(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-13
(45)【発行日】2023-07-24
(54)【発明の名称】スカイビングカッタ
(51)【国際特許分類】
B23F 21/10 20060101AFI20230714BHJP
【FI】
B23F21/10
(21)【出願番号】P 2018017773
(22)【出願日】2018-02-05
【審査請求日】2020-12-01
(31)【優先権主張番号】P 2017050440
(32)【優先日】2017-03-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000005197
【氏名又は名称】株式会社不二越
(74)【代理人】
【識別番号】100192614
【氏名又は名称】梅本 幸作
(74)【代理人】
【識別番号】100158355
【氏名又は名称】岡島 明子
(72)【発明者】
【氏名】西野 達也
(72)【発明者】
【氏名】小林 慶紀
(72)【発明者】
【氏名】津野 正行
【審査官】小川 真
(56)【参考文献】
【文献】実開昭58-113421(JP,U)
【文献】登録実用新案第3181136(JP,U)
【文献】特開平02-269522(JP,A)
【文献】特開昭56-157921(JP,A)
【文献】小島昌一,スカイビングカッタの逃げ角に関する研究(第1報,内歯平歯車スカイビング用はすばピニオン形カッタ),日本機械学会論文集,日本,日本機械学会,1973年,39巻,323号,pp2257-2263,https://doi.org/10.1299/kikai1938.39.2257
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23F 21/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
歯車型の歯面に複数の切れ刃を備えるスカイビングカッタであって、前記複数の切れ刃は前記スカイビングカッタの軸心に対して所定のねじれ角(ただし、0°の場合を除く)を有して、前記切れ刃には前記軸心と直交する基準面に対して所定の刃付け角を有しており、前記刃付け角が前記ねじれ角よりも大きく、前記刃付け角は前記切れ刃のトレーリング側の刃付け角であって、かつ
5°より大きく40°よりも小さい範囲であり、また前記ねじれ角は0°より大きく25°よりも小さい範囲にあり、前記刃付け角と前記ねじれ角との差が5°より大きく、15°よりも小さい範囲であることを特徴とするスカイビングカッタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、歯車を加工する歯切工具であるスカイビングカッタに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、被削物の内周面や外周面に歯車を加工する工具(歯切工具)として特許文献1および特許文献2に示すピニオンカッタがある。ピニオンカッタは、被削物と同期して回転しながら、かつ被削物も回転させた状態で被削物の内周面や外周面に歯車の加工を施す工具である。
【0003】
また、近年では同じ作用、同じ形態を有する工具としてスカイビングカッタがある。スカイビングカッタを用いた歯車加工は、被削物の中心軸とスカイビングカッタの中心軸を交差させることで、被削物とスカイビングカッタとの間に発生するすべり運動の原理を利用している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平2-269522号公報
【文献】実開昭58-113421号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、スカイビングカッタを用いた歯車加工では、有効すくい角がネガとなるため切れ刃のエッジ(先端部)に過大な負荷がかかり、ピニオンカッタによる歯車加工と比較して、工具寿命が短くなるという問題があった。
【0006】
そこで、本発明においては歯車加工時において過大な負荷を軽減し、寿命を向上できるスカイビングカッタを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前述した課題を解決するために、本発明は歯車型の歯面に複数の切れ刃を備えるスカイビングカッタにおいて、複数の切れ刃はスカイビングカッタの軸心に対して所定のねじれ角を有しており、切れ刃には軸心と直交する基準面に対して所定の刃付け角を有している。また、刃付け角αを5°以上40°以下の範囲とする。
【0008】
このとき、刃付け角がねじれ角よりも大きい場合に刃付け角とねじれ角との差を2°より大きく、15°よりも小さい範囲に設定する。さらに、その刃付け角はスカイビングカッタのトレーリング側の切れ刃における刃付け角とすることもできる。
【発明の効果】
【0009】
本発明のスカイビングカッタを用いることで、歯車加工時における切れ刃への負荷を低減することができるので、結果として歯車加工時において過大な負荷がかかっても寿命を向上できるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の一実施形態を示すスカイビングカッタ1の破断図である。
【
図2】スカイビングカッタT1と内歯車部品W1の加工形態を示す模式平面図である。
【
図5】スカイビングカッタT2と内歯車部品W2の加工形態を示す模式平面図である。
【
図8】スカイビングカッタT3と外歯車部品W3の加工形態を示す模式平面図である。
【
図11】スカイビングカッタT4と外歯車部品W4の加工形態を示す模式平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明のスカイビングカッタの形態について図面を用いて説明する。本発明の一実施形態を示すスカイビングカッタ1の破断図を
図1に示す。本発明のスカイビングカッタ1は
図1に示すように歯車型の歯面に複数の切れ刃2を備えている。この複数の切れ刃2,2はスカイビングカッタ1の軸心Oを中心とした円周上に均等に配置されている。それらの切れ刃2,2の先端部分には軸心Oと直交する基準面Hに対して刃付け角αを有している。また、複数の切れ刃2,2はスカイビングカッタ1の軸心Oに対して所定のねじれ角βを有している。そして、切れ刃2の刃付け角αは5°以上40°以下の範囲とし、刃付け角αとねじれ角βとの差(α-β)は2°より大きく、15°よりも小さい範囲とする。
【0012】
なお、ここで切れ刃2の「刃付け角」とは、JIS B0174に規定される「刃付け角」と同義であり、「はすばピニオンカッタのすくい面の軸直角面に対する角(度)」を言うものとする。この刃付け角αは、トレーリング側の切れ刃2における刃物角(切れ刃のすくい面と逃げ面とがなす角度)が鋭角となる刃付け角とすることが好ましい。
【0013】
また、本願ではスカイビングカッタを用いた歯車加工を行う際に、スカイビングカッタが回転する場合の先導する切れ刃側を「リーディング側の切れ刃」、後続する切れ刃側を「トレーリング側の切れ刃」として各々区別する。
【0014】
また、この刃付け角αとねじれ角βとの差(α-β)を、2°より大きく、15°よりも小さい範囲とすることで、歯車加工における被削材(特に切り込み側)に対する切削性能を向上させることができる。その結果、歯車加工時において被削材切削時の過大な負荷を軽減し、スカイビングカッタの寿命を向上できる。
【0015】
次に、本発明のスカイビングカッタを用いた歯車部品の加工形態について説明する。歯車部品を加工する形態としては、加工部品の内周側への内歯車の加工と加工部品の外周側への外歯車の加工に大別できる。本発明のスカイビングカッタを用いて内歯車を加工する場合の加工形態を
図2~
図7に示す。また、本発明のスカイビングカッタを用いて外歯車を加工する場合の加工形態を
図8~
図13にそれぞれ示す。
【0016】
図2はスカイビングカッタT1と内歯車部品W1が共に反時計回りで加工される場合の加工形態を示す模式図(平面図)、
図3は
図2に示すX1部の拡大図、
図4は
図2に示すP1矢視図(模式図)を示す。
図2および
図4に示す加工形態では、スカイビングカッタT1は軸心C1を中心にして反時計回りで回転し、内歯車部品W1は軸心C2を中心にして反時計回りで回転しながら歯車加工を行う。その際、
図3に示すスカイビングカッタT1(の切れ刃)と内歯車部品W1(の歯)が互いに接触している側をリーディング側(紙面上で切れ刃の中心線に対して左側)、その反対側をトレーリング側(紙面上で切れ刃の中心線に対して右側)と言う。
【0017】
また、
図5はスカイビングカッタT2と内歯車部品W2が共に時計回りで加工される場合の加工形態を示す模式図(平面図)、
図6は
図5に示すX2部の部分拡大図、
図7は
図5に示すP2矢視図をそれぞれ示す。
図5および
図7に示す加工形態では、スカイビングカッタT2は軸心C1を中心にして時計回りで回転し、内歯車部品W2は軸心C2を中心にして時計回りで回転しながら歯車加工を行う。その際、
図6に示すスカイビングカッタT2(の切れ刃)と内歯車部品W2(の歯)が互いに接触している側をリーディング側(紙面上で切れ刃の中心線に対して右側)、その反対側をトレーリング側(紙面上で切れ刃の中心線に対して左側)と言う。
【0018】
次に、
図8はスカイビングカッタT3が外歯車部品W3を歯車加工する場合の加工形態を示す模式図(平面図)、
図9は
図8に示すX3部の部分拡大図、
図10は
図8に示すP3矢視図をそれぞれ示す。
図8および
図10に示す加工形態では、スカイビングカッタT3は軸心C1を中心にして反時計回りで回転し、外歯車部品W3は軸心C2を中心にして時計回りで回転しながら歯車加工を行う。その際、
図9に示すスカイビングカッタT3(の切れ刃)と外歯車部品W3(の歯)が互いに接触している側がリーディング側(紙面上で切れ刃の中心線に対して左側)、その反対側がトレーリング側(紙面上で切れ刃の中心線に対して右側)となる。
【0019】
また、
図11はスカイビングカッタT4が外歯車部品W4を歯車加工する場合の加工形態を示す模式図(平面図)、
図12は
図11に示すX4部の部分拡大図、
図13は
図11に示すP4矢視図を示す。
図11および
図13に示す加工形態では、スカイビングカッタT4は軸心C1を中心にして時計回りで回転し、外歯車部品W4は軸心C2を中心にして反時計回りで回転しながら歯車加工を行う。その際、
図12に示すスカイビングカッタT4(の切れ刃)と外歯車部品W4(の歯)が互いに接触している側がリーディング側(紙面上で切れ刃の中心線に対して右側)、その反対側がトレーリング側(紙面上で切れ刃の中心線に対して左側)になる。
【符号の説明】
【0020】
1,T1~T4 スカイビングカッタ
2 切れ刃
O,C1 スカイビングカッタの軸心
H スカイビングカッタの軸心と直交する基準面
α 切れ刃の刃付け角
β 切れ刃のねじれ角