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特許7312915ネオジム鉄ホウ素永久磁石材料、製造方法、並びに応用
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  • 特許-ネオジム鉄ホウ素永久磁石材料、製造方法、並びに応用 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-12
(45)【発行日】2023-07-21
(54)【発明の名称】ネオジム鉄ホウ素永久磁石材料、製造方法、並びに応用
(51)【国際特許分類】
   H01F 1/057 20060101AFI20230713BHJP
   H01F 41/02 20060101ALI20230713BHJP
   C22C 38/00 20060101ALI20230713BHJP
   B22F 1/00 20220101ALI20230713BHJP
   B22F 3/00 20210101ALI20230713BHJP
   C22C 33/02 20060101ALI20230713BHJP
   B22F 1/05 20220101ALI20230713BHJP
   B22F 3/24 20060101ALI20230713BHJP
   B22F 9/04 20060101ALI20230713BHJP
【FI】
H01F1/057 170
H01F41/02 G
C22C38/00 303D
B22F1/00 Y
B22F3/00 F
C22C33/02 J
B22F1/05
B22F3/24 B
B22F9/04 C
B22F9/04 E
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2022539200
(86)(22)【出願日】2020-07-07
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-02-07
(86)【国際出願番号】 CN2020100578
(87)【国際公開番号】W WO2021135144
(87)【国際公開日】2021-07-08
【審査請求日】2022-07-07
(31)【優先権主張番号】201911425194.9
(32)【優先日】2019-12-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】521397223
【氏名又は名称】フージャン チャンティン ゴールデン ドラゴン レア-アース カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100199819
【弁理士】
【氏名又は名称】大行 尚哉
(74)【代理人】
【識別番号】100087859
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 秀治
(72)【発明者】
【氏名】牟維国
(72)【発明者】
【氏名】謝志興
(72)【発明者】
【氏名】黄佳瑩
(72)【発明者】
【氏名】黄清芳
【審査官】井上 健一
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-260338(JP,A)
【文献】特開2017-073465(JP,A)
【文献】特表2019-511133(JP,A)
【文献】再公表特許第2016/208508(JP,A1)
【文献】中国特許出願公開第111081444(CN,A)
【文献】特開2017-226910(JP,A)
【文献】特開2011-258935(JP,A)
【文献】特開2004-330279(JP,A)
【文献】特開2008-264875(JP,A)
【文献】特開2017-183336(JP,A)
【文献】特表2017-531912(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0248954(US,A1)
【文献】国際公開第2019/242581(WO,A1)
【文献】中国特許出願公開第110473682(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第110444360(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01F 1/057
H01F 41/02
C22C 38/00
B22F 1/00
B22F 3/00
C22C 33/02
B22F 1/05
B22F 3/24
B22F 9/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ネオジム鉄ホウ素永久磁石材料であって、前記ネオジム鉄ホウ素永久磁石材料には、R、Al、Cu及びCoが含まれ、
前記Rは、RL及びRHを含み、
前記RLは、Nd、La、Ce、Pr、Pm、Sm及びEuのうちの1種または複数種の軽希土類元素を含み、
前記RHは、Tb、Gd、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu及びScのうちの1種または複数種の重希土類元素を含み、
前記ネオジム鉄ホウ素永久磁石材料にはB/Rの重量比は、0.033~0.037であり、Al/RHの重量比は、0.12~2.7であり、
前記ネオジム鉄ホウ素永久磁石材料は、Mがさらに含まれ、前記Mは、Nb、Zr及びTiのうちの1種又は複数種を含み、前記Nbの含有量は、0~0.5wt.%の範囲であり、前記Zrの含有量は、0~0.3wt.%の範囲であり、前記Tiの含有量は、0~0.3wt.%の範囲であり、wt.%とは、前記ネオジム鉄ホウ素永久磁石材料における質量百分率を意味し、
前記ネオジム鉄ホウ素永久磁石材料には、NdFeB主相及び結晶粒間希土類リッチ相が含まれ、前記結晶粒間希土類リッチ相は、RH -Al -RL -Cu -Co 物相を含み、xは0.4~5.0であり、yは0.5~1.1であり、zは45~92であり、mは0.5~3.5であり、nは1.5~7であり、
前記結晶粒間希土類リッチ相に対する前記RH -Al -RL -Cu -Co 物相の体積比は、4~10%である、
ことを特徴とするネオジム鉄ホウ素永久磁石材料。
【請求項2】
RH/Rの重量比は、0~0.11であり、ただし、0ではなく、
および/または、前記B/Rの重量比は、0.034~0.036または0.033~0.034であり、
および/または、前記Al/RHの重量比は、0.35~1.25または0.12~2であり、
および/または、前記RLは、Nd、PrおよびCeのうちの1種または複数種を含み、
および/または、前記RHは、Dyおよび/またはTbを含むことを特徴とする請求項1に記載のネオジム鉄ホウ素永久磁石材料。
【請求項3】
前記結晶粒間希土類リッチ相に対する前記RH-Al-RL-Cu-Co物相の体積比は、4.5~6%である、ことを特徴とする請求項に記載のネオジム鉄ホウ素永久磁石材料。
【請求項4】
前記結晶粒間希土類リッチ相に対する前記RH -Al -RL -Cu -Co 物相の体積比は、5.8%、5.6%、4.5%、5.4%、5.5%または5.6%であることを特徴とする請求項3に記載のネオジム鉄ホウ素永久磁石材料。
【請求項5】
前記ネオジム鉄ホウ素永久磁石材料は、質量百分率で下記の成分を含み、R:28~33wt.%、RH:0.5~2.5wt.%、Cu:0.35~0.55wt.%、Al:0.44~0.95wt.%、Co:0.85~1.5wt.%、B:0.955~1.05wt.%、Fe:66~69wt.%であり、前記Rには、RL及びRHが含まれ、wt.%とは、前記ネオジム鉄ホウ素永久磁石材料における質量百分率を意味する、ことを特徴とする請求項に記載のネオジム鉄ホウ素永久磁石材料。
【請求項6】
前記Rの含有量は、28~31wt.%の範囲であり、
および/または、前記RHの含有量は、0.5~1.5wt.%の範囲であり、
および/または、前記Cuの含有量は、0.35~0.5wt.%の範囲であり、
および/または、前記Alの含有量は、0.44~0.85wt.%の範囲であり、
および/または、前記Coの含有量は、0.85~1.3wt.%の範囲であり、
および/または、前記Bの含有量は、0.955~1.03wt.%の範囲であり、
および/または、前記Mの含有量は、0.1~0.4wt.%の範囲であり、
前記MがNbを含む場合、前記Nbの含有量は、0.2wt.%、0.21wt.%、0.23または0.25wt.%であり、
前記MがZrを含む場合、前記Zrの含有量は、0.2wt.%であり、
前記MがTiを含む場合、前記Tiの含有量は、0.21wt.%である、ことを特徴とする請求項5に記載のネオジム鉄ホウ素永久磁石材料。
【請求項7】
前記Rの含有量は、29~33wt.%の範囲であり、
および/または、前記RHの含有量は、0.9~2.5wt.%の範囲であり、
および/または、前記Cuの含有量は、0.4~0.55wt.%の範囲であり、
および/または、前記Alの含有量は、0.5~0.95wt.%の範囲であり、
および/または、前記Coの含有量は、0.95~1.5wt.%の範囲であり、
および/または、前記Bの含有量は、1~1.05wt.%の範囲である、ことを特徴とする請求項5に記載のネオジム鉄ホウ素永久磁石材料。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか1項に記載のネオジム鉄ホウ素永久磁石材料の製造方法であって、前記ネオジム鉄ホウ素永久磁石材料の製造方法は下記のステップを含み、前記ネオジム鉄ホウ素永久磁石材料の原料組成物の溶融液を鋳造、粗破砕破、粉砕、成形、焼結
前記ネオジム鉄ホウ素永久磁石材料の原料組成物には、R、Al、Cu及びCoが含まれ、
前記ネオジム鉄ホウ素永久磁石材料の原料組成物におけるRは、前記RL及び前記RHを含み、
前記ネオジム鉄ホウ素永久磁石材料の原料組成物にはB/Rの重量比は、0.033~0.037であり、Al/RHの重量比は、0.12~2.7である、
ことを特徴とするネオジム鉄ホウ素永久磁石材料の製造方法。
【請求項9】
前記ネオジム鉄ホウ素永久磁石材料の原料組成物は、質量百分率で下記の成分を含み、R:28~33wt.%、RH:0.5~2.5wt.%、Cu:0.35~0.55wt.%、Al:0.44~0.95wt.%、Co:0.85~1.5wt.%、B:0.955~1.05wt.%、残部がFe及び不可避的不純物であり、前記Rは、RL及びRHを含み、wt.%とは、前記ネオジム鉄ホウ素永久磁石材料の原料組成物における質量百分率を意味し、
及び/又は、前記鋳造工程は、流し込みを含み、前記流し込みの温度は1420~1460°Cであり、
及び/又は、前記鋳造を経た後に合金シートを得、前記合金シートの厚さは0.28~0.32mmであり、
及び/又は、前記粉砕を経た後の粉体の粒度は4.1~4.4μmであり、
及び/又は、前記焼結の温度は、1000~1100℃であり、
及び/又は、前記焼結の後に時効処理をさらに含む、ことを特徴とする請求項に記載のネオジム鉄ホウ素永久磁石材料の製造方法。
【請求項10】
前記時効処理の温度は、490~530℃であり、前記時効処理の時間は、2.5~4hである、ことを特徴とする請求項9に記載のネオジム鉄ホウ素永久磁石材料の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、具体的に、ネオジム鉄ホウ素永久磁石材料、製造方法、並びに応用に関する。
【背景技術】
【0002】
永久磁石材料は、電子部品をサポートするための重要な材料として開発され、開発の方向は、高磁気エネルギー積と高保磁力の方向に向かう。R-T-B系永久磁石材料(Rは希土類元素のうちの少なくとも1種であり、Nd及びPrのうちの少なくとも1つを含まなければならない)は、永久磁石の中で最高性能の磁石として知られ、ハードディスクドライブのボイスコイルモーター(VCM)、電気自動車用(EV、HV、PHVなど)モーター、産業機器用モーターなどのさまざまなモーター及び家電製品に使用される。
【0003】
現在、R-T-B系永久磁石材料を製造する過程において、永久磁石材料の保磁力を向上させるために、R-T-B系永久磁石材料にCu元素を添加することによってその保磁力を効果的に向上させることができるが、Cuの添加量が0.35wt.%以上であると、Cuが粒界に豊富に集まることに起因して磁石の焼結後に微小クラックが形成され、磁石の緻密性及び強度を低下させ、かつ磁石の保磁力を劣化させ、それによって、R-T-B系永久磁石材料における高Cu成分の使用可能性を制限してしまう。したがって、高Cu含有量により磁石強度及び保磁力が低下してしまうという技術的問題を解消するために、ネオジム鉄ホウ素永久磁石材料の成分システムを緊急に必要としている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明が解決しようとする課題は、従来のネオジム鉄ホウ素永久磁石材料における高Cu含有量によって引き起こされた保磁力及び磁石強度が低下してしまうという欠点を解決し、ネオジム鉄ホウ素永久磁石材料、製造方法、並びに応用を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、以下の技術考案を通じて上記の技術的問題を解決する。
【0006】
本発明には、ネオジム鉄ホウ素永久磁石材料が提供され、前記ネオジム鉄ホウ素永久磁石材料には、R、Al、Cu及びCoが含まれ、前記Rは、RL及びRHを含み、
前記RLは、Nd、La、Ce、Pr、Pm、Sm及びEuのうちの1種または複数種の軽希土類元素を含み、
前記RHは、Tb、Gd、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu及びScのうちの1種または複数種の重希土類元素を含み、
前記ネオジム鉄ホウ素永久磁石材料は、以下の条件式を満足する。
(1)B/R:0.033~0.037
(2)Al/RH:0.12~2.7
【0007】
本発明において、ここで、好ましくは、RH/R:0~0.11、ただし、0ではない。
【0008】
本発明において、好ましくは、前記B/Rの重量比は、0.034~0.036または0.033~0.034であり、例えば、0.0331、0.033、0.0339、0.0332、0.033または0.036である。
【0009】
本発明において、好ましくは、前記Al/RHの重量比は、0.35~1.25または0.12~2であり、例えば、0.489、1.9、1、0.133、1.06または0.78である。
【0010】
本発明において、前記RLとは、一般的に、低い原子番号及び小さい質量を有する希土類元素を意味し、軽希土類元素ともいう。
【0011】
本発明において、好ましくは、前記RLは、Nd、PrおよびCeのうちの1種または複数種を含む。
【0012】
本発明において、前記RHとは、一般的に、高い原子番号及び大きな質量を有する希土類元素を意味し、重希土類元素ともいう。
【0013】
本発明において、好ましくは、前記RHは、Dyおよび/またはTbを含む。
【0014】
本発明において、好ましくは、前記ネオジム鉄ホウ素永久磁石材料には、NdFeB主相及び結晶粒間希土類リッチ相が含まれ、前記結晶粒間希土類リッチ相は、RH-Al-RL-Cu-Co物相を含み、xは0.4~5.0であり、yは0.5~1.1であり、zは45~92であり、mは0.5~3.5であり、nは1.5~7であり、例えば、Tb3.7-Al0.51-Nd89.5-Cu1.2-Co4.6、Tb2.4-Al1.04-Nd90.2-Cu1.5-Co5.6、Tb0.4Dy2.5-Al0.59-Nd89.6-Cu1.4-Co5.1、Tb4.5-Al0.68-Nd90.4-Cu1.3-Co5.2、Tb3.1-Al0.98-Nd67.3Pr22.7-Cu1.3-Co5.1またはTb3.8-Al0.77-Nd89.2-Cu1.2-Co5.0である。ここで、前記結晶粒間希土類リッチ相は、粒界相ともいう。
【0015】
ここで、好ましくは、前記結晶粒間希土類リッチ相に対する前記RH-Al-RL-Cu-Co物相の体積比は、4~10%であり、より好ましくは4.5~6%であり、例えば、5.8%、5.6%、4.5%、5.4%、5.5%または5.6%である。
【0016】
本発明には、ネオジム鉄ホウ素永久磁石材料がさらに提供され、前記前記ネオジム鉄ホウ素永久磁石材料には、NdFeB主相及び結晶粒間希土類リッチ相が含まれ、前記結晶粒間希土類リッチ相は、RH-Al-RL-Cu-Co物相を含み、xは0.4~5.0であり、yは0.5~1.1であり、zは45~92であり、mは0.5~3.5であり、nは1.5~7であり、前記RL及び前記RHの種類は、前述したものである。
【0017】
ここで、前記RH-Al-RL-Cu-Co物相はTb3.7-Al0.51-Nd89.5-Cu1.2-Co4.6、Tb2.4-Al1.04-Nd90.2-Cu1.5-Co5.6、Tb0.4Dy2.5-Al0.59-Nd89.6-Cu1.4-Co5.1、Tb4.5-Al0.68-Nd90.4-Cu1.3-Co5.2、Tb3.1-Al0.98-Nd67.3Pr22.7-Cu1.3-Co5.1またはTb3.8-Al0.77-Nd89.2-Cu1.2-Co5.0であってもよい。
【0018】
ここで、好ましくは、前記結晶粒間希土類リッチ相に対する前記RH-Al-RL-Cu-Co物相の体積比は、4~10%であり、より好ましくは4.5~6%であり、例えば、5.8%、5.6%、4.5%、5.4%、5.5%または5.6%である。
【0019】
本発明において、前記ネオジム鉄ホウ素永久磁石材料における成分及び含有量を本分野の通常のものとすることができる。好ましくは、前記ネオジム鉄ホウ素永久磁石材料は、質量百分率で下記の成分を含み、R:28~33wt.%、RH:0.5~2.5wt.%、Cu:0.35~0.55wt.%、Al:0.44~0.95wt.%、Co:0.85~1.5wt.%、B:0.955~1.05wt.%、Fe:66~69wt.%であり、前記Rには、RL及びRHが含まれ、前記RL及び前記RHの種類は、前述のとおりであり、wt.%とは、前記ネオジム鉄ホウ素永久磁石材料における質量百分率を意味する。
【0020】
ここで、前記Rの含有量は、28~31wt.%または29~33wt.%の範囲であることが好ましく、例えば、29wt.%、31.8wt.%、29.5wt.%、31wt.%、31.5wt.%または29.2wt.%であり、wt.%とは、前記ネオジム鉄ホウ素永久磁石材料における質量百分率を意味する。
【0021】
ここで、前記RHの含有量は、0.5~1.5wt.%または0.9~2.5wt.%の範囲であることが好ましく、例えば、0.9wt.%、0.5wt.%、1.5wt.%または0.8wt.%であり、wt.%とは、前記ネオジム鉄ホウ素永久磁石材料における質量百分率を意味する。
【0022】
ここで、前記Cuの含有量は、0.35~0.5wt.%または0.4~0.55wt.%の範囲であることが好ましく、例えば、0.35wt.%、0.55wt.%、0.4wt.%、0.45wt.%、0.5wt.%または0.42wt.%であり、wt.%とは、前記ネオジム鉄ホウ素永久磁石材料における質量百分率を意味する。
【0023】
ここで、前記Alの含有量は、0.44~0.85wt.%または0.5~0.95wt.%の範囲であることが好ましく、例えば、0.44wt.%、0.95wt.%、0.5wt.%、0.85wt.%または0.7wt.%であり、wt.%とは、前記ネオジム鉄ホウ素永久磁石材料における質量百分率を意味する。
【0024】
ここで、前記Coの含有量は、0.85~1.3wt.%または0.95~1.5wt.%の範囲であることが好ましく、例えば、0.85wt.%、1.5wt.%、0.9wt.%、0.95wt.%、1.2wt.%または1.3wt.%であり、wt.%とは、前記ネオジム鉄ホウ素永久磁石材料における質量百分率を意味する。
【0025】
ここで、前記Bの含有量は、0.955~1.03wt.%または1~1.05wt.%の範囲であることが好ましく、例えば、0.96wt.%、1.05wt.%、1wt.%、1.03wt.%または1.04wt.%であり、wt.%とは、前記ネオジム鉄ホウ素永久磁石材料における質量百分率を意味する。
【0026】
本発明において前記ネオジム鉄ホウ素永久磁石材料は、Mがさらに含まれ、前記Mは、Nb、Zr、Ti及びHfのうちの1種又は複数種を含む。
【0027】
前記Mの含有量は、0.1~0.4wt.%の範囲であってもよく、好ましくは、0.15~0.25wt.%であり、wt.%とは、前記ネオジム鉄ホウ素永久磁石材料における質量百分率を意味する。
【0028】
前記MがNbを含む場合、前記Nbの含有量は、0~0.5wt.%の範囲であることが好ましく、例えば、0.2wt.%、0.21wt.%、0.23または0.25wt.%であり、wt.%とは、前記ネオジム鉄ホウ素永久磁石材料における質量百分率を意味する。
【0029】
前記MがZrを含む場合、前記Zrの含有量は、0~0.3wt.%の範囲であることが好ましく、例えば、0.2wt.%であり、wt.%とは、前記ネオジム鉄ホウ素永久磁石材料における質量百分率を意味する。
【0030】
前記MがTiを含む場合、前記Tiの含有量は、0~0.3wt.%の範囲であることが好ましく、例えば、0.21wt.%であり、wt.%とは、前記ネオジム鉄ホウ素永久磁石材料における質量百分率を意味する。
【0031】
ここで、好ましくは、RH/Rは、0~0.11であるが、0ではない。
【0032】
本発明の一つの好ましい態様において、前記ネオジム鉄ホウ素永久磁石材料は、質量百分率で下記の成分を含み、R:28~31wt.%、RH:0.5~1.5wt.%、Cu:0.35~0.5wt.%、Al:0.44~0.85wt.%、Co:0.85~1.3wt.%、B:0.955~1.03wt.%であり、wt.%とは、前記ネオジム鉄ホウ素永久磁石材料における質量百分率を意味し、残部がFe及び不可避的不純物である。
【0033】
本発明の一つの好ましい態様において、前記ネオジム鉄ホウ素永久磁石材料は、質量百分率で下記の成分を含み、R:29~33wt.%、RH:0.9~2.5wt.%、Cu:0.4~0.55wt.%、Al:0.5~0.95wt.%、Co:0.95~1.5wt.%、B:1~1.05wt.%であり、wt.%とは、前記ネオジム鉄ホウ素永久磁石材料における質量百分率を意味し、残部がFe及び不可避的不純物である。
【0034】
本発明の一つの好ましい態様において、前記ネオジム鉄ホウ素永久磁石材料は、質量百分率で下記の成分を含み、R:28~31wt.%、RH:0.5~1.5wt.%、Cu:0.4~0.55wt.%、Al0.5~0.95wt.%、Co:0.95~1.5wt.%、B:1~1.05wt.%、Nb:0~0.5wt.%、Zr:0~0.3wt.%、Ti:0~0.3wt.%であり、wt.%とは、前記ネオジム鉄ホウ素永久磁石材料における質量百分率を意味し、残部がFe及び不可避的不純物である。
【0035】
本発明の一つの好ましい態様において、前記ネオジム鉄ホウ素永久磁石材料は、質量百分率で下記の成分を含み、Nd:28.1wt.%、Tb:0.9wt.%、Cu:0.35wt.%、Al:0.44wt.%、Co:0.85wt.%、B:0.96wt.%、Nb:0.2wt.%であり、wt.%とは、前記ネオジム鉄ホウ素永久磁石材料における質量百分率を意味し、残部がFe及び不可避的不純物である。
【0036】
本発明の一つの好ましい態様において、前記ネオジム鉄ホウ素永久磁石材料は、質量百分率で下記の成分を含み、Nd:31.3wt.%、Tb:0.5wt.%、Cu:0.55wt.%、Al:0.95wt.%、Co:1.5wt.%、B:1.05wt.%、Zr:0.2wt.%であり、wt.%とは、前記ネオジム鉄ホウ素永久磁石材料における質量百分率を意味し、残部がFe及び不可避的不純物である。
【0037】
本発明の一つの好ましい態様において、前記ネオジム鉄ホウ素永久磁石材料は、質量百分率で下記の成分を含み、Nd:29wt.%、Tb:0.1wt.%、Dy:0.4、Cu:0.4wt.%、Al:0.:5wt.%、Co:0.9wt.%、B:1wt.%、Nb:0.25wt.%であり、wt.%とは、前記ネオジム鉄ホウ素永久磁石材料における質量百分率を意味し、残部がFe及び不可避的不純物である。
【0038】
本発明の一つの好ましい態様において、前記ネオジム鉄ホウ素永久磁石材料は、質量百分率で下記の成分を含み、Nd:29.5wt.%、Tb:1.5wt.%、Cu:0.45wt.%、Al:0.52wt.%、Co:0.95wt.%、B:1.03wt.%、Ti:0.21wt.%であり、wt.%とは、前記ネオジム鉄ホウ素永久磁石材料における質量百分率を意味し、残部がFe及び不可避的不純物である。
【0039】
本発明の一つの好ましい態様において、前記ネオジム鉄ホウ素永久磁石材料は、質量百分率で下記の成分を含み、PrNd:30.7wt.%、Tb:0.8wt.%、Cu:0.5wt.%、Al:0.85wt.%、Co:1.2wt.%、B:1.04wt.%、Nb:0.21wt.%であり、wt.%とは、前記ネオジム鉄ホウ素永久磁石材料における質量百分率を意味し、残部がFe及び不可避的不純物である。
【0040】
本発明の一つの好ましい態様において、前記ネオジム鉄ホウ素永久磁石材料は、質量百分率で下記の成分を含み、Nd:28.3wt.%、Tb:0.9wt.%、Cu:0.42wt.%、Al:0.7wt.%、Co:1.3wt.%、B:1.05wt.%、Nb:0.23wt.%であり、wt.%とは、前記ネオジム鉄ホウ素永久磁石材料における質量百分率を意味し、残部がFe及び不可避的不純物である。
【0041】
本発明には、ネオジム鉄ホウ素永久磁石材料の製造方法がさらに提供され、下記のステップを含み:前記Rネオジム鉄ホウ素永久磁石材料の原料組成物の溶融液を鋳造、粗破砕破、粉砕、成形、焼結すればよい。
【0042】
前記ネオジム鉄ホウ素永久磁石材料の原料組成物には、R、Al、Cu及びCoが含まれ、
前記Rは、RL及びRHを含み、前記RLの種類は、前述したものであり、前記RHの種類は、前述したものであり、
前記ネオジム鉄ホウ素永久磁石材料の原料組成物は、以下の条件式を満足する。
(1)B/R:0.033~0.037
(2)Al/RH:0.12~2.7
【0043】
本発明において、前記ネオジム鉄ホウ素永久磁石材料の原料組成物における成分及び含有量を本分野の通常のものとすることができる。好ましくは、前記ネオジム鉄ホウ素永久磁石材料の原料組成物は、質量百分率で下記の成分を含み、R:28~33wt.%、RH:0.5~2.5wt.%、Cu:0.35~0.55wt.%、Al:0.44~0.95wt.%、Co:0.85~1.5wt.%、B:0.955~1.05wt.%、残部がFe及び不可避的不純物であり、前記Rは、RL及びRHを含み、wt.%とは、前記ネオジム鉄ホウ素永久磁石材料の原料組成物における質量百分率を意味する。本発明において、前記ネオジム鉄ホウ素永久磁石材料の原料組成物の溶融液を本分野における通常の方法で製造することができ、例えば、高周波真空誘導溶解炉で溶解製錬すればよい。前記溶解炉の真空度は、5×10-2Paであってもよい。前記溶解製錬の温度は、1550℃以下であってもよい。
【0044】
そのうち、前記鋳造工程は、流し込みを含み、前記流し込みの温度を1420~1460°Cとすることができ、好ましくは1425~1455°Cとし、例えば1430°Cである。前記流し込みを経た後に鋳造を行い、前記鋳造の方法を次のようなものとすることができる。Arガス雰囲気(例えば5.5×10PaのArガス雰囲気下)において、10℃/秒~10℃/秒の速度で冷却すればよい。
【0045】
前記鋳造を経た後に合金シートを得、前記合金シートの厚さを本分野の通常のものとすることができ、好ましくは0.28~0.32mmとし、例えば0.3mmである。
【0046】
本発明において、前記破砕の工程は、本分野における通常の破砕工程であることができ、例えば、水素吸収、脱水素、冷却処理を経ていればよい。
【0047】
ここで、前記水素吸収は、水素ガス圧力0.085MPaの条件下で行うことができる。
【0048】
ここで、前記脱水素は、真空引きしながら昇温する条件で行うことができ、脱水素温度は、480~520℃であり、例えば500℃である。
【0049】
本発明において、前記粉砕の工程は、本分野における通常の粉砕工程であることができ、例えば、ジェットミル粉砕である。
【0050】
ここで、好ましくは、前記粉砕の工程は、酸化ガス含有量が100ppm以下の雰囲気下で行うことができる。前記酸化ガスは、酸素または水分の含有量を意味する。
【0051】
ここで、前記ジェットミル粉砕の粉砕室圧力は、0.68MPaとすることができる。前記ジェットミル粉砕を経た後の粉体の粒度を4.1~4.4μmとすることができ、好ましくは4.1~4.3μmとし、例えば4.2μmである。
【0052】
ここで、前記粉砕を行った後、本分野における常套手段で潤滑剤を添加することができ、例えば、ステアリン酸亜鉛を添加する。前記潤滑剤の添加量は、混合後の粉末重量の0.05~0.15%、例えば0.12%とすることができる。
【0053】
本発明において、前記成形の工程は、本分野における通常の成形工程であることができ、例えば、磁場成形法である。
【0054】
本発明において、前記焼結の工程は、本分野における通常の焼結工程であることができ、例えば、真空条件下(例えば5×10-3Paの真空下)で、焼結、冷却を経ていればよい。
【0055】
ここで、前記焼結の温度は、本分野における通常の焼結温度、例えば1000~1100℃、さらには例えば1070℃とすることができる。前記焼結の時間は、本分野における通常の焼結時間、例えば6hとすることができる。前記冷却の前に、ガス圧が0.05MPaに達するようにArガスを導入することができ、
【0056】
本発明において、前記焼結の後に時効処理をさらに含むことができる。
【0057】
ここで、前記時効処理の温度は、490~530℃であってもよい、好ましくは500~520℃であり、例えば510℃である。前記時効処理の時間は、2.5~4h、例えば3hであってもよい。
【0058】
本発明には、前記方法で製造されたネオジム鉄ホウ素永久磁石材料がさらに提供される。
【0059】
本発明には、前記ネオジム鉄ホウ素永久磁石材料がモーターにおいて電子部品としての応用がさらに提供される。
【0060】
ここで、前記電子機器は、モータロータ永久磁石であってもよい。
【0061】
本分野の周知常識に準拠したうえで、上記の各々の好ましい条件を任意に組み合わせることによって、本発明の各々の好適な実施例を得ることができる。
【0062】
本発明に使用されている試薬および原料は、いずれも市販されている。
【発明の効果】
【0063】
本発明の積極的な進歩的効果は、以下の点にある。
1)本発明におけるネオジム鉄ホウ素永久磁石材料の磁気特性が優れている:Br≧13.12kGs、Hcj≧17.83kOe、BHmax≧41.38MGOeであり、
2)本発明におけるネオジム鉄ホウ素永久磁石材料の力学特性も優れている:曲げ強度≧409MPaであり、保磁力と力学強度は同時に高いレベルに維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0064】
図1図1は、実施例1におけるネオジム鉄ホウ素永久磁石材料のSEMによるマップであり、ここで、ポイント3はNdFe14B主相(灰色領域)であり、ポイント2は粒界相(銀白色領域)であり、ポイント3は粒界相に含まれるRH-Al-RL-Cu-Co物相(灰白色塊状物)である。
【発明を実施するための形態】
【0065】
以下、実施例の態様により本発明をさらに説明するが、本発明を実施例の範囲に制限するものではない。以下の実施例において、具体的な条件が明記されない実験方法は、通常の方法及び条件に従って、または商品仕様書に応じて選択される。
【0066】
実施例および比較例におけるネオジム鉄ホウ素永久磁石材料の原料成分を表1に示す。
【0067】
表1 ネオジム鉄ホウ素永久磁石材料の原料組成物の成分と含有量(wt.%)
以上の表において、「/」は、その元素が添加されていないことを示す。
【0068】
実施例1~6、および比較例1~4のネオジム鉄ホウ素永久磁石材料の製造方法は、以下の通りである。
(1)溶解製錬の工程:表1に示す成分に従って、調製した原料をアルミナ製の坩堝に入れ、高周波真空誘導溶解炉において5×10-2Paの真空中で1500℃以下の温度で真空溶解製錬した。
(2)鋳造工程:溶解製錬した後に得られた溶湯を1430°Cで流し込み、Arガスを導入し、気圧を5.5万Paにした後に鋳造し、10℃/秒~10℃/秒の冷却速度で急冷合金を得、合金シートの厚さは0.3mmである。
(3)水素破砕工程:急冷合金を置く水素化粉砕用炉を室温で真空引きした後、純度99.9%の水素ガスを水素破砕用炉内に導入して水素ガス圧力を0.085MPaに維持する。水素吸収を十分に行った後、真空引きしながら昇温し、十分に脱水素し、脱水素における温度は500℃であり、その後、冷却し、水素破砕した粉末を取り出す。
(4)ジェットミル工程:水素破砕した粉末を、酸化ガス含有量100ppm以下の窒素ガス雰囲気下及び粉砕室圧力0.68MPaの条件下で3時間のジェットミル粉砕し、微粉を得、粉体の粒子サイズは4.2μmである。酸化ガスは、酸素または水分を指す。
(5)ジェットミル粉砕した後の粉末に潤滑剤を添加し、潤滑剤の添加量を混合後の粉末重量の0.12%として、三次元混合機で十分に混合した。
(6)磁場成形の工程:上記の潤滑剤を添加した粉末を、直角配向型の磁場成形機を用いて、1.8Tの配向磁場中及び0.35ton/cmの成形圧力で、一辺が25mmの立方体に一次成形し、一次成形後、0.2Tの磁場で減磁する。一次成形後の成形体を空気に触れさせないように、それをシールし、その後、二次成形機(静水圧成形機)を用いて、1.3ton/cmの圧力で二次成形を行う。
(7)焼結の工程:各成形体を焼結炉に搬送して焼結し、5×10-3Paの真空下且つ1070℃の温度で6時間焼結してから、Arガスを導入して0.05MPaまでガス圧を到達させた後、室温まで冷却した。
(8)時効処理の工程:焼結体を高純度のArガス中且つ510℃の温度で3時間の時効処理を行った後、室温まで冷却して取り出て、オジム鉄ホウ素永久磁石材料を取得する。
【効果実施例】
【0069】
実施例1~6、比較例1~4で得られたオジム鉄ホウ素永久磁石材料の磁気特性および成分を測定し、その磁性体の相の組成を電界放出電子プローブマイクロアナライザ(FE-EPMA)で観察した。
(1)ネオジム鉄ホウ素永久磁石材料の各成分に対して、高周波誘導結合プラズマ発光分光分析装置(ICP-OES)を用いて測定し、そのうち、RHx―Aly―RLz―Cum―Con物相(xは0.4~5.0であり、yは0.5~1.1であり、zは45~92であり、mは0.5~3.5であり、nは1.5~7である)はFE―EPMAで試験により得られた。以下の表2に示されたのは、成分検出結果であり、そのうち、実施例1におけるネオジム鉄ホウ素永久磁石材料のSEMによるマップを図1に示す。
【0070】
表2 ネオジム鉄ホウ素永久磁石材料の成分と含有量(wt.%)
上記の表において、RHx―Aly―RLz―Cum―Con物相のうち、xは0.4~5.0であり、yは0.5~1.1であり、zは45~92であり、mは0.5~3.5であり、nは1.5~7であり、「/」は、当該元素が含まれていないことを示す。
【0071】
(2)磁気特性の評価:焼結磁石は、中国計量院のNIM-10000H型BH大塊希土類永久磁石非破壊測定システムを用いて磁気特性検出を行った。以下の表3に示すのは、磁気特性の検出の結果である。表3において、「Br」が残留磁束密度(remanence)であり、「Hcj」が保磁力(intrinsic coercivity)であり、「BHmax」が最大エネルギー積(maximum energy product)である。
【0072】
表3 ネオジム鉄ホウ素永久磁石材料の性能
【0073】
表3から分かるように、
1)本発明におけるネオジム鉄ホウ素永久磁石材料の磁気特性及び力学性能はいずれも優れている:Br≧13.12kGs、Hcj≧17.83kOe、BHmax≧41.38MGOeであり、曲げ強度≧409MPaである(実施例1~6)。
2)本発明の成分に基づいて、R、B、及びAlの含有量を調整しても、B/RとAl/RHが同時に本願に限定された範囲内になければ、RH-Al-RL-Cu-Co物相(xは0.4~5.0であり、yは0.5~1.1であり、zは45~92であり、mは0.5~3.5であり、nは1.5~7である)を生成することができず、BrとHcjを同時に高いレベルに維持することができなくなり、曲げ強度も明らかに低下してしまう(比較例1~3)。
3)本発明の成分に基づいて、B/R及びAl/RHの範囲値を調整して、両者の値が本発明に限定された範囲内にない場合、ネオジム鉄ホウ素永久磁石材料のHcjが明らかに低下し、曲げ強度も明らかに低下してしまう(比較例4)。

図1