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  • 特許-R-T-B系焼結磁石及びその製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-12
(45)【発行日】2023-07-21
(54)【発明の名称】R-T-B系焼結磁石及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01F 1/057 20060101AFI20230713BHJP
   H01F 41/02 20060101ALI20230713BHJP
   C22C 38/00 20060101ALI20230713BHJP
   B22F 1/00 20220101ALI20230713BHJP
   B22F 3/00 20210101ALI20230713BHJP
   B22F 1/05 20220101ALI20230713BHJP
   B22F 3/24 20060101ALI20230713BHJP
   B22F 9/04 20060101ALI20230713BHJP
【FI】
H01F1/057 170
H01F41/02 G
C22C38/00 303D
B22F1/00 Y
B22F3/00 F
B22F1/05
B22F3/24 B
B22F9/04 C
B22F9/04 E
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2022539202
(86)(22)【出願日】2020-07-07
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-02-07
(86)【国際出願番号】 CN2020100575
(87)【国際公開番号】W WO2021135143
(87)【国際公開日】2021-07-08
【審査請求日】2022-07-07
(31)【優先権主張番号】201911423952.3
(32)【優先日】2019-12-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(31)【優先権主張番号】202010016222.8
(32)【優先日】2020-01-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】521397223
【氏名又は名称】フージャン チャンティン ゴールデン ドラゴン レア-アース カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100199819
【弁理士】
【氏名又は名称】大行 尚哉
(74)【代理人】
【識別番号】100087859
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 秀治
(72)【発明者】
【氏名】施堯
(72)【発明者】
【氏名】藍琴
(72)【発明者】
【氏名】黄佳瑩
【審査官】井上 健一
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第110473682(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第110444360(CN,A)
【文献】特開2017-226910(JP,A)
【文献】特開2011-258935(JP,A)
【文献】特表2017-531912(JP,A)
【文献】特開2004-330279(JP,A)
【文献】特開2008-264875(JP,A)
【文献】国際公開第2019/242581(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2015/0248954(US,A1)
【文献】特開2017-183336(JP,A)
【文献】再公表特許第2016/208508(JP,A1)
【文献】特開2009-260338(JP,A)
【文献】特開2017-073465(JP,A)
【文献】特開2020-013975(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第111081444(CN,A)
【文献】特表2019-511133(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01F 1/057
H01F 41/02
C22C 38/00
B22F 1/00
B22F 3/00
B22F 1/05
B22F 3/24
B22F 9/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
R、B、Ti、Ga、Al、Cu及びTを含み、それらの含有量は以下のとおりである:
Rの含有量は29.0~33%であり、
Bの含有量は0.86~0.93%であり、
Tiの含有量は0.05~0.25%であり、
Gaの含有量は0.3~0.5%であり、ただし、0.5%ではなく、
Alの含有量は0.6~1%であり、ただし、0.6%ではなく、
Cuの含有量は0.36~0.55%であり、
そのうち、Rは少なくともNdを含む希土類元素であり、Bはホウ素であり、Tiはチタンであり、Gaはガリウムであり、Alはアルミニウムであり、Cuは銅であり、TはFe及びCoを含み、前記パーセントは、質量百分率である、
ことを特徴とするR-T-B系焼結磁石。
【請求項2】
前記Rの含有量は30.2~33%であり、
および/または、前記Rにおいて、RHの含有量は0でありまたは1%以下であり、
および/または、前記Bの含有量は0.915~0.93%であり、
および/または、前記Tiの含有量は0.15~0.25%であり、
および/または、前記Gaの含有量は0.3~0.455%であり、
および/または、前記Alの含有量は0.65~1%であり、ただし、1%ではなく、
および/または、前記Cuの含有量は0.45~0.55%であり、
および/または、前記Fe及びCoの含有量は、100%質量百分率に占める残部であり、
および/または、前記R-T-B系焼結磁石におけるC、N及びOの含有量の合計は、1000ppm~3500ppmであり、
前記パーセントは質量百分率である、
ことを特徴とする請求項1に記載のR-T-B系焼結磁石。
【請求項3】
前記Coの含有量は0.5~3%であり、
および/または、前記Feの含有量が60~68%である、
ことを特徴とする請求項1に記載のR-T-B系焼結磁石。
【請求項4】
前記R-T-B系焼結磁石は、主相及び粒界相を含み、そのうち、前記主相は、R14Bを含み、前記粒界相は、R-(Cu-Ga-Al及び希土類酸化相とを含み、
ここで、x/y=1.5~3、a/b=2~5、(a+b)/c=30~70であり、
前記主相の含有量は、94~98%であり、前記R-(Cu-Ga-Alの含有量は、1~3.5%であり、前記希土類酸化相の含有量は、1~2.5%であり、前記パーセントは、体積百分率である
ことを特徴とする請求項1に記載のR-T-B系焼結磁石。
【請求項5】
前記粒界相R -(Cu -Ga -Al において、x/y=1.5~3、a:b:c=(10~40):(6~19):1である、
ことを特徴とする請求項4に記載のR-T-B系焼結磁石。
【請求項6】
前記R-T-B系焼結磁石は、含有量が31.5%であるNd、含有量が0.92%であるB、含有量が0.5%であるCo、含有量が0.9%であるAl、含有量が0.45%であるCu、含有量が0.455%であるGa、含有量が0.2%であるTi、及び残部のFeを含み、前記パーセントは、質量百分率であり、
または、前記R-T-B系焼結磁石は、含有量が31.5%であるNd、含有量が0.92%であるB、含有量が0.5%であるCo、含有量が1.0%であるAl、含有量が0.5%であるCu、含有量が0.455%であるGa、含有量が0.2%であるTi、及び残部のFeを含み、前記パーセントは、質量百分率であり、
または、前記R-T-B系焼結磁石は、含有量が31.5%であるNd、含有量が0.5%であるDy、含有量が0.915%であるB、含有量が0.5%であるCo、含有量が0.7%であるAl、含有量が0.55%であるCu、含有量が0.455%であるGa、含有量が0.25%であるTi、及び残部のFeを含み、前記パーセントは、質量百分率であり、
または、前記R-T-B系焼結磁石は、含有量が30.2%であるNd、含有量が0.93%であるB、含有量が1.5%であるCo、含有量が0.65%であるAl、含有量が0.4%であるCu、含有量が0.3%であるGa、含有量が0.15%であるTi、及び残部のFeを含み、前記パーセントは、質量百分率であり、
または、前記R-T-B系焼結磁石は、含有量が33%であるNd、含有量が0.86%であるB、含有量が3.0%であるCo、含有量が0.8%であるAl、含有量が0.36%であるCu、含有量が0.4%であるGa、含有量が0.05%であるTi、及び残部のFeを含み、前記パーセントは、質量百分率である、
ことを特徴とする請求項1に記載のR-T-B系焼結磁石。
【請求項7】
請求項1~のいずれか1項に記載のR-T-B系焼結磁石の製造方法であって、前記R-T-B系焼結磁石の製造方法は、以下のステップを含む:
R-T-B系焼結磁石の原料を順次に溶解製錬、鋳造、水素破砕、ジェットミル粉砕、成形、焼結及び時効処理する
ことを特徴とするR-T-B系焼結磁石の製造方法。
【請求項8】
前記溶解製錬は、高周波真空誘導溶解炉で行われ、
および/または、前記溶解製錬の温度は、1450~1550℃であり、
および/または、前記鋳造は、Ar雰囲気の条件下で行い、
および/または、前記鋳造の雰囲気圧力は20~70kPaであり、
および/または、前記鋳造の銅ロールの回転速度は0.4~2m/sであり、
および/または、前記鋳造により得られたR-T-B合金鋳片の厚さは0.15~0.5mmであり、
および/または、前記水素破砕の水素吸収温度は20~300℃であり、
および/または、前記水素破砕の水素吸収圧力は0.12~0.19Mpaであり、
および/または、前記水素破砕の脱水素時間は、0.5~5hであり、
および/または、前記水素破砕の脱水素温度は450~600℃であり、
および/または、前記ジェットミル粉粋工程は、前記R-T-B合金粉体をジェットミルに送り込み、ジェットミル粉砕を行い、破砕し続き、微粉を得ることであり、
および/または、前記成形は、1.8T以上の磁場強度と窒素ガス雰囲気の保護の下で行われ、
および/または、前記焼結は、次の4つのステップに分けられる:
(1)温度を150~300°Cに上昇させ、温度維持時間を1~4hとし、
(2)温度を400~600°Cに上昇させ、温度維持時間を1~4hとし、
(3)温度を800~900°Cに上昇させ、温度維持時間を1~4hとし、
(4)温度を1000~1090°Cに上昇させ、温度維持時間を3hを超えるようにし、
前記時効は、一段時効及び二段時効を含む
ことを特徴とする請求項7に記載のR-T-B系焼結磁石の製造方法。
【請求項9】
前記高周波真空誘導溶解炉の真空度は0.1Pa未満であり、
および/または、前記溶解製錬の温度は、1500~1550℃であり、
および/または、前記鋳造の雰囲気圧力は30~50kPaであり、
および/または、前記鋳造により得られたR-T-B合金鋳片の厚さは0.2~0.35mmであり、
および/または、前記微粉のメディアン径D50は3~5.5μmであり、
および/または、前記ジェットミル粉粋工程の研削圧力は0.3~0.5Mpaであり、
および/または、前記一段時効の温度を850℃~950℃とし、
および/または、前記二段時効の温度を440℃~540℃とする、
ことを特徴とする請求項8に記載のR-T-B系焼結磁石の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【関連出願の相互参照】
【0001】
本願は、2019年12月31日に出願された中国特許出願201911423952.3に基づく優先権を主張し、その開示全体は援用により本願に組み込まれるものとする。
【技術分野】
【0002】
本発明は、R-T-B系焼結磁石及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0003】
R-T-B系焼結磁石(Rは希土類元素であり、Tは遷移金属元素及び第3典型金属元素であり、Bはホウ素元素である)は、その優れた磁気特性のため、電子製品、自動車、風力発電、家電製品、エレベーター及び産業用ロボットなどの分野で広く使用されており、例えば、ハードディスク、スマートフォン、イヤフォーン、エレベーター牽引機、発電機などの永久磁石モータにおいてエネルギー源などとして使用されており、その需要は日々拡大しており、各メーカーの磁石特性、例えば残留磁束密度(remanence、Brと略称する)、保磁力特性に対する要求も徐々に高まっている。
【0004】
実験では、R-T-B系焼結磁石の製造過程においてRFe17相が析出しやすく、磁石の保磁力特性を劣化させてしまうことが分かった。従エレベーター材料の保磁力を向上させかつ温度係数を改善するように、重希土類元素、例えばDy、Tb、Gdなどを添加することができるが、重希土類元素は高価なものであり、このような方法を利用してR-T-B系焼結磁石製品の保磁力を向上させる場合、原料コストが増加し、R-T-B系焼結磁石の適用に不利になる。
【0005】
したがって、重希土類元素を添加しなくまたは重希土類元素を少量添加した場合、保磁力が高いR-T-B系焼結磁石を製造する必要がある。例えば、特許CN106128673Aには、焼結ネオジム鉄ホウ素磁石材料(残留磁束密度が12.77kGsであり、保磁力が22.42kOeである)が製造された。しかし、そのBの含有量が高く、より多くのBリッチ相が生成され、製品の残留磁束密度特性に悪影響を与えてしまう。この現状に対しては早急に対応しなければならない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明が解決しようとする技術的課題は、従来技術において重希土類元素を添加しなくまたは重希土類元素を少量添加した(重希土類元素RHの添加量≦1)場合、保磁力が高くかつ残留磁束密度が高いR-T-B系焼結磁石を製造することが困難になるという問題を解決するために、R-T-B系焼結磁石及びその製造方法を提供することにある。本発明は、重希土類元素を添加しなくまたは少量添加した場合、微量のTi、及びGa、Al、Cu及びCoを組み合わせて添加することにより、R2Fe17相の析出を抑制し、かつ、時効内に粒界で高Cu低Al相R-(Cu-Ga-Alを生成し、磁石の保磁力を大幅に向上させる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、以下の技術考案を通じて上記の技術的問題を解決する。
【0008】
本発明には、R-T-B系焼結磁石が提供され、R、B、Ti、Ga、Al、Cu及びTを含み、それらの含有量は以下のとおりである:
Rの含有量は29.0~33%であり、
Bの含有量は0.86~0.93%であり、
Tiの含有量は0.05~0.25%であり、
Gaの含有量は0.3~0.5%であり、ただし、0.5%ではなく、
Alの含有量は0.6~1%であり、ただし、0.6%ではなく、
Cuの含有量は0.36~0.55%であり、
そのうち、Rは少なくともNdを含む希土類元素であり、Bはホウ素であり、Tiはチタンであり、Gaはガリウムであり、Alはアルミニウムであり、Cuは銅であり、TはFe及びCoを含み、前記パーセントは、質量百分率である。
【0009】
本発明において、前記Rの含有量は本分野の従来どおりであってもよい。好ましくは、前記Rの含有量は30.2~33%であり、例えば30.2%、31.5%、33%であり、前記パーセントは、質量百分率である。
【0010】
本発明において、前記Rは、重希土類元素RHを含む希土類元素。好ましくは、前記Rにおいて、RHの含有量は0でありまたは1%以下であり、例えば0%、0.5%であり、前記パーセントは、質量百分率である。
【0011】
本発明では、低B技術を利用して、重希土類元素を添加しなくまたは重希土類元素を少量添加した(重希土類元素RHの添加量≦1)場合、高性能R-T-B系焼結磁石を得ることを効菓的に実現することができる。本発明において、Bの含有量は0.86~0.93%の間であり、Bの含有量が0.86%未満であると、磁石の角型比が悪くなり、Bの含有量が0.93%を超えると、高性能が得られない。
【0012】
好ましくは、前記Bの含有量は0.915~0.93%であり、例えば0.915%、0.92%、0.93%であり、前記パーセントは、質量百分率である。
【0013】
本発明において、好ましくは、前記R-T-B系焼結磁石は、主相及び粒界相を含み、そのうち、前記主相は、R14Bを含み、前記粒界相は、R-(Cu-Ga-Al及び希土類酸化相とを含み、
【0014】
ここで、x/y=1.5~3、a/b=2~5、(a+b)/c=30~70であり、
【0015】
前記主相の含有量は、94~98%であり、前記R-(Cu-Ga-Alの含有量は、1~3.5%であり、前記希土類酸化相の含有量は、1~2.5%であり、前記パーセントは、体積百分率である。
【0016】
より好ましく、前記粒界相R-(Cu-Ga-Alにおいて、x/y=1.5~3、a:b:c=(10~40):(6~19):1である。
【0017】
本発明において、Ti、Ga、Al、Cuを適量添加することにより、R2Fe17相の析出を効果的に抑制する。発明者らは、Alが多く添加されているが、微量のTiを同時に添加したため、製造されたR-T-B系焼結磁石が粒界に高Alの粒界相を形成せずに、高Cu低Alの粒界相R-(Cu-Ga-Alを形成し、この相を生成することで粒界を修飾する機能を果たし、粒界相の接触角(contact angle)及び流動性を改善し、粒界相が主相間を流れやすくなり、粒界相が薄くて連続的なものになり、脱磁結合の機能を果たすと共に、主相の体積分率を高め、BrとHcjの両方にも優れた磁石が得られることを発見した。そのうち、前記酸化希土類相は、当業者に分かるように、不可避的な酸化反応によるものである。
【0018】
好ましくは、前記Tiの含有量は0.15~0.25%であり、例えば0.15%、0.2%、0.25%であり、前記パーセントは、質量百分率である。
【0019】
好ましくは、前記Gaの含有量は0.3~0.455%であり、例えば0.3%、0.4%、0.455%であり、前記パーセントは、質量百分率である。
【0020】
好ましくは、前記Alの含有量は0.65~1%であり、ただし、1%ではなく、例えば0.65%、0.7%、0.8%、0.9%であり、前記パーセントは、質量百分率である。
【0021】
好ましくは、前記Cuの含有量は0.45~0.55%であり、例えば0.45%、0.5%、0.55%であり、前記パーセントは、質量百分率である。
【0022】
本発明において、前記Fe及びCoの含有量を本分野の通常のものとする。
【0023】
好ましくは、前記Fe及びCoの含有量は、100%質量百分率に占める残部であり、前記パーセントは、質量百分率である。
【0024】
さらに好ましくは、前記Coの含有量は0.5~3%であり、例えば0.5%、1.5%、3.0%であり、前記パーセントは、質量百分率である。
【0025】
さらに好ましくは、前記Feの含有量が60~68%であり、前記パーセントは、質量百分率である。
【0026】
本発明において、前記R-T-B系焼結磁石は、不可避的不純物と、製造工程で導入されたO、NまたはCを含む。
【0027】
好ましくは、前記R-T-B系焼結磁石におけるC、N及びOの含有量の合計は、1000ppm~3500ppmである。
【0028】
本発明の一つの好ましい態様において、前記R-T-B系焼結磁石は、含有量が31.5%であるNd、含有量が0.92%であるB、含有量が0.5%であるCo、含有量が0.9%であるAl、含有量が0.45%であるCu、含有量が0.455%であるGa、含有量が0.2%であるTi、及び残部のFeを含み、前記パーセントは、質量百分率である。
【0029】
本発明の一つの好ましい態様において、前記R-T-B系焼結磁石は、含有量が31.5%であるNd、含有量が0.92%であるB、含有量が0.5%であるCo、含有量が1.0%であるAl、含有量が0.5%であるCu、含有量が0.455%であるGa、含有量が0.2%であるTi、及び残部のFeを含み、前記パーセントは、質量百分率である。
【0030】
本発明の一つの好ましい態様において、前記R-T-B系焼結磁石は、含有量が31.5%であるNd、含有量が0.5%であるDy、含有量が0.915%であるB、含有量が0.5%であるCo、含有量が0.7%であるAl、含有量が0.55%であるCu、含有量が0.455%であるGa、含有量が0.25%であるTi、及び残部のFeを含み、前記パーセントは、質量百分率である。
【0031】
本発明の一つの好ましい態様において、前記R-T-B系焼結磁石は、含有量が30.2%であるNd、含有量が0.93%であるB、含有量が1.5%であるCo、含有量が0.65%であるAl、含有量が0.4%であるCu、含有量が0.3%であるGa、含有量が0.15%であるTi、及び残部のFeを含み、前記パーセントは、質量百分率である。
【0032】
本発明の一つの好ましい態様において、前記R-T-B系焼結磁石は、含有量が33%であるNd、含有量が0.86%であるB、含有量が3.0%であるCo、含有量が0.8%であるAl、含有量が0.36%であるCu、含有量が0.4%であるGa、含有量が0.05%であるTi、及び残部のFeを含み、前記パーセントは、質量百分率である。
【0033】
本発明には、R-T-B系焼結磁石がさらに提供され、主相及び粒界相を含み、そのうち、前記主相は、R14Bを含み、前記粒界相は、R-(Cu-Ga-Al及び希土類酸化相とを含み、ここで、x/y=1.5~3、a/b=2~5、(a+b)/c=30~70であり、前記主相の含有量は、94~98%であり、前記R-(Cu-Ga-Alの含有量は、1~3.5%であり、前記希土類酸化相の含有量は、1~2.5%であり、前記パーセントは、体積百分率である。
【0034】
好ましくは、前記粒界相R-(Cu-Ga-Alにおいて、x/y=1.5~3、a:b:c=(10~40):(6~19):1である。
【0035】
本発明には、前述したようにR-T-B系焼結磁石の製造方法がさらに提供され、前記R-T-B系焼結磁石の製造方法は、以下のステップを含む、R-T-B系焼結磁石の原料を順次に溶解製錬、鋳造、水素破砕、ジェットミル粉砕、成形、焼結及び時効処理すればよい。
【0036】
本発明において、前記R-T-B系焼結磁石の原料は、前述したようにR-T-B系焼結磁石の元素含有量質量百分率を満たす原料であることが当業者にとって明らかである。
【0037】
本発明において、前記溶解製錬の操作及び条件を本分野の通常のものとすることができる。
【0038】
好ましくは、高周波真空誘導溶解炉で、前記原料を溶解製錬する。
【0039】
好ましくは、前記高周波真空誘導溶解炉の真空度は0.1Pa未満である。
【0040】
好ましくは、前記高周波真空誘導溶解炉の真空度は0.02Pa未満である。
【0041】
好ましくは、前記溶解製錬の温度は、1450~1550℃である。
【0042】
より好ましくは、前記溶解製錬の温度は、1500~1550℃である。
【0043】
本発明において、前記鋳造の操作及び条件を本分野の通常のものとすることができ、一般的に不活性雰囲気中で行われ、R-T-B合金鋳片を得る。
【0044】
好ましくは、前記鋳造は、Ar雰囲気の条件下で行う。
【0045】
好ましくは、前記鋳造の雰囲気圧力は20~70kPaである。
【0046】
より好ましくは、前記鋳造の雰囲気圧力は30~50kPaである。
【0047】
好ましくは、前記鋳造の銅ロールの回転速度は0.4~2m/sであり、例えば1m/sである。
【0048】
好ましくは、前記鋳造により得られたR-T-B合金鋳片の厚さは0.15~0.5mmである。
【0049】
より好ましくは、前記鋳造により得られたR-T-B合金鋳片の厚さは0.2~0.35mmであり、例えば0.25mmである。
【0050】
本発明において、前記水素破砕の操作及び条件を本分野の通常のものとすることができる。一般的に、前記水素解砕は、水素吸蔵工程と脱水素工程を含み、前記R-T-B合金鋳片を水素解砕処理してR-T-B合金粉体を得ることができる。
【0051】
好ましくは、前記水素破砕の水素吸収温度は20~300℃であり、例えば25°Cである。
【0052】
好ましくは、前記水素破砕の水素吸収圧力は0.12~0.19Mpaであり、例えば0.19MPaである。
【0053】
好ましくは、前記水素破砕の脱水素時間は、0.5~5hであり、例えば2hである。
【0054】
好ましくは、前記水素破砕の脱水素温度は450~600℃であり、例えば、550°Cである。
【0055】
本発明において、前記ジェットミル粉砕の操作及び条件を本分野の通常のものとすることができる。好ましくは、前記ジェットミル粉粋工程は、前記R-T-B合金粉体をジェットミルに送り込み、ジェットミル粉砕を行い、破砕し続き、微粉を得ることである。
【0056】
より好ましくは、前記ジェットミル粉粋工程の研削圧力は0.3~0.5Mpaであり、例えば0.4MPaである。
【0057】
より好ましくは、前記微粉のメディアン径D50は3~5.5μmであり、例えば4μmである。
【0058】
本発明において、前記成形の操作及び条件を本分野の通常のものとすることができる。
【0059】
好ましくは、前記成形は、1.8T以上の、例えば1.8Tの磁場強度と窒素ガス雰囲気の保護の下で行われる。
【0060】
本発明において、前記焼結の操作及び条件を本分野の通常のものとすることができる。
【0061】
好ましくは、前記焼結は、次の4つのステップに分けられる:
(1)温度を150~300°Cに上昇させ、温度維持時間を1~4hとし、
(2)温度を400~600°Cに上昇させ、温度維持時間を1~4hとし、
(3)温度を800~900°Cに上昇させ、温度維持時間を1~4hとし、
(4)温度を1000~1090°Cに上昇させ、温度維持時間を3hを超えるようにする。
【0062】
本発明の一つの好ましい態様において、Tiを微量添加することにより、結晶粒の成長を抑製することができ、焼結の温度範囲をある程度拡大することができる。
【0063】
本発明において、前記時効処理の操作及び条件を本分野の通常のものとすることができる。
【0064】
好ましくは、前記時効は、一段時効及び二段時効を含む。
【0065】
より好ましくは、前記一段時効の温度を850℃~950℃とし、例えば900°Cである。
【0066】
より好ましくは、前記二段時効の温度を440℃~540℃とし、例えば480°Cである。
【0067】
本発明の一つの好ましい態様において、Alの添加量が高いため、この成分における磁石の二段時効の温度範囲は440℃~540℃であり、100℃の波動空間を持つため、量産に有利である。
【0068】
本発明には、R-T-B系焼結磁石がさらに提供され、それは、前述のような製造方法で製造されている。
【0069】
本発明には、前述のようなR-T-B系焼結磁石のモータへのモータロータマグネットとしての応用がさらに提供される。
【0070】
本分野の周知常識に準拠したうえで、上記の各々の好ましい条件を任意に組み合わせることによって、本発明の各々の好適な実施例を得ることができる。
【0071】
本発明に使用されている試薬および原料は、いずれも市販されている。
【発明の効果】
【0072】
本発明の積極的な進歩的効果は、以下の点にある。
【0073】
本発明では、低B技術を利用して、重希土類元素を添加しなくまたは重希土類元素を少量添加した(重希土類元素RHの添加量≦1)場合、成分中のTi、Ga、Al、Cu及びCoの割合を調整し、それらの相乗効果により時効内に高Cu低Alの粒界相R-(Cu-Ga-Alを形成し、粒界相の構造を調整し、保磁力及び残留磁束密度を大幅に向上させる。
【図面の簡単な説明】
【0074】
図1図1は、実施例1におけるR-T-B系焼結磁石のEPMAスペクトルである。
【発明を実施するための形態】
【0075】
以下、実施例の態様により本発明をさらに説明するが、本発明を実施例の範囲に制限するものではない。以下の実施例において、具体的な条件が明記されない実験方法は、通常の方法及び条件に従って、または商品仕様書に応じて選択される。
【0076】
各実施例1~5および比較例6~12におけるネR-T-B系焼結磁石中の元素質量百分率及び磁気特性を以下の表1に示す。表2において、「Br」は残留磁束密度(remanence)、「Hcj」は固有保磁力(intrinsic coercivity)、「Hk/Hcj」は角型比(squareness ratio)であり、「/」は、その元素が添加されていないことを示す。
【0077】
表1 R-T-B系焼結磁石中の元素質量百分率及び磁気特性
【実施例1】
【0078】
R-T-B系焼結磁石の製造方法は、下記のとおりである。
(1)溶解製錬:表1に示される各実施例及び比較例の元素質量百分率に従って、当該元素質量百分率を満たす原料成分を調製する。
原料を高周波真空誘導溶解炉で溶解製錬し、溶解炉の真空度は0.02Pa未満であり、溶解製錬の温度は1500~1550℃である。
【0079】
(2)鋳造:Arで行い、R-T-B合金鋳片を得る。
鋳造の雰囲気圧力は30~50kPaであり、鋳造の銅ロールの回転速度は1m/sである。
鋳造により得られたR-T-B合金鋳片の厚さは0.25mmである。
【0080】
(3)水素破砕:R-T-B合金鋳片の水素吸収過程における水素吸収温度を25°Cであり、水素吸収圧力は0.19MPaである。
水素破砕の脱水素時間は、2hである。脱水素温度は550°Cであり、R-T-B合金粉体を得る。
【0081】
(4)ジェットミル粉粋工程:前記R-T-B合金粉体をジェットミルに送り込み、ジェットミル粉粋を行い、破砕し続き、微粉を得る。
ジェットミル粉粋工程の研削圧力は0.4MPaである。
得られた微粉のメディアン径D50は4μmである。
【0082】
(5)成形:微粉が一定の磁場強度で配向成形されることで、押出ビレットを得る。
成形は、1.8Tの磁場強度と窒素ガス雰囲気の保護の下で行われる。
【0083】
(6)焼結は、次の4つのステップに分けられる(このバッチの試料量は10キロである)。
ア 温度を150~300°Cに上昇させ、温度維持時間を2hとする。
イ 温度を400~600°Cに上昇させ、温度維持時間を2hとする。
ウ 温度を800~900°Cに上昇させ、温度維持時間を4hとする。
エ 温度を1000~1090°Cに上昇させ、温度維持時間を5hとする。
【0084】
(7)時効
一段時効の温度を900°Cとし、二段時効の温度を480°Cとする。
【0085】
実施例2~5及び比較例6~12の製造工程は、選択された原料成分が異なることを除いて、製造工程におけるパラメータは実施例1の製造工程と同じである。
【効果実施例】
【0086】
図1は、実施例1の電界放出電子プローブマイクロアナライザ(EPMA)による微視的な分析結果である。
【0087】
各実施例1~5および比較例8におけるR-T-B系焼結磁石のマイクロ分析結果を表2に示す。
【0088】
表2 R-T-B系焼結磁石のマイクロ分析結果

図1