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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-13
(45)【発行日】2023-07-24
(54)【発明の名称】間欠バルブ装置および間欠塗工装置
(51)【国際特許分類】
   B05C 5/02 20060101AFI20230714BHJP
   B05C 11/10 20060101ALI20230714BHJP
   H01M 4/04 20060101ALI20230714BHJP
   H01M 4/139 20100101ALI20230714BHJP
【FI】
B05C5/02
B05C11/10
H01M4/04 A
H01M4/139
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020561251
(86)(22)【出願日】2019-11-29
(86)【国際出願番号】 JP2019046698
(87)【国際公開番号】W WO2020129570
(87)【国際公開日】2020-06-25
【審査請求日】2022-09-08
(31)【優先権主張番号】P 2018236659
(32)【優先日】2018-12-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100123102
【弁理士】
【氏名又は名称】宗田 悟志
(72)【発明者】
【氏名】時枝 大佐
(72)【発明者】
【氏名】福冨 雄太
(72)【発明者】
【氏名】小出 直幸
(72)【発明者】
【氏名】酒井 良徳
【審査官】鏡 宣宏
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-071044(JP,A)
【文献】特開2017-192906(JP,A)
【文献】特開2018-069221(JP,A)
【文献】特開平11-307087(JP,A)
【文献】実開昭60-133110(JP,U)
【文献】特開2004-216277(JP,A)
【文献】特開2006-51407(JP,A)
【文献】特開2015-149264(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B05C 1/00-21/00
B05D 1/00-7/26
H01M 4/00-4/62
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被塗工体に塗料を塗布するダイへ前記塗料を供給する第1状態、および前記供給を停止する第2状態を切り替え可能な間欠バルブと、
前記間欠バルブの前記第1状態および前記第2状態を切り替える駆動部と、を備え、
前記駆動部は、前記間欠バルブに周面が接続されて一方向に回転するカムを有し、
前記カムは、前記間欠バルブを前記第1状態にする第1形状部と、前記第2状態にする第2形状部と、を前記周面に有し、
前記第1形状部と前記第2形状部とは、前記カムの中心からの距離が異なり、
前記カムは、前記第1形状部における前記第2形状部の始端部に接する領域および前記第2形状部の終端部に接する領域に設けられる開度調整部であって、前記第2形状部に向かって前記カムの中心からの距離が徐々に変化するように傾斜する前記開度調整部を前記周面に有する、間欠バルブ装置。
【請求項2】
前記間欠バルブは、第1位置および第2位置に変位可能なピストンを有し、前記ピストンが前記第1位置にあるとき前記第1状態をとり、前記ピストンが前記第2位置にあるとき前記第2状態をとり
前記間欠バルブ装置は、前記カムおよび前記ピストンを連結する連結部を備え、
前記連結部は、前記周面に接するよう配置され、前記第1形状部に接すると第1方向に変位して前記ピストンを前記第1位置に移動させ、前記第2形状部に接すると第2方向に変位して前記ピストンを前記第2位置に移動させる、請求項1に記載の間欠バルブ装置。
【請求項3】
前記連結部を前記カムに向けて付勢する付勢部材を備える、請求項2に記載の間欠バルブ装置。
【請求項4】
前記被塗工体は、二次電池の集電体であり、
前記塗料は、二次電池の電極スラリーである、請求項1乃至3のいずれか1項に記載の間欠バルブ装置。
【請求項5】
被塗工体に塗料を塗布するダイと、
前記ダイへの前記塗料の供給と非供給とを切り替える請求項1乃至4のいずれか1項に記載の間欠バルブ装置と、を備える、間欠塗工装置。
【請求項6】
前記塗料を貯留するタンクと、
前記タンクおよび前記間欠バルブ装置を接続する送り管路および戻し管路と、
前記送り管路に設けられ、前記タンクから前記間欠バルブ装置に前記塗料を送るポンプと、を備え、
前記塗料は、前記間欠バルブが前記第2状態にあるとき、前記戻し管路を介して前記タンクに戻る、請求項5に記載の間欠塗工装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、間欠バルブ装置および間欠塗工装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電気自動車(EV)、ハイブリッド車(HV)、プラグインハイブリッド車(PHV)等の普及にともない、二次電池の出荷が増えている。特にリチウムイオン二次電池の出荷が増えている。一般的な二次電池は、正極板、負極板、セパレータおよび電解液を主な構成要素とする。正極板や負極板といった電極板は、金属箔からなる集電体の表面に、電極活物質が積層された構造を有する。
【0003】
従来、このような電極板の製造方法として、活物質および溶媒を混合した電極スラリーを吐出するダイと、ダイへの電極スラリーの供給および非供給を切り替える間欠バルブと、を備えた間欠塗工装置を用いて、長尺の金属箔の表面に電極スラリーを間欠的に塗布する方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2010-108678号公報
【発明の概要】
【0005】
二次電池の出荷増にともない、電極板の製造時間を短縮したいという要求がある。しかしながら、電極板の製造時間を短縮するために金属箔に電極スラリーを高速で間欠塗布すると、間欠バルブの応答性の限界から、電極スラリーの塗布精度が低下するおそれがあった。塗布精度の低下は、電極板の品質低下につながり得る。
【0006】
本発明はこうした状況に鑑みてなされたものであり、その目的は、電極板の製造時間短縮と品質維持との両立を図る技術を提供することにある。
【0007】
本発明のある態様は、間欠バルブ装置である。当該間欠バルブ装置は、被塗工体に塗料を塗布するダイへ塗料を供給する第1状態、および供給を停止する第2状態を切り替え可能な間欠バルブと、間欠バルブの第1状態および第2状態を切り替える駆動部と、を備える。駆動部は、間欠バルブに周面が接続されて一方向に回転するカムを有する。カムは、間欠バルブを第1状態にする第1形状部と、第2状態にする第2形状部と、を周面に有する。
【0008】
本発明の他の態様は、間欠塗工装置である。当該間欠塗工装置は、被塗工体に塗料を塗布するダイと、ダイへの塗料の供給と非供給とを切り替える上記態様の間欠バルブ装置と、を備える。
【0009】
以上の構成要素の任意の組合せ、本発明の表現を方法、装置、システムなどの間で変換したものもまた、本発明の態様として有効である。
【0010】
本発明によれば、電極板の製造時間短縮と品質維持との両立を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】実施の形態に係る間欠塗工装置の模式図である。
図2】間欠バルブ装置の概略構造を示す側面図である。
図3図3(A)~図3(D)は、カムが回転する様子を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を好適な実施の形態をもとに図面を参照しながら説明する。実施の形態は、発明を限定するものではなく例示であって、実施の形態に記述されるすべての特徴やその組み合わせは、必ずしも発明の本質的なものであるとは限らない。各図面に示される同一または同等の構成要素、部材、処理には、同一の符号を付するものとし、適宜重複した説明は省略する。また、各図に示す各部の縮尺や形状は、説明を容易にするために便宜的に設定されており、特に言及がない限り限定的に解釈されるものではない。また、本明細書または請求項中に「第1」、「第2」等の用語が用いられる場合には、特に言及がない限りこの用語はいかなる順序や重要度を表すものでもなく、ある構成と他の構成とを区別するためのものである。また、各図面において実施の形態を説明する上で重要ではない部材の一部は省略して表示する。
【0013】
図1は、実施の形態に係る間欠塗工装置の模式図である。間欠塗工装置1は、ダイ2と、間欠バルブ装置4と、タンク6と、ポンプ8と、送り管路10と、戻し管路12と、ダイ供給管路14と、を備える。
【0014】
ダイ2は、被塗工体16に塗料18を塗布する器具である。本実施の形態に係る間欠塗工装置1は、二次電池の電極板を製造するために用いられる。二次電池の電極板は、集電体に電極スラリーを塗布して乾燥させたシート状の電極素材である。したがって本実施の形態では、被塗工体16は、二次電池の集電体であり、塗料18は、二次電池の電極スラリーである。集電体は、例えば金属箔である。電極スラリーは、例えば正極活物質または負極活物質と溶媒との混合物である。一般的なリチウムイオン二次電池の場合、正極の電極板は、アルミ箔上に、コバルト酸リチウムやリン酸鉄リチウム等の正極活物質を含むスラリーが塗布されて作製される。また、負極の電極板は、銅箔上に、黒鉛等の負極活物質を含むスラリーが塗布されて作製される。
【0015】
ダイ2は、吐出口84がバックアップロール20の周面と所定の間隔をあけて対向するように配置される。被塗工体16は、バックアップロール20の回転によって、バックアップロール20と吐出口84とが対向する位置に連続的に搬送される。
【0016】
ダイ2には、ダイ供給管路14を介して間欠バルブ装置4が接続される。間欠バルブ装置4は、ダイ2への塗料18の供給と非供給とを切り替える装置である。間欠塗工装置1は、塗料18がダイ2に供給されている間、ダイ2から被塗工体16に塗料18を吐出することができる。間欠バルブ装置4には、送り管路10および戻し管路12を介してタンク6が接続される。
【0017】
タンク6は、塗料18を貯留する。送り管路10には、ポンプ8が設けられ、ポンプ8の駆動によりタンク6から間欠バルブ装置4に塗料18が送られる。間欠バルブ装置4は、タンク6から供給される塗料18をダイ供給管路14を介してダイ2に供給する。あるいは、間欠バルブ装置4は、タンク6から供給される塗料18を戻し管路12を介してタンク6に戻す。
【0018】
間欠バルブ装置4がダイ2に塗料18を供給することで、ダイ2から塗料18を吐出して被塗工体16に塗料18の塗布部18aを形成することができる。また、間欠バルブ装置4がタンク6に塗料18を戻すことで、ダイ2からの塗料18の塗布を停止して被塗工体16に塗料18の未塗布部16aを形成することができる。つまり、間欠バルブ装置4によって、被塗工体16に対して塗料18を間欠塗工することができる。未塗布部16aは、電極のセンターリードの貼り付け等に用いられる。
【0019】
図2は、間欠バルブ装置の概略構造を示す側面図である。図3(A)~図3(D)は、カムが回転する様子を示す模式図である。図2では、間欠バルブの断面を図示している。間欠バルブ装置4は、間欠バルブ22と、駆動部24と、連結部26と、を備える。
【0020】
間欠バルブ22は、シリンダ28と、ピストン30と、を有する。シリンダ28は、ピストン30が摺動可能に挿通される第1開口32を上面に有し、送り管路10が接続される第2開口34、戻し管路12が接続される第3開口36、およびダイ供給管路14が接続される第4開口38を側面に有する。また、シリンダ28は、分岐流路40、ダイ流路42およびタンク流路44を内部に有する。分岐流路40は、一端が第2開口34に接続される。分岐流路40の他端側は2つに分岐し、一方の分岐先がダイ流路42の一端に接続され、他方の分岐先がタンク流路44の一端に接続される。ダイ流路42の他端は第4開口38に接続され、タンク流路44の他端は第3開口36に接続される。
【0021】
シリンダ28の第1開口32と、分岐流路40およびダイ流路42が連結する第1連結部46と、分岐流路40およびタンク流路44が連結する第2連結部48とは、直線上に並ぶように配置される。第1開口32、第2連結部48および第1連結部46は、この順に配列される。ピストン30は、一端側が第1開口32、第2連結部48および第1連結部46に挿通されている。
【0022】
ピストン30における第1連結部46の近傍部には、第1弁体50が設けられる。ピストン30における第2連結部48の近傍部には、第2弁体52が設けられる。第1弁体50および第2弁体52は、ピストン30の軸方向Xにおける両者の間隔が第1連結部46と第2連結部48との間隔よりも広くなるように配置されている。
【0023】
ピストン30は、シリンダ28に対して軸方向Xに変位することで、第1位置および第2位置に変位可能である。ピストン30は、第2位置にあるときよりもシリンダ28内に進入したとき第1位置をとり、第1位置にあるときよりもシリンダ28内から退出したとき第2位置をとる。図2には、第1位置にあるときのピストン30が図示されている。
【0024】
ピストン30が第1位置にあるとき、第1弁体50と第1連結部46との間には隙間が形成され、分岐流路40とダイ流路42とが連通される。一方、第2弁体52は第2連結部48に嵌合する。つまり、第2連結部48は、第2弁体52の弁座として機能する。これにより、分岐流路40とタンク流路44とが遮断される。
【0025】
ピストン30が第2位置にあるとき、第1弁体50は第1連結部46に嵌合する。つまり、第1連結部46は、第1弁体50の弁座として機能する。これにより、分岐流路40とダイ流路42とが遮断される。一方、第2弁体52と第2連結部48との間には隙間が形成され、分岐流路40とタンク流路44とが連通される。
【0026】
間欠バルブ22は、ピストン30が第1位置にあるとき第1状態をとり、ピストン30が第2位置にあるとき第2状態をとる。間欠バルブ22の第1状態とは、ダイ2へ塗料18を供給する状態である。一方、間欠バルブ22の第2状態とは、ダイ2への塗料18の供給を停止する状態である。
【0027】
つまり、間欠バルブ22が第1状態にあるとき、ピストン30は第1位置をとるため、分岐流路40とダイ流路42とが連通され、分岐流路40とタンク流路44とが遮断される。したがって、送り管路10から第2開口34を介して分岐流路40に流れ込む塗料18は、ダイ流路42、第4開口38およびダイ供給管路14を経由して、ダイ2に供給される。一方、間欠バルブ22が第2状態にあるとき、ピストン30は第2位置をとるため、分岐流路40とダイ流路42とが遮断され、分岐流路40とタンク流路44とが連通される。したがって、送り管路10から第2開口34を介して分岐流路40に流れ込む塗料18は、タンク流路44、第3開口36および戻し管路12を経由して、タンク6に戻される。
【0028】
駆動部24は、間欠バルブ22の第1状態および第2状態を切り替える機構である。駆動部24は、モータ54と、カム56と、を有する。モータ54は、サーボモータ等で構成される。モータ54は、モータ軸58を有する。カム56は、円板状であり、モータ軸58に連結される。カム56は、モータ54によって一方向に回転する。本実施の形態では、カム56は、回転方向Aに回転する。カム56の周面60は、連結部26を介して間欠バルブ22に接続される。
【0029】
連結部26は、駆動部24のカム56と間欠バルブ22のピストン30とを連結する。本実施の形態の連結部26は、ピストン30の軸方向Xに延びる第1連結部材62と、軸方向Xと交わる方向に延びる第2連結部材64と、を有する。第1連結部材62は、一端がカム56の周面60に接するよう配置される。第1連結部材62の他端は、第2連結部材64の一端に固定される。第2連結部材64の他端は、ピストン30におけるシリンダ28から突出する端部に固定される。連結部26は、ピストン30と一体となって、ピストン30の軸方向Xに変位することができる。第1連結部材62が第2連結部材64からカム56に向かって延びる方向と、ピストン30が第2連結部材64からシリンダ28に向かって延びる方向とは、同じ方向である。
【0030】
カム56は、間欠バルブ22を第1状態にする第1形状部66と、第2状態にする第2形状部68とを周面60に有する。本実施の形態の周面60は、1つの第1形状部66と1つの第2形状部68とで構成される。第1形状部66と第2形状部68とは、カム56の中心C、言い換えればモータ軸58からの距離が異なる。具体的には、第1形状部66は、第2形状部68に比べて中心Cからの距離が近く、第2形状部68は、第1形状部66に比べて中心Cからの距離が遠い。したがって、周面60は、おおよそ真円状である第1形状部66と、この真円の円周上から突出する第2形状部68とで構成される。
【0031】
連結部26は、第1連結部材62が第1形状部66に接すると、第1方向X1に変位する。これにともない、ピストン30も第1方向X1に変位して第1位置に移動する。この結果、間欠バルブ22は、第1状態となる。また、連結部26は、第1連結部材62が第2形状部68に接すると、第2方向X2に変位する。これにともない、ピストン30も第2方向X2に変位して第2位置に移動する。この結果、間欠バルブ22は、第2状態となる。本実施の形態において、第1方向X1は、第1連結部材62がカム56の中心Cに近づく方向であり、第2方向X2は、第1連結部材62がカム56の中心Cから離れる方向である。また、本実施の形態では、第1方向X1は下方向であり、第2方向X2は上方向である。
【0032】
例えば図3(A)に示すように、第1連結部材62が周面60の第1形状部66に当接している状態で、カム56が回転したとする。カム56が回転することで、図3(B)に示すように、周面60に対する第1連結部材62の当接位置が第1形状部66内で移動する。
【0033】
さらにカム56が回転して、図3(C)に示すように、周面60に対する第1連結部材62の当接位置が第1形状部66から第2形状部68に移ると、第1連結部材62は第2方向X2に変位して、カム56の中心Cから離間する。この第1連結部材62の変位にともなって、第2連結部材64およびピストン30は、第1連結部材62と同じ第2方向X2に変位する。したがって、ピストン30は、シリンダ28から退出する方向に変位して、第2位置をとる。よって、第2形状部68は、間欠バルブ22を第2状態にすることができる。
【0034】
さらにカム56が回転して、図3(D)に示すように、周面60に対する第1連結部材62の当接位置が第2形状部68から第1形状部66に移ると、第1連結部材62は第1方向X1に変位して、カム56の中心Cに近づく。この第1連結部材62の変位にともなって、第2連結部材64およびピストン30は、第1連結部材62と同じ第1方向X1に変位する。したがって、ピストン30は、シリンダ28に進入する方向に変位して、第1位置をとる。よって、第1形状部66は、間欠バルブ22を第1状態にすることができる。これにより、間欠塗工装置1は、カム56の回転と同期して等間隔に塗布部18a(あるいは未塗布部16a)を形成することができる。
【0035】
また、間欠バルブ装置4は、連結部26をカム56に向けて、言い換えれば第1方向X1に付勢する、付勢部材70を備える。例えば、付勢部材70は、コイルばね等のばねで構成される。本実施の形態では、付勢部材70は、支持枠72によって支持される。支持枠72は、複数の支柱74と、天板76と、を有する。各支柱74は、ピストン30の軸方向Xに延びて、一端がシリンダ28に連結される。各支柱74は、第2連結部材64よりもシリンダ28から遠い位置まで延びる。天板76は、第2連結部材64と平行に延びて、各支柱74の他端に固定される。ピストン30と第2連結部材64との連結部は、支持枠72に囲われる。
【0036】
付勢部材70は、第2連結部材64と天板76との間に配置され、一端が天板76に固定され、他端が第2連結部材64に固定される。付勢部材70は、天板76に支持されて、第2連結部材64を第1方向X1に付勢する。第2連結部材64が付勢部材70によって第1方向X1に付勢されることで、第1連結部材62およびピストン30も第1方向X1に付勢される。したがって、連結部26およびピストン30は、第2方向X2に変位する際、付勢部材70の付勢力に抗して天板76に近づく方向に変位する。また、連結部26およびピストン30は、自重と付勢部材70の付勢力により、第1方向X1に変位する。よって、ピストン30の第2位置から第1位置への移動は、付勢部材70の付勢力によって補助される。なお、ピストン30は、自身を第1方向X1に付勢する付勢部材(図示せず)を内蔵していてもよい。この場合、間欠バルブ22は、例えば軸方向Xが水平に延びるように姿勢を定めることができる。
【0037】
また、カム56は、第1形状部66における第2形状部68と接する領域に、開度調整部78を有する。開度調整部78は、第1形状部66において、カム56の回転方向Aにおける第2形状部68の始端部に接する領域と、第2形状部68の終端部に接する領域とに設けられる。各開度調整部78は、第2形状部68に向かって中心Cからの距離が徐々に変化するように傾斜する。つまり、第1形状部66と第2形状部68との境界において、周面60に段差が生じないように、すなわち第1形状部66と第2形状部68とが滑らかに連続するように、開度調整部78が設けられる。
【0038】
開度調整部78を設けることで、カム56および第1連結部材62の摩耗を抑制することができる。また、第1連結部材62は、周面60に当接する端部が第2形状部68から第1形状部66に移る際、開度調整部78を経ることで第1方向X1に徐々に変位する。このため、ピストン30は、第2位置から第1位置へ徐々に移動する。したがって、第1弁体50と第1連結部46との隙間は、徐々に大きくなる。これにより、間欠バルブ装置4が第2状態から第1状態に切り替わる際に、ダイ2からの塗料18の吐出量が急激に増大することを抑制することができる。この結果、塗布部18aの膜厚が未塗布部16aとの境界領域において変化することを抑制することができる。
【0039】
以上説明したように、本実施の形態の間欠バルブ装置4は、被塗工体16に塗料18を塗布するダイ2へ塗料18を供給する第1状態、およびダイ2への塗料18の供給を停止する第2状態を切り替え可能な間欠バルブ22と、間欠バルブ22の第1状態および第2状態を切り替える駆動部24と、を備える。駆動部24は、間欠バルブ22に周面60が接続されて一方向に回転するカム56を有する。カム56は周面60に、間欠バルブ22を第1状態にする第1形状部66と、第2状態にする第2形状部68と、を有する。また、本実施の形態の間欠塗工装置1は、被塗工体16に塗料18を塗布するダイ2と、本実施の形態に係る間欠バルブ装置4と、を備える。
【0040】
従来の間欠バルブは、クランクを介してピストンに連結されたモータの正転と逆転とを切り替えることで、ダイへの塗料の供給と非供給とを切り替えていた。モータの回転を繰り返し逆方向に切り替える構成では、塗料の高速間欠塗布の実現に求められる程度に切り替え速度を上げることは困難であった。ダイへの塗料の供給と非供給とを高速で切り替えられないと、被塗工体への塗料の塗布精度が低下し得る。具体的には、間欠塗工の高速化のために被塗工体の搬送速度を速めると、未塗布部の形成にかけられる時間が短くなる。この場合に、塗料の供給と非供給との切り替え速度が十分でないと、未塗布部の寸法ばらつきが大きくなる。
【0041】
これに対し、本実施の形態の間欠バルブ装置4は、周面60に第1形状部66と第2形状部68とを有するカム56を同一方向に回転させることで、カム56の回転周期に合わせてダイ2への塗料18の供給と非供給とを切り替えている。このため、モータの回転方向を切り替える構成に比べて、ダイ2への塗料18の供給と非供給との切り替え速度を上げることができる。これにより、間欠バルブ装置4が第2状態をとる時間を短くすることができ、未塗布部16aの形成時間の短縮に対応することができる。この結果、塗料18の塗布精度を維持しながら、間欠塗工の高速化を図ることができる。よって、本実施の形態に係る間欠バルブ装置4および間欠塗工装置1によれば、電極板の製造時間短縮と品質維持との両立を図ることができる。
【0042】
また、本実施の形態の間欠バルブ22は、第1位置および第2位置に変位可能なピストン30を有し、ピストン30が第1位置にあるとき第1状態をとり、ピストン30が第2位置にあるとき第2状態をとる。また、第1形状部66と第2形状部68とは、カム56の中心Cからの距離が異なる。また、間欠バルブ装置4は、カム56およびピストン30を連結する連結部26を備える。連結部26は、カム56の周面60に接するよう配置され、第1形状部66に接すると第1方向に変位してピストン30を第1位置に移動させ、第2形状部68に接すると第2方向に変位してピストン30を第2位置に移動させる。このような構成により、間欠バルブ22および駆動部24の配置の自由度を高めることができる。
【0043】
また、間欠バルブ装置4は、連結部26をカム56に向けて付勢する付勢部材70を備える。これにより、カム56と連結部26との接続状態をより確実に維持することができる。このため、周面60の軌跡の変化に対して、ピストン30の変位をより高精度に追従させることができる。
【0044】
また、間欠塗工装置1は、塗料18を貯留するタンク6と、タンク6と間欠バルブ装置4とを接続する送り管路10および戻し管路12と、送り管路10に設けられてタンク6から間欠バルブ装置4に塗料18を送るポンプ8と、を備える。塗料18は、間欠バルブ装置4が第2状態にあるとき、戻し管路12を介してタンク6に戻る。これにより、ダイ2からの塗料18の吐出を停止させた状態においても、間欠バルブ装置4への塗料18の供給を継続することができる。したがって、ポンプ8を常時駆動させておくことができるため、間欠塗工装置1のシステム構成の簡略化を図ることができる。
【0045】
以上、本発明の実施の形態について詳細に説明した。前述した実施の形態は、本発明を実施するにあたっての具体例を示したものにすぎない。実施の形態の内容は、本発明の技術的範囲を限定するものではなく、請求の範囲に規定された発明の思想を逸脱しない範囲において、構成要素の変更、追加、削除等の多くの設計変更が可能である。設計変更が加えられた新たな実施の形態は、組み合わされる実施の形態および変形それぞれの効果をあわせもつ。前述の実施の形態では、このような設計変更が可能な内容に関して、「本実施の形態の」、「本実施の形態では」等の表記を付して強調しているが、そのような表記のない内容でも設計変更が許容される。以上の構成要素の任意の組み合わせも、本発明の態様として有効である。図面の断面に付したハッチングは、ハッチングを付した対象の材質を限定するものではない。
【0046】
実施の形態では、カム56の周面60に第1形状部66および第2形状部68が1つずつ設けられているが、第1形状部66および第2形状部68は複数であってもよい。第1形状部66および第2形状部68を複数設ける場合、カム56の回転速度を抑えることができる。また、各第1形状部66および各第2形状部68と第1連結部材62との接触回数を減らすことができる。これにより、モータ54やカム56の長寿命化を図ることができる。あるいは、各第1形状部66および各第2形状部68の配置を調整することで、カム56の回転速度を変えることなく未塗布部16aの間隔を調整することができる。
【0047】
実施の形態では、カム56は第1形状部66に対して第2形状部68が突出する形状を有するが、カム56の形状は特に限定されない。例えば、第1形状部66に対して第2形状部68が凹んだ形状であってもよい。つまり、第1形状部66は、第2形状部68に比べて中心Cからの距離が遠く、第2形状部68は、第1形状部66に比べて中心Cからの距離が近くてもよい。このようなカム56が用いられる場合、例えば、第1連結部材62が第2連結部材64からカム56に向かって延びる方向と、ピストン30が第2連結部材64からシリンダ28に向かって延びる方向とが逆方向となるように、カム56とシリンダ28との位置関係が定められる。また、付勢部材70は、第2連結部材64を第2方向X2に付勢するように設置される。
【0048】
実施の形態では、連結部26を介してカム56とピストン30とが間接的に接続されているが、連結部26を介さずにカム56とピストン30とが直に接続されてもよい。例えば、カム56は、シリンダ28から突出するピストン30の先端部に当接するように配置される。また、ピストン30は、付勢部材70によってカム56に向けて付勢される。つまり、ピストン30は、第2方向X2に付勢される。また、カム56は、第1形状部66に対して第2形状部68が凹んだ形状を有する。カム56の回転によりピストン30と周面60との当接位置が第1形状部66に至ると、ピストン30は、カム56に押されて付勢部材70の付勢力に抗して第1方向X1に変位し、第1位置をとる。また、ピストン30と周面60との当接位置が第2形状部68に至ると、ピストン30は、付勢部材70の付勢力により第2方向X2に変位し、第2位置をとる。
【0049】
実施の形態では、ピストン30が挿通される第1開口32に近い側に戻し管路12が配置され、第1開口32から遠い側にダイ供給管路14が配置されているが、管路の配置は逆であってもよい。この場合、ピストン30は、第2位置にあるときよりもシリンダ28内から退出したとき第1位置をとり、第1位置にあるときよりもシリンダ28内に進入したとき第2位置をとる。
【符号の説明】
【0050】
1 間欠塗工装置
2 ダイ
4 間欠バルブ装置
6 タンク
8 ポンプ
10 送り管路
12 戻し管路
16 被塗工体
18 塗料
22 間欠バルブ
24 駆動部
26 連結部
30 ピストン
56 カム
60 周面
66 第1形状部
68 第2形状部
70 付勢部材
図1
図2
図3