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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-12
(45)【発行日】2023-07-21
(54)【発明の名称】部品装着機
(51)【国際特許分類】
   H05K 13/02 20060101AFI20230713BHJP
【FI】
H05K13/02 D
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2022504864
(86)(22)【出願日】2020-03-05
(86)【国際出願番号】 JP2020009294
(87)【国際公開番号】W WO2021176626
(87)【国際公開日】2021-09-10
【審査請求日】2022-07-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000237271
【氏名又は名称】株式会社FUJI
(74)【代理人】
【識別番号】110000604
【氏名又は名称】弁理士法人 共立特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小谷 一也
(72)【発明者】
【氏名】小野 恵市
(72)【発明者】
【氏名】藤本 智也
【審査官】大塚 多佳子
(56)【参考文献】
【文献】特許第3802954(JP,B2)
【文献】特許第6628050(JP,B2)
【文献】国際公開第2014/128913(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 13/00 - 13/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
供給領域から部品を採取する採取動作、および前記部品を基板上の所定の装着位置に所定の装着角度で装着する装着動作を含むPPサイクルを実行する装着制御部と、
前記供給領域にバルク状態で供給された複数の前記部品の位置および姿勢を含む供給状態を認識する状態認識部と、
認識された前記供給状態、および前記PPサイクルにおいて複数回に亘って実行される前記装着動作ごとの前記装着角度に基づいて、前記供給領域に供給された複数の前記部品のうち採取対象とする前記部品および採取順序を設定する設定部と、
を備える部品装着機。
【請求項2】
前記部品装着機は、機内を水平方向に移動可能に設けられる装着ヘッドをさらに備え、
前記装着ヘッドは、前記部品を保持する保持部材をそれぞれ取り付けられる複数のホルダを昇降可能に且つ複数の前記ホルダごとの回転軸周りに回転可能に支持する、請求項1に記載の部品装着機。
【請求項3】
前記装着ヘッドは、複数の前記ホルダを連動して回転させる回転装置を有する、請求項2に記載の部品装着機。
【請求項4】
前記装着制御部は、
前記PPサイクルの前記装着動作において、現在位置から前記装着動作の前記装着位置まで前記保持部材が移動するように前記装着ヘッドを移動させる装着移動と、前記保持部材が保持する前記部品が前記装着動作の前記装着角度となるように前記ホルダを回転させる装着回転とを実行し、
前記PPサイクルの前記採取動作において、現在位置から前記供給領域における複数の前記部品の一つまで前記保持部材が移動するように前記装着ヘッドを移動させる採取移動と、当該採取動作で採取された前記部品を前記基板に装着する前記装着動作の前記装着角度に応じて前記ホルダを予め回転させる予備回転とを実行し、
前記予備回転における前記ホルダの回転量に応じて、前記装着回転を省略または前記装着回転における前記ホルダの回転量を低減させる、請求項2または3に記載の部品装着機。
【請求項5】
1回の前記採取動作の所要時間は、当該採取動作に係る前記採取移動の所要時間と前記予備回転の所要時間の長い方であり、
1回の前記装着動作の所要時間は、当該装着動作に係る前記装着移動の所要時間と前記装着回転の所要時間の長い方であり、
前記PPサイクルの所要時間は、当該PPサイクルに含まれる全ての前記採取動作および前記装着動作の所要時間の合計であり、
前記設定部は、前記PPサイクルの所要時間に基づいて、複数回に亘って実行される前記採取動作ごとに前記予備回転を実行するか否かを設定する、請求項4に記載の部品装着機。
【請求項6】
前記装着制御部は、前記PPサイクルにおける前記採取動作を複数回に亘り実行する際に、前記設定部により設定された採取対象とする前記部品および採取順序に従って前記装着ヘッドを移動させるとともに、前記設定部により設定された前記採取動作ごとの前記予備回転の要否を示す回転量に従って前記ホルダを回転させる、請求項4または5に記載の部品装着機。
【請求項7】
前記保持部材は、供給される負圧エアにより前記部品を吸着することにより保持する吸着ノズルである、請求項2-6の何れか一項に記載の部品装着機。
【請求項8】
前記設定部は、前記供給領域に供給された複数の前記部品のうち採取対象とする前記部品および採取順序を設定する際に、前記部品を採取する経路の候補が複数ある場合に、前記経路が直線的なものほど採用の優先度を高くする、請求項1-7の何れか一項に記載の部品装着機。
【請求項9】
前記供給領域は、複数の区画に分割され、
前記状態認識部は、前記供給領域における複数の前記区画ごとに前記供給状態を認識する処理を実行し、
前記設定部は、前記供給領域における複数の前記区画のうち前記供給状態が認識された前記区画を対象に、当該区画に供給された複数の前記部品のうち採取対象とする前記部品および採取順序を設定する、請求項1-8の何れか一項に記載の部品装着機。
【請求項10】
前記供給領域に1回の前記PPサイクルで用いられる前記部品より多くの前記部品が供給されている場合に、
前記装着制御部は、複数の前記区画の少なくとも一つを対象とした前記設定部による前記部品の採取順序の設定が終了した後に、前記PPサイクルを実行し、
前記設定部は、実行されている前記PPサイクルに並行して複数の前記区画のうち残りを対象として、次回以降の前記PPサイクルで用いられる前記部品の採取順序を設定する、請求項9に記載の部品装着機。
【請求項11】
前記装着制御部は、前記設定部により設定された採取対象とする前記部品および採取順序に従って、前記PPサイクルにおける前記採取動作を複数回に亘り実行する、請求項1-10の何れか一項に記載の部品装着機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、部品装着機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
部品装着機は、バルクフィーダなどにより供給される部品を基板に装着する装着処理を実行する。バルクフィーダは、バルク状態で収容された部品の供給に用いられる。バルクフィーダには、特許文献1に示すように、吸着ノズルが部品を採取可能な供給領域において部品を散在させたバルク状態で供給するタイプがある。部品装着機は、装着処理において、バルクフィーダによる部品の供給状態を認識する画像処理を実行し、その画像処理の結果に基づいて吸着ノズルを用いた部品の吸着動作を制御する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2011-114084号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
部品装着機による装着処理において繰り返し実行されるPPサイクル(ピックアンドプレースサイクル)では、装着ヘッドに支持された複数の吸着ノズルの数だけバルクフィーダの供給領域から部品が採取され、これらの部品が基板上の所定の装着位置に所定の装着角度で順次装着され得る。このような装着処理において、それぞれのPPサイクルの所要時間の短縮が望まれている。
【0005】
本明細書は、複数の部品がバルク状態で供給される構成に対応し、PPサイクルにおいて複数回に亘って実行される部品の採取動作および装着動作を効率化することにより、PPサイクルの所要時間の短縮を図ることができる部品装着機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本明細書は、供給領域から部品を採取する採取動作、および前記部品を基板上の所定の装着位置に所定の装着角度で装着する装着動作を含むPPサイクルを実行する装着制御部と、前記供給領域にバルク状態で供給された複数の前記部品の位置および姿勢を含む供給状態を認識する状態認識部と、認識された前記供給状態、および前記PPサイクルにおいて複数回に亘って実行される前記装着動作ごとの前記装着角度に基づいて、前記供給領域に供給された複数の前記部品のうち採取対象とする前記部品および採取順序を設定する設定部と、を備える部品装着機を開示する。
【発明の効果】
【0007】
このような構成によると、供給領域における部品の姿勢を含む供給状態に加えて、装着動作ごとの装着角度に基づいて、供給領域から採取対象とする部品および採取順序を設定する。これにより、部品を装着動作に適した姿勢で採取することが可能となる。結果として、採取動作および装着動作を効率化することでき、PPサイクルの所要時間の短縮を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】部品装着機の構成を示す模式図である。
図2】装着ヘッドを模式的に示す上面図である。
図3】装着ヘッドを模式的に示す側面図である。
図4】供給領域に供給されたバルク状態の複数の部品を示す図である。
図5】部品装着機の制御装置を示すブロック図である。
図6】供給領域における部品の供給状態の認識処理に用いられる画像データを示す図である。
図7】複数回に亘る装着動作における装着移動および装着回転を示す図である。
図8】装着移動と装着回転を含む複数回の装着動作の所要時間を示す図である。
図9】採取移動と予備回転を含む複数回の採取動作の所要時間を示す図である。
図10】複数回に亘る採取動作における装着ヘッドの移動経路の候補を示す図である。
図11】採取対象の候補ごとの採取動作および装着動作の所要時間を示す図である。
図12】複数の区画に分割された供給領域および複数の移動経路の候補を示す図である。
図13】部品装着機による装着処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
1.部品装着機10の構成
部品装着機10は、例えば他の部品装着機10を含む複数種類の対基板作業機とともに、基板製品を生産する生産ラインを構成する。上記の生産ラインを構成する対基板作業機には、印刷機や検査装置、リフロー炉などが含まれ得る。
1-1.基板搬送装置
部品装着機10は、図1に示すように、基板搬送装置11を備える。基板搬送装置11は、基板91を搬送方向へと順次搬送するとともに、基板91を機内の所定位置に位置決めする。
【0010】
1-2.部品供給装置12
部品装着機10は、部品供給装置12を備える。部品供給装置12は、基板91に装着される部品を供給する。部品供給装置12は、複数のスロット121にフィーダ122をそれぞれ装備される。フィーダ122には、例えば多数の部品が収納されたキャリアテープを送り移動させて、部品を採取可能に供給するテープフィーダが適用される。また、フィーダ122には、バルク状態(それぞれの姿勢が不規則なばら状態)で収容された部品を採取可能に供給するバルクフィーダ50が適用される。
【0011】
バルクフィーダ50は、部品装着機10に装備されて部品供給装置12の少なくとも一部として機能する。バルクフィーダ50は、テープフィーダと異なりキャリアテープを用いないため、キャリアテープの装填や使用済みテープの回収などを省略できる点でメリットがある。一方で、バルクフィーダ50は、キャリアテープのように整列されていないバルク状態で収容された部品92を供給するため、部品92の供給状態に応じた保持部材の採取移動を要するなど採取動作に影響し得る。
【0012】
詳細には、図4および図6に示すように、供給領域Asにおいて部品92同士が接触するほど接近していたり堆積(上下方向に重なり合っている状態)していたり、部品92の幅方向が上下方向となるような横立ち姿勢であったりすると、採取対象にすることができない。また、供給領域Asに不規則な姿勢で部品92が供給されているため、部品装着機10は、供給状態(部品92の採取可否、および採取可能な部品92の姿勢)の認識処理を実行する。
【0013】
バルクフィーダ50は、扁平な箱状に形成されたフィーダ本体51を備える。バルクフィーダ50は、部品供給装置12のスロット121にセットされると、給電されるとともに、制御装置20と通信可能な状態となる。バルクフィーダ50は、フィーダ本体51の前側上部に設けられる軌道部材56を備える。軌道部材56は、フィーダ本体51の前後方向(図4の左右方向)に延伸するように形成される。軌道部材56の幅方向(図4の上下方向)の両縁には、上方に突出する一対の側壁561が形成される。一対の側壁561は、軌道部材56の先端部562とともに搬送路の周縁を囲い、搬送路を搬送される部品92の漏出を防止する。
【0014】
上記のような構成からなる軌道部材56には、供給領域Asが形成される。この「供給領域As」とは、部品92をバルク状態で供給する領域である。換言すると、装着ヘッド30に支持された吸着ノズル33により部品92を採取可能な領域であり、装着ヘッド30の可動範囲に含まれる。また、軌道部材56の「搬送路」とは、図略の部品ケースより部品92が供給される領域から供給領域Asへの部品92の通り道である。
【0015】
上記のような構成からなるバルクフィーダ50は、例えば、図略の加振装置により軌道部材56に振動を付与し、搬送路上の部品92に対して前方または後方且つ上方に向かう外力を加える。これにより、バルクフィーダ50は、部品ケースから軌道部材56に排出された複数の部品92を、搬送路を介して供給領域Asへと搬送可能とする。上記のような部品92の供給処理は、図略のフィーダ制御部が外部からの指令に応じて適宜実行される。
【0016】
1-3.部品移載装置13
部品装着機10は、部品移載装置13を備える。部品移載装置13は、部品供給装置12により供給された部品を基板91上の所定の装着位置に移載する。部品移載装置13は、ヘッド駆動装置131、移動台132、および装着ヘッド30を備える。ヘッド駆動装置131は、直動機構により移動台132を水平方向(X方向およびY方向)に移動させる。装着ヘッド30は、図示しないクランプ部材により移動台132に着脱可能に固定され、機内を水平方向に移動可能に設けられる。
【0017】
装着ヘッド30は、図2および図3に示すように、鉛直軸(Z軸)に平行なR軸周りに回転可能に設けられたロータリヘッド31を有する。ロータリヘッド31は、複数のホルダ32を昇降可能に且つ複数のホルダ32ごとの回転軸(Q軸)周りに回転可能に支持する。複数のホルダ32は、部品92を保持する保持部材をそれぞれ取り付けられる。本実施形態において、保持部材は、供給される負圧エアにより部品92を吸着することにより保持する吸着ノズル33である。なお、保持部材としては、部品を把持することにより保持するチャックなどが採用され得る。
【0018】
装着ヘッド30は、ロータリヘッド31をR軸周りに回転させるR軸回転装置34を有する。R軸回転装置34は、ロータリヘッド31をR軸周りの所定角度に角度決めすることによって、一のホルダ32を後述する昇降装置36により昇降させる昇降位置に割り出す。装着ヘッド30は、ホルダ32をQ軸周りに回転させるQ軸回転装置35を有する。本実施形態において、Q軸回転装置35は、複数のホルダ32を連動して回転させる機構を有し、複数のホルダ32の回転に共用される。上記の構成によると、一のホルダ32がQ軸周りの所定角度に角度決めされると、他の複数のホルダ32は、連動して所定角度に角度決めされる。
【0019】
装着ヘッド30は、複数のホルダ32のうちロータリヘッド31の回転によって昇降位置に割り出されたホルダ32を昇降させる昇降装置36を有する。昇降装置36は、ホルダ32を下降および上昇させることによって、ホルダ32に取り付けられた吸着ノズル33を下降および上昇させる。なお、装着ヘッド30は、2箇所以上の昇降位置を設け、それぞれに位置決めされたホルダ32を昇降可能とするように独立して駆動可能な複数の昇降装置を有する構成を採用し得る。
【0020】
上記のような構成からなる装着ヘッド30に支持されるホルダ32の数は、装着ヘッド30の種類によって相違し得る。また、装着ヘッド30は、本実施形態のように複数のホルダ32を円環状に等間隔で支持する態様の他に、種々の態様を採用し得る。例えば、装着ヘッド30は、装着ヘッド30は、直線状に、またはマトリックス状に配列された複数のホルダ32を支持する態様を採用してもよい。
【0021】
1-4.部品カメラ14、基板カメラ15
部品装着機10は、部品カメラ14、および基板カメラ15を備える。部品カメラ14、および基板カメラ15は、CMOSなどの撮像素子を有するデジタル式の撮像装置である。部品カメラ14、および基板カメラ15は、制御信号に基づいて撮像を行い、当該撮像により取得した画像データを送出する。部品カメラ14は、吸着ノズル33に保持された部品を下方から撮像可能に構成される。基板カメラ15は、装着ヘッド30と一体的に水平方向に移動可能に移動台132に設けられる。基板カメラ15は、基板91を上方から撮像可能に構成される。
【0022】
また、基板カメラ15は、基板91の表面を撮像対象とする他に、移動台132の可動範囲であれば種々の機器などを撮像対象にできる。例えば、基板カメラ15は、本実施形態において、図4に示すように、バルクフィーダ50が部品92を供給する供給領域Asをカメラ視野Vcに収めて撮像することができる。このように、基板カメラ15は、種々の画像処理に用いられる画像データを取得するために、異なる撮像対象の撮像に兼用され得る。
【0023】
2.制御装置20
部品装着機10は、図1に示すように、制御装置20を備える。制御装置20は、主として、CPUや各種メモリ、制御回路により構成される。制御装置20は、図5に示すように記憶部21を備える。記憶部21は、ハードディスク装置などの光学ドライブ装置、またはフラッシュメモリなどにより構成される。制御装置20の記憶部21には、装着処理の制御に用いられる制御プログラムM1などの各種データが記憶される。制御プログラムM1は、装着処理において基板91に装着される部品92の装着位置、装着角度、および装着順序を示す(図7を参照)。
【0024】
2-1.装着制御部22
制御装置20は、図5に示すように、装着制御部22を備える。装着制御部22は、部品移載装置13などの動作を制御し、基板91に部品92を装着する装着処理を実行する。装着制御部22は、上記の装着処理において、部品供給装置12により供給された部品92を保持部材(吸着ノズル33)により採取する採取動作、および部品92を基板91上の所定の装着位置に所定の装着角度で装着する装着動作を含むPPサイクル(ピックアンドプレースサイクル)を実行する。
【0025】
上記の「採取動作」には、複数の部品92をバルク状態で供給する供給領域Asから部品92を採取する動作が含まれる。本実施形態において、装着制御部22は、上記の採取動作の実行に際して、後述する設定部24により設定された採取対象の部品92を所定の採取順序で採取するように装着ヘッド30の動作を制御する。
【0026】
装着制御部22は、複数の保持部材(吸着ノズル33)のそれぞれに保持された部品92の保持状態の認識処理を実行する。具体的には、装着制御部22は、部品カメラ14の撮像により取得された画像データを画像処理し、装着ヘッド30の基準位置に対する各部品92の位置および角度を認識する。なお、装着制御部22は、部品カメラ14の他に、例えば装着ヘッド30に一体的に設けられるヘッドカメラユニットなどが部品92を側方、下方、または上方から撮像して取得された画像データを画像処理するようにしてもよい。
【0027】
装着制御部22は、PPサイクルの装着動作において、制御プログラムM1に基づいて、装着移動と装着回転とを実行する。上記の「装着移動」とは、現在位置から装着動作の装着位置まで保持部材(吸着ノズル33)が移動するように装着ヘッド30を移動動作である。また、「装着回転」とは、保持部材(吸着ノズル33)が保持する部品92が装着動作の装着角度となるようにホルダ32を回転させる動作である。これにより、複数の吸着ノズル33のそれぞれに保持された部品92の位置および角度が制御される。
【0028】
2-2.状態認識部23
制御装置20は、図5に示すように、状態認識部23を備える。状態認識部23は、バルクフィーダ50の供給領域Asにおける部品92の供給状態の認識処理を実行する。上記の「供給状態の認識処理」には、供給領域Asに採取可能な部品92があるか否かを認識し、ある場合には部品92の位置および角度を認識する処理が含まれる。
【0029】
本実施形態において、状態認識部23は、基板カメラ15の撮像により取得された画像データ60に対して所定の画像加工が実行された加工後の画像データ60を用いて、上記の供給状態の認識処理を実行する。なお、上記の「所定の画像加工」として、部品92の本体部と端子を含む部品領域61の輝度と、背景62との間の輝度との間の値に設定された閾値を用いた二値化処理が適用され得る。
【0030】
上記のような画像加工が実行されると、図6に示すように、部品領域61が白色となり、背景62が黒色となる。なお、図6は、黒色または黒色に近い色彩の領域を便宜的に斜線により示す。画像データ60の背景62となる供給領域Asを構成する軌道部材56の上面は、部品92の何れの部位よりも黒色に近い色彩が施されている。
【0031】
状態認識部23は、例えば画像データ60における白色の領域の面積に基づいて、部品領域61であることを認識する。このとき、状態認識部23は、画像データ60における部品領域61を形成する画素の数量に基づいて部品領域61の面積を算出してもよい。そして、状態認識部23は、認識された部品領域61の形状や角度に基づいて、部品92の位置や角度を認識する。これにより、状態認識部23は、供給領域Asにおける部品92の供給状態を認識する。
【0032】
状態認識部23は、部品領域61の形状を特定する際に、例えば、部品領域61に外接する最小面積の矩形枠の形状に基づいて部品領域61の形状を特定してもよい。状態認識部23は、矩形枠の形状そのものを部品領域61の形状としてもよいし、矩形枠の各辺を内側に所定量だけオフセットさせた形状を部品領域61の形状としてもよい。
【0033】
また、状態認識部23が認識する供給領域Asにおける供給状態には、部品92の厚み方向が上下方向となっているか否かを示す部品姿勢、複数の部品92が所定距離より接近しているか否かを示す分離度、および供給領域Asから採取可能か否かを示す採取可能性の何れか一つが含まれる。供給状態の部品姿勢には、部品92のどの面が軌道部材56に接触しているかによって異なる姿勢の他に、バルクフィーダ50の基準位置に対する位置や角度が含まれてもよい。
【0034】
供給状態の分離度は、その部品92が他の部品92とどの程度分離しているかを示すものであり、他の部品92と接近するほど低下する。分離度は、例えばその部品92から所定距離の範囲に他の部品92が存在しなければ適合とし、所定距離の範囲内に他の部品92の一部でも存在した場合に不適合としてもよい。例えば、2以上の部品92が堆積していたり、水平方向に接触していたりした場合に、分離度が基準値よりも低くなる。
【0035】
供給状態の採取可能性は、供給領域Asにおいて供給されている個々の部品92について、採取動作の対象として適合するか否かを示す。採取可能性は、上記の部品姿勢や分離度に基づいて判定されてもよいし、部品92の種類や、使用する吸着ノズル33の種類、装着処理に要求される精度などに適宜基づいて判定されてもよい。
【0036】
2-3.設定部24
制御装置20は、図5に示すように、設定部24を備える。設定部24は、状態認識部23により認識された供給状態に基づいて、供給領域Asに供給された複数の部品92のうち採取対象とする部品92を設定する。より詳細には、設定部24は、PPサイクルにおいて複数回に亘って同一種類の部品92を採取する採取動作が含まれている場合に、供給領域Asから必要数(1回のPPサイクルで用いられる部品92の数)だけ採取する部品92を設定する。
【0037】
このとき、設定部24は、原則的に複数回に亘って実行される採取動作の全体の所要時間が短くなるように、供給領域Asに適正な姿勢(例えば、部品92の表裏判別が必要な場合に、部品92の表面が上面となった姿勢)で供給された複数の部品92のうち採取対象とする部品92および採取順序を設定する。本実施形態において、設定部24は、状態認識部23により認識された供給状態に加えて、PPサイクルにおいて複数回に亘って実行される装着動作ごとの装着角度に基づいて、採取対象とする部品92および採取順序を設定する。
【0038】
3.設定部24による設定処理および装着処理の詳細
設定部24による採取対象とする部品92および採取順序を設定する設定処理、および設定処理を含む装着処理の詳細について、図7図12を参照して説明する。ここで、複数回の採取動作により採取された部品92は、図7および図8に示すように、装着ヘッド30の移動により所定の装着位置(P11,P12,P13,・・)に移動され、その後にホルダの下降により基板91に装着される。このとき、部品92は、上記のような装着移動に並行して所定の装着角度(θ11,θ12,θ13,・・)となるように装着回転される。
【0039】
そして、1回の装着動作の所要時間(Rm1,Rm2,・・)は、当該装着動作に係る装着移動の所要時間(Tm1,Tm2,・・)と装着回転の所要時間(Tr1,Tr2,・・)の長い方である。つまり、現在位置(例えば、今回の装着位置に応じた位置)から次の装着位置までの距離に応じた第二の装着移動の所要時間(Tm2)に対して、第二の装着回転の所要時間(Tr2)が長い場合には(Tm2<Tr2)、図8に示すように、第二の装着動作の所要時間(Rm2)は、第二の装着回転の所要時間(Tr2)となる(Rm2=Tr2)。このとき、装着動作の実行中において、ホルダ32が装着位置の上方に到着した状態を維持され、且つそのホルダ32のQ軸周りの回転待ちが発生した状態となる。
【0040】
なお、正確には、装着動作において、ホルダ32および吸着ノズル33の昇降動作が含まれ、この昇降動作の一部に並行して装着移動や装着回転が実行され得る。しかしながら、昇降動作は、装着動作の態様ごとの所要時間(Rm1,Rm2,・・)に対する影響の度合いが装着移動や装着回転と比較して小さい。そのため、本実施形態において、便宜的に装着動作の所要時間(Rm1,Rm2,・・)における昇降動作の所要時間を省略して説明する。
【0041】
上記のように、PPサイクルにおいてホルダ32の回転待ちが発生すると、装着動作の所要時間(Rm1,Rm2,・・)が長くなることが懸念される。そこで、本実施形態では、上記のように、複数の部品92がバルク状態で供給された供給領域Asから複数の部品92を採取する際に、採取可能であるか否かに加えて、予め装着動作ごとの装着角度を加味し、採取対象とする部品92および採取順序を設定する構成を採用する。これにより、部品92を装着動作に適した姿勢で採取することが可能となる。結果として、採取動作および装着動作を効率化することでき、PPサイクルの所要時間Rcの短縮を図ることができる。
【0042】
ここで、設定部24によって装着角度に基づく採取対象とする部品92および採取順序が設定された場合に、装着制御部22は、PPサイクルの採取動作において、採取移動と予備回転とを実行する。上記の「採取移動」とは、現在位置(例えば、今回の採取位置に応じた位置)から供給領域Asにおける複数の部品92の一つまで保持部材(吸着ノズル33)が移動するように装着ヘッド30を移動させる動作である。また、上記の「予備回転」とは、当該採取動作で採取された部品92を基板91に装着する装着動作の装着角度に応じてホルダ32を予め回転させる動作である。
【0043】
本実施形態において、予備回転におけるホルダ32の回転量は、設定部24により採取動作ごとに算出される。また、回転量が0の場合には予備回転が不要であることから、上記の回転量は、実質的に予備回転の要否を示す。装着制御部22は、複数回の採取動作を実行する際に、設定部24により設定された採取対象とする部品92および採取順序に従って、さらに指定された回転量だけホルダ32を予備回転させて部品92を順次採取する。
【0044】
ここで、1回の採取動作の所要時間(Rp1,Rp2,・・)は、図9の上段に示すように、当該採取動作に係る採取移動の所要時間(Sm11,Sm12,・・)と予備回転の所要時間(Sr1,Sr2,・・)の長い方である。本実施形態において、設定部24は、予備回転の所要時間(Sr1,Sr2,・・)が採取移動の所要時間(Sm11,Sm12,・・)を以下であることを、採取動作において予備回転を実行する条件の一つにする態様を採用する。この態様によると、採取動作における予備回転の有無に関わらず、採取動作の所要時間(Rp1,Rp2,・・)は、図9の上段に示すように、採取移動の所要時間(Sm11,Sm12,・・)となる(Rp1=Sm11,Rp2=Sm12,・・)。
【0045】
なお、正確には、採取動作において、ホルダ32および吸着ノズル33の昇降動作が含まれ、この昇降動作の一部に並行して採取移動や予備回転が実行され得る。装着動作における昇降動作と同様の理由により、本実施形態において、便宜的に採取動作の所要時間Rm1における昇降動作の所要時間を省略して説明する。
【0046】
そして、PPサイクルの所要時間Rcは、当該PPサイクルに含まれる全ての採取動作および装着動作の所要時間の合計である(Rc=Rp+Rm)。採取動作の所要時間(Rp)は、1回のPPサイクルにおける全ての採取動作の所要時間の合計である(Rp=Rp1+Rp2+Rp3+・・)。同様に、装着動作の所要時間(Rm)は、1回のPPサイクルにおける全ての装着動作の合計である(Rm=Rm1+Rm2+Rm3+・・)。
【0047】
また、装着制御部22は、予備回転を含む採取動作を実行する際に、指定された回転量だけホルダ32を回転させる。これにより、通常であれば、ホルダ32または吸着ノズル33のQ軸周りの基準角度に対して部品92が所定角度(例えば、0度)となるように採取を試行されるところ、上記の基準角度に対して予備回転の回転量、および部品92の姿勢(供給角度)に応じた角度で部品92が採取される。
【0048】
具体的には、例えば装着角度が90度であり、部品92の供給角度が20度であれば、設定部24により予備回転の回転量が70度と設定される。これにより、装着制御部22は、ホルダ32を70度だけ予備回転させた状態で、20度傾いた姿勢の部品92を採取する。結果として、ホルダ32または吸着ノズル33の基準角度に対して、部品92がQ軸周りに90度回転した状態で採取される。
【0049】
そして、装着制御部22は、装着動作を実行する際に、先に実行された予備回転におけるホルダ32の回転量に応じて、装着回転を省略または装着回転におけるホルダ32の回転量を低減させる。つまり、上記の例であれば、装着動作において装着移動に並行して90度の装着回転を実行するところ、採取動作において既に部品92が基準角度に対して回転した状態にあるので、装着回転を省略することができる。正確には、装着制御部22は、吸着ノズル33による部品92の保持状態の認識処理の結果に基づく補正量の程度だけ装着回転を実行し得る。
【0050】
これにより、例えば通常であれば回転待ちが発生する装着動作において、装着回転の所要時間を0または低減できるので、結果として装着動作の所要時間の短縮を図ることができる。但し、回転待ちの発生を抑制することを優先すると、装着動作の装着角度に適した姿勢の部品92を採取するために、例えば採取移動の距離が長くなる部品92を採取対象とすることになる。そうすると、採取移動の所要時間が長くなり、却ってPPサイクルの所要時間(Rc)が長くなるおそれがある。
【0051】
そこで、本実施形態において、設定部24は、PPサイクルの所要時間(Rc)に基づいて、複数回に亘って実行される採取動作ごとに予備回転を実行するか否かを設定する。具体的には、設定部24は、供給領域Asに供給された複数の部品92のうち採取対象とする部品92および採取順序を設定する際に、先ず、部品92を採取する経路の候補を探索する。そして、設定部24は、種々の条件に基づいて候補を評価し、適切な候補を選択する。
【0052】
なお、経路の候補を探索する場合に、設定部24は、供給状態の認識処理の結果に含まれる採取可能な複数の部品92から必要数(例えば、吸着ノズル33の数=12)を抽出する公知の手法を適用することができる。例えば、設定部24は、巡回セールスマン問題(TSP:traveling salesman problem)の解法として知られている分枝限定法や切除平面法を適宜適用することができる。
【0053】
ここで、図10に示すように、設定部24による探索処理によって、2種類の経路を示す第一候補Nr1と、第二候補Nr2が検出されたものとする。第一候補Nr1は、複数の部品92の供給位置を実線矢印に沿った順で移動する経路である(C11→C12→C14→C16→C17→C18→C19→・・)。第二候補Nr2は、複数の部品92の供給位置を破線矢印に沿った順で移動する経路である(C11→C13→C15→C16→C17→C18→C20→・・)。
【0054】
なお、上記の順序で採取された複数の部品92は、図7および図8に示す複数の装着位置(P11,P12,P13,・・)に装着されるものとする。ここでは、図11に示すように、それぞれの候補の2番目の部品92の採取動作および装着動作に着目して説明する。つまり、第一候補Nr1は、供給位置C12への採取動作であり、第二候補Nr2は、供給位置C13への採取動作である。装着位置P12への装着動作は共通するが、装着回転の回転量は両者で相違する。
【0055】
第一候補Nr1は、2番目の供給位置C12の部品92を予備回転せずに採取するように設定する。これにより、第一候補Nr1は、採取移動の移動距離および所要時間(Sm12)を短くすることを優先する。一方で、第一候補Nr1を適用した場合の装着動作においては、装着移動の所要時間(Tm2)よりも装着回転の所要時間(Tr2)が長くなり、回転待ちが発生する。結果として、2番目の部品92に係る採取動作および装着動作の所要時間は、採取移動の所要時間(Tm2)と装着回転の所要時間(Tr2)との和となる。
【0056】
第二候補Nr2は、2番目の供給位置C13の部品92を予備回転して採取するように設定する。これにより、第二候補Nr2は、ホルダ32を予め回転させた状態で部品92を採取することを優先する。そのため、第二候補Nr2は、第一候補Nr1よりも採取動作の所要時間(Rp2)が長い。一方で、第二候補Nr2を適用した場合の装着動作においては、装着移動の所要時間(Tm2)が装着回転の所要時間(Tr2=0)より短くなり、回転待ちが発生しない。結果として、第二候補Nr2は、第一候補Nr1よりも装着動作の所要時間(Rm2)が短い。
【0057】
上記の例によれば、2番目の部品92に係る採取動作および装着動作の所要時間は、第一候補Nr1(Sm12+Tr2)よりも第二候補Nr2(Sm22+Tm2)の方が差分D2だけ短くなる。但し、第二候補Nr2で設定された2番目の供給位置C13の部品が、他の部品92の供給位置C11,C15から遠くなるほど、今回および次回の採取移動の距離が長くなるため、反対に予備回転せずに供給位置C12の部品92を採取した方が所要時間を短くすることができる場合もある。
【0058】
さらに、ここでは説明を簡易にするために2番目の部品92の採取動作および装着動作に着目したが、2番目の部品92の位置によって3番目以降の部品92の位置が変動し得る。そうすると、例えば採取可能な部品92や装着角度に適した部品92が所定範囲に固まっていることがあり、その場合には上記の所定範囲に含まれる部品92を優先的に採取対象に設定した方が効率的であることも想定される。
【0059】
そこで、設定部24は、経路候補の探索処理を実行し、検出された複数の候補についてPPサイクルの所要時間(Rc)を算出し、所要時間(Rc)の短いものを適用することが望ましい。しかしながら、装着処理の実行中においては、上記のような経路候補の探索処理を限られた時間内で実行する必要がある。そのため、設定部24は、本実施形態において、予め設定された条件に基づいて経路候補の優先度を調整する。
【0060】
具体的には、設定部24は、供給領域Asに供給された複数の部品92のうち採取対象とする部品92および採取順序を設定する際に、部品92を採取する経路の候補Nrが複数ある場合に、経路が直線的なものほど採用の優先度を高くしてもよい。このとき、設定部24は、さらに装着ヘッド30をX方向またはY方向の座標値が単調増加または単調減少する経路候補の優先度を高くしてもよい。これにより、バックラッシなどの機械的な動作誤差の影響を低減できる。
【0061】
ところで、供給領域Asには、1回のPPサイクルにおける必要数を超えて、採取可能な部品92が供給され得る。これは、必要数、部品92の寸法、供給領域Asの面積などによって変動し得る。例えば、バルクフィーダ50による部品92の供給処理が実行された直後において、供給領域Asに4回分のPPサイクルの必要数の部品92が採取可能に供給されることがある。上記のような態様を想定して、供給領域Asは、図12に示すように、仮想的に複数の区画S1-S4に分割されるようにしてもよい。
【0062】
そして、状態認識部23は、供給領域Asにおける複数の区画S1-S4ごとに供給状態を認識する処理を実行する。同様に、設定部24は、供給領域Asにおける複数の区画S1-S4のうち供給状態が認識された区画を対象に、当該区画に供給された複数の部品92のうち採取対象とする部品92および採取順序を設定する。さらに、設定部24は、実行されているPPサイクルに並行して複数の区画のうち残りを対象として、次回以降のPPサイクルで用いられる部品92の採取順序を設定する。
【0063】
つまり、設定部24は、供給領域Asの全域に亘って多 くの経路候補を検出すべく探索処理を実行するのではなく、供給領域Asの一部(一の区画)に限って経路候補の探索処理を実行する。そして、設定部24は、一の区画について、今回のPPサイクルに適した経路候補を設定する。これにより、採取対象とする部品92および採取順序、加えて予備回転の回転量が設定される。装着制御部22は、部品92の採取順序などの設定が終了した後に、今回のPPサイクルを実行する。
【0064】
設定部24は、一の区画についての経路候補を設定した後に、今回のPPサイクルに並行して、残りの区画のうち少なくとも1つについて経路候補の探索処理を実行し、次回のPPサイクルに適した経路候補を設定する。これにより、経路候補の探索処理や、経路候補ごとの優先度を設定する評価処理の負荷を分散することができる。
【0065】
なお、装着制御部22は、予備回転を実行しない場合に、採取動作において、ホルダ32または吸着ノズル33の基準角度と部品92の供給角度を一致させる採取回転を実行し得る。例えば、装着角度が90度であり、部品92の供給角度が20度であれば、装着制御部22は、基準角度に対して部品92が0度で採取されるように、ホルダ32を-20度だけ回転させた状態で部品92を採取するように採取回転を実行する。
【0066】
装着制御部22は、上記の装着動作における採取回転を実行するか否かを切り換えたり、常に不実行としたりしてもよい。そして、設定部24は、予備回転を実行しない場合に採取回転が実行される制御態様において、採取移動の所要時間、予備回転の所要時間、および採取回転の所要時間に基づいて、予備回転を実行するか否かを設定してもよい。
【0067】
4.部品装着機10による装着処理
部品装着機10による装着処理について図13を参照して説明する。先ず、基板搬送装置11は、図13に示すように、基板91の搬入処理を実行する(S11)。これにより、機内に基板91が搬入されるとともに、機内の所定位置に位置決めされる。次に、制御装置20は、供給領域Asにおける部品92が不足しているなど部品供給が必要な場合に(S12:Yes)、バルクフィーダ50に対して部品92の供給処理を実行するように指令する。
【0068】
バルクフィーダ50は、制御装置20からの指令に応じて供給処理を実行する(S13)。これにより、供給領域Asに複数の部品92が供給される。また、供給処理が実行されたことをもって、先に実行された状態認識部23による供給状態の認識処理の結果が破棄される。続いて、状態認識部23が複数の区画S1-S4のうち一の区画について供給状態の認識処理を実行する(S14)。
【0069】
設定部24は、一の区画に供給された複数の部品92のうち採取対象とする部品92および採取順序を設定する(S15)。その後に、または、S12において例えば供給領域Asに次回のPPサイクルにおける部品92の必要数を採取可能であるとして供給処理が不要と判定された場合に(S12:No)、装着制御部22は、PPサイクルを実行する。
【0070】
装着制御部22は、設定部24により設定された採取対象とする部品92および採取順序に従って、PPサイクルにおける採取動作を複数回に亘り繰り返し実行する(S21)。このとき、装着制御部22は、採取動作において、設定された回転量に応じて必要な予備回転を実行する。続いて、状態認識部23は、複数の吸着ノズル33にそれぞれ保持された部品の保持状態の認識処理を実行する(S22)。
【0071】
装着制御部22は、認識処理(S22)の結果に基づいて、装着動作を複数回に亘り繰り返し実行する(S23)。装着動作において、装着制御部22は、制御プログラムM1により指定された所定の装着位置に、所定の装着角度で部品92が装着されるように、装着移動および装着回転を実行する。このとき、S21において予備回転が実行されている場合には、対応する装着動作における装着回転の回転量が0または低減される。
【0072】
設定部24は、上記のようなPPサイクル(S21-S23)に並行して、採取対象とする部品92および採取順序を設定する設定処理を適宜実行する。具体的には、複数の区画S1-S4のうち設定処理が実行されていない区画がある場合に(S31:Yes)、先ず状態認識部23が残りの区画のうち少なくとも1つについて供給状態の認識処理を実行する(S32)。そして、設定部24は、供給状態を認識された区画について、経路候補の探索処理を実行し、次回のPPサイクルに適した経路候補を設定する(S33)。
【0073】
装着制御部22は、制御プログラムM1に基づいて、全てのPPサイクルが終了したか否かを判定する(S16)。全てのPPサイクルが終了していない場合には(S16:No)、装着制御部22は、部品92の供給処理の要否判定(S12)からPPサイクル(S21-S23)を繰り返し実行する。全てのPPサイクルが終了した場合に(S16:Yes)、制御装置20は、基板91の搬出処理を実行する(S17)。基板91の搬出処理において、基板搬送装置11は、位置決めされていた基板91をアンクランプするとともに、部品装着機10の機外に基板91を搬出する。
【0074】
5.実施形態の変形態様
5-1.装着ヘッド30について
実施形態において、装着ヘッド30は、複数のホルダ32を連動して回転させるQ軸回転装置35を有する構成とした。これに対して、装着ヘッド30は、互いに独立して複数のホルダ32のそれぞれをQ軸周りに回転させる複数の回転装置を有する構成としてもよい。但し、装着ヘッド30の小型化やコスト低減の観点からは、実施形態にて例示した態様が好適である。
【0075】
5-2.設定処理について
実施形態において、設定部24による採取対象とする部品92および採取順序を設定する設定処理において、PPサイクルの所要時間(Rc)に基づいて、適用する経路候補を設定する構成とした。このPPサイクルの所要時間(Rc)を短縮する手法としては、機械構成や基板製品の種別などによって、適用する経路候補の優先度を調整することが有用である。
【0076】
例えば、部品装着機10が複数の装着ヘッド30を備え、交互に同一の基板91に対して装着動作を実行する機械構成においては、複数の装着ヘッド30の互いの可動範囲が重複するため、PPサイクルにおける装着動作の所要時間の短縮が優先される。このような場合には、PPサイクルにおける採取動作の所要時間がある程度長くなるとしても、予備回転を実行し、後の装着動作の所要時間が短縮されることが有用である。
【0077】
また、基板製品の種別によっては、多用される部品92の種類が異なり、また要求される装着精度も異なる。これにより、例えば採取動作や装着動作の成功率や、エラーに対するリカバリ処理の実行頻度が変動し得る。このような場合に、PPサイクルの所要時間が最短となる理想的な経路よりも、ある程度の冗長性を有する経路(例えば、リカバリ処理の割り込みに適する経路)の方が実際には有用となることが想定される。
【0078】
上記のような事情を勘案して、設定部24は、予め供給領域Asの区分を含めて、複数の経路候補に対する評価パラメータの設定を受け付ける。そして、複数の経路候補が検出された場合に、設定部24は、設定された評価パラメータに基づいて複数の経路候補ごとの優先度を算出し、優先度の高い経路候補をPPサイクルに適するものとする。
【0079】
5-3.カメラについて
実施形態において、バルクフィーダ50の供給領域Asを撮像するカメラは、基板カメラ15である構成とした。これに対して、部品装着機10は、バルクフィーダ50の上方に設けられ、供給領域Asを撮像可能なカメラを備えてもよい。当該カメラは、供給領域Asの撮像に専用であっても、別の用途にも使用される兼用であってもよい。
【0080】
このような構成によると、カメラが固定式となり、任意のタイミングで供給領域Asを撮像できるので、装着ヘッド30の位置に関わらず、供給状態の認識処理や設定部24による設定処理を実行することができる。但し、設備コスト低減の観点からは、実施形態にて例示した態様が好適である。
【符号の説明】
【0081】
10:部品装着機、 12:部品供給装置、 15:基板カメラ、 20:制御装置、 21:記憶部、 22:装着制御部、 23:状態認識部、 24:設定部、 30:装着ヘッド、 31:ロータリヘッド、 32:ホルダ、 33:吸着ノズル(保持部材)、 34:R軸回転装置、 35:Q軸回転装置、 36:昇降装置、 50:バルクフィーダ、 91:基板、 92:部品、 As:供給領域、 S1-S4:区画
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13