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特許7313003シルセスキオキサン化合物より得られる重合体、透明樹脂組成物、及び放熱材
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  • 特許-シルセスキオキサン化合物より得られる重合体、透明樹脂組成物、及び放熱材 図1
  • 特許-シルセスキオキサン化合物より得られる重合体、透明樹脂組成物、及び放熱材 図2
  • 特許-シルセスキオキサン化合物より得られる重合体、透明樹脂組成物、及び放熱材 図3
  • 特許-シルセスキオキサン化合物より得られる重合体、透明樹脂組成物、及び放熱材 図4
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-13
(45)【発行日】2023-07-24
(54)【発明の名称】シルセスキオキサン化合物より得られる重合体、透明樹脂組成物、及び放熱材
(51)【国際特許分類】
   C08G 18/61 20060101AFI20230714BHJP
【FI】
C08G18/61
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2019083841
(22)【出願日】2019-04-25
(65)【公開番号】P2020180217
(43)【公開日】2020-11-05
【審査請求日】2022-02-14
(73)【特許権者】
【識別番号】504255685
【氏名又は名称】国立大学法人京都工芸繊維大学
(73)【特許権者】
【識別番号】000157119
【氏名又は名称】関東電化工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中 建介
(72)【発明者】
【氏名】井本 裕顕
(72)【発明者】
【氏名】松川 公洋
(72)【発明者】
【氏名】吉山 和秀
(72)【発明者】
【氏名】茂木 亮
【審査官】櫛引 智子
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第107903374(CN,A)
【文献】特開2013-072000(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
2つのアミノ基含有官能基を有するシルセスキオキサン化合物と、ジイソシアネート化合物との反応により得られる共重合体であって、
下記(II)で表される共重合体
【化1】
(式中、
1 は独立して、水素、炭素数1~40のアルキル、炭素数4~8のシクロアルキル、炭素数6~14のアリール、又は炭素数7~24のアリールアルキルであり、炭素数1~40のアルキルにおいて、任意の水素はハロゲンで置き換えられてもよく、隣接しない任意の-CH 2 -は、-O-または-CH=CH-で置き換えられてもよく;炭素数4~8のシクロアルキルにおいて、任意の水素はハロゲンで置き換えられてもよく;アリールおよびアリールアルキル中のベンゼン環において、任意の水素はハロゲンまたは炭素数1~10のアルキルで置き換えられてもよく、該炭素数1~10のアルキルにおいて、任意の水素はハロゲンで置き換えられてもよく、隣接しない任意の-CH 2 -は-O-または-CH=CH-で置き換えられてもよく;アリールアルキル中のアルキレンの炭素数は1~10であり、かつ隣接しない任意の-CH 2 -は-O-または-CH=CH-で置き換えられてもよく;
2 は独立して、炭素数1~40のアルキレン、炭素数4~8のシクロアルキレン、炭素数6~14のアリーレン、又は炭素数7~24のアリールアルキレンであり、炭素数1~40のアルキレンにおいて、任意の水素はハロゲンで置き換えられてもよく、隣接しない任意の-CH 2 -は、-O-または-CH=CH-で置き換えられてもよく;炭素数4~8のシクロアルキレンにおいて、任意の水素はハロゲンで置き換えられてもよく;アリーレンおよびアリールアルキレン中のベンゼン環において、任意の水素はハロゲンまたは炭素数1~10のアルキルで置き換えられてもよく、該炭素数1~10のアルキルにおいて、任意の水素はハロゲンで置き換えられてもよく、隣接しない任意の-CH 2 -は-O-または-CH=CH-で置き換えられてもよく;アリールアルキレン中のアルキレンの炭素数は1~10であり、かつ隣接しない任意の-CH 2 -は-O-または-CH=CH-で置き換えられてもよく;
3 はアルキレン、シクロアルキレン、アリーレン、又はアリールアルキレンであり;
nは1以上の整数を示す)
【請求項2】
前記シルセスキオキサン化合物が下記式(I)で表わされるシルセスキオキサンである請求項1に記載の共重合体。
【化2】
(式中、
1は独立して、水素、炭素数1~40のアルキル、炭素数4~8のシクロアルキル、炭素数6~14のアリール、又は炭素数7~24のアリールアルキルであり、炭素数1~40のアルキルにおいて、任意の水素はハロゲンで置き換えられてもよく、隣接しない任意の-CH2-は、-O-または-CH=CH-で置き換えられてもよく;炭素数4~8のシクロアルキルにおいて、任意の水素はハロゲンで置き換えられてもよく;アリールおよびアリールアルキル中のベンゼン環において、任意の水素はハロゲンまたは炭素数1~10のアルキルで置き換えられてもよく、該炭素数1~10のアルキルにおいて、任意の水素はハロゲンで置き換えられてもよく、隣接しない任意の-CH2-は-O-または-CH=CH-で置き換えられてもよく;アリールアルキル中のアルキレンの炭素数は1~10であり、かつ隣接しない任意の-CH2-は-O-または-CH=CH-で置き換えられてもよく;
2は独立して、炭素数1~40のアルキレン、炭素数4~8のシクロアルキレン、炭素数6~14のアリーレン、又は炭素数7~24のアリールアルキレンであり、炭素数1~40のアルキレンにおいて、任意の水素はハロゲンで置き換えられてもよく、隣接しない任意の-CH2-は、-O-または-CH=CH-で置き換えられてもよく;炭素数4~8のシクロアルキレンにおいて、任意の水素はハロゲンで置き換えられてもよく;アリーレンおよびアリールアルキレン中のベンゼン環において、任意の水素はハロゲンまたは炭素数1~10のアルキルで置き換えられてもよく、該炭素数1~10のアルキルにおいて、任意の水素はハロゲンで置き換えられてもよく、隣接しない任意の-CH2-は-O-または-CH=CH-で置き換えられてもよく;アリールアルキレン中のアルキレンの炭素数は1~10であり、かつ隣接しない任意の-CH2-は-O-または-CH=CH-で置き換えられてもよく;
nは6~12である。)
【請求項3】
透明樹脂である請求項1又は2に記載の共重合体。
【請求項4】
請求項1~のいずれか一項に記載の共重合体を含有する樹脂組成物。
【請求項5】
熱伝導率が0.2W/(m・K)以上である請求項1~のいずれか一項に記載の共重合体又は請求項に記載の樹脂組成物を含有する放熱材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シルセスキオキサン化合物より得られる重合体、並びにかかる重合体を含有する透明樹脂組成物及び放熱材に関する。
【背景技術】
【0002】
高熱伝導性透明材料の開発は、各種電子デバイスやパワーエレクトロニクスの高性能化に伴い、達成すべき課題である。例えば、超高輝度LEDを将来実用化するためには、用いられる封止材に発熱量増大に伴う放熱性の向上が要求されている。封止材に用いられるエポキシ樹脂やシリコーン樹脂はその熱伝導率が0.1~0.2W/(m・K)と低い。
【0003】
従来、樹脂の熱伝導性を向上させるために、ほとんどの場合、樹脂成分に高熱伝導性無機フィラーを高充填した複合材料としているが、無機フィラーを高い含量で充填することにより樹脂組成物の強度が低下したり成形性の低下などの問題が生じる。
【0004】
樹脂自体を高熱伝導化する技術としては、特許文献1,2にエポキシ樹脂、特許文献3にビスマレイミド樹脂、特許文献4に液晶性ポリエステル、特許文献5にカルボキシル基を末端に有し、メソゲン基を主鎖に有する熱可塑性樹脂の例が報告されているが、これらの樹脂では樹脂中に配向させた結晶構造を形成することにより熱伝導性を向上させているため、得られる樹脂に透明性を付与できない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2003-268070号公報
【文献】国際公開WO2002/094905
【文献】特開2007-224060号公報
【文献】特開2008-50525号公報
【文献】国際公開WO2011/132389
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
他方、有機と無機のハイブリッド材料であるシルセスキオキサン(POSS)が着目されており、樹脂成分に添加して各種の用途に使用されているが、シルセスキオキサン材料自体を高熱伝導化した報告は認められていない。
【0007】
本発明が解決すべき課題は、高い熱伝導性を有する共重合体、該共重合体を含有する透明樹脂組成物、並びに該共重合体又は該透明樹脂組成物を含有する放熱材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記の目的を達成すべく、2つのアミノ基含有官能基を有するシルセスキオキサン化合物とジイソシアネート化合物とをモノマー成分として反応させたところ、驚くべきことに、得られる共重合体の結晶性を抑制しつつも、高い熱伝導性を有する共重合体を製造でき、かかる共重合体が上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち本発明は、以下の項に記載の主題を包含する。
[1]2つのアミノ基含有官能基を有するシルセスキオキサン化合物と、ジイソシアネート化合物との反応により得られる共重合体。
[2]前記シルセスキオキサン化合物が下記式(I)で表わされるシルセスキオキサンである[1]に記載の共重合体。
【0010】
【化1】
【0011】
(式中、
1は独立して、水素、炭素数1~40のアルキル、炭素数4~8のシクロアルキル、炭素数6~14のアリール、又は炭素数7~24のアリールアルキルであり、炭素数1~40のアルキルにおいて、任意の水素はハロゲンで置き換えられてもよく、隣接しない任意の-CH2-は、-O-または-CH=CH-で置き換えられてもよく;炭素数4~8のシクロアルキルにおいて、任意の水素はハロゲンで置き換えられてもよく;アリールおよびアリールアルキル中のベンゼン環において、任意の水素はハロゲンまたは炭素数1~10のアルキルで置き換えられてもよく、該炭素数1~10のアルキルにおいて、任意の水素はハロゲンで置き換えられてもよく、隣接しない任意の-CH2-は-O-または-CH=CH-で置き換えられてもよく;アリールアルキル中のアルキレンの炭素数は1~10であり、かつ隣接しない任意の-CH2-は-O-または-CH=CH-で置き換えられてもよく;
2は独立して、炭素数1~40のアルキレン、炭素数4~8のシクロアルキレン、炭素数6~14のアリーレン、又は炭素数7~24のアリールアルキレンであり、炭素数1~40のアルキレンにおいて、任意の水素はハロゲンで置き換えられてもよく、隣接しない任意の-CH2-は、-O-または-CH=CH-で置き換えられてもよく;炭素数4~8のシクロアルキレンにおいて、任意の水素はハロゲンで置き換えられてもよく;アリーレンおよびアリールアルキレン中のベンゼン環において、任意の水素はハロゲンまたは炭素数1~10のアルキルで置き換えられてもよく、該炭素数1~10のアルキルにおいて、任意の水素はハロゲンで置き換えられてもよく、隣接しない任意の-CH2-は-O-または-CH=CH-で置き換えられてもよく;アリールアルキレン中のアルキレンの炭素数は1~10であり、かつ隣接しない任意の-CH2-は-O-または-CH=CH-で置き換えられてもよく;
nは6~12である。)
[3]下記(II)で表される[1]又は[2]に記載の共重合体。
【0012】
【化2】
【0013】
(式中、
1は独立して、水素、炭素数1~40のアルキル、炭素数4~8のシクロアルキル、炭素数6~14のアリール、又は炭素数7~24のアリールアルキルであり、炭素数1~40のアルキルにおいて、任意の水素はハロゲンで置き換えられてもよく、隣接しない任意の-CH2-は、-O-または-CH=CH-で置き換えられてもよく;炭素数4~8のシクロアルキルにおいて、任意の水素はハロゲンで置き換えられてもよく;アリールおよびアリールアルキル中のベンゼン環において、任意の水素はハロゲンまたは炭素数1~10のアルキルで置き換えられてもよく、該炭素数1~10のアルキルにおいて、任意の水素はハロゲンで置き換えられてもよく、隣接しない任意の-CH2-は-O-または-CH=CH-で置き換えられてもよく;アリールアルキル中のアルキレンの炭素数は1~10であり、かつ隣接しない任意の-CH2-は-O-または-CH=CH-で置き換えられてもよく;
2は独立して、炭素数1~40のアルキレン、炭素数4~8のシクロアルキレン、炭素数6~14のアリーレン、又は炭素数7~24のアリールアルキレンであり、炭素数1~40のアルキレンにおいて、任意の水素はハロゲンで置き換えられてもよく、隣接しない任意の-CH2-は、-O-または-CH=CH-で置き換えられてもよく;炭素数4~8のシクロアルキレンにおいて、任意の水素はハロゲンで置き換えられてもよく;アリーレンおよびアリールアルキレン中のベンゼン環において、任意の水素はハロゲンまたは炭素数1~10のアルキルで置き換えられてもよく、該炭素数1~10のアルキルにおいて、任意の水素はハロゲンで置き換えられてもよく、隣接しない任意の-CH2-は-O-または-CH=CH-で置き換えられてもよく;アリールアルキレン中のアルキレンの炭素数は1~10であり、かつ隣接しない任意の-CH2-は-O-または-CH=CH-で置き換えられてもよく;
3はアルキレン、シクロアルキレン、アリーレン、又はアリールアルキレンであり;
nは1以上の整数を示す)
[4]透明樹脂である[1]~[3]のいずれか一項に記載の共重合体。
[5][1]~[4]のいずれか一項に記載の共重合体を含有する樹脂組成物。
[6]熱伝導率が0.2W/(m・K)以上である[1]~[4]のいずれか一項に記載の共重合体又は[5]に記載の樹脂組成物を含有する放熱材。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、電子デバイスにおける封止材等として使用するのに適した高い熱伝導率を有する共重合体を提供することができる。また、高い熱伝導率に加え、透明性、耐熱性等に優れた共重合体を提供することができる。さらに、本発明によれば、かかる共重合体を含有する透明樹脂組成物、並びにかかる共重合体又は透明樹脂組成物を含有する放熱材を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】共重合体の製造のための反応式を示す略図。
図2】図に示した各化合物1, 2a, 2b, 3a及び3bのフーリエ変換赤外分光法による吸収スペクトルのグラフ。横軸は波数、縦軸は吸光度Absorbance [a.u.]を示す。
図3】(A)実施例1及び実施例2の樹脂フィルムの写真、(B)実施例1及び実施例2の透明フィルムの可視光透過率測定のグラフ。
図4】実施例1及び実施例2の樹脂フィルムのTGA測定のグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明を実施形態を用いて説明する。
<共重合体>
本発明の実施形態の共重合体は、2つのアミノ基含有官能基を有するシルセスキオキサン化合物と、ジイソシアネート化合物との反応により得られる。
【0017】
2つのアミノ基含有官能基を有するシルセスキオキサン化合物は、2つのケイ素原子の各々にアミノ基含有官能基が結合しているシルセスキオキサン化合物であり、好ましくは、ケイ素と酸素から構成された立体的な核が閉じている、かご型シルセスキオキサン化合物である。
【0018】
2つのアミノ基含有官能基を有するシルセスキオキサン化合物は、好ましくは下記式(1)で表され、
(R1SiO1.5m(NH22SiO1.52 (1)
式中、
1は独立して、水素、炭素数1~40のアルキル、炭素数4~8のシクロアルキル、炭素数6~14のアリール、又は炭素数7~24のアリールアルキルであり、炭素数1~40のアルキルにおいて、任意の水素はハロゲンで置き換えられてもよく、隣接しない任意の-CH2-は、-O-または-CH=CH-で置き換えられてもよく;炭素数4~8のシクロアルキルにおいて、任意の水素はハロゲンで置き換えられてもよく;アリールおよびアリールアルキル中のベンゼン環において、任意の水素はハロゲンまたは炭素数1~10のアルキルで置き換えられてもよく、該炭素数1~10のアルキルにおいて、任意の水素はハロゲンで置き換えられてもよく、隣接しない任意の-CH2-は-O-または-CH=CH-で置き換えられてもよく;アリールアルキル中のアルキレンの炭素数は1~10であり、かつ隣接しない任意の-CH2-は-O-または-CH=CH-で置き換えられてもよく;
2は独立して、炭素数1~40のアルキレン、炭素数4~8のシクロアルキレン、炭素数6~14のアリーレン、又は炭素数7~24のアリールアルキレンであり、炭素数1~40のアルキレンにおいて、任意の水素はハロゲンで置き換えられてもよく、隣接しない任意の-CH2-は、-O-または-CH=CH-で置き換えられてもよく;炭素数4~8のシクロアルキレンにおいて、任意の水素はハロゲンで置き換えられてもよく;アリーレンおよびアリールアルキレン中のベンゼン環において、任意の水素はハロゲンまたは炭素数1~10のアルキルで置き換えられてもよく、該炭素数1~10のアルキルにおいて、任意の水素はハロゲンで置き換えられてもよく、隣接しない任意の-CH2-は-O-または-CH=CH-で置き換えられてもよく;アリールアルキレン中のアルキレンの炭素数は1~10であり、かつ隣接しない任意の-CH2-は-O-または-CH=CH-で置き換えられてもよく;
mは6~12である。
【0019】
1が炭素数1~40のアルキルの場合、アルキルは直鎖アルキルであってもよいし、分岐鎖アルキルであってもよい。炭素数1~40のアルキルは、好ましくは炭素数1~20のアルキルであり、より好ましくは炭素数1~10のアルキルであり、さらに好ましくは炭素数1~6のアルキルである。R1はすべて同一であってもよいし、異なっていてもよい。R1の任意の水素と置換されるハロゲンは、フッ素、塩素、臭素又はヨウ素である。
【0020】
1が炭素数4~8のシクロアルキルの場合、R1はすべて同一であってもよいし、異なっていてもよい。R1の任意の水素と置換されるハロゲンは、フッ素、塩素、臭素又はヨウ素である。
【0021】
1が炭素数6~14のアリールの場合、アリールはフェニル、ビフェニル、アントリル、ピレニル、フルオレニル、ナフチル等が挙げられる。R1はフェニルであることが好ましい。R1はすべて同一であってもよいし、異なっていてもよい。R1の任意の水素と置換されるハロゲンは、フッ素、塩素、臭素又はヨウ素である。
【0022】
好ましくは、R1において、隣接しない任意の-CH2-は非置換である。より好ましくは、R1は炭素数1~40のアルキルであり、かつ隣接しない任意の-CH2-は非置換である。
【0023】
2が炭素数1~40のアルキレンの場合、アルキレンは直鎖アルキレンであってもよいし、分岐鎖アルキレンであってもよい。炭素数1~40のアルキレンは、好ましくは炭素数1~20のアルキレンであり、より好ましくは炭素数1~10のアルキレンであり、さらに好ましくは炭素数1~6のアルキルである。R2はすべて同一であってもよいし、異なっていてもよい。R2の任意の水素と置換されるハロゲンは、フッ素、塩素、臭素又はヨウ素である。
【0024】
2が炭素数4~8のシクロアルキレンの場合、R2はすべて同一であってもよいし、異なっていてもよい。R2の任意の水素と置換されるハロゲンは、フッ素、塩素、臭素又はヨウ素である。
【0025】
2が炭素数6~14のアリーレンの場合、アリールはフェニレン、ビフェニレン、アントリレン、ピレニレン、フルオレニレン、ナフチレン等が挙げられる。R2はフェニレンであることが好ましい。R2はすべて同一であってもよいし、異なっていてもよい。R2の任意の水素と置換されるハロゲンは、フッ素、塩素、臭素又はヨウ素である。
【0026】
好ましくは、R2において、隣接しない任意の-CH2-は非置換である。より好ましくは、R2は炭素数1~40のアルキレンであり、かつ隣接しない任意の-CH2-は非置換である。
【0027】
mは好ましくは6、8、10又は12であり、より好ましくは6である。
【0028】
一つの実施形態において、R1は非置換の炭素数1~40のアルキルであり、R2は非置換の炭素数1~40のアルキレンであり、mは6である。さらなる実施形態において、R1は非置換の炭素数1~20のアルキルであり、R2は非置換の炭素数1~20のアルキレンであり、mは6である。
【0029】
一つの実施形態において、2つのアミノ基含有官能基を有するシルセスキオキサン化合物は下記式(I)で表わされる。
【0030】
【化3】
【0031】
1及びR2については上述した通りである。
【0032】
好ましくはR1は非置換の炭素数1~40のアルキルであり、R2は非置換の炭素数1~40のアルキレンであり、mは6である。さらに好ましくは、R1は非置換の炭素数1~20のアルキルであり、R2は非置換の炭素数1~20のアルキレンであり、mは6である。
【0033】
シルセスキオキサン化合物への2つのアミノ官能性の導入は通常の有機化学的手法で可能であり、上記2つのアミノ基含有官能基を有するシルセスキオキサン化合物を当業者は製造することもできるし、市販のものを使用することもできる。
【0034】
ジイソシアネート化合物は、一分子内に2つのイソシアネート基を有する化合物である。ジイソシアネート化合物は好ましくは下記式(2)で表され、
O=C=N-R3-N=C=O (2)
式中、R3はアルキレン、シクロアルキレン、アリーレン、又はアリールアルキレンである。
アルキレンの炭素数は限定されないが、炭素数1~40であることが好ましく、シクロアルキレンの炭素数は限定されないが、炭素数4~8であることが好ましく、アリーレンの炭素数は限定されないが、炭素数6~14であることが好ましく、アリールアルキレンの炭素数は限定されないが、炭素数7~24であることが好ましい。
【0035】
アルキレンにおいて、任意の水素はハロゲンで置き換えられてもよく、隣接しない任意の-CH2-は、-O-または-CH=CH-で置き換えられてもよい。
【0036】
シクロアルキレンにおいて、任意の水素はハロゲンで置き換えられてもよくい。
【0037】
アリーレンおよびアリールアルキレン中のベンゼン環において、任意の水素はハロゲンまたは炭素数1~10のアルキルで置き換えられてもよく、該炭素数1~10のアルキルにおいて、任意の水素はハロゲンで置き換えられてもよく、隣接しない任意の-CH2-は-O-または-CH=CH-で置き換えられてもよい。
【0038】
アリールアルキレン中のアルキレンの炭素数は1~10であり、かつ隣接しない任意の-CH2-は-O-または-CH=CH-で置き換えられてもよい。
【0039】
イソシアネート基を有する化合物としては、脂肪族ジイソシアネート、脂環族ジイソシアネート、芳香族ジイソシアネート等が挙げられる。
【0040】
芳香族ジイソシアネートとしては、例えば、フェニレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、ジメチルジフェニルメタンジイソシアネート、トリフェニルメタントリイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート等が挙げられる。
【0041】
脂環族ジイソシアネートとしては、例えば、シクロへキシレンジイソシアネート、メチルシクロへキシレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ジシクロへキシルメタンジイソシアネート、ジメチルジシクロへキシルメタンジイソシアネート等が挙げられる。
【0042】
脂肪族ジイソシアネートとしては、例えば、メチレンジイソシアネート、エチレンジイソシアネート、プロピレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート等が挙げられる。
【0043】
ポリイソシアネート化合物は一種もしくは二種以上を使用することができる。
【0044】
本発明の実施形態の共重合体は、上記2つのアミノ基含有官能基を有するシルセスキオキサン化合物と、上記ジイソシアネート化合物との反応により得られ、2つのアミノ基含有官能基を有するシルセスキオキサン化合物とジイソシアネート化合物とは、シルセスキオキサン化合物のアミノ基とジイソシアネート化合物のイソシアネート基との間のウレタン結合により結合される。
【0045】
上記共重合体の重量平均分子量は特に限定されないが、例えば5000~500000である。
【0046】
上記共重合体の数平均分子量は特に限定されないが、例えば5000~500000である。
【0047】
一つの実施形態において、共重合体は、上記式(1)で表される2つのアミノ基含有官能基を有するシルセスキオキサン化合物と、上記ジイソシアネート化合物との反応により得られる共重合体である。
【0048】
別の実施形態において、共重合体は、上記式(I)で表わされる2つのアミノ基含有官能基を有するシルセスキオキサン化合物と、上記ジイソシアネート化合物との反応により得られる共重合体である。かかる共重合体の例は下記式(II)で表される。
【0049】
【化4】
【0050】
式中、
1は独立して、水素、炭素数1~40のアルキル、炭素数4~8のシクロアルキル、炭素数6~14のアリール、又は炭素数7~24のアリールアルキルであり、炭素数1~40のアルキルにおいて、任意の水素はハロゲンで置き換えられてもよく、隣接しない任意の-CH2-は、-O-または-CH=CH-で置き換えられてもよく;炭素数4~8のシクロアルキルにおいて、任意の水素はハロゲンで置き換えられてもよく;アリールおよびアリールアルキル中のベンゼン環において、任意の水素はハロゲンまたは炭素数1~10のアルキルで置き換えられてもよく、該炭素数1~10のアルキルにおいて、任意の水素はハロゲンで置き換えられてもよく、隣接しない任意の-CH2-は-O-または-CH=CH-で置き換えられてもよく;アリールアルキル中のアルキレンの炭素数は1~10であり、かつ隣接しない任意の-CH2-は-O-または-CH=CH-で置き換えられてもよく;
2は独立して、炭素数1~40のアルキレン、炭素数4~8のシクロアルキレン、炭素数6~14のアリーレン、又は炭素数7~24のアリールアルキレンであり、炭素数1~40のアルキレンにおいて、任意の水素はハロゲンで置き換えられてもよく、隣接しない任意の-CH2-は、-O-または-CH=CH-で置き換えられてもよく;炭素数4~8のシクロアルキレンにおいて、任意の水素はハロゲンで置き換えられてもよく;アリーレンおよびアリールアルキレン中のベンゼン環において、任意の水素はハロゲンまたは炭素数1~10のアルキルで置き換えられてもよく、該炭素数1~10のアルキルにおいて、任意の水素はハロゲンで置き換えられてもよく、隣接しない任意の-CH2-は-O-または-CH=CH-で置き換えられてもよく;アリールアルキレン中のアルキレンの炭素数は1~10であり、かつ隣接しない任意の-CH2-は-O-または-CH=CH-で置き換えられてもよく;
nは1以上の整数を示す。
【0051】
1が炭素数1~40のアルキルの場合、アルキルは直鎖アルキルであってもよいし、分岐鎖アルキルであってもよい。炭素数1~40のアルキルは、好ましくは炭素数1~20のアルキルであり、より好ましくは炭素数1~10のアルキルであり、さらに好ましくは炭素数1~6のアルキルである。R1はすべて同一であってもよいし、異なっていてもよい。R1の任意の水素と置換されるハロゲンは、フッ素、塩素、臭素又はヨウ素である。
【0052】
1が炭素数4~8のシクロアルキルの場合、R1はすべて同一であってもよいし、異なっていてもよい。R1の任意の水素と置換されるハロゲンは、フッ素、塩素、臭素又はヨウ素である。
【0053】
1が炭素数6~14のアリールの場合、アリールはフェニル、ビフェニル、アントリル、ピレニル、フルオレニル、ナフチル等が挙げられる。R1はフェニルであることが好ましい。R1はすべて同一であってもよいし、異なっていてもよい。R1の任意の水素と置換されるハロゲンは、フッ素、塩素、臭素又はヨウ素である。
【0054】
好ましくは、R1において、隣接しない任意の-CH2-は非置換である。より好ましくは、R1は炭素数1~40のアルキルであり、かつ隣接しない任意の-CH2-は非置換である。
【0055】
2が炭素数1~40のアルキレンの場合、アルキレンは直鎖アルキレンであってもよいし、分岐鎖アルキレンであってもよい。炭素数1~40のアルキレンは、好ましくは炭素数1~20のアルキレンであり、より好ましくは炭素数1~10のアルキレンであり、さらに好ましくは炭素数1~6のアルキルである。R2はすべて同一であってもよいし、異なっていてもよい。R2の任意の水素と置換されるハロゲンは、フッ素、塩素、臭素又はヨウ素である。
【0056】
2が炭素数4~8のシクロアルキレンの場合、R2はすべて同一であってもよいし、異なっていてもよい。R2の任意の水素と置換されるハロゲンは、フッ素、塩素、臭素又はヨウ素である。
【0057】
2が炭素数6~14のアリーレンの場合、アリールはフェニレン、ビフェニレン、アントリレン、ピレニレン、フルオレニレン、ナフチレン等が挙げられる。R2はフェニレンであることが好ましい。R2はすべて同一であってもよいし、異なっていてもよい。R2の任意の水素と置換されるハロゲンは、フッ素、塩素、臭素又はヨウ素である。
3はアルキレン、シクロアルキレン、アリーレン、又はアリールアルキレンである。
【0058】
好ましくは、R2において、隣接しない任意の-CH2-は非置換である。より好ましくは、R2は炭素数1~40のアルキレンであり、かつ隣接しない任意の-CH2-は非置換である。
【0059】
一つの実施形態において、R1は非置換の炭素数1~40のアルキルであり、R2は非置換の炭素数1~40のアルキレンである。さらなる実施形態において、R1は非置換の炭素数1~20のアルキルであり、R2は非置換の炭素数1~20のアルキレンである。
【0060】
nは限定されないが、例えば3~20である。
【0061】
本発明の実施形態の共重合体は、2つのアミノ基含有官能基を有するシルセスキオキサン化合物と、ジイソシアネート化合物とが交互重合して得られた重合体である。
【0062】
上記共重合体は、高い熱伝導性を有する。その理由として、本発明は理論に束縛されることを望まないが、ウレタン結合を初めとする水素結合のネットワークによる分子間の剛直な相互作用が、嵩高いかご型シルセスキオキサンを主鎖に導入することで、分子運動を抑制するとともに、共重合体の一分子中に配向させた水素結合を有する構造部位の結晶化が抑制されるという特異な分子形態によって達成されていると考えられる。
【0063】
共重合体の熱伝導率は0.1W/(m・K)以上であることが好ましく、0.2W/(m・K)以上であることがより好ましく、0.3W/(m・K)以上であることがより好ましく、0.4W/(m・K)以上であることがより好ましく、0.5W/(m・K)以上であることがより好ましい。
【0064】
また上記共重合体は、高い光学透明性を有することができる。
【0065】
共重合体の可視光透過率は70%以上であることが好ましく、80%以上であることがより好ましく、90%以上であることがより好ましい。
【0066】
さらに上記共重合体は、高い耐熱性を有することができる。
【0067】
窒素雰囲気下で、10℃/分の昇温速度で共重合体を加熱したときの{(加熱前の共重合体の重量)-(加熱後の共重合体の重量)}/(加熱前の共重合体の重量)×100(%)で表される重量減少率5%となる温度は、好ましくは295℃以上である。
【0068】
一つの好ましい実施形態において、共重合体は、0.1W/(m・K)以上、好ましくは0.2W/(m・K)以上、より好ましくは0.3W/(m・K)以上、より好ましくは0.4W/(m・K)以上、より好ましくは0.5W/(m・K)以上の熱伝導率と、70%以上、好ましくは80%以上、より好ましくは90%以上の可視光透過率とを有する。
【0069】
共重合体は樹脂であってもよく、好ましくは透明樹脂である。かかる透明樹脂は、共重合体に関して説明した上記の熱伝導率及び可視光透過率を有することができる。
【0070】
共重合体の形状としては、特に制限はなく、所望の形状に成形できる。例えば、フィルム状、シート状、レンズ状、棒状、チューブ状、球状、顆粒状、錐状等が挙げられる。なお、フィルムとは厚さが250μm未満の膜状のものを指し、シートとは厚さが250μm以上の薄板状のものを指す。
【0071】
<共重合体の製造方法>
本発明の実施形態の共重合体の製造方法は、シルセスキオキサン化合物のアミノ基含有官能基のアミノ基と、ジイソシアネート化合物のカルボニル基とのウレタン結合が起こる重合反応であれば特に限定されず、例えば2つのアミノ基含有官能基を有するシルセスキオキサン化合物と、ジイソシアネート化合物とを溶媒に溶解又は分散し、室温で又は加熱して重合させることにより製造することができる。
【0072】
溶媒は、シルセスキオキサン化合物及びイソシアネート化合物を溶解し、かつシルセスキオキサン化合物及びイソシアネート化合物と反応しない溶媒であれば任意の溶媒を使用できる。かかる溶媒としては、ヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサン、トルエン、キシレン等の炭化水素、テトラヒドロフラン、メチルテトラヒドロピラン、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル等のエーテル類、2-ブタノン、メチルイソブチルケトン等のケトン類が挙げられる。
【0073】
反応温度は特に限定されないが、-50~200℃であることが好ましく、0~40℃であることが好ましい。反応時間は特に限定されないが、5分~24時間であることが好ましい。
【0074】
<樹脂組成物>
本発明の実施形態の樹脂組成物は、上記の本発明の実施形態の共重合体を含有する。なお、本発明の実施形態の樹脂組成物は、上記共重合体が溶媒に溶解された液体であってもよいし、上記共重合体を含む固体であってもよい。
【0075】
本発明の実施形態の樹脂組成物は、種々の用途に用いることができ、その目的に応じて共重合体の含有量や、添加する添加剤の種類を決定することができる。添加剤としては、本発明の目的を損なわない範囲で、シランカップリング剤、酸化防止剤、光増感剤、光安定剤、溶剤、増量材、充填剤、補強材、可塑剤、増粘剤、染料、顔料、難燃剤及び界面活性剤等を使用することができる。
【0076】
樹脂組成物の形状としては、特に制限はなく、所望の形状に成形できる。例えば、フィルム状、シート状、レンズ状、棒状、チューブ状、球状、顆粒状、錐状等が挙げられる。なお、フィルムとは厚さが250μm未満の膜状のものを指し、シートとは厚さが250μm以上の薄板状のものを指す。
【0077】
本発明の実施形態の樹脂組成物の用途としては、電子デバイスの封止材等の放熱材、絶縁材料、光学透明材料、耐熱材等が挙げられる。
【0078】
樹脂組成物中の上記共重合体の含有量は特に限定されないが、全固形分に対して、50質量%以上であることが好ましく、60%質量%以上であることがより好ましく、70質量%以上であることがさらに好ましい。なお固形分とは溶媒を除く固形成分を意味する。
【0079】
本発明の実施形態の樹脂組成物も、高い熱伝導性を有することができる。
【0080】
樹脂組成物の熱伝導率は0.1W/(m・K)以上であることが好ましく、0.2W/(m・K)以上であることがより好ましく、0.3W/(m・K)以上であることがより好ましく、0.4W/(m・K)以上であることがより好ましく、0.5W/(m・K)以上であることがより好ましい。
【0081】
また樹脂組成物は、高い光学透明性を有することができる。
【0082】
樹脂組成物の可視光透過率は70%以上であることが好ましく、80%以上であることがより好ましく、90%以上であることがより好ましい。
【0083】
さらに樹脂組成物は、高い耐熱性を有することができる。
【0084】
窒素雰囲気下で、10℃/分の昇温速度で樹脂組成物を加熱したときの{(加熱前の樹脂組成物の重量)-(加熱後の樹脂組成物の重量)}/(加熱前の樹脂組成物の重量)×100(%)で表される重量減少率5%となる温度は、好ましくは295℃以上である。
【0085】
一つの好ましい実施形態において、樹脂組成物は、0.1W/(m・K)以上、好ましくは0.2W/(m・K)以上、より好ましくは0.3W/(m・K)以上、より好ましくは0.4W/(m・K)以上、より好ましくは0.5W/(m・K)以上の熱伝導率と、70%以上、好ましくは80%以上、より好ましくは90%以上の可視光透過率とを有する。
【0086】
以下に実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されない。
【実施例
【0087】
実施例1 共重合体からなる樹脂フィルムの製造
図1に示すように、ビス(3-アミノプロピル)ヘキサイソブチル置換かご型シルセスキオキサン(1)と1,4-フェニレンジイソシアナート(2a)の反応により共重合体(3a)からなる樹脂フィルムを製造した。
【0088】
詳細には、ビス(3-アミノプロピル)ヘキサイソブチル置換かご型シルセスキオキサン(0.1315 g, 0.150 mmol)を4-メチルテトラヒドロピラン(MTHP)(0.8ml)に溶解させ、これに等量の1,4-フェニレンジイソシアナート(0.0240 g, 0.150 mmol)をMTHP(0.7ml)に溶かした溶液を加えて、撹拌子を用いて大気下、室温で2時間攪拌した。溶媒をキャストすることで透明なフィルムが得られた。
【0089】
図2に、得られた共重合体(3a)のフーリエ変換赤外分光スペクトルを示す。
FT-IR (ATR): ν =738, 834, 1022, 1090, 1227, 1466, 1513, 1550, 1605, 1647, 1659, 2871, 2952, 3311 cm-1.
【0090】
実施例2 共重合体からなる樹脂フィルムの製造
図1に示すように、ビス(3-アミノプロピル)ヘキサイソブチル置換かご型シルセスキオキサン(1)とヘキサメチレンジイソシアナート(2b)の反応により共重合体(3b)からなる樹脂フィルムを製造した。
詳細には、ビス(3-アミノプロピル)ヘキサイソブチル置換かご型シルセスキオキサン(0.2626 g, 0.300 mmol)をテトラヒドロフラン(THF)(2.0ml)に溶解させ、これに等量のヘキサメチレンジイソシアナート(0.048 ml, 0.300 mmol)をTHF(1.0ml)に溶かした溶液を加えて、撹拌子を用いて大気下、室温で2時間攪拌した。溶媒をキャストすることで透明なフィルムが得られた。
【0091】
図2に、得られた共重合体(3b)のフーリエ変換赤外分光スペクトルを示す。
FT-IR (ATR): ν =738, 835, 1023, 1090, 1227, 1464, 1565, 1635, 2869, 2952, 3321 cm-1.
【0092】
1.熱伝導率の評価
島津製作所製の乾式密度計(アキュビック1340TL)を用いた密度、島津製作所製の示差走査熱量計(DSC-60)を用いた比熱、および日立ハイテクサイエンス製のai-phase Mobile1uを用いた熱拡散率データから実施例1の樹脂フィルムと実施例2の樹脂フィルムの熱伝導率を求めた。
【0093】
結果を表1に示す。実施例1の樹脂フィルムの熱伝導率は0.52 w/(m・K)、実施例2の樹脂フィルムの熱伝導率は0.39 w/(m・K)であり、これは市販のポリイミドやポリアゾメチンフィルムの熱伝導率に比べて高かった。
【0094】
【表1】
【0095】
2.可視光透過率の評価
実施例1の樹脂フィルムと実施例2の樹脂フィルムの可視光透過率は日本分光製のV-670 KNNを用いてそれぞれ測定を行った。
【0096】
実施例1及び実施例2の樹脂フィルムの写真を図3(A)に、可視光透過率の測定結果を図3(B)に示す。実施例1及び実施例2のいずれの樹脂フィルムも80%を超える高い可視光透過率であり光学透明性に優れていた。実施例2の樹脂フィルムは100%近い可視光透過率であった。
【0097】
3.耐熱率の評価
実施例1の樹脂フィルムと実施例2の樹脂フィルムの耐熱性を、島津製作所製のDTG-60を用いて窒素雰囲気下で、10℃/minの昇温速度で測定した。
【0098】
TGA測定の結果を図4に示す。いずれの樹脂フィルムも加熱温度が280~295℃の付近で重量減少が開始し、300℃付近まで熱的に安定であり、高い耐熱性を有していた。
図1
図2
図3
図4