(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-13
(45)【発行日】2023-07-24
(54)【発明の名称】低圧鋳造装置及び低圧鋳造装置用ヒータユニット
(51)【国際特許分類】
B22D 18/04 20060101AFI20230714BHJP
【FI】
B22D18/04 Y
B22D18/04 V
(21)【出願番号】P 2019125433
(22)【出願日】2019-07-04
【審査請求日】2022-06-17
(73)【特許権者】
【識別番号】390018315
【氏名又は名称】メトロ電気工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000213297
【氏名又は名称】中部電力株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000002082
【氏名又は名称】スズキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100078721
【氏名又は名称】石田 喜樹
(74)【代理人】
【識別番号】100121142
【氏名又は名称】上田 恭一
(72)【発明者】
【氏名】吉原 寛美
(72)【発明者】
【氏名】倉田 征治
(72)【発明者】
【氏名】杉山 公英
(72)【発明者】
【氏名】竹内 章浩
(72)【発明者】
【氏名】永松 克明
(72)【発明者】
【氏名】榑林 広剛
(72)【発明者】
【氏名】下村 進也
(72)【発明者】
【氏名】池谷 泰慶
(72)【発明者】
【氏名】村松 光也
(72)【発明者】
【氏名】青木 丈
(72)【発明者】
【氏名】谷口 隆彦
【審査官】池ノ谷 秀行
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-079000(JP,A)
【文献】特開平09-094653(JP,A)
【文献】実開平03-101350(JP,U)
【文献】特開2016-078112(JP,A)
【文献】国際公開第2009/063626(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B22D 18/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶湯保持炉と、
前記溶湯保持炉内に挿入されるストークと、
前記ストークの上方に配設され、上金型と下金型とからなる金型と、
前記ストークと前記下金型との間に配設されるサブストークと、
前記サブストークを加熱する加熱手段と、を含む低圧鋳造装置であって、
前記加熱手段は、前記サブストークの周囲に形成した加熱空間に配置され、発熱体を有する発熱部と、前記発熱部の端部に設けられ、前記発熱体へ電気的に接続されるリード線を導出する封止端子部とからなる赤外線ランプヒータであり、
前記加熱空間
における前記サブストークの周囲部は、断熱層を有する金属製の仕切部材によって上側空間と下側空間とに仕切られ、
前記赤外線ランプヒータは、前記発熱部と前記封止端子部との間で折曲されて、前記発熱部が前記上側空間に、前記封止端子部が前記下側空間にそれぞれ配置されていることを特徴とする低圧鋳造装置。
【請求項2】
前記赤外線ランプヒータは、L字状に折曲された棒状体で、前記発熱部が前記上側空間で横向きに配置され、前記封止端子部が前記下側空間で下向きに配置されていることを特徴とする請求項1に記載の低圧鋳造装置。
【請求項3】
前記赤外線ランプヒータの前記発熱部は、前記発熱体となる薄板状の炭素繊維フィラメントをガラス管に封入してなり、
前記ガラス管の外面において、前記サブストークと反対向側となる前記炭素繊維フィラメントの外側の領域には、赤外線の反射塗料が塗布されている、若しくは
、前記ガラス管内において、前記サブストークと反対向側となる前記炭素繊維フィラメントの外側には、金属製の反射板が配置されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の低圧鋳造装置。
【請求項4】
前記炭素繊維フィラメントは、
照射面を前記サブストーク側へ向けた斜め上向きとなる姿勢で前記ガラス管内に配置されていることを特徴とする請求項3に記載の低圧鋳造装置。
【請求項5】
前記サブストークの外面には、赤外線吸収材料が塗布されていることを特徴とする請求項1乃至4の何れかに記載の低圧鋳造装置。
【請求項6】
前記下金型を支持して前記サブストークが貫通する下金型ダイベースを備え、前記下金型ダイベースにおける前記サブストークの貫通孔は、前記サブストークの外形よりも大きく形成されて、前記下金型を前記上側空間内に露出させていることを特徴とする請求項1乃至5の何れかに記載の低圧鋳造装置。
【請求項7】
前記仕切部材は、前記サブストークの外側を囲む周回形状を有し、複数の前記赤外線ランプヒータが前記周回形状に沿って前記仕切部材に支持されていることを特徴とする請求項1乃至6の何れかに記載の低圧鋳造装置。
【請求項8】
溶湯保持炉と、前記溶湯保持炉内に挿入されるストークと、前記ストークの上方に配設され、上金型と下金型とからなる金型と、前記ストークと前記下金型との間に配設されるサブストークと、を含む低圧鋳造装置に設けられ、前記サブストークを加熱するためのヒータユニットであって、
前記サブストークの周囲に形成した加熱空間に配置され、断熱層を有して前記加熱空間
における前記サブストークの周囲部を上側空間と下側空間とに仕切る金属製の仕切部材と、
発熱体を有する発熱部と、前記発熱部の端部に設けられ、前記発熱体へ電気的に接続されるリード線を導出する封止端子部とからなる赤外線ランプヒータと、を有し、
前記赤外線ランプヒータは、前記発熱部と前記封止端子部との間で折曲されて、前記発熱部が前記仕切部材の上側で、前記封止端子部が前記仕切部材の下側でそれぞれ支持されていることを特徴とする低圧鋳造装置用ヒータユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、溶湯保持炉に挿入されるストークと、その上方に設けた金型との間にサブストークを配置した低圧鋳造装置及び、低圧鋳造装置に用いられるヒータユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
低圧鋳造装置は、アルミニウム合金等の溶湯を貯留する溶湯保持炉の上方に、上金型と下金型とからなる金型を設置して、溶湯保持炉に筒状のストークの下端を挿入する一方、ストークの上端を、サブストークを介して下金型に接続している。ここでは所定温度に加熱された溶湯保持炉内に加圧されると、溶湯がストーク及びサブストークを介して金型のキャビティ内に充填されて凝固することで、所定の鋳造製品が得られる。
このような低圧鋳造装置では、下金型の湯口部分での溶湯の固化(湯口詰まり)が発生しないように、鋳造時にサブストークを加熱することが行われている。このサブストークの加熱手段として、ガスバーナを利用したり、特許文献1,2に開示されるように電気ヒータを利用したりする技術が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】実公平8-4204号公報
【文献】特許第3212208号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ガスバーナの場合、サブストークに直接火炎が当たるため、加熱が不均一となりやすく、鋳造製品の品質安定が難しくなる上、サブストークの歪みによる溶湯漏れが発生するおそれもある。
また、着火や火力調整における工数が多くなり、火力調整は作業者の技量に左右されるため、失火による温度低下のおそれがあり、作業効率の低下を招く。
さらに、狭い場所で使用するため、空気比を高くしないと燃焼が維持できず、常時燃焼させることでエネルギー使用量も多くなる。加えて対流熱によりサブストークだけでなく雰囲気全体も加熱されるため、加熱効率が悪くなる。
【0005】
一方、電気ヒータを用いると、均一な加熱が可能となると共に、品質の安定や作業効率の低下防止が可能となるため、加熱手段として望ましいが、封止端子部や配線を熱から保護する必要が生じる。特に、高温雰囲気で十分な輻射熱を放出する電気ヒータとして赤外線ランプヒータを採用することが考えられるが、この赤外線ランプヒータは、封止端子部の温度が350℃を越えると寿命が著しく低下する。サブストークの加熱は500℃以上の高温雰囲気で実施するため、封止端子部を350℃以下に保持する対策を行わないと耐久性が確保できない。また、配線も熱から保護するためには取り回しも考慮しないと適切な保護が行えなくなる。
【0006】
そこで、本発明は、サブストークの加熱手段として赤外線ランプヒータを使用しても、封止端子部や配線の温度上昇を抑制して耐久性を確保することができる低圧鋳造装置及び低圧鋳造装置用ヒータユニットを提供することを目的としたものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、溶湯保持炉と、溶湯保持炉内に挿入されるストークと、ストークの上方に配設され、上金型と下金型とからなる金型と、ストークと下金型との間に配設されるサブストークと、サブストークを加熱する加熱手段と、を含む低圧鋳造装置であって、
加熱手段は、サブストークの周囲に形成した加熱空間に配置され、発熱体を有する発熱部と、発熱部の端部に設けられ、発熱体へ電気的に接続されるリード線を導出する封止端子部とからなる赤外線ランプヒータであり、
加熱空間におけるサブストークの周囲部は、断熱層を有する金属製の仕切部材によって上側空間と下側空間とに仕切られ、
赤外線ランプヒータは、発熱部と封止端子部との間で折曲されて、発熱部が上側空間に、封止端子部が下側空間にそれぞれ配置されていることを特徴とする。
請求項2に記載の発明は、請求項1の構成において、赤外線ランプヒータは、L字状に折曲された棒状体で、発熱部が上側空間で横向きに配置され、封止端子部が下側空間で下向きに配置されていることを特徴とする。
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2の構成において、赤外線ランプヒータの発熱部は、発熱体となる薄板状の炭素繊維フィラメントをガラス管に封入してなり、ガラス管の外面において、サブストークと反対向側となる炭素繊維フィラメントの外側の領域には、赤外線の反射塗料が塗布されている、若しくは、ガラス管内において、サブストークと反対向側となる炭素繊維フィラメントの外側には、金属製の反射板が配置されていることを特徴とする。
請求項4に記載の発明は、請求項3の構成において、炭素繊維フィラメントは、照射面をサブストーク側へ向けた斜め上向きとなる姿勢でガラス管内に配置されていることを特徴とする。
請求項5に記載の発明は、請求項1乃至4の何れかの構成において、サブストークの外面には、赤外線吸収材料が塗布されていることを特徴とする。
請求項6に記載の発明は、請求項1乃至5の何れかの構成において、下金型を支持してサブストークが貫通する下金型ダイベースを備え、下金型ダイベースにおけるサブストークの貫通孔は、サブストークの外形よりも大きく形成されて、下金型を上側空間内に露出させていることを特徴とする。
請求項7に記載の発明は、請求項1乃至6の何れかの構成において、仕切部材は、サブストークの外側を囲む周回形状を有し、複数の赤外線ランプヒータが周回形状に沿って仕切部材に支持されていることを特徴とする。
上記目的を達成するために、請求項8に記載の発明は、溶湯保持炉と、溶湯保持炉内に挿入されるストークと、ストークの上方に配設され、上金型と下金型とからなる金型と、ストークと下金型との間に配設されるサブストークと、を含む低圧鋳造装置に設けられ、サブストークを加熱するためのヒータユニットであって、
サブストークの周囲に形成した加熱空間に配置され、断熱層を有して加熱空間におけるサブストークの周囲部を上側空間と下側空間とに仕切る金属製の仕切部材と、
発熱体を有する発熱部と、発熱部の端部に設けられ、発熱体へ電気的に接続されるリード線を導出する封止端子部とからなる赤外線ランプヒータと、を有し、
赤外線ランプヒータは、発熱部と封止端子部との間で折曲されて、発熱部が仕切部材の上側で、封止端子部が仕切部材の下側でそれぞれ支持されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
請求項1及び8に記載の発明によれば、サブストークの加熱手段として赤外線ランプヒータを用いると共に、赤外線ランプヒータの発熱部を、断熱層を有する仕切部材の上側に、封止端子部を仕切部材の下側にそれぞれ配置しているので、赤外線ランプヒータを使用しても、封止端子部や配線の温度上昇を抑制して耐久性を確保することができる。また、配線は下側空間に導出されるので、取り回し性も良好となる。
請求項2に記載の発明によれば、上記効果に加えて、赤外線ランプヒータをL字状に折曲した棒状体として、加熱部を上側空間で横向きに配置し、封止端子部を下側空間で下向きに配置しているので、加熱部でサブストークを効果的に加熱しつつ、封止端子部を下側空間内へ確実に退避させることができる。
請求項3に記載の発明によれば、上記効果に加えて、赤外線ランプヒータの加熱部を、炭素繊維フィラメントをガラス管に封入したものとして、ガラス管の外面において、サブストークと反対向側となる炭素繊維フィラメントの外側の領域には、反射塗料を塗布、若しくはガラス管内において、サブストークと反対向側となる炭素繊維フィラメントの外側には、反射板を配置しているので、サブストークが吸収しやすい赤外線を効果的に放射できる。また、反射塗料や反射板は高温下でも酸化しないため赤外線の漏れを防止でき、加熱効率の向上が期待できる。
請求項4に記載の発明によれば、上記効果に加えて、炭素繊維フィラメントを、照射面をサブストーク側へ向けた斜め上向きとなる姿勢で配置しているので、赤外線ランプヒータとの距離があるサブストークの上部や下金型にも赤外線が照射されて均一に加熱できる。よって、鋳造製品の品質が安定する。
請求項5に記載の発明によれば、上記効果に加えて、サブストークの外面には、赤外線吸収材料が塗布されているので、サブストークの赤外線吸収率が高まって加熱効率の向上に繋がる。
請求項6に記載の発明によれば、上記効果に加えて、下金型ダイベースにおけるサブストークの貫通孔を、サブストークの外形よりも大きく形成して、下金型を上側空間内に露出させているので、サブストークの上部及び下金型に赤外線が照射されやすくなり、下金型の加熱が効果的に行える。また、上側空間を広く確保できるため、赤外線ランプヒータのレイアウトに制約を受けにくくなり、設置も容易に行える。
請求項7に記載の発明によれば、上記効果に加えて、仕切部材を、サブストークの外側を囲む枠形状とし、複数の赤外線ランプヒータを枠形状に沿って仕切部材に支持させているので、サブストークを全周から均一に加熱可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図2】ヒータユニットの斜視図(赤外線ランプヒータの内部は省略)である。
【
図3】ヒータユニットの平面図(赤外線ランプヒータの内部は省略)である。
【
図4】(A)は
図3のA-A線断面図、(B)はB-B線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
[低圧鋳造装置の全体説明]
図1は、低圧鋳造装置の一例を示す断面図である。この低圧鋳造装置1は、溶湯保持炉2と、溶湯保持炉2の上側に配設される金型3と、溶湯保持炉2と金型3とを繋ぐストーク4及びサブストーク5とを含んでなる。
溶湯保持炉2は、アルミニウム合金等の鋳造用の金属を溶解した溶湯を、図示しない加熱手段により所定温度(例えば700℃)で保持する。上部の開口は蓋体6によって閉塞されて、加圧口7から空気等の気体が所定圧力で供給可能となっている。
金型3は、下金型8と上金型9とを有し、下金型8は、溶湯保持炉2の上部に設置された下金型ダイベース10によって蓋体6の上方で水平に支持される。上金型9は、下金型8との間でキャビティ11を形成し、図示しない駆動機構によって下金型8に対して接離可能となっている。
【0011】
ストーク4は、溶湯保持炉2内の中央で蓋体6によって上下方向に支持される筒体で、下端は溶湯内に挿入される一方、上端は蓋体6を貫通して上方に開口している。
サブストーク5は、下端がストーク4の上端に結合される円筒部12と、その円筒部12の上部から平面視四角形状に拡開する拡開部13とを有する。拡開部13は、下金型8に形成された複数の湯口14にそれぞれ接続される接続口15を上面に有し、下金型ダイベース10に形成された貫通孔16を貫通して下金型8に結合されている。この貫通孔16は、拡開部13よりも前後左右に大きく形成されて、拡開部13の周囲に下金型8の下面を露出させている。
そして、蓋体6と下金型ダイベース10との間には、サブストーク5を収容する加熱空間17が形成されて、この加熱空間17内に、サブストーク5を加熱するヒータユニット20が配設されている。
【0012】
[ヒータユニットの説明]
ヒータユニット20は、
図2,3に示すように、サブストーク5の拡開部13が貫通する金属製(例えばステンレス製)で平面視四角枠形状の仕切板21と、仕切板21の上面に設置される複数の棒状の赤外線ランプヒータ22,22・・とを備えている。ここでの仕切板21は、互いに平行な一方の辺21A,21Aの幅の方が、他方の辺21B,21Bの幅よりも大きくなって、平面視では長方形状を呈している。
まず、仕切板21は、平面視四角枠形状の上板23及び下板24と、上板23と下板24との間に配置される断熱ボード25と、下板24の下側に配置される支持台26とを有している。上板23の外縁及び内縁の各辺には、
図4にも示すように、下方へ向けて折り返し片27,27・・が形成され、下板24の外縁の各辺には、上方へ向けて折り返し片28,28・・が形成されている。ネジあるいは溶接による両板23,24の組み付け状態では、外縁の折り返し片27,28同士が重なり、内縁の折り返し片27,27・・が下板24の内縁にそれぞれ当接することで、上板23と下板24との間に、断熱ボード25が収容される平面視四角枠状の空間が形成される。断熱ボード25は当該空間内の全体に亘って収容されている。
【0013】
支持台26は、下板24の内縁に囲まれる内側開口よりもやや大きい開口面積を有する角筒状で、上端が下板24の下面に接合される。
この仕切板21の外形は、下金型ダイベース10の貫通孔16よりも一回り小さい形状となっている。よって、仕切板21は、
図1に示すように、サブストーク5が貫通する状態で支持台26の下端を蓋体6の上面に設置した状態では、下金型ダイベース10の貫通孔16の下側に位置して、加熱空間17を、上板23より上側の上側空間17Aと、下板24より下側の下側空間17Bとに仕切るようになっている。
【0014】
そして、赤外線ランプヒータ22は、
図5,6に示すように、長手方向の両端を閉塞した細長円筒状の透明ガラス製の外管30内に、一対のカーボンヒータ31,31を収容してなる。
外管30は、仕切板21の各辺21A,21Bに沿って横向きに支持される横直線部32と、横直線部32から下向きにカーブする折曲部33と、折曲部33から下向きに延びる下直線部34とを有するL字状で、下直線部34の下端に、封止端子部35が設けられている。
【0015】
カーボンヒータ31は、外管30よりも小径となる細長円筒状の透明ガラス製の内管36内に、長手方向の両側縁にスリットが交互に切込み形成された薄板状の炭素繊維フィラメント37を、不活性ガスと共に封入してなる。内管36の両端には、炭素繊維フィラメント37へ電気的に接続されたリード線38,38がそれぞれ引き出される内封止端子部39,39が設けられて、外管30の横直線部32の閉塞端側では、リード線38,38同士が電気的に接続されて炭素繊維フィラメント37,37が直列接続されている。反対端側では、リード線38,38が折曲部33と下直線部34を通って封止端子部35へ引き出されている。
【0016】
このカーボンヒータ31,31は、外管30の横直線部32内へ平行に収容されるが、ここでは
図6,7に示すように、仕切板21の各辺21A,21Bにおいて、上板23に対して炭素繊維フィラメント37,37が45°の角度で仕切板21の中心側(サブストーク5側)へ向く斜め上向き姿勢となるように横直線部32内で固定されている。また、内側のカーボンヒータ31よりも外側のカーボンヒータ31の方が上側に位置して内外の炭素繊維フィラメント37,37が横断面で一直線状となるように横直線部32内で上下の位置をずらせて固定されている。さらに、横直線部32の外面における炭素繊維フィラメント37,37の外側となる半周分の領域には、
図2,3にも示すように、赤外線反射塗料が塗布された反射面40が形成されている。
【0017】
こうして形成される赤外線ランプヒータ22は、仕切板21上で、幅広の辺21Aでは内外に2本、幅狭の辺21Bでは1本が,上板23のコーナー部にそれぞれ固定された固定カバー41,41・・により支持される。すなわち、固定カバー41の互いの対向面に形成された差込孔42,42間に跨がって外管30を差し込むことで、各横直線部32は、上板23上で上板23と平行に支持される。但し、辺21Aでの2本の赤外線ランプヒータ22,22は、炭素繊維フィラメント37,37と同様に、内側の赤外線ランプヒータ22よりも外側の赤外線ランプヒータ22の方が上側に位置するように差込孔42,42の位置を上下にずらせている。
そして、各赤外線ランプヒータ22の下直線部34は、仕切板21に設けた透孔43,43・・を貫通し、支持台26の外側で下板24の下方へ突出して、封止端子部35を下板24の下方に位置させている。
【0018】
このヒータユニット20を設置した加熱空間17内では、仕切板21の各辺21A,21Bにそれぞれ設けた赤外線ランプヒータ22は、上側空間17A内でサブストーク5を外側から囲んで各カーボンヒータ31の炭素繊維フィラメント37,37の照射面37aをそれぞれ内側の拡開部13側へ向けた姿勢となる。ここでのサブストーク5の外面には、赤外線吸収材料を含有させた塗料が塗布されている。また、上側空間17A内では、下金型ダイベース10に設けた貫通孔16により露出する下金型8の下方に各赤外線ランプヒータ22が位置している。
一方、下側空間17B内には、各赤外線ランプヒータ22の封止端子部35がそれぞれ支持台26の外側に配置されている。カーボンヒータ31,31のリード線38,38は、耐熱性チューブにそれぞれ被覆されて封止端子部35から導出された後、支持台26の外側を通り、
図6に示すように、支持台26の外面に固定されたガイド筒44を介して外部へ引き出されて電源部(図示せず)に接続される。
【0019】
[低圧鋳造装置の動作説明]
以上の如く構成された低圧鋳造装置1においては、鋳造時には、金型加熱器等で下金型8と上金型9とを予熱して型締めした後、加圧口7から溶湯保持炉2への加圧を行い、溶湯をストーク4及びサブストーク5を介して下金型8の湯口14からキャビティ11内へ充填する。
これと同時あるいは所定時間経過後に、各赤外線ランプヒータ22へ通電して各カーボンヒータ31の炭素繊維フィラメント37を1200~1400℃で赤熱させる。よって、仕切板21の各辺21A,21Bに配置された各炭素繊維フィラメント37の照射面37aからの輻射熱により、サブストーク5は略全周から加熱され、サブストーク5内及び湯口14内の溶湯が凝固することが防止される。このとき、下金型ダイベース10の貫通孔16によって拡開部13の全周及び下金型8の下面は上側空間17A内に露出しているので、拡開部13は上端まで万遍なく加熱され、湯口14内の溶湯も効果的に加熱される。
【0020】
キャビティ11内で溶湯が凝固した後、溶湯保持炉2への加圧を解除すれば、凝固しなかった溶湯がストーク4を介して溶湯保持炉2内へ戻る。このときサブストーク5及び湯口14内の溶湯も赤外線ランプヒータ22の加熱によって凝固していないため、ストーク4を介して溶湯保持炉2内へ戻ることになる。
こうしてサブストーク5を加熱して上側空間17A内が高温(約500℃)となっても、下側空間17Bは、断熱ボード25を有する仕切板21によって仕切られているので、下側空間17Bの温度上昇は抑えられる。封止端子部35に用いられるモリブデンの耐熱温度は350℃で、これを越えると寿命が著しく低下するが、ここでは下側空間17B内の温度は350℃以下となるため、封止端子部35の熱による劣化が防止される。
【0021】
[低圧鋳造装置及びヒータユニットの発明に係る効果]
このように、上記形態の低圧鋳造装置1及びヒータユニット20では、サブストーク5の加熱手段を、サブストーク5の周囲に形成した加熱空間17に配置され、炭素繊維フィラメント37(発熱体)を有する横直線部32(発熱部)と、横直線部32の端部に設けられ、炭素繊維フィラメント37へ電気的に接続されるリード線38(配線)を導出する封止端子部35とからなる赤外線ランプヒータ22とし、加熱空間17を、断熱ボード25(断熱層)を有する金属製の仕切板21(仕切部材)によって上側空間17Aと下側空間17Bとに仕切り、赤外線ランプヒータ22を、横直線部32と封止端子部35との間で折曲して、横直線部32を上側空間17Aに、封止端子部35を下側空間17Bにそれぞれ配置している。
【0022】
これにより、サブストーク5の加熱手段として赤外線ランプヒータ22を使用しても、封止端子部35やリード線38の温度上昇を抑制して耐久性を確保することができる。また、リード線38は下側空間17Bに導出されるので、取り回し性も良好となる。
さらに、赤外線の輻射効果により、加熱空間17の雰囲気全体を加熱することなくサブストーク5を加熱できる。また、赤外線ランプヒータ22の採用により温度管理の自動化が図られ、ガスバーナのように着火や火力調整における作業工数が削減されて作業性の向上に繋がると共に、失火による温度低下を回避できる。加えて、赤外線ランプヒータ22を常時通電させる必要がないためエネルギー使用量も節約できる。
【0023】
特にここでは、赤外線ランプヒータ22を、L字状に折曲された棒状体として、横直線部32を上側空間17Aで横向きに配置し、封止端子部35を下側空間17Bで下向きに配置しているので、横直線部32でサブストーク5を効果的に加熱しつつ、封止端子部35を下側空間17B内へ確実に退避させることができる。
また、赤外線ランプヒータ22の横直線部32を、発熱体となる薄板状の炭素繊維フィラメント37を外管30(ガラス管)に封入したものとして、炭素繊維フィラメント37を挟んだサブストーク5の反対側では、外管30の外面に赤外線の反射塗料が塗布された反射面40を形成しているので、サブストーク5が吸収しやすい赤外線を効果的に放射できる。さらに、反射塗料は高温下でも酸化しないため赤外線の漏れを防止でき、加熱効率の向上が期待できる。
そして、炭素繊維フィラメント37を、サブストーク5側の照射面37aが斜め上向きとなる姿勢で外管30内に配置しているので、赤外線ランプヒータ22との距離があるサブストーク5の上部や下金型8にも赤外線が照射されて均一に加熱できる。よって、鋳造製品の品質が安定する。
【0024】
一方、サブストーク5の外面には、赤外線吸収材料が塗布されているので、サブストーク5の赤外線吸収率が高まって加熱効率の向上に繋がる。
また、下金型ダイベース10におけるサブストーク5の貫通孔を、サブストーク5の外形よりも大きく形成して、下金型8を上側空間17A内に露出させているので、サブストーク5の上部及び下金型8に赤外線が照射されやすくなり、下金型8の加熱が効果的に行える。加えて、上側空間17Aを広く確保できるため、赤外線ランプヒータ22のレイアウトに制約を受けにくくなり、設置も容易に行える。
さらに、仕切板21を、サブストーク5の外側を囲む枠形状とし、複数の赤外線ランプヒータ22を枠形状に沿って仕切板21に支持させているので、サブストーク5を略全周から均一に加熱可能となる。
【0025】
[変更例の説明]
上記形態では、発熱部の一端に封止端子部を有する赤外線ランプヒータを用いているが、発熱部の両端に封止端子部を有する赤外線ランプヒータも使用できる。この場合はL字状でなく両端を折曲したコ字状となって両端の封止端子部が下側空間に突出する。赤外線ランプヒータの支持構造も上記形態に限らず、仕切板上に固定した支持板等を用いてもよい。
赤外線ランプヒータは、一対のカーボンヒータを収容した形態となっているが、1つのカーボンヒータのみで形成してもよい。この場合、内管が省略されて1つの炭素繊維フィラメントが封入される。赤外線ランプヒータを各辺に1本ずつ配置してもよい。
炭素繊維フィラメントの形状も上記形態に限らず、スリットがないもの等でも差し支えない。発熱体としては炭素製発熱体でなく、タングステン製発熱体も採用可能である。
サブストークに対する発熱体の傾斜姿勢も、45°に限らず、30~60°程度の範囲で適宜変更できる。但し、必要な発熱量が得られれば傾斜姿勢とせずに水平姿勢や垂直姿勢としてもよいし、傾斜姿勢のものと組み合わせてもよい。
【0026】
一方、上記形態では外管に反射面を形成しているが、これに代えて、
図8に示すように、外管30内に、横断面を半円状や円弧状とした金属製の反射板45を設けてもよい。この場合も赤外線を効果的に放射できる。また、反射板45は高温下でも酸化しないため赤外線の漏れを防止でき、加熱効率の向上が期待できる。但し、反射面や反射板は省略してもよいし、サブストークの赤外線吸収塗料も省略できる。
仕切部材も、上記形態では仕切板を平面視四角形としているが、サブストークの外周を囲む形状であれば、平面視が三角形や多角形、円形等の他の形状としてもよい。逆に枠形状に限らず、平面視がコ字状やC字状の仕切部材としたり、これらの複数の仕切部材をサブストークの周囲に配置したりしてもよい。この場合、仕切部材の形態に合わせて赤外線ランプヒータの数や配置を変更すればよい。
【0027】
仕切部材の断熱層も、上記形態の断熱ボードに限らず、複数の断熱シートを積層させたり、耐熱ガラス長繊維を充填したりして形成することは可能である。
そして、上記形態では、貫通孔の下方に位置する水平な仕切板によって加熱空間を上下に仕切って下側空間を半閉塞状態としているが、サブストークや仕切部材の形状によっては、仕切部材を貫通孔に嵌合させたり、仕切部材の外周に下側空間を囲む壁体を設けたりすることで下側空間を閉塞してもよい。同様に、例えば横断面が倒コ字状や逆U字状となる仕切部材を加熱空間に配置して、仕切部材の内側で閉塞される下側空間に封止端子部を配置しても温度上昇の抑制は可能である。
【符号の説明】
【0028】
1・・低圧鋳造装置、2・・溶湯保持炉、3・・金型、4・・ストーク、5・・サブストーク、6・・蓋体、8・・下金型、9・・上金型、10・・下金型ダイベース、11・・キャビティ、12・・円筒部、13・・拡開部、14・・湯口、16・・貫通孔、17・・加熱空間、17A・・上側空間、17B・・下側空間、20・・ヒータユニット、21・・仕切板、22・・赤外線ランプヒータ、23・・上板、24・・下板、25・・断熱ボード、26・・支持台、30・・外管、31・・カーボンヒータ、32・・横直線部、33・・折曲部、35・・封止端子部、36・・内管、37・・炭素繊維フィラメント、37a・・照射面、38・・リード線、40・・反射面、45・・反射板。