(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-13
(45)【発行日】2023-07-24
(54)【発明の名称】スロットルグリップ装置
(51)【国際特許分類】
F02D 11/02 20060101AFI20230714BHJP
F02D 9/02 20060101ALI20230714BHJP
【FI】
F02D11/02 R
F02D9/02 351J
(21)【出願番号】P 2019013512
(22)【出願日】2019-01-29
【審査請求日】2021-12-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000213954
【氏名又は名称】朝日電装株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100095614
【氏名又は名称】越川 隆夫
(72)【発明者】
【氏名】大城 幸男
【審査官】戸田 耕太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-038290(JP,A)
【文献】特開2013-204450(JP,A)
【文献】特開2015-081564(JP,A)
【文献】特開2004-314929(JP,A)
【文献】特開平07-231550(JP,A)
【文献】特開平05-113713(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02D 11/02
F02D 9/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のスロットルグリップの回転操作と共に回転し得る
とともに、所定位置に磁石が取り付けられた連動部材と、
前記磁石から生じる磁気の変化を検出可能な磁気センサから成り、前記磁気の変化を検出して前記連動部材の回転角度を検出することにより前記スロットルグリップの回転角度を検出し得る回転角度検出手段と、
前記スロットルグリップの回転操作時、当該スロットルグリップ及び連動部材を初期位置に向かって回転方向に付勢する
とともに、前記回転方向に加え、前記連動部材を軸方向に付勢するねじりコイルバネから成るリターンスプリングと、
前記連動部材を回転自在に
収容するとともに、前記リターンスプリングが取り付けられるケースと、
を具備し、前記回転角度検出手段で検出された前記スロットルグリップの回転角度に応じて車両のエンジンを制御可能とされたスロットルグリップ装置であって、
前記連動部材の一方の端面側に前記回転角度検出手段が配設されるとともに、当該連動部材の他方の端面側に前記リターンスプリングが配設され
、且つ、前記ケースは、前記連動部材の前記磁石と前記回転角度検出手段との間に形成されて前記連動部材の一方の端面と接触して摺動させ得る摺動面を有するとともに、前記リターンスプリングは、前記連動部材を軸方向に付勢して前記回転角度検出手段の配設方向の前記摺動面に向かって押圧することを特徴とするスロットルグリップ装置。
【請求項2】
前記連動部材は、一方の端面に前記磁石を取り付ける取付凹部が形成されるとともに、他方の端面に前記リターンスプリングの一端を係止する係止部が形成されたことを特徴とする請求項1記載のスロットルグリップ装置。
【請求項3】
前記連動部材の周方向に対する摺動面を有するとともに、当該連動部材を回転自在に保持する保持部材を具備し、当該保持部材の摺動面には、前記連動部材の回転方向に延びるリブが形成されたことを特徴とする請求項1又は請求項2記載のスロットルグリップ装置。
【請求項4】
前記保持部材は、前記リターンスプリングを保持する保持部と、前記連動部材の一方の端面の縁部又は他方の端面の縁部を覆って回転の案内が可能とされた案内部とが一体形成されたことを特徴とする請求項3記載のスロットルグリップ装置。
【請求項5】
前記連動部材は、スロットルグリップと別体とされたことを特徴とする請求項1~4の何れか1つに記載のスロットルグリップ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スロットルグリップの回転操作に基づいて車両のエンジンが制御されるスロットルグリップ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近時の二輪車においては、スロットルグリップの回転角度をポテンショメータ等のスロットル開度センサにて検出し、その検出値を電気信号として当該二輪車が搭載する電子制御装置等に送るよう構成されたスロットルグリップ装置が普及されるに至っている。そして、かかる検出信号に基づき電子制御装置が所定の演算を行い、その演算結果に基づいてエンジンの点火時期、吸気バルブ若しくはスロットルバルブの開閉が制御されるようになっている。
【0003】
従来のスロットルグリップ装置として、例えば特許文献1にて開示されたものが挙げられる。かかる従来のスロットルグリップ装置は、スロットルグリップと連動する連動部材に磁石を取り付けるとともに、その磁石の磁気変化を磁気センサにて検出することにより、連動部材及びスロットルグリップの回転角度を検出してエンジン制御が行われるようになっていた。
【0004】
また、従来のスロットルグリップ装置は、スロットルグリップ及び連動部材を初期位置に向かって回転方向に付勢するねじりコイルバネから成るリターンスプリングを具備しており、スロットルグリップの回転操作時、リターンスプリングの付勢力が連動部材に付与されるよう構成されていた。これにより、スロットルグリップを回転操作した後、運転者の把持力を緩めることにより、リターンスプリングの付勢力によってスロットルグリップが初期位置に戻るようになっていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記従来技術においては、連動部材の一方の端面側にリターンスプリング及び磁気センサ(回転角度検出手段)が配設されていたため、リターンスプリング及び磁気センサの取付位置が制限され、構成部品のレイアウトの自由度が低下してしまうといった不具合がある。また、連動部材とリターンスプリングの間に磁気センサを配設する必要があり、磁気センサから延設される配線の取り回しが難しくなって組み付け性が悪化してしまう虞がある。
【0007】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、構成部品のレイアウトの自由度及び組み付け性を向上させることができるスロットルグリップ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1記載の発明は、車両のスロットルグリップの回転操作と共に回転し得るとともに、所定位置に磁石が取り付けられた連動部材と、前記磁石から生じる磁気の変化を検出可能な磁気センサから成り、前記磁気の変化を検出して前記連動部材の回転角度を検出することにより前記スロットルグリップの回転角度を検出し得る回転角度検出手段と、前記スロットルグリップの回転操作時、当該スロットルグリップ及び連動部材を初期位置に向かって回転方向に付勢するとともに、前記回転方向に加え、前記連動部材を軸方向に付勢するねじりコイルバネから成るリターンスプリングと、前記連動部材を回転自在に収容するとともに、前記リターンスプリングが取り付けられるケースとを具備し、前記回転角度検出手段で検出された前記スロットルグリップの回転角度に応じて車両のエンジンを制御可能とされたスロットルグリップ装置であって、前記連動部材の一方の端面側に前記回転角度検出手段が配設されるとともに、当該連動部材の他方の端面側に前記リターンスプリングが配設され、且つ、前記ケースは、前記連動部材の前記磁石と前記回転角度検出手段との間に形成されて前記連動部材の一方の端面と接触して摺動させ得る摺動面を有するとともに、前記リターンスプリングは、前記連動部材を軸方向に付勢して前記回転角度検出手段の配設方向の前記摺動面に向かって押圧することを特徴とする。
【0009】
請求項2記載の発明は、請求項1記載のスロットルグリップ装置において、前記連動部材は、一方の端面に前記磁石を取り付ける取付凹部が形成されるとともに、他方の端面に前記リターンスプリングの一端を係止する係止部が形成されたことを特徴とする。
【0010】
請求項3記載の発明は、請求項1又は請求項2記載のスロットルグリップ装置において、前記連動部材の周方向に対する摺動面を有するとともに、当該連動部材を回転自在に保持する保持部材を具備し、当該保持部材の摺動面には、前記連動部材の回転方向に延びるリブが形成されたことを特徴とする。
【0011】
請求項4記載の発明は、請求項3記載のスロットルグリップ装置において、前記保持部材は、前記リターンスプリングを保持する保持部と、前記連動部材の一方の端面の縁部又は他方の端面の縁部を覆って回転の案内が可能とされた案内部とが一体形成されたことを特徴とする。
【0012】
請求項5記載の発明は、請求項1~4の何れか1つに記載のスロットルグリップ装置において、前記連動部材は、スロットルグリップと別体とされたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
請求項1の発明によれば、連動部材の一方の端面側に回転角度検出手段が配設されるとともに、当該連動部材の他方の端面側にリターンスプリングが配設されたので、連動部材に対するリターンスプリング及び回転角度検出手段の配設位置を任意に設定することができ、構成部品のレイアウトの自由度及び組み付け性を向上させることができる。
【0014】
また、リターンスプリングは、回転方向に加え、連動部材を軸方向に付勢して回転角度検出手段の配設方向の摺動面に向かって押圧するので、連動部材の一方の端面と回転角度検出手段との離間寸法を一定に保持させることができ、回転角度検出手段によるスロットルグリップの回転角度の検出精度を向上させることができるとともに、連動部材の一方の端面を摺動面に押圧してガタを吸収することができる。
【0015】
請求項3の発明によれば、連動部材の周方向に対する摺動面を有するとともに、当該連動部材を回転自在に保持する保持部材を具備し、当該保持部材の摺動面には、連動部材の回転方向に延びるリブが形成されたので、連動部材の周方向の摺動面の面積を小さくすることができ、連動部材の回転を円滑に行わせることができる。
【0016】
請求項4の発明によれば、保持部材は、リターンスプリングを保持する保持部と、連動部材の一方の端面の縁部又は他方の端面の縁部を覆って回転の案内が可能とされた案内部とが一体形成されたので、保持部材が連動部材を保持する機能と、リターンスプリングを保持する機能と、連動部材の回転を案内する機能とを有することができる。
【0017】
請求項5の発明によれば、連動部材は、スロットルグリップと別体とされたので、スロットルグリップに付与された過大な荷重が連動部材に伝達されてしまうのを抑制することができるとともに、連動部材又はスロットルグリップの交換を容易にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の実施形態に係るスロットルグリップ装置の外観を示す正面図及び側面図
【
図6】同スロットルグリップ装置のケースの内部構成を示す斜視図
【
図7】同スロットルグリップ装置の保持部材を示す斜視図
【
図8】同スロットルグリップ装置の連動部材を示す斜視図
【
図10】同連動部材に取り付けられる磁石を示す斜視図
【
図11】同スロットルグリップ装置のリターンスプリングを示す斜視図
【
図12】同スロットルグリップ装置のケースに連動部材及びリターンスプリングを組み付けた状態を示す平面図
【
図13】同スロットルグリップ装置のケースに連動部材及びリターンスプリングを組み付けた状態を示す斜視図
【
図14】同スロットルグリップ装置のケースに連動部材及びリターンスプリングを組み付けた状態を示す斜視図
【
図15】同スロットルグリップ装置における他の形態の保持部材を示す斜視図
【
図16】同他の形態の保持部材により保持された連動部材を示す斜視図
【
図17】同他の形態の保持部材により連動部材が保持された状態を示す断面図
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら具体的に説明する。
本実施形態に係るスロットルグリップ装置は、
図1に示すように、二輪車のハンドルパイプHに取り付けられたスロットルグリップGの回転角度を検出し、その検出信号を二輪車が搭載するECU等電子制御装置に送信するためのもので、
図1~5に示すように、連動部材1と、磁気センサ2(回転角度検出手段)と、リターンスプリング3と、保持部材4と、ケースCとを有して構成されている。
【0020】
連動部材1は、車両のスロットルグリップGの回転操作と共に回転し得るもので、
図8、9に示すように、一方の端面M1及び他方の端面M2を有する略円筒形状の樹脂成形品から成り、スロットルグリップGの嵌合部Ga(
図3参照)を嵌合し得る被嵌合部1aと、磁石mを取り付けるための取付凹部1bと、リターンスプリング3の一端3aを係止するための係止部1cと、所定位置で突出したストッパ部1dとが形成されている。
【0021】
なお、本実施形態においては、連動部材1の一方の端面M1に被嵌合部1a、取付凹部1b及びストッパ部1dが形成されるとともに、他方の端面M2に係止部1cが形成されている。磁石mは、
図10に示すように、円弧状に屈曲しつつ高さが連続的に変化するヘリカル面maを有しており、取付凹部1bに取り付けられた状態で、ヘリカル面maが外方に臨むようになっている。
【0022】
ケースCは、二輪車(車両)のハンドルパイプHの先端側(スロットルグリップGの基端側)に固定されたもので、連動部材1を回転自在に保持するとともに、磁気センサ2(回転角度検出手段)及びリターンスプリング3が取り付けられている。本実施形態に係るケースCは、第1ケースCa及び第2ケースCbを組み付けて構成され、そのうち第1ケースCaは、
図6に示すように、連動部材1を保持する壁部Ca1、Ca2と、リターンスプリング3の他端3bを係止する係止部Ca3と、連動部材1のストッパ部1dが干渉可能な干渉部Ca4と、磁気センサ2を収容可能な収容部S1とが形成されている。
【0023】
壁部Ca1は、その一方の壁面が連動部材1の軸方向βの摺動面N1とされるとともに、壁部Ca1及び壁部Ca2の間の底面は、連動部材1の周方向の摺動面N2とされている。すなわち、壁部Ca1及び壁部Ca2の間に連動部材1を取り付けた状態において、連動部材1の一方の端面M1が壁部Ca1の摺動面N1に接触して摺動し得るようになっている。また、摺動面N2には、連動部材1の周方向に延びる一対のリブr1が形成されており、これらリブr1上を連動部材1が摺動して回転し得るよう構成されている。なお、第1ケースCaの所定位置には、ネジ穴n1が形成されている。
【0024】
一方、スロットルグリップGを初期位置から反対側に向かって回転操作しようとした場合、連動部材1のストッパ部1dが第1ケースCaの干渉部Ca4と干渉するよう設定されており、スロットルグリップGを初期位置から反対側に向かって回転操作するのを防止できるようになっている。
【0025】
磁気センサ2(回転角度検出手段)は、
図3に示すように、第1ケースCaの所定位置(収容部S1)に配設されたセンサから成り、磁石mから生じる磁気の変化を検出することにより、連動部材1の回転角度を検出し、スロットルグリップGの回転角度を検出可能とされている。具体的には、磁気センサ2は、磁石mの磁場変化(磁束密度の変化)に応じた出力電圧を得ることができるもので、例えばホール効果を利用した磁気センサであるホール素子(具体的には、磁石mの磁場(磁束密度)に比例した出力電圧を得ることができるリニアホールIC)等により構成されている。しかして、スロットルグリップGが回転操作されて連動部材1が回転するのに伴い、磁石mが回動すると、ヘリカル面maと磁気センサ2との離間寸法が変化して磁場が変化することとなる。
【0026】
これにより、連動部材1の回転角度によって磁場が変化するので、当該回転角度に応じた出力電圧を得ることができ、当該出力電圧に基づき連動部材1の回転角度(即ち、スロットルグリップGの回転角度)を検出することが可能とされている。このように検出されたスロットルグリップGの回転角度は、二輪車に搭載されたECU(エンジン・コントロール・ユニット)に対して電気信号として送信され、送信されたスロットルグリップGの回転角度に応じて車両のエンジンが制御され得るようになっている。なお、図中符号hは、磁気センサ2から延設された配線を示しており、かかる配線hを介して車両側に検出信号が送信されるよう構成されている。
【0027】
リターンスプリング3は、スロットルグリップGの回転操作時、当該スロットルグリップG及び連動部材1を初期位置に向かって回転方向αに付勢するコイルバネから成り、
図11に示すように、連動部材1の係止部1cに係止される一端3a、ケースCの係止部Ca3に係止される他端3b、及び一端3a及び他端3bの間に位置するコイル部3cとを有して構成されている。
【0028】
このように、リターンスプリング3は、その一端3aが連動部材1に取り付けられ、且つ、他端3bがケースCに取り付けられて組み付けられており、スロットルグリップGを回転させると、リターンスプリング3の付勢力に抗して連動部材2が回転するので、その付勢力がスロットルグリップGに伝わり、スロットルグリップG及び連動部材1を初期位置に戻す力が作用するのである。
【0029】
保持部材4は、
図7に示すように、連動部材1の周方向に対する摺動面N3を有するとともに、当該連動部材1を回転自在に保持する樹脂製の部品から成るもので、摺動面N3には、連動部材1の回転方向に延びる一対のリブr2が形成されている。かかる保持部材4はケースCに形成されたネジ穴n1と対応する位置にネジ穴n2が形成されており、
図4に示すように、連動部材1を保持した状態においてネジ穴n1、n2にネジbを挿通して螺合することによりケースC(第1ケースCa)に保持部材4を固定し得るようになっている。
【0030】
そして、第1ケースCaにおける壁部Ca1と壁部Ca2との間に連動部材1を取り付け、その連動部材1を覆って保持部材4を取り付けることにより、連動部材1の周方向全域を摺動面N2及び摺動面N3で覆って回転方向αの摺動を可能にしている。また、連動部材1は、回転時、摺動面N2のリブr1及び摺動面N3のリブr2上を摺動することとなるので、連動部材1に対する接触面を小さくすることができる。
【0031】
さらに、本実施形態に係る保持部材4は、
図7に示すように、リターンスプリング3を保持する保持部4aと、連動部材1の一方の端面M1の縁部(上側縁部)及び他方の端面M2の縁部(上側縁部)を覆って回転の案内が可能とされた案内部4bとが一体形成されている。これにより、保持部材4は、第1ケースCaとの間で連動部材1を回転自在に保持するとともに、保持部4aにてリターンスプリング3を適切な位置に保持し、且つ、案内部4bにて連動部材1の回転を案内(連動部材1が軸方向βにずれてしまうのを防止)させることができる。
【0032】
ここで、本実施形態に係るリターンスプリング3は、回転方向αに加え、連動部材1を軸方向βに付勢するものとされている。具体的には、本実施形態に係るリターンスプリング3は、
図11に示すように、隣合う巻き線の間に隙間を生じさせたコイル部3cとされており、
図12~14に示すように、第1ケースCaに組み付けられた状態において、コイル部3cの巻き線の間の隙間が小さくなる方向に圧縮されることとなり、連動部材1を軸方向βに付勢するようになっている。
【0033】
これにより、連動部材1は、リターンスプリング3による軸方向βの付勢力にて一方の端面M1が摺動面N1に押圧された状態で組み付けられることとなる。また、本実施形態に係るリターンスプリング3は、軸方向βの付勢力によって、
図12に示すように、コイル部3cの端部3caが所定範囲(端部3caの周方向に亘る所定範囲)に亘って連動部材1の他方の端面M2に接触した状態とされている。
【0034】
さらに、本実施形態に係るスロットルグリップ装置は、
図3、12に示すように、連動部材1の一方の端面M1側に磁気センサ2(回転角度検出手段)が配設されるとともに、当該連動部材1の他方の端面M2側にリターンスプリング3が配設されている。すなわち、連動部材1を挟んで一方側(
図12中の右側であって、一方の端面M1側)に磁気センサ2、他方側(同図中の左側であって、他方の端面M2側)にリターンスプリング3がそれぞれ配設されている。
【0035】
上記実施形態によれば、リターンスプリング3は、回転方向αに加え、連動部材1を軸方向βに付勢するので、連動部材1を軸方向βに対して弾力を有しつつ押圧してガタを吸収することができ、連動部材1の回転を安定して行わせることができるとともに、スロットルグリップGの操作性を維持させることができる。特に、本実施形態においては、第1ケースCaに連動部材1の一方の端面M1と接触して摺動させ得る摺動面N1が形成されるとともに、リターンスプリング3による軸方向βの付勢力にて当該一方の端面M1が摺動面N1に押圧されるので、連動部材1のガタを吸収することができる。
【0036】
また、連動部材1の一方の端面M1側(すなわち、連動部材1が摺動面N1に対して押圧される方向)に磁気センサ2(回転角度検出手段)が配設されたので、連動部材1の一方の端面M1と磁気センサ2(回転角度検出手段)との間の離間寸法を一定に保持することができ、磁気センサ2によるスロットルグリップGの回転角度の検出精度を向上させることができる。
【0037】
さらに、本実施形態に係るリターンスプリング3は、軸方向βの付勢力によって、コイル部3cの端部3caが所定範囲に亘って連動部材1に接触したので、リターンスプリング3の軸方向βの付勢力を連動部材1に対して略均等に付与させることができ、連動部材1の回転をより安定させることができる。すなわち、リターンスプリング3が軸方向βに付勢されているので、コイル部3cの端部3caが連動部材1との接触面である他方の端面M2に押し付けられ、所定範囲に亘って接触状態とされるのである。
【0038】
またさらに、連動部材1の周方向に対する摺動面N3を有するとともに、当該連動部材1を回転自在に保持する樹脂製の保持部材4を具備し、当該保持部材4の摺動面N3には、連動部材1の回転方向に延びるリブr2が形成されたので、連動部材1の周方向の摺動面の面積を小さくすることができ、連動部材1の回転を円滑に行わせることができる。
【0039】
また、本実施形態に係る保持部材4は、リターンスプリング3を保持する保持部4aと、連動部材1の一方の端面M1の縁部及び他方の端面の縁部(何れか一方の縁部であってもよい)を覆って回転の案内が可能とされた案内部4bとが一体形成されたので、保持部材4が連動部材1を保持する機能と、リターンスプリング3を保持する機能と、連動部材1の回転を案内する機能とを併せて有することができる。
【0040】
さらに、本実施形態に係る連動部材1は、スロットルグリップGと別体とされたので、スロットルグリップGに付与された過大な荷重が連動部材1に伝達されてしまうのを抑制することができるとともに、連動部材1又はスロットルグリップGの交換を容易にすることができる。
【0041】
加えて、本実施形態によれば、連動部材1の一方の端面M1側に磁気センサ2(回転角度検出手段)が配設されるとともに、当該連動部材1の他方の端面M2側にリターンスプリング3が配設されたので、連動部材1に対するリターンスプリング3及び磁気センサ2の配設位置を任意に設定することができ、構成部品のレイアウトの自由度及び組み付け性を向上させることができる。すなわち、磁気センサ2及びリターンスプリング3をそれぞれ連動部材1の一方の端面M1側及び他方の端面M2側に配設するので、それぞれが適切な位置(磁気センサ2においては磁石mと対峙させる位置、リターンスプリング3においては連動部材1に周方向の付勢力を確実に付与させる位置)に配設させることができるのである。
【0042】
また、連動部材1の一方の端面M1側に磁気センサ2が配設されるとともに、当該連動部材1の他方の端面M2側にリターンスプリング3が配設されたものにおいて、リターンスプリング3は、回転方向αに加え、連動部材1を軸方向βに付勢して磁気センサ2の配設方向の摺動面N1に向かって押圧するので、連動部材1の一方の端面M1と磁気センサ2との離間寸法を一定に保持させることができ、磁気センサ2によるスロットルグリップGの回転角度の検出精度を向上させることができるとともに、連動部材1の一方の端面M1を摺動面N1に押圧してガタを吸収することができる。
【0043】
以上、本実施形態について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば
図15~17に示すように、保持部材4に代えて、金属製の板材を所望形状に加工して得られた保持部材5を有するものであってもよい。かかる保持部材5は、同図に示すように、連動部材1の周方向に対する摺動面N4を有するとともに、当該連動部材1を回転自在に保持する金属製の部品から成る。また、この場合の保持部材5は、リターンスプリング3を保持する保持部5aが一体形成されている。
【0044】
さらに、スロットルグリップGの回転角度を検出する磁気センサ2に代えて、他の汎用的なセンサ(磁石の磁気を検出するものに限らないとともに、非接触式のセンサに限らず接触式のセンサ等も含む)としてもよい。またさらに、磁石mに代えて、連動部材1の周方向に着磁したものであってもよい。なお、適用される車両は、本実施形態の如く二輪車に限定されるものではなく、ハンドルバーHを有した他の車両(例えばATVやスノーモービル等)に適用してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0045】
連動部材の一方の端面側に回転角度検出手段が配設されるとともに、当該連動部材の他方の端面側にリターンスプリングが配設され、且つ、ケースは、連動部材の磁石と回転角度検出手段との間に形成されて連動部材の一方の端面と接触して摺動させ得る摺動面を有するとともに、リターンスプリングは、連動部材を軸方向に付勢して回転角度検出手段の配設方向の摺動面に向かって押圧するスロットルグリップ装置であれば、外観形状が異なるもの或いは他の機能が付加されたもの等にも適用することができる。
【符号の説明】
【0046】
1 連動部材
1a 被嵌合部
1b 取付凹部
1c 係止部
1d ストッパ部
2 磁気センサ(回転角度検出手段)
3 リターンスプリング
3a 一端
3b 他端
3c コイル部
3ca (コイル部の)端部
4 保持部材
4a 保持部
4b 案内部
5 保持部材
5a 保持部
G スロットルグリップ
Ga 嵌合部
C ケース
Ca 第1ケース
Ca1 壁部
Ca2 壁部
Ca3 係止部
Ca4 干渉部
Cb 第2ケース
m 磁石
ma ヘリカル面
h 配線
H ハンドルパイプ
M1 一方の端面
M2 他方の端面