長さの大半は調整部180内に挿入されて、真空ボックス179のチャンバ内へと挿入されるとしてよい。設定されると(例えば、モーションステージ120の設定および放出システム102の設定およびロック)、真空源178がアクティブ化されて真空封止および真空を管135内部に提供するとしてよい。物品ステージ122がX方向において長手に移動すると、調整部180および管135も、長手に移動してチャンバ外に出るとしてよい。調整部180の移動は、調整部180の長さによって決まるとしてよく、管135はチャンバおよび調整部の外に向かってX方向に移動し続けるとしてよい。真空ボックス179およびその内部チャンバは、決まった長さがあるとしてよく(例えば、1メートル超)、レーザー源104の放出ノズル112の後方に延在しており、例えば、スロット作製対象の管を全長にわたって、そうでなくとも大半を収容することが可能になる。一の実施形態において、ボックス179の長さは管135の長さの大きさの約2倍である。
【0069】
真空ボックス179には1または複数のセンサが対応付けられているとしてよい。例えば、一実施形態において、真空ボックス179は、圧力センサ(不図示)が対応付けられており、フィードバックを提供するので、操作者および/またはシステム/コントローラが真空ボックス内の圧力を把握できる。
【0070】
ボックス179に接続されているホース190の接続サイズまたは直径は、管を流れる空気流の量について望ましい値に基づいて決定されてもよく、限定されることを意図してはいない。真空178と真空ボックス179の間に設けられるホースの接続サイズまたは直径は、一実施形態において、約30mm以上約80mm以下の間の範囲であってもよい。
【0071】
レーザーシステム100と共に上記以外のデバイスを利用するとしてよい。例えば、一実施形態において、例えば、ブロワまたは真空178と共に利用される、レーザーシステム100にスラグ捕捉デバイスを設けるとしてよい。
図11および
図12は、実施形態に応じた、
図1のレーザーカットシステムと共に利用されるスラグ捕捉デバイスの一例を示す図である。
図11は、レーザーカットされている管(135)の内側に物理的ディフレクタが追加されている様子を示す図である。追加されたディフレクタは、スラグを物理的に遮蔽または逸らすとしてよく、スラグ再堆積の問題を軽減するとしてよい。場合によっては、ディフレクタは、スラグ流が管内部に入ると、スラグ流の方向を変更するか、または、低速化するとしてよい。
図11において、ディフレクタは45度での角度で設けられている。この結果、ディフレクタに衝突するスラグは約90度方向を変えて管の内部を通り抜けて外部へ向かう空気流と方向がそろう。このため、スラグもまた真空源178によって管から引き出されて搬出される。
図12は、スラグ流を捕捉する別の構成(方向変換以外の構成)を図示している。この構成では、管の形状を持つ内部スラグ捕捉部が、レーザーカット対象の管(135)内に挿入されている。捕捉部は、レーザーによるカットで発生するスラグを捕捉するための捕捉エリアを持つ。空気ノズル(ブロワまたは真空178)は、内部スラグ捕捉部の内側に流れを形成するとしてよく、スラグ捕捉用の管において下方へとスラグを押し出して両管の内部を通って外部へ流れる空気流/気流へと送出する。
【0072】
別の実施形態では、カットされた金属を集めるために管135に隣接させて、または、管135内に挿入した、スパーク捕捉デバイスが設けられるとしてよい。スパーク捕捉デバイスに集めたスラグ堆積物はモニタリングして、スラグがカットプロセスの邪魔になる前に定期的に廃棄するとしてよい。
【0073】
ある実施形態では、レーザーカットシステム100は、レーザーカットシステム100を含む多数のサブシステムの間を、処理のために管を移動させるよう構成されているロボットアームを含む製造システムの一部であるとしてよい。一実施形態では、各サブシステムは、スロット作製サブシステム/レーザーカットシステム100について生産を滞らせることがないように、約1時間以内にその機能を完了するように設計されている。ある実施形態では、それぞれの管を事前に検査する。システム100でレーザーカットを行う前に未加工で未カットの管を検査する。レーザーカットシステム100は、検査システムからレーザーカットシステム100へと管を移動させるロボットアームを介して、前検査に合格した管を受け取るように構成されている。
【0074】
一実施形態によれば、製造システムは、同時係属米国特許出願番号第62/738,919号(発明の名称:「PRODUCTION SYSTEM FOR FORMING FILTRATION TUBES INCLUDING SUBSYSTEMS AND METHOD OF USING SAME(複数のサブシステムを含む濾過管を作成する製造システムおよびその利用方法)」)(代理人整理番号036635-0458822)明細書に記載されているようなシステムである。当該米国出願は、出願日が同日で、本明細書と同じ譲受人に譲渡されている。当該米国特許出願の内容は全て参照により組み込まれる。
【0075】
上述したように、本明細書で開示しているシステム100によってカットまたはスロット作製を行う対象の物品または管は、濾過管を作製するために利用するとしてよい。このような濾過管は、濾過バンドルおよび/または濾過アセンブリの一部として利用されるとしてよく、例えば、任意の多数の産業において濾過に関する特定の要求を満たすべくパックまたはその他の構成で組み合わせるかまたは構成するとしてよい。一般的に、このようなアセンブリは、一の方向に流れる液体から固体を濾過するために用いられるとしてよく、必要な場合には、逆方向に逆流させて穴にはまった粒子または破片を除去して濾過媒体を洗浄するとしてよい。
【0076】
上記の例示的な実施形態において本開示の原理が明確にされたが、本開示の実施に使用される構造、配置、比率、要素、材料および構成要素に対して様々な変形を加えることが可能であることは当業者であれば理解できる。例えば、当業者であれば、本明細書で明示的に言及していなくても、コントローラ118はレーザーシステム100の任意の多数の構成要素(例えば、レーザーをパルス化して供給、空気コレット125、ステージ120、122、レンズ108、128、ガス/空気/水の供給源等)を制御するために利用され得ることに想到するであろう。
【0077】
従って、そのような変形例であっても本開示の特徴は完全且つ有効に達成されることが証明されるであろう。しかし、上記に示した望ましい具体的な実施形態は、本開示の機能的及び構造的な原理を例示することを目的として説明および図示されたものであり、本開示の原理の範囲内において変更可能であるものと認められたい。したがって、本開示は、添付の特許請求の範囲の意図および範囲に含まれる全ての変形例を包含する。