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特許7312865フィラー用凍結乾燥体の製造方法及び前記凍結乾燥体を含むフィラー用注射剤の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-12
(45)【発行日】2023-07-21
(54)【発明の名称】フィラー用凍結乾燥体の製造方法及び前記凍結乾燥体を含むフィラー用注射剤の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08J 3/12 20060101AFI20230713BHJP
   C08J 7/00 20060101ALI20230713BHJP
【FI】
C08J3/12 Z
C08J7/00 306
C08J7/00 CFD
【請求項の数】 8
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022008425
(22)【出願日】2022-01-24
(65)【公開番号】P2022113662
(43)【公開日】2022-08-04
【審査請求日】2022-02-24
(31)【優先権主張番号】10-2021-0010204
(32)【優先日】2021-01-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】516229106
【氏名又は名称】ウルトラ ヴイ カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100121382
【弁理士】
【氏名又は名称】山下 託嗣
(72)【発明者】
【氏名】イ,チョン チョン
(72)【発明者】
【氏名】プリシラ,リア
(72)【発明者】
【氏名】クヮァク,ミン ソク
(72)【発明者】
【氏名】ハン,ジョン ウ
(72)【発明者】
【氏名】ハム,ジョン ユル
(72)【発明者】
【氏名】クォン,ハン ジン
【審査官】大村 博一
(56)【参考文献】
【文献】特表2010-505819(JP,A)
【文献】韓国登録特許第10-2089560(KR,B1)
【文献】特表2019-516524(JP,A)
【文献】特表2018-512959(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08J 3/00-3/28;99/00
C08J 7/00-7/02;7/12-7/18
C08K 3/00-13/08
C08L 1/00-101/14
A61K 9/00-9/72;47/00-47/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
親水性表面処理されたフィラー用生分解性高分子微粒子及び生体適合性キャリアを含むフィラー用凍結乾燥体であり、前記親水性表面処理されたフィラー用生分解性高分子微粒子は、平均粒径D 50 が20~50μmであり、表面にカルボキシル基が導入されたポリジオキサノンであり、
前記生体適合性キャリアの含有量が凍結乾燥体100重量部を基準として1~5重量部であり、
前記生体適合性キャリアは、ナトリウムカルボキシメチルセルロースであり、前記凍結乾燥体で水分含有量が0.5~1.0重量%であり、
前記親水性表面処理された生分解性高分子微粒子に対するパウダー水接触角値が35.1~35.7°であるフィラー用凍結乾燥体を製造する方法であって、
平均直径が20~50μmのフィラー用生分解性高分子微粒子を準備する段階と、
フィラー用生分解性高分子微粒子を、放電を用いたプラズマ又は塩基で表面処理して親水性表面処理された生分解性高分子微粒子を製造する段階と、
前記親水性表面処理されたフィラー用生分解性高分子微粒子、生体適合性キャリア及び蒸留水を溶解して混合液を得る段階と、
前記混合液を凍結乾燥して凍結乾燥体を製造する段階とを含み、
前記放電を用いたプラズマで表面処理する段階が、プラズマ発生装置で400~600mL/minで空気を注入し、電源装置が接続された電極に300Hz~500Hzの交流を印加してプラズマ処理された空気が生分解性高分子微粒子に接触するように行うのであり、
前記塩基で表面処理する段階が、生分解性高分子微粒子を0.1~5重量%の水酸化ナトリウム溶液に付加して、これを30秒~5分間撹拌することで処理した後、微粒子を得て、微粒子を洗浄して真空乾燥するのであり、前記水酸化ナトリウムの含有量は、生分解性高分子微粒子100重量部を基準として0.1~5重量部であフィラー用凍結乾燥体の製造方法。
【請求項2】
前記表面処理された生分解性高分子微粒子の粒径D10は、10~20μmであり、表面処理された生分解性高分子微粒子の粒径D90は、60~70μmであることを特徴とする請求項1に記載のフィラー用凍結乾燥体の製造方法
【請求項3】
前記生分解性高分子微粒子の数平均分子量(Mn)は、50,000ダルトン(Dalton)~500,000Daltonであることを特徴とする請求項1に記載のフィラー用凍結乾燥体の製造方法。
【請求項4】
前記生分解性高分子微粒子は、水と混和する(miscible)有機溶媒、及び生分解性高分子を含む第1組成物を提供する段階と、界面活性剤及び水を含む第2組成物を提供する段階と、前記第1組成物と前記第2組成物を混合して混合物を準備する段階と、前記混合物を撹拌して高分子微粒子を含む第3組成物を準備する段階と、前記第3組成物から高分子微粒子を分離する段階と、分離された高分子微粒子から平均粒径20~50μmの高分子微粒子を選別する段階とを含むことを特徴とする請求項に記載のフィラー用凍結乾燥体の製造方法。
【請求項5】
請求項1~請求項4の何れか1項に記載の製造方法によりフィラー用凍結乾燥体を得た後
注射用水、滅菌水、及び蒸留水の中から選択された1つ以上を含むようにするフィラー用注射剤の製造方法
【請求項6】
前記フィラー用注射剤は、凍結乾燥体1gを注射用水、滅菌水及び蒸留水の中から選択された1つ以上の10mLに分散した後、フィラー用生分解性高分子微粒子の沈殿が60分経過後に進行されることを特徴とする請求項5に記載のフィラー用注射剤の製造方法
【請求項7】
前記凍結乾燥体の含有量が、フィラー用注射剤の総重量を基準として、1~10重量部であることを特徴とする請求項5に記載のフィラー用注射剤の製造方法
【請求項8】
前記フィラー用注射剤の粘度が50~2000cPであることを特徴とする請求項5に記載のフィラー用注射剤の製造方法
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フィラー用生分解性高分子微粒子、これを含むフィラー用凍結乾燥体、その製造方法及び前記凍結乾燥体を含むフィラー用注射剤に関する。
【背景技術】
【0002】
生分解性高分子微粒子は、顔面及び全身に適用可能な組織修復用材料として最近大きく注目され始めている材料である。生分解性高分子は、従来のヒアルロン酸ハイドロゲルとは異なり、人体に有害な成分を含まず、6ヶ月~4年の長期間に亘って分解できるので、フィラーのような多様な用途に適用可能である。
【0003】
フィラー用生分解性高分子微粒子は、生分解性高分子の疎水性による低い分散性により天然高分子を含む賦形剤が必ず製品化に共に含まれる。賦形剤は、注射剤の粘度を上げて注射の注入力を上げ、同時に体内への注入後に数週内に分解されて賦形剤が含まれる体積に該当するボリュームが数週内に減少し、施術の満足度を低下させるという短所がある。そのため、賦形剤が全く用いられていない生分解性高分子微粒子フィラーの新たな組成物の開発が必要である。
【0004】
韓国登録特許第10-1942449号は、10~200μmの大きさの生分解性高分子微粒子が10~50重量%だけ含まれるフィラーの組成を提示しており、高分子微粒子を除いた残りは、注射剤の分散性を維持するために、賦形剤が含まれる。
【0005】
しかし、賦形剤の含有量を20%以下に製造する場合、生分解性高分子微粒子の分散性が低下する。
【0006】
従って、賦形剤の使用含有量を減らしても優れた分散性を有する生分解性高分子微粒子を含有するフィラー注射に対する開発の必要性が高い。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであって、その目的は、賦形剤の含有量が減らされた状態で優れた分散性を有しながら、注射の注入が容易なフィラー用凍結乾燥体を提供することにある。
【0008】
本発明の他の目的は、前記フィラー用凍結乾燥体の製造方法を提供することにある。
【0009】
本発明の更に他の目的は、上述したフィラー用凍結乾燥体を含むフィラー用注射剤を提供することにある。
【0010】
本発明の別の目的は、新規なフィラー用生分解性高分子微粒子を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の一側面によって、親水性表面処理されたフィラー用生分解性高分子微粒子及び生体適合性キャリアを含むフィラー用凍結乾燥体であり、前記親水性表面処理されたフィラー用生分解性高分子微粒子の平均粒径D50は、20~50μmであり、前記親水性表面処理された生分解性高分子微粒子は、生分解性高分子微粒子の放電を用いたプラズマ表面処理生成物又は塩基表面処理生成物であり、前記生体適合性キャリアは、凍結乾燥体100重量部を基準として1~5重量部であるフィラー用凍結乾燥体が提供される。
【0012】
本発明の他の側面によって、平均粒径が20~50μmのフィラー用生分解性高分子微粒子を準備する段階と、フィラー用生分解性高分子微粒子を、放電を用いたプラズマ又は塩基で表面処理して親水性表面処理された生分解性高分子微粒子を製造する段階と、前記親水性表面処理されたフィラー用生分解性高分子微粒子、生体適合性キャリア及び蒸留水を溶解して混合液を得る段階と、前記混合液を凍結乾燥して凍結乾燥体を製造する段階とを含んで上述したフィラー用凍結乾燥体を製造するフィラー用凍結乾燥体の製造方法が提供される。
【0013】
本発明の更に他の側面によって、上述した凍結乾燥体と、注射用水、滅菌水及び蒸留水の中から選択された1つ以上を含むフィラー用注射剤が提供される。
【0014】
本発明の別の側面によって、平均粒径D50が20~100μmであり、親水性表面処理されたフィラー用生分解性高分子微粒子であり、前記親水性表面処理されたフィラー用生分解性高分子微粒子は、生分解性高分子微粒子の放電を用いたプラズマ表面処理生成物又は塩基表面処理生成物であるフィラー用生分解性高分子微粒子が提供される。
【発明の効果】
【0015】
本発明によると、フィラー用生分解性高分子微粒子を、減少した賦形剤の使用含有量を用いながらも分散性と注射の注入が容易なフィラー用注射剤を簡単に製造できるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】実施例1の親水性表面処理された生分解性高分子微粒子、比較例1~2の生分解性高分子微粒子の沈殿の評価結果を示すものである。
図2】実施例2の親水性表面処理された生分解性高分子微粒子及び比較例5~6の生分解性高分子微粒子の沈殿の評価結果を示すものである。
図3】本発明の生分解性高分子微粒子の放電を用いたプラズマ反応装置のブロックダイアグラムである。
図4図3のプラズマ反応装置の概略図である。
図5図3のプラズマ反応装置の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下で説明される本創意的思想(present inventive concept)は、多様な変換を加えることができ、様々な実施例を有することができるところ、特定の実施例を図面に示し、詳細に説明する。しかし、これは、本創意的思想を特定の実施形態に対して限定しようとするものではなく、本創意的思想の技術範囲に含まれる全ての変換、均等物又は代替物を含むものとして理解されるべきである。
【0018】
各図面を説明しながら、類似する参照符号を類似する構成要素に対して用いた。添付の図面において、構造物の寸法は、本発明の明確性のために実際よりも拡大して示したものである。第1、第2などの用語は、多様な構成要素を説明するのに用いられることができるが、前記構成要素は、前記用語によって限定されてはならない。前記用語は、1つの構成要素を他の構成要素から区別する目的でのみ用いられる。例えば、本発明の権利範囲から逸脱しないながら、第1構成要素は第2構成要素と称されることもあり、同様に第2構成要素も第1構成要素と称されることもあり得る。単数の表現は文脈上、明確に異なる意味を持たない限り、複数の表現を含む。
【0019】
本明細書において、「含む」又は「有する」などの用語は、明細書上に記載された特徴、数字、段階、動作、構成要素、部品又はこれらを組み合わせたものが存在することを指定しようとするものであって、1つ又はそれ以上の他の特徴や数字、段階、動作、構成要素、部分品又はこれらを組み合わせたものの存在又は付加可能性を予め排除しないものとして理解されるべきである。また、層、膜、領域、板などの部分が他の部分「上に」あるとする場合、これは他の部分の「真上」にある場合だけでなく、その中間に更に他の部分がある場合も含む。反対に層、膜、領域、板などの部分が他の部分の「下部に」あるとする場合、これは他の部分の「真下」にある場合だけでなく、その中間に更に他の部分がある場合も含む。
【0020】
以下、例示的な具現例に係るフィラー用生分解性高分子微粒子、これを含むフィラー用注射剤及びその製造方法についてより詳細に説明する。
【0021】
平均粒径D50が20~50μmであり、親水性表面処理されたフィラー用生分解性高分子微粒子であり、前記親水性表面処理されたフィラー用生分解性高分子微粒子は、生分解性高分子微粒子の誘電体バリア放電を用いたプラズマ表面処理生成物又は塩基表面処理生成物であるフィラー用生分解性高分子微粒子が提供される。
【0022】
また、親水性表面処理されたフィラー用生分解性高分子微粒子及び生体適合性キャリアを含むフィラー用凍結乾燥体であり、前記親水性表面処理されたフィラー用生分解性高分子微粒子の平均粒径D50は、20~50μmであり、前記親水性表面処理された生分解性高分子微粒子は、生分解性高分子微粒子の放電を用いたプラズマ表面処理生成物又は塩基表面処理生成物であり、前記生体適合性キャリアは、凍結乾燥体100重量部を基準として1~5重量部であるフィラー用凍結乾燥体が提供される。
【0023】
前記生体適合性キャリアは、凍結乾燥体100重量部を基準として、例えば、1~4重量部、1~3重量部又は2~3重量部である。
【0024】
本明細書において、生体適合性キャリアは、賦形剤をいう。
【0025】
生体適合性キャリアは、アルギン酸(Alginic acid)及びその塩、ヒアルロン酸(Hyalurinic acid)及びその塩、カルボキシメチルセルロース(Carboxylmethyl cellulose)、ナトリウムカルボキシルメチルセルロース、デキストラン(Dextran)及びその塩、コラーゲン(collagen)、ゼラチン(Gelatin)、及び、エラスチン(Elastin)の中から選択された1つ以上を用いることができる。
【0026】
生分解性高分子微粒子の放電を用いたプラズマ表面処理生成物は、生分解性高分子微粒子の放電を用いたプラズマ表面処理生成物は、フィラー用生分解性高分子微粒子に電圧を印加して放電を誘導し、生分解性高分子微粒子を放電処理して得た生成物である。
【0027】
前記生分解性高分子微粒子の放電処理は、プラズマ反応装置で空気をL/minに注入し、電源装置が接続された電極に300Hz~500Hzの交流を印加してプラズマ処理された空気を得て、このプラズマ処理された空気を生分解性高分子微粒子に接触して行ったものである。
【0028】
もし、生体適合性キャリアの含有量が1重量部未満の場合には、生分解性高分子微粒子を含有する凍結乾燥体を用いてフィラー用注射剤を製造するとき、凍結乾燥体の分散性が低下する。そして、生体適合性キャリアの含有量が5重量部超過であると、このような凍結乾燥体を含有するフィラー用注射剤の粘度を上げて注射の注入力を上げることになり、同時に体内への注入後は、数週内に分解されて賦形剤が含まれる体積に該当するボリュームが数週内に減少し、施術の満足度が低下して好ましくない。
【0029】
また、本発明は、上述したフィラー用凍結乾燥体と、注射用水、滅菌水及び蒸留水の中から選択された1つ以上を含むフィラー用注射剤であり、前記親水性表面処理されたフィラー用生分解性高分子微粒子の平均粒径D50は、20~50μmであり、前記親水性表面処理された生分解性高分子微粒子は、放電を用いたプラズマで表面処理された生成物、又は塩基で表面処理された生成物であるフィラー用注射剤が提供される。
【0030】
一般的な生分解性高分子微粒子フィラーは、生分解性高分子の疎水性によって蒸留水に対して低い分散性を示すので、これを用いた注射剤の製造時に賦形剤が必ず必要である。賦形剤は、薬品を製造する際に製品の形状形成に寄与する添加剤の1つである。
【0031】
ところが、注射剤の優れた分散性を維持するために、所定含有量以上の賦形剤を用いる場合、注射剤の粘度を上げて注射の注入力を上げなければならず、体内への注入後に数週内に分解されて賦形剤が含まれる体積に該当するボリュームが数週内に減少して施術の満足度を大きく低下させる。そのため、賦形剤を用いなくても優れた分散性を有するフィラー用生分解性高分子微粒子のフィラーが要求される。また、従来のフィラー用生分解性高分子は、蒸留水で初期には優れた分散性を維持するとしても、時間が経過した場合に、高分子同士の自らの凝集が起こり、分散安定性が低下する。
【0032】
そこで、本発明者らは、平均粒径が20~50μmの平均粒径を有する生分解性高分子微粒子を選択して粒子径を制御して分散性を上げながら、このような生分解性高分子微粒子を、放電を用いたプラズマ又は塩基で表面処理して親水性基を導入し、小さな賦形剤を用いながらも生分解性高分子微粒子の自らの凝集を効果的に防ぎ、分散安定性を大きく上げた凍結乾燥体及びこれを含有するフィラー用注射剤に対する本願発明を完成するに至った。
【0033】
本発明の凍結乾燥体は、プラズマで表面処理された生分解性高分子微粒子は、フィラー用生分解性高分子微粒子に電圧を印加して放電を誘導し、生分解性高分子微粒子を放電処理して得られた生成物又は塩基表面処理生成物である。
【0034】
プラズマで表面処理時の放電は、図3図5のプラズマ反応装置を用いて行える。放電処理時間は例えば、1秒~1分である。
【0035】
一般的なプラズマ反応装置を用いて生分解性高分子微粒子を表面処理する場合、生分解性高分子微粒子の平均粒径が20~50μm、22~48μm、25~45μm、又は30~40μmと小さい場合には、微粒子をプラズマ装置に固定し難いため、効果的な表面処理が実質的に困難である。
【0036】
しかし、本発明の図3図5のプラズマ反応装置を用いて、平均粒径が20~50μmの生分解性高分子微粒子をプラズマ処理する場合、上述した問題なく生分解性高分子微粒子に対する親水性表面処理を効率的に行うことができる。
【0037】
プラズマで表面処理時に電圧が前記範囲であるとき、生分解性高分子微粒子に親水性基が効果的に導入され、時間の経過に伴い、高分子微粒子が自ら凝集するのを効果的に防げる。
【0038】
本発明のプラズマ装置を用いた表面処理は、例えば前記気体供給部を介して反応槽の内部に空気を供給する段階と、電源装置が接続された電極に電圧を印加してプラズマ放電部の内部に電気放電を起こす段階と、前記プラズマ放電部の内部でプラズマ処理された空気が生分解性高分子微粒子と直接接触して生分解性高分子微粒子を表面処理する段階とを含む。ここで、空気の代わりに、他のガスを利用できる。
【0039】
プラズマ発生装置で400~600mL/min又は450~550mL/minに空気を注入し、電源装置が接続された電極に300Hz~500Hz、320Hz~480Hz、又は350Hz~450Hzの交流を印加してプラズマ処理された空気が生分解性高分子微粒子に接触するように行う。
【0040】
また、本発明の凍結乾燥体は、フィラー用生分解性高分子微粒子の塩基表面処理生成物である。
【0041】
塩基は例えば、水酸化ナトリウム溶液を用いる。水酸化ナトリウムの濃度は、特に制限されないが、0.1~5重量%、0.2~3重量%又は0.5~2重量%を用いる。
【0042】
塩基で表面処理された生分解性高分子微粒子は、フィラー用生分解性高分子微粒子に0.1~5重量%、0.2~3重量%又は0.2~1重量%の濃度を有する水酸化ナトリウム溶液を付加し、これを10秒~1分間撹拌する段階と、前記結果物を洗浄した後、真空乾燥する段階とを含んで製造されるものである。ここで、水酸化ナトリウムの含有量は、フィラー用生分解性高分子微粒子100重量部を基準として0.1~5重量部、又は0.1~3重量部である。水酸化ナトリウムの含有量及び表面処理時間が前記範囲であるとき、賦形剤である生体適合性キャリアの含有量を凍結乾燥体の総重量100重量部を基準として1~5重量部の範囲で用いながら、生分解性高分子微粒子の自らの凝集を効果的に防ぐことができ、分散安定性に優れている。凍結乾燥体の総重量100重量部は、生分解性高分子微粒子と生体適合性キャリアの総重量100重量部を意味する。
【0043】
例えば、フィラー用生分解性高分子微粒子であるポリジオキサノン(PDO)を水酸化ナトリウム溶液で表面処理を行うと、PDOのうち一部が分解されてCHCHOCHC(=O)OHとエタノールに分解される。前記結果物を洗浄し、真空乾燥すると、カルボキシル基が表面に導入されたポリジオキサノン(PDO)、ポリ乳酸(Poly-Lactic acid、PLA)、ポリ-L-乳酸(Poly-L-Lactic acid、PLLA)、ポリ-D-乳酸(Poly-D-Lactic acid、PDLA)、ポリ-ε-カプロラクトン(Poly-ε-caprolactone、PCL)、ポリグリコール酸(Polyglycolic acid、PGA)、これらの共重合体及びこれらの混合物からなる群より選択された1つ以上が表面に導入されたPDOを得ることができる。このような構造は、赤外線分光スペクトルによって確認できる。
【0044】
カルボキシル基が表面に導入されたPDOは、例えば、CHCHOCHC(=O)OH又はCHCHOCHC(=O)O-が表面に導入されたPDOは、表面処理されていないPDOと比較して、上述した官能基が表面に導入されて、少ない含有量の賦形剤を用いながら、注射用水、滅菌水及び蒸留水の中から選択された1つ以上の溶媒に対する分散性が優れているだけでなく、上述したカルボキシル基が表面に導入されたPDOの独自の凝集が効果的に抑制されて分散安定性が改善される。
【0045】
本発明のフィラー用凍結乾燥及びフィラー用注射剤で表面処理された生分解性高分子微粒子の粒径D10は10~20μmであり、表面処理された生分解性高分子微粒子の粒径D90は60~70μmである。ここで、粒子の平均粒径D50、D10及びD90は、レーザ回折散乱式粒度分析機(Particle Size Analyzer、PSA)を用いて測定する。
【0046】
一実施例に係る本発明のフィラー用注射剤で親水性生分解性高分子微粒子の含有量は8-9重量部、例えば、8.1~8.8重量部、生体適合性キャリアの含有量は1-2重量部、例えば、1.2~1.8重量部、注射用水、滅菌水及び蒸留水の中から選択された1つ以上の含有量は85-95重量部、88~92重量部、例えば、90重量部である。
【0047】
分散性に優れたフィラー用注射剤を得る観点から、粒度分布測定値から求めた10%の累積直径D10、50%の累積直径D50及び90%の累積直径D90において、下式を満すことが好ましい。
【0048】
<数式1>
0.8 ≦(D90- D10)/D50 ≦ 3.5
【0049】
(D90-D10)/D50は、1.0~3.4、1.5~3.2、又は2.0~3.0である。
【0050】
本明細書において、D90、D50、D10は、レーザ回折散乱粒度分布測定装置を用いて、粒度分布を測定することによって得られる。粒度分布図から測定される累積体積基準メディアン直径(median diameter、D50)を計算し、これを平均直径とした。そして、本発明において生分解性高分子微粒子は、大きさの均一性が非常に優れている。
【0051】
また、表面処理された生分解性高分子微粒子に対するパウダー水接触角値が50°以下、5~36°例えば、36.2~36.7°である。水接触角が上述した範囲であるとき、生分解性高分子微粒子の表面が親水性であることを意味し、このように親水性が付与され、賦形剤を用いなくても分散性に優れたフィラー用注射剤を製造できる。
【0052】
表面処理された生分解性高分子微粒子に対するパウダー水接触角値は、下記の方法によって評価する。
【0053】
本明細書において、パウダー水接触角の測定は、動的接触角(dynamic contact angle)の測定装備を用いて測定する。このような測定のために、微粒子を内径1.2cmのガラスチューブに微粒子をぎっしりと詰めた後、十分な水で満たされている底にまっすぐ立てる。
【0054】
その後、毛細管力(capillary force)によって引き上げられた水がこれ以上上昇しないまで待った後、チューブ内に水が引き上げられた高さとメニスカス(meniscus)の半径を測定し、これを基に水接触角を追跡する(Siebold et al., Effect of dynamic contact angle on capillary rise phenomena, Colloids and surfaces, 2000)。
【0055】
本発明において、生分解性高分子は、例えば、ポリジオキサノン(Polydioxanone、PDO)、ポリ乳酸(Poly-Lactic acid、PLA)、ポリ-L-乳酸(Poly-L-Lactic acid、PLLA)、ポリ-D-乳酸(Poly-D-Lactic acid、PDLA)、ポリ-ε-カプロラクトン(Poly-ε-caprolactone、PCL)、ポリグリコール酸(Polyglycolic acid、PGA)、これらの共重合体及びこれらの混合物からなる群より選択された1つ以上であり、特にポリジオキサノンを用いる。そして、生分解性高分子の数平均分子量(Mn)は50,000Dalton~500,000Dalton、又は50,000~200,000Daltonである。生分解性高分子の数平均分子量が50,000未満であると、生分解性高分子微粒子の分解速度が増加してフィラー用生体素材として適さない恐れがある。生分解性高分子の数平均分子量が500,000Dalton超過であると、高い粘弾性によって加工が難しいため、均一な大きさと品質を有する粒子が製造され難くなる恐れがある。
【0056】
一実施例によって製造されたフィラー用注射剤は、親水性表面処理されたフィラー用生分解性高分子微粒子1gを注射用水、滅菌水及び蒸留水の中から選択された1つ以上10mlに分散した後、フィラー用生分解性高分子微粒子の沈殿が60分経過後に行われる。このように、フィラー用注射剤において、表面処理されたフィラー用生分解性高分子微粒子の分散性が非常に優れている。
【0057】
本発明の一実施例によると、本発明のフィラー用凍結乾燥体の製造時に用いられる生体適合性キャリアとしてナトリウムカルボキシセルロースを用いて生分解性高分子微粒子がポリジオキサノンである場合、凍結乾燥体を乾燥して水分含有量が0.5~1.5重量%になるように制御することが好ましい。生体適合性キャリアとしてナトリウムカルボキシメチルセルロースを用いる場合、凍結乾燥体の水に対する溶解度が高い。ところが、このような凍結乾燥体を用いて製品化する場合、製品内の水分含有量が一定水準以上を超えると、製品が、短ければ数ヵ月から長くは1年以内にセルロースが水酸化官能基に戻って水に対する溶解度が低下し得る。
【0058】
従って、生分解性高分子微粒子としてポリジオキサノンを用い、生体適合性キャリアとしてナトリウムカルボキシメチルセルロースを用いた凍結乾燥体では、凍結乾燥体の水分含有量が1重量%以下、例えば、0.5~1重量%に制御することが好ましい。凍結乾燥体の水分含有量が前記範囲であるとき、凍結乾燥剤形の安全性が向上し、例えば、最大2年間維持されることができる。
【0059】
本発明において、凍結乾燥体の水分含有量を上述した範囲に制御する段階は、例えば、吸湿剤が入っているデシケータで保管して凍結乾燥体の水分を前記範囲に調節する過程によって行う。ここで、吸湿剤としては、シリカゲルなどのように吸湿能力に優れているものを用いる。
【0060】
以下、本発明のフィラー用凍結乾燥体及びフィラー用注射剤の製造時に用いられる出発物質であるフィラー用生分解性高分子微粒子の製造方法を詳察する。
【0061】
フィラー用生分解性高分子微粒子は、水と混和する(miscible)有機溶媒、及び生分解性高分子を含む第1組成物を提供する段階と、界面活性剤及び水を含む第2組成物を提供する段階と、前記第1組成物と前記第2組成物を混合して混合物を準備する段階と、前記混合物を撹拌して高分子微粒子を含む第3組成物を準備する段階と、前記第3組成物から高分子微粒子を分離する段階と、分離された高分子微粒子から平均粒径20~50μmの高分子微粒子を選別する段階とを含む。水と混和する(miscible)有機溶媒、及び生分解性高分子を含む第1組成物と界面活性剤を含む第2組成物を混合することにより、顔面用フィラー用途に適した20um~100umの粒径を有し、向上した粒径均一度を有する生分解性高分子微粒子を高い収率で簡単に製造できる。
【0062】
まず、水と混和する(miscible)有機溶媒、及び生分解性高分子を含む第1組成物が提供される。第1組成物は例えば、有機溶媒に生分解性高分子を溶融させて製造できる。
【0063】
第1組成物が含む生分解性高分子は、ポリジオキサノン(Polydioxanone、PDO)、ポリ乳酸(Poly-Lactic acid、PLA)、ポリ-L-乳酸(Poly-L-Lactic acid、PLLA)、ポリ-D-乳酸(Poly-D-Lactic acid、PDLA)、ポリ-ε-カプロラクトン(Poly-ε-caprolactone、PCL)、ポリグリコール酸(Polyglycolic acid、PGA)、これらの共重合体及びこれらの混合物の中から選択された1つ以上であり得る。これらの共重合体は例えば、ポリ乳酸-グリコール酸共重合体、ポリジオキサノン-カプロラクトン共重合体、ポルラクト酸-カプロラクトン共重合体などであり得る。生分解性高分子は、例えば、ポリジオキサノンである。
【0064】
第1組成物が含む生分解性高分子の数平均分子量(Mn)は、例えば50,000~500,000Dalton、50,000~300,000Dalton、又は50,000~200,000Daltonである。生分解性高分子の数平均分子量が50,000Dalton未満であると、生分解性高分子微粒子の分解速度が増加してフィラー用生体素材として適さない恐れがある。生分解性高分子の数平均分子量が500,000Dalton超過であると、高い粘弾性によって加工が難しいため、均一な大きさと品質を有する粒子を製造し難くなる恐れがある。
【0065】
第1組成物が含む生分解性高分子の含有量は、第1組成物全体に対して、例えば0.1~20wt%、0.1~10wt%、1~10wt%、3~9wt%、又は4wt%~8wt%である。第1組成物が含む生分解性高分子の含有量が低すぎると、第1組成物が含む生分解性高分子の含有量が低すぎて、高分子微粒子の製造効率が低下する恐れがある。第1組成物が含む生分解性高分子の含有量が高すぎると、均一な大きさの高分子微粒子が得られ難くなる恐れがある。
【0066】
第1組成物は、界面活性剤を含有しない(free)のでありうる。第1組成物は、例えば、界面活性剤を含まないながらも均一な高分子微粒子を容易に形成させることができる。第1組成物は、例えば、第1組成物と第2組成物の界面で界面活性を有する添加剤を含まないこともある。第1組成物がこのような界面活性剤を含まないことにより、高分子微粒子の製造が簡単になり、不純物の含有量が低い高分子微粒子が製造され得る。従って、第1組成物を用いて製造される高分子微粒子の生体適合性が更に向上する。
【0067】
第1組成物が含む有機溶媒は、水と混和する(miscible)有機溶媒である。本明細書において、「水と混和する有機溶媒」は、水と完全に又は部分的に混和する有機溶媒である。水と混和する有機溶媒は、例えば、水と区分される別の相(phase)を形成しない有機溶媒を意味する。本明細書において、水と混和する有機溶媒は、例えば、20℃の水100gに対する溶解度が、例えば、3g以上、5g以上、10g以上、20g以上、又は50g以上の溶媒である。従って、本発明の製造方法は、水と混和しない有機溶媒を用いる従来の製造方法とは区分される。
【0068】
第1組成物が含む有機溶媒は、例えばハロゲン化アルコール、ハロゲン化炭化水素、芳香族炭化水素、脂肪族炭化水素、脂肪族アルコール、脂肪族アミド、脂肪族ケトン、脂肪族エーテル、及び脂肪族アルデヒドの中から選択された1つ以上であり得る。第1組成物が含む有機溶媒は、例えばHFIP(1,1,1,3,3,3-Hexafluoro-2-propanol)、アセトン(Acetone)、アセトニトリル(Acetonitrile)、酢酸(Acetic acid)、ジオキサン(Dioxane)、エタノール(Ethanol)、メタノール(Methanol)、イソプロピルアルコール(Isopropyl alcohol、IPA)、プロパノール(Propanol)、テトラヒドロフラン(Tetrahydrofuran、THF)、ペンタン(Pentane)及びこれらの混合物からなる群より選択される1つ以上であり得る。例えば、第1組成物が含む生分解性高分子としてポリジオキサノンが用いられる場合、ポリジオキサノンを溶解させる有機溶媒としてフッ化アルコールが用いられることができる。フッ化アルコールは例えば、1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロ-2-プロパノールである。
【0069】
第1組成物が含む有機溶媒の沸点は、例えば、10~100℃未満、20~90℃又は30~80℃であり得る。有機溶媒がこのような範囲の沸点を有することにより、有機溶媒が揮発し易くなり得る。有機溶媒の沸点が低すぎると、液相を維持し難く、有機溶媒の沸点が高すぎると、有機溶媒が蒸発し難くなり、残留溶媒の含有量が増加して生分解性高分子微粒子の生体適合性が低下する恐れがある。
【0070】
第1組成物が含む有機溶媒の含有量は、第1組成物全体に対して、例えば50~99.9wt%、60~99.9wt%、70~99.9wt%、80~99.9wt%、又は90~99.9wt%である。第1組成物が含む有機溶媒の含有量が低すぎると、第1組成物の粘度が増加し、均一な高分子微粒子が得られない恐れがある。第1組成物が含む有機溶媒の含有量が高すぎると、第1組成物から生成される高分子微粒子の含有量が低すぎるため、高分子微粒子の製造効率が低下する恐れがある。
【0071】
また、界面活性剤及び水を含む第2組成物が提供される。第2組成物は、例えば水溶性高分子及び水溶性単量体の中から選択された1つ以上の界面活性剤を水及びアルコールの中から選択された1つ以上に溶解させて製造できる。
【0072】
本明細書における水溶液は水を含む組成物であり、必ずしも100%のみに限らない。第2組成物が溶媒中で水の含有量は、例えば50重量%以上、60重量%以上、70重量%以上、80重量%以上又は90重量%以上である。第2組成物が含む溶媒は、例えば水である。
【0073】
第2組成物が含む界面活性剤は、ポリビニルアルコール(Polyvinyl alcohol)、ポリオキシエチレンソルビタン及びその塩などの水溶性高分子、及び大豆レシチン(soybean lecithin)、モノグリセリド(monoglyceride)などの水溶性単量体の中から選択された1つ以上であり得る。
【0074】
第2組成物が含む界面活性剤の含有量は、例えば第2組成物全体に対して、1~10wt%、3~9wt%、又は4~8wt%であり得る。界面活性剤の含有量が低すぎると、界面活性剤の界面活性が弱くなり、均一な大きさの高分子微粒子が製造され難くなる恐れがある。界面活性剤の含有量が高すぎると、高分子微粒子の粒径が減少し過ぎて、生体内で大食細胞によって探索されてフィラーとして作用できないか、高分子微粒子の凝集が発生して高分子微粒子の粒径がむしろ増加し得る。第2組成物が含む界面活性剤として水溶性高分子のポリビニルアルコールが用いられると、ポリビニルアルコールが溶解される溶媒として水又は水とアルキルアルコール混合溶液が使用され得る。
【0075】
第2組成物が含む界面活性剤として水溶性高分子が用いられる場合、水溶性高分子の数平均分子量は、例えば50,000~200,000Dalton、70,000~170,000Dalton、又は100,000~150,000Daltonであり得る。水溶性高分子の数平均分子量が50,000Dalton未満であると、界面活性が低下する恐れがあり、水溶性高分子の数平均分子量が200,000Dalton超過であると、高濃度により均一な高分子微粒子が形成され難くなる恐れがある。
【0076】
第2組成物は、上述した界面活性剤以外に、他の界面活性剤を更に含むことができる。第2組成物が追加的に含むことができる他の界面活性剤は、陰イオン性界面活性剤、陽イオン性界面活性剤又は両性界面活性剤であり得る。第2組成物が追加的に含むことができる他の界面活性剤は、例えば、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート(Tween 20)、ポリオキシエチレンソルビタンモノパルミテート(Tween 40)、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート(Tween 60)、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエイト(Tween 80)、及びポリオキシエチレンソルビタントリオレエイト(Tween 85)の中から選択された1つであり得るが、必ずしもこれらに限定されず、当該技術分野において界面活性剤として用いられるものであれば、何れも可能である。第2組成物は、他の界面活性剤を追加的に含まない場合にも、フィラー用途に適した均一な粒子径を有する高分子微粒子を高い収率で製造できる。
【0077】
第2組成物のpHは、例えば、5.0以上、5.5以上、6.0以上、又は6.5以上であり得る。第2組成物のpHは、例えば、5.0~8.0、5.0~7.5、5.0~7、又は5~6.5であり得る。第2組成物がこのような範囲のpHを有することにより、均一な大きさを有する高分子微粒子を高い収率で製造できる。
【0078】
次に、第1組成物と前記第2組成物を混合して混合物が準備される。
【0079】
混合物が準備される段階で、有機溶媒と水とは、第1組成物が含む有機溶媒100体積部に対して第2組成物が含む水50~200体積部の割合で混合されうる。例えば、有機溶媒と水との混合体積比は、1:0.5~1:2、1:0.6~1:1.9、1:0.6~1:1.8、1:0.7~1:1.7、1:0.7~1:1.6、1:0.7~1:1.5、1:0.8~1:1.4、1:0.8~1:1.3、又は1:0.8~1:1.2である。混合物を準備する段階で有機溶媒100体積部と水50~200体積部が混合されることにより、有機溶媒100体積部と水800体積部以上が混合される従来の製造方法に比べて水の使用量が著しく減少する。また、有機溶媒100体積部と水800体積部以上が混合される従来の製造方法では、過量の水に第1組成物が添加されることにより、生分解性高分子の急激な析出が進むので、均一な粒径を有する高分子微粒子を製造し難い。これに対し、有機溶媒と水が類似する体積比で混合される本願発明の製造方法では、生分解性高分子の析出が徐々に進むので、均一な粒径を有する高分子微粒子が容易に製造され得る。また、過量の溶媒を使用する従来技術に比べて用いられる溶媒の使用量が著しく減少し、より簡単に高分子微粒子が製造可能である。
【0080】
混合物で界面活性剤の含有量は、生分解性高分子微粒子100重量部を基準として10~50重量部、15~45重量部又は20~35重量部である。
【0081】
次に、混合物が攪拌されて高分子微粒子を含む第3組成物が準備される。第1組成物と第2組成物を混合し、前記混合物が攪拌されることは、順次又は実質的に同時に遂行され得る。例えば、攪拌機が回転する容器に第1組成物及び第2組成物を同時に又は順次投入して混合物を準備し、これと同時に撹拌が進行され得る。
【0082】
混合物の攪拌は100~800rpm、100~700rpm、200~700rpm、200~600rpm、300~600rpm、又は300~500rpmで遂行され得る。混合物の攪拌(例えば、攪拌速度、rpm)が遅すぎると、第1組成物と第2組成物の混合が円滑に行われないことがある。混合物の攪拌(例えば、攪拌速度、rpm)が速すぎると、高分子微粒子の粒径の均一性が低下する恐れがある。
【0083】
混合物の攪拌は、1日(即ち、24時間)以上遂行され得る。混合物の攪拌が長時間進行されることにより、有機溶媒が徐々に揮発し、生分解性高分子が徐々に均一な条件で高分子微粒子として析出され得る。従って、高分子微粒子の粒径の均一性が向上し得る。混合物の撹拌が800rpm以上の低速であるので、撹拌時間が1日(即ち、24時間)未満であると、高分子微粒子の析出が十分に進まない恐れがある。混合物の撹拌時間は、例えば、1日~10日、2日~9日、3日~8日、3日~7日、又は4日~6であり得る。混合物の撹拌時間が増加し過ぎると、高分子微粒子の製造効率が低下し得る。
【0084】
次に、第3組成物から高分子微粒子を分離する。第3組成物から高分子微粒子を分離する方法は特に限定されず、濾過、沈殿、洗浄などを含むが、これらに限定されるものではない。
【0085】
第3組成物から高分子微粒子を分離する段階は、例えば、第3組成物から高分子微粒子を沈殿させて分離する段階と、前記分離された高分子微粒子を複数回洗浄する段階とを含むことができる。
【0086】
撹拌が終了した第3組成物は、例えば、1時間以上、2時間以上、5時間以上、12時間以上、又は24時間以上放置した後、上澄み液(supernatant)を除去し、高分子微粒子を分離できる。次に、分離された高分子微粒子に蒸留水を投入し、100~1000rpmで1~24時間撹拌した後、蒸留を除去する洗浄過程を1回以上行える。このような洗浄過程により、高分子微粒子に残存する不純物を効果的に除去できる。
【0087】
本発明の製造方法は、安定化剤又は安定化溶液で安定化させる段階を含まないことができる。従って、高分子微粒子の製造がより簡単になる。従来の製造方法では、製造された高分子微粒子を安定化又は熟成させるために、過量のアルコール又は過量の界面活性剤水溶液などで長時間安定化させる段階を含むので、時間及び溶媒の消費が大きかった。これに対し、本願発明は、このような安定化段階なしに高分子微粒子を含む第3組成物を準備した後、分離及び/又は洗浄により高分子微粒子を得るので、製造時間及び溶媒の使用を著しく減少させることができる。
【0088】
本発明の製造方法によって製造された高分子微粒子の平均粒径D50は、20μm~50μm、21μm~49μm、23μm~50μm、23μm~45μm、又は25μm~45μmであり得る。高分子微粒子がこのような範囲の平均粒径を有することにより、フィラーとして適用するのにより適した大きさを有することができる。高分子微粒子の平均粒径が小さすぎると、大食細胞によって探索され、フィラーとして作用できない恐れがある。生分解性高分子微粒子の平均粒径が300μmを超えると、注射剤用としての使用が適さない恐れがある。例えば、高分子微粒子の平均粒径が過度に増加すると、フィラーの注入に必要な注射針の直径が増加するので、傷跡や施術時の痛みなどの副作用が増加し得る。また、顔面用フィラーの場合、顔面に注入されて顔面の微細なボリュームの調節が非常に重要に要求されるが、フィラーの粒径が増加することにより、このような微細なボリュームの調節が難しく、適用し難くなる恐れがある。顔面整形フィラーに用いられる生分解性高分子微粒子の粒径は、40~100μmであり得る。顔面以外の用途に用いられる生分解性高分子微粒子の粒径は、例えば、100~300μmであり得る。
【0089】
前記製造方法によって製造された高分子微粒子のうち粒径25μm~75μmの範囲に属する高分子微粒子の含有量は、50体積%以上、55体積%以上、60体積%以上、65体積%以上、70体積%以上、75体積%以上、又は80体積%以上であり得る。前記製造方法によってこのような顔面用フィラーに適した大きさを有する高分子微粒子を高い収率で濾過、分類などの追加の工程なしに簡単に製造できる。
【0090】
生分解性高分子微粒子の製造時に、分離された高分子微粒子から平均粒径20~50μmの高分子微粒子を選別する段階で、例えば、大きさ篩別(size sieving)機を用いて乾式又は湿式で生分解性高分子微粒子をサイズ別に分類できる。湿式で篩分ける場合、凍結乾燥を追加的に行って水分を除去した後に分類できる。しかし、本願発明の高分子微粒子の製造方法は、このような分類過程がなくても25~50μmの範囲の大きさを有する粒子を高い収率で製造できる。
【0091】
フィラー用生分解性高分子微粒子は、シワ改善、顔面整形、ボディーの整形、男性の保形物、又は尿失禁の治療用として用いられるものであり得る。
【0092】
他の側面によって、一実施例に係るフィラー用凍結乾燥体及びこれを用いたフィラー用注射剤の製造方法が提供される。
【0093】
フィラー用注射剤は、平均粒径が20~50μmのフィラー用生分解性高分子微粒子を準備する段階と、生分解性高分子微粒子をプラズマで表面処理する段階又は塩基で表面処理する段階を行って表面処理された生分解性高分子微粒子を製造する段階と、前記親水性表面処理されたフィラー用生分解性高分子微粒子、生体適合性キャリア及び蒸留水を溶解して混合液を得る段階と、前記混合液を凍結乾燥して凍結乾燥体を製造する段階とを含んでフィラー用凍結乾燥体を製造する。
【0094】
凍結乾燥は、-70℃~-20℃の温度で行うことができる。ここで、凍結乾燥時間は、例えば1~72時間、5~48時間又は15~24時間行う。凍結乾燥の冷却速度は、-3℃/min~-2℃/minである。
【0095】
凍結乾燥段階を行う前に予備凍結乾燥を更に行える。このような予備凍結乾燥は、-75℃~-65℃で行うことができる。予備凍結乾燥時間は、予備凍結乾燥温度によって可変的であり、例えば1~72時間、5~48時間又は15~24時間実施できる。
【0096】
前記過程により得られた凍結乾燥体を注射用水、滅菌水及び蒸留水の中から選択された1つ以上に水和させる段階を経て、フィラー用注射剤を製造できる。前記フィラー用注射剤は、凍結乾燥体1gを注射用水、滅菌水及び蒸留水の中から選択された1つ以上10mlに分散した後、フィラー用生分解性高分子微粒子の沈殿が60分経過後に行われる。そして、フィラー用注射剤において凍結乾燥体の含有量は、フィラー用注射剤の総重量を基準として1~10重量部である。そして、フィラー用注射剤の粘度が50~2000cP、100~1500cP又は150~1200cPである。凍結乾燥体の含有量及びフィラー用注射剤の粘度が前記範囲であるとき、分散性に優れ、注射圧が適切であることから、施術の満足度が高い。
【0097】
フィラー用注射剤において、表面処理された生分解性高分子微粒子の含有量は、フィラー用注射剤全体に対して、10~80重量%、10~50wt%、10~30wt%又は15~30wt%であり得る。生分解性高分子微粒子の含有量が10重量%未満であると、濃度が低いため、均等に分散させ難くなり、生分解性高分子微粒子の含有量が80重量%超過であると、低い水分含有量により凍結乾燥及び生体適合性キャリアとの混合が難しくなり得る。
【0098】
本発明では、賦形剤を用いることなく、フィラー用注射剤を製造することが可能である。
【0099】
表面処理された生分解性高分子微粒子は、注射用水、滅菌水及び蒸留水の中から選択された1つ以上に水和させて注射剤として使用されることができる。
【0100】
生分解性高分子フィラーは、例えば、球状(spheric)多孔性(porous)粒子であり得るが、必ずしもこのような形状に限定されず、要求される条件によって選択されることができる。生分解性高分子フィラーが球状であり、多孔性を有することにより、毛細管現象などによって水などに迅速に水和されることができる。
【0101】
球状多孔性粒子は、例えば0.2~0.9g/cm3、0.2~0.8g/cm3、0.2~0.7g/cm3、0.2~0.6g/cm3、又は0.2~0.5g/cm3の密度を有することができる。球状多孔性粒子が、このような範囲の密度を有することにより、水などに容易、かつ迅速に水和されることができる。球状多孔性粒子は、例えば、3~8mm、3~7mm、3~6mmの平均直径を有することができる。球状多孔性粒子が、このような範囲の粒径を有することにより、保管が容易であり、作業性が向上する。
【0102】
生分解性高分子微粒子は、水分を除去して球状多孔性粒子を準備した後、球状多孔性粒子を滅菌する段階を更に含むことができる。
【0103】
滅菌は、ガンマ線滅菌、エチレンオキサイド滅菌、又は減圧滅菌で行われるが、必ずしもこれらの方法に限定されるものではなく、当該技術分野で用いる滅菌方法であれば、何れも可能である。
【0104】
生分解性高分子微粒子は、球状多孔性粒子状であるので、水和が迅速に進み、注射剤の製造が容易である。前記方法で製造される注射剤は、例えば、25℃で8,000~30,000cPsの粘度を有し、押出力が5N~12Nである。
【0105】
または、生分解性高分子微粒子は、乾燥粉末状であり得る。
【0106】
図3図5は、本発明の生分解性高分子微粒子の親水性表面処理時に用いられるプラズマ発生装置を用いたプラズマ装置に対する概略的な図である。
【0107】
図3は、本発明のブロックダイアグラムである。これを参照すると、放電を維持するための空気、ヘリウム、アルゴン又は窒素ガス及びこの混合ガスをガス制御部12からプラズマ反応器14にガスを供給し、数十~数百kHzの振動数を有するMF(Midium Frequency)電源を供給する電源部10から電源を印加され、プラズマ反応器14でプラズマを発生する。このように発生したプラズマは、生分解性高分子微粒子含有組成物の表面処理を行い18、放電によるオゾンの発生と使用後のガスは、電極周囲の別途の排気システム16によって外部に排出する。生分解性高分子微粒子含有組成物は、生分解性高分子微粒子を溶媒であるヘキサフルオロ-2-イソプロパノール(Hexafluoro-2-isopanol)と混合して製造される。ここで、溶媒の含有量は、生分解性高分子微粒子100重量部を基準として、3~6重量部である。
【0108】
前記電極はアルミニウム合金、ステンレススチールなどの金属で製作し、特に、パワー電極はタングステンで製作することもできる。前記電極の厚さと幅は、使用しようとする用途に応じて最適なプラズマを発生させることができるように70mmから300mmを有する。
【0109】
本発明で供給するガスとしては、窒素、窒素と微量の酸素、圧縮空気などが用いられ、一般に、窒素をキャリアガスとして選択し、3%以下微量の酸素を反応ガスとして供給する。
【0110】
図4は放電器の概略図であり、図5は、図4の放電器の側面図を示すものである。
【0111】
図5において、本発明のプラズマ反応器22は、電源部から電極23に電源を印加し、ガス制御部12供給されたガス24から電極24の間にプラズマを発生することになる。反応器21には、生分解性高分子微粒子20を供給し、プラズマ反応器22のプラズマがこの生分解性高分子微粒子20の表面に直接接触することになる。
【0112】
使用済みガスと高周波放電で発生し得るオゾンは、下端電極の左右に設置する排気システム16によって外部に排出できる。
【0113】
ガス供給部12には、別途のヒーティングシステムを設置し、場合によってガスの温度を一定量増加させて、MF電源10で低い電圧を電極に印加してプラズマを発生させることもできる。
【0114】
本発明の上述した表面処理方法を用いると、親水性表面処理された生分解性高分子微粒子を製造できる。
【0115】
図3図5のプラズマ装置を用いると、生分解性高分子微粒子の親水性表面処理を効率的に行える。プラズマ装置を用いると、水酸化ナトリウム水溶液を用いた表面処理時に発生し得る化学成分の表面残留を防止でき、表面を全体として非常に一定に改質できる。また、生分解性高分子微粒子のサイズが20μm以下と小さい場合は、一般のプラズマ装置では表面処理が容易ではない。その理由は、一般のプラズマ装置を用いる場合、プラズマガスの噴射時にその噴射圧力により微粒子の固定が難しく、目的とする表面処理を行うことが困難である。しかし、本発明のプラズマ装置を用いると、上述した問題を未然に予防して生分解性高分子微粒子の表面処理を円滑に行える。
【0116】
以下、下記の具体的な実施例によって、本発明をより具体的に説明する。下記の実施例は、本発明の理解を促進するための例示に過ぎず、本発明の範囲がこれに限定されるものではない。
【0117】
<生分解性高分子微粒子の製造>
[製造例1:ポリジオキサノン微粒子の製造]
生分解性高分子としてポリジオキサノン(Polydioxanone、PDO、固有粘度(インヘレント粘度;Inherent Viscosity、IV)1.55dL/dg、数平均分子量100,000Dalton)5gを有機溶媒であるヘキサフルオロイソプロパノール(Hexafluoroisopropanol、HFIP)100mlに溶解させて第1組成物を製造した。
【0118】
界面活性剤としてPVA(Polyvinyl alcohol、数平均分子量130,000Dalton)1.5gを蒸留水150mlに溶解させて、pH5.5程度の第2組成物を準備した。
【0119】
第1組成物と第2組成物を1:1の体積比で混合して第3混合物を準備した。準備された混合物を400rpmで5日間撹拌しながら、有機溶媒を蒸発させ、これにより高分子微粒子を含む第3組成物を得た。
【0120】
攪拌が終了した後、24時間放置して高分子微粒子を沈殿させた後、上澄み液(supernatant)を除去し、高分子微粒子を分離した。
【0121】
分離された高分子微粒子に精製水を添加した後、再び撹拌して洗浄した。このような洗浄段階を計3回行って、高分子微粒子を製造した。
【0122】
前記過程により得られた高分子微粒子を20μmの大きさの孔を有する篩に最低6時間以上かけて、水を1次的に除去した。その後、真空乾燥機(5Pa以下)で最低2日以上の乾燥過程を経て完全に乾燥した20~200μmの平均粒径を有する微粒子を得た。
【0123】
乾燥した20~200μmの平均粒径を有する微粒子を多様な大きさの篩によって下記表1に示す大きさの範囲を有するPDO微粒子を分級してそれぞれ得た。
【0124】
製造例1のPDO微粒子の平均粒径D50は、20~50μmである。
【0125】
[製造例2]
生分解性高分子として、ポリジオキサノンの代わりに、ポリ-L-乳酸(Poly-L-Lactic acid、PLLA、固有粘度(Inherent Viscosity、IV)0.8~1.2dL/dg、数平均分子量(80,000~120,000)Dalton)を用いたことを除いては、製造例1と同一の方法で行って、平均粒径が20~50μmの大きさの範囲を有するPLLA微粒子を製造した。
【0126】
[製造例3]
生分解性高分子として、ポリジオキサノンの代わりに、ポルカプロラクトン(Poly-ε-caprolactone PCL、固有粘度(Inherent Viscosity、IV)0.8~1.0dL/dg、数平均分子量(80,000~110,000)Dalton)を用いたことを除いては、製造例1と同一の方法で平均粒径が20~50μmの大きさの範囲を有するPCL微粒子を製造した。
【0127】
[比較制造例1]
製造例1によって完全に乾燥した20~200μmの平均粒径を有する微粒子を得た。
【0128】
乾燥した微粒子は、多様な大きさの篩によって下記表1に示す20~100μmの平均粒径を有するPDO微粒子を用いた。
【0129】
[比較製造例2]
製造例1によって完全に乾燥した20~200μmの平均粒径を有する微粒子を得た。
【0130】
乾燥した微粒子は、多様な大きさの篩によって下記表1に示す平均粒径D50が100.01~200μmのPDO(ポリジオキサノン)微粒子を用いた。
【0131】
【表1】
【0132】
<表面処理された生分解性高分子微粒子、凍結乾燥体及びこれを用いたフィラー用注射剤の製造>
[実施例1]
製造例1によって製造されたPDO微粒子を0.5重量%のNaOH水溶液に入れ、200rpmの撹拌を加え、1分間湿式表面処理を行った。ここで、NaOHの含有量は、PDO微粒子100重量部を基準として5重量部を制御した。
【0133】
その後、20μmの大きさの孔を有する篩に前記混合溶液を注ぎ、表面処理された微粒子を分離した。その後、残余のNaOH水溶液を除去するために、計30mlの精製水を追加で注いで洗浄した。その後、24時間の真空乾燥(乾燥機内部の圧力:8~10Pa、特に約9Pa)を経て乾燥したカルボキシル基が表面に導入されて、親水性表面処理されたPDO微粒子を得た。ここで、カルボキシル基は例えば、CHCHOCHC(=O)OHである。エステルを塩基性加水分解すると、カルボン酸とアルコールに分解され、このような官能基が露出したPDO微粒子を用いると、表面処理されていないPDO微粒子を用いる場合に比べて自らの凝集が防止される。
【0134】
前記過程により得られた親水性表面処理されたポリジオキサノン微粒子と、賦形剤(生体適合性キャリア)であるカルボキシメチルセルロースCMC(基準粘度:2%溶液基準、1125~2100cP)1gを、水100mlに付加及び溶解して混合液を製造した。この混合液で親水性表面処理されたポリジオキサノン微粒子とCMCの混合重量比は、95:5である。
【0135】
混合液は、高さ5mmの半球状のモールドに一定量の溶液を注ぎ、-75℃に内部温度が合わせられた冷凍庫に入れて急冷して凍結した後、凍結乾燥機を活用して24時間凍結乾燥させて、フィラー用凍結乾燥体を製造した。
【0136】
前記予備凍結乾燥体を-20℃に内部温度が合わせられた冷凍庫に入れ、凍結乾燥機を活用して24時間凍結乾燥させて、フィラー用凍結乾燥体を製造した。
【0137】
凍結乾燥体1gを滅菌注射用水10mlと混合してフィラー用注射剤を製造した。
【0138】
【表2】
【0139】
[実施例1-1及び実施例1-2]
NaOHの含有量がそれぞれPDO微粒子100重量部を基準として、1重量部及び3重量部に変化したことを除いては、実施例1と同一の方法で行って、凍結乾燥体及びフィラー用注射剤を製造した。
【0140】
[実施例1-3及び実施例1-4]
湿式表面処理時間が1分の代わりに、それぞれ30秒及び5分間行ったことを除いては、実施例1と同一の方法で行って、凍結乾燥体及びフィラー用注射剤を製造した。
【0141】
[実施例1-5]
親水性表面処理されたポリジオキサノン微粒子とCMCの混合重量比が95:5の代わりに、99:1に変化したことを除いては、実施例1と同一に行って凍結乾燥体及びフィラー用注射剤を製造した。
【0142】
[実施例1-6]
親水性表面処理されたポリジオキサノン微粒子とCMCとの混合重量比について95:5に代えて、97:3に変化させたことを除いては、実施例1と同一に行って凍結乾燥体及びフィラー用注射剤を製造した。
【0143】
[実施例1-7]
親水性表面処理されたポリジオキサノン微粒子とCMCの混合重量比について95:5に代えて、98:2に変化させたことを除いては、実施例1と同一に行って凍結乾燥体及びフィラー用注射剤を製造した。
【0144】
[実施例2]
1mmの厚さ(横40mm、縦150mm)のステンレススチールを電極とし、2つの電極間の距離を10mmにしてプラズマ反応器内に2つの電極を並んで配置した図5のプラズマ反応装置を用いた。
【0145】
製造例1によって製造されたPDO微粒子1gを図5のプラズマ反応器内の管に沿って流し、そのとき、前記プラズマ反応器で空気を500mL/minに注入し、電源装置が接続された電極に400Hzの交流を印加してプラズマ処理された空気がPDO微粒子に直接接触するようにし、1分間反応させた後、プラズマ反応装置から生分解性高分子微粒子を得た。
【0146】
表面処理されたPDO微粒子は、極性官能基が多く導入され、親水性基が導入されて表面処理されていないPDO微粒子と比較して自らの凝集が防止され、これを用いると、分散性が改善される。
【0147】
前記過程により得られた親水性表面処理されたポリジオキサノン微粒子と賦形剤(生体適合性キャリア)であるカルボキシメチルセルロースCMC(基準粘度:2%溶液基準、1125~2100cP)1gを水100mlに付加及び溶解して混合液を製造した。この混合液で親水性表面処理されたポリジオキサノン微粒子とCMCの混合重量比は、95:5である。
【0148】
混合液は、高さ5mmの半球状のモールドに一定量の溶液を注ぎ、-75℃に内部温度が合わせられた冷凍庫に入れて急冷して凍結した後、凍結乾燥機を活用して24時間凍結乾燥させて、フィラー用凍結乾燥体を製造した。
【0149】
前記予備凍結乾燥体を-20℃に内部温度が合わせられた冷凍庫に入れ、凍結乾燥機を活用して24時間凍結乾燥させて、フィラー用凍結乾燥体を製造した。
【0150】
前記凍結乾燥体を滅菌注射用水と混合してフィラー用注射剤を製造した。
【0151】
フィラー用注射剤において、ポリジオキサノン微粒子の含有量は8wt%であり、生体適合性キャリアの含有量は1重量%であり、注射用水の含有量は91重量%であった。
【0152】
[実施例2-1]
微粒子と賦形剤(Carboxymethyl cellulose)の混合重量比が99:1に変化したことを除いては、実施例2と同一に行って、凍結乾燥体及びフィラー用注射剤を製造した。
【0153】
[実施例2-2]
微粒子と賦形剤(Carboxymethyl cellulose)の混合重量比が95:5の代わりに、97:3に変化したことを除いては、実施例2と同一に行って、凍結乾燥体及びフィラー用注射剤を製造した。
【0154】
[実施例2-3]
微粒子と賦形剤(Carboxymethyl cellulose)の混合重量比が95:5の代わりに、98:2に変化したことを除いては、実施例2と同一に行って、凍結乾燥体及びフィラー用注射剤を製造した。
【0155】
[実施例3]
生分解性高分子として、製造例1のポリジオキサノン微粒子の代わりに、製造例2のポリ-L-乳酸(Poly-L-Lactic acid、PLLA)微粒子を用いたことを除いては、実施例1と同一の方法で行って、フィラー用注射剤を製造した。
【0156】
[実施例4]
生分解性高分子としてポリジオキサノンの代わりに、製造例3のポリカプロラクトン(Poly-ε-caprolactone PCL)微粒子を用いたことを除いては、実施例1と同一の方法でフィラー用注射剤を製造した。
【0157】
[比較例1(平均粒径D50が20~100μmであり、酸で表面処理されたPDO微粒子)]
製造例1によって製造されたPDO微粒子1gを酸触媒である塩酸水溶液に入れ、200rpmの撹拌を加え、1分間表面処理を行って表面処理されたPDO微粒子を得た。このPDO微粒子を用いたことを除いては、実施例1と同一に行って、凍結乾燥体及びフィラー用注射剤を製造した。
【0158】
[比較例2(比較製造例1のPDO微粒子を使用し、親水性表面処理はなし)]
比較製造例1の平均粒径が20~100μmのPDO微粒子を用いたことを除いては、実施例1と同一に行って、凍結乾燥体及びフィラー用注射剤を製造した。
【0159】
[比較例3(比較製造例2のPDO微粒子を使用し、親水性表面処理はなし)]
比較製造例2の平均粒径が100.1~200μmのPDO微粒子を用いたことを除いては、実施例1と同一に行って、凍結乾燥体及びフィラー用注射剤を製造した。
【0160】
[比較例4]
製造例2のPLLAを用いたことを除いては、実施例1と同一に行って、凍結乾燥体及びフィラー用注射剤を製造した。
【0161】
[比較例5]
製造例3のPCLを用いたことを除いては、実施例1と同一に行って、凍結乾燥体及びフィラー用注射剤を製造した。
【0162】
[比較例6(表面処理を行っていないPDO微粒子を利用)]
製造例1によって得られた20~50μmの平均粒径を有するPDO微粒子を、賦形剤であるカルボキシメチルセルロース(CMC:Carboxylmethylcellulose)を98:2の混合重量比で混合したことを除いては、実施例1と同一に行って、凍結乾燥体及びフィラー用注射剤を製造した。
【0163】
[比較例7]
製造例1によって得られた20~50μmの平均粒径を有する微粒子を、賦形剤であるカルボキシメチルセルロース(CMC:Carboxylmethylcellulose)を80:20の混合重量比で混合したことを除いては、実施例1と同一に行って、凍結乾燥体及びフィラー用注射剤を製造した。
【0164】
[評価例1:表面処理方式による親水性評価]
フィラー用生分解性高分子微粒子の表面処理の親水性増大効果を確認するために、パウダー水接触角を下記の方法によって測定した。
【0165】
親水性の評価のために、PDO10gを内径1.2cmのガラスチューブに微粒子をぎっしりと詰めた後、動的接触角測定装備内における十分な水が満たされた底にまっすぐ立てた。
【0166】
その後、毛細管力(capillary force)によって引き上げられた水が、これ以上上昇しないまで待った後、チューブ内に水が引き上げられた高さとメニスカス(meniscus)の半径を測定し、これを基に水接触角の結果値を得た。
【0167】
その後、接触角測定装備によって、処理前後の結果を下記表3に示した。
【0168】
【表3】
【0169】
表3を参照し、実施例1、1-5、1-6、1-7、2、2-1、2-2及び2-3によると、接触角が表面処理を行う前に比べて低くなり、生分解性高分子粒子の表面に親水性表面がうまく形成されていることが確認できた。
【0170】
[評価例2:PDO微粒子の粒径分布別の沈殿評価]
親水性表面処理された実施例1、実施例1-5、実施例1-6、実施例1-7、実施例2、実施例2-1、実施例2-2、実施例2-3、比較例1~7で得られた凍結乾燥体1gを、水10mlが入ったバイアルに入れ、ボルテシングを1分間与えて分散状態を作った。その後、60分にかけて放置し、微粒子の沈殿有無を確認した。実施例1、比較例1及び比較例2によって得られた凍結乾燥体の沈殿評価結果を図1に示し、実施例2、比較例3及び比較例6で得られた凍結乾燥体を用いた沈殿評価の結果を図2に示した。
【0171】
図1を参照し、比較例1及び比較例2の凍結乾燥体は、何れも15分後に完全に沈殿するのに対し、実施例1の凍結乾燥体は、60分経過後に沈殿現象が観察された。そして、実施例2の凍結乾燥体は、図2から分かるように、実施例1の凍結乾燥体と同様、60分経過後に沈殿現象が起こり、これに対して比較例3の凍結乾燥体は、何れも15分が経過して沈殿現象が確実に観察された。
【0172】
また、親水性表面処理された実施例1、実施例2、実施例2-1、実施例2-2、比較例1~6で得られた凍結乾燥体を用いた沈殿の有無を確認し、その結果は、下記表4の通りである。
【0173】
【表4】
【0174】
また、比較例1~比較例6の場合も、何れも15分経過後に完全に沈殿することが確認できた。
【0175】
実施例1、1-5、1-6、1-7、2、2-1、2-2及び2-3の凍結乾燥体において、PDO微粒子は20~50μmの大きさの範囲で60分間非常に安定した分散状態を維持することが確認できた。
【0176】
また、実施例5及び6のフィラー用注射剤において、沈殿形成の有無を上述した評価方法と同一の方法によって評価した。評価の結果、実施例1のフィラー用注射剤と同様、安定的な分散状態を示すことが分かった。
【0177】
一方、比較例7の場合は、賦形剤の含有量が高いため、分散状態は安定的に維持され得るが、下記の評価例4に記述されるように、賦形剤を含有する注射剤は、注射剤の粘度を上げて注射注の入力を上げることになり、PDO粒子の相対的な含有量が減少し、下記の評価例5に示すように、ボリュームが4週経過後に減少して施術の満足度が低下した結果を示した。
【0178】
[評価例3:平均粒径及び粒子分布特性]
製造例1によって製造されたPDO粒子の平均粒径D50、D10、D90及び分級前の粒度分布をレーザ回折散乱式粒度分析機(Particle size Analyzer、PSA)を用いて行った。
【0179】
平均粒径及び粒子分布特性を調査し、下記表5に示した。
【0180】
【表5】
【0181】
製造例1で製造された高分子微粒子の粒度分布図の半値幅(FWHM、Full Width at Half Maximum)は、50μm未満と非常に狭かった。
【0182】
[評価例4:粘度]
実施例1及び比較例7のフィラー用注射剤の粘度を測定し、下記表6に示した。
【0183】
【表6】
【0184】
表6に示すように、実施例1の注射剤は、比較例7の注射剤に比べて粘度が減少した数値を示した。実施例1の注射剤は、上述した粘度を有することにより、注射の注入力が低いため、注射の注入が容易であり、賦形剤を含有しないため、PDO微粒子の含有量が相対的に高く、ボリュームが長く維持されることから、施術の満足度が改善される。
【0185】
[評価例5]
実施例1及び比較例6のフィラー用注射剤をシリンジに充填後、ヘアレスマウスの背中に200μlを注射した。4週間注入部位の大きさを測定し、一定期間を周期に持続的に大きさの変化を測定し、その結果を下記表7に示した。
【0186】
【表7】
【0187】
表7に示すように、実施例1の注射剤は、比較例7の場合に比べて施術初期のボリュームが著しく減少することが分かった。
【0188】
以上、添付の図面を参照し、本発明の実施例を説明したが、本発明の属する技術分野における通常の知識を有する者は、本発明がその技術的思想や必須の特徴を変更することなく、他の具体的な形態に実施できることが理解できるはずである。従って、以上で記述した実施例は、あらゆる面で例示的なものであり、限定的ではないものとして理解すべきである。

図1
図2
図3
図4
図5