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特許7312948ATF5ペプチド多様体及びそれらの使用
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-13
(45)【発行日】2023-07-24
(54)【発明の名称】ATF5ペプチド多様体及びそれらの使用
(51)【国際特許分類】
   C07K 14/47 20060101AFI20230714BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20230714BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20230714BHJP
   A61K 38/17 20060101ALI20230714BHJP
   A61P 35/02 20060101ALI20230714BHJP
   C07K 19/00 20060101ALI20230714BHJP
   C12N 15/12 20060101ALN20230714BHJP
   C12N 15/62 20060101ALN20230714BHJP
【FI】
C07K14/47 ZNA
A61P35/00
A61P43/00 105
A61K38/17
A61P35/02
C07K19/00
C12N15/12
C12N15/62 Z
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2021173623
(22)【出願日】2021-10-25
(62)【分割の表示】P 2020557117の分割
【原出願日】2019-01-03
(65)【公開番号】P2022031646
(43)【公開日】2022-02-22
【審査請求日】2021-12-27
(31)【優先権主張番号】62/613,083
(32)【優先日】2018-01-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】520243444
【氏名又は名称】サピエンス・セラピューティクス・インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100157923
【弁理士】
【氏名又は名称】鶴喰 寿孝
(72)【発明者】
【氏名】カッペル,バリー・ジェイ
(72)【発明者】
【氏名】メルトゥカ,ジーン
(72)【発明者】
【氏名】ロトロ,ジミー・アンドリュー
【審査官】上村 直子
(56)【参考文献】
【文献】特表2016-516669(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2005/0164384(US,A1)
【文献】Genes & Development,2002年,Vol.16,pp.1806-1814
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07K 14/00-19/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
GenBank/EMBL/DDBJ/GeneSeq
UniProt/GeneSeq
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
短縮活性化転写因子5(ATF5)ロイシンジッパー領域を含むペプチドであって、
前記短縮ATF5ロイシンジッパー領域が、
(i)LEGEGQGLEARNRELKERAESV(配列番号54);
(ii)LEGEAQGLEARNRELKERAESV(配列番号55);
(iii)LEGECQGLEARNRELKERAEAV(配列番号56);
(iv)LEGECQGLEARLRELKERAESV(配列番号57);
(v)LEGECAGLEARNRELKERAESV(配列番号58);
(vi)LEGRCQGLRAENRELEERAESV(配列番号59);
(vii)LEGRCQGLRAELRELEERAEAV(配列番号60);
(viii)LEGRAQGLRAELRELEERAEAV(配列番号61);および
(ix)LEGRAAGLRAELRELEERAEAV(配列番号64);
からなる群より選択されるアミノ酸配列からなり、
前記ペプチドは 長さが22~60アミノ酸であり、そして強化ロイシンジッパー領域を含まない、
前記ペプチド
【請求項2】
(i)RQIKIWFQNRRMKWKKLEGEGQGLEARNRELKERAESV(配列番号4);
(ii)RQIKIWFQNRRMKWKKLEGEAQGLEARNRELKERAESV(配列番号5);
(iii)RQIKIWFQNRRMKWKKLEGECQGLEARNRELKERAEAV(配列番号6);
(iv)RQIKIWFQNRRMKWKKLEGECQGLEARLRELKERAESV(配列番号7);
(v)RQIKIWFQNRRMKWKKLEGECAGLEARNRELKERAESV(配列番号8);
(vi)RQIKIWFQNRRMKWKKLEGRCQGLRAENRELEERAESV(配列番号9);
(vii)RQIKIWFQNRRMKWKKLEGRCQGLRAELRELEERAEAV(配列番号10);
(viii)RQIKIWFQNRRMKWKKLEGRAQGLRAELRELEERAEAV(配列番号11);および
(ix)RQIKIWFQNRRMKWKKLEGRAAGLRAELRELEERAEAV(配列番号12)
からなる群より選択されるアミノ酸配列からなる、細胞膜透過性ペプチド。
【請求項3】
N末端アセチル基および/またはC末端アミド基を含む、請求項1または2に記載のペプチド。
【請求項4】
請求項1~のいずれか1項に記載のペプチドを含む組成物。
【請求項5】
医薬組成物である、請求項に記載の組成物。
【請求項6】
請求項1~のいずれか1項に記載のペプチドを含むキット。
【請求項7】
新生細胞における細胞毒性の促進に用いるための請求項またはに記載の組成物であって、新生細胞をペプチドと接触させる、前記組成物。
【請求項8】
新生細胞の増殖阻害に用いるための請求項またはに記載の組成物であって、新生細胞をペプチドと接触させる、前記組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2018年1月3日に出願された、米国特許仮出願番号第62/613,083号の優先権の利益を主張する。
配列表
本願は、ASCIIフォーマットで電子的に提出されている配列表を含有し、その全体が参照により本明細書に組み込まれている。2018年12月21日に作成された上記ASCIIのコピーは、Sapience_003_WO1_SL.txtという名前であり、サイズは29,385バイトである。
【背景技術】
【0002】
活性化転写因子5(ATF5)は、塩基性ロイシンジッパータンパク質のATF/CREB(cAMP応答エレメント結合タンパク質)のメンバーである。正常に発達している脳において、ATF5は神経前駆体/神経幹細胞に非常に発現し、これらの場所において、細胞周期離脱を遮断して細胞増殖を促進することにより、神経発生及びグリア発生を阻害する。神経前駆体に、細胞周期離脱、及び、ニューロン、星状細胞、または希突起神経膠のいずれかへの分化をさせるようにするには、ATF5の下方制御が必要である(Greene et al.2009;Sheng et al.2010a;Sheng et al.2010b;Arias et al.2012)。
【0003】
神経系の正常な発達における役割に加えて、ATF5は、膠腫及びその他の腫瘍の生残を促進する、発がん性因子としてもまた現れている。ATF5は、グリア芽腫、乳癌、膵臓癌、肺癌、及び大腸癌を含む様々ながんで非常に発現し、膠腫細胞の生残に不可欠であることが、多数の研究により示されている(Monaco et al.2007;Sheng et al.2010a)。膠腫との関係において、ATF5の過剰発現は、疾患の予後及び生残と逆相関する。即ち、ATF5発現が高い膠腫患者は、ATF5発現が低い患者よりも、著しくひどいアウトカムを有する。
【0004】
がん細胞中では、アポトーシスを誘発する遺伝子は多くの場合、不活性化される、または下方制御される一方で、抗アポトーシス遺伝子は頻繁に活性されるまたは過剰発現する。このパラダイムに一致して、ATF5は、B細胞白血病2(Bcl-2)及び骨髄細胞白血病1(Mcl-1)を含む抗アポトーシスタンパク質の転写を上方制御し、腫瘍細胞の生残を促進する(Sheng et al.,2010b;Chen et al.,2012)。
【発明の概要】
【0005】
本発明の主たる態様のいくつかを以下にまとめる。追加の態様は、本開示の[発明の詳細な説明]、[実施例]、[図面]、及び[特許請求の範囲]の項に記載している。本開示の各項の記載は、他の項とともに読解されるべきであることを意図する。更に、本開示の各項に記載される様々な実施形態は、様々な異なる方法で組み合わせることが可能であり、そのような組み合わせは全て、本発明の範囲内に収まることと意図される。
【0006】
したがって、本開示は、所望により、改変強化ロイシンジッパー配列が存在しない、ATF5ロイシンジッパードメインを含むATF5のペプチド誘導体、ATF5ペプチドを含む組成物及びキット、ならびに、ATF5ペプチドを用いる、新生細胞における細胞毒性の誘発方法、及び/または新生細胞の増殖の阻害方法を提供する。特に、本開示は、ST-3ロイシンジッパー配列(配列番号53)を含むATF5ペプチドの多様体を提供し
、これらの多様体は、非保存的アミノ酸置換を含むことができる。本発明に先立って、そのような置換が、ST-3ロイシンジッパー配列(配列番号53)を含むATF5ペプチドと比較して、同様または優れた細胞毒性活性を有する分子をもたらすことを予想することはできなかった。いくつかの実施形態では、本開示は、細胞膜透過性ATF5ペプチドST-3の多様体を提供し、これらの多様体は、ST-3と比較して、同様または優れた細胞毒性活性を有する。
【0007】
一態様では、本発明は、短縮ATF5ロイシンジッパー領域を含むATF5ペプチドであって、短縮ATF5ロイシンジッパー領域が、アミノ酸配列LEGECQGLEARNRELKERAESV(配列番号53)の多様体を含み、多様体が、配列番号53の1つ以上の位置にて、以下のとおり:(i)E4が正電荷を帯びる残基で置換されている;(ii)C5が無極性残基で置換されている;(iii)Q6がアラニンで置換されている;(iv)E9が正電荷を帯びる残基で置換されている;(v)R11が負電荷を帯びる残基で置換されている;(vi)N12が無極性残基で置換されている;(vii)K16が負電荷を帯びる残基で置換されている;(viii)S21がアラニンで置換されているように改変されている、ATF5ペプチドを提供する。
【0008】
別の態様においては、本発明は、短縮ATF5ロイシンジッパー領域を含むATF5ペプチドであって、短縮ATF5ロイシンジッパー領域が、LEGEGQGLEARNRELKERAESV(配列番号54)、LEGEAQGLEARNRELKERAESV(配列番号55)、LEGECQGLEARNRELKERAEAV(配列番号56)、LEGECQGLEARLRELKERAESV(配列番号57)、LEGECAGLEARNRELKERAESV(配列番号58)、LEGRCQGLRAENRELEERAESV(配列番号59)、LEGRCQGLRAELRELEERAEAV(配列番号60)、及びLEGRAQGLRAELRELEERAEAV(配列番号61)からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む、ATF5ペプチドを提供する。
【0009】
一実施形態では、ATF5ペプチドは、細胞膜透過性領域を更に含み、ATF5ペプチドが細胞膜透過性ペプチドとなる。いくつかの実施形態では、細胞膜透過性領域は、RQIKIWFQNRRMKWKK(配列番号25)、RQLKLWFQNRRMKWKK(配列番号26)、YGRKKRRQRRR(配列番号40)、及びYGRKKRRQRR(配列番号41)からなる群から選択されるアミノ酸配列を有する。
【0010】
本発明の更なる態様は、アミノ酸配列RQIKIWFQNRRMKWKKLEGECQGLEARNRELKERAESV(配列番号3)を含む多様体を含む細胞膜透過性ATF5ペプチドであって、多様体が、(i)C21G(配列番号4);(ii)C21A(配列番号5);(iii)Q22A(配列番号8);(iv)E20R、E25R、R27E、及びK32E(配列番号9);(v)N28L(配列番号7);(vi)S37A(配列番号6);(vii)E20R、E25R、R27E、N28L、K32E、及びS37A(配列番号10);ならびに、(viii)E20R、C21A、E25R、R27E、N28L、K32E、及びS37A(配列番号11)からなる群から選択される、配列番号3の位置にて改変されている、細胞膜透過性ATF5ペプチドを含む。
【0011】
特定の実施形態において、ATF5ペプチドは、アミノ酸逆配列に、本発明のATF5ペプチドのL-アミノ酸配列に対応するD-アミノ酸を含む。一実施形態では、レトロ逆転ペプチドの短縮ATF5ロイシンジッパー領域は、D-アミノ酸配列VAEAREELERLEARLGQARGEL(配列番号65)を有する。特定の実施形態では、レトロ逆転ペプチドは、D-アミノ酸配列VAEAREELERLEARLGQARGELKKWKMRRNQFWLKLQR(配列番号14)を含む細胞膜透過性ATF5ペプチドである。
【0012】
いくつかの実施形態では、本発明のATF5ペプチドは、延長ロイシンジッパー領域を含まない。
いくつかの実施形態では、本発明のATF5ペプチドは、N末端アセチル基、及び/またはC末端アミド基を含む。
【0013】
本発明のATF5ペプチドを含む組成物もまた提供する。いくつかの実施形態では、組成物は医薬組成物である。本発明のATF5ペプチドを含むキット、及び、本発明のATF5ペプチドをコードする核酸分子を更に提供する。
【0014】
本発明は、新生細胞における細胞毒性の促進に用いるための、本発明のATF5ペプチドを提供する。本発明は更に、新生細胞の増殖の阻害に用いるための、本発明のATF5ペプチドを提供する。本発明は更に、新生細胞における細胞毒性の促進方法であって、新生細胞を本発明のATF5ペプチドと接触させることを含む方法を提供する。本発明は更に、新生細胞における増殖の阻害方法であって、新生細胞を本発明のATF5ペプチドと接触させることを含む方法を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】Aは、ATF-5ペプチドNTAzip-ATF5のアミノ酸配列(配列番号1)を示す。Bは、ATF-5ペプチドST-2のアミノ酸配列(配列番号2)を示す。Cは、ATF-5ペプチドST-3のアミノ酸配列(配列番号3)を示す。延長ロイシンジッパードメインには下線を引き、ペネトラチン細胞膜透過性ドメインは斜体字にし、ATF-5ロイシンジッパードメインは太字にしている。
図2】1つのシステインが置換されているST-3多様体のインビトロ活性を示す。
図3】1つのアミノ酸置換がなされているST-3多様体のインビトロ活性を示す。
図4】複数のアミノ酸置換がなされているST-3多様体のインビトロ活性を示す。
図5】ST-13、ST-11のレトロ逆転版、ST-3多様体のインビトロ活性を示す。
図6A】HL60ヒト前骨髄球性白血病細胞(PML)における、ST-13対ST-3のインビトロ活性を示す。ST-3及びST-13に対する、各細胞型におけるEC50値はそれぞれ、19.0μM及び4.8μMであった。
図6B】急性骨髄性白血病細胞(AML14)における、ST-13対ST-3のインビトロ活性を示す。ST-3及びST-13に対する、各細胞型におけるEC50値はそれぞれ、29.6μM及び<1μMであった。
図6C】急性骨髄性白血病細胞(SET2)における、ST-13対ST-3のインビトロ活性を示す。ST-3及びST-13に対する、各細胞型におけるEC50値はそれぞれ、98.2μM及び17.7μMであった。
図6D】黒色腫細胞(A375)における、ST-13対ST-3のインビトロ活性を示す。ST-3及びST-13に対する、各細胞型におけるEC50値はそれぞれ、21.8μM及び1.4μMであった。
図6E】乳癌細胞(MCF7)における、ST-13対ST-3のインビトロ活性を示す。ST-3及びST-13に対する、各細胞型におけるEC50値はそれぞれ、52.9μM及び<1μMであった。
図7A】HL60ヒト前骨髄球性白血病細胞(PML)における、ST-14のインビトロ活性を示す。ST-2及びST-14に対するEC50値はそれぞれ、>300μM及び<5μMであった。
図7B】急性骨髄性白血病細胞(AML14)における、ST-14のインビトロ活性を示す。
図7C】グリア芽腫細胞(U251)における、ST-14のインビトロ活性を示す。
図7D】黒色腫細胞(A375)における、ST-14のインビトロ活性を示す。
図7E】乳癌細胞(MCF7)における、ST-14のインビトロ活性を示す。
図8A】ST-14での治療により、Mcl-1、Bcl-2、BIRC5(スルビビン)、及びATF5の発現が下方制御されることを示す。逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(RT-PCR)により、RNAの発現を測定した。5μMのST-14で治療したHL60細胞における発現レベルを、治療後4時間におけるβ-アクチン発現に対して示す。
図8B】ST-14での治療により、Mcl-1、Bcl-2、BIRC5(スルビビン)、及びATF5の発現が下方制御されることを示す。逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(RT-PCR)により、RNAの発現を測定した。5μMのST-14で治療したHL60細胞における発現レベルを、治療後24時間におけるβ-アクチン発現に対して示す。
図8C】ST-14での治療により、Mcl-1、Bcl-2、BIRC5(スルビビン)、及びATF5の発現が下方制御されることを示す。逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(RT-PCR)により、RNAの発現を測定した。0、20、または40μMのST-14で治療したU251細胞における発現レベルを、治療後4時間におけるβ-アクチン発現に対して示す。
図8D】ST-14での治療により、Mcl-1、Bcl-2、BIRC5(スルビビン)、及びATF5の発現が下方制御されることを示す。逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(RT-PCR)により、RNAの発現を測定した。0、20、または40μMのST-14で治療したHL60細胞における発現レベルを、治療後24時間におけるβ-アクチン発現に対して示す。
図9】HL60の皮下腫瘍モデルにおける、ST-3多様体の抗腫瘍活性を示す。Nu/Jマウスを、25mg/kgのBID-IPで治療した(n=1群あたり6~7匹)。
図10A】U251の皮下腫瘍モデルにおける、ST-14の抗腫瘍活性を示す。NOD/SCIDマウスを、1週間あたり50mg/kgのSCで、3週間治療した。平均の開始腫瘍体積は、約240mmであった。平均腫瘍体積を示す。データ点は、平均±SEMを表す;p<0.0001、n=各時点における、群あたりの生残動物数。
図10B】U251の皮下腫瘍モデルにおける、ST-14の抗腫瘍活性を示す。NOD/SCIDマウスを、1週間あたり50mg/kgのSCで、3週間治療した。平均の開始腫瘍体積は、約240mmであった。生残率を示す。データ点は、平均±SEMを表す;p<0.0001、n=各時点における、群あたりの生残動物数。
図10C】U251の皮下腫瘍モデルにおける、ST-14の抗腫瘍活性を示す。NOD/SCIDマウスを、1週間あたり50mg/kgのSCで、3週間治療した。平均の開始腫瘍体積は、約240mmであった。個別の腫瘍体積を示す。データ点は、平均±SEMを表す;p<0.0001、n=各時点における、群あたりの生残動物数。
図11A】ST-14の早期または遅延投与は、MCF7乳癌細胞における有意な抗腫瘍活性を有することを示す。腫瘍播種の2日後に開始する3週間の間、1週間あたり25mg/kgのSCで3回、Nu/Jマウスを治療した。平均の開始腫瘍体積は、約280~330mmであった。播種:ビヒクル群においては、2×10細胞;ST-14群においては、2×10細胞。データ点は平均±SEMを表す;p<0.0001。
図11B】ST-14の早期または遅延投与は、MCF7乳癌細胞における有意な抗腫瘍活性を有することを示す。腫瘍播種の59日後に開始する3週間の間、1週間あたり25mg/kgのSCで3回、Nu/Jマウスを治療した。平均の開始腫瘍体積は、約280~330mmであった。播種:ビヒクル群においては、2×10細胞;ST-14群においては、5×10細胞。データ点は平均±SEMを表す;p<0.0001。
図12】HL60皮下腫瘍モデルにおける、ST-14の抗腫瘍活性を示す。Nu/Jマウスを、1週間あたり20mg/kgのSCで、3週間治療した。平均の開始腫瘍体積は、約220mmであった。データ点は平均±SEMを表す;p<0.05。
図13】A375皮下腫瘍モデルにおける、ST-14の抗腫瘍活性を示す。NOD/SCIDマウスを、1日2回、25mg/kgのSCで、3週間治療した。平均の開始腫瘍体積は、約250~344mmであった。データ点は平均±SEMを表す;p=0.002。
【発明の詳細な説明】
【0016】
本発明の実践では、特に断りのない限り、当業者の範囲内である、薬学、製剤科学、タンパク質化学、細胞生物学、細胞培養、分子生物学、微生物学、組み換えDNA、及び免疫学の従来の技術を用いる。
【0017】
本発明をより速やかに理解可能にするために、特定の用語をまず定義する。更なる定義は、本開示を通して説明する。別段定めがない限り、本明細書で使用する全ての技術及び科学用語は、本発明が関係する当業者により一般に理解されるのと同じ意味を有する。
【0018】
本明細書において提供するあらゆる表題は、本発明の種々の態様または実施形態の限定ではなく、これらは、明細書全体を参照することにより有することができる。したがって、以下で速やかに定義される用語は、明細書全体を参照することにより、一層完全に定義される。
【0019】
本開示に引用される参照文献は全て、その全体を本明細書に援用するものである。更に、本明細書で引用または言及されるあらゆる製品に関する、あらゆるメーカーの指示またはカタログは、参照により組み込まれる。本テキストに参照により組み込まれている文書、またはそれらの中にあらゆる教示を、本発明の実践において使用することができる。本テキストに参照により組み込まれている文書は、先行技術であるとは認められない。
I.定義
本開示における専門語または用語は、説明のためのものであり、限定を行うものではなく、本明細書の用語または専門語は、教示及び案内の見地から、当業者により解釈可能なものである。
【0020】
本明細書及び添付の特許請求の範囲において使用されるとき、単数形「a」、「an」、及び「the」は、文脈で明確に別様が規定されない限り、複数への言及を含む。用語「a」(または「an」)、ならびに用語「1つ以上の」及び「少なくとも1つの」は、同じ意味で用いることができる。
【0021】
更に、「及び/または」は、別の構成成分または特徴を含む、または含まない、2つの具体的な特徴または構成成分のそれぞれの、具体的な開示として解釈される。したがって、「A及び/またはB」などの、フレーズで用いられる場合の用語「及び/または」は、A及びB、AまたはB、A(のみ)、及びB(のみ)を含むことを目的としている。同様に、「A、B、及び/またはC」などのフレーズで用いられる場合の用語「及び/または」は、A、B、及びC;A、B、またはC;AまたはB;AまたはC;BまたはC;A及びB;A及びC;B及びC;A(のみ);B(のみ);及びC(のみ)を含むことが意図される。
【0022】
言語「~を含む」と共に実施形態が説明されている場合はいつでも、「~からなる」及び/または「~から本質的になる」の点で説明される別様の類似の実施形態が含まれる。
単位、接頭辞、及び記号は、国際単位系(SI)が認可する形態で表される。数値範囲
は、その範囲を画定する数を含み、本明細書において提供されるあらゆる個別の値は、本明細書において提供される他の個別の値を含む範囲の終点として機能することができる。例えば、1、2、3、8、9、及び10などの値の集合は、1~10、1~8、3~9などの数字範囲の開示でもある。同様に、開示された範囲は、その範囲により包含される各個別の値の開示である。例えば、5~10の定められた範囲は、5、6、7、8、9、及び10の開示でもある。
【0023】
用語「ポリペプチド」、「ペプチド」、及び「タンパク質」は、本明細書では同じ意味で用いられ、任意の長さのアミノ酸のポリマー、及びそれらの塩を意味する。ポリマーは直鎖または分枝鎖であることができ、改変アミノ酸を含むことができ、非アミノ酸により中断されることができる。例えば、本明細書で説明する、一般的でない、または非天然のアミノ酸の略称に関して、別様に示される場合を除き、当該技術分野で使用される3文字及び1文字の略称を本明細書で使用して、アミノ酸残基を表す。「D」が前に付いている、または小文字である場合を除いて、アミノ酸はL-アミノ酸である。ひとまとまり、またはひと続きのアミノ酸の略称を使用して、ペプチドを表す。具体的に示される場合を除いて、ペプチドは左のN末端と共に表され、配列は、N末端からC末端に向かって記述される。
【0024】
用語「ポリペプチド」、「ペプチド」、及び「タンパク質」は、自然に改変された、または介入;例えば、ジスルフィド結合形成、ラクタムブリッジ形成、グリコシル化、脂質化、アセチル化、アシル化、アミド化、リン酸化、または、他の操作もしくは改変、例えば、標識構成成分とのコンジュゲーション、または保護基の付加により改変されたアミノ酸ポリマーもまた包含する。この定義には例えば、アミノ酸の1つ以上の類似体(例えば、アミノ-イソ酪酸(Aib)、非天然アミノ酸など)を含有するポリペプチド、及び、D-アミノ酸、加えて当該技術分野において公知の他の改変を含む、またはそれらからなるポリペプチドもまた含まれる。特定の実施形態において、ポリペプチドは一本鎖、共有二量体、または、非共有会合鎖として生じることができる。ポリペプチドは環形態であることもまた可能である。環式ポリペプチドは例えば、遊離アミノ及び遊離カルボキシル基をブリッジングすることにより調製することができる。環式化合物の形成は、必要な場合は好適な保護を行い、脱水剤により処理することで達成することができる。開鎖(直鎖形態)から環形態への反応には、分子内環化を伴うことができる。環式ポリペプチドは、他の当該技術分野において既知の方法、例えば、1つ以上のラクタムブリッジ、水素結合サロゲート(Patgiri et al.2008)、炭化水素ステープル(Schafmeister et al.2000)、トリアゾールステープル(Le Chevalier Isaad et al.2009)、またはジスルフィドブリッジ(Wang et al.2006)を使用することによってもまた、調製することができる。ブリッジまたはステープルは例えば、3、4、7、または8アミノ酸離れて離間することができる。
【0025】
用語「多様体」とは、参照配列と比較して、1つ以上のアミノ酸置換基、欠失、及び/または挿入を有するペプチドを意味する。欠失及び挿入は、内部における、及び/または1つ以上の末端におけるものであることができる。置換は、1つ以上のアミノ酸を、同様もしくは相同のアミノ酸(複数可)、または異なるアミノ酸(複数可)で置き換えることを含むことができる。例えば、いくつかの多様体は、1つ以上のアミノ酸の位置におけるアラニン置換を含む。他の置換としては、タンパク質の全体の実効電荷、極性、または疎水性にほとんど、または全く影響を有しない保存的置換が挙げられる。いくつかの多様体は、アミノ酸の電荷または極性を変える、非保存的置換を含む。置換は、アミノ酸のL形態またはD形態のいずれかを伴うものであることができる。
【0026】
「レトロ逆転」ペプチドは、参照L-アミノ酸に対して、逆転したアミノ酸配列を有し
、(アミノ酸サブユニットのα中心キラリティを反転させる)D-アミノ酸で作製され、元のL-アミノ酸ペプチドの側鎖トポロジーに類似の、側鎖トポロジーを維持するのに役立つ。
【0027】
本明細書で使用する場合、用語「保存的置換」とは、1つ以上のアミノ酸が別の、生物学的に類似の残基で置き換えられていることを意味する。例としては、類似の特徴を有するアミノ酸残基、例えば小型アミノ酸、酸性アミノ酸、極性アミノ酸、塩基性アミノ酸、疎水性アミノ酸、及び芳香族アミノ酸で置き換えることが挙げられる。ペプチド及びタンパク質における、表現型的にサイレントな置換に関する更なる情報については、例えば、Bowie et.al.,Science 247:1306-1310(1990)を参照のこと。以下のスキームにおいて、アミノ酸の保存的置換を、物理化学的性質により区分する;I:中性及び/または親水性、II:酸性及びアミド、III:塩基性、IV:疎水性、V:芳香族、嵩高いアミノ酸。
【0028】
【表1】
【0029】
以下のスキームにおいて、アミノ酸の保存的置換を、物理化学的性質により区分する;VI:中性または疎水性、VII:酸性、VIII:塩基性、IX:極性、X:芳香族。
【0030】
【表2】
【0031】
タンパク質の機能に影響を与えない保存的ヌクレオチド及びアミノ酸置換を識別する方法は、当該技術分野において既知である(例えば、Brummell et al.,Biochem.32:1180-1187(1993);Kobayashi et al.,Protein Eng.12(10):879-884(1999);及びBurks et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.94:412-417(1997)を参照のこと)。
【0032】
2つ以上の核酸またはペプチドの関係における、用語「同一の」またはパーセント「同一性」とは、配列同一性の一部としてのあらゆる保存的アミノ酸置換を考慮せずに、最大に対応するように比較及びアライン(必要であればギャップを導入する)したときに、同じである2つ以上の配列もしくはサブ配列、または、特定の割合で、同じであるヌクレオチドもしくはアミノ酸残基を有することを意味する。パーセント同一性は、配列比較ソフ
トウェアもしくはアルゴリズムを使用して、または目視検査により、測定することができる。アミノ酸またはヌクレオチド配列のアラインメントを得るために使用可能な様々なアルゴリズム及びソフトウェアは、当技術分野において既知である。
【0033】
配列アラインメントアルゴリズムの1つの非限定例は、Karlin et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.,90:5873-5877(1993)において改変されているように、Karlin et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.,87:2264-2268(1990)に記載されており、NBLAST及びXBLASTプログラムに組み込まれている(Altschul et al.,Nucleic Acids Res.,25:3389-3402(1991))。特定の実施形態において、Gapped BLASTを、Altschul et al.,Nucleic Acids Res.25:3389-3402(1997)に記載されているとおりに使用することができる。BLAST-2、WU-BLAST-2(Altschul et al.,Methods in Enzymology,266:460-480(1996))、ALIGN、ALIGN-2(Genentech,South San Francisco,California)、またはMegalign(DNASTAR)は、配列を揃えるのに使用可能な、一般に入手可能な更なるソフトウェアプログラムである。特定の実施形態において、2つのヌクレオチド配列間のパーセント同一性は、(例えば、NWSgapdna.CMPマトリックス、ならびに40、50、60、70、または90のギャップ重み、及び1、2、3、4、5、または6の長さ重みを使用して)GCGソフトウェアパッケージのGAPプログラムを使用して、決定される。特定の代替実施形態において、Needleman及びWunschのアルゴリズム(J.Mol.Biol.(48):444-453(1970))を組み込む、GCGソフトウェアパッケージでのGAPプログラムを使用して、(例えば、BLOSUM
62マトリックスまたはPAM250マトリックスのいずれか、ならびに、16、14、12、10、8、6、または4のギャップ重み、及び1、2、3、4、5の長さ重みを使用して)2つのアミノ酸配列間でのパーセント同一性を測定することができる。あるいは、特定の実施形態において、ヌクレオチドまたはアミノ酸配列間のパーセント同一性は、Myers及びMillerのアルゴリズム(CABIOS 4:11-17(1989))を使用して測定する。例えば、ALIGNプログラム(バージョン2.0)を使用して、かつ、残基表を含むPAM120、12のギャップ長ペナルティ、及び4のギャップペナルティを使用して、パーセント同一性を測定することができる。当業者は、特定のアラインメントソフトウェアにより、最大アラインメントに対する適切なパラメーターを測定することができる。特定の実施形態において、アラインメントソフトウェアのデフォルトパラメーターを使用する。同一性を計算するための他の方策としては、Computational Molecular Biology(Lesk ed.,1988);Biocomputing:Informatics and Genome Projects(Smith ed.,1993);Computer Analysis of Sequence Data,Part 1(Griffin and Griffin eds.,1994);Sequence Analysis in Molecular Biology(G.von Heinje,1987);Sequence Analysis Primer(Gribskov et al.eds.,1991);及びCarillo et al.,SIAM J.Applied Math.,48:1073(1988)に記載される方法が挙げられる。
【0034】
本明細書で使用する場合、「ポリヌクレオチド」は、1つ以上の「核酸」、「核酸分子」、または「核酸配列」を含むことができ、あらゆる長さのヌクレオチドのポリマーを意味し、DNA及びRNAを含む。ポリヌクレオチドは、デオキシリボヌクレオチド、リボヌクレオチド、修飾されたヌクレオチドもしくは塩基、及び/またはそれらの類似体、あるいは、DNAまたはRNAポリメラーゼにより、ポリマーに組み込むことができる任意
の基質であることができる。ポリヌクレオチドは、メチル化ヌクレオチド及びそれらの類似体などの修飾ヌクレオチドを含むことができる。前述の説明は、RNA及びDNAを含む、本明細書で言及する全てのポリヌクレオチドに適用される。
【0035】
「単離された」分子とは、精製されているものを含む、自然では見られない形態の分子である。
「標識」は、「標識された」分子を生成するために、分子に直接的または間接的にコンジュゲートできる検出可能な化合物である。標識は、それ自体が検出可能であることができる(例えば、放射性同位体標識もしくは蛍光標識)、または、例えば、検出可能な基質化合物もしくは組成物(例えば酵素標識)の、触媒による化学変異により、もしくは、間接検出の他の方法(例えばビオチン化)により、間接的に検出することができる。
【0036】
「結合親和性」とは一般に、分子の1つの結合部位とその結合パートナー(例えば、受容体とそのリガンド、抗体とその抗原、二量体を形成する2つの単量体など)の、非共有相互作用の合計の強さを意味する。別段の定めがない限り、本発明で使用する場合、「結合親和性」とは、結合ペアの要素間の1:1の相互作用を反映する固有の結合親和性を意味する。分子XのそのパートナーYに対する親和性は一般に、解離定数(K)で表される。親和性は、本明細書に開示されるものを含む、当該技術分野において既知の一般的な方法により測定可能である。低親和性結合パートナーは、一般的にゆっくりと結合し、速やかに解離する傾向にあるが、高親和性結合パートナーは、一般的により素早く結合し、長時間、結合を持続している傾向にある。
【0037】
分子の、その結合パートナーに対する親和性または結合活性は、当該技術分野において公知の任意の好適な方法、例えば、フローサイトメトリー、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)、またはラジオイムノアッセイ(RIA)、またはキネティクス(例えばKINEXA(登録商標)、もしくはBIACORE(商標)、もしくはOCTET(登録商標)分析)を使用して、実験により測定することができる。直接結合アッセイ、及び競合結合アッセイフォーマットを速やかに用いることができる(例えば、Berzofsky et al.,“Antibody-Antigen Interactions,”in Fundamental Immunology,Paul,W.E.,ed.,Raven Press:New York,N.Y.(1984);Kuby,Immunology,W.H.Freeman and Company:New York,N.Y.(1992)を参照のこと)。異なる条件(例えば、塩濃度、pH、温度)下にて測定した場合、特定の結合ペアの相互作用について測定した親和性は、変化する可能性がある。したがって、親和性、及び他の結合パラメーター(例えば、KまたはKd、Kon、Koff)の測定は、当技術分野において既知のとおり、結合パートナーの標準化した溶液、及び標準化した緩衝液を用いて作製される。
【0038】
「活性剤」とは、生物活性を得ることを意図する成分である。活性剤は、1つ以上の他の成分と会合することができる。ペプチドである活性剤はまた、「活性ペプチド」と呼ぶことができる。
【0039】
「有効量」の活性剤とは、述べた特定の目的を実行するのに十分な量である。
用語「医薬組成物」とは、活性成分の生物学的活性を効果的にすることができる形態であり、その組成物が投与されるであろう対象に、許容できない程の毒性である更なる成分を含まない調製物を意味する。このような組成物は滅菌されていることが可能であり、生理食塩水などの、製薬上許容できる担体を含むことができる。好適な医薬組成物は、緩衝液(例えばアセテート、ホスフェート、もしくはシトレート緩衝液)、界面活性剤(例えばポリソルベート)、安定化剤(例えばポリオールもしくはアミノ酸)、防腐剤(例えば安息香酸ナトリウム)、及び/または、その他の従来の可溶化剤もしくは分散剤の1つ以
上を含むことができる。
【0040】
「対象」または「個体」または「動物」または「患者」または「哺乳類」とは、診断、予後、または治療が所望される任意の対象、特に哺乳類対象である。哺乳類対象としては、例えば、ヒト、非ヒト霊長類、イヌ、ネコ、ブタ、ウシ、ウマ、ラット及びマウスを含む齧歯類、ウサギなどを含む、ヒト、家庭用動物、家畜、スポーツ用動物、及び実験動物が挙げられる。
【0041】
用語「阻害する」、「遮断する」、及び「抑制する」は同じ意味で用いられ、発生または活性の完全な遮断を含む、発生または活性における、統計的に有意なあらゆる低下を意味する。例えば、「阻害」とは、活性または発生における、約10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、または100%の低下を意味することができる。「阻害剤」とは、プロセス、経路、または分子の発生または活性において、統計的に有意な低下を生み出す分子、因子、または物質である。
【0042】
「新生細胞」または「新生物」は通常、なんらかの形態の変異/形質転換を受けており、同じタイプの通常の細胞または組織と比較して、異常な増殖がもたらされる。新生物は、形態的な不規則性、同様に、病理学的な増殖を含む。新生細胞は良性または悪性であることができる。悪性新生物、すなわち、がんは、細胞の分化及び配置の喪失を示し、浸潤及び転移の性質を有するという点で、良性と区別される。
【0043】
「充実性腫瘍」とは、新生細胞の塊である。「液性腫瘍」または「血液学的悪性」とは、骨髄またはリンパ系系統の血液癌である。
II.ATF5ペプチド及び組成物
ATF5ペプチド
ATF5は、N末端酸性活性化ドメイン、及びC末端塩基性ロイシンジッパー(bZIP)ドメインを有する、282アミノ酸の真核細胞転写因子である。bZIPドメインは、DNA結合領域及びロイシンジッパー領域を含有する。ロイシンジッパーは、二量体化ドメインにおいて、通常、7つのアミノ酸毎にロイシンを有する、一般構造モチーフである。bZIP転写因子は、ロイシンジッパーを介してホモ及び/またはヘテロ二量体化し、DNAに特異的に結合する。野生型ヒト、ラット、及びマウスATF5は、それぞれ、NCBI寄託番号NP_001180575、NP_758839、及びNP_109618に説明されているアミノ酸配列を有する。
【0044】
NTAzip-ATF5(図1A)は、ATF5のN末端活性化ドメインが欠失し、DNA結合ドメインが、改変強化ロイシンジッパー、即ち、7つの残基毎に、ロイシンを有する7塩基の繰り返しを含有する、両親媒性の酸性α-ヘリックス配列で置き換えられている、ATF5ペプチドであり、野生型のATF5ロイシンジッパー領域に延びる(Angelastro et al.2003)。細胞膜透過性のドミナントネガティブATF5(CP-d/n-ATF5)分子は、NTAzip-ATF5の改善版であり、(野生型と比較して)延びたロイシンジッパー配列と共に、細胞膜透過性ドメイン、及び短縮ATF5ロイシンジッパー配列を含有する(US2016/0046686;Karpel-Massler et al.2016)。CP-d/n ATF5分子の例を、図1Bに示す。本明細書で使用する場合、用語「延びたロイシンジッパー」、「ロイシンジッパー延長」、及び「強化ロイシンジッパー」とは、1~4つのロイシン7塩基、即ちLeu-(X)(配列番号52)(この配列は野生型のATF5ロイシンジッパー配列ではない)を有するペプチドを意味する。
【0045】
ST-3(図1C)は、ロイシンジッパー延長を欠くCP-d/n-ATF5分子の多様体であり、新生細胞にて細胞死を誘発する。ドミナントネガティブbZIP阻害剤の安
定性及び阻害活性のために、強化ロイシンジッパー領域が必要とされることが、以前の研究で示された(Krylov et al.1995;Olive et al.1997;Moll et al.2000;Acharya et al.2006)。それ故、延長ロイシンジッパー領域の不存在下において、ST-3が、新生細胞を特異的に標的にして殺傷する能力を保持しているという発見は、予想されなかった。
【0046】
ST-3ロイシンジッパー配列(配列番号53)を含むATF5ペプチドの、非保存的多様体は、新生細胞において細胞死を誘発することを、本発明者らは発見した。本発明のATF5由来のペプチドが、ST-3ロイシンジッパー領域に対する複数の非保存的アミノ酸置換を有する新生細胞を特異的に標的にして殺傷する能力を保持しているという発見を、本発明に先立って予想することは不可能であった。ST-3のレトロ逆転多様体は、活性であるだけでなく、ST-3に対して増加した活性を有しており、これは予想されなかった。
【0047】
本発明は、短縮ATF5ロイシンジッパー領域、及び所望により、細胞膜透過性領域を有するATF5ペプチドを提供する。本発明のATF5ペプチドは、そのペプチドが導入される細胞において、ATF5活性を妨げることができる。いくつかの実施形態では、ATF5ペプチドは、アポトーシスに関与する経路に影響を及ぼすことができる。ATF5活性は、本明細書で記載される細胞殺傷アッセイを含む、当該技術分野において公知のいくつかのアッセイのいずれかにより、評価することができる。ATF5活性は、cAMP応答エレメント(CRE)への結合能によってもまた、評価することができる。
【0048】
「ATF5ロイシンジッパー領域」は、野生型ATF5ロイシンジッパー領域に由来する短縮配列である。この用語は配列のみを指すために使用され、必ずしも二次構造を指すものではない。短縮ATF5ロイシンジッパー領域は例えば、表1に示すアミノ酸配列を有することができる。ST-3ロイシンジッパー配列(配列番号53)を、参照点として示す。配列番号53における置換を、下線付き太字で示す。
【0049】
【表3】
【0050】
ロイシンジッパー領域は、レトロ逆転形態であることができる。一実施形態では、レトロ逆転ロイシンジッパー領域は、配列VAEAREELERLEARLGQARGEL(配列番号65)を有する。
【0051】
これらの配列の多様体もまた、本発明の範囲に含まれる。本発明のATF5ペプチドは、本明細書にて開示したこれらの配列と、少なくとも約60%、61%、62%、63%、64%、65%、66%、67%、68%、69%、70%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の同一性の、ロイシンジッパー領域を有することができる。
【0052】
ATF5ペプチドが細胞膜透過性領域を含む実施形態において、細胞膜透過性領域は、短縮ATF5ロイシンジッパー領域に作用可能に結合している。いくつかの実施形態では、細胞膜透過性領域は短縮ATF5ロイシンジッパー領域に、例えば、ペプチド結合、ジスルフィド結合、チオエーテル結合、または当該技術分野において公知のリンカーを介して、共有結合している(例えば、Klein et al.2014を参照のこと)。例示的なリンカーとしては、置換アルキルまたは置換シクロアルキルが挙げられるが、これらに限定されない。リンカーは、ペプチドが送達された後で開裂可能であることができる。アミド結合により直接結合された細胞膜透過性領域とATF5ロイシンジッパー領域は、「融合」と呼ばれる場合がある。融合は、活性ペプチドに関して上で論じたとおりに、細胞膜透過性領域とATF5ロイシンジッパー領域との間に、アミノ酸リンカー配列を含有することができる。細胞膜透過性領域は、短縮ATF5ロイシンジッパー領域のN末端もしくはC末端に、または、残基側鎖を介して、結合することができる。細胞膜透過性領域及び短縮ATF5ロイシンジッパー領域は、同じ、または逆のキラリティを有することができる。
【0053】
本発明の細胞膜透過性ATF5ペプチドは、本明細書にて開示した、細胞膜透過性ドメイン及びATF5ロイシンジッパードメインの任意の組み合わせを含むことができる。そのようなペプチドの非限定例を、表2に示す。細胞膜透過性領域は斜体字である。ST-3配列に対する置換を、下線付き太字で示す。
【0054】
【表4】
【0055】
本発明のATF5ペプチドのレトロ逆転形態もまた含まれる。一実施形態では、ATF5ペプチドは、細胞膜透過性領域を含み、D-アミノ酸配列
【0056】
【化1】
【0057】
(配列番号13)を有するレトロ逆転ペプチドである、ST-13である。別の実施形態では、ATF5ペプチドは、細胞膜透過性領域を含み、
D-アミノ酸配列
【0058】
【化2】
【0059】
(配列番号14)を有するレトロ逆転ペプチドである、ST-14である。細胞膜透過性領域は斜体字である。ST-3配列(配列番号3)に対する置換を、下線付き太字で示す。
【0060】
本発明のATF5ペプチドは、終点として、以下の長さのいずれかを有する範囲を含む、長さが、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、または60アミノ酸、例えば、22~38アミノ酸であるのが好ましい。
【0061】
本発明のATF5ペプチドは、本明細書にて開示した配列に対して、少なくとも約80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の同一性を有するペプチドを含む。
【0062】
ATF5ペプチドは、改変N末端及び/または改変C末端を有することができる。例えば、ATF5ペプチドは所望により、N末端アセチル基、及び/またはC末端アミド基を含むことができる。
【0063】
本発明のATF5ペプチドは所望により、環式であることができる。例えば、ATF5ペプチドは1つ以上のラクタムブリッジを含むことができる。ラクタムブリッジは、必ずしもではないが、4つのアミノ酸残基を離して離間されている側鎖の間に作製されるのが好ましい(BxxxB)。ラクタムブリッジは例えば、AspまたはGluと、Lysとの側鎖の間に形成されることができる。アミノ酸置換をラクタムブリッジの部位にて作製し、結合を容易にすることができる。
【0064】
本発明のATF5ペプチドは所望により、精製または検出のためなどの、1つ以上のエピトープ及び/または親和性タグを含むことができる。このようなタグの非限定例としては、FLAG、HA、His、Myc、GSTなどが挙げられる。本発明のATF5ペプチドは所望により、1つ以上の標識を含むことができる。
【0065】
特定の態様において、本発明は組成物、例えば、本発明のATF5ペプチドを含み、所望により、1種以上の担体、希釈剤、賦形剤、またはその他の添加剤を更に含む医薬組成物を提供する。
【0066】
本明細書において提供するATF5ペプチド及び組成物、ならびに所望により、使用のための指示を含むキットもまた、本発明の範囲内である。キットは、少なくとも1つの追
加の試薬、及び/または1つ以上の追加の活性剤を更に含有することができる。キットは通常、キットの内容物の意図される使用を示す標識を含む。用語「キット」は、キット上に、もしくはキットとともに提供される、または別様においては、キットに付属する、あらゆる、記述または記録された材料を含む。
【0067】
本発明のATF5ペプチドは、ATF5標的遺伝子Bcl-2、Mcl-1、及びスルビビンを含むがこれらに限定されない、一連の遺伝子の分化遺伝子発現を容易にする。具体的には、ATF5ペプチドは、細胞生残、増殖、及び柔軟性と関連する、ATF5標的遺伝子の発現をノックダウンする。したがって、ATF5ペプチドを使用して、細胞死の誘発、細胞増殖の減少、または細胞分化の活性化を、行うことができる。特定の実施形態において、本発明のATF5ペプチドを使用して、新生細胞の増殖を阻害する、及び/または新生細胞における細胞毒性を促進する。本明細書で記載する細胞殺傷アッセイを含む、既知のアッセイにより、増殖及び細胞毒性を測定することができる。
細胞の標的化
当該技術分野において既知の方法により、本発明のATF5ペプチドを標的細胞に導入することができる。選択される導入方法は例えば、目的の用途に応じて左右される。
【0068】
場合によっては、ATF5ペプチドをコードするDNAまたはRNAを標的細胞に送達し、この中で発現させることができる。用途に応じて、任意の好適なベクターを介して、送達を達成することができる。ベクターの例としては、例えば、レンチウイルス、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、及びエンベロープ偽型ウイルスを含むレトロウイルスから調製した、プラスミド、コスミド、ファージ、細菌、酵母菌、及びウイルスベクターが挙げられる。ベクターは、例えばナノ粒子、流体力学的送達、電気穿孔法、超音波穿孔法、リン酸カルシウム沈殿、または、DEAE-デキストランなどのカチオン性ポリマーを使用して、細胞に導入することができる。ベクターを、例えばリポソーム中に封入した、または、カチオン性縮合剤と会合させた脂質と複合体化することができる。
【0069】
細胞受容体を利用するメカニズムを介して、本発明のATF5ペプチドを細胞に送達することができる。このようなメカニズムの例としては、抗体薬物複合体、キメラ抗原受容体、及びインテグリン標的化、RGD様配列が挙げられる。RGD様配列の例としては、GRGDS(配列番号72)及びGRGDNP(配列番号73)が挙げられる。本発明のATF5ペプチドは、本明細書に記載したとおりに、または、当該技術分野において公知の任意の方法により結合した、1つ以上のRGD様配列、例えば、2、3、4、または5個のRGD様配列を含むことができる。1つ以上のRGD様配列(複数可)を、ATF5ロイシンジッパー領域のN末端またはC末端側に組み込むことができる。そのようなRGD様配列は、互いに独立して、かつ、ATF5ロイシンジッパー領域と独立して、レトロ逆転形態に存在することもまた可能である。あるいは、ATF5ペプチドを、エクソソームもしくはリポソームなどのベシクル、またはミセルに封入し、細胞に送達することができる。ATF5ペプチドを細胞に導入するための別の方法としては、例えば、炭化水素ステープル(Bernal et al.2007;Bird et al.2016)、または、当該技術分野において既知のその他の環化方法を使用しての、環化によるものがある。
【0070】
本発明の特定のATF5ペプチドは、細胞膜透過性ドメインまたは細胞膜透過性ペプチド(CPP)を含む。用語「細胞膜透過性ドメイン」、「細胞膜透過性領域」、及び「細胞膜透過性ペプチド」は、本明細書では同じ意味で用いられる。
【0071】
CPPは、細胞膜を超えることができる、短い(典型的には、約6~40アミノ酸の)ペプチドである。多くのCPPが、血液脳関門(BBB)を超えることができる。いくつかの実施形態では、CPPは、終点として、以下の長さのいずれかを有する範囲を含む、
長さが7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、または39アミノ酸、例えば、10~30アミノ酸である。CPPは、ポリペプチド、ポリヌクレオチド、及びナノ粒子などの、共有結合した、または非共有結合した分子カーゴを、細胞膜及びBBBを超えて輸送する能力を有する。転座は、転座によるエンドサイトーシス性、またはエネルギー依存性(即ち非エンドサイトーシス性)であることができる。多数のCPPが、文献に記載され、識別されている(例えば、Handbook of Cell-Penetrating Peptides(2d ed.Ulo Langel ed.,2007);Herve et al.2008;Heitz et al.2009;Munyendo et al.2012;Zou et al.2013;Krautwald et al.2016を参照のこと)。CPPのキュレーションされたデータベースは、crdd.osdd.net/raghava/cppsiteにて維持されている(Gautam et al.2012)。
【0072】
核局在化配列(NLS)と呼ばれるペプチドは、CPPのサブセットである。従来のNLSは、塩基性アミノ酸の1つ(単節型)または2つ(双節型)の領域を含有する。従来の単節型及び双節型NLSのコンセンサス配列はそれぞれ、K(K/R)X(K/R)(配列番号66)、及び(K/R)(K/R)X10-12(K/R)3/5(配列番号67)であり、ここで、3/5とは、5つの連続したアミノ酸のうちの少なくとも3つが、リジンまたはアルギニンであることを示す(Kosugi et al.2009)。SV40大型T抗原由来のNLS配列である、PKKKRKV(配列番号36)は、従来の単節型NLSの例である一方で、ヌクレオプラスミン由来のNLS配列であるKRPAATKKAGQAKKK(配列番号68)は、従来の双節型NLSの例である(Lange
et al.2007;Kosugi et al.2009)。リボ核タンパク質(RNP)hnRNP A1、hnRNP K、及びU snRNP由来のものなどの、従来のものでないNLSも多数存在する(Mattaj et al.1998)。
【0073】
本発明での使用に好適なCPPの非限定例としては、Drosophila antennapedia転写因子(ペネトラチン、ならびにその誘導体であるRL-16及びEB1)(Derossi et al.1998;Thoren et al.2000;Lundberg et al.2007;Alves et al.2008);HIV-1転写トランス活性化因子(Tat)(Vives et al.1997;Hallbrink et al.2001);狂犬病ウイルス糖タンパク質(RVG)(Kumar et al.2007);単純ヘルペスウイルスVP22(Elliott et al.1997);抗菌性プロテグリン1(SynB)(Rousselle et al.2001)、ラットインスリン1遺伝子エンハンサータンパク質(pIS1)(Kilk et al.2001;Magzoub et al.2001);マウス血管内皮カドヘリン(pVEC)(Elmquist et al.2001);ヒトカルシトニン(hCT)(Schmidt et al.1998);及び線維芽細胞増殖因子4(FGF4)(Jo et al.2005)などのタンパク質由来のペプチドが挙げられる。本発明中で使用するのに好適なCPPとしては、更にトランスポータン(TP)及びその誘導体(Pooga et al.1998;Soomets et al.2000);MPSペプチド(融合配列ベースペプチドまたはFBPとしても知られている(Chaloin et al.1998)などの、転膜配列(MTS)(Brodsky et al.1998;Lindgren et al.2000;Zhao et al.2001);配列シグナルベースペプチド(SBP)(Chaloin et al.1997);モデル両親媒性ペプチド(MAP)(Oehlke et al.1998;Scheller et al.1999;Hallbrink et al.2001)、転座ペプチド2(TP2)(Cruz et al.2013)、MP
G(Morris et al.1997;Kwon et al.2009)、Pep-1(Morris et al.2001;Munoz-Morris et al.2007)、及び、ポリアルギニン(例えば、R~R12)(配列番号87)(Mitchell et al.2000;Wender et al.2000;Futaki et al.2001;Suzuki et al.2002)などの合成及びキメラペプチドも挙げられる。例示的かつ非限定的な配列を、表3に示す。
【0074】
【表5-1】
【0075】
【表5-2】
【0076】
CPPの機能は、配列特異的な相互作用よりも、CPPの物理的特性に左右されるため、CPPは、表3に示すとおりに、及び/または、当該技術分野において公知の、逆配列及び/または逆キラリティを有することができる。例えば、CPPのレトロ逆転形態(逆配列及び逆キラリティ)は、本発明中で使用するのに好適である。レトロ逆転CPPの一例は、D-アミノ酸配列KKWKMRRNQFWIKIQR(配列番号50)を有する。レトロ逆転CPPの別の例は、D-アミノ酸配列KKWKMRRNQFWLKLQR(配列番号51)を有する。細胞膜及び/またはBBBを超える能力を保持する、1つ以上のアミノ酸付加、欠失、及び/または置換を有する、これらの配列の多様体もまた、本発明中で使用するのに好適である。本発明のATF5ペプチドは、表3に示す例示的な配列に、少なくとも約60%、61%、62%、63%、64%、65%、66%、67%、68%、69%、70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の同一性を有する細胞膜透過性ドメインを含むことができる。CPPが細胞透過を媒介する能力における、アミノ酸の付加(複数可)、欠失(複数可)、及び/または置換(複数可)の効果は、当該技術分野において既知の方法を使用して試験することができる。
III.調製方法
本発明のATF5ペプチドは例えば、固相ペプチド合成もしくは液相ペプチド合成、または両方の組み合わせを使用して、化学的に合成することができる。合成は、ペプチドの断片として行われ得、その後に化学的、または酵素的のいずれかにより組み合わせられる。本発明のATF5ポリペプチドは、組み換え法を用いて発現することができる。
【0077】
したがって、本発明のATF5ペプチドをコードする核酸分子もまた提供される。このような核酸は、オリゴヌクレオチド合成装置を使用する化学合成により構築することができる。本発明の核酸分子は、組み換えATF5ペプチドが産生される宿主細胞にて便利で
ある、所望のATF5ペプチドのアミノ酸配列、及びこれらのコドンの選択に基づき設計することができる。標準的な方法を適用して、対象のATF5ペプチドをコードする核酸分子を合成することができる。
【0078】
調製を行ったら、特定のATF5ペプチドをコードする核酸を発現ベクターに組み込み、所望の宿主におけるペプチドの発現に好適な、発現調節配列に作用可能に結合させることができる。ATF5ペプチドの高い発現レベルを得るために、核酸を、選択した発現宿主において機能的な、転写及び翻訳発現調節配列に作用可能に結合することができる、またはこれらと合わせることができる。
【0079】
様々な発現宿主/ベクターの組み合わせを、当業者に用いることができる。真核細胞宿主に対して有用な発現ベクターとしては、例えば、SV40、ウシ乳頭腫ウイルス、アデノウイルス、及びサイトメガロウイルス由来の発現調節配列を含むベクターが挙げられる。細菌宿主に対して有用な発現ベクターとしては、pCR1、pBR322、pMB9、及びこれらの誘導体を含む、E.coli由来のプラスミドなどの、既知の細菌プラスミド、M13などの、広い宿主範囲のプラスミド、ならびに、フィラメント状一本鎖DNAファージが挙げられる。
【0080】
好適な宿主細胞としては、適切なプロモーターにて制御されている、原核生物、酵母菌、昆虫、または、高次の真核細胞が挙げられる。原核生物としては、グラム陰性またはグラム陽性生命体、例えばE.coliまたは桿菌が挙げられる。高次の真核細胞を確立することができる、またはこれらは、哺乳類由来の細胞株であることができ、例としては、Pichia pastoris、293細胞、COS-7細胞、L細胞、C127細胞、3T3細胞、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、ヒーラー細胞、及びBHK細胞が挙げられる。無細胞翻訳系もまた、使用することができる。
【実施例
【0081】
本開示の実施形態は、以下の非限定的実施例を参照して、更に定義することができる。材料及び方法の両方に対する多くの変更が、本開示の範囲を逸脱することなく実施可能であることが、当業者には明らかとなろう。後述のように、参照ペプチドST-3に対する多数の多様体を作製し、試験を行った。
実施例1。保存的システイン置換を有するST-3多様体は、インビトロ活性を有する
細胞毒性活性に対する、アミノ酸位置21におけるST-3の1つのシステインの必要性を、HL60細胞における細胞毒性アッセイを使用して試験した。システイン残基はネイティブATF5ドメインの中で非常に保存され、DNA結合の前に、ATF5のホモ二量体化のために必要であると考えられている。
【0082】
96ウェルディッシュ中で、150μLのRPMI+1.5%ウシ胎児血清(FBS)内で、3.5×10細胞/ウェルの密度にて、HL60 PML懸濁細胞を設定した。20mm His(pH7.5)にて、10mg/mLの濃度で再構成したST-3を、50μLの体積で各ウェルに添加し、0~80μLの終濃度にした。37℃にて48時間、ST-3により細胞をインキュベートした。Abcam Annexin V FITCアポトーシス検出キットを使用するフローサイトメトリーにより、細胞生存能を定量化した。簡潔に述べると、細胞をPBSで洗浄し、Annexin V FITC及びヨウ化プロピジウム(PI)を含有する1xアッセイ緩衝液に再懸濁した。Annexin Vはアポトーシス細胞を検出し、PIは死細胞を染色する。染色後、アポトーシス細胞は緑色蛍光を示し、死細胞は赤色及び緑色蛍光を示し、生細胞はほとんど、または全く蛍光を示さない。前方散乱(FSC)と側方散乱(SSC)に基づき、分析のために細胞を選択し、BD Accuri C6 Plusフローサイトメーターにより分析して、FITCシグナル検出装置を使用して、Annexin V-FITC結合(Ex=488n
m;Em=530nm)、及び、フィコエリトリン発光シグナル検出装置により、PI染色を検出した。Annexin Vlow及びPIlowの割合を定量化し、生存能率として表した。
【0083】
凍結乾燥した、ST-3、または、アミノ酸位置21にて、システインを置換してグリシン(ST-4)もしくはアラニン(ST-5)を有するST-3を、ヒスチジン緩衝液中で新鮮に再構成して5mg/mLの原液にし、細胞に添加して、0~40μmの終濃度範囲にした。細胞生存能を定量化する前に、細胞をATF5ペプチドで48時間インキュベートした。結果を図2に示す。
【0084】
位置21においてシステインをアラニンまたはグリシンで置換することによって、ST-3活性は弱まっているが、切除はされていない。観察されたEC50値は、ST-3、ST-4、及びST-5に対してそれぞれ、約16μM、35μM、及び38μMであった。機能アッセイでは、EC50は、生体応答を、その最大値から50%低下させる濃度である。ATF5ペプチドの場合、EC50は、細胞生存能を、その最大値から50%低下させる濃度として測定される。EC50は、当該技術分野において公知の任意の数の手段により計算することができる。システインをアラニンで置換することは、細胞透過に影響を及ぼさなかった。グリシン置換多様体の透過は試験しなかった。しかし、アラニン置換のデータに基づくと、細胞透過が影響を受けることは予想されない。
実施例2。非保存的置換を有するST-3多様体は、インビトロ活性を有する
本実施例で議論されるST-3多様体を、表4にまとめている。ST-3は、約12~20μMのEC50を有する。
【0085】
【表6】
【0086】
1つの置換
実施例1に記載のHL60細胞生存能アッセイを使用して、1つの非保存的アミノ酸置換を含有するST-3多様体の細胞毒性活性を試験した(図3)。多様体ST-7は、位置28において、極性のアスパラギンを無極性のロイシンで置換しており、約3μMのEC50を有する。ST-8は、位置22において、極性のグルタミンを無極性のアラニンで置換しており、約5μMのEC50を有する。ST-7及びST-8の活性におけるこの増加は、ST-3よりも3~6倍高い。ST-6は、位置37において、セリンをアラ
ニンで保存的置換しており、ST-3に相当する活性を有する。
複数の置換
実施例1に記載のHL60細胞生存能アッセイを使用して、複数の非保存的アミノ酸置換を含有するST-3多様体の細胞毒性活性を試験した。多様体ST-9は、それぞれ、正電荷を帯びるアルギニンで置換された、負電荷を帯びる2つのグルタミン酸残基、ならびに、それぞれ、負電荷を帯びるグルタミン酸で置換された、正電荷を帯びる1つのアルギニン、及び正電荷を帯びる1つのリジンを有する。(表4を参照のこと。)これらの変化には、約18%の、ST-3のATF5ロイシンジッパー領域を伴った。ST-9の活性は、ST-3の活性よりも著しく増加した(図4)。ST-9は、ST-3の約12~20μMと比較して、約2μMのEC50を有する。
【0087】
ST-10は、ST-7におけるように、位置28において、アスパラギン(極性)の、ロイシン(無極性)での非保存的置換に加えて、ST-9のように、4つの同じ「電荷」置換を有し、ST-6におけるように、セリンのアラニンでの、保存的置換を有する。(表4を参照のこと。)ST-10の活性は、ST-9の活性に相当する(図4)。
【0088】
ST-11は、ST-10と同じ置換、加えて、ST-5におけるような、位置21における、保存システインの、アラニンでの置換を有する。(表4を参照のこと。)ST-11は、ST-3よりも改善された細胞毒性活性を有する(図4)。
実施例3。レトロ逆転ST-3多様体はインビトロ活性を有する
実施例1に記載したHL60細胞生存能アッセイにおいて、ST-11のレトロ逆転形態の細胞毒性を試験した。レトロ逆転多様体のST-13は、ST-11に相当する活性を有し、ST-3よりも優れた活性を有した(図5)。
【0089】
ST-13を、第2のレトロ逆転多様体のST-14と同様に、様々なヒトがん細胞株にて更に試験した。組織培養処理した96ウェルディッシュ中で、150μLのRPMI+1.5%ウシ胎児血清(FBS)内で、3.5×10細胞/ウェルの密度にて、懸濁細胞(HL60、AML14、またはSET2)として設定した。20mM His(pH7.5)にて、10mg/mLの濃度で再構成したATF5ペプチドを、50μLの体積で各ウェルに添加し、0~80μLの終濃度にした。37℃にて48時間、ペプチドにより細胞をインキュベートした。Abcam Annexin V FITCアポトーシス検出キットを使用するフローサイトメトリーにより、細胞生存能を定量化した。簡潔に述べると、細胞をPBSで洗浄し、Annexin V FITC及びヨウ化プロピジウム(PI)を含有する1xアッセイ緩衝液に再懸濁した。BD Accuri C6 Plusフローサイトメーターにより細胞を分析し、FITCシグナル検出装置を使用して、Annexin V-FITC結合(Ex=488nm;Em=530nm)を検出し、フィコエリトリン発光シグナル検出装置を使用して、PI染色を検出した。Annexin Vlow及びPIlowの割合を定量化し、生存能率として表した。GraphPad Prism v.7 XMLを使用して、EC50値を計算した。
【0090】
更に、-1日目に、200μLの培地中で、3.5×10細胞/ウェルの密度にて、接着A375、MCF7、U251、DU145、U87、及びA549細胞を設定した。0日目に、培地を取り除き、150μLの新鮮な培地を補充し、細胞を、記載のとおりにATF5ペプチドで処理した。37℃での48時間のインキュベーションの後、浮遊細胞を収集し、接着細胞を、ダルベッコリン酸緩衝生理食塩水(DPBS)で洗浄し、室温にて、50μLの2.5%トリプシンを用いてディッシュから解離させ、浮遊細胞と合わせた。懸濁細胞に関して上述したとおりに、またはMTTアッセイアッセイにより、細胞生存能を測定した(MCF7細胞)。あるいは、細胞を穏やかに、細胞培養プレートから取り除いた後、2.5%トリプシンでトリプシン処理し、上述したAbcam Annexin V FITCアポトーシス検出キットを使用するフローサイトメトリーにより、
細胞生存能を定量化した。
【0091】
懸濁細胞について上述した条件下にて、PBMC及びBMMCを培養した。
ST-13(図6A~6E)、及びST-14(図7A~7E;表5)は共に、広範囲にわたる腫瘍細胞型において、著しい細胞毒性活性を示した。ST-14は、末梢血単核球細胞(PBMC)及び骨髄単核球(BMMC)においてもまた、細胞毒性であった(表5)。
【0092】
【表7】
【0093】
ST-14での処理の後、HL60細胞におけるβ-アクチン発現に対する、ATF5、ならびに調節タンパク質のMcl-1、Bcl-2、及びスルビビンのRNA発現を測定した。簡潔に述べると、8×10のHL60懸濁細胞を6ウェルプレートに配置し、0μM、5μM、20μM、または40μMのST101で、4または24時間処理した。細胞を、1,200rpmにて7.5分間遠心分離し、750μlのDNase-RNase-非含有HOでペレットを洗浄して、残留培地を取り除いた。メーカーの指示に従い、Quick-RNA(商標)MiniPrep Plusキット(Zymo Researchカタログ番号R1054)を使用してRNAを抽出し、55μlのHOで溶出した。RNA(200ng)を、Invitrogenのプレキャスト2%SYBR(商標)Gold E-Gel(Thermo Fisher Scientificカタログ番号G401002)にかけ、RNAの質を評価した。以下の修正を加えて、メーカーのプロトコルに従い、ezDNAse(商標)Enzyme(Thermo Fisher Scientificカタログ番号11766050)を備える、Invitrogen SuperScript(商標)IV VILO Master Mixを使用して、cDNAを合成した:cDNAを、50℃ではなく56℃にて伸張した。マイナスRT対照を設定し、gDNAのコンタミネーションを除外した。遺伝子特異的プライマー(表6)、及びKOD Xtreme(商標)Hot Start DNA Polymerase(Millipore Sigmaカタログ番号71975-3)を使用して、cDNAを増幅した。当量のRNAを各反応物に添加した。全てのPCR産物を、Invitrogenプレキャスト2%エチジウムブロマイドE-Gel(Thermo Fisher Scientific)にかけた。BioRad ImageLabソフトウェアを使用して、遺伝子発現をβ-アクチンと比較した。
【0094】
【表8】
【0095】
ST-14の曝露は、β-アクチン発現と比較して、Mcl-1、Bcl2、及びBIRC5(スルビビン)の発現を低下させた(図8A~8D)。
実施例4。ST-3多様体はインビボ活性を有する
HL60皮下腫瘍モデルにおいて、腫瘍体積におけるST-3、及び3つの多様体の効果を試験した。簡潔に述べると、Matrigelに1:1で懸濁した、5×10のHL60細胞を、皮下注射により、NU/Jマウスの腋窩に移した。腫瘍播種の2日後に投与を開始した。平均の腫瘍体積は、144~176mmであった。25mg/kgの用量で、腹腔内(IP)注射によりATF5ペプチドを1日2回投与した。試験した多様体は全て、レトロ逆転多様体であるST-13を含むビヒクルと比較して腫瘍体積を減少させた。このことは、最大の抗腫瘍活性を示している(図9)。
【0096】
U251グリア芽腫細胞、MCF7乳癌細胞、HL60前骨髄球性白血病細胞、及びA375黒色腫細胞を使用して、腫瘍モデルの腫瘍体積における、ST-14の効果を試験した。簡潔に述べると、Matrigelに1:1で懸濁した、5×10の細胞を、皮
下注射により、NU/Jマウス(MCF7及びHL60細胞に関して)、またはNOD/SCIDマウス(U251及びA375細胞に関して)の腋窩に移した。
【0097】
U251細胞腫瘍に関して、腫瘍播種の2日後に投与を開始した。平均の腫瘍体積は、約240mmであった。50mg/kgの用量で、皮下(SC)注射によりST-14を、1週間に3回、3週間投与した。ビヒクルと比較して、ST-14は、腫瘍体積を著しく減少させ(図10A、10C)、生残を増加させた(図10B~10C)。同様の結果は、25mg/kgのST-14を投与しても達成された。
【0098】
MCF7細胞腫瘍に関して、早期投与、及び遅延投与の効果を調査した。早期投与実験において、腫瘍播種の2日後に投与を開始した(2×10細胞)。平均の腫瘍体積は、約280~330mmであった。25mg/kgの用量で、SC注射によりST-14を、1週間に3回、3週間投与した。遅延投与実験において、腫瘍播種の59日後に投与を開始した(ビヒクル:2×10細胞;治療群:5×10細胞)。播種後92日間、腫瘍体積を監視した。速やかな治療群及び遅延治療群の両方において、監視期間の間、ビヒクルと比較して、ST-14は腫瘍体積を著しく低下させた(図11A~11B)。
【0099】
HL60細胞腫瘍に関して、腫瘍播種の2日後に投与を開始した。平均の腫瘍体積は、約220mmであった。20mg/kgの用量で、SC注射によりST-14を、1週間に3回、3週間投与した。ビヒクルと比較して、ST-14は腫瘍体積を著しく低下させた(図12)。
【0100】
A375細胞腫瘍に関して、腫瘍播種の2日後に投与を開始した。平均の腫瘍体積は、約250~344mmであった。25mg/kgの用量で、SC注射によりST-14を、1日2回、3週間投与した。ビヒクルと比較して、ST-14は腫瘍体積を著しく低下させた(図13)。
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本発明は、以下の特許請求の範囲により更に説明される。
図1
図2
図3
図4
図5
図6A
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図6E
図7A
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図8A
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図9
図10A
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図11A
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図12
図13
【配列表】
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