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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-12
(45)【発行日】2023-07-21
(54)【発明の名称】香味吸引器用のカートリッジの製造方法
(51)【国際特許分類】
   A24F 40/20 20200101AFI20230713BHJP
   A24F 40/70 20200101ALI20230713BHJP
   A24C 5/01 20200101ALI20230713BHJP
【FI】
A24F40/20
A24F40/70
A24C5/01
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2022554180
(86)(22)【出願日】2021-06-28
(86)【国際出願番号】 JP2021024306
(87)【国際公開番号】W WO2023275918
(87)【国際公開日】2023-01-05
【審査請求日】2022-09-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000004569
【氏名又は名称】日本たばこ産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100186613
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邊 誠
(72)【発明者】
【氏名】丹保 仁
(72)【発明者】
【氏名】工藤 俊樹
【審査官】石川 輝
(56)【参考文献】
【文献】特表2019-513374(JP,A)
【文献】特表2019-519224(JP,A)
【文献】国際公開第2019/030272(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A24F 40/00-47/00
A24C 1/00-5/60
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材層と原料層とを有する原料シートと、
前記原料シートを内部に収容するケースと、を有する香味吸引器用のカートリッジの製造方法であって、
前記ケースの原料となるケース用紙に前記原料シートを配置し、
前記ケース用紙を折りたたむことで前記原料シートを前記ケース用紙と一緒に折りたたみ、
前記ケース用紙を前記原料シートに巻き付ける、ことを含む、カートリッジの製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載されたカートリッジの製造方法において、
前記基材層は、導電性を有する材料を含む導電層と、前記導電層に積層される紙層を含み、
前記原料層は、前記紙層上に設けられる、ことを含む、カートリッジの製造方法。
【請求項3】
請求項1又は2に記載されたカートリッジの製造方法において、
ロール状の前記原料シートを所定長さに切断し、
切断された前記原料シートを前記ケース用紙に配置する、ことを含む、カートリッジの製造方法。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか一項に記載されたカートリッジの製造方法において、
前記ケース用紙を第1方向に搬送し、
搬送されている前記ケース用紙に前記原料シートを配置する、ことを含む、カートリッジの製造方法。
【請求項5】
請求項4に記載されたカートリッジの製造方法において、
前記ケース用紙を前記第1方向と交差する面に沿って切断する、ことを含む、カートリッジの製造方法。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか一項に記載されたカートリッジの製造方法において、
前記ケース用紙に、ハーフカット又はデボスを形成する工程と、
前記ハーフカット又はデボスに沿って前記ケース用紙を折りたたむ、ことを含む、カートリッジの製造方法。
【請求項7】
請求項6に記載されたカートリッジの製造方法において、
前記ケース用紙の前記ハーフカット又はデボス上に前記原料シートを配置し、
前記ハーフカット又はデボスに沿って前記ケース用紙と前記原料シートとを一緒に折りたたむ、ことを含む、カートリッジの製造方法。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか一項に記載されたカートリッジの製造方法において、
前記原料シートを前記ケース用紙に配置する前に、前記原料シートの第1端部及び前記第1端部と対向する第2端部を、前記原料層同士が対向するように折りたたみ、
前記原料シートを前記ケース用紙に配置した後に、前記原料シートの前記基材層同士が対向するように、前記ケース用紙を折りたたむことで前記原料シートを前記ケース用紙と一緒に折りたたむ、ことを含む、カートリッジの製造方法。
【請求項9】
請求項1から8のいずれか一項に記載されたカートリッジの製造方法において、
前記ケース用紙に接着剤を塗布し、
前記ケース用紙に塗布された前記接着剤に前記基材層が接触するように、前記ケース用紙に前記原料シートを配置する、ことを含む、カートリッジの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、香味吸引器用のカートリッジの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、たばこロッド等の喫煙品を製造するための装置が知られている(特許文献1参照)。特許文献1は、複数の搬送ドラムを使用してロッドを搬送しながら切断及び紙巻等を行い、たばこロッドを製造することを開示している。また、従来、材料の燃焼をすることなく香味等を吸引するための香味吸引器が知られている。このような香味吸引器に使用される喫煙品として、例えば、揮発成分を含むたばこから成る喫煙材と、揮発した材料(エアロゾル)がユーザの口内に到達する前に冷却するエアロゾル冷却部材を有する喫煙品が知られている(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第6438063号
【文献】特表2017-518041号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、新たな香味吸引器用のカートリッジの製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
第1態様によれば、基材層と原料層とを有する原料シートと、前記原料シートを内部に収容するケースと、を有する香味吸引器用のカートリッジの製造方法が提供される。このカートリッジの製造方法は、前記ケースの原料となるケース用紙に前記原料シートを配置し、前記ケース用紙を折りたたむことで前記原料シートを前記ケース用紙と一緒に折りたたみ、前記ケース用紙を前記原料シートに巻き付ける、ことを含む。
【0006】
第1態様によれば、原料シートとケース用紙とを別々に折りたたんで、原料シートをケースに収容する場合に比べて、工数を減らすことができ、カートリッジの生産性を向上させることができる。
【0007】
第2態様は、第1態様において、前記基材層は、導電性を有する材料を含む導電層と、前記導電層に積層される紙層を含み、前記原料層は、前記紙層上に設けられる、ことを含む、ことを要旨とする。
【0008】
第2態様によれば、原料には結合剤等が含まれ得るので、原料接着のための接着剤を使用することなく、原料層を紙層に接着することができる。また、基材層が導電層を有するので、原料層が香味吸引器で使用されるときの熱伝導効率(加熱効率)を向上させることができる。その結果、原料層の使用時に原料からの蒸気又はエアロゾルのデリバリ効率が向上するので、原料使用量を低減することができる。また、香味吸引器が誘導コイルを備える場合には、誘導コイルによって導電層を誘導加熱することができる。また、導電層により、原料層の強度を向上させることもできる。
【0009】
第3態様は、第1態様又は第2態様において、ロール状の前記原料シートを所定長さに切断し、切断された前記原料シートを前記ケース用紙に配置する、ことを含む、ことを要旨とする。
【0010】
第3態様によれば、ロール状の原料シートから所定長さの原料シートを連続的に製造することができるので、原料シートを連続的にケース用紙に配置することができ、カートリッジの生産性を向上させることができる。
【0011】
第4態様は、第1態様から第3態様のいずれかにおいて、前記ケース用紙を第1方向に搬送し、搬送されている前記ケース用紙に前記原料シートを配置する、ことを含む、ことを要旨とする。
【0012】
第4態様によれば、連続的に原料シートをケース用紙に配置することができるので、カートリッジを量産することが可能になる。
【0013】
第5態様は、第4態様において、前記ケース用紙を前記第1方向と交差する面に沿って切断する、ことを含む、ことを要旨とする。
【0014】
第5態様によれば、任意の長さのカートリッジを形成することができる。
【0015】
第6態様は、第1態様から第5態様のいずれかにおいて、前記ケース用紙に、ハーフカット又はデボスを形成する工程と、前記ハーフカット又はデボスに沿って前記ケース用紙を折りたたむ、ことを含む、ことを要旨とする。
【0016】
第6態様によれば、ケース用紙がある程度の剛度の材料、例えば厚紙で形成されても、ケースを形成するときに、ハーフカット又はデボスに沿ってケースの材料(ケース用紙)を折り曲げやすくなる。
【0017】
第7態様は、第6態様において、前記ケース用紙の前記ハーフカット又はデボス上に前記原料シートを配置し、前記ハーフカット又はデボスに沿って前記ケース用紙と前記原料シートとを一緒に折りたたむ、ことを含む、ことを要旨とする。
【0018】
第7態様によれば、折りたたまれる位置がずれることが抑制され、ケース用紙と原料シートを適切な位置において折り曲げることができる。
【0019】
第8態様は、第1態様から第7態様のいずれかにおいて、前記原料シートを前記ケース用紙に配置する前に、前記原料シートの第1端部及び前記第1端部と対向する第2端部を、前記原料層同士が対向するように折りたたみ、前記原料シートを前記ケース用紙に配置した後に、前記原料シートの前記基材層同士が対向するように、前記ケース用紙を折りたたむことで前記原料シートを前記ケース用紙と一緒に折りたたむ、ことを含む、ことを要旨とする。
【0020】
第8態様によれば、基材層同士が対向する隙間に加熱部のブレード又はサセプタ等を配置して原料シートを加熱することで、ブレード又はサセプタが原料層に接触することなく、原料層を効率的に加熱することができる。これにより、ブレード又はサセプタが原料層によって汚れることが抑制され、加熱ブレード又はサセプタのクリーニングの頻度を低下させることができる。また、原料層同士が対向する隙間が空気流路を画定するので、原料層から生じるエアロゾルが当該隙間を通過することができる。これにより、原料層から生じたエアロゾルを下流に向けて効率的にデリバリすることができる。
【0021】
第9態様は、第1態様から第8態様のいずれかにおいて、前記ケース用紙に接着剤を塗布し、前記ケース用紙に塗布された前記接着剤に前記基材層が接触するように、前記ケース用紙に前記原料シートを配置する、ことを含む、ことを要旨とする。
【0022】
第9態様よれば、原料層に接着剤が付着することが抑制され、接着剤が喫味に与える影響を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本実施形態に係るカートリッジが使用される香味吸引器の概略側面図である。
図2】カートリッジの斜視図である。
図3】原料シートの一部の拡大断面図である。
図4】ケースに収納された状態の原料シートの断面の一例を示す図である。
図5】ケースに収納された状態の原料シートの断面の他の一例を示す図である。
図6】第2開口から見たカートリッジの側面図である。
図7】カートリッジを製造するプロセスを示す概略図である。
図8】ケース用紙の切断箇所の一例を示す概略図である。
図9】原料シート及び冷却部をケースに収容するプロセスを示す概略図である。
図10】ケース用紙の切断箇所の一例を示す概略図である。
図11】原料シート及び離間した部品をケースに収容するプロセスを示す概略図である。
図12】ケース用紙の切断箇所の一例を示す概略図である。
図13図12に示す切断箇所で切断されて形成されたカートリッジの概略平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。以下で説明する図面において、同一の又は相当する構成要素には、同一の符号を付して重複した説明を省略する。
【0025】
図1は、本実施形態に係るカートリッジが使用される香味吸引器の概略側面図である。本実施形態に係る香味吸引器100は、カートリッジ10を加熱することで、香味を含むエアロゾルを生成するように構成される。図示のように、香味吸引器100は、ハウジング110と、ハウジング110の内部に配置されるバッテリ140、加熱部150、及び制御回路170を有する。香味吸引器100のハウジング110の加熱部150側の端部は開口しており、カートリッジ10を加熱部150に挿入することができる。
【0026】
バッテリ140は、加熱部150及び制御回路170等に電力を供給するように構成される。例えば、バッテリ140は、リチウムイオン電池である。バッテリ140は、外部電源によって充電可能であってもよい。
【0027】
加熱部150は、カートリッジ10の内部に差し込まれる加熱ブレードを有し得る。即ち、加熱部150は、カートリッジ10を内部から加熱する内部加熱式のヒータであってよい。加熱ブレードは、例えば樹脂等の基板と、当該基板の表面に形成されたヒーティングトラックとを有し、例えば約0.5mmの厚さを有し得る。また、加熱部150は、サセプタを誘導加熱するためのインダクションコイルを有してもよい。サセプタは、香味吸引器100に設けられていてもよいし、カートリッジ10に設けられていてもよい。例えば、香味吸引器100は、カートリッジ10を加熱部150に配置したときにカートリッジ10の内部に挿入されるサセプタを有してもよい。あるいは、カートリッジ10は、インダクションコイルによって誘導加熱される導電性材料を有していてもよい。なお、図1に示す香味吸引器100は、加熱部150と制御回路170との間に、インダクションコイルによって生じる電磁波が制御回路170に到達することを抑制する電磁シールド(図示せず)を有していてもよい。加熱部150は、カートリッジ10を例えば200℃以上350℃以下に加熱するように構成される。
【0028】
制御回路170は、CPU及びメモリ等によって構成され、香味吸引器100の動作を制御する。例えば、制御回路170は、図示しない押しボタンやスライド式スイッチ等の入力装置に対するユーザ操作に応じてカートリッジ10の加熱を開始し、一定時間が経過したらカートリッジ10の加熱を終了する。制御回路170は、ユーザによるパフ動作の回数が一定値を超過した場合に、カートリッジ10の加熱開始から一定時間が経過する前であってもカートリッジ10の加熱を終了してもよい。例えば、パフ動作は、図示しないセンサによって検出される。
【0029】
或いは、制御回路170は、パフ動作の開始に応じてカートリッジ10の加熱を開始し、パフ動作の終了に応じてカートリッジ10の加熱を終了してもよい。制御回路170は、パフ動作の開始から一定時間が経過した場合に、パフ動作の終了前であってもカートリッジ10の加熱を終了してもよい。図示の例では、制御回路170は、バッテリ140と加熱部150との間に配置されており、加熱部150からバッテリ140への熱伝達を抑制する。
【0030】
カートリッジ10は、加熱部150によって加熱されることで、エアロゾル源又は香味源の蒸気及びエアロゾルを発生する。カートリッジ10の内部で発生した蒸気及びエアロゾルは、カートリッジ10を通過することにより冷却されてユーザの口内に到達する。カートリッジ10において発生した蒸気は、カートリッジ10を通過することにより冷却されてエアロゾルに粒子化され得る。本実施形態において、カートリッジ10は、扁平状である。また、カートリッジ10は加熱部150が差し込まれた状態において薄い板状又はカード状である。
【0031】
香味吸引器100は、吸口を有していてもよい。この場合、香味吸引器100は、カートリッジ10を内部に収容するように構成され、カートリッジ10で発生した蒸気又はエアロゾルが吸口を通じてユーザに供給される。
【0032】
次に、カートリッジ10について詳細に説明する。図2は、カートリッジ10の斜視図である。カートリッジ10は、加熱されることでエアロゾルを生成する原料シート30と、原料シート30を内側に収容するケース20と、を有する。図2に示すカートリッジ10は、フィルタを備えず、原料シート30のみを有する。即ち、カートリッジ10の構成が単純であるので、カートリッジ10の連続製造が容易であり、且つカートリッジ10の使用後の廃棄物重量が比較的少なくすることができる。
【0033】
ケース20は、薄型の略筒状を有し、第1壁20aと、第2壁20bと、一対の接続壁20cと、を有する。第1壁20aは、ケース20の最も大きい平面を有する壁である。第2壁20bは、第1壁20aと対向する。一対の接続壁20cは、第1壁20aと第2壁20bとを接続する。具体的には、接続壁20cの一つが、第1壁20aの一端と第2壁20bの一端との間に延在し、接続壁20cの他の一つが、第1壁20aの他端と第2壁20bの他端との間に延在する。したがって、第1壁20a、第2壁20b、及び一対の接続壁20cにより、略筒状のケース20が形成され、ケース20の内部に、後述するようにエアロゾルが通過する1以上の空気流路が設けられる。
【0034】
また、ケース20は、第1開口21と、第1開口21と対向する第2開口22と、第1開口21が設けられる第1端面21aと、第2開口22が設けられる第2端面22aと、を有する。第1開口21及び第2開口22は、第1壁20a、第2壁20b、及び一対の接続壁20cにより画定される。第2開口22には、上述した加熱部150の加熱ブレード又はサセプタが挿入され得る。第1開口21と第2開口22は、略同一の開口形状を有し得る。ケース20の第1端面21a側の内部は空洞になっており、原料シート30から第1開口21に向かうエアロゾルがこの空洞を通過し得る。
【0035】
ケース20の厚さ(第1壁20aの外側面と第2壁20bの外側面との間の長さ)は例えば約1.5mmから約6.0mmであり得る。ケース20の長さ(第1端面21aと第2端面22aの間の長さ)は、例えば50mm以上100mm以下である。ケース20の幅(厚さ方向及び長さ方向に直交する長さ)は、例えば約12mmである。ケース20は、例えば所定の厚紙から形成され得る。具体的には、ケース20は、例えば80g/m以上300g/m以下の坪量を有する紙から形成され得る。
【0036】
ケース20に原料シート30が収納されることにより、ユーザが使用後の高熱の原料シート30を直接触ることなくカートリッジ10を加熱部150から除去することができる。また、原料シート30がケース20に収納されることにより、比較的変形しやすい原料シート30の形状を維持することができ、原料シート30が備えた、後述する第1隙間33、第2隙間34の大きさを一定に保ちやすくなる。さらに、ケース20が紙で形成されることにより、原料シート30から生じた蒸気又はエアロゾルの一部を吸収することができ、香味吸引器100の内部に蒸気又はエアロゾルが凝結することを抑制し得る。
【0037】
ケース20の内面にアルミニウム等の金属箔が設けられてもよい。これにより、加熱部150及び加熱部150によって加熱される原料シート30の熱放射による放熱を抑制し、効率よく原料シート30を加熱することができる。具体的には、ケース20の原料シート30が配置される部分(即ち、加熱部150が位置する部分)には金属箔が設けられず、これより下流側のケース20の内面に金属箔が設けられ得る。これにより、原料シート30で発生した蒸気の冷却、即ちエアロゾル化を促進することができる。なお、原料シート30が配置される部分のケース20の内面にも金属箔が設けられると、原料シート30の熱が金属箔を下流側まで伝達されるので、原料シート30の下流側において蒸気を十分に冷却できなくなる恐れがある。他方、ケース20の原料シート30が配置される部分(即ち、加熱部150が位置する部分)にも金属箔が設けられてもよい。この場合、原料シート30が配置される部分(即ち、加熱部150が位置する部分)から、その下流まで金属箔が連続することで、加熱部150の熱が下流側のケース20の内面に伝達され、ケース20の内面への蒸気又はエアロゾルの凝集を抑制し得る。
【0038】
本実施形態における原料シート30は、複数の折り目を有するシートを含む。図3は、原料シート30の一部の拡大断面図である。図示のように、原料シート30は、基材層31と、原料層32とを有する。本実施形態では、基材層31は、導電性を有する材料を含む導電層31aと、導電層31aに積層される紙層31bと、を有する。具体的には、基材層31は、導電層31aと紙層31bとを貼り合わせて形成される金属貼合紙であり得る。導電性を有する材料としては、例えば、アルミニウム、ステンレス鋼、カーボン、鉄、鉄を含む合金、鉄とニッケルを含む合金、鉄とニッケルとクロムを含む合金、鉄とニッケルとクロムとマンガンを含む合金、鉄とニッケルとクロムとマンガンとケイ素を含む合金等、公知の材料を使用することができる。基材層31が導電層31aを有することにより、加熱部150の熱を効率よく原料層32に伝達することができる。また、基材層31が導電層31aを有することで、導電層31aを誘導加熱用のサセプタとして利用することもできる。図示のように、本実施形態の原料シート30では、基材層31の紙層31b上に原料層32が設けられる。これにより、後述するように接着剤を使用せずに基材層31に原料層32を接着することができる。本実施形態では、基材層31が導電層31aを有するが、これに限らず、基材層31は導電層31aを備えなくてもよい。
【0039】
紙層31bは、例えばパルプ紙などの紙であり得る。また、本実施形態において、紙層31bには、たばこ繊維を含まない、不織布等の繊維層が含まれ得る。紙層31bの厚さは任意であるが、0.03mm以上0.15mm以下であることが好ましい。紙層31bの厚さがこの範囲であれば、原料シート30の強度を確保しながら、香味吸引器100において効率よく原料シート30を加熱することができる。紙層31bの厚さが0.03mm未満であると、原料シート30の強度が低下し、原料シート30が破れやすくなり得る。また、紙層31bの厚さが0.15mm超であると、紙層31bが厚くなりすぎるので、香味吸引器100の加熱部150の熱が紙層31bの加熱に利用され、原料シート30の加熱効率が低下し得る。
【0040】
また、紙層31bの坪量は任意であるが、20g/m以上100g/m以下であることが好ましい。紙層31bの坪量がこの範囲であれば、原料シート30の強度を確保しながら、香味吸引器100において効率よく原料シート30を加熱することができる。紙層31bの坪量が20g/m未満であると、原料シート30の強度が低下し、原料シート30が破れやすくなり得る。また、紙層31bの坪量が100g/m超であると、香味吸引器100のヒータの熱が紙層31bの加熱に利用され、原料シート30の加熱効率が低下し得る。紙層31bの坪量は、30g/m以上50g/m以下であることがより好ましい。
【0041】
導電層31aの厚さは、好ましくは5μm以上30μm以下である。導電層31aの厚さがこの範囲であると、導電材料の使用量を抑えながら適切な熱伝達を発揮することができる。また、香味吸引器100において加熱部150のインダクションコイルによって誘導加熱されるときに適切なサセプタとして機能し得る。さらに、原料シート30の裁断又は曲げの際の抵抗が大きくなりすぎるのが抑制され得る。導電層31aの厚さは、より好ましくは5μm以上15μm以下であり、具体的には10μm程度であり得る。
【0042】
原料層32は、基材層31に対して糊等の接着剤を介して接着されるのではなく、基材層31の紙層31b上に塗布されることで基材層31と一体に形成され得る。原料層32は、基材層31に対して糊等の接着剤を介して接着されてもよいが、喫味と原料シート30の製造工程の簡略化の観点からは、接着剤を介さない接着が好ましい。原料層32は、例えばたばこ(香味源の一例に相当する)と、多価アルコール(エアロゾル源の一例に相当する)等を含み得る。多価アルコールには、グリセリン、プロピレングリコール、ソルビトール、キシリトールおよびエリスリトールが含まれ得る。これらの多価アルコールは、単独で、または2種以上を組み合わせて、原料層32に使用することができる。具体的には、原料層32は、粉状のたばこ及び多価アルコールにバインダを混ぜて、基材層31の紙層31b上に塗布され、その後水分の一部が蒸発されることで形成され得る。バインダとしては、例えば、グアーガム、キサンタンガム、CMC(カルボキシメチルセルロース)、CMC-Na(カルボキシメチルセルロースのナトリウム塩)、プルランおよびヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、メチルセルロース、ヒドロキシルメチルセルロース等を使用することができる。
【0043】
また、原料層32には、パルプが加えられてもよい。パルプは、原料層32の強度を向上させ得る。しかし、原料層32の強度を向上させる必要がないときなどは、原料層32にパルプを加えなくてもよい。パルプを使用しない場合、その分だけ原料層32におけるたばこの割合が増加するので喫味の向上が期待される。
【0044】
バインダは、原料の塗工適正を制御する目的で原料層32に添加され得るが、添加されなくてもよい。原料層32に添加され得るバインダの重量%は、例えば、原料層32の重量に対して、好ましくは0%以上60%以下、より好ましくは0%以上10%以下である。
【0045】
原料層32は、例えば、多価アルコールが5%から40%、たばこが50%から90%、バインダが0%から10%、パルプが0%から10%の配合割合(重量パーセント)を有し得る。また、原料層32には、乳酸、パルミチン酸、又は安息香酸等の酸を加えてもよい。
【0046】
また、原料シート30は、製造上の観点から、3.0N/15mm以上の引張強度を有することが好ましく、より好ましくは、5.0N/15mm以上、さらに好ましくは10N/15mm以上の引張強度を有する。なお、原料シート30の引張強度は、250mm×15mmの試験片に乾燥引張強さ試験(ISO 1924-2)を行うことにより測定され得る。原料シート30が上記の引張強度を有することにより、後述するように原料シート30を製造する際に、原料シート30を容易に折りたたむことができ、且つ原料シート30が破れることを抑制することができる。
【0047】
基材層31が紙層31bを備えていなくとも、原料層32を基材層31の導電層31aに塗工することはできるような原料の種類、配合割合を選択することができる。他方、上記のとおり、基材層31が紙層31bを有することにより、原料層32の基材層31に対する定着性を向上させることができる。具体的には、基材層31が紙層31bを備えることにより、原料層32の基材層31への塗工適正及び接着性が向上し得る。この理由は、紙層31bと原料との親和性が高く、紙層31bの表面の微細な繊維の凹凸と原料とが絡み合うことで、接着性が高くなるからであるものと考えられる。また、紙層31bは、乾燥時に、クッション材のように機能し、原料層32と基材層31とを含む原料シート30の柔軟性を担保することができる。
【0048】
図4は、ケース20に収納された状態の原料シート30の断面の一例を示す図である。図示の例の原料シート30は、3つの折り目F1,F2,F3を有する。具体的には、原料シート30は、原料層32が互いに対向するように折り目F1及び折り目F2に沿って折られ、基材層31が互いに対向するように折り目F3に沿って折られる。これにより、原料シート30は、原料層32同士が対向して形成される第1隙間33と、基材層31同士が対向して形成される第2隙間34とを有する。即ち、原料シート30を折り目F1,F2,F3に沿って折ることにより、基材層31の導電層31aの塑性変形と、紙層31bを折りたたむことによる弾性変形による反発力が相互作用して均衡を保ち、シート同士は完全に密着することなく、第1隙間33及び第2隙間34を形成することができる。なお、基材層31が導電層31a又は紙層31bのみからなる場合であっても、導電層31aの塑性変形による形状を維持する力、又は紙層31bを折りたたむことによる弾性変形による反発力により、シート同士が完全に密着しないように第1隙間33及び第2隙間34を形成することもできる。図示の例では、原料シート30は、一対の第1隙間33を有し、一対の第1隙間33の間に第2隙間34が位置する。これにより、第2隙間34に加熱部150の加熱ブレード又はサセプタを配置して、第2隙間34の両側に位置する原料層32を略均等に加熱することができ、その結果、一対の第1隙間33から生じるエアロゾルを均等化することができる。
【0049】
図5は、ケース20に収納された状態の原料シート30の断面の他の一例を示す図である。図示の例の原料シート30は、3つの折り目F4,F5,F6を有する。具体的には、原料シート30は、原料層32が互いに対向するように折り目F4及び折り目F5に沿って折られ、基材層31が互いに対向するように折り目F6に沿って折られる。図5に示す原料シート30は、図4に示す原料シート30の折り目F3に対して、折り目F6における折りたたむ向きが逆である。これにより、原料シート30は、原料層32同士が対向して形成される第1隙間33と、基材層31同士が対向して形成される第2隙間34とを有する。即ち、原料シート30を折り目F4,F5,F6に沿って折ることにより、シート同士は完全に密着することなく、第1隙間33及び第2隙間34を形成することができる。図示の例では、原料シート30は、一対の第1隙間33を有し、一対の第1隙間33の間に第2隙間34が位置する。これにより、第2隙間34に加熱部150の加熱ブレード又はサセプタを配置して、第2隙間34の両側に位置する原料層32を略均等に加熱することができ、その結果、一対の第1隙間33から生じるエアロゾルを均等化することができる。
【0050】
図4及び図5に示すように、原料シート30は、原料層32同士が対向して形成される第1隙間33を有し得るので、原料層32から生じるエアロゾルが第1隙間33を通過することができる。言い換えれば、第1隙間33は、エアロゾルが通過する空気流路を画定することができる。これにより、原料層32から生じたエアロゾルを下流に向けて効率的にデリバリすることができる。また、原料シート30は、基材層31同士が対向して形成される第2隙間34を有するので、加熱部150の加熱ブレード又はサセプタを第2隙間34に挿入することで、加熱ブレード又はサセプタを原料層32に接触させることなく、原料層32を効率的に加熱することができる。これにより、加熱ブレード又はサセプタが原料層32によって汚れることが抑制され、加熱ブレード又はサセプタのクリーニングの頻度を低下させることができる。
【0051】
原料シート30は、図4及び図5に示した例に限らず、任意の折り目を有することができる。例えば、原料層32同士が対向するように1度だけ原料シート30を折りたたんでもよい。なお、香味吸引器100の加熱部150がインダクションコイルを有する場合には、原料シート30の導電層31aがサセプタの機能を発揮する。即ち、インダクションコイルによって導電層31aが誘導加熱されることにより、原料層32を加熱することができる。この場合、香味吸引器100がサセプタを有していなくてもよい。
【0052】
図6は、第2開口22から見たカートリッジ10の側面図である。図示のように、ケース20の一対の接続壁20cは、第2開口22から見た断面において、弧状、より具体的には円弧状に形成され得る。なお、本明細書において、「弧状」又は「円弧状」とは、実質的な「弧状」又は「円弧状」を含み、接続壁20cが視認し得る程度の角を有している場合も含む。接続壁20cは、その内面、即ちケース20の内側を向く面に、複数のハーフカット又はデボス25を有する。ハーフカット又はデボス25は、ケース20の第1端面21aと第2端面22aとの間を延びる。ハーフカット又はデボス25は、ケース20の内面に切込みを入れたり、内面の一部を切削したり、内面を圧縮したりすることにより形成され得る。また、ハーフカット又はデボス25は、レーザ加工によって形成されてもよい。即ち、ハーフカット又はデボス25は、接続壁20cの内面に形成された切削線又は圧痕線ということもできる。接続壁20cは、ハーフカット又はデボス25に沿って折れ曲がり、その結果、第2開口22から見た断面において、弧状又は円弧状に形成される。
【0053】
図6に示すカートリッジ10によれば、ケース20が複数のハーフカット又はデボス25を有することにより、ケース20がある程度の剛度の材料、例えば厚紙で形成されても、ケース20の接続壁20cを形成するときに、ハーフカット又はデボス25に沿ってケース20の材料を折り曲げやすくなる。その結果、ケース20の接続壁20cを適切に湾曲させることができる。また、ケース20が接続壁20cを有することにより、ケース20の第1壁20aと第2壁20bとが平坦な壁で接続される場合に比べて、ケース20の形状が維持されやすくなる。具体的には、本実施形態のケース20によれば、例えば、第1壁20aに対して傾斜する方向の力がケース20に加わっても、複数のハーフカット又はデボス25が潰れるように変形し、ハーフカット又はデボス25を画定する接続壁20cの内面同士が接触することで互いに反発するので、図6に示すケース20の形状が維持されやすくなる。
【0054】
ケース20の一対の接続壁20cは、それぞれ第2開口22から見た断面において弧状に形成されるので、接続壁20cに加わる応力が分散され、第1壁20aと第2壁20bとを平坦な壁で接続する場合に比べて、ケース20の強度を向上させることができる。また、上述したように、カートリッジ10は、ケース20の内部に空気流路が設けられる。具体的には原料シート30の第1隙間33が空気流路を画定している。このため、ケース20の形状が維持されやすくなることで、ケース20内の空気流路が閉鎖されることを抑制することができる。
【0055】
複数のハーフカット又はデボス25の間隔は、0.5mm以上3.0mm以下であることが好ましく、0.5mm以上1.5mm以下であることがより好ましい。ここで、複数のハーフカット又はデボス25の間隔とは、図6に示す断面において隣接するハーフカット又はデボス25の間の距離をいう。複数のハーフカット又はデボス25の間隔が0.5mm未満であると、当該間隔が短すぎて製造上の困難性が生じ得る。また、複数のハーフカット又はデボス25の間隔が3.0mm超であると、接続壁20cを形成するためにケース20自体のサイズを大きくする必要が生じ、香味吸引器100のカートリッジ10のサイズに適さなくなる可能性がある。また、複数のハーフカット又はデボス25の間隔が1.5mm以下であると、接続壁20cの形状を円弧状に近づけることができ、ケース20に加わる応力を一層適切に分散することができる。したがって、複数のハーフカット又はデボス25の間隔が上記範囲であれば、複数のハーフカット又はデボス25を確実に形成することができ、且つ、カートリッジ10のサイズに適したサイズの接続壁20cを形成することができる。
【0056】
複数のハーフカット又はデボス25の深さは、接続壁20cの厚さの30%以上90%以下であることが好ましく、50%以上80%以下であることがより好ましい。複数のハーフカット又はデボス25の深さが接続壁20cの厚さの30%未満であると、ケース20を形成する材料を湾曲させて折り曲げることが難しく、接続壁20cを適切に形成するのが困難になる場合がある。また、複数のハーフカット又はデボス25の深さが接続壁20cの厚さの90%超であると、ケース20自体の強度が低下しすぎる恐れがある。したがって、複数のハーフカット又はデボス25の深さが上記範囲であれば、接続壁20cを適切に形成することができ、且つケース20自体の強度も維持することができる。
【0057】
図6に示すケース20では、複数のハーフカット又はデボス25が設けられることにより接続壁20cが弧状に形成されるが、これに限られず、接続壁20cは任意の折り目(角部)を有していてもよい。例えば、接続壁20cが第1壁20aと第2壁20bとのそれぞれの境界におけるハーフカット又はデボス25と、その他1つのハーフカット又はデボス25を有することで、ケース20が略六角形の断面を有することもできる。ハーフカット又はデボス25の数を増加させることにより、接続壁20cの断面を弧状に近づけることができる。
【0058】
接続壁20cの内面にハーフカット又はデボス25を形成したときの、ハーフカット又はデボス25を境界として隣接する内壁面同士の角度は、90度超180度未満であることが好ましく、100度以上150度以下であることがより好ましい。例えば、ケース20の断面が四角形である場合には、ハーフカット又はデボス25を境界として隣接する壁面の角度は90度以下になる部分が生じる。ケース20を十分な剛性を有する厚紙で形成したときに、ハーフカット又はデボス25を形成しても、90度以下にケース20を折り曲げることによる厚紙の反発力が強いため、ケース20の形状を維持することが困難である。ケース20の形状を維持できる程度の剛性の低い厚紙でケース20を形成すると、ケース20の強度が低下してしまう。上記角度が100度以上150度以下であれば、接続壁20cの断面形状を実質的に弧状にすることができる。
【0059】
複数のハーフカット又はデボス25は、ケース20の第1端面21aと第2端面22aの間の長さの50%以上に亘って設けられることが好ましい。複数のハーフカット又はデボス25が、ケース20の第1端面21aと第2端面22aの長さの50%未満であると、ケース20を形成する材料を折り曲げる際に、接続壁20cの形成を促進する効果が小さい。したがって、複数のハーフカット又はデボス25の長さが、上記数値以上であれば、複数のハーフカット又はデボス25に沿って、接続壁20cを容易に湾曲させることができる。
【0060】
また、カートリッジ10は、図示のように、複数のハーフカット又はデボス25上に設けられる接着剤44を有してもよい。これにより、接続壁20cの湾曲形状を接着剤44により維持することができるので、ケース20の形状をより強固に維持することができる。また、接着剤44は、図6に示すように、ケース20と原料シート30とを接着するように構成されてもよい。この場合、接着剤44により接続壁20cの湾曲形状を維持するとともに、原料シート30がケース20に対してずれることを抑制することができる。接着剤44としては、例えば、酢酸ビニル樹脂系接着剤、CMC(カルボキシメチルセルロース)接着剤を使用することができる。
【0061】
また、図示のように、ケース20と原料シート30とは、接着剤40により接着され得る。具体的には、ケース20の内面と、原料シート30との少なくとも一部が接着剤40により接着される。これにより、原料シート30の第2隙間34に加熱部150の加熱ブレード又はサセプタを挿入したときに、原料シート30がケース20に対して位置ずれすることが抑制される。接着剤40としては、例えば、酢酸ビニル樹脂系接着剤、CMC(カルボキシメチルセルロース)接着剤を使用することができる。
【0062】
次に、カートリッジ10の製造方法について説明する。図7は、カートリッジ10を製造するプロセスを示す概略図である。まず、ケース20の原料となるケース用紙20´が準備される。図示のように、ケース用紙20´はロール状に巻かれていることが好ましい。これにより、ケース用紙20´の配置スペースを縮小することができ、且つ連続的にカートリッジ10を製造することができる。図示のように、ケース用紙20´は、繰り出しローラ73によって第1方向C1に繰り出される。続いて、原料シート30がケース用紙20´に配置される。図示の例では、原料シート30は、供給ドラム75によって吸着されて保持され、供給ドラム75によってケース用紙20´に配置される。具体的には、供給ドラム75は、ケース用紙20´に、複数の原料シート30を第1方向C1において所定間隔を有するように連続して配置する。ケース用紙20´は、例えばサクションコンベヤに吸着された状態で第1方向C1に搬送され得る。原料シート30は、搬送されているケース用紙20´に配置されることが好ましい。これにより、連続的に原料シート30をケース用紙20´に配置することができるので、カートリッジ10を量産することが可能になる。
【0063】
続いて、ケース用紙20´が折りたたまれる。このとき、図示のように、本実施形態では、ケース用紙20´が折りたたまれることで、原料シート30がケース用紙20´と一緒に折りたたまれる。具体的には、本実施形態では、ケース用紙20´は第1方向C1と直交する方向において第1端部E1と、第1端部E1と反対側の第2端部E2とを有し、ケース用紙20´の第1端部E1がハーフカット又はデボス25に沿って折りたたまれ、そのとき、原料シート30が折り目F3に沿って、ケース用紙20´と一緒に折りたたまれる。その後、ケース用紙20´が原料シート30に巻き付けられる。具体的には、本実施形態では、ケース用紙20´の第2端部E2がハーフカット又はデボス25に沿って折りたたまれて、原料シート30に巻き付けられる。これにより、原料シート30とケース用紙20´とを別々に折りたたんで、原料シート30をケース20に収容する場合に比べて、工数を減らすことができ、カートリッジ10の生産性を向上させることができる。
【0064】
ケース用紙20´の第1端部E1と第2端部E2は、接着剤43によって互いに接着されることが好ましい。具体的には、第1方向C1に沿ってケース用紙20´の第1端部E1上に接着剤43が塗布される。続いて、ケース用紙20´の第2端部E2が原料シート30を包むように折りたたまれ、接着剤43を介してケース用紙20´の第1端部E1と第2端部E2が互いに接着される。接着剤43としては、例えば、酢酸ビニル樹脂系接着剤、CMC(カルボキシメチルセルロース)接着剤を使用することができる。
【0065】
ケース用紙20´が原料シート30に巻き付けられた後、ケース用紙20´は、第1方向C1と交差する面に沿って切断されることが好ましい。これにより、任意の長さのカートリッジ10を形成することができる。具体的には、ケース用紙20´は、第1方向C1と直交する面に沿って切断されることが好ましい。図8は、ケース用紙20´の切断箇所の一例を示す概略図である。図8に示すように、第1方向C1に沿って配置された原料シート30と原料シート30との間には隙間S1が設けられ得る。この場合、例えば、図示しないセンサによる切断箇所の検出結果に基づき、ケース用紙20´は、隙間S1上の切断箇所C2で切断され得る。これにより、所定長さのカートリッジ10が形成される。
【0066】
図7に示すように、原料シート30は、第1端部E3と、第1端部E3と対向する第2端部E4とを有する。原料シート30がケース用紙20´に配置される前に、原料シート30の第1端部E3及び第2端部E4が、原料層32同士が対向するように折りたたまれ得る。続いて、原料シート30がケース用紙20´に配置された後に、原料シート30の基材層31同士が対向するように、ケース用紙20´を折りたたむことで原料シート30とケース用紙20´とが一緒に折りたたまれ得る。これにより、図4又は図5に示した原料シート30が形成され得る。図示の例では、原料シート30は、折り目F1,F2,F3に沿って折りたたまれるので、図4に示した原料シート30が形成される。これに限らず、原料シート30は、ケース用紙20´に配置される前に折りたたまれなくてもよい。このように、図7に示す例では、図4又は図5に示した原料シート30が形成される。このため、基材層31同士が対向する隙間(第2隙間34)に加熱部150のブレード又はサセプタ等を配置して原料シート30を加熱することで、ブレード又はサセプタが原料層32に接触することなく、原料層32を効率的に加熱することができる。これにより、ブレード又はサセプタが原料層32によって汚れることが抑制され、加熱ブレード又はサセプタのクリーニングの頻度を低下させることができる。また、原料層32同士が対向する隙間(第1隙間33)が空気流路を画定するので、原料層32から生じるエアロゾルが当該隙間を通過することができる。これにより、原料層32から生じたエアロゾルを下流に向けて効率的にデリバリすることができる。
【0067】
図7に示すように、原料シート30は、ロール状に巻かれていることが好ましい。これにより、原料シート30の配置スペースを縮小することができ、且つ連続的に原料シート30を供給することができる。図示のように、原料シート30は、繰り出しローラ71によって第1方向C1に繰り出される。図示の例では、ロール状の原料シート30が所定長さに切断され、切断された原料シート30がケース用紙20´に配置される。これにより、ロール状の原料シート30から所定長さの原料シート30を連続的に製造することができるので、原料シート30を連続的にケース用紙20´に配置することができ、カートリッジ10の生産性を向上させることができる。具体的には、ロール状の原料シート30は、繰り出しローラ71によって切断ローラ74に供給されて吸着され、切断ローラ74に設けられたカッタ72によって、第1方向C1と交差する方向に切断される。
【0068】
図7に示すように、ケース用紙20´には、ハーフカット又はデボス25が形成され、このハーフカット又はデボス25に沿ってケース用紙20´が折りたたまれることが好ましい。これにより、ケース用紙20´がある程度の剛度の材料、例えば厚紙で形成されても、ケース20を形成するときに、ハーフカット又はデボス25に沿ってケース20の材料(ケース用紙20´)を折り曲げやすくなる。
【0069】
また、ケース用紙20´に形成されたハーフカット又はデボス25上に原料シート30が配置され、ハーフカット又はデボス25に沿ってケース用紙20´と原料シート30とが一緒に折りたたまれることが好ましい。これにより、折りたたまれる位置がずれることが抑制され、ケース用紙20´と原料シート30を適切な位置において折り曲げることができる。
【0070】
図7に示すように、ケース用紙20´には接着剤40が塗布され得る。この場合、ケース用紙20´に塗布された接着剤40に、基材層31が接触するように、ケース用紙20´に原料シート30が配置されることが好ましい。これにより、原料層32に接着剤40が付着することが抑制され、接着剤40が喫味に与える影響を抑制することができる。
【0071】
以上で説明した例では、カートリッジ10においてケース20には原料シート30のみが収容されていたが、これに限らず、ケース20には、原料シート30に隣接させる部品(例えばフィルタ)が収容されてもよい。図9は、原料シート30及び部品12をケース20に収容するプロセスを示す概略図である。図9に示すように、コンベア260は搬送物を第1方向C1に搬送する。コンベア260の搬送経路上には、図7に示した供給ドラム75と、部品12を供給するための供給ドラム76が配置される。図示の例では、供給ドラム75が供給ドラム76の第1方向C1の上流に位置するが、これに限られない。
【0072】
図9に示すように、供給ドラム75は、コンベア260に、複数の原料シート30を第1方向C1において所定間隔を有するように連続して配置する。続いて、供給ドラム76は、部品12を、コンベア260上の複数の原料シート30の間に配置する。即ち、供給ドラム75及び供給ドラム76は、コンベア260に、第1方向C1において原料シート30と部品12とが隣接するように、複数の原料シート30及び複数の部品12を連続して配置する。なお、単一の原料シート30及び単一の部品12のみがコンベア260に配置されてもよい。
【0073】
図9に示すように、コンベア260に配置された原料シート30と部品12との間には隙間が設けられ得る。そこで、例えば、部品12を第1方向C1と逆方向にスライドさせて、原料シート30と部品12との隙間を小さくすることが好ましい。
【0074】
図9に示すように、コンベア260の下流側には固定台322が配置され、且つ固定台322の上方にラグベルト300と、ラグベルト300を駆動させる一対のローラ305が設けられてもよい。ラグベルト300の固定台322と対向する面は、第1方向C1に移動する。ラグベルト300は、移動方向に沿って複数の凸部300aを有する。ラグベルト300の凸部300aは、コンベア260に配置された部品12と接触する。ラグベルト300の速度は、コンベア260の搬送速度よりも低い。
【0075】
ラグベルト300の速度がコンベア260の搬送速度よりも小さいので、ラグベルト300の凸部300aは、コンベア260に配置された部品12を第1方向C1と逆方向にスライドさせる。その結果、ラグベルト300と接触した部品12と、第1方向C1における後方に位置する原料シート30との隙間が小さくなる。その後、ラグベルト300は、隙間が小さくなった一組の原料シート30及び部品12を、固定台322上をスライドさせて、下流側のケース用紙20´上に搬送する。
【0076】
図9に示すように、固定台322の下流には、ケース用紙20´を繰り出す繰り出しローラ325が配置される。ケース用紙20´は、繰り出しローラ325によって繰り出された後、図示しないコンベアによって第1方向C1に搬送される。繰り出しローラ325の上流側には、ハーフカットローラ327と、コールドグルー供給装置310と、が配置されてもよい。ハーフカットローラ327は、ケース用紙20´の搬送方向に沿って図7に示したハーフカット又はデボス25を形成するように構成され得る。コールドグルー供給装置310は、搬送されているケース用紙20´に、図7に示した接着剤40を塗布する。これにより、原料シート30及び部品12がケース用紙20´に接着され得る。また、繰り出しローラ325の下流側には、コールドグルー供給装置315が配置されてもよい。コールドグルー供給装置315は、ケース用紙20´を折りたたんでケース20を形成するための図7に示した接着剤43をケース用紙20´に塗布し得る。
【0077】
続いて、ケース用紙20´は、第1方向C1と交差する面に沿って、例えば丸ナイフにより切断される。具体的には、例えば、センサによる切断箇所の検出結果に基づき、ケース用紙20´が第1方向C1と直交する面に沿って切断される。図10は、ケース用紙20´の切断箇所の一例を示す概略図である。図10に示すように、第1方向C1に沿って配置された原料シート30と部品12との間には隙間S1が設けられ得る。この場合、ケース用紙20´は、隙間S1上の切断箇所C3で切断され得る。これにより、原料シート30と部品12とを有するカートリッジ10が形成される。
【0078】
また、ケース20には、原料シート30から離間した部品(例えばフィルタ)が収容されてもよい。図11は、原料シート30及び離間した部品12をケース20に収容するプロセスを示す概略図である。図11に示すように、ケース用紙20´は、繰り出しローラ325によって繰り出された後、図示しないコンベアによって第1方向C1に搬送される。図9に示した例と同様に、繰り出しローラ325の上流側には、ハーフカットローラ327と、コールドグルー供給装置310と、が配置されてもよい。第1方向C1に搬送されるケース用紙20´の搬送経路上には、図7に示した供給ドラム75と供給ドラム76が配置される。図示の例では、供給ドラム75が供給ドラム76の第1方向C1の上流に位置するが、これに限られない。
【0079】
図11に示す例では、カートリッジ10で使用される原料シート30及び部品12の2倍の長さの原料シート30及び部品12が、供給ドラム75及び供給ドラム76によりケース用紙20´に配置され得る。図11に示すように、供給ドラム75は、ケース用紙20´上に、複数の原料シート30を第1方向C1において所定間隔を有するように連続して配置する。続いて、供給ドラム76は、部品12を、ケース用紙20´上の複数の原料シート30の間に配置する。即ち、供給ドラム75及び供給ドラム76は、ケース用紙20´に、第1方向C1において原料シート30と部品12とが所定間隔で離間するように、複数の原料シート30及び複数の部品12を連続して配置する。その後、図7に示したプロセスと同様のプロセスでケース用紙20´及び原料シート30が折りたたまれる。
【0080】
続いて、ケース用紙20´は、第1方向C1と交差する面に沿って、例えば丸ナイフにより切断される。具体的には、例えば、センサによる切断箇所の検出結果に基づき、ケース用紙20´が第1方向C1と直交する面に沿って切断される。図12は、ケース用紙20´の切断箇所の一例を示す概略図である。図12に示すように、ケース用紙20´は、原料シート30の第1方向C1の中央に位置する切断箇所C4、及び部品12の第1方向C1の中央に位置する切断箇所C5で切断され得る。
【0081】
図13は、図12に示す切断箇所で切断されて形成されたカートリッジ10の概略平面図である。図13に示すように、ケース20内に、原料シート30と部品12とが離間して配置される。これにより、原料シート30と部品12の間に空洞(冷却部)を有するカートリッジ10が形成される。
【0082】
以上に本発明の実施形態を説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲、及び明細書と図面に記載された技術的思想の範囲内において種々の変形が可能である。なお直接明細書及び図面に記載のない何れの形状や材質であっても、本願発明の作用・効果を奏する以上、本願発明の技術的思想の範囲内である。
【符号の説明】
【0083】
10 :カートリッジ
14 :紙層
20 :ケース
20´ :ケース用紙
25 :ハーフカット又はデボス
30 :原料シート
31 :基材層
31a :導電層
31b :紙層
32 :原料層
40 :接着剤
100 :香味吸引器
C1 :第1方向
E1 :第1端部
E2 :第2端部
E3 :第1端部
E4 :第2端部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13