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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-12
(45)【発行日】2023-07-21
(54)【発明の名称】計時器のフィッティングデバイス
(51)【国際特許分類】
   G04D 1/06 20060101AFI20230713BHJP
【FI】
G04D1/06
【請求項の数】 18
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022030646
(22)【出願日】2022-03-01
(65)【公開番号】P2022168823
(43)【公開日】2022-11-08
【審査請求日】2022-03-01
(31)【優先権主張番号】21170438.2
(32)【優先日】2021-04-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】591048416
【氏名又は名称】ウーテーアー・エス・アー・マニファクチュール・オロロジェール・スイス
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】パトリック・ファム
(72)【発明者】
【氏名】ジョエル・レトリスバーガー
【審査官】細見 斉子
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2006/0062644(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2018/0200851(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G04D 1/06,1/00
G04B 29/02
B23Q 3/00- 3/154
B23Q 3/16- 3/18
B25B 1/00-11/02
B23K 37/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
実質的に平坦なコンポーネント(1)を加工及び/又は組み付け位置に保持するためのフィッティングデバイス(20)であって、
前記コンポーネント(1)は、所定の最大厚み(E)以下の厚みを有し、正中面(PM)の両側にて延在しており、
前記フィッティングデバイス(20)は、
基準面(PR)の第1の側に設けられた、第1のクランプ面(310)を有する第1の顎体(21)と、
前記基準面(PR)の前記第1の側と反対側の第2の側に設けられた、第2のクランプ面(320)を有する第2の顎体(22)と、
前記第1、第2の顎体(21,22)との間に形成されるチャンバー(40)と、
前記第1、第2の顎体(21,22)に相対運動を生じさせる運動手段と
を有し、
前記第1、第2の顎体(21,22)どうしを遠ざけるように相対運動させて、該第1、第2の顎体(21,22)が開いた開位置で、前記コンポーネント(1)を前記チャンバー(40)内に挿入することを可能にする単一の挿入用オリフィス(30)が形成されるように構成されるとともに、
前記第1、第2の顎体(21,22)どうしを近づけるよう、前記第1、第2の顎体(21,22)を相対運動させて、前記第1、第2の顎体(21,22)が閉じた閉位置で、前記挿入された前記コンポーネント(1)が前記第1、第2の顎体(21,22)の前記第1、第2のクランプ面(310,320)により前記チャンバー(40)内にきつく保持されるよう構成され、
前記フィッティングデバイス(20)には、さらに、前記フィッティングデバイス(20)の基準面(PR)に実質的に垂直である作用面からなる少なくとも2つの当接支持面(S1,S2,S3)であって前記コンポーネント(1)の周部エッジ支持面(11,12,13)を当接支持するための当接支持面を形成する止め(2,3)があり、
前記コンポーネント(1)の前記正中面(PM)は、前記加工及び/又は組み付け位置において、前記基準面(PR)に対して平行又は一致しており、
前記チャンバー(40)は、前記フィッティングデバイス(20)に設けられた少なくとも1つの空欠部(41,42,43)によって該フィッティングデバイス(20)の外側に開いており、
前記空欠部(41,42,43)は、前記コンポーネント(1)に対して操作を行うために、工具、別のコンポーネント、又は加工及び/又は組み付け手段を通すことを可能にし、
前記開位置において、前記挿入用オリフィス(30)の開口の大きさは、前記正中面(PM)の両側にて、前記コンポーネント(1)の厚みの方向における前記所定の最大厚み(E)と等しい
ことを特徴とするフィッティングデバイス(20)。
【請求項2】
前記第1、第2の顎体(21,22)の少なくとも1つは、閉じ運動の間に、前記当接支持面(S1,S2,S3)に当接支持されるように前記コンポーネント(1)を押して動かす傾向があるように構成している摩擦手段を備える
ことを特徴とする請求項1に記載のフィッティングデバイス(20)。
【請求項3】
前記第1の側の第1の顎体(21)及び前記第2の側の第2の顎体(21)に設けられた空欠部(41,42)を有し、この空欠部により、同じコンポーネント(1)の前記第1、第2の側の操作を可能にする
ことを特徴とする請求項1又は2に記載のフィッティングデバイス(20)。
【請求項4】
前記チャンバー(40)は、前記基準面(PR)の両側にて、前記コンポーネント(1)への両側アクセスを可能にする空欠部(41,42)によって開いている
ことを特徴とする請求項3に記載のフィッティングデバイス(20)。
【請求項5】
前記チャンバー(40)は、前記コンポーネント(1)のエッジへのアクセスを可能にする少なくとも1つの空欠部(43)によって開いている
ことを特徴とする請求項3又は4に記載のフィッティングデバイス(20)。
【請求項6】
前記第1、第2の顎体(21,22)の一方は、前記フィッティングデバイス(20)の内部又は前記フィッティングデバイス(20)の外部にあるドライバー(100)によって動かされる上側顎体(21)であり、
前記第1、第2の顎体(21,22)の他方は、前記フィッティングデバイス(20)を加工及び/又は組み付けデバイスに固定するように構成しているソール(29)を含む下側顎体(22)である
ことを特徴とする請求項1~5のいずれか一項に記載のフィッティングデバイス(20)。
【請求項7】
前記ドライバー(100)は、前記フィッティングデバイス(20)の内部にあり、前記ソール(29)に固定される
ことを特徴とする請求項6に記載のフィッティングデバイス(20)。
【請求項8】
前記ドライバー(100)は、前記フィッティングデバイス(20)の外部にあり、前記フィッティングデバイス(20)が固定される加工及び/又は組み付けデバイス(300)に固定される
ことを特徴とする請求項6に記載のフィッティングデバイス(20)。
【請求項9】
前記運動手段は、前記フィッティングデバイス(20)にて形成されたフレキシブルヒンジ(200)を備え、
前記フレキシブルヒンジ(200)は、弾性変形によって、前記顎体(21,22)どうしの間の相対運動を発生させるように構成している
ことを特徴とする請求項1~8のいずれか一項に記載のフィッティングデバイス(20)。
【請求項10】
前記フレキシブルヒンジ(200)は複数あり、そのそれぞれには、前記上側顎体(21)と前記下側顎体(22)の両方を切り込んで形成されるチャンバー(26)があり、
このチャンバー(26)において、弾性ブレード(24)又はネックによって前記上及び下側の顎体(21,22)のそれぞれに取り付けられたレバーマス(23)が、前記フレキシブルヒンジ(200)の他方と平行なテーブルを形成するように動くことができる
ことを特徴とする請求項に記載のフィッティングデバイス(20)。
【請求項11】
各レバーマス(23)は、前記基準面(PR)に対して交差する方向を向いており垂直に向いていない
ことを特徴とする請求項10に記載のフィッティングデバイス(20)。
【請求項12】
各レバーマス(23)は、開位置と閉位置の間の移動中のある時点で、前記基準面(PR)に対して垂直となる
ことを特徴とする請求項10に記載のフィッティングデバイス(20)。
【請求項13】
前記フィッティングデバイス(20)は、対抗面(281,282)がある少なくとも1つのトラベル制限デバイス(28)を備え、
前記対抗面(281,282)は、前記第1、第2の顎体(21,22)の一方における有用トラベル端において当接支持するように連係して、通常の動作範囲外における前記フレキシブルヒンジ(200)の危険な変形をいずれも避けるように構成している
ことを特徴とする請求項9~12のいずれか一項に記載のフィッティングデバイス(20)。
【請求項14】
前記トラベル制限デバイス(28)はS字形の溝によって形成され、さらに、このS字形の溝に接続する溝(25)がある
ことを特徴とする請求項13に記載のフィッティングデバイス(20)。
【請求項15】
前記第1、第2のクランプ面(310,320)は、それぞれ前記第1、第2の顎体(21,22)の一部を形成する
ことを特徴とする請求項1~14のいずれか一項に記載のフィッティングデバイス(20)。
【請求項16】
前記第1、第2のクランプ面(310,320)は、それぞれ前記第1、第2の顎体(21,22)内に収容される取り外し可能なインサート(31,32)の一部を形成し、
これらの取り外し可能なインサート(31,32)は一緒に、前記挿入用オリフィス(30)を形成する
ことを特徴とする請求項1~14のいずれか一項に記載のフィッティングデバイス(20)。
【請求項17】
前記フィッティングデバイス(20)は、前記第1、第2の顎体(21,22)と、これらの顎体(21,22)を互いに接続するフレキシブルヒンジ(200)によって構成している一体的なアセンブリーを備え、
前記第1、第2の顎体(21,22)は、これらの顎体(21,22)のうちの1つに対するドライバー(100)の作用下での弾性変形によって、前記第1、第2の顎体(21,22)の間に相対的なタイトニング運動を発生させるように構成している
ことを特徴とする請求項1~16のいずれか一項に記載のフィッティングデバイス(20)。
【請求項18】
請求項1~17のいずれか一項に記載のフィッティングデバイス(20)、及び少なくとも1つのドライバー(100)を担持する少なくとも1つの加工及び/又は組み付けデバイス(300)を備える製造手段(1000)であって、
前記製造手段(1000)は、さらに、各ドライバー(100)を制御して、対応するフィッティングデバイス(20)の開位置と閉位置の間の運動を制御する手段を備える
ことを特徴とする製造手段(1000)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、所定の最大厚み以下の厚みを有し正中面の両側にて延在している実質的に平坦なコンポーネントを加工及び/又は組み付け位置に保持するためのフィッティングデバイスに関する。
【0002】
本発明は、さらに、このようなフィッティングデバイスを担持する加工及び/又は組み付けデバイスを備える製造手段に関する。
【0003】
本発明は、マイクロメカニクス、特に腕時計製造、のための製造用の道具の分野に関する。
【背景技術】
【0004】
計時器用ムーブメントのブランクの製造に関連する技術において、被加工コンポーネントのレファレンシングを穴(部品側)内に収容されるピン(フィッティングデバイス側)によって行うものがある。これには、部品のロード及びアンロード時に、ピンの軸方向における鉛直方向の挿入操作が必要となる。被加工コンポーネントは、非常に大きなブランクプレスによる点支持にしたがって保持される。このブランクプレスは、コンポーネントの一部の面において局所的に支持する可動クランプであり、支持力が過度に大きいとコンポーネントを変形させてしまう可能性がある。
【0005】
前記のような鉛直方向の挿入を可能にするには、ブランクプレスを解放する必要がある。このことは、回転可能に取り付けられた各ブランクプレスを90°回転させることによってしばしば実現される。この回転は、ブランクプレスの鉛直方向の運動に結合されるカムを通して発生させられる。したがって、ブランクプレスの鉛直方向の運動の振幅は比較的大きい。鉛直方向のタイトニング(きつくする)運動部分と、ブランクプレスを回転させるための回転式の鉛直方向の結合された運動部分との2つの別個の運動を組み合わせるものであるからである。
【0006】
この種の技術ではトラベルが制限されるため、このような大きなトラベルによって、フレキシブルヒンジ技術を用いることができなくなる。したがって、このような関連技術のフィッティングデバイスは、一体的に形成することはできず、互いに摺動し合う多くの部品によって構成することが多く、これによって、特定の動作上のクリアランスが発生し、必然的に剛性や精度が低下してしまう。トラベルが大きいこと、部品数が多いこと、そして、全体を組み付けるために必要な操作のために、このようなフィッティングデバイスは比較的かさばり、複雑で、重く、高価になってしまう。したがって、このような事情によって、同じパレット又は同じ支持体上に複数のフィッティングデバイスの組を配置することは妨げられてしまう。
【0007】
これによって、加工のためのアクセスが非常に制限され、多くの場合、1つの面にしかアクセスできず、さらに、制限された形態でしかアクセスすることができない。両側における加工の場合、一方の面を加工した後に他方の面を加工する前に、コンポーネントを分解し、反転させ、新規にポジショニングし、ブロックする操作を行う必要がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、単一の工程で、単純なプロセスを通して、コンポーネントの加工精度を改善するために、フィッティングデバイスを開発することを提案するものである。
【0009】
従来技術のフィッティングデバイスは、かさばり、重く、複雑で、高価であることが多い。
【0010】
本発明は、さらに、性能(剛性、精度)が改善され、複雑さや重量を低減することができる一体的なフィッティングデバイスを提供する。これによって、超高速加工(HSM)及び/又はマイクロマシン/「マイクロファクトリー」のトレンドにしたがった小型化の条件を満たすことが一層と可能になる。
【課題を解決するための手段】
【0011】
このような状況で、本発明は、請求項1に記載の、所定の最大厚み以下の厚みであり正中線の両側にて延在している、実質的に平坦なコンポーネントを加工及び/又は組み付け位置に保持するためのフィッティングデバイスに関する。
【0012】
本発明は、さらに、請求項18に記載の、前記のようなフィッティングデバイスと、及び開位置と閉位置の間のフィッティングデバイスの運動を制御するための前記のようなドライバーを担持する少なくとも1つの加工及び/又は組み付けデバイスとを備える製造手段に関する。
【0013】
添付の図面を参照しながら以下の詳細な説明を読むことによって、本発明の目的、利点及び特徴が一層明確になる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】マイクロメカニクスにおける通常のピンによるブランクのセンタリングを概略的に示している。このブランクは、加工領域を大きく浸食するブランクプレスと呼ばれるクランプ(図示せず)によって正面から保持される。
図2図1と同様な形態の図であり、本発明の実装に固有のポジショニングモードを示している。加工領域の外側にある止めにブランクが半径方向にて支持されており、行われるいくつかの正面方向及び半径方向の加工をこのブランクに示している。
図3】2つの顎体がある本発明に係るフィッティングデバイスを概略的に示している斜視図である。一方の第1の顎体は、機械に固定されるように意図されており、他方の第2の顎体は、第1の顎体に対して動くことができる。これらの顎体の間に挿入用の溝があることによって、図2に示している止め(この図には示していない)までブランクを挿入することができる。弾性ブレードとともにフレキシブルヒンジがあるフィッティングデバイスの側面に、2つの顎体の間に平行なテーブルシステムが構成されていることを示しており、小さな空間要件しか必要ないことによって、図示している例においては上側、下側及び側方にある、加工用の広い空欠部を形成することができる。
図4図3と同様な形態の図であり、別の角度から見た同じフィッティングデバイスを示している。
図5図3と同様な形態の図であり、一方の顎体を含むファスニングソールの側からの別の角度から見た、同じフィッティングデバイスを示している。
図6図3~5のフィッティングデバイスについての2つの顎体とブランクの間に保持用インサートがある変異形態についての概略断面図である。上側顎体は、機械に固定される下側顎体に対して平行に動くことができ、上側顎体には、トラベルの制限を確実にする当接面がある。
図7】上側顎体の側から見た図3~6のフィッティングデバイスを示している概略上面図である。
図8図3~7のフィッティングデバイスを示している概略側面図であり、上側顎体が図の下側にある。
図9図3~8のフィッティングデバイスを下側顎体の側から見た概略下面図である。
図10図3~9のフィッティングデバイスを示している概略側面図であり、下側顎体が図の下側にある。
図11】ブランクとその最大空間要件を示している概略断面図である。
図12】フレキシブルヒンジの詳細を示している概略図である。
図13】前記のようなフィッティングデバイスと、開位置と閉位置の間のフィッティングデバイスの運動を制御するための前記のようなドライバーとを担持する加工及び/又は組み付けデバイスを備える製造手段を示している概略図である。ドライバーは、ここでは、顎体の1つによって担持される。
図14図13と同様な形態の図であり、ドライバーが加工及び/又は組み付けデバイスによって担持されるような前記のような製造手段を示している。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明は、前記のようなコンポーネントのすべての面へのアクセスを可能にする、(計時器用ムーブメントブランクのタイプの)平坦な/薄い部品の加工及び/又は組み付けのためのフィッティングデバイス/タイトニングデバイスに関する。本開示の残りの部分において、加工及び/又は組み付け作業中にコンポーネントを保持するために開発された本発明に係るデバイスを定めるために「フィッティングデバイス」という用語のみを用いる。ここで、「加工(マシニング)」という用語は、非常に広義に、特定のコンポーネントに対して行われる任意の操作(オペレーション)を意味し、具体的には、例として、切削工具、レーザー、ウォータージェット、プラズマなどを用いた加工、又は熱処理、面処理、スクリーン印刷、塗装などである。なお、これらに限定されない。「組み付け(アセンブリー)」という用語は、同じように、コンポーネントを連結する任意の操作を意味し、例えば、入れ込み、ヘッディング、ろう付け、はんだ付け、接着などである。
【0016】
本発明は、主に、所定の最大厚みE以下の厚みを有し正中面(PM)の両側にて延在している実質的に平坦なコンポーネント1(フラットとも呼ばれる)のために設計される。このようなコンポーネント1であるムーブメントブランクは、必ずしも対称である必要はなく、このようなムーブメントブランクには、図11に示しているように、コインテスターに挿入されるコインのように、最大厚みEの寸法構成を有することを尊重することを条件として、突き出ていること又は再入されることがあることができるレリーフがあることができる。
【0017】
具体的には、特に有利な実施形態において、このフィッティングデバイスは、フレキシブルヒンジとともに一体的に形成される。
【0018】
図1及び2は、従来技術と本発明との違いを強調している。
【0019】
図1は、通常の従来技術における2つのピンに対するコンポーネントの鉛直方向の挿入を示している概略図である。これは、コンポーネント1を鉛直方向に挿入する伝統的なタイトニングを示している。この伝統的なレファレンシングにおいて、鉛直方向に(図面に垂直に)ピンを穴に挿入し、又はその逆に挿入する。コンポーネント1をそのフィッティングデバイスに対して挿入することができるようにするには、コンポーネントの面にわたって分布するいくつかの(多くの場合4つ)ブランクプレスが上昇して回転する必要があり、これによって、コンポーネント1を設置するためのアクセスが可能となり、そして、操作の終了時にリリースされる。これには通常、数ミリメートル又は数センチメートルであるタイトニングトラベルの分ブランクプレスが動くことを伴う。なぜなら、鉛直方向の運動を回転(通常は90°の回転)に変換するカムを介してブランクプレスが回転するためである。
【0020】
図2は、本発明を実施する際に提案される、コンポーネント1を水平方向にて挿入して当接支持させるようなクランプモードを示している。この種の挿入には、本発明の対象である特定のタイプのフィッティングデバイス20が必要である。
【0021】
本発明によると、このフィッティングデバイス20には、止め2、3があり、これらの止め2、3は、フィッティングデバイス20の基準面PRに対して実質的に垂直である作用面がある少なくとも2つの半径方向当接支持面S1、S2、S3を形成する。これらの止め2、3は、コンポーネント1の周部エッジ支持面11、12、13と当接支持するように連係するように構成している。
【0022】
当然、選択されるクランプ方法は、操作前のムーブメントブランクのタイプ、及び周部の加工操作に依存し、この周部の加工操作は、フィッティングデバイス20に操作が行われる前における、ディスペンシング、スタンピング操作又は加工操作の間に行うことができる。接触面の数、形状及び位置が、この特定のムーブメントブランクの幾何学的な形に依存することは極めて明白である。例えば、コンポーネント1には、V字を形成する2つの面があって、これらの面が、相補的なV字を形成する2つの相補的な当接面と連係することができる。図2に示している変異形態(これに限定されない)は、3つの接触点を用いるアイソスタティックレファレンシングに関連しており、これは、図の平面に対する水平方向の挿入を可能にする。第1の止め2は、コンポーネント1の第1のノッチと連係してこれを支持する。この第1のノッチには、2つの面11及び12があり、これらに2つの半径方向当接支持面S1、S2が当接する。第2の止め3は、コンポーネント1の空欠部と連係してこれを支持する。この空欠部には平坦な面13があり、これに半径方向当接支持面S3が支持される。特定の形態(これに限定されない)にて、図示している実施形態に示しているように、これらの半径方向のノッチは、コンポーネント1のスタンピング又は事前の加工のいずれかによって得ることができる。
【0023】
フィッティングデバイス20は、加工及び/又は組み付け位置において、コンポーネント1の正中面PMが基準面PRと平行又は一致するように構成している。
【0024】
水平方向の挿入のおかげで、コンポーネント1の厚みに対して行われるタイトニングのトラベルは、10分の数ミリメートルの範囲であるように非常に小さくあることができ、これを、好ましいことに、フレキシブルジョイントを用いて達成することができる。
【0025】
本発明によると、フィッティングデバイス20には、基準面PRの両側において、顎体21及び22を境界とするチャンバー40があり、これらの顎体21及び22には、コンポーネント1を保持するためのクランプ面310、320がある。好ましいことに、これらのクランプ面310、320は、実質的に環状であり、これによって、コンポーネント1に対してタイトニング力を均等に分散し、有害な変形を防ぐ。
【0026】
チャンバー40は、少なくとも1つの空欠部41、42、43によって、基準面PRの少なくとも一方の側にて、開いている。この空欠部41又は42又は43は、コンポーネント1に対して操作を行うことができるように、工具、別のコンポーネント、又は加工及び/又は組み付け手段を通すことを可能にする。好ましいことに、フィッティングデバイス20には、基準面PRの両側において各側に1つずつ、2つの空欠部41及び42がある。したがって、例えば、単にフィッティングデバイス20の回転を制御することによって、単一のタイトニングにて、同じコンポーネント1の両側に対して操作を行うことが可能となる。例えば、図2に示している正面加工108である。なお、これに限定されない。図示している実施形態には、さらに、横方向の空欠部43があり、これには、コンポーネント1のエッジに対する加工を可能にするという利点がある。例えば、図2の加工109であり、これは、例として、制御棒のハウジングや腕時計プレートに対する押し部品のためのものである。
【0027】
フィッティングデバイス20には、単一の挿入用オリフィス30があり、この挿入用オリフィス30は、一方向に、コンポーネント1をフィッティングデバイス20の半径方向当接支持面S1、S2、S3の方へとチャンバー40内に挿入することを可能にする。
【0028】
フィッティングデバイス20は、開位置と閉位置の間で変形可能である。図面には、顎体21、22のそれぞれに、フィッティングデバイス20の基準面PRに平行な基準面35、34があり、好ましい運動学系において、閉じる運動及び開く運動の間に前記2つの基準面35及び34が互いに平行であることを維持するような1つの実施形態(これに限定されない)を示している。
【0029】
開位置において、挿入用オリフィス30には、正中面PMの両側において、コンポーネント1の厚みの方向における所定の最大厚みE以下である大きさを有する最大開口がある。この開位置において、コンポーネント1をチャンバー40内に挿入して、半径方向当接支持面S1、S2、S3に当接支持される当接支持位置にすることができる。
【0030】
閉位置において、フィッティングデバイス20は、半径方向当接支持面S1、S2、S3に支持されるように保持されるコンポーネント1のまわりにて変形しており、コンポーネント1は、コンポーネント1の厚みにわたって、閉じ力が与えられる顎体21、22によって、きつくされる。この閉じ力は、顎体21、22を互いに近づけるように構成している運動手段によって与えられる。
【0031】
図示している有利な例において、一方の顎体21は、製造手段に固定される他方の顎体22に対して動くことができる。当然、各顎体は固定構造に対して可動であることもできるが、これによって、機構が高価になり、必要な空間が増える。
【0032】
好ましいことに、開位置から閉位置への移行の際の運動によって、当接支持体上におけるコンポーネント1の支持が強化される傾向がある。
【0033】
変異形態の1つにおいて、顎体21、22の少なくとも1つは、摩擦手段を備え、この摩擦手段は、閉じる運動の間に、半径方向当接支持面S1、S2、S3上に当接支持されるようにコンポーネント1を動かす傾向があるように構成している。
【0034】
フィッティングデバイス20は、基準面35と基準面34の間の平行性を維持しつつ、顎体21及び22の互いに対する歪んだ相対的トラベルを示すことを可能にする手段を備える。
【0035】
このようなフィッティングデバイス20の設計によって、異なる形態のコンポーネント1を保持するための把持及びタイトニングが可能になることがわかる。ただし、コンポーネント1の厚みが最大厚みE以下であり、クランプ面310、310によるコンポーネント1の保持が可能であり続けることを前提とする。これに関連して、図面には、クランプ面310、320が取り外し可能なインサート31及び32の一部を形成し、これらのインサート31及び32が一緒に挿入用オリフィス30を形成するような特定の実施形態を示している。また、当然、フィッティングデバイス20には、さらに、直接、顎体21、22において、クランプ面310、320があることができる。取り外し可能なインサート31、32を用いることによって、フィッティングデバイスの適用可能性が広がり、様々な寸法構成や形状のムーブメントブランクに対応することができ、また、常にきれいな接触面があることを確実にして良好なメンテナンスが可能になる。しかし、フィッティングデバイス20は、このようなインサートなしでも動作するように設計されている。
【0036】
フィッティングデバイス20は、異なる形態にて提供されることができ、特に、伝統的な高価なヒンジを用いるように製造することができる。
【0037】
例えばパレットにセットして、複数のコンポーネントを同時に加工するという意味で、このようなフィッティングデバイスの製造コストを最小限に抑えることは有利であり、その際にフィッティングデバイスは、特定のコンポーネントのファミリーのために専用のものであることができる。
【0038】
図3~10は、有利な実施形態(これに限定されない)を示しており、前記取り外し可能なインサートを除いて、フィッティングデバイス20は一体的に形成されている。
【0039】
図3は、パレット、工作機械の軸などに直接固定することができるような前記のような一体的なフィッティングデバイス20を示している。
【0040】
特に、運動手段は、フィッティングデバイス20に形成されるフレキシブルヒンジ200を備える。フレキシブルヒンジ200は、弾性変形によって、顎体21、22の間に相対的な運動を発生させるように構成している。ここで、上側顎体21は、そのフレキシブルヒンジ200によってのみ下側顎体22に保持され、溝25は、下側顎体22に含まれるソール29から上側顎体21を分離する。このソール29は、フィッティングデバイス20を機械に固定するように用いられる。
【0041】
特に、各フレキシブルヒンジ200には、上側顎体21及び下側顎体22の両方にて切り込むように形成されるチャンバー26があり、このチャンバー26内にて、弾性ブレード24又はネックによって各顎体21、22に取り付けられたレバーマス23は、基準面35及び34の相対的な平行な変位がわかるように、他のフレキシブルヒンジ200と平行なテーブルを形成するように動くことができる。
【0042】
したがって、このフィッティングデバイス20は、フレキシブルヒンジ200を備え、これは、この部分に切り込むように形成される。これらのフレキシブルヒンジ200は、弾性変形によって、顎体21及び22を構成しているタイトニングの上部と下部の間の相対的な運動を発生させるように設計されている。この特定の実施形態において、各フレキシブルヒンジには、上側顎体21及び下側顎体22の両方にて切り込むように形成されるチャンバー26があり、このチャンバー26内にて、弾性ブレード24によって顎体21及び22のそれぞれに取り付けられたレバーマス23が動くことができる。図示していない変異形態の1つにおいて、各弾性ブレード24はネックによって置き換えることができる。この設計は、顎体21及び22の互いに対するトラベルが短いことを説明するが、その見返りとして、運動学系の完全な反復性と、経時的な耐久性が良好であることを確実にする。この構成は「平行なテーブル」と呼ばれ、機械式腕時計用発振器でも用いられる。
【0043】
弾性ブレード24を保護するために、フィッティングデバイス20は、好ましいことに、図において大文字のS字形の溝によって示されている少なくとも1つのトラベル制限デバイス28を備える。このトラベル制限デバイス28の対抗面281及び282は、顎体21及び22の有用トラベルの端において当接支持されるように連係して、フレキシブルヒンジ200、特に、弾性ブレード24、の通常の動作範囲外での危険な変形を避ける。このようにして、力ループはブレードではなく止めを通り抜ける。なお、「LIGA」又は同様の方法で達成可能な、薄い弾性ブレードを備える平行なテーブルの技術は、完全に平行な運動を確実にしつつ、そのトラベルは非常に短い。これは、本発明に係るフィッティングデバイスによって提供されるタイトニング機能と完全に共存できるものである。したがって、トラベル制限デバイス28によって、そして、トラベル端の止めのための追加の安全性のサポートを構成する溝25の面によって構成する安全性は、経時的な良好な耐久性及び性能の再現性のために必須である。
【0044】
特に、顎体21、22の一方は、フィッティングデバイス20の内部又はフィッティングデバイス20の外部にあるドライバー100によって動かされる上側顎体21であり、このドライバー100は、運動手段が備え、顎体21、22の他方は、ソール29を含む下側顎体22であり、このソール29は、製造手段1000内における加工及び/又は組み付けのためのデバイス300にフィッティングデバイス20を固定するように構成している。
【0045】
第1の変異形態において、図13に示しているように、ドライバー100は、フィッティングデバイス20の内部にあり、ソール29に固定される。
【0046】
第2の変異形態において、図14に示しているように、ドライバーはフィッティングデバイス20の外部にあり、フィッティングデバイス20が固定される加工及び/又は組み付けデバイスに固定される。
【0047】
上側顎体21は、ピストンのようなドライバー100によってアクチュエートすることができる。
【0048】
変異形態の1つにおいて、各レバー23は、交差する方向を向いており基準面PRに対して垂直に向いていない。
【0049】
別の変異形態において、各レバー23は交差する方向を向いており、開位置と閉位置の間のトラベルにおいて、基準面PRに対して垂直な位置を通り抜ける。
【0050】
残りのレバー23(図面における数4に限定されない)における角度は、用途に応じて最適化することができる。レバー23が垂直に近いほど(すなわち、基準面PRの法線に近いほど)、タイトニング力の増幅の効果が高くなる。水平方向(すなわち、基準面PRに平行)のアクチュエートを通して、鉛直方向のタイトニング力が得られ、フィッティングデバイス20の上側顎体21と下側顎体22の間で被加工コンポーネント1を把持することができる。
【0051】
好ましいことに、フィッティングデバイス20は、顎体21、22、及びこれらの顎体21、22を互いに接続するフレキシブルヒンジ200によって構成している一体的なアセンブリーを含み、前記フレキシブルヒンジ200は、顎体21、22のうちの少なくとも1つに対するドライバー100の作用下での弾性変形によって、顎体21、22の間に相対的なタイトニング運動を発生させるように構成している。
【0052】
本発明は、さらに、少なくとも1つの前記のようなフィッティングデバイス20及び少なくとも1つの前記のようなドライバー100を担持する少なくとも1つの加工及び/又は組み付けデバイス300を備える製造手段1000に関し、この製造手段1000は、さらに、対応するフィッティングデバイス20の開位置と閉位置の間の運動を制御するように各ドライバー100を制御する制御手段を備える。
【0053】
本発明は、ここでは、ワンウェイクランプアクチュエーターとしての用途に基づいて説明している。本発明は、当然、ツーウェイアクチュエーターを構成するためにも用いることができる。この場合、各運動方向における力及びトラベルリミッターを備えるとよい。
【0054】
短く書くと、本発明は、コンポーネント1のすべての面への容易なアクセスを可能にし、したがって、単一のタイトニングで加工を完了することを可能にするような超小型のフィッティングデバイスを得ることを可能にする。単一のクランプで1つの部品を加工することによって、コンポーネント1の精度に対して非常に良い効果を発揮する。なぜなら、この構成が、加工を繰り返す場合に常に発生する再配置の誤差が蓄積されないためである。
【0055】
本発明に係るフィッティングデバイスは、単純であり、1つの一体的な部品によって構成しており、非常に正確であり、クリアランスやヒステリシスがなく、完全に線形的な挙動を示す。それにもかかわらず、このフィッティングデバイスは、一体的に形成されるため、依然として非常に剛性が高い。このフィッティングデバイスは、軽く、このことによって、高速旋削やフライス盤のような非常に動的な用途において用いることができ、加工機の運動に応じて変位するエネルギーや力を少ししか必要としない。
【0056】
最後に、このフィッティングデバイスをマルチスピンドルマシンに搭載するように有利な寸法構成にするように開発することができる。
【符号の説明】
【0057】
1 コンポーネント
2、3 止め
11、12、13 周部エッジ支持面
20 フィッティングデバイス
21 上側顎体
22 下側顎体
23 レバーマス
24 弾性ブレード
25 溝
26 チャンバー
28 トラベル制限デバイス
29 ソール
30 挿入用オリフィス
31、32 インサート
40 チャンバー
41、42 空欠部
43 空欠部
100 ドライバー
200 フレキシブルヒンジ
281、282 対抗面
300 加工及び/又は組み付けデバイス
310、320 クランプ面
1000 製造手段
PM 正中面
PR 基準面
S1、S2、S3 半径方向当接支持面
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
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