(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-13
(45)【発行日】2023-07-24
(54)【発明の名称】レーダ装置
(51)【国際特許分類】
G01S 7/03 20060101AFI20230714BHJP
G01S 13/931 20200101ALI20230714BHJP
【FI】
G01S7/03 246
G01S7/03 234
G01S13/931
(21)【出願番号】P 2019143752
(22)【出願日】2019-08-05
【審査請求日】2022-01-26
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】弁理士法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】塩崎 亮佑
(72)【発明者】
【氏名】高橋 健
(72)【発明者】
【氏名】齊藤 典昭
【審査官】佐藤 宙子
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-173350(JP,A)
【文献】特開2019-097117(JP,A)
【文献】特開2007-057483(JP,A)
【文献】特開2004-077399(JP,A)
【文献】特開2014-50031(JP,A)
【文献】特開2017-152810(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01S 7/00- 7/42
G01S 13/00-13/95
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の電磁波を送信するアンテナ部を搭載する基板面を有する回路基板と、
前記回路基板を収容し、前記基板面と対向する対向壁を有
し、樹脂を用いて形成された筐体と、
前記筐体の内部で発生する熱を前記筐体に伝達する熱伝達部と、
を備え、
前記対向壁は、
前記アンテナ部から送信される
前記第1の電磁波
の波長に応じて調整された第1の厚みを有し、前記第1の電磁波を
前記筐体の外部に透過する透過部と、
前記第1の電磁波の実効波長に応じて調整された第2の厚みを有し
、前記透過部の厚みとは異なる部分を含み、
前記筐体の外部の物体に反射して前記筐体に入射する
第2の電磁波を吸収する吸収部と、
を有し、
前記熱伝達部は、
前記筐体の内部における前記対向壁の前記吸収部に接触するように配置される部分を含
み、前記吸収部を透過した前記第2の電磁波を第3の電磁波として反射する第1伝達部材と、
前記第1伝達部材に前記熱を伝達する第2伝達部材と、
を有
し、
前記吸収部は、前記第2の電磁波のうち前記吸収部が反射した第4の電磁波と、前記第4の電磁波と逆相関係となる前記第3の電磁波と、の逆相合成によって、前記第2の電磁波を吸収する、
レーダ装置。
【請求項2】
前記第2伝達部材は、前記第1伝達部材と前記回路基板との間に配置される、
請求項1に記載のレーダ装置。
【請求項3】
前記第2伝達部材は、前記第1伝達部材と前記回路基板に搭載された発熱部品との間に配置される、
請求項1に記載のレーダ装置。
【請求項4】
前記透過部は、前記
第1の電磁波を前記筐体の外部に送出するレンズを有する、
請求項1~3の何れか1項に記載のレーダ装置。
【請求項5】
前記第1伝達部材は、前記アンテナ部の半値角の範囲で送信された
第1の電磁波の送信範囲よりも外側に配置されている、
請求項1~4の何れか1項に記載のレーダ装置。
【請求項6】
前記吸収部の厚みは、λeを前記吸収部における
第2の電磁波の実効波長とし、nを0以上の整数とした場合に、λe/4×(2n+1)である、
請求項1~5の何れか1項に記載のレーダ装置。
【請求項7】
前記吸収部の厚みは、前記吸収部への
第2の電磁波の少なくとも入射角によって決定される、
請求項6に記載のレーダ装置。
【請求項8】
前記吸収部は、前記透過部に対して傾斜している傾斜部を含む、
請求項1~7の何れか1項に記載のレーダ装置。
【請求項9】
前記吸収部は、前記対向壁において前記透過部を挟むように配置されている、
請求項1~8の何れか1項に記載のレーダ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、レーダ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ミリ波やマイクロ波の周波数帯域を利用した、非接触で物体の位置を検知するレーダ装置が知られている。この種のレーダ装置においては、例えば、特許文献1に記載の構成のように、筐体によってアンテナ部を気密封止する構成が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、筐体外部に送信された電磁波(特に、高周波のもの)が、送信方向の途中に位置する部材から反射されて筐体側に戻り、筐体で再反射される多重反射が発生する場合がある。多重反射が発生すると、アンテナ部から送信された電磁波と、再反射された電磁波とが相殺し合う場合があるので、レーダ装置の機能が損なわれるおそれがあった。
【0005】
一方、この種のレーダ装置においては、筐体内に位置する回路基板および回路基板に搭載された部品が外部にさらされていないので、これらの部品の放熱性を確保することが困難であるという課題がある。
【0006】
本開示の目的は、筐体内部の回路基板等の放熱性を確保しつつ、多重反射の発生を抑制することが可能なレーダ装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示に係るレーダ装置は、
第1の電磁波を送信するアンテナ部を搭載する基板面を有する回路基板と、
前記回路基板を収容し、前記基板面と対向する対向壁を有し、樹脂を用いて形成された筐体と、
前記筐体の内部で発生する熱を前記筐体に伝達する熱伝達部と、
を備え、
前記対向壁は、
前記アンテナ部から送信される前記第1の電磁波の波長に応じて調整された第1の厚みを有し、前記第1の電磁波を前記筐体の外部に透過する透過部と、
前記第1の電磁波の実効波長に応じて調整された第2の厚みを有し、前記透過部の厚みとは異なる部分を含み、前記筐体の外部の物体に反射して前記筐体に入射する第2の電磁波を吸収する吸収部と、
を有し、
前記熱伝達部は、
前記筐体の内部における前記対向壁の前記吸収部に接触するように配置される部分を含み、前記吸収部を透過した前記第2の電磁波を第3の電磁波として反射する第1伝達部材と、
前記第1伝達部材に前記熱を伝達する第2伝達部材と、
を有し、
前記吸収部は、前記第2の電磁波のうち前記吸収部が反射した第4の電磁波と、前記第4の電磁波と逆相関係となる前記第3の電磁波と、の逆相合成によって、前記第2の電磁波を吸収する。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、筐体内に位置する回路基板等の放熱性を確保しつつ、多重反射の発生を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本開示の実施の形態に係るレーダ装置を搭載した車両を示す図である。
【
図2】本実施の形態に係るレーダ装置の断面図である。
【
図3A】吸収部の厚みの根拠を説明するための図である。
【
図3B】透過部の厚みの根拠を説明するための図である。
【
図5】レンズ部を含む透過部を有する変形例に係るレーダ装置の断面図である。
【
図8】吸収部が透過部を挟む構成を有するレーダ装置の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本開示の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。
図1は、本開示の実施の形態に係るレーダ装置100を搭載した車両Cを示す図である。
図2は、本実施の形態に係るレーダ装置100の断面図である。
【0011】
図1に示すように、レーダ装置100は、例えば車両Cのカバー部材Bに設けられ、カバー部材Bを介してミリ波、または、ミリ波より高い周波数帯域の電磁波の送受信を行う。
【0012】
図2に示すように、レーダ装置100は、筐体110と、回路基板120と、アンテナ部130と、熱伝達部140とを有する。
図2等では、レーダ装置100を上から見た図が示されている。
図2等では、左側が「前」側、右側が「後」側、上側が「上」側、下側が「下」側を示している。なお、各方向については、
図2等の例に限定されず、どのような方向であっても良い。
【0013】
筐体110は、樹脂製の筐体であり、前後方向、左右方向および上下方向の何れかの方向に延びる辺を有する直方体状に構成されている。筐体110の前壁111は、カバー部材Bと対向している。また、前壁111は、筐体110の内部において回路基板120の前側の基板面121と対向している。前壁111は、透過部111Aと、吸収部111Bとを有する。前壁111は、本開示の「対向壁」に対応する。
【0014】
透過部111Aは、前壁111の上部を構成している。透過部111Aは、前壁111におけるアンテナ部130で送受信する電磁波を透過する部分であり、前後方向の厚みが、アンテナ部130で送受信する電磁波を透過可能な厚みとなるように構成されている。
【0015】
吸収部111Bは、前壁111の下部を構成している。吸収部111Bは、後述する第1伝達部材141と組み合わせることで筐体110の外部から入射する電磁波を吸収する部分となり、前後方向における全体の厚みが透過部111Aの前後方向における全体の厚みと異なっている。
【0016】
吸収部111Bの厚みは、λe/4×(2n+1)であることが好ましい。nは任意の0以上の整数である。また、上述の透過部111Aにおける、電磁波を透過可能な厚みは、λe/2×mであることが好ましい。mは任意の1以上の整数である。λeは、吸収部111Bの誘電率に依存する実効波長(吸収部111B中での波長)である。
【0017】
回路基板120は、筐体110内に収容され、前側の基板面121が上下方向に平行で、かつ、前後方向に直交するように配置されている。
【0018】
回路基板120の材料は、本開示では特に限定されないが、例えば、PCB(Printed Circuit Board)基板を用いることができる。回路基板120としては、多層基板や、信号処理部を内蔵した半導体基板が用いられても良い。なお、回路基板120は、典型的には平板形状を有する。
【0019】
アンテナ部130は、回路基板120の前側の基板面121の上部領域に配置されており、透過部111Aを介して電磁波を送受信する。アンテナ部130は、電磁波を送信する送信アンテナ素子と、電磁波を受信する受信アンテナ素子とをそれぞれ有する。
【0020】
送信アンテナ素子は、回路基板120の前方であるカバー部材Bに向けて電磁波を送信する。受信アンテナ素子は、回路基板120の前方から電磁波を受信する。
【0021】
また、アンテナ部130を構成するアンテナ素子としては、アンテナ素子の配列方向と垂直な方向において電磁波を送受信するブロードサイドアレーアンテナが適用される。
【0022】
熱伝達部140は、回路基板120の熱等、筐体110の内部で発生する熱を筐体110に伝達する。熱伝達部140は、第1伝達部材141と、第2伝達部材142とを有する。
【0023】
第1伝達部材141は、回路基板120の熱を筐体110に伝達するための金属板であり、筐体110の内部における前壁111の吸収部111Bに接触するように配置されている。また、第1伝達部材141は、吸収部111Bの領域全体を覆うように構成されている。なお、第1伝達部材141と吸収部111Bとの接触方法としては、第1伝達部材141(金属板)を、筐体110における樹脂成形時に一体で成形する方法、第1伝達部材141と吸収部111Bとの間に放熱グリス等を塗って挟み込む方法等が挙げられる。
【0024】
また、第1伝達部材141は、吸収部111Bに吸収された電磁波を遮蔽する。そのため、筐体110の内部に外部からの電磁波が進入することを防止することができる。
【0025】
また、第1伝達部材141は、アンテナ部130の半値角の範囲で送信された電磁波の送信範囲よりも外側に配置されている。
図2における破線Xは、アンテナ部130の上記の送信範囲の最下端を示しており、第1伝達部材141は、Xよりも下側に位置している。
【0026】
これにより、アンテナ部130から送信された電磁波が第1伝達部材141により筐体110の内部に反射されることを防止することができる。
【0027】
第2伝達部材142は、回路基板120の熱を第1伝達部材141に伝達する、放熱グリス等の弾性を有する放熱剤であり、回路基板120と第1伝達部材141との間に配置される。
【0028】
回路基板120には、アンテナ部130の他、信号処理用の半導体素子等の発熱部品が搭載される。そのため、筐体110のような密閉空間に回路基板120が配置される構成であると、回路基板120における放熱性が課題となる。
【0029】
本実施の形態では、第2伝達部材142により、回路基板120の熱を第1伝達部材141に伝達することができる。第1伝達部材141に伝達された熱は、第1伝達部材141全体に広がって、筐体110の吸収部111Bの領域全体に伝達され、吸収部111Bの部分から外部に放たれる。
【0030】
これにより、レーダ装置100における放熱性を向上させることができる。
【0031】
また、アンテナ部130から送信された電磁波Y1は、透過部111Aを介して筐体110の外部に送出される(矢印Z1参照)。しかし、筐体110の外部に送出された電磁波Y1が、カバー部材Bで反射されて筐体110側に戻ってきて(矢印Y2参照)、筐体110で再反射される多重反射が発生する場合がある(矢印Z2参照)。多重反射が発生すると、アンテナ部130から送信された電磁波と、再反射された電磁波とが相殺し合う場合があるので、レーダ装置100の機能が損なわれるおそれがあった。
【0032】
しかし、本実施の形態では、筐体110の前壁111に吸収部111Bが設けられているので、透過部111Aを介して送出された電磁波が、カバー部材Bで反射されて筐体110側に戻ってきても、吸収部111Bで吸収される。
【0033】
これにより、多重反射が発生することを抑制することができ、ひいてはレーダ装置100を適切に機能させることができる。
【0034】
次に、前述した吸収部111Bの好ましい厚みの根拠について説明する。吸収部111Bの厚みは、カバー部材Bから反射された反射波をカバー部材Bの側にできるだけ再放射させないような厚み(例えば、上述のλe/4×(2n+1))が好ましい。
【0035】
図3Aに示すように、吸収部111Bに向かう電磁波E1をsin(-ωt+kx)とすると、吸収部111Bで反射される電磁波(第1電磁波)E2は、sin(-ωt-kx+π)と表される。ここで、ωは電磁波の各周波数、tは時間、xは電磁波の位相、kは2π/λである。
【0036】
なお、
図3Aおよび
図3Bでは、便宜上電磁波の矢印を入射する側と反射する側とで、位置をずらして示している。
【0037】
また、吸収部111Bに入射する電磁波(入射波)E3は、E1と同様に、sin(-ωt+kx)と表される。
【0038】
この入射波E3は第1伝達部材141で反射されるが、反射された反射波(第2電磁波)E4は、-sin(-ωt-kx+2kd)と表される。ただし、第1伝達部材141での反射は全反射と仮定する。dは、吸収部111Bの厚みである。
【0039】
ここで、上記の第1電磁波E2が、吸収部111Bで反射される電磁波であり、上記の第2電磁波E4が、吸収部111Bから放射される電磁波であるので、2つの電磁波E2,E4が吸収部111Bの表面から放射されることとなる。このことから、第1電磁波E2と第2電磁波E4とを合成した合成波が0となれば、吸収部111Bから電磁波が放射されない、つまり、吸収部111Bで完全に電磁波を吸収することが可能となる(下記式(1)参照)。
【0040】
sin(-ωt-kx+π)-sin(-ωt-kx+2kd)=0 ・・・(1)
【0041】
上記式(1)により、π=2kdとなり、k=2π/λを考慮すると、d=λ/4となる。電磁波の繰り返しを考慮すると、nを0以上の整数として、d=(n/2+1/4)λ=λ/4×(2n+1)である。
【0042】
この厚みを有することで、吸収部111Bでは、電磁波を再放射することなく効果的に吸収することができる。また、第1伝達部材141が存在することにより、筐体110の内部に吸収部111Bを介して電磁波が進入することを防止することができる。
【0043】
また、吸収部111Bの厚みdは、nの値によって変動可能であるが、吸収部111Bへの電磁波の入射角によって決定される。当該入射角によって電磁波の吸収部111B内での移動距離(位相)が変わるので、吸収部111Bへの電磁波の入射角によって最適なnを選択することによって、吸収部111Bにおける最適な厚みに調整することができる。なお、nの値は、電磁波の入射角に加えて、それ以外の要素を考慮して決定されても良い。
【0044】
次に、透過部111Aの厚みの根拠について説明する。透過部111Aの厚みは、アンテナ部130で送受信する電磁波をできるだけ透過させるような厚み(例えば、上述のλe/2×m)が好ましい。なお、透過部111Aでは、吸収部111Bとは異なり、第1伝達部材141のような別部材が存在しないので、以下の説明では、反射率については無視し、位相の変化のみで比較する。
【0045】
図3Bに示すように、透過部111Aに向かう電磁波E6をsin(-ωt+kx)とすると、透過部111Aの入射面S1で反射する反射波(第3電磁波)E7はsin(-ωt-kx+π)=-sin(-ωt-kx)となる。また、透過部111Aに入射する電磁波E8は、E1と同様に、sin(-ωt+kx)と表される。また、透過部111Aに入射し、透過部111Aの面S2で反射した、面S2における電磁波E9は、sin(-ωt-kx+2kd)と表される。
【0046】
透過部111Aの表面からは、入射せずに反射された第3電磁波E7と、入射して戻ってきた第4電磁波E9とが放射されることとなるので、この2つの電磁波の合成波が0となれば、透過部111Aで電磁波が反射されることがない。つまり、透過部111Aで完全に電磁波を透過させることが可能となる(下記式(2)参照)。
【0047】
-sin(-ωt-kx)+sin(-ωt-kx+2kd)=0 ・・・(2)
【0048】
上記式(2)より、-sin(-ωt-kx)=-sin(-ωt-kx+2mπ)であるため、2mπ=2kdとなる。
【0049】
k=2π/λであることを考慮すると、透過部111Aの厚みdは、2mπ=4πd/λとなり、d=λ/2×mとなる。
【0050】
この厚みを有することで、透過部111Aでは、電磁波を反射することなく透過させることができる。
【0051】
なお、透過部111Aの厚みについても、吸収部111Bと同様に、最適なmを選択することによって、最適な厚みに調整することができる。
【0052】
以上のように構成された本実施の形態によれば、筐体110内に位置する回路基板120等の放熱性を確保しつつ、多重反射の発生を抑制することができる。
【0053】
また、第1伝達部材141を吸収部111Bに接触するように配置することで、吸収部111Bに入射した電磁波が筐体110内に進入することを防止することができる。
【0054】
また、第2伝達部材142を回路基板120上に配置するので、回路基板120と第2伝達部材142との接触面積をある程度確保することができる。そのため、回路基板120の熱を第1伝達部材141に効率よく伝達することができる。
【0055】
また、第1伝達部材141を吸収部111B全体にわたって配置するので、第2伝達部材142によって伝達された熱が、第1伝達部材141全体に広がる。その結果、吸収部111B全体に熱を伝えることができ、ひいては効率よく放熱することができる。
【0056】
なお、上記実施の形態では、回路基板120と第1伝達部材141とに接触するように第2伝達部材142が設けられていたが、本開示はこれに限定されない。例えば、
図4に示すように、第2伝達部材142が、回路基板120に搭載される発熱部品150と第1伝達部材141とに接触するように設けられていても良い。
【0057】
これによれば、発熱部品150の熱を直接第2伝達部材142に伝えることができるので、放熱効率を向上させることができる。
【0058】
また、
図5に示すように、透過部111Aの部分にレンズ部111Cを有する構成であっても良い。レンズ部111Cは、半円状の断面形状を有する。また、この構成では、吸収部111Bの厚みは、透過部111Aの一部と同じとなる部分を含んでいるが、少なくとも、透過部111Aの厚みが最も厚い部分とは異なっている。
【0059】
このような構成であっても、回路基板120等の放熱性を確保しつつ、多重反射の発生を抑制することができる。また、レンズ部111Cを用いた電磁波の送受信を行うことができる。
【0060】
また、上記の多重反射は、筐体110の内部でも発生する場合がある。筐体110の内部で発生する多重反射を抑制する構成としては、例えば、
図6に示すように、前壁111の透過部111Aと透過部111Aではない部分との境界に遮蔽部112を設ける構成が考えられる。
【0061】
遮蔽部112は、前壁111から回路基板120に向けて突出している。遮蔽部112は、回路基板120側に向かうにつれ細くなるように構成されている。遮蔽部112の先端の位置は、回路基板120に接触しない程度の位置である。なお、遮蔽部112の形状は、四角形状等、どのような形状であっても良い。
【0062】
このようにすることで、アンテナ部130により放射され、透過部111Aにより反射された電磁波が、筐体110の内部で多重反射しようとしても、遮蔽部112によって遮られる。その結果、透過部111Aではない部分への電磁波の伝搬を抑制することができる。
【0063】
また、上記実施の形態では、透過部111Aが前壁111の上部に位置していたが、本開示はこれに限定されず、前壁111の中央部、下部、左端部、右端部等、他の部分に位置しても良い。また、吸収部111Bは、前壁111における透過部111Aが存在しない箇所となる。つまり、透過部111Aが前壁111の下部に配置された場合、吸収部111Bは、前壁111の上部となり、透過部111Aが前壁111の左端部に配置された場合、吸収部111Bは、前壁111の右端部となる。
【0064】
また、上記実施の形態では、第2伝達部材142が弾性体で構成されていたが、本開示はこれに限定されず、弾性体でなくても良い。ただし、回路基板または発熱部品との接触性確保の観点から、第2伝達部材142が弾性体で構成されていることが望ましい。
【0065】
また、上記実施の形態では、第1伝達部材141が前壁111の吸収部111Bにのみ設けられていたが、本開示はこれに限定されず、第1伝達部材が吸収部の部分から、筐体110の底壁部分や側壁部分、または、底壁部分、側壁部分および後壁部分まで延びていても良い。このような構成の場合、第2伝達部材は、吸収部111Bに対応する部分以外の部分の第1伝達部材に接触していても良い。
【0066】
また、上記実施の形態では、前壁111における、透過部111A以外の部分(吸収部)が平坦に構成されていたが、本開示はこれに限定されない。例えば、
図7に示すように、吸収部が透過部111Aに対して傾斜している傾斜部を含む構成であっても良い。
【0067】
図7に示すレーダ装置100の筐体110における前壁111は、透過部111Aと、第1部111Dと、第2部111Eと、第3部111Fとを有する。
【0068】
第1部111Dは、透過部111Aの下に位置しており、透過部111Aの下端部から下斜め後ろ方向に延びている。つまり、第1部111Dは、透過部111Aに対して傾斜している。
【0069】
第2部111Eは、第1部111Dの下に位置しており、第1部111Dの下端部から下方向に延びている。
【0070】
第3部111Fは、第2部111Eの下に位置しており、第2部111Eの下端部から下斜め後ろ方向に延びている。つまり、第3部111Fは、透過部111Aに対して傾斜している。
【0071】
第1部111D、第2部111Eおよび第3部111Fの裏側には、第1伝達部材141が設けられている。
【0072】
第1伝達部材141は、第1部111D、第2部111Eおよび第3部111Fに沿う形状に構成されており、第1伝達部141Aと、第2伝達部141Bと、第3伝達部141Cとを有する。
【0073】
第1伝達部141Aは、第1部111Dに対応する位置に配置され、第1部111Dに接触している。
【0074】
第2伝達部141Bは、第2部111Eに対応する位置に配置され、第2部111Eに接触している。
【0075】
第3伝達部141Cは、第3部111Fに対応する位置に配置され、第3部111Fに接触している。
【0076】
このように構成されることで、上下方向に対して傾斜している第1部111Dおよび第3部111Fの何れかに電磁波が到達した場合、カバー部材Bからの反射波(矢印Y3)が、アンテナ部130から送信された電磁波Y1とは異なる角度で反射される(矢印Z3参照)。
【0077】
すなわち、この構成では、多重反射が発生した場合でも、多重反射に基づく電磁波が、アンテナ部130から送信された電磁波とは異なる角度で進行するため、これらの電磁波同士で相殺される可能性を低減することができる。
【0078】
また、上記実施の形態では、第1伝達部材141が前壁111の下部、つまり、アンテナ部130の下側に対応する位置に設けられていたが、本開示はこれに限定されず、アンテナ部130の下側以外の位置に設けられていても良い。
【0079】
例えば、
図8に示すように、第1伝達部材141がアンテナ部130の上下方向の両側の位置に設けられていても良い。アンテナ部130は、
図4に示す構成よりも下の位置である、回路基板120の中央部付近に設けられている。
【0080】
透過部111Aは、前壁111におけるアンテナ部130に対応する位置である、前壁111の中央部付近の位置に設けられている。前壁111における透過部111A以外の部分は、吸収部111Bとなっている。
【0081】
図8に示す吸収部111Bは、前壁111における、透過部111Aの上側、および、下側の2箇所に設けられている。つまり、吸収部111Bは、前壁111において透過部111Aを挟むように配置されている。
【0082】
上側の吸収部111B、および、下側の吸収部111Bの両方の裏側には、第1伝達部材141が設けられている。なお、上側の第1伝達部材141に対応する第2伝達部材142等については図示を省略している。
【0083】
このような構成とすることで、回路基板120における部品のレイアウト設計の自由度を向上させることができる。
【0084】
その他、上記実施の形態は、何れも本開示を実施するにあたっての具体化の一例を示したものに過ぎず、これらによって本開示の技術的範囲が限定的に解釈されてはならないものである。すなわち、本開示はその要旨、またはその主要な特徴から逸脱することなく、様々な形で実施することができる。
【産業上の利用可能性】
【0085】
本開示のレーダ装置は、筐体内部の回路基板等の放熱性を確保しつつ、多重反射の発生を抑制することが可能なレーダ装置として有用である。
【符号の説明】
【0086】
100 レーダ装置
110 筐体
111 前壁
111A 透過部
111B 吸収部
120 回路基板
130 アンテナ部
140 熱伝達部
141 第1伝達部材
142 第2伝達部材