(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-13
(45)【発行日】2023-07-24
(54)【発明の名称】食用昆虫粉末又は食用昆虫顆粒を用いた植物性由来ミルクの冷凍菓子
(51)【国際特許分類】
A23G 9/32 20060101AFI20230714BHJP
A23C 11/00 20060101ALI20230714BHJP
【FI】
A23G9/32
A23C11/00
(21)【出願番号】P 2022114372
(22)【出願日】2022-06-29
【審査請求日】2022-10-15
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】520182822
【氏名又は名称】上久保 開
(72)【発明者】
【氏名】上久保 開
【審査官】山本 英一
(56)【参考文献】
【文献】特許第6859551(JP,B1)
【文献】Impact of silkworm pupae (Bombyx mori) powder on cream foaming, ice cream properties and palatability,Innovative Food Science and Emerging Technologies,Volume 75,2022年,102874
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23G,A23C
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
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(57)【特許請求の範囲】
【請求項3】
前記植物性由来ミルクが豆乳、えんどう豆、えん麦、ココナッツ、アーモンド、ライス、カシューナッツ、マカダミア、亜麻仁、ピスタチオに由来する、請求項1~2に記載の冷凍菓子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食用昆虫粉末又は食用昆虫顆粒を用いた植物性由来ミルクの冷凍菓子に関する。
【背景技術】
【0002】
世界の食糧危機への対策として、昆虫食の注目が急激に高まっている。栄養価が高く環境への負荷も少ないことから、国連食糧農業機関(FAO)も推奨。しかし、食用対象になる食用昆虫を食品として提供しようとする場合には、解決しなければならない問題点がある。
【0003】
それは、昆虫は駆除、排除するものであるという認識が強く、食べるということに抵抗感をもつ人々が多いことである。人々の昆虫を食べることへの抵抗感を軽減することができれば、昆虫の食品としての需要を喚起することができるようになるものである。
【0004】
しかしながら、従来においての食用昆虫粉末及び顆粒を用いた冷凍菓子(アイス)は、昆虫の姿が残ったままであったり、単純に粉末をかけたり混ぜたり、ソーシャル・ネットワーキング・サービスに投稿すること、一過性の好奇心、珍しさによる注目度向上が目的であるものが散見されており、真に昆虫への抵抗感をなくし、食糧危機への対策商品として扱われている食用昆虫粉末及び顆粒を用いた冷凍菓子(アイス)は、当該発明者の「特許6859551」を除き案出されていない。
【0005】
また、「特許6859551」については、多くの人々が昆虫の抵抗感を感じることなく、食用昆虫粉末又は食用昆虫顆粒を用いた冷凍菓子(アイス)を食するという点において、発展の余地があると本発明者は考える。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、本発明者は、上記の点に鑑み、「特許6859551」を更に発展させるべく、異なるアプローチから鋭意研究を重ねた。その結果、食用昆虫の粉末又は顆粒を、植物性由来ミルクの冷凍菓子(アイス)原料に対して0.25質量%~10.00質量%含有することでも、風味やコクをいっそう引き立てることができるとともに、昆虫の抵抗感も感じることなく食することができることを見出し、本発明を完成するに至ったものである。
【0007】
本発明は、風味やコクを付与した冷凍菓子(アイス)を、広く人々に提供することで、 人々の昆虫を食べることへの抵抗感を無くすとともに、人口増加や地球温暖化により発生する食糧難への構えを前広につくり、多くの人々を飢餓から救うことができるものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、食用昆虫の粉末又は顆粒を、植物性由来ミルクの冷凍菓子(アイス)原料に対して0.25質量%~10.00質量%含有することでも風味とコクをよりいっそう引き立てることができるとともに、昆虫の抵抗感を感じることなく食することができることを見出し、本発明を完成させたものである。すなわち、本発明は、以下に示す冷凍菓子(アイス)である。
【0009】
食用昆虫の粉末又は顆粒を用いた、植物性由来ミルクの冷凍菓子(アイス)原料に対して、コオロギ、バッタ、タガメ、カイコ、アリ、ハチに由来する食用昆虫の粉末又は顆粒を0.25質量%~10.00質量%含有する冷凍菓子。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、コオロギ、バッタ、タガメ、カイコ、アリ、ハチに由来する食用粉末又は顆粒を、植物性由来ミルク(豆乳、えんどう豆、えん麦、ココナッツ、アーモンド、ライス、カシューナッツ、マカダミア、亜麻仁、ピスタチオ)の冷凍菓子(アイス)原料に対して0.25質量%~10.00質量%含有することで、相乗効果的に風味やコクが増して、従来から昆虫食で問題となっていた、昆虫を食べることへの抵抗感が改善された冷凍菓子(アイス)を提供することができる。加えて、これにより食用昆虫の食品としての需要を喚起することができるとともに、多くの人々を飢餓から救うことができるものである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
当該冷凍菓子(アイス)の品温は、好ましくはマイナス18℃以下である。
【0012】
本開示の冷凍菓子(アイス)の製造方法は特に限定されない。しかし、好ましくは予め調製された植物性由来ミルクを、食用昆虫粉末又は顆粒とむらなく均一に混ぜ合わせた混合物となし、攪拌し、該混合物を冷却して固形物とする方法が適用できる。
【0013】
本開示の冷凍菓子(アイス)は、より好ましくは凍結含気泡化(フリージング)する。フリーザー(冷菓製造装置、アイスクリーマー)に投入された冷凍菓子(アイス)原料は、急冷攪拌され空気を抱き込む。そして、ソフトな冷凍菓子(アイス)が得られる。当該冷凍菓子(アイス)は、必要に応じて容器に充填される。
【実施例】
【0014】
以下、実施例を挙げて本発明を更に具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【実施例1】
【0015】
食用昆虫粉末(ヨーロッパイエコオロギ)を30.00質量部と冷凍菓子(アイス)原料300質量部(豆乳150質量部、てんさい糖60質量部、卵黄40質量部、植物性生クリーム50質量部)を用意し、むらなく均一に混ぜ合わせた混合物となし、該混合物を冷却して固形物とした。これを適宜の容量に分けて健常者のパネラーに試食させたところ、風味も良く、コクも十分にあり、昆虫の抵抗感が無いとの一致した評価が得られた。
【0016】
次に上記の割合を変えていき、風味とコクの変化を検証した。
【0017】
評価基準は、以下のとおりである。
(風味の評価)
◎:風味が良い
○:風味がやや良い
△:風味がやや悪い
×:風味が悪い
(コクの評価)
◎:コクが十分にある
○:コクがややある
△:コクがあまりない
×:コクがない
【実施例2】
【0018】
食用昆虫粉末(ヨーロッパイエコオロギ)27.90質量部と冷凍菓子(アイス)原料300質量部として実施した。
【実施例3】
【0019】
食用昆虫粉末(ヨーロッパイエコオロギ)11.10質量部と冷凍菓子(アイス)原料300質量部として実施した。
【実施例4】
【0020】
食用昆虫粉末(ヨーロッパイエコオロギ)0.75質量部と冷凍菓子(アイス)原料300質量部として実施した。
【実施例5】
【0021】
食用昆虫粉末(ヨーロッパイエコオロギ)0.50質量部と冷凍菓子(アイス)原料300質量部として実施した。
【0022】
上記の結果を、表1に整理した。
この結果から、[実施例1]から[実施例3]では、風味が良く、コクが十分にあるという評価であるが、[実施例4]では、風味がやや良く、コクがややあるという評価となった。また、[実施例5]では風味がやや悪く、コクがあまりないという評価となった。
【表1】
【0023】
以上より、[実施例1]から[実施例4]の範囲で、むらなく均一に混ぜ合わせた混合物となし、該混合物を冷却して固形物とすることで、風味とコクを付与できるとともに、昆虫の抵抗感も感じることなく食することができる。
【要約】
【課題】食用昆虫粉末又は食用昆虫顆粒を用いた植物性由来ミルクの冷凍菓子の提供
【解決手段】食用昆虫粉末又は食用昆虫顆粒を用いて、風味及びコクを増加させた植物性由来ミルクの冷凍菓子において、前記の冷凍菓子原料に対して、食用昆虫粉末又は食用昆虫顆粒を0.25質量%~10.00質量%を加えることを特徴とする、上記冷凍菓子。