(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-12
(45)【発行日】2023-07-21
(54)【発明の名称】揮発性有機化合物の回収デバイス、方法、及びシステム
(51)【国際特許分類】
G01N 1/02 20060101AFI20230713BHJP
A61B 5/097 20060101ALI20230713BHJP
【FI】
G01N1/02 W
A61B5/097
(21)【出願番号】P 2021534330
(86)(22)【出願日】2019-12-13
(86)【国際出願番号】 US2019066143
(87)【国際公開番号】W WO2020123897
(87)【国際公開日】2020-06-18
【審査請求日】2021-08-16
(32)【優先日】2018-12-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2019-05-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】521259161
【氏名又は名称】ダイアグノース アーリー インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100098475
【氏名又は名称】倉澤 伊知郎
(74)【代理人】
【識別番号】100130937
【氏名又は名称】山本 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100144451
【氏名又は名称】鈴木 博子
(74)【代理人】
【識別番号】100168871
【氏名又は名称】岩上 健
(72)【発明者】
【氏名】ウィーラー クリス
(72)【発明者】
【氏名】トッド クリス
(72)【発明者】
【氏名】シュースター ジェフリー エイ
(72)【発明者】
【氏名】ラーソン カール-マグナス
【審査官】福田 裕司
(56)【参考文献】
【文献】特表2008-530577(JP,A)
【文献】特表平08-510948(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0191910(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2013/0125564(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2009/0042309(US,A1)
【文献】米国特許第05465728(US,A)
【文献】米国特許第06594016(US,B1)
【文献】特開平11-258225(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0335267(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 1/02
A61B 5/097
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
システムであって、
被験者の一対の唇に密着して、前記被験者の前記一対の唇から呼気を受け取るように構成されたマウスピースと、
前記マウスピースから前記呼気を受け取るように構成された呼吸チャンバと、
前記呼吸チャンバから前記呼気を受け取り、前記呼気からVOCを捕捉するように構成された呼吸カートリッジと、を備え、
前記呼吸カートリッジは、
前記VOCを吸収するための壁を備えた単一流路と、
前記呼吸カートリッジの第1端上の第1の弁と、
前記呼吸カートリッジの第2端上の第2の弁と、を有し、
前記第1の弁及び前記第2の弁は、前記第1の弁及び前記第2の弁を互いに向かって移動させることによって作動され、
さらに
、
低温液体を収容し、前記低温液体への熱流を制限するように構成された低温維持装
置を備え、
前記呼吸カートリッジは、少なくとも部分的に、前記低温維持装置の前記低温液体の中に沈められる、
システム。
【請求項2】
前記
低温液体は、液体窒素
である、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記呼吸チャンバと前記呼吸カートリッジとの間に配置された弁を備え、前記弁は、前記被験者が息を吐き出していない場合に
前記呼吸チャンバと前記呼吸カートリッジ
とを接続するように構成されている、請求項2に記載のシステム。
【請求項4】
前記呼吸カートリッジの少なくとも50%は、
前記低温液体の中に沈められる、請求項3に記載のシステム。
【請求項5】
前記呼吸カートリッジ内のゲージ圧及び前記呼吸カートリッジを通る前記呼気の流量の同時の制御を可能にする2又は3以上の要素をさらに備え、前記2又は3以上の要素は、
流量制限と、
圧力調整器と、
流量制御装置と、
ニードル弁と
、
から選択される、請求項1に記載のシステム。
【請求項6】
前記呼吸カートリッジは流路を含み、前記VOCの分子量mを仮定すると、前記流路の合計長L及び室温での前記呼吸カートリッジを通る前記呼気の流量Qは、
L/(m
0.5Q)>C
の関係を満たし、Lはcmであり、mは原子質量単位であり、Qはリットル/分であり、Cは1.5以上の数である、請求項1に記載のシステム。
【請求項7】
C=6である、請求項6に記載のシステム。
【請求項8】
C=8である、請求項6に記載のシステム。
【請求項9】
C=13である、請求項6に記載のシステム。
【請求項10】
前記呼吸チャンバと前記呼吸カートリッジとの間に直列に接続され、前記呼気から水を除去するように構成された水カートリッジを備え、
前記水カートリッジ
は、
流路長L’を有し、前記
水カートリッジは温度Tで作動し、T、L’、及びQは、
L
’*T
1.5/(Q*10000)>D
の関係を満たし、Qはリットル/分であり、Tはケルビンであり、L
’はcmであり、Dは5以上の数である、請求項6に記載のシステム。
【請求項11】
D=11である、請求項10に記載のシステム。
【請求項12】
D=16である、請求項10に記載のシステム。
【請求項13】
D=21である、請求項10に記載のシステム。
【請求項14】
前記被験者が前記マウスピース及び前記呼吸チャンバに呼気を吐き出す場合、前記マウスピース及び前記呼吸チャンバは、前記呼吸カートリッジ及び
前記低温維持装置から
取り外されており、その後、
前記マウスピース及び前記呼吸チャンバは、前記呼吸カートリッジ及び
前記低温維持装置に取り付けられる、請求項2に記載のシステム。
【請求項15】
前記呼吸カートリッ
ジは、VOCを吸収するための壁を備えた
、前記単一流路を含む複数の流路
を有する、請求項1に記載のシステム。
【請求項16】
前記第1の弁及び前記第2の弁を作動させると、前記第1の弁及び前記第2の弁が開く、請求項1に記載のシステム。
【請求項17】
前記第1の弁及び前記第2の弁を開くことは、前記呼吸カートリッジの前記
単一流路を通る流
れ経路を開くことを含む、請求項16に記載のシステム。
【請求項18】
前記第1の弁及び前記第2の弁を閉じることは、前記呼吸カートリッジの前記
単一流路を通る流
れ経路を閉じることを含む、請求項17に記載のシステム。
【請求項19】
前記第1の弁及び前記第2の弁を閉じることは、前記呼吸カートリッジ内のガス又は流体又は固体を密封することを含む、請求項18に記載のシステム。
【請求項20】
前記第1の弁が、閉鎖状態において前記第1の弁を通るガス又は流体又は固体の流れを遮断するように構成された第1のシールを備え、前記第2の弁は、閉鎖状態において前記第2の弁を通るガス又は流体又は固体の流れを遮断するように構成された第2のシールを備える、請求項1に記載のシステム。
【請求項21】
前記呼吸カートリッジは、さらに、
前記第1の弁を備える第1の呼吸カートリッジエンドキャップと、
前記第2の弁を備える第2の呼吸カートリッジエンドキャップと、
を有する、
請求項1に記載のシステム。
【請求項22】
前記第1の弁及び前記第2の弁は、前記第1の呼吸カートリッジエンドキャップ及び前記第2の呼吸カートリッジエンドキャップに力を加えて前記第1の呼吸カートリッジエンドキャップ及び前記第2の呼吸カートリッジエンドキャップを前記呼吸カートリッジの長手軸線に沿って移動させることによって作動する、請求項21に記載のシステム。
【請求項23】
前記第1の弁は、前記呼吸カートリッジの前記長手軸線に沿った前記第1の呼吸カートリッジエンドキャップの第1の位置において閉鎖状態にあり、前記第1の弁は、前記呼吸カートリッジの前記長手軸線に沿った前記第1の呼吸カートリッジエンドキャップの第2の位置において開放状態にある、請求項22に記載のシステム。
【請求項24】
前記第2の弁は、前記呼吸カートリッジの前記長手軸線に沿った前記第2の呼吸カートリッジエンドキャップの第1の位置において閉鎖状態にあり、前記第2の弁は、前記呼吸カートリッジの前記長手軸線に沿った前記第2の呼吸カートリッジエンドキャップの第2の位置において開放状態にある、請求項23に記載のシステム。
【請求項25】
前記第1の
呼吸カートリッジエンドキャップ
の第2の位置と前記第2の
呼吸カートリッジエンドキャップ
の第2の位置とのそれぞれが、前記第1の
呼吸カートリッジエンドキャップ
の第1の位置と前記第2の
呼吸カートリッジエンドキャップ
の第1の位置よりも、前記長手軸線に沿った前記呼吸カートリッジの中点に近い、請求項24に記載のシステム。
【請求項26】
前記第1の弁及び前記第2の弁は、前記第1の呼吸カートリッジエンドキャップ及び前記第2の呼吸カートリッジエンドキャップに加えられた力を除去して前記第1の呼吸カートリッジエンドキャップ及び前記第2の呼吸カートリッジエンドキャップが前記呼吸カートリッジの前記長手軸線に沿って互いに離れるように移動可能にすることによって閉鎖される、請求項25に記載のシステム。
【請求項27】
前記呼吸カートリッジは、前記システムから取り外し可能である、請求項1に記載のシステム。
【請求項28】
前記システムは、前記呼吸カートリッジが前記システム内に配置され
ている間に前記第1の弁及び前記第2の弁が作動するように構成されている、請求項27に記載のシステム。
【請求項29】
前記システムは、前記呼吸カートリッジが前記低温維持装置の前記低温液体の
下にある間に前記第1の弁及び前記第2の弁が作動するように構成される、請求項28に記載のシステム。
【請求項30】
前記呼吸カートリッジは、前記
VOCの捕集後に前記第1の弁及び前記第2の弁が閉じるように構成されている、請求項27に記載のシステム。
【請求項31】
さらに、第1のねじ及び第2のねじに動作可能に接続されたねじ付きロッドを有する呼吸カートリッジ弁作動機構を備える、請求項
26に記載のシステム。
【請求項32】
前記第1のねじが前記第1の
呼吸カートリッジエンドキャップと
連動し、前記第2のねじは前記第2の
呼吸カートリッジエンドキャップと
連動する、請求項31に記載のシステム。
【請求項33】
前記第1のねじ
及び前記第2のねじを
互いに向かって前進させると、前記第1の弁及び前記第2の弁が開く、請求項32に記載のシステム。
【請求項34】
前記第1のねじ
及び前記第2のねじを
互いから離れるように後退させると、前記第1の弁及び前記第2の弁が閉じる、請求項33に記載のシステム。
【請求項35】
前記呼吸チャンバと前記呼吸カートリッジとの間に直列に接続され、前記呼気から水を除去するように構成された水カートリッジを備え、
前記ねじ付きロッドは、
一端が前記水カートリッジに
熱接触し、
他端が前記低温液体の中
に沈められる、請求項31に記載のシステム。
【請求項36】
前記呼吸チャンバは、所定量の呼気を受け取るように構成されている、請求項1に記載のシステム。
【請求項37】
前記システムから取り外し可能な呼吸サンプリングサブシステムを備え、前
記呼吸サンプリングサブシステムは、
前記マウスピースと、
前記呼吸チャンバと
を含む、請求項14に記載のシステム。
【請求項38】
前記呼吸サンプリングサブシステムは、手持ち式である、請求項37に記載のシステム。
【請求項39】
前記呼吸
チャンバは、事前に選択された量の空気が吐き出された後に、前記呼気を捕集するように構成されている、請求項
1に記載のシステム。
【請求項40】
前記呼吸チャンバと前記呼吸カートリッジとの間に直列に接続され、前記呼気からCO
2
を除去するように構成されたCO
2
カートリッジと、
前記CO
2カートリッジの温度を制御するように構成され
た温度制御システムと、
を備える、請求項1に記載のシステム。
【請求項41】
前記呼気からCO
2
を除去するように構成されたCO
2
カートリッジと、
前記呼気から水を除去するように構成された水カートリッジと、を備え、
前記CO
2カートリッジ、前記水カートリッジ及び前記呼吸カートリッジは、前記呼気が前記CO
2カートリッジ、次いで前記水カートリッジ、次いで前記呼吸カートリッジに導かれるように、動作可能に接続される、請求項1に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、呼気からの揮発性有機化合物の回収、保存、移送、定量、及び分析の方法及びデバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
揮発性有機化合物又は「VOC」は、炭素、水素、及び、場合によっては酸素、硫黄及び/又は窒素で構成された単純な分子である。VOCは、1パートパービリオン(PPB)辺りのレベルで呼気中に存在する。呼気中のVOCのレベルは、限定されるものではないが、癌、パーキンソン病、多発性硬化症(MS)他を含む、特定の疾患状態の生物マーカーとして使用することができると考えられる。
【0003】
Linus Paulingら(Proc. Nat. Acad. Sci. USA 68(10), 2374-2376 (1971))は、-78℃でイソプロピルアルコールドライアイス浴内で冷却された内径0.20インチ(5.08mm)の5フィート(1.52m)のステンレス鋼コイル管によって捕集することによって、呼気VOC(サンプル当たりの10~15件の呼気)を捕捉した。その後、VOCは、ヒートガンを用いて非制御の加熱によってガスクロマトグラフに移送された。
【0004】
Mansoor他(Analysis of Volatile Compounds in Exhaled Breath Condensate in Patients with Severe Pulmonary Arterial Hypertension. PLoS ONE, 9(4): e95331, 2014)は、Jaeger EcoScreen(Viasys Healthcare, Conshohocken, PA)装置を使用して呼気VOCを回収した。ガスクロマトグラフィー/質量分析(GC-MS)による分析は、呼気VOCが肺高血圧症の診断において有用であり得ることを示唆した。
【0005】
Nakhleh他(Diagnosis and Classification of 17 Diseases from 1404 Subjects via Pattern Analysis of Exhaled Molecules, ACS Nano 11, 112-125, 2017)は、13件の呼気VOCの相対レベルが17件の異なった疾患状態と相関し、場合によっては該疾患状態を予測できることを示すために、GC-MSと組み合わされた分子改質金ナノ粒子の化学抵抗層及び単層カーボンナノ管体のランダムネットワークに基づく人工知能ナノアレイを使用した。
【0006】
Nagaoka他(Double Cold Trap Method to Determine the Concentrations of Volatile Organic Compounds in Human Expired Gas, Advanced Biomedical Engineering 4: 112-118, 2015)は、鋼グラスウールが充填された管体で構成された-80℃冷却トラップを使用して呼気VOCを測定した。捕捉VOCは、管体を80℃に加熱することによってガスクロマトグラフ内で放出された。
【0007】
Alonso他(Analytical challenges in breath analysis and its application to exposure monitoring, TrAC Trends in Analytical Chemistry 44, 78-89, 2013)は、呼吸サンプルを保存及び移送用に回収するいくつかの方法を記載している。これらとしてリアルタイム分析の方法が挙げられ、「…には、複雑で非携帯型の高価な計装が必要であり、これによって、暴露分析における現場での判定のための該計装適用可能性に限界がある」と記載されている。また、呼気を分析部位への移送のために回収する方法が記載されている。これらは、キャニスター、ガラス球、及びポリマー試料採取バッグを含む。これらの方法は、サンプルに提示される大きな表面積、背景汚染、破損の可能性、有意な洗浄要件、及び分析部位でのVOC濃度の要件に起因して、変化するVOC損失速度という問題がある。また、著者らは、吸着剤材料上へのVOCサンプルの回収を記載している。しかしながら、吸着剤材料は、全てのVOCを回収するというわけではなく、吸着剤材料が回収するVOCの回収効率の低減がある。これらの回収効率低減は、例えば、吸着剤材料の量、吸着剤材料の特性、及び回収が行われる温度で変化する可能性がある。
【0008】
Liu他(Collection devices influence the constituents of exhaled breath condensate, European Respiratory Journal 30: 807-808; 2007)は、4つの異なるVOC回収デバイスを比較し、「回収デバイスは、呼気凝集液生物マーカーレベルに有意に影響を与え、異なるデバイスからの絶対値は、直接的には比較可能ではなく」、テストされたデバイスからの可変的な非効率な回収が示唆されると結論づけた。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0009】
【文献】Linus Pauling他、Proc. Nat. Acad. Sci. USA 68(10), 2374-2376 (1971)
【文献】Mansoor他、Analysis of Volatile Compounds in Exhaled Breath Condensate in Patients with Severe Pulmonary Arterial Hypertension. PLoS ONE, 9(4): e95331, 2014
【文献】Nakhleh他、Diagnosis and Classification of 17 Diseases from 1404 Subjects via Pattern Analysis of Exhaled Molecules, ACS Nano 11, 112-125, 2017
【文献】Nagaoka他、Double Cold Trap Method to Determine the Concentrations of Volatile Organic Compounds in Human Expired Gas, Advanced Biomedical Engineering 4: 112-118, 2015
【文献】Alonso他、Analytical challenges in breath analysis and its application to exposure monitoring, TrAC Trends in Analytical Chemistry 44, 78-89, 2013
【文献】Liu他、Collection devices influence the constituents of exhaled breath condensate, European Respiratory Journal 30: 807-808; 2007
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
従来技術における回収システム及び方法に関する問題は、回収が、約-80℃以上で行われ、約-80℃以上は、呼気VOCの凝縮温度を越えるので非効率かつ可変的な回収につながる点である。
【0011】
従来技術における回収システム及び方法に関する問題は、一部のVOCの回収効率が、本質的にゼロであり、様々な疾患状態の診断におい有用であろう情報の損失となる点である。
【0012】
従来技術における回収システム及び方法に関する問題は、VOCを放出するのに加熱が必要であり、この放出は、非効率かつ可変である場合がある点である。
【0013】
移送、保存、及び定量中にVOCの損失がない保存を維持しながら、1又は2以上のVOCを非常に高い効率及び再現性で呼気から捕捉するシステムが必要とされる。
【0014】
また、特に正確かつ敏感な定量的なGC-MS定量を可能にするために含水量が非常に低いサンプルを生成する目的で、定量前に水を除去するこのようなVOC捕捉システが必要とされる。
【0015】
開示される方法、システム、及び装置の目的は、呼気VOCを人間及び動物の呼吸で回収及び定量化することである。
【0016】
開示される方法、システム、及び装置の実施形態の目的は、回収されたVOCを定量して絶対及び/又は相対的レベルの様々なVOCを判定することである。
【0017】
開示される方法、システム、及び装置の実施形態の目的は、定量されたVOCレベルを分析し、様々な疾患状態との相関を識別することである。
【0018】
開示される方法、システム、及び装置の実施形態の目的は、識別された相関を使用して様々な疾患状態を診断することである。
【0019】
開示される方法、システム、及び装置の実施形態の目的は、識別された相関を使用して、限定されるものではないが、癌、パーキンソン疾患、MSを含むリストから選択される疾患状態を診断することである。
【課題を解決するための手段】
【0020】
開示される方法、システム、及び装置の実施形態の利点は、吸着材料の特性及び量の制御が必要ないように吸収物質をVOCの回収で使用せず、捕捉されたVOCを放出するために必要とされる回収装置の加熱がないか又は少ないことである。
【0021】
開示される方法、システム、及び装置の実施形態の利点は、室温以上に加熱される場合に表面に結合した各VOCの量を最小限にするために、ステンレス鋼などの構成要素を最大にする表面積の追加なしで、呼気VOCが、流路の内面上に吸着によって捕捉されることである。
【0022】
開示される方法、システム、及び装置の実施形態の特徴は、呼気VOCの回収が、回収装置を冷却することにより達成されることである。
【0023】
開示される方法、システム、及び装置の実施形態の利点は、病院又は実験室環境で入手が容易であり沸点が低い液体窒素(LN2)を、回収装置を冷却するために使用されることである。
【0024】
開示される方法、システム、及び装置の実施形態の利点は、様々なVOCの基本的に全ての吐き出し量全体が回収され、必要な呼気の数が約1に低減されることである。
【0025】
開示される方法、システム、及び装置の実施形態の利点は、様々なVOCの基本的に全ての吐き出し量が回収され、温度、流量、滞留時間、管長などに対する回収効率の依存性がなくなることである。
【0026】
開示される方法、システム、及び装置の実施形態の利点は、5又はそれ以上のVOC、10又はそれ以上のVOC、20又はそれ以上のVOC、40又はそれ以上のVOC、80又はそれ以上のVOC、もしくは160又はそれ以上のVOCの、約50%を超える、75%を超える、約90%を超える、約95%を超える、又は約99%を超えるものが回収されることである。
【0027】
開示される方法、システム、及び装置の実施形態の利点は、様々なVOCの基本的に全ての吐き出し量が回収され、回収効率は、製品ライフサイクルにわたる設計変更に対して不変となり、様々なデザイン反復からのデータの直接的な比較が可能であることである。
【0028】
開示される方法、システム、及び装置の実施形態の利点は、VOCの回収の前に、吐き出された水が除去され、定量システム、例えば、GC-MSの性能が向上することである。
【0029】
開示される方法、システム、及び装置の実施形態の利点は、VOCの回収の前に、呼気CO2が除去され、定量システム、例えば、GC-MSの性能が向上することである。
【0030】
開示される方法、システム、及び装置の実施形態の特徴は、捕捉されたVOCが、1時間を超えて回収デバイスに収容され、VOCの損失が非常に低いことである。
【0031】
開示される方法、システム、及び装置の実施形態の特徴は、捕捉されたVOCが、1日を超えて回収デバイス内に収容され、VOCの損失が非常に低いことである。
【0032】
開示される方法、システム、及び装置の実施形態の特徴は、捕捉されたVOCが、1週間を超えて回収デバイス内に収容され、VOCの損失が非常に低いことである。
【0033】
開示される方法、システム、及び装置の実施形態の特徴は、捕捉されたVOCが、1ヶ月を超えて回収デバイス内に収容され、VOCの損失が非常に低いことである。
【0034】
開示される方法、システム、及び装置の実施形態の利点は、VOCを、市販の取扱い装置を使用して自動的に回収装置から定量システム、例えば、GC-MSに注入することができることである。
【0035】
開示される方法、システム、及び装置の実施形態の利点は、VOCを、室温以上に加熱することなく定量システムに注入することができることである。
【0036】
開示される方法、システム及び装置の上記及び他の目的、利点、及び特徴は、当業者には、以下により完全に説明するような系統的論述及び方法輪の詳細を読むと明らかになる。
【0037】
実施形態において、呼気を使用して疾患を診断するシステムであって、システムは、被験者の唇に密着し、呼気を被験者から受け取るように構成されたマウスピースと、呼気をマウスピースから受け取るように構成された呼吸チャンバと、呼気を所望の流路に沿って導くこと、パージガスを所望の流路に沿って導くこと、パージガスの流量を制御すること、呼気の流量を制御すること、パージガスの流れを遮断すること、呼気の流れを遮断することのうちの1又は2以上を行うように構成された弁と、パージガスの供給源と、呼気からCO2を除去するように構成されたCO2カートリッジと、水を呼気から除去するように構成された水カートリッジと、1又は2以上のVOCを呼気から捕捉するように構成された呼吸カートリッジと、CO2カートリッジ、水カートリッジ、呼吸カートリッジのうちの1又は2以上の温度を制御するように構成された温度制御システムと、低温液体を収容し、低温液体への熱流を制限する低温維持装置と、呼気及びパージガスの一方又は両方の流れを測定するように設計された流量計と、圧力、流速、流量のうちの1つを測定するように設計された圧力変換器とから選ばれた要素を備える。
【0038】
一部の実施形態において、システムは、マウスピース、水カートリッジ、冷却システム及び呼吸カートリッジのうちの少なくとも1つをさらに備えることができ、被験者は、マウスピース、水カートリッジ、及び呼吸カートリッジを通して直接、息を吐き出す。
【0039】
一部の実施形態において、冷却システムは、LN2を備える。
【0040】
一部の実施形態において、システムは、マウスピース、呼吸チャンバ、呼吸カートリッジ、及び冷却システムのうちの少なくとも1つをさらに備え、冷却システムは、LN2を備える。
【0041】
一部の実施形態において、被験者は、息をマウスピース及び呼吸チャンバを介して吐き出し、システムは、被験者が息を吐き出していない場合に呼気を導いて呼吸カートリッジに通す弁をさらに備える。
【0042】
一部の実施形態において、呼吸カートリッジの少なくとも50%は、LN2の中に沈められる。
【0043】
一部の実施形態において、呼吸カートリッジは、1又は2以上の流路を含む。
【0044】
一部の実施形態において、呼吸チャンバは、1リットル未満又は約1リットルの容積を有する。
【0045】
一部の実施形態において、呼吸チャンバは、0.5リットル未満又は約0.5リットルの容積を有する。
【0046】
一部の実施形態において、呼吸チャンバは、0.25リットル未満又は約0.25リットルの容積を有する。
【0047】
一部の実施形態において、呼吸チャンバは、0.1リットル未満又は約0.1リットルの容積を有する。
【0048】
一部の実施形態において、呼吸チャンバは、0.05リットル未満又は約0.05リットルの容積を有する。
【0049】
一部の実施形態において、被験者は、息をマウスピース及び呼吸チャンバを通して1回だけ吐き出す。
【0050】
一部の実施形態において、システムは、パージガスの供給源をさらに備え、呼吸カートリッジ内のゲージ圧及び呼吸カートリッジを通る流量の同時の制御を可能にする2又は3以上の要素をさらに備え、2又は3以上の要素は、流量制限、圧力調整器、流量制御装置、ニードル弁から成るリストから選択される。
【0051】
一部の実施形態において、呼吸カートリッジ内のゲージ圧は、正である。
【0052】
一部の実施形態において、呼吸カートリッジ内のゲージ圧は、1kPaよりも大きい。
【0053】
一部の実施形態において、呼吸カートリッジ内のゲージ圧は、2kPaよりも大きい。
【0054】
一部の実施形態において、呼吸カートリッジ内のゲージ圧は、4kPaよりも大きい。
【0055】
一部の実施形態において、システムから流出する流量は、0.5リットル/分未満又は約0.5リットル/分である。
【0056】
一部の実施形態において、流量は、0.1リットル/分未満又は約0.1リットル/分である。
【0057】
一部の実施形態において、流量は、0.05リットル/分未満又は約0.05リットル/分である。
【0058】
一部の実施形態において、対象のVOCの分子量mを仮定すると、1又は2以上の流路の合計長L及び空気の室温Qでの呼吸カートリッジを通る総流量は、
L/(m0.5Q)>C
の関係を満たし、Lはcmであり、mは原子質量単位であり、Qはリットル/分であり、C=1.5である。
【0059】
一部の実施形態において、C=3.5である。
【0060】
一部の実施形態において、C=6である。
【0061】
一部の実施形態において、C=8である。
【0062】
一部の実施形態において、C=13である。
【0063】
一部の実施形態において、システムは、呼吸カートリッジと直列の水カートリッジをさらに備え、呼吸カートリッジは、L’の結合総流路長を有し、温度Tで実行され、T、L’、及びQは、
L*T1.5/(Q*10000)>C
の関係を満たし、Qはリットル/分であり、Tはケルビンであり、Lはcmであり、C=5である。
【0064】
一部の実施形態において、C=11である。
【0065】
一部の実施形態において、C=16である。
【0066】
一部の実施形態において、C=21である。
【0067】
一部の実施形態において、被験者が息をマウスピース及び呼吸チャンバに吐き出す場合、マウスピース及び呼吸チャンバは、呼吸カートリッジ及びLN2と完全に一体化される。
【0068】
一部の実施形態において、被験者がマウスピース及び呼吸チャンバに息を吐き出す場合、マウスピース及び呼吸チャンバは、呼吸カートリッジ及びLN2から分離され、その後、呼吸チャンバは、呼吸カートリッジ及びLN2と一体化される。
【0069】
一部の実施形態において、マウスピース及び呼吸チャンバ組立体は、電気作動弁、2又は3以上の電気作動弁、電子圧力変換器、及びディスプレイから選択される要素を有する。
【0070】
一部の実施形態において、マウスピース及び呼吸チャンバ組立体の全ては、電気部品をもたない機械式である。
【0071】
一部の実施形態において、呼吸チャンバは、入口及び出口に逆止弁を有する。
【0072】
一部の実施形態において、逆止め弁は、0.25kPaを超え、10kPa未満のクラッキング圧力を有する。
【0073】
一部の実施形態において、LN2の中に沈められていない呼吸チャンバの端部は、-100℃又はより高い温度に保持される。
【0074】
本開示は、添付図面と併せて読む場合に以下の詳細な説明から最良に理解される。一般的な方法に従って、図面の種々の特徴は、正確な縮尺ではないことが強調される。それどころか、様々な特徴の寸法は、明瞭化のために任意に拡大又は縮小される。
【図面の簡単な説明】
【0075】
【
図1】実施形態による、VOCの効率的な捕捉がどのように直接的な低いばらつきに至るかを示す図である。
【
図2】開示される方法、システム、及び装置の1つの実施形態の概略図である。
【
図3】実施形態による、呼吸内の呼気CO2の測定結果である。
【
図4】実施形態による、0℃を上回る温度の関数としての空気中の水蒸気含有量のグラフである。
【
図5】実施形態による、0℃未満の温度の関数としての水氷と均衡状態の空気中の水蒸気含有量のグラフである。
【
図6】実施形態による、開示される方法、システム、及び装置の水カートリッジの1つの実施形態の図面である。
【
図7】実施形態による、温度の関数としての呼気中の様々なVOCの飽和蒸気圧及び予想蒸気圧のグラフである。
【
図8】実施形態による、開示される方法、システム、及び装置の呼吸カートリッジの1つの実施形態の図面である。
【
図9】実施形態による、
図8の実施形態のインサートである。
【
図10】実施形態による、
図8の実施形態のVOC弁である。
【
図11】実施形態による、
図8の呼吸カートリッジと共に使用することができるVOC弁アクチュエータの実施形態である。
【
図12】実施形態による、手持ち式の呼吸チャンバの実施形態である。
【
図14】実施形態による、プラスチックケース内の
図12の呼吸チャンバの実施形態である。
【
図15】実施形態による、CO2が呼気から除去され始める温度、及びCO2の90%が除去される温度を示すCO2の相図である。
【発明を実施するための形態】
【0076】
本発明の系統的論述及び方法論を説明する前に、本発明は、説明する特定の系統的論述及び方法論はもちろん変わり得るので、系統的論述及び方法論に限定されないことを理解されたい。また、本発明の範囲は特許請求の範囲によってのみ限定されることになるので、本明細書で使用する用語は、特定の実施形態を説明することを目的とするにすぎず、制限的ではないことが意図されていることを理解されたい。
【0077】
数値の範囲が提示される場合、その範囲の上限と下限との間の各介在値は、また、特に規定のない限り、下限の単位の1/10まで具体的に開示されることを理解されたい。規定された範囲内の何らかの規定値又は介在値と、その規定範囲内の何らかの他の規定値又は介在値との間のより小さな範囲の各々は、本発明内に包含される。これらのより小さな範囲の上限及び下限は、独立して範囲内に含むか又は除外することができ、一方又は両方がより小さい範囲内に含まれるか又は両方ともより小さい範囲内に含まれない各々の範囲は、また、規定範囲内の何らかの具体的に除外された境界に従って本発明に包含される。また、規定範囲が境界のうちの一方又は両方を含む場合、それらの含まれた境界のうちの一方又は両方を除外する範囲は、本発明に含まれる。
【0078】
特に規定のない限り、本明細書で使用する全ての専門用語又は科学用語は、本発明が属する技術の当業者によって一般的に理解されるのと同じ意味を有する。本明細書で説明する方法及び材料と類似又は同等の何らかの方法及び材料は、本発明の実施又はテストにおいて使用することができ、好適な方法及び材料は以下に説明される。本明細書で言及する全ての出版物は、出版物に引用されるものと共に方法及び/又は材料を開示して説明するために引用によって本明細書に組み込まれる。
【0079】
本明細書で使用する場合及び特許請求の範囲において、単数形「a」、「an」、及び「the」は、特に規定のない限り、複数の指示対象を含むことに留意されたい。従って、例えば、「定式化」への言及は、複数の対象の定式化を含み、「方法」への言及は、当業者に知られている1又は2以上の方法及びその均等物などの言及を含む。
【0080】
本明細書で検討する出版物は、本出願の出願日前に単にそれらの開示に関して提示される。ここで、従来の発明によるそのような開示に対して本発明が先行しないものであると自認すると解釈されるべきではない。さらに、提示された刊行年は、実際の刊行日付と異なる可能性があり、別々に確認する必要があるであろう。
【0081】
以下で説明するシステムは、米国内で開発及び設計されるので、管体などの英単位系における標準サイズが使用されていることに留意されたい。容易に利用可能なメートル法換算値を使用することができ、本開示は、開示される寸法を上回る及び下回る標準メートル法換算値を含むと解釈する必要があることを理解されたい。
【0082】
本開示の多くは、管体、流路、チャンバなどを直円柱の形状で描写することに注意されたい。この形状は、製造可能で、容易に利用可能であり、所定の断面積に関して最小の露出面を有するので一般的に好適である。しかしながら、本開示は、限定されるものではないが、正方形、矩形、六角形を含む他の断面形状を対象にすることが意図されている。水力直径など、標準的な方法を使用して、他の形状の同等のサイズを計算することができる。
【0083】
定義
胞状領域:気道が肺胞で高密度に内張りされる肺の周辺部内の領域。
【0084】
肺胞:VOCなどの空気中の酸素及び他の分子が体循環に吸収される肺周辺部内の小さい(200~500)μmの嚢、CO2は、体循環から除去される。
【0085】
分析:性質を理解するため又は不可欠な特徴を判定するための何か複雑なもの精密検査、例えば、様々な疾患状態との相関を判定するための又は様々な疾患状態を診断するための呼気中の測定VOCレベルの分析
【0086】
解剖学的死腔:胞状ではない相対的に大きな誘導気道で構成される肺の中央領域。吸息終了時に、解剖学的死腔は、最後の吸入空気を含み、その空気は、体循環と平衡しない。多少混合はあるが、呼気開始時の第1の呼気は、主に解剖学的死腔からの空気であり、例えば、体循環内のVOCのレベルと平衡しない。
【0087】
定量:化学成分、特に呼気中のVOC量の測定。
【0088】
ボール弁:貫通通路を有する球を備える弁、ボールは、通路を通る流れを許容する又は許容しないために回転させることができる。ボール弁は、方向性をもつことができ、入口から1又は2以上の出口までの流れを導くか、又は、1又は2以上の入口から出口までの流れを導く。ボール弁が実施例で説明される場合、流れを阻止するか又は導く何らかの同様と弁を代用することができることを理解されたい。
【0089】
呼吸カートリッジ:呼気サンプルからVOCを回収して濃縮する装置。
【0090】
呼吸チャンバ:特に呼吸カートリッジ内でのVOC濃縮前に呼気を捕捉する保持容器。
【0091】
逆止弁:1つの方向にのみの流れを可能にする弁。好適な逆止弁は、低いがゼロよりも大きいクラッキング圧力を有する。
【0092】
CO2カートリッジ:呼気サンプルからCO2を除去するデバイス。
【0093】
変動係数:一連の測定値を平均測定値で除算した標準偏差。通常、百分率として提示される。
【0094】
コールドフィンガー:一端がLN2などの低温液体中に沈められ、他端が低温液体の温度を上回る温度に冷却される要素(例えば、水カートリッジ)と熱接触するロッド。
【0095】
凝縮温度:化合物、好ましくはVOCが、表面に拡散するのに十分な時間が許容される場合に表面上へ凝縮する温度。凝縮温度は、合成物の固有特性及びその分圧の両方に左右される。
【0096】
クラッキング圧力:逆止弁が開いて流れを可能にするのに必要とされる圧力。
【0097】
低温維持装置:LN2などの低温流体用容器。好適な低温維持装置は、魔法瓶及び発泡スチロール容器などの熱伝導率が低い壁部を有する。
【0098】
シリンダー:均一な断面のロッド。
【0099】
デュワー:低温維持装置の別名。
【0100】
拡散係数:分子(H2O、CO2又はVOCなど)又はこの分子の集合体(すなわち、ガス)の拡散の速度の尺度。
【0101】
拡散:容積全体にわたって伝搬する分子(H2O、CO2又はVOCなど)又はこの分子の集合体(すなわち、ガス)のプロセス。拡散は、一般的に分子の熱速度によって引き起こされ、分子間の衝突によって制限される。
【0102】
呼気終末:呼気終了からの空気。呼気終末呼吸は、大部分が肺の胞状領域内に滞留する空気であり、従って、体循環と均衡状態に近い。
【0103】
流量計:ガス、例えば、パージガス又は呼気の流量を測定する装置。
【0104】
ゲージ圧:周囲空気の圧力を上回る圧力。
【0105】
GC-MS:様々な物質、好ましくは呼気サンプルである試験試料中の好ましくはVOCを識別するためにガスクロマトグラフィー及び質量分析の特徴を結合する分析法。
【0106】
不活性ガス:ヘリウム、アルゴン、キセノン、クリプトン、及び窒素を含むがこれらに限定されない相対的に反応しないガス。
【0107】
LCM:好ましくは呼気サンプルである試験試料中の異なる物質、好ましくはVOCを識別するために、液体クロマトグラフィー及び質量分析の特徴を結合する分析法。
【0108】
LN2:液体窒素、窒素ガスを低温冷却することから生じる窒素(N2)分子の液体。1大気圧に晒される場合、LN2の沸点は、-196℃である。
【0109】
モデル規範形適応制御(MRAC):モデルに従って変動する状態に適応する制御装置によって使用される制御方法。一例は、ドレントラップのための温度制御とすることができ、制御パラメータは、蒸発に起因してLN2のレベルが変化する場合に変わる。
【0110】
ニードル弁:先端に針が設けられたねじ山を有する弁、針は、ねじ山が前進される際に着座部の方に導かれ、その結果、ガスの流れが低減又は停止される。ニードル弁が実施例で説明される場合、流れを低減するか又は導く何らかの同等の弁を代用することができることを理解されたい。
【0111】
有機化合物:炭素を含有する分子。CO2又はCOなどの一部の分子は、従来、有機化合物であると考えられていなかった。
【0112】
圧力変換器:測定圧用デバイス、好ましくは固体素子利用デバイス。事前の較正で、圧力変換器を使用して、ガス、例えば、パージガス又は呼気の流量を計算することができる。経時的に計算された流量を積分することによって、ガス量を計算することができる。
【0113】
線形積分微分型(PID)サーボ制御装置:誤差信号、例えば、所望の「設定値」温度と測定温度との差異を連続的に計算し、誤差信号に比例した制御信号(例えば、加熱抵器に供給された電流)、誤差信号の経時的な積分、及び誤差信号の変化又は「差分」の時間率を適用する制御方法。
【0114】
比例サーボ制御装置:制御信号(例えば、加熱抵抗器に供給された電流)を印加する制御方法であり、制御信号は、誤差信号、例えば、所望温度などの所望設定値と測定温度などの測定設定値との間の差分に比例する。
【0115】
パージガス:呼気サンプルではないVOC回収システムを通って流されるガス。パージガスを使用して、例えば、VOC、捕捉CO2及びH2O、並びに先の測定からの汚染物質を取り除き、呼気サンプルを回収システムに送り込み、LN2進入の可能性を排除するために回収システムに圧力をかけることができる。
【0116】
呼吸細気管支:空気を肺胞のガス交換単位に送給する呼吸領域の開始を示す気道内の気管支気道のより小さい分岐。
【0117】
直円柱:断面が円形であるシリンダー。
【0118】
飽和空気:空気の温度を考慮した最も安定した濃度の水蒸気を含有する空気。
【0119】
シグモイド:何らかのパラメータの関数として、最初はゆっくり増加し、その後、増加率が最大に上昇し、次に、増加率が本質的にゼロまで減少するS字形化曲線。
【0120】
シュノーケル:ガス、例えば、不活性ガスが低温流体中に沈められた装置から流れ出ることを可能にする管体の短尺材。
【0121】
昇華:化合物、例えば、水、CO2、又はVOCが、液相を経ることなく固体から気体に直接、蒸発するプロセス。
【0122】
過飽和空気:飽和水蒸気よりも高い含有量を有する空気。過飽和は、通常、飽和空気を冷却することによって発生し、粒子、表面、剪断流れ、又は衝撃波などの凝縮を開始するための手段がない場合、維持することができる。
【0123】
表面積対体積比:形状、例えば、エアチャンバの表面積対容積の比率。:
【0124】
捕捉効率:捕捉装置、例えば、水カートリッジ、CO2カートリッジ、又は呼吸カートリッジを通って流された場合に、捕捉される化合物、例えば、水、CO2、又はVOCの百分率。回収効率ともいう。
【0125】
熱電冷却器(TEC):印加された電流の方向に応じて熱をデバイスの片側から反対側に伝達する固体素子利用デバイス。
【0126】
揮発性有機化合物(VOC):室温で高い蒸気圧を有する有機化合物。:
【0127】
水カートリッジ:水蒸気を呼気サンプルから除去するデバイス。
【0128】
本開示は、動物、好ましくは人間によって吐き出された息中の揮発性有機化合物(VOC)を回収、検出、及び定量化するデバイス、システム、キット、及び方法を包含する。開示される方法、システム、及び装置は、単一のVOCを定量化するために使用することができるが、好ましくは、2又は3以上、さらに好ましくは、5又は6以上、7又は8以上、10又は11以上、15又は16以上、又は、20又は21以上のVOCが定量化される。1つの実施形態において、1又は2以上のVOCの吐き出し量は、個別に定量化される。別の実施形態において、2又は3以上のVOCの相対量が測定され、絶対量は測定されない。1つの実施形態において、システムは、先に定量化されたシステム捕捉効率(捕捉されて定量のために提示される呼気VOCの百分率)で各VOCを捕捉し、結果は、直接的に、同様に定量化されたシステム捕捉効率を有する他の測定値と比較することができる。別の実施形態において、システム捕捉効率は必ずしも定量化されるわけではないが、システム捕捉効率に関連したパラメータは反復可能なプロセスをもたらすように制御され、異なる測定値を直接、比較することができる。
【0129】
一部の実施形態において、大きなサンプルサイズは、様々な疾患状態との相関を判定するために使用される。好ましくは、1000を超えるか又は約1000のサンプル、10,000を超えるか又は約10,000のサンプル、100,000を超えるか又は約100,000のサンプル、又は、1,000,000を超えるか又は約1,000,000のサンプルのサンプルサイズが使用される。好ましくは、限定されるものではないが、人工知能、回帰、機械学習、ニューラルネットワークなどを含むリストから選択された技術は、様々な疾患状態に予測相関を判定するために使用される。好ましくは、その後、開示される方法、システム、及び装置は、それらの疾患状態を診断するために又はより詳細で予測的な試験が必要とされることを示すために使用される。
【0130】
特に好適な実施形態において、各VOCのシステム捕捉効率は、100%に十分に近いのでシステム捕捉効率は、相対的にパラメータ変動に鈍感になる。このことは
図1に概略的に示される。捕捉効率は、典型的な「シグモイド」曲線を有することができる。図示するように、x軸は、温度、ガス流速度、捕捉媒体の長さなどの捕捉効率に関連する何からのパラメータを表す。好適な本発明の実施形態に関して、システム捕捉効率に影響を与えるパラメータは、以下に詳細に説明する。捕捉効率が低い場合、例えば、
図1に示すように約50%である場合、パラメータの影響は、大きい可能性がある。任意単位の1のパラメータの変化101は、24パーセントポイントの捕捉効率の変化102をもたらす場合がある。VOCの約半分のみが捕捉されるので、捕捉されたVOCの量の百分率変化(「変動係数」)は、約24%/.5=48%である。これは、捕捉効率が高い、例えば、98%である事例と比較することができる。この場合、パラメータの同一量、1の変化103は、1.83パーセントポイントの捕捉効率の変化104をもたらし、変動係数は87%となる。従って、非常に高い捕捉効率を有するシステムに関して自明でない再現性利点がある。
【0131】
好ましくは、対象のVOCのシステム捕捉効率は、50%よりも大きいか又は約50%、75%よりも大きいか又は約75%、90%よりも大きいか又は約90%、95%よりも大きいか又は約95%、又は、99%よりも大きいか又は約99%である。
【0132】
図2に概略的に示す実施形態において、システム200は、マウスピース201、捕捉された呼気から水を除去する水カートリッジ202、1又は2以上のVOCを捕集する呼吸カートリッジ203、並びに、様々なセンサー、弁、及び清浄なパージガス及び呼気を導いてシステム200に通す配管を備える。1つの実施形態において、被検者は、息を吐き出して直接、水カートリッジ202及び呼吸カートリッジ203に通す。好適な実施形態において、患者は、呼気の所定の容積を捕捉する呼吸チャンバ204に息を吐き出し、その後、システム200は、この空気を導いて所定の流量又は流量プロファイルを有する水カートリッジ202及び呼吸カートリッジ203に通す。
【0133】
マウスピース
マウスピース201は、被験者の唇及び唾液との接触に適切な何らかの材料とすることができる。好適なマウスピースは、合成高分子又は厚紙で作製される。1つの実施形態において、マウスピース201は、外径が約23mm~約33mm、好ましくは、約25mm~約30mmの範囲にある厚紙筒である。好ましくは、厚紙マウスピースは、唇への付着を防止する白色コーティングを有する。被験者間で相互汚染の可能性を低減するために、マウスピース201は、好ましくは単回使用の使い捨て品であり、随意的に呼気を可能にするが吸気には対応しない一方弁(
図2には図示せず)で構成される。1つの実施形態において、システム200は、小児使用向けのより小さいマウスピース201の装着を可能にするアダプタを備えることができる。好適な小児用マウスピース201は、約15mm~約25mm、好ましくは、約18mm~約20mmの範囲の外径を有する。
【0134】
呼吸チャンバ/呼吸捕捉
好ましくは、システム200は、呼吸カートリッジ203を通り、水カートリッジ202を通り、好ましくは、次に、呼吸カートリッジ202を通るその後の移送のために、所定の容積の呼気を捕捉する呼吸チャンバ204を備える。呼吸チャンバ204は、何らかの適切な材料とすることができる。剛性呼吸チャンバ204は、好ましくは、アルミニウム又は鋼、好ましくはステンレス鋼などの金属から製作される。別の実施形態において、呼吸チャンバ204は、可撓性であり、ポリマー材料、好ましくは、ポリ弗化ビニルで構成される。
【0135】
好ましくは、捕集された関連のVOCの量を判定するために使用された定量は、敏感であり、捕捉される空気の量は、少量とすることができる。小さな呼気容積は、限定されるものではないが、水カートリッジ202の小型化の可能化と同時に捕捉された水による流路閉塞の回避、及び呼気を捕捉するのに必要な時間の短縮化を含む、いくつかの利点を有する。好ましくは、システム200は、被験者による約10未満の呼気、約5未満の呼気、又は約3未満の呼気を必要とする。好適な実施形態において、システム200は、約1の呼気のみからの空気をサンプリングする。好ましくは、1又は2以上のVOCの定量方法は、所要の捕捉される空気量を最小限に抑えるために、1又は2以上のVOCのための非常に低い定量限界を有する。好適な定量方法は、限定されるものではないが、液体クロマトグラフィー-質量分析(LCM)及びガスクロマトグラフ質量分析法GC-MSを含む。
【0136】
好ましくは、各呼気からサンプリングされた空気の量は、4リットル未満又は約4リットル、3リットル未満又は約3リットル、2リットル未満又は約2リットル、1リットル未満又は約1リットル、0.5リットル未満又は約0.5リットル、0.4リットル未満又は約0.4リットル、0.3リットル未満又は約0.3リットル、0.2リットル未満又は約0.2リットル、0.1リットル未満又は約0.1リットル、0.05リットル未満又は約0.05リットル、0.025リットル未満又は約0.025リットルである。好ましくは、各呼気からサンプリングされた空気の量は、約0.025リットル~約1リットル、約0.05~約0.5、又は、約0.1~約0.2リットルの範囲にある。1つの実施形態において、約0.1又は0.2リットルは、単一の呼気からサンプリングされる。
【0137】
好ましくは、例えば、被験者が息を吐き出すマウスピース201と呼吸チャンバ204との間の何らかの管体205の最小直径は、被験者が最小の努力で息を吐き出すことができるほど十分に大きい。好ましくは、管体205は、1/8インチ(3.175mm)、よりも大きいか又は約1/8インチ、3/16インチ(4.763mm)よりも大きいか又は約3/16インチ、1/4インチ(6.35mm)よりも大きいか又は約1/4インチ、又は、3/8インチ(9.525mm)よりも大きいか又は約3/8インチの最小内径である。好適な管体は、外径は約1/4インチ(6.35mm)、内径は約0.175インチ(4.445mm)以上であり、又は、外径は約3/8インチ(9.525mm)、内径は約0.335インチ(8.509mm)以上である。
【0138】
1つの実施形態において、システム200は、圧力変換器206を備え、圧力変換器206は、システム200による呼気流量及び呼気量の計算を可能にするために較正されている。好ましくは、管体205の流れ抵抗及び/又は抵抗要素209の抵抗は、被験者が、60リットル未満又は約60リットル/分(LPM)、45LPM未満又は約45LPM、30LPM未満又は約30LPM、好ましくは、約20LPMで息を吐き出し、目標呼気容積に到達した場合に指向性ボール弁207を作動させるのに十分な時間を可能にするようなものである。例えば、抵抗要素209は、固定抵抗ニードル弁とすること又は
図2に示すように調整抵抗ニードル弁とすることができる。1つの実施形態において(図示せず)、目標呼気容積に到達する前に、呼気は、システム200から迂回することができ、目標呼気容積に到達した場合に、1又は複数の弁が作動して、呼気は、呼吸チャンバ204に導かれる。
図2の実施形態において、呼気全体は、呼吸チャンバ204に導かれて通過し、目標呼気容積に到達した場合に、限定されるものではないが、弁207が、呼気流量を阻止するために作動される;弁、例えば、ボール弁208が、呼吸チャンバ204を周囲の環境から隔離するよう作動される;ボール弁207及び208が、呼吸チャンバ204の内容物を水カートリッジ202及び/又は呼吸カートリッジ203に導くように作動される;及び/又は、方向ボール弁(図示せず)が、呼気流量を呼吸チャンバ204から迂回させるために作動される、ことを含む1又は2以上の作用が行われる。
【0139】
別の実施形態において、マウスピース201、呼吸チャンバ204、管体205、弁207、弁208、及び抵抗要素209を備える呼吸サンプリングサブシステムは、被験者が呼吸サンプリングサブシステムを介して息を吐き出す際に呼吸捕捉システム200の残部とは別個であり、その後、呼吸カートリッジ203内の捕捉されたVOCの濃縮のために呼吸捕捉システム200の残部に接続される。好ましくは、この実施形態において、呼吸サンプリングサブシステムは、手持ち式であり、5ポンド未満、好ましくは、2ポンド未満、さらに好ましくは、1ポンド未満の重量である。一部の疾患状態、例えば、呼吸サンプリングサブシステムを保持することを難しくする可能性があるパーキンソンのような神経学的な状態については、呼吸サンプリングサブシステムは、床に取り付けられた又は床上に位置するスタンド、又はテーブル、カート、又は椅子などの家具に取り付けることが好ましい場合がある。呼吸捕捉サブシステムは、全て機械式とすることができ、又は電気機械式バルブ構成及び/又は上述の電子構成要素を有することができる。
【0140】
一部の構成において、呼吸捕捉サブシステムは、全て機械式であり、呼吸チャンバ204の保持容積の前後に逆止弁(図示せず)を利用する。好ましくは、逆止弁は、開放して流れを可能にするには何らかの正圧(すなわち、正の「クラッキング圧力」)を必要とし、被験者が息を吐き出すのを止めた場合に、呼吸チャンバ204が環境から隔離され、捕捉呼吸が逃げないことを保証するようになっている。これらの逆止弁は、好ましくは、0.25kPaよりも大きいか又は約0.25kPa、0.5kPaよりも大きいか又は約0.5kPa、1kPaよりも大きいか又は約1kPa、2.5kPaよりも大きいか又は約2.5kPa、5kPaよりも大きいか又は約5kPaのクラッキング圧力を有する。好ましくは、逆止弁は、10kPa未満又は約10kPa、7.5kPa未満又は約7.5kPa、5kPa未満又は約5kPa、又は、2.5kPa未満又は約2.5kPaのクラッキング圧力を有する。また、逆止弁は、被験者がチャンバから吸い込むのを防止することができ、相互汚染の可能性が排除される。好ましくは、呼吸捕捉サブシステムの流れ抵抗は、被験者が30秒未満で、さらに好ましくは、20秒未満で、さらに好ましくは、10秒未満で、さらに好ましくは、5秒未満で完全に息を吐き出すことができるように十分に低い。500cc/sの呼気流量での好適な流れ抵抗は、100kPa/リットル/秒未満又は約100kPa/リットル/秒、50kPa/LPS未満又は約50kPa/LPS、40kPa/LPS未満又は約40kPa/LPS、30kPa/LPS未満又は約30kPa/LPS、20kPa/LPS未満又は約20kPa/LPS、15kPa/LPS未満又は約15kPa/LPS、又は、10kPa/LPS未満又は約10kPa/LPSである。適切な逆止弁の実施例は、TVCSSVT.125SS(Check-All Valve Mfg.Co., Des Moines, IA)である。これらの逆止弁の低いクラッキング圧力に起因して、試料の独立性及び純度を保証するために、呼吸チャンバ204の入力部及び出力部上に呼吸試料が収集された後に遮断されるボール弁又は同等のもの有することも有益であろう。
【0141】
図12は、50mlの呼吸チャンバ204を有する呼吸捕捉サブシステムの実施形態を示す。
図13は、プラスチックケース内の
図12の実施形態を示す。人の呼気に必要とされる弁の比較的低いクラッキング圧力に起因して、逆止弁は、操作時及び移送時に加速度又は振動のために開く可能性があるので、呼気後に呼吸チャンバ204の両端を遮断する別の方法を有することが好ましい。例えば、呼気後、呼吸チャンバ204の入力部及び出力部は、限定されるものではないが、プラグ、停止具など、又はバルブ、例えば、ボール弁を含む機構によって遮断することができる。
【0142】
一部の用途に関して、肺の予め選択された領域から呼吸を捕捉することが好ましい。呼気VOCの捕捉は、肺癌及び他の肺疾患の早期発見に使用することができる。この場合、病的状態が発生することが予想される肺の領域、例えば、より中央の気道から空気を捕捉することが好ましいであろう。他の用途は、体の他の領域内で生成され、その後、体循環を介して肺に送給されるVOCの検出を必要とする場合がある。従って、一部の構成において、肺からの最初の呼気は、大部分は最後の吸気で構成され、最後の吸気は、大部分が口及びより中央の気道内に滞留したものであり、従って体循環と平衡していないので、空気の所定の容積が吐き出された後にサンプルが空気から捕捉されることを保証することが好適であろう。体循環とは完全には平衡していないであろう口及び中央の誘導気道(解剖学的死腔)からの空気の容積は、人間のでは約150mlが平均値である。
【0143】
呼気が肺周辺部から始まって体循環と平衡したか否かを判断する1つの方法は、呼気中のCO2の量を測定することである。
図3は、時間の関数としての呼気CO2のこのような測定値を示す。呼気流量は、息を吐き出している間に流量計を観察することによって制御される際に約0.4LPMであった。最初、CO2レベルは非常に低く、約30秒で約0.2リットルに相当する約42mmolに上昇したことが分かる。CO2レベルの増加は、中央気道を起点とする空気が肺周辺部から空気の次第に大部分と混合することに起因するであろう。約0.2リットルが吐き出された後、呼気CO2の量は、基本的に横ばいになり、この空気はここでは基本的に完全に肺周辺部から来ており、体循環と均衡状態であることが示唆される。約0.2リットルの値は、150mlの予想された解剖学的死腔容積と良好に合致する。
【0144】
1つの実施形態において、体循環と均衡状態にある空気が望まれる場合、CO2は、監視され、呼気CO2の測定量、又は時間に対するCO2の勾配、又は上述した呼気量曲線に対するCO2は、VOC捕捉のためにいつ空気のサンプリングを開始するかを判定するために使用される。別の実施形態において、空気は、VOC捕捉のために空気をサンプリングする前に所定の時間量にわたって吐き出される。好適な実施形態において、呼気圧の関数として呼気量のために事前に較正された圧力変換器206からの信号を積分することによって測定されるような予め選択された空気容積は、VOC捕捉のために空気のサンプリングを開始する前に吐き出される。好ましくは、選択された容積量は、被験者集団で予想される最大解剖学的死腔容積よりも大きいか又はこれにほぼ等しい。好ましくは、所定の容積は、150mlよりも大きいか又は約150ml、200mlよりも大きいか又は約200ml、300mlよりも大きいか又は約300ml、500mlよりも大きいか又は約500ml、750mlよりも大きいか又は約750ml、もしくは1リットルよりも大きいか又は約1リットルである。
【0145】
以下で説明するように、水の除去及びVOCの回収は、吐き出された水、VOC、又は複数のVOCが飽和する点まで温度を低下させることによって最適化されるが、何らかの温度で表面に結合された何らかのVOCが存在する可能性がある。従って、捕捉された呼気が晒される内部表面積を最小限することが好ましい。これは、捕捉された呼気の長い滞留時間に起因して、呼吸チャンバ204内で最適とすることができる。好ましくは、呼吸チャンバ204の内部表面積は、500cm2未満又は約500cm2、400cm2未満又は約400cm2、300cm2未満又は約300cm2、200cm2未満又は約200cm2、150cm2未満又は約150cm2、もしくは125cm2未満又は約125cm2である。呼吸チャンバ204の1つの実施形態は、球体が可能な限り小さい表面積対体積比を有するので、基本的に球形である。例示的に、球形の100mlの球体は、104.2cm2のみの表面積を有し、200mlの球体は、165.4cm2の表面積を有する。呼吸チャンバ204の1つの実施形態は、比較的大きな外径の管体である。この実施形態において、管体の様々な長さを使用することによって呼吸チャンバ204容積を調整することは比較的簡単である。好ましくは、管体外径は、限定されるものではないが、3/4インチ(19.05mm)、7/8インチ(22.23mm)、1インチ(25.4mm)、1 1/4インチ(31.75mm)、1 1/2インチ(38.1mm)、又は2インチ(50.8mm)、又は、容易に利用可能なメートル法換算値を含むリストから選択される。好ましくは、マウスピース201、管体205、弁207及び208、及び呼吸チャンバ204の組み合わされた内部表面積は、100cm2未満又は約100cm2、800cm2未満又は約800cm2、600cm2未満又は約600cm2、400cm2未満又は約400cm2、300cm2未満又は約300cm2、もしくは150cm2未満又は約150cm2である。
【0146】
管体をマウスピース、弁などに接続するためのより小さな管体に適応させるために、圧縮取付け具、例えば、Swagelok(登録商標)取付け具を利用することが容易なので、上述の呼吸チャンバ204の管体サイズは好適である。1つの特に好適な直径は、最小表面積対体積比を有するので約2インチ(50.8mm)である。例示的に、1つの入手が容易なステンレス鋼管体のサイズは、約2インチ(50.8mm)の外径及び約0.065インチ(1.65mm)の肉厚を有し、約1.87インチ(47.5mm)の内径をもたらす。100mlの呼吸チャンバの実施例に関して、総表面積は、エンドキャップを含めて約119.7cm2であり、同じ容積の球体を約15%だけ上回る。200mlの呼吸チャンバであれば、同等の球体よりも多少大きい203.9cm2の表面積を有する。約50ml以下の容積に関して、2インチ(50.8mm)のエンドキャップの組み合せ面積は、表面積を支配し始め、例えば1.5インチ(38.1mm)のより小さな管体は、同じ容積の割にはより小さい面積を有することになる。好ましくは、呼吸チャンバ204は、対象の1又は2以上のVOCの、50%未満又は約50%、10%未満又は約10%、5%未満又は約5%、2%未満又は約2%、1%未満又は約1%、もしくは0.5%未満又は約0.5%を捕捉する。
【0147】
好ましくは、捕捉される呼吸は、吸気中のVOCによって汚染されない。これを最小限にする1つの方法は、被験者に、清浄な空気の供給源からの又は何らかのVOC汚染物質を除去するための以下でさらに詳細に説明する呼吸カートリッジ203と類似したカートリッジを通った空気からの、汚染されていない空気中で呼吸させることである。吸気中のVOCを除去する好適な方法は、被験者に一定期間にわたって息を止めさせることであり、これはVOCが肺の肺胞の壁部に進んでこれに吸収されることを可能にし、空気が体循環と均衡状態であり、吸気の何らかのVOCが肺によって空気から除去されることが保証する。例示的に、
図7から、最高分子量、従って最低拡散係数を有するVOCは、156.31gmol
-1の分子量及び体温で0.085cm
2/sの推定拡散係数を有するウンデカンである。ウンデカン分子が時間tで拡散することになる平方二乗平均距離は、(6Dt)
1/2である。人間の呼吸細気管支の平均径は、約500ミクロン又は.05cmである。500ミクロンを拡散させる平均ウンデカン分子の時間は、(.05cm)
2/(6*0.085cm
2/s)=4.9x10
-3秒である。従って、約1秒の非常に短い息止めで、胞状領域内の空気は、完全に肺と平衡となり、吸気中のVOCに影響を受けないであろうことが分かる。例えば、特定の肺疾患様癌、喘息、COPDなどを診断するために、より多くの中央気道から空気をサンプリングすることを望む場合があり、分子が実質的に円筒形の気道の軸に垂直に拡散することになる距離は、(4Dt)
5によって与えられる。約0.5cmの直径の気管支気道に関して、ウンデカン分子が気道の直径に拡散するRMS時間は、約0.74秒である。つまり、空気を気管支気道からサンプリングすることを望む実施形態に関して、数秒の息止めは、吸気を気道壁部と平衡状態にすることができる。
【0148】
捕捉呼吸の移送
好ましくは、所定量の呼気を呼吸チャンバ204で捕捉した後、捕捉呼吸は、水カートリッジ202を通って引き込まれ、その後、呼吸カートリッジ203を通る。これは、真空ポンプ(図示せず)を使用して達成することができる。外気は、サンプルが環境VOCで汚染されないように捕捉呼気と混合しないことが好ましい。これは、可撓性ポリマーバッグを使用して呼気を捕捉し、その後、空気が外へポンプ圧送される際にバッグが潰れることを可能にすることによって達成することができる。同様に、真空ポンプによって引き起こされた管体内の減圧によって生成された力によって管体を下方に進む封止ピストンを用いて管体内の空気を捕捉することができる。もしくは、空気は、正圧下で呼吸チャンバ204から押し出すことができる。これは、上述したようにシリンダー及びピストンで行うことができ、例えば、ピストンは、線形作動機械的装置によって又は正の空気圧によって確実に変位される。また、このことは、ポリマー容器を第2の密閉容器内に配置し、第2の容器を加圧することによって行うことができる。これらの概念は、ガスが他のガスによって希釈されないので、捕捉ガス流が水カートリッジ及び呼吸カートリッジを通る時間を最小限にするという利点を有する。しかしながら、これらの概念は、VOCを放出する可能性がある可動部品及びポリマーバッグ又はシールを有するので好適でない場合がある。
【0149】
もしくは、
図2に示すように、捕捉空気は、清浄な、好ましくは不活性のパージガスをパージガスタンク210から呼吸チャンバ204に導入することによって、呼吸チャンバ204から押し出すことができる。好適なガスとしては、限定されるものではないが、アルゴン、キセノン、又はクリプトン、好ましくは窒素水素、又はネオン、最も好ましくはヘリウムを挙げることができる。好ましくは、ガス中の何らかの不純物は、100未満又は約100、10未満又は約10、又は、1未満又は約1のバート/ビリオン(PPB)レベルにあり、対象の何らかのVOCは、呼吸カートリッジ203を通って引き込まれたパージガスの総量中に含有された各VOCの量が呼気の捕捉容積中で予想された総量の約10%未満、約1%未満、又は、0.1%未満であるようなレベルにある。好ましくは、呼吸チャンバ204の寸法及びガス流速度は、呼吸チャンバ204を通る流れが層状であるあることが期待され(すなわち、2000未満又は約2000のレイノルズ数)、パージガスとの混合を最小限にするようなものである。好ましくは、呼吸チャンバ204を通過するパージガスの容積は、捕捉呼吸の大部分、90%よりも大きいか又は約90%、99%よりも大きいか又は約99%。もしくは99.9%よりも大きいか又は約99.9%が呼吸カートリッジ203に送給されるように、容積が呼吸チャンバ204の容積よりも大きい。好ましくは、パージガスの容積は、呼吸チャンバ204の容積の1.5Xを超えるか又は約1.5X、2Xを超えるか又は約2X、3Xを超えるか又は約3X、5Xを超えるか又は約5X、10Xを超えるか又は約10X、もしくは20Xを超えるか又は約20Xである。
【0150】
呼吸チャンバ204と同様に、呼気が呼吸カートリッジ203への導入前に接触する全ての表面の総表面積は、好ましくは最小限にされる。また、滞留時間を最小限にするために、断面積は、最小限にする必要がある。好ましくは、呼吸カートリッジ203の前の全ての呼吸接触面の総表面積は、200cm2未満又は約200cm2、150cm2未満又は約150cm2、100cm2未満又は約100cm2、75cm2未満又は約75cm2、又は、50cm2未満又は約50cm2に維持する必要がある。好ましくは、サイズが小さくなれば生成される圧力降下が高くなり、呼気時間が不快なほど長くなり、サイズが大きいほど表面積が大きくなり、滞留時間が必要以上に長くなるので、被験者が息を吐き出す管体は、外径約1/4インチ(6.35mm)又は約3/16インチ(4.763mm)(又は、容易に利用可能なメートル法換算値)のステンレス鋼管である。被験者が直接、息を水カートリッジ202及び/又は呼吸カートリッジ203を通して吐き出さない実施形態において、使用される管体は、より高い圧力が利用可能となるので、一般的により小さいことが必要である。一般に、水及び/又は呼吸カートリッジ203の性能を最適化するために、より長い流動時間を使用することができる。また、より小さい管体は、より小さい表面積及び滞留時間を示すことに加えてVOC及び水カートリッジへの熱伝導を最小限にするので好適である。外径約3/16インチ(4.763mm)、約1/8インチ(3.175mm)、又は約1/6インチ(4.233mm)(又は、容易に利用可能なメートル法換算値)のステンレス鋼管が好適である。好ましくは、呼吸カートリッジ203の前の表面は、対象の1又は2以上のVOCの50%未満又は約50%、10%未満又は約10%、5%未満又は約5%、2%未満又は約2%、1%未満又は約1%、又は、0.5%未満又は約0.5%を捕捉する。
【0151】
水カートリッジ
水カートリッジ202は、水がVOCの定量を妨げないように、及び、水が、定量装置の1又は2以上の構成要素、例えば、限定されるものではないが、ガスクロマトグラフィーカラム及び液体クロマトグラフィーカラムを含むグループから選択された構成要素を損傷しないように、水を捕捉空気から除去することができる。人間は、約34℃の温度の水で飽和(又はおそらく過飽和)される空気を吐き出す。
図4は、温度の関数としての、25%、50%、75%、及び100%の相対湿度での空気中の水蒸気の量を示す。
図4から分かるように、人間は、34℃及び100%の相対湿度で息を吐き出す場合に、1リットルの空気当たり約38mgの水蒸気を吐き出すことになる。100mlの呼気が捕捉される場合、呼気は、最初に少なくとも3.8mgの水を含有することになるが、空気が呼吸チャンバ204及び管体内にある間に、水の一部は、一般的に34℃未満の温度である壁部上に凝縮することになる。好ましくは、水カートリッジ202を通過した後、捕捉空気は、水の約100μg未満、約10μg未満、約1μg未満、又は約0.1μg未満を含有する。好ましくは、水カートリッジ202によって水の約90%又はそれ以上、約99%又はそれ以上、約99.9%又はそれ以上、もしくは約99.99%又はそれ以上が除去される。
【0152】
好ましくは、水カートリッジ202は、空気が水カートリッジ202の壁部と平衡した場合に、残りの水蒸気が所望のレベル又はそれ未満であるような温度に冷却される。呼吸カートリッジ203に導入された場合の捕捉空気中の水蒸気の1つの好適な最大量は、8.3μgである。これは、ガスクロマトグラフィーカラムへの導入のために、回収されたVOCが、限定されるものではないがヘリウムガスなどの5mlの不活性ガスに分散される場合の1パーセントの水蒸気に対応する。例示的に、約100mlの空気が捕捉されると想定することができる。この場合、8.3μgの全水蒸気質量は、83μg/リットルに対応することになる。
図4から分かるように、0℃での飽和空気は、1リットルの空気当たり約5mgの水(目標量の約60x)を有する。100mlの呼気中の水を8.3μgに低下させる場合、温度は、0℃を下回る必要があることが分かる。この場合、捕捉水は、冷凍されることになり、所要の温度の判定は、温度の関数として水氷から昇華する水蒸気量の計算を必要とする。この計算について、以下の式を利用することができる(Wexler, JOURNAL OF RESEARCH of the National Bureau of Standards-A. Physics and Chemistry, 81A(1), 1977, after correction of temperatures from IPTS-68 to ITS-90)。
【0153】
【0154】
式中、pは圧力であり、Tは温度であり、添字tは三重点を指し、τ≡1-T/Tt,Tt=73.16K,pt=611.657 Pa,a1=-22.4948,a2=-0.227,a3=0.502,a4=0.562である。次表は、摂氏の温度tでのパスカル(Pa)の水Pの蒸気圧を一覧表で表す。
【0155】
【0156】
図5は、上記の式を使用して計算された約0~-100℃までの温度で氷と均衡状態にある空気の水蒸気密度のグラフである。83μg/リットル未満の目標水蒸気密度を達成するために、-45℃未満又は約-45℃の温度を使用する必要があることが分かる。
【0157】
好ましくは、水カートリッジ202の温度は、0℃未満又は約0℃、-10℃未満又は約-10℃、-20℃未満又は約-20℃、-30℃未満又は約-30℃、-40℃未満又は約-40℃、-50℃未満又は約-50℃、-60℃未満又は約-60℃、-70℃未満又は約-70℃、-80℃未満又は約-80℃、-90℃未満又は約-90℃、もしくは-100℃未満又は約-100℃である。1つの特に好適な温度は、約-55±5℃である。
【0158】
図6は、11の流路601を有する水カートリッジの1つの可能性のある実施形態を示す。
【0159】
温度要件に加えて、水カートリッジ202の1又は複数の流路601の寸法及び水カートリッジ202を通る流量は、水の所要の捕集された部分が、水カートリッジ202内の捕捉呼吸の滞留時間の間に水カートリッジ202の流路601の壁部に拡散することができるようなものである必要があることが要求されるであろう。T1.5の温度依存性を想定すると、水の拡散係数は、D=0.21*(T/298.12)1.5として推定することができ、25℃での水の拡散係数は0.21cm2/sであり、Tは、ケルビン温度である。拡散係数が分かると、当業者は、無次元拡散パラメータ=dL/Qを計算することができ、Lは水カートリッジ流路601の長さ、Qは容積空気流量である。
【0160】
計算した拡散パラメータμを使用して、捕捉効率(パーセント)は、Baron and Willeke (B&W) Aerosol Measurement, 2nd Edition, J Wiley and Sons, 2001に出典された以下の式を使用して計算することができる:
【0161】
[1-0.81905*e-3.6568*μ+0.09753*e-22.305*μ+0.0325*e-56.961*μ+0.01544*e-107.62*μ]*100
【0162】
上記の式は、μのみに依存するので、捕捉効率は、D、L、及びQのみに依存することが分かる。Dは、T1.5に比例するので(Tは、ケルビン温度)、捕捉効率は、L*T1.5/Qによって特徴づけることができる。90%よりも大きい捕捉効率が望まれる場合、L*T1.5/Q>C*10000であり、C=5.0、Lはcm、Qはリットル/分である。99%よりも大きい捕捉効率が望まれる場合、C=11である。99.9%よりも大きい捕捉効率が望まれる場合、C=16である。99.99%よりも大きい捕捉効率が望まれる場合、C=21である。勿論、これらの回収効率を達成するために、上述したように十分に低い温度を使用する必要がある。
【0163】
流路内での一定の容積流量での水の回収は、流路直径dと無関係であり、所与の長さ及び容積流量に関して、滞留時間は、d2として増加するが、距離分子は、t1/2としての平均スケールで拡散する(tは、時間である)。水分子が壁部に当たるためにはおよそdの距離を拡散する必要があることを考慮すると、直径が大きくなると、滞留時間は、まさに分子が大きな直径によって拡散するための十分な時間を与えるために必要とされる係数だけ長くなることが分かる。例示的に、水カートリッジ流路の直径が2倍になると、滞留時間は、約4倍だけ長くなり、その結果、2倍の直径に等しい、約2倍の拡散距離の増大につながる。
【0164】
別の興味深い結果は、複数のチャネルが平行に使用される場合、μの計算に使用される長さLは、流路の長さの合計であることである。これは、以下の例から理解することができる。長さLの所与の流路が結果的にC%の捕捉効率のとなる場合、代わりに長さL/nのn流路を使用すると、結果的に、各流路において容積流量の1/nとなり、各1/n長の流路における滞留時間は、全長流路の元の滞留時間に等しいことを意味する。従って、水分子は、同じ直径の流路を横切って拡散するために同じ時間量を有し、その結果、同じ捕捉効率Cとなる。
【0165】
1つの実施形態において、水カートリッジ202内の100mlの呼気中の水蒸気の99.9%を捕捉することが望まれる。上記の情報を使用すると、これは、約-45℃の温度で保持された水カートリッジ202を介して空気を約0.4LPMの流量で移送することによって達成することができ、水カートリッジ202は、約2.5cmの長さの8つの流路で構成される。
【0166】
水カートリッジ202は、限定されるものではないが、標準的な冷凍機及びペルティエ熱電冷却機(TEC)を含む何らかの手段によって冷却することができる。好適なTECの実施形態は、限定されるものではないが、1又は2以上の2段TEC、1又は2以上の3段TEC、又は、3よりも大きな段の1又は2以上のTECを含む。
【0167】
好適な実施形態において、水カートリッジ202は、低温液体、好ましくは液体窒素(LN2)224を使用して冷却される。大気圧でのLN2 224の温度は、-196℃(77K)であるので、一般的に、水カートリッジ202は、LN2 224の中に沈むことはないであろう。1つの実施形態において、水カートリッジ202は、LN2 224が蒸発又はボイルオフする際に放出されるガスによって冷却される。この冷却は、液体窒素224の中に沈められた抵抗器222を使用して向上させることができる。好適な抵抗器222は、限定されるものではないが、25Ω又は50Ω、10、25、50、75、又は100ワットの電力抵抗器を含む。代替的に又は付加的に、水カートリッジ202は、液体窒素224の中に延びるコールドフィンガー225によって冷却することができる。好ましくは、コールドフィンガー225は、限定されるものではないが、好ましくは銅、アルミニウム、鋼、及びステンレス鋼、その組み合わせなどを含むリストから選択された金属で構成される。好ましくは、コールドフィンガー225は、約1/16インチ(1.588mm)以上、約1/8インチ(3.175mm)以上、約3/16インチ(4.763mm)以上、又は約1/4インチ(6.35mm)以上の直径のロッドである。円形断面のロッドが好適であるが、同じ断面積の何らかの形状断面を使用することができる。好適な断面積は、0.0031平方インチ(2mm2)よりも大きいか又は約0.0031平方インチ、0.0123平方インチ(7.94mm2)よりも大きいか又は約0.0123平方インチ、0.0276平方インチ(17.8mm2)よりも大きいか又は約0.0276平方インチ、もしくは0.0491平方インチ(31.7mm2)よりも大きいか又は約0.0491平方インチである。
【0168】
水カートリッジ202の温度は、コールドフィンガー225の寸法、沈められた電力抵抗器222に伝達される熱、水カートリッジ202上に取り付けられた電力抵抗器221に伝達される熱、又はTEC(図示せず)に供給される電流を制御することによって、閉ループ制御なしで制御することができる。しかしながら、これらの方法は、水カートリッジ202の温度が、液体窒素224の高さ、LN2バス224上の熱負荷量、従って、LN2 224からのボイルオフ率、及び水カートリッジ202上の熱負荷とともに変化することになるという欠点を有する。好適な実施形態において、水カートリッジ202の温度は、閉ループサーボ制御される。限定されるものではないが、比例、積分、微分(PID)及びモデル規範形適応制御(MRAC)のリストから選択された方法を含む、何らかの適切な制御方法を使用することができる。好ましくは、サーボは、水カートリッジ202と密接に熱接触する温度センサー226の温度を制御する。温度センサー226は、限定されるものではないが、抵抗器、熱電対を含む何らかの適切な温度センサー技術とすることができ、好ましくはシリコンダイオードである。好ましくは、サーボは、限定されるものではないが、カートリッジ202と接触する抵抗器226を加熱する;水カートリッジ202に接触する1又は2以上のTEC(図示せず)で水カートリッジ202を加熱及び/又は冷却する;及び/又は、液体窒素224の中に沈められた電力抵抗器222への電流を制御する、方法によって温度を制御する。好ましくは、電力抵抗器221は、コールドフィンガー225が使用される場合はその近くで水カートリッジ202に取り付けられ、また、温度センサー226は、コールドフィンガー225の近くに位置する。これによって、水カートリッジ202を横切る温度勾配を最小限にすることができる。好ましくは、水カートリッジ202上の2箇所での何らかの温度差は、約10℃かそれ未満、約7.5℃かそれ未満、約5℃かそれ未満、約2.5℃かそれ未満、又は、約1℃かそれ未満である。
【0169】
一部の実施形態において、水カートリッジ202は、例えば、システム200が液体窒素224で完全に満たされる前に予冷される。水カートリッジ202は、限定されるものではないが、冷凍庫に貯蔵する、低温流体、好ましくは液体窒素に浸す、もしくは1又は2以上のTECで冷却することを含む方法によって予冷することができる。好ましくは、水カートリッジ202は、低温維持装置223を低温流体224(例えば、呼吸カートリッジ203が浸漬されることになる)、好ましくはLN2 224で満たすことによって、低温流体224を水カートリッジ202上に注入することによって予冷される。これは、上段に水カートリッジ202を備え、下段に低温流体224を収容する2段低温維持装置223を有することによって行うことができる。2つの段は、低温流体224が水カートリッジ202上に注入された場合に低温流体224が上段から下段に流出する通路211によって接続することができる。また、通路は、LN2 224のブローオフからの冷却された窒素ガスを冷却のために水カートリッジ202上に導く導管としても有用である。また、通路は、水カートリッジ202からLN2 224までのコールドフィンガー225として使用され、捕捉空気を水カートリッジ202から少なくとも部分的にLN2 224の中に沈められた呼吸カートリッジ203に導く管体として使用され、水カートリッジ202及び呼吸カートリッジ203を通過した空気をLN2 224から外に導く管体で構成されるシュノーケル212として使用され、及び/又は、好ましくは呼吸カートリッジ203が依然としてLN2 224の中に沈められている場合に呼吸カートリッジ203(例えば、
図11)上の1又は2以上の弁を作動する機構1100に使用される。
【0170】
呼吸チャンバ204と同様に、VOCの損失を最小限にするために、捕捉呼吸に晒される水カートリッジ202の表面積を最小限にすることが好ましい。従って、水の捕集は、水カートリッジ流路601の直径とは無関係であるが、VOCに晒された表面積を最小限にするために直径を最小限にすることが好ましい。円形の流路601は、所与の横断面積、圧力降下などに関して最小の露出表面積を有するので、円形断面流路601を使用することが好適である。好ましくは、水カートリッジ202は、対象の1又は2以上のVOCの50%未満又は約50%、10%未満又は約10%、5%未満又は約5%、2%未満又は約2%、1%未満又は約1%、又は、0.5%未満又は約0.5%を捕捉する。
【0171】
実施形態における別の特徴は、水カートリッジ202によって捕集された水が空気の流れを遮断しないことである。一般的に、水カートリッジ202は、0℃未満の温度に維持されることになり、従って、水は氷の形態で捕集されることになる。上述したように、捕捉呼吸は、100mlの呼吸当たり約3.8mgと同量の水を含有することになり、これは100mlの捕捉呼吸当たり少なくとも4.07μlの氷容積を有する。従って、水カートリッジ202内の1又は複数の流路601の容積は、100mlの捕捉呼気当たり約4μlを超えることが重要である。しかしながら、水カートリッジ202は、例えば、水の約99.9%を捕集する高い捕捉効率を有することが好ましい。この場合、水カートリッジ202が1又は2以上の円筒形チャンネル601で構成される場合、水カートリッジ202の流路601のうちの最初の1/3は、水の約90%を捕集することになり、2番目の1/3は、水の約9%を捕捉することになり、3番目の1/3は、水の約0.9%を捕捉することになる。従って、水カートリッジ流路601のうちの最初の1/3の容積は、0.9*4.07μlを超えるか又は3.66μlである必要があり、11μlを超えるか又は約11μlの水カートリッジ容積を意味する。例えば、水は、最初の1/3、例えば、12.5μlよりも大きいか又は約12.5μl、15μlよりも大きいか又は約15μl、17.5μlよりも大きいか又は約17.5μl、もしくは20μlよりも大きいか又は約20μlの上流セクションに選択的に堆積されることになるので、依然としてより大きな容積の水カートリッジが好適である。
【0172】
好適な水カートリッジ流路601は、100mlの捕捉空気当たり10lを超えるか又は約10l、25lを超えるか又は約25l、もしくは50lを超えるか又は約50lの容積を有する。好ましくは、水カートリッジ202流路容積は、捕捉される水の予想量の3倍を超えるか又は約3倍、6倍を超えるか又は約6倍、10倍を超えるか又は約10倍、もしくは20倍を超えるか又は約20倍である。VOC堆積は、最小限にされ、従って、水カートリッジ202の表面積が最小限にされる場合、テーパー付きの、例えば、円錐形の流路を使用することができる。好ましくは、テーパーは、水カートリッジ202のうちの最初の1/3の容積が、3.66μlよりも大きいか又は約3.66μlの容積を有し、2番目の1/3が、0.366lよりも大きいか又は約0.366lの容積を有し、3番目の1/3が、100mlの捕捉呼吸当たり0.0336μlよりも大きいか又は約0.0336μlの容積を有するようなものである。
【0173】
また、水は、分子ふるいなど、CO2を除去するプロセスを使用して除去することができ、下記を参照されたい。
【0174】
二酸化炭素カートリッジ
水の除去に加えて、圧力を低減して定量性能を向上させるために、CO2カートリッジ213を使用して二酸化炭素を除去することは有用であろう。二酸化炭素は、限定されるものではないが、モレキュラーシーブ、水酸化ナトリウム及び水酸化リチウムを含むがこれに限定されないアミンスクラビング(amine scrubbing)する鉱物及びゼオライト、活性炭、金属有機構造体、必要に応じて低温での吸着、バイオリアクター、及び逆熱交換を含む、多くの方法によって除去することができる。
【0175】
1つの実施形態において、CO2カートリッジ213は、分子ふるいを備える。好ましくは、分子ふるいは、水及びCO2を除去するが、より大きなVOCの損失を最小限にするように選択された孔径を有する。好適な孔径は、1オングストロームよりも大きいか又は約1オングストローム、2オングストロームよりも大きいか又は約2オングストローム、3オングストロームよりも大きいか又は約3オングストローム、4オングストロームよりも大きいか又は約4オングストローム、もしくは5オングストロームよりも大きいか又は約5オングストロームを含む。
【0176】
もしくは、CO2は、上述の水カートリッジ202と類似のシステムを使用して除去することができる。
図15は、CO2の相図を示す。三重点1501は、CO2の液相、固相、及び気相が共存する-56.6℃及び518kPaでの点である。CO2昇華点1502は、CO2の固相及び気相は、-78.5℃の1つの大気で平衡状態にあるところである。呼気終期の呼気中のCO2の濃度において、約-115℃、又は約-114~約-116℃、又は約-112~約-118℃、又は約-110~約-120℃でのCO2飽和点1503は、CO2が呼気から除去され始めるところであり、90%の除去点1504は、CO2の90%が、約-135℃、又は、約-134~約-136℃、又は、約-132~約-138℃、又は、約-130~約-140℃で表面と均衡状態にある場合に除去されるところである。CO2カートリッジ213から失われるVOCの量を最小限にするために、以下のプロセスを使用することができる。最初に、CO2カートリッジ213を90%の除去点1504に冷却することによってCO2の90%を捕捉する。その後、CO2カートリッジ213を通過する空気及びVOCは、呼吸カートリッジ203に通され(下記を参照されたい)、残りのVOCが捕捉濃縮される。その後、パージガスは、CO2カートリッジを通過し、その後、呼吸カートリッジ203に到達する前に分流されるが、CO2カートリッジ213の温度は、CO2飽和点1503に高められ、その間に、CO2は気相に戻されて除去される。その後、呼吸カートリッジ203を通るパージガス流が回復され、CO2カートリッジ213の温度は、-100℃を超えるか又は約-100℃に高められ、それによって、CO2飽和点1503より高い温度でCO2カートリッジ213によって前もって捕捉されたVOCは、CO2カートリッジ213から放出され、呼吸カートリッジ203によって捕捉される。
【0177】
また、分子ふるい及び低温吸着を含む、CO2を捕捉する方法の多くは、水を捕捉することになり、別個のCO2カートリッジ203及び水カートリッジ202が不用になる。
【0178】
呼吸カートリッジ
空気が随意的にCO2カートリッジ213及び/又は水カートリッジ202を通過した後、空気は、好ましくは呼吸カートリッジ203に導かれる。呼気中には潜在的に対象のVOCがあり、その一部は、
図7に含まれている。呼気VOCは、一般的に、限定されるものではないが、複数の炭素及び水素原子を含む成分で構成され、酸素、窒素、及び硫黄を含む場合もある。
【0179】
呼吸カートリッジ203は。吸収媒体で構成することができ、低い温度、例えば、0℃未満又は約0℃、-20℃未満又は約-20℃、-40℃未満又は約-40℃、-60℃未満又は約-60℃、-80℃未満又は約-80℃、もしくは-100℃未満又は約-100℃に維持することができる。温度は、水カートリッジ202に関して上述した方法のいずれかを使用して実現して制御することができる。これらの温度では、一般的にVOCの捕捉効率は低く、これは、
図1に参照して上述したように高い可変性をもたらす。また、この方法は、一般的に、大きな表面積及びVOCを放出するための加熱を必要とする。
【0180】
好適な実施形態において、呼吸カートリッジ203は、吸収体で構成されず、VOCは、1又は2以上の流路の壁部上への吸着によって捕捉される。好ましくは、呼吸カートリッジ203は、捕捉呼気が呼吸カートリッジ流路901の壁部と平衡した場合に対象のVOCが所望のレベルで捕捉されるような温度に冷却される。このような呼吸カートリッジ203の1つの実施形態を
図8に示す。
図9は、
図8に提示された呼吸カートリッジ203の実施形態において使用することができる複数の線形流路を有するインサートを示す。複数のチャネル901を有する呼吸カートリッジ203を製作する1つの方法は、溝901が表面上にあるインサート900を製作し、その後、インサート900を管体801に入れる方法である。溝は、何らかの適切な外形形状とすることができ、例えば、溝は、管体に平行に延在すること、又はインサートの外側に沿った多重らせんとすることができる。インサート900は、何らかの適切な材料で作ることができる。インサート900の好適な材料は、流路901の内壁の加熱を最小限にするために、比較的高い熱伝導率を有する。インサート900の好適な材料は、金属、好ましくはアルミニウムである。管体801の好適な材料は、金属、好ましくはステンレス鋼である。
【0181】
呼気中の対象のVOCは、100パートパービリオン(PPB)未満又は約100パートパービリオン(PPB)から、10PPB未満又は約10PPB、1PPB未満又は約1PPB、0.1PPB未満又は約0.1PPB、及び/又は、0.01PPB未満又は約0.01PPBの範囲とすることができる。上述したように、呼吸カートリッジ203に入る対象の大部分のVOCは捕捉されることが望ましい。好ましくは、対象のVOCの捕捉効率は、50%を超えるか又は約50%、90%を超えるか又は約90%、99%を超えるか又は約99%、もしくは99.9%を超えるか又は約99.9である。これを達成するために、呼吸カートリッジ203の温度は、呼吸カートリッジ203の露出面と均衡状態にある対象のVOC蒸気圧が、それぞれ、対象の呼気VOCの分圧の50%、10%、1%、又は0.1%未満であるようなものである必要がある。加えて、呼吸カートリッジ203の寸法及び捕捉呼吸の容積流量は、呼吸カートリッジ203内で十分な滞留時間があり、所望の回収効率に等しい対象のVOCの所定の割合が呼吸カートリッジ流路901の露出面に拡散する時間を有するようなものである必要がある。この状況は、上述の水カートリッジ202に非常に類似するが、拡散係数は、分子量の逆二乗かつ温度の1.5乗によって概算でき、一般にVOCの分子量は水よりも大きいので、状況はより厳しい。好ましくは、呼吸カートリッジ203の温度は、-100℃未満又は約-100℃、-120℃未満又は約-120℃、-140℃未満又は約-140℃、-160℃未満又は約-160℃、もしくは-180℃未満又は約-180℃である。
【0182】
好適な実施形態において、呼吸カートリッジ203は、低温流体224の中に、好ましくは液体窒素224に完全に又は部分的に沈められ、呼吸カートリッジ203の沈められた部分の温度は、約-196℃である。より高い温度は、例えば、LN2ボイルオフ蒸発及び圧力逃がし弁を用いて、LN2 224より上の空気を加圧することによって達成することができ、より低い温度は、例えば、真空ポンプを使用して減圧することによって達成することができる。
【0183】
温度要件に加えて、呼吸カートリッジ203の寸法及び呼吸カートリッジ203を通る流量は、対象のVOCの所要の捕集された部分が、呼吸カートリッジ203内の捕捉呼気の滞留時間中に呼吸カートリッジ流路601の壁部に拡散することができるようなものである必要があるということも要求される。T1.5の温度依存性及びm-1/2の拡散係数の分子量依存性を想定すると、拡散係数は、O2などの良好に特徴づけられた分子の拡散係数からのスケーリングによって様々なVOCについて推定することができ、O2は、25℃で0.176cm2/sの拡散係数を有する。VOCの拡散係数は、以下の式、D=0.176*(T/298.12)1.5*(32/mvoc)5を使用して推定することができ、Tはケルビン温度である。拡散係数が分かりと、無次元拡散パラメータμ=πDL/Qを計算することができ。Lは呼吸カートリッジ203流路の長さ、Qは容積空気流量である。
【0184】
計算された拡散パラメータで、パーセントでの捕捉効率は、Baron and Willeke (B&W) Aerosol Measurement, 2nd Edition, J Wiley and Sons, 2001に出典された以下の式を使用して計算することができる。
【0185】
[1-0.81905*e-3.6568*μ+0.09753*e-22.305*μ+0325*e-56.961*μ+0.01544*e-107.62*μ]*100
【0186】
上記の式は、μのみに依存するので、捕捉効率は、D、L、及びQのみに依存することが分かる。Dは、所与のVOCに関してm-1/2(mは分子量)に比例するので、捕捉効率は、L/(m1/2Q)により特徴づけることができる。50%よりも大きい捕捉効率が望まれる場合、L/(m1/2Q)>Cであると計算することができ、C=1.5である。75%よりも大きい捕捉効率が望まれる場合、C=3.5である。90%よりも大きい捕捉効率が望まれる場合、C=6である。95%よりも大きい捕捉効率が望まれる場合、C=8である。99%よりも大きい捕捉効率が望まれる場合、C=13である。
【0187】
上述した水カートリッジ202の場合と同じ方法で、呼吸カートリッジ203の捕捉効率は、流路901の直径(又は、非円形の断面流路の同じ横断面寸法)と無関係であり、長さLは、複数のチャネル901の合計長さであることが分かる。
【0188】
1つの実施形態において、呼吸カートリッジ203内の呼気中のウンデカン(C11H24)蒸気の99%を捕捉することが望まれる。-196℃でのウンデカンの推定拡散係数は、0.0105cm2/sである。上記の情報を使用すると、所望の捕捉効率は、捕捉呼吸を0.4LPMの流量で移送して-196℃の温度に保持された呼吸カートリッジ203に通すことによって達成することができ、カートリッジ202は、長さ4.0cmの16の流路で構成される。
【0189】
LN2 224への浸漬の代替案として、呼吸カートリッジ203は、限定されるものではないが、標準的な冷凍機及びペルチェ熱電冷却機(TEC)を含む何らかの手段によって冷却することができる。好適なTEC実施形態は、限定されるものではないが、4又は5以上の段、5又は6以上の段、6又は7以上の段、もしくは7又は8以上の段のTECを含む。
【0190】
図7は、潜在的に関心のあるVOCの非限定的な選択のための飽和蒸気圧(急勾配の曲線)及び文献値に基づいた呼気VOCの対応する予想蒸気圧(より平坦な曲線)を示す。曲線が交差する点は、VOCが空気中で飽和するところである。曲線から分かるように、これらの予想呼気VOC濃度の全ては、LN2の温度-196℃よりかなり上の温度で飽和する。例えば、イソプレンは、
図7で分析された何らかのVOCの最も低い温度約-167℃に冷却された場合に飽和することが予想される。約-185℃の温度において、飽和圧力は、呼気イソプレンの予想された圧力の1/1000である。196℃において、呼吸カートリッジ203の回収効率は、一般的に、温度ではなく呼吸カートリッジ203の流路の物理的寸法によって制限されることになる。
【0191】
好ましくは、呼吸カートリッジ203内の流路901の全長(流路901長さx流路901の数)は、20cmよりも大きいか又は約20cm、30cmよりも大きいか又は約30cm、40cmよりも大きいか又は約40cm、50cmよりも大きいか又は約50cm、60cmよりも大きいか又は約60cm、もしくは70cmよりも大きいか又は約70cmとすることができる。
【0192】
好ましくは、呼吸カートリッジ203は、各側面に、呼吸カートリッジ203をVOCの捕集後に閉鎖して保存及び移送の間に封止状態に維持することを可能にする弁1001を有することができる。
図10は、
図8に示す呼吸カートリッジ203のエンドキャップ802に組み込まれ、
図9のインサート900を利用する呼吸カートリッジ203の弁1001の1つの実施形態を示す。
図10aは、閉鎖位置にある1つの弁を示す。空気の流れは、シール1002によって遮断することができる。
図10bは、開放位置にある弁1001を示す。弁1001が作動されて、
図8の呼吸カートリッジ203のエンドキャップ802を一緒に押す。これにより、シール1002はインサートの軸1003に滑り落ち、シール1002は、インサート900の軸1003上の軸方向の溝902を露出し、捕捉呼気は、溝902を通過すること、それによって呼吸カートリッジ203を通過することができる。
【0193】
別の実施形態において、呼吸カートリッジ203は、弁、好ましくはボール弁を有する1本の管体で構成される。好ましくは、管体は、1/16インチ(1.588mm)よりも大きいか又は約1/16インチ、1/8インチ(3.175mm)よりも大きいか又は約1/8インチ、3/16インチ(4.763mm)よりも大きいか又は約3/16インチ、又は、1/4インチ(6.35mm)よりも大きいか又は約1/4インチの外径を有する。好ましくは、内径は、外径の1/5よりも大きいか又は約外径の1/5、外径の1/4よりも大きいか又は約外径の1/4、外径の1/2よりも大きいか又は約外径の1/2、外径の75%よりも大きいか又は約外径の75%、もしくは外径の約90%よりも大きいか又は外径の約90%である。長さは、好ましくは、弁をLN2 224から離れた状態にして動作温度範囲内の温度、好ましくは-20℃以上を維持するように、4cmを超えるか又は約4cm、6cmを超えるか又は約6cm、8cmを超えるか又は約8cm、10cmを超えるか又は約10cm、15cmを超えるか又は約15cm、もしくは20cmを超えるか又は約20cmだけ増量される。随意的に、弁は、制御温度に加熱することができる。LN2 224の中のより長い長さの浸漬は、コイル状のデザインを使用することによって対応することができる。コイル呼吸カートリッジ203の1つの実施形態は、0.05cmの内径を備える100cmの管体を有する。90cmの長さがLN2 224の中に浸漬され、捕捉呼吸が0.5lpmの流量で管体を通過する場合、ウンデカン(156.31の比較的高い分子量のために捕捉するのが難しいVOCの1つ)の予測捕捉効率は、99.4%である。
【0194】
好ましくは、呼吸カートリッジ203の弁1001は、呼吸カートリッジ203のウォームアップ時にVOCが呼吸カートリッジ203から逃げないことを保証するために、LN2 224からの除去の本質的に直後に閉鎖される。より好ましくは、呼吸カートリッジ203弁の1001は、呼吸カートリッジ203が依然としてLN2の下にある間に作動される。
図11は、呼吸カートリッジ203弁作動機構1100の可能性のある実施形態を示す。ねじ付きロッド1101は、呼吸カートリッジ203の両端上に2つのねじ1102を配置するために使用される。LN2 224の中に沈められる前に、上方ねじ1102は前進して弁1001を開放する。VOCの捕集後、上方ねじ1102は後退して呼吸カートリッジの弁1001を閉鎖する。好適な実施形態において、ねじ付きロッド1101の上部セクション1103は、水カートリッジ202の孔の直径まで細くされており、水カートリッジ202を冷却するコールドフィンガー225として使用される。
【0195】
好ましくは、呼吸カートリッジ203内の圧力は、LN2 224の中に沈められている間に、例えば、VOC捕集の間に大気圧を超えるか又は大気圧にほぼ等しい。好ましくは、呼吸カートリッジ203内の圧力は、漏れがある場合にLN2がシステム200に入らないように、呼吸カートリッジ203の最下地点でLN2 224の圧力を上回る。LN2 224の6''の深さで、LN2 224の圧力水頭は、約1.2kPaである。好ましくは、呼吸カートリッジ203の中のゲージ圧は、0.5kPa、1kPa、2kPa、3kPa、5kPa、10kPa、15kPa、又は20kPaを超えるか又はこれらに維持される。
【0196】
呼吸カートリッジ203の弁1001が閉鎖され、呼吸カートリッジ203が周囲温度にウォームアップされる場合に、77Kでの呼吸カートリッジ203の内部ガス圧は、ほぼLN2の温度(77K)に対する最終温度(ケルビン単位)の比率だけ上昇することになる。初期圧力が、圧力をLN2 224の初期圧力(上記パラグラフを参照)、103.3kPaより上に保つために、1大気圧(101.3kPa)プラス2kPaであり、移送又は保存中に呼吸カートリッジ203が313K(40℃)の温度に晒される実施例に関して、呼吸カートリッジ203内の終圧は、103*313/77=419kPa又は4.13大気圧である。加えて、呼気CO2が呼吸カートリッジ203に捕捉される場合、暖めると、CO2は気相に戻り、圧力に寄与することになる。肺周辺部から吐き出される通常の空気は、約0.05大気圧のCO2レベル(呼気終末CO2)を有することになる。例示的に、5%CO2を含有する呼吸が容積100mlの呼吸チャンバ204に捕捉され、その後、1ml呼吸カートリッジ203に濃縮される場合、室温に暖めた後の終圧は、0.05atm*100ml/1ml=5atmになる。従って、呼吸カートリッジ203及び呼吸カートリッジ弁1001は、呼吸カートリッジ203の容積、呼吸チャンバの容積、及びCO2が呼吸カートリッジ203に捕捉されるか否かに応じて、4大気圧を超えるか又は約4大気圧、4.5大気圧を超えるか又は約4.5大気圧、5大気圧を超えるか又は約5大気圧、7.5大気圧を超えるか又は約7.5大気圧、10大気圧を超えるか又は約10大気圧、20大気圧を超えるか又は約20大気圧、30大気圧を超えるか又は約30大気圧、もしくは40大気圧を超えるか又は約40大気圧の内圧に耐えことができる必要がある。
【0197】
好ましくは、呼吸カートリッジ流路901の内部表面積は、呼吸カートリッジ203が室温に暖められた後に最小量のVOCが捕捉呼吸に晒された表面積に結合するように最小限にされる。好ましくは、捕捉呼吸に晒された総表面積は、50cm2未満又は約50cm2、25cm2未満又は約25cm2、15cm2未満又は約15cm2、10cm2未満又は約10cm2、もしくは5cm2未満又は約5cm2である。
【0198】
弁1001が定量のために開放される場合に十分に高い割合のVOCが放出されるように、呼吸カートリッジ203は、定量のために呼吸カートリッジ弁1001が開放される前に加熱することができる。呼吸カートリッジ203は、50℃よりも大きいか又は約50℃、50℃よりも大きいか又は約50℃、75℃よりも大きいか又は約75℃、100℃よりも大きいか又は約100℃、150℃よりも大きいか又は約150℃、200℃よりも大きいか又は約200℃、もしくは250℃よりも大きいか又は約250℃の温度に加熱することができる。好ましくは、呼吸カートリッジ203の材料及び流路901の表面積は、加熱が必要とされないようなものである。好ましくは、放出温度で、呼吸カートリッジ203は、捕捉されたVOCの50%を超えるか又は約50%、90%を超えるか又は約90%、95%を超えるか又は約95%、又は、99%を超えるか又は約99%を放出する。
【0199】
呼吸カートリッジ203及び呼吸カートリッジ203に至る管体の一部がLN2 224の中に沈められる場合、対象のVOCの約1%~約25%を捕集することができる。従って、好ましくは、-150℃を超えるか又は約-150℃、-125℃を超えるか又は-125℃、-100℃を超えるか又は-100℃、もしくは-125℃を超えるか又は-125℃の温度で、第1の呼吸カートリッジ弁1001、LN2 224の外の上流側の全ての管体及び取付け具を有することが好適である。
図7から分かるように、表示されたVOCは、ウンデカン以外は-100℃を超えて飽和に到達しないことになり、ウンデカンは、-100℃を若干超える。従って、第1の呼吸カートリッジ弁1001の温度は、約-100℃に又は約-100℃を超えて保つことが好ましい。これは、流路901を暖める原因にならないことが重要である。これは、例えば、低い熱伝導の構成要素を第1の弁1001と呼吸カートリッジ流路901との間に利用する呼吸カートリッジ203のデザインによって達成することができる。好ましくは、呼吸カートリッジ203の第1の呼吸カートリッジ弁1001への入口側は、好ましくは、電流を電力抵抗器R2に印加することで能動的に加熱され、場合によっては水カートリッジ202に関して説明しものと類似する温度制御装置を含む。
【0200】
一部の構成において、周囲空気は、呼吸カートリッジ203がLN2 224の中に沈められた時点から呼吸カートリッジ203の中に存在しないことを保証することが好ましいであろう。呼吸カートリッジ203の中の空気は、呼吸カートリッジ203の中に氷が形成される原因となる可能性があり、潜在的に呼吸カートリッジ203の捕捉特性を阻止する又は変更する。また、呼吸カートリッジ203に接続する管体が他端で空気に晒される場合、LN2の中に沈められる際に、呼吸カートリッジ203は、推定上、窒素などの空気成分(若干高い圧力にあり(上記の説明を参照)、従って、-196℃で凝縮することになる)及び呼吸カートリッジ203の中の水の凝縮に起因して、実際に100ml/分の程度で開放端に空気をポンプ圧送することができることが分かっている。従って、
図2に示すように、システム200は、好ましくは、パージガス、好ましくは不活性パージガスの供給源210が設けられる。不活性ガスは、限定されるものではないが、アルゴン、キセノン、窒素、又はクリプトン、好ましくはネオン、最も好ましくはヘリウムを含む。水素は、不活性ではないが、窒素よりも低い沸点を有し、従って、呼吸カートリッジ203内で凝縮を生じる傾向になく、従って、パージガスとして使用することができる。パージガスの純度は、好ましくは、99.9%よりも高いか又は約99.9、99.99%よりも高いか又は約99.99、99.999%よりも高いか又は約99.999、もしくは99.9999%よりも高いか又は約99.9999である。好ましくは、呼吸カートリッジ203の温度が-196℃である場合、呼吸カートリッジ203を通過したパージガスの全容積でのパージガス内の対象のVOCの量は、呼気の捕捉容積中で予想された量の10%未満又は約10%、1%未満又は約1%、もしくは0.1%未満又は約0.1%である。
【0201】
呼吸カートリッジ203が暖められる際に、呼吸カートリッジ203内の圧力は呼吸カートリッジ203の封止を損なうまで増加する可能性があるので、LN2 224は、呼吸カートリッジ203の中に漏出しないことが好ましい。従って、呼吸カートリッジ203内のパージガスのゲージ圧は、LN2 224内の最も深いシステム構成要素の深さでLN2 224の圧力水頭よりも高いことが好ましい。例えば、LN2 224の15cmの深さで、圧力は、周囲空気を約1.2kPaだけ上回る。従って、呼吸カートリッジ203内のパージガスは、1.2kPaを上回る、2kPa又は2kPaを上回る、3kPa又は3kPaを上回る、5kPa又は5kPaを上回る、もしくは10kPa又は10kPaを上回るゲージ圧に維持されることが好ましい。さらに、捕捉効率は上述したように流量の影響を受けるので、捕捉呼吸が呼吸カートリッジ203を通って流れる場合に捕捉呼吸の流量を制御することが重要である。
図2の実施形態において、呼吸カートリッジ203内の圧力及び流量は、同時に、圧力変換器218よって測定される及び圧力流量計215によって測定される流量を監視しながら、圧力調整器214を使用してパージガスの圧力を調整し、ニードル弁216を使用して流量制限を調整することによって制御される。
【0202】
ボール弁217は、呼吸カートリッジ203を分離するためにボール弁219及び207と連動して使用することができる。これは、呼吸カートリッジ203をLN2 224バスから外にゆっくりと持ち上げながら、圧力変換器218を使用して圧力減衰を監視することによって、又は、LN2気化に起因する圧力の大きい急激な増加がないか確認することによって漏れの診断を可能にする。
【0203】
非限定的な実施例において、
図2に示すシステム200の使用方法は、以下の通りである。
【0204】
1:清浄な呼吸カートリッジ203をシステム200に取り付ける。
【0205】
2:パージガスタンク210が圧力調整器214を介して呼吸チャンバ204に取り付けられるようにボール弁208を回転させる。
【0206】
3:呼吸チャンバ204がボール弁219に取り付けられるようにボール弁207を回転させる。
【0207】
4:呼吸チャンバ204が随意的な水カートリッジ202及び随意的なCO2カートリッジ213を介して呼吸カートリッジ203に取り付けられるようにボール弁219を回転させる。
【0208】
5:パージガスタンク210の主弁を開放する。
【0209】
6:圧力変換器218が10kPaであり、流量計215が0.4LPMを示すように圧力調整器214及びニードル弁216を調整する。
【0210】
7:パージガスを10分間流すことでシステム200をパージする。
【0211】
8:パージガスタンク210に接続するようにボール弁219を回転させる。
【0212】
9:圧力及び流量がステップ6で特定された通りであることを確認し、必要に応じて調整する。
【0213】
10:呼吸カートリッジ203を低温維持装置223の中に置く。
【0214】
11:LN2 224を水カートリッジ202に注ぎ入れることで低温維持装置223LN2 224を満たす。
【0215】
12:水カートリッジ温度調節器の温度を-55℃に設定し、呼吸カートリッジ203及び水カートリッジ202の温度を平衡させる。
【0216】
13:呼吸カートリッジ203が平衡している間に、圧力及び流量がステップ6に特定された通りであることを確認し、必要に応じて調整する。
【0217】
14:呼吸チャンバ204がニードル弁209に接続されるようにボール弁208を回転させる。
【0218】
15:被験者に息を吸い込み、息を1秒間止め、唇をマウスピース201に密に当てて、息の吐き出しを開始するように指示する。
【0219】
16:圧力変換器218によって表示された圧力が上昇して、被験者が息を吐き出そうとする試みを示す場合、マウスピース201が呼吸チャンバ204に接続されるようにボール弁207を回転させる。
【0220】
17:被験者が1リットル(事前に較正された圧力変換器218によって測定された流量を積分することによって測定される)を吐き出した場合に、呼吸チャンバ204がボール弁219に接続されるようにボール弁207を回転させる。
【0221】
18:パージガスタンク210に接続されるようにボール弁208を速やかに動かす。
【0222】
19:被験者に息の吐き出しを止めるように指示する。
【0223】
20:ボール弁207に接続されるようにボール弁219を回転させる。
【0224】
21:圧力及び流量がステップ6に特定された通りであることを確認すし、必要に応じて調整する。
【0225】
22:10分間、パージガスによって呼吸チャンバ204、CO2カートリッジ213、水カートリッジ202、及び呼吸カートリッジ203を介して捕捉呼吸を押し出す。
【0226】
23:呼吸カートリッジ弁アクチュエータ1100(図示せず)を使用して呼吸カートリッジ203の弁を閉鎖する。
【0227】
24:呼吸カートリッジ203をLN2 224から取り出す。
【0228】
25:水カートリッジ202の設定値温度を400Kに設定する。
【0229】
26:ヒートガンを使用して呼吸カートリッジ203を室温に暖める。
【0230】
27:呼吸カートリッジ203を取り出して定量に供する。
【0231】
28:10分間、パージガスによって呼吸チャンバ204及び水カートリッジを介して水及び何らかの残留VOCをシステム200から除去する。
【0232】
29:必要に応じてステップ1~27を次の被験者に繰り返す。
【0233】
本明細書で開示される方法、装置、及びシステムは、最も実用的かつ好適な実施形態であると考えられる方法で図示及び説明される。しかしながら、本発明の範疇にある逸脱を行うことができ、本開示を読むと当業者が気付くことになる自明の変更例があることが認識される。
【0234】
本開示は、特定の実施形態を参照して説明されるが、当業者は、本発明の真の精神及び範囲から逸脱することなく様々な変更を行なうことができ、均等物に置換することができることを理解できるはずである。さらに、多くの変更は、特定の状況、材料、組成物、プロセス、1又は複数のステップを本発明の目的、精神、及び範囲に適応させるために行うことができる。全てのこのような変更は、本明細書の特許請求項の範囲の中にあることが意図されている。