(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-13
(45)【発行日】2023-07-24
(54)【発明の名称】電解コンデンサ用電極箔およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
H01G 9/00 20060101AFI20230714BHJP
H01G 9/055 20060101ALI20230714BHJP
C08F 4/00 20060101ALI20230714BHJP
C08F 2/50 20060101ALI20230714BHJP
H01L 21/027 20060101ALI20230714BHJP
【FI】
H01G9/00 290D
H01G9/055
C08F4/00
C08F2/50
H01L21/30 502D
(21)【出願番号】P 2020127027
(22)【出願日】2020-07-28
【審査請求日】2022-05-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000004606
【氏名又は名称】ニチコン株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000106139
【氏名又は名称】サンアプロ株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】504157024
【氏名又は名称】国立大学法人東北大学
(74)【代理人】
【識別番号】110000475
【氏名又は名称】弁理士法人みのり特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】壷井 祐樹
(72)【発明者】
【氏名】中坊 徹
(72)【発明者】
【氏名】北野 匡章
(72)【発明者】
【氏名】木村 秀基
(72)【発明者】
【氏名】白石 篤志
(72)【発明者】
【氏名】中川 勝
(72)【発明者】
【氏名】伊東 駿也
【審査官】清水 稔
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第07150767(US,B1)
【文献】特開2018-056273(JP,A)
【文献】特開昭63-220512(JP,A)
【文献】特開平02-241015(JP,A)
【文献】特開平01-189907(JP,A)
【文献】特開昭61-051817(JP,A)
【文献】特開平03-237107(JP,A)
【文献】特開2018-006617(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01G 9/00
H01G 9/055
C08F 4/00
C08F 2/50
H01L 21/027
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電解コンデンサ用電極箔の製造方法であって、
電極箔表面にレジスト層を設けるレジスト層形成工程と、
前記レジスト層を所定のパターンにパターンニングするレジストパターン形成工程と、
パターンニングされた前記レジスト層が形成された前記電極箔表面に対してエッチング液を用いて湿式電解エッチングを行う湿式電解エッチング工程と
を含み、
前記レジスト層を形成するために使用されるレジスト材料が、光重合開始剤と重合性化合物とを含有する光硬化性組成物であって、
(a)上記光重合開始剤が、ヨードニウム化合物もしくはスルホニウム化合物からなる光カチオン重合開始剤(A)であり、
(b)上記重合性化合物の総重量に対して35重量%以上が、炭素原子および水素原子のみからなるエチレン性不飽和結合を含むカチオン重合性炭化水素化合物(B)であり、さらに、
(c)下記の式(1)に基づき計算される、上記光硬化性組成物に含まれるヘテロ原子の割合を表したヘテロ原子含有百分率:
ヘテロ原子含有百分率=100×Σ(Nh
i×M
i)/Σ{(Nh
i+Nc
i)×M
i} (1)
[式中、Nh
iは光硬化性組成物中の各成分に含まれるヘテロ原子の数であり(但し、ここでいうヘテロ原子とは、炭素原子および水素原子を除いた全ての原子である)、Nc
iは光硬化性組成物中の各成分に含まれる炭素原子の数であり、M
iは光硬化性組成物に占める各成分の物質量の分率を示し、ΣM
i=1であり、i は光硬化性組成物に含まれる成分の種類の数を表し、1以上の整数を示す。]
が6.0以下であ
り、
前記レジストパターン形成工程において、光ナノインプリント法を用いて前記レジスト層をパターンニングすることを特徴とする電解コンデンサ用電極箔の製造方法。
【請求項2】
前記光硬化性組成物が、光増感剤、界面活性剤、重合禁止剤、酸化防止剤、密着性付与剤からなる群から選ばれる1種類以上の添加剤を含有することを特徴とする請求項1に記載の電解コンデンサ用電極箔の製造方法。
【請求項3】
前記レジストパターン形成工程において、光ナノインプリント法を用いて
パターンニングされた前記レジスト層の凹凸パターンの凹部に残存する残膜を酸素系ドライエッチングにより除去することを特徴とする請求項1または2に記載の電解コンデンサ用電極箔の製造方法。
【請求項4】
前記レジスト層形成工程において、インクジェット方式、スリットダイコート方式または小径グラビア方式により前記光硬化性組成物を前記電極箔表面に塗布して前記レジスト層を形成する
ことを特徴とする請求項
1ないし3のいずれか1項に記載の電解コンデンサ用電極箔の製造方法。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれかに記載の電解コンデンサ用電極箔の製造方法で得られた電解コンデンサ用電極箔
。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電解コンデンサ用電極箔の製造方法、特に光ナノインプリント法によりアルミニウム電解コンデンサ用電極箔を製造する方法に関する。また、本発明は、当該製造方法を用いて得られた電解コンデンサ用電極箔に関するものでもある。
【背景技術】
【0002】
フォトリソグラフィは、半導体製造をはじめとする部品の製造において微細加工技術として従来から用いられてきた。このフォトリソグラフィ技術を用いて、電解コンデンサ用電極材としてのアルミニウム箔に多数の微細孔を形成することが知られている。
【0003】
例えば、特許文献1には、アルミニウム箔表面にフォトリソグラフィ法によりレジスト被膜層のパターンを付与してエッチングすることにより、高容量のアルミニウム電解コンデンサ用の電極箔を製造する方法が開示されている。具体的には、特許文献1に記載の電解コンデンサ用アルミニウム箔の製造方法によれば、アルミニウム箔表面にレジスト被膜層を形成した後、フォトマスクを介して露光し、現像を行って表面に耐性被膜としての多孔レジスト膜を形成している。その後、エッチング液によりエッチング処理を施した後、レジスト剥離を行って電解コンデンサ用アルミニウム箔(エッチング箔)を製造している。
【0004】
しかしながら、特許文献1記載の電解コンデンサ用アルミニウム箔の製造方法では、現実的にサブマイクロメートルオーダーで制御されたパターンを付与することが難しいという問題がある。サブマイクロメートルサイズのレジスト被膜層のパターンの付与を行うためには縮小投影露光装置等の高価な露光装置が必要になるだけでなく、フレキシブルな電解コンデンサ用アルミニウム箔ではフォトマスクとレジスト被膜層の距離にバラつきが生じるため、パターン形成が困難な問題があった。故に、ロール・ツゥ・ロールで電解コンデンサ用アルミニウム箔を製造することは、特許文献1記載の製造方法では、アルミニウム箔表面にサブマイクロメートルオーダーで制御されたパターンを付与することは実際上、困難であった。
これに対し、光ナノインプリント法によれば、フレキシブルな電解コンデンサ用アルミニウム箔に同様にフレキシブルな樹脂製のナノインプリントモールド(パターン形成用の型)を密着させてレジストパターンを光硬化させて離型するため、サブマイクロメートルオーダーで制御されたパターンの付与が原理的に可能となる。しかし、市販の光ナノインプリント用レジスト材料を用いてアルミニウム箔表面にパターンを付与して電解エッチングした場合、強酸性かつ高イオン強度のエッチング液に対する耐性が弱く、付与したパターン周期に従ってエッチングピットを整列させることができないという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって、本発明の目的は、前述の従来技術における問題点を解決し、エッチング液に対して強い耐性を有し、サブマイクロメートルオーダーで制御されたパターンを電極箔の表面に付与できる光ナノインプリント用レジスト材料を使用することにより、付与したパターン周期に従ってエッチングピットを整列させることが可能な電解コンデンサ用電極箔の製造方法を提供することである。
【0007】
本発明者らは、前記問題点を解決すべく鋭意研究した結果、レジスト材料としてエチレン性不飽和結合を含むカチオン重合性炭化水素基を有するモノマーを使用し、光酸発生剤として特定構造を有するオニウム塩を使用した光硬化性組成物が、エッチング液に対して強い耐性を示し、光ナノインプリント法により電極箔の表面にパターン周期に従ってエッチングピットを整列させることができることを見出して、本発明を完成した。
【課題を解決するための手段】
【0008】
具体的には、下記の<1>~<6>に記載の手段によって上記課題は解決された。
<1>電解コンデンサ用電極箔の製造方法であって、
電極箔表面にレジスト層を設けるレジスト層形成工程と、
前記レジスト層を所定のパターンにパターンニングするレジストパターン形成工程と、
パターンニングされた前記レジスト層が形成された前記電極箔表面に対してエッチング液を用いて湿式電解エッチングを行う湿式電解エッチング工程と
を含み、
前記レジスト層を形成するために使用されるレジスト材料が、光重合開始剤と重合性化合物とを含有する光硬化性組成物であって、
(a)上記光重合開始剤が、ヨードニウム化合物もしくはスルホニウム化合物からなる光カチオン重合開始剤(A)であり、
(b)上記重合性化合物の総重量に対して35重量%以上が、炭素原子および水素原子のみからなるエチレン性不飽和結合を含むカチオン重合性炭化水素化合物(B)であり、さらに、
(c)下記の式(1)に基づき計算される、上記光硬化性組成物に含まれるヘテロ原子の割合を表したヘテロ原子含有百分率:
ヘテロ原子含有百分率=100×Σ(Nhi×Mi)/Σ{(Nhi+Nci)×Mi} (1)
[式中、Nhiは光硬化性組成物中の各成分に含まれるヘテロ原子の数であり(但し、ここでいうヘテロ原子とは、炭素原子および水素原子を除いた全ての原子である)、Nciは光硬化性組成物中の各成分に含まれる炭素原子の数であり、Miは光硬化性組成物に占める各成分の物質量の分率を示し、ΣMi=1であり、i は光硬化性組成物に含まれる成分の種類の数を表し、1以上の整数を示す。]
が6.0以下である
ことを特徴とする電解コンデンサ用電極箔の製造方法。
本発明の光硬化性組成物およびレジスト層(硬化被膜)のヘテロ原子含有百分率は、それぞれの元素分析を行って判明する各元素の重量百分率から算出することができる。
<2>前記光硬化性組成物が、光増感剤、界面活性剤、重合禁止剤、酸化防止剤、密着性付与剤からなる群から選ばれる1種類以上の添加剤を含有することを特徴とする、<1>に記載の電解コンデンサ用電極箔の製造方法。
<3>前記レジストパターン形成工程において、光ナノインプリント法を用いて前記レジスト層をパターンニングすることを特徴とする、<1>または<2>に記載の電解コンデンサ用電極箔の製造方法。
<4>前記レジストパターン形成工程において、光ナノインプリント法を用いてパターンニングされた前記レジスト層の凹凸パターンの凹部に残存する残膜を酸素系ドライエッチングにより除去することを特徴とする、<3>に記載の電解コンデンサ用電極箔の製造方法。
<5>前記レジスト層形成工程において、インクジェット方式、スリットダイコート方式または小径グラビア方式により前記光硬化性組成物を前記電極箔表面に塗布して前記レジスト層を形成することを特徴とする、<1>ないし<4>のいずれかに記載の電解コンデンサ用電極箔の製造方法。
<6> <1>ないし<5>のいずれかに記載の電解コンデンサ用電極箔の製造方法で得られた電解コンデンサ用電極箔。
【発明の効果】
【0009】
本発明の製造方法にて使用される光硬化性組成物は、光に感光して酸を発生させ、カチオン重合により硬化させることができ、エッチング液に対する耐性に優れた硬化被膜を形成し、この効果は炭素原子と水素原子以外のヘテロ原子含有率が極めて低い炭化水素系化合物をモノマーに使用することによって得られる。
本発明の製造方法では、上記の光硬化性組成物を光ナノインプリント用レジストとして用いた光ナノインプリント法により、電極箔(特にアルミニウム箔)の表面に、サブマイクロメートルオーダーで制御されたパターンを付与することができ、それをエッチングすることによって、付与したパターン周期に従ってエッチングピットを整列させることができ、従来よりも高容量の電解コンデンサ用電極箔が製造できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の製造方法を用いて電解コンデンサ用電極箔を製造する際の好ましい一例における工程を示す図である。
【
図2】(a)は、本発明の製造方法を用いて製造された電解コンデンサ用アルミニウム電極箔の一例における表面状態を示すSEM画像(走査型電子顕微鏡写真)であり、(b)は、レジスト材を用いずにエッチングを行った際のアルミニウム電極箔の表面状態を示すSEM画像である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下において、本発明の内容について詳細に説明する。以下に記載する構成要件の説明は、本発明の代表的な実施態様に基づいてなされることがあるが、本発明はそのような実施態様に限定されるものではない。なお、本願明細書において「~」とはその前後に記載される数値を下限値および上限値として含む意味で使用される。
【0012】
本発明の製造方法にて、レジスト層を形成するために使用されるレジスト材料は、光重合開始剤と重合性化合物とを含有する光硬化性組成物であって、
(a)上記光重合開始剤が、ヨードニウム化合物もしくはスルホニウム化合物からなる光カチオン重合開始剤(A)であり、
(b)上記重合性化合物の総重量に対して35重量%以上が、炭素原子および水素原子のみからなるエチレン性不飽和結合を含むカチオン重合性炭化水素化合物(B)であり、さらに、
(c)上記光硬化性組成物のヘテロ原子含有百分率は6.0以下である。
以下、上記の光硬化性組成物に含有される各成分について説明する。
【0013】
本発明の製造方法にて使用される上記の光硬化性組成物に含まれる光重合開始剤は、ヨードニウム化合物もしくはスルホニウム化合物からなる光カチオン重合開始剤(A)であり、光カチオン重合開始剤(A)としては、公知のヨードニウム化合物もしくはスルホニウム化合物を任意に用いることができる。
【0014】
ヨードニウム化合物およびスルホニウム化合物は、光を吸収して分解反応を起こすカチオン部と、酸の発生源となるアニオン部の組み合わせとして見なすことができ、吸収する光の波長、光硬化性組成物(レジスト材料)への溶解性、発生する酸強度などの観点で、公知のヨードニウムまたはスルホニウムカチオン部、およびアニオン部の中から選択することができる。
【0015】
例えば、好ましいヨードニウムカチオン部の具体例としては、ジフェニルヨードニウムカチオン、ジ-p-トリルヨードニウムカチオン、4-イソプロピルフェニル(p-トリル)ヨードニウムカチオン、ビス(4-tert-ブチルフェニル)ヨードニウムカチオン、4-オクチルオキシフェニルフェニルヨードニウムカチオン、ジ-4-イソプロピルフェニルヨードニウムカチオン、ビス(2,4-ジイソプロピルフェニル)ヨードニウムカチオン、4-ヘキシルフェニル(p-トリル)ヨードニウムカチオン、4-シクロヘキシルフェニル(p-トリル)ヨードニウムカチオン、ビス(4-ドデシルフェニル)ヨードニウムカチオン、ビス(4-メトキシフェニル)ヨードニウムカチオン、ビス(4-デシルオキシフェニル)ヨードニウムカチオン、4-(2-ヒドロキシテトラデシルオキシ)フェニルフェニルヨードニウムカチオン等が挙げられる。
【0016】
例えば、好ましいスルホニウムカチオン部の具体例としては、トリフェニルスルホニウムカチオン、4-(フェニルチオ)フェニルジフェニルスルホニウムカチオン、ビス[4-(ジフェニルスルホニオ)フェニル]スルフィド、4-ヒドロキシフェニルメチルベンジルスルホニウムカチオン、トリス(4-クロロフェニル)スルホニウムカチオン、トリス(4-フルオロフェニル)スルホニウムカチオン、4-tert-ブチルフェニルジフェニルスルホニウムカチオン、ジフェニルフェナシルスルホニウムカチオン等が挙げられる。
【0017】
例えば、好ましいアニオン部の具体例としては、ヘキサフルオロホスフェート、ヘキサフルオロアンチモナート、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、テトラキス(3,5-ビス(トリフルオロメチル)フェニル)ボレート、テトラキス(2,6-ビス(トリフルオロメチル)フェニル)ボレート、トリフルオロメチルペンタフルオロホスフェート、ビス(トリフルオロメチル)テトラフルオロホスフェート、トリス(トリフルオロメチル)トリフルオロホスフェート、ペンタフルオロエチルペンタフルオロホスフェート、ビス(ペンタフルオロエチル)テトラフルオロホスフェート、トリス(ペンタフルオロエチル)トリフルオロホスフェート、ビス(n-ヘプタフルオロプロピル)テトラオロホスフェート、トリス(n-ヘプタフルオロプロピル)トリフルオロホスフェート、トリス(ヘプタフルオロイソプロピル)トリフルオロホスフェート、n-ノナフルオロブチルペンタフルオロホスフェート、ビス(n-ノナフルオロブチル)テトラフルオロホスフェート、トリス(n-ノナフルオロブチル)トリフルオロホスフェート、トリス(ノナフルオロイソブチル)トリフルオロホスフェート等が挙げられる。
【0018】
好ましいヨードニウム化合物の具体例としては以下のものが挙げられる。
【0019】
【0020】
好ましいスルホニウム化合物の具体例としては以下のものが挙げられる。
【0021】
【0022】
【0023】
上記の光カチオン重合開始剤(A)の含有量は、光硬化性組成物中に含まれる重合性化合物((B)+(C))100重量部に対して0.2~10重量部が好ましく、0.4~5重量部がより好ましく、0.6~4重量部がさらに好ましい。
光カチオン重合開始剤(A)の含有量が多すぎると、低照射量の露光量時も過剰な量のカチオンが発生してしまい、反応性を制御することが困難となることがある。逆に、含有量が少なすぎると、重合性化合物を反応させるのに十分な量のカチオンを発生させることが困難となり、硬化不良を招くおそれがある。これらの光カチオン重合開始剤(A)は、単独で用いてもよく、また2種以上を併用して用いてもよい。2種以上を併用する場合は、その合計量が上記の範囲となることが好ましい。
【0024】
本発明の製造方法にて使用される光硬化性組成物に含まれる重合性化合物は、当該重合性化合物の総重量に対して35重量%以上が、炭素原子および水素原子のみからなるエチレン性不飽和結合を含むカチオン重合性炭化水素化合物(B)である。カチオン重合性炭化水素化合物(B)としては、例えば炭素数4~35の脂肪族不飽和炭化水素化合物(B1)や炭素数6~18の芳香族化合物にエチレン性不飽和基を置換した炭化水素化合物(B2)等を使用できる。
【0025】
炭素数4~35の脂肪族不飽和炭化水素化合物(B1)のうち、不飽和基を1つ有する化合物(B11) としては、1-ブテン、2-ブテン、イソブテン、1-ペンテン、3-メチル-1-ブテン、1-ヘキセン、2-ヘキセン、3-メチル-1-ペンテン、2,3-ジメチル-1-ブテン、3,3-ジメチル-1-ブテン、ビニルシクロペンタン、3,3-ジメチル-1-ペンテン、ビニルシクロヘキサン、1-オクテン、2-オクテン、2,4,4-トリメチル-1-ペンテン、ビニルノルボルナン、1-デセン、カンフェン、α-ピネン、β-ピネン、ビニルアダマンタン等が挙げられる。
不飽和基を2つ以上有する化合物(B12)としては、ブタジエン、1,4-ペンタジエン、シクロペンタジエン、1,5-ヘキサジエン、1,3-シクロヘキサジエン、2,5-ノルボリナジエン、ジシクロペンタジエン、4-ビニル-シクロへキセン、5-ビニル-2-ノルボルネン、5-エチリデン-2-ノルボルネン、あるいはこれらをディールスアルダー反応により生成される縮合多環不飽和炭化水素等が挙げられる。
【0026】
炭素数6~18の芳香族化合物にエチレン性不飽和基を置換した炭化水素化合物(B2)とは、エチレン性不飽和基(ビニル基、アリル基等)を1つ以上置換した、炭素数6~18(芳香族化合物に置換した置換基の炭素数は含まない)の芳香族炭化水素化合物をいう。また1つのエチレン性不飽和基に複数の芳香族炭化水素化合物が置換したものもこれに含有する。
炭素数6~18の芳香族化合物としては、フェニル、ナフチル、アントリル、フェナントリル、ピレニル等単環および多環芳香族炭化水素化合物が挙げられる。
アリール基としては、以上の他に、アリール基中の水素原子の一部が炭素数1~18のアルキル基や、炭素数6~18の(アルキル)アリール基等で置換されていてもよい。
【0027】
炭素数6~18の芳香族化合物にエチレン性不飽和基を置換した炭化水素化合物(B2)のうち、不飽和基を1つ有する化合物(B21)の具体例としては、スチレン、α-メチルスチレン、3-メチルスチレン、4-メチルスチレン、3-エチルスチレン、4-エチルスチレン、3-プロピルスチレン、4-イソプロピルスチレン、3-ブチルスチレン、4-tert-ブチルスチレン、4-ヘキシルスチレン、4-オクチルスチレン、3-(2-エチルヘキシル)スチレン、4-(2-エチルヘキシル)スチレン、2,4-ジフェニル-4-メチル-1-ペンテン、1-ビニルナフタレン、2-ビニルナフタレン、2-イソプロペニルナフタレン、9-ビニルアントラセン、1-ビニルアントラセン等が挙げられる。
不飽和基を2つ以上有する化合物(B22)の具体例としては、1,3-ジビニルベンゼン、1,4-ジビニルベンゼン、1,3-ジイソプロペニルベンゼン、1,4-ジイソプロペニルベンゼン、1,4-ジビニルナフタレン、1,5-ジビニルナフタレン、1,4-ジイソプロペニルナフタレン、9,10-ジビニルアントラセン、アリルスチレン、イソプロペニルスチレン、ブテニルスチレン、オクテニルスチレン等が挙げられる。
【0028】
これらのカチオン重合性炭化水素化合物(B)の中でも、脂環式化合物もしくは芳香族化合物が、剛直な分子構造に由来する高エッチング液耐性の硬化被膜が得られるため好ましい。
また、これらのカチオン重合性炭化水素化合物(B)は、単独で用いてもよく、また2種以上を併用して用いてもよい。2種以上を併用する場合は、その合計量が重合性化合物の総重量に対して35重量%以上となるようにする。カチオン重合性炭化水素化合物(B)の含有量が上記の範囲内では、光硬化性組成物の親水性が大きく低下し、硬化させて得られる硬化被膜内部へのエッチング液中の塩化物イオンの浸透を防ぐことができる。
【0029】
本発明では、上記光硬化性組成物中のヘテロ原子の割合を表したヘテロ原子含有百分率が6.0以下となる範囲、好ましくは0.9~6.0の範囲で、上記(B)のほか、ヘテロ原子含有カチオン重合性化合物(C)をさらに併用することができる。ヘテロ原子含有百分率が上記の範囲内においては、光硬化性組成物の親水性が大きく低下し、硬化させて得られる硬化被膜内部へのエッチング液中の塩化物イオンの浸透を防ぐことができる。
但し、ここでいう光硬化性組成物のヘテロ原子含有百分率とは、下記の式(1)に基づき計算される。
ヘテロ原子含有百分率=100×Σ(Nhi×Mi)/Σ{(Nhi+Nci)×Mi} (1)
【0030】
式(1)中、Nhiは光硬化性組成物中の各成分に含まれるヘテロ原子の数であり(但し、ここでいうヘテロ原子とは、炭素原子および水素原子を除いた全ての原子である)、Nciは光硬化性組成物中の各成分に含まれる炭素原子の数であり、Miは光硬化性組成物に占める各成分の物質量の分率を示し、ΣMi=1である。なお、i は光硬化性組成物に含まれる成分の種類の数を表し、1以上の整数を示す。
本発明において、光硬化性組成物に含まれるヘテロ原子の割合を表したヘテロ原子含有百分率を計算する際に考慮される成分は、光カチオン重合開始剤(A)、カチオン重合性炭化水素化合物(B)、ヘテロ原子含有カチオン重合性化合物(C)および光増感剤(D)だけであるが、これは、この他の成分である界面活性剤(E)や重合禁止剤(F)等は添加量が少なく、計算上無視できるからである。
【0031】
ヘテロ原子含有カチオン重合性化合物(C)としては、例えば、上記(B)のうち、水素原子や炭素原子の一部をヘテロ原子やヘテロ原子含有官能基で置き換えた化合物(C1およびC2)や、エポキシ化合物(C3)等が挙げられる。
【0032】
水素原子や炭素原子の一部をヘテロ原子やヘテロ原子含有官能基で置き換えた化合物とは、例えば、炭化水素化合物の水素原子を、アルコキシ基、アシル基、ハロゲン原子等に置き換えた化学構造や、炭化水素化合物の炭素原子(とその炭素原子に結合した水素原子)を、酸素原子、窒素原子等に置き換えた化学構造と同一である化合物のことをいう。
【0033】
本発明で用いられるヘテロ原子含有カチオン重合性化合物(C1)は、上記脂肪族不飽和炭化水素化合物(B1)の水素原子や炭素原子の一部をヘテロ原子やヘテロ原子含有官能基で置き換えた化合物のことをいい、例としては、4-メトキシ-1-ブテン、4-クロロ-1-ブテン、5-ジメチルアミノ-1-ペンテン、4-メトキシ-1-ペンテン、5-エトキシ-1-ペンテン、4-n-ブトキシ-1-ペンテン、4-tert-ブトキシ-1-ペンテン、2-ビニルシクロヘキサノン、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、プロピルビニルエーテル、n-ブチルビニルエーテル、tert-ブチルビニルエーテル、2-エチルヘキシルビニルエーテル、n-ノニルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル、シクロヘキシルメチルビニルエーテル、4-メチルシクロヘキシルメチルビニルエーテル、ベンジルビニルエーテル、ジシクロペンテニルビニルエーテル、2-ジシクロペンテノキシエチルビニルエーテル、メトキシエチルビニルエーテル、エトキシエチルビニルエーテル、n-ブトキシエチルビニルエーテル、メトキシエトキシエチルビニルエーテル、エトキシエトキシエチルビニルエーテル、メトキシポリエチレングリコールビニルエーテル、テトラヒドロフルフリルビニルエーテル、2-ヒドロキシエチルビニルエーテル、2-ヒドロキシプロピルビニルエーテル、4-ヒドロキシブチルビニルエーテル、4-ヒドロキシメチルシクロヘキシルメチルビニルエーテル、ジエチレングリコールモノビニルエーテル、ポリエチレングリコールビニルエーテル、クロロエチルビニルエーテル、クロロブチルビニルエーテル、エチレングリコールジビニルエーテル、プロピレングリコールジビニルエーテル、エチル-1-プロペニルエーテル、tert-ブチル-1-プロペニルエーテル、2-エチルヘキシル-1-プロペニルエーテル、ノニル-1-プロペニルエーテル、ドデシル-1-プロペニルエーテル、ラウリル-1-プロペニルエーテル、シクロヘキシル-1-プロペニルエーテル、シクロヘキシルメチル-1-プロペニルエーテル、ヘキサンジオールジプロペニルエーテル、トリメチロールエタントリプロペニルエーテル、トリメチロールプロパントリプロペニルエーテル、ジトリメチロールプロパンテトラプロペニルエーテル、グリセリントリプロペニルエーテル等が挙げられる。
【0034】
本発明で用いられるヘテロ原子含有カチオン重合性化合物(C2)は、上記芳香族不飽和炭化水素化合物(B2)の水素原子や炭素原子の一部をヘテロ原子やヘテロ原子含有官能基で置き換えた化合物のことをいい、例としては、4-n-オクチロキシスチレン、4-アセトキシスチレン、4-メトキシスチレン、3-メトキシスチレン、3-tert-ブトキシスチレン、4-クロロシスチレン、3-クロロスチレン、3,5-ジクロロスチレン、3-ブロモスチレン、4-ニトロスチレン、4-ビニルフェニルアセテート、2-ビニルピリジン、2-ビニルチオフェン、2-ビニルフラン、N-ビニルカルバゾール、3-tert-ブトキシ-1,5-ジビニルベンゼン等が挙げられる。
【0035】
本発明で用いられるエポキシ化合物(C3)としては、例えば、フェニルグリシジルエーテル、p-tert-ブチルフェニルグリシジルエーテル、ブチルグリシジルエーテル、2-エチルヘキシルグリシジルエーテル、アリルグリシジルエーテル、1,2-ブチレンオキサイド、1,3-ブタジエンモノオキサイド、1,2-エポキシドデカン、エピクロロヒドリン、1,2-エポキシデカン、スチレンオキサイド、シクロヘキセンオキサイド等単官能エポキシ化合物や、ビスフェノールAジグリシジルエーテル、ビスフェノールFジグリシジルエーテル、ビスフェノールSジグリシジルエーテル、臭素化ビスフェノールAジグリシジルエーテル、臭素化ビスフェノールFジグリシジルエーテル、臭素化ビスフェノールSジグリシジルエーテル、エポキシノボラック樹脂、水添ビスフェノールAジグリシジルエーテル、水添ビスフェノールFジグリシジルエーテル、水添ビスフェノールSジグリシジルエーテル、3,4-エポキシシクロヘキシルメチル-3’,4’-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル-5,5-スピロ-3,4-エポキシ)シクロヘキサン-メタ-ジオキサン、ビス(3,-エポキシシクロヘキシルメチル)アジペート、ビニルシクロヘキセンオキサイド、4-ビニルエポキシシクロヘキサン、ビス(3,4-エポキシ-6-メチルシクロヘキシルメチル)アジペート、3,4-エポキシ-6-メチルシクロヘキシル-3’,4’-エポキシ-6’-メチルシクロヘキサンカルボキシレート、メチレンビス(3,4-エポキシシクロヘキサン)、ジシクロペンタジエンジエポキサイド、エチレングリコールジ(3,4-エポキシシクロヘキシルメチル)エーテル、エチレンビス(3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート)、エポキシヘキサヒドロフタル酸ジオクチル、エポキシヘキサヒドロフタル酸ジ-2-エチルヘキシル、1,4-ブタンジオールジグリシジルエーテル、1,6-ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、グリセリントリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル類、1,1,3-テトラデカジエンジオキサイド、リモネンジオキサイド、1,2,7,8-ジエポキシオクタンおよび1,2,5,6-ジエポキシシクロオクタン等の多官能エポキシ化合物が挙げられる。
【0036】
これらのヘテロ原子含有カチオン重合性化合物(C)のうち、脂環式化合物もしくは芳香族化合物が、剛直な分子構造に由来する高エッチング液耐性の硬化被膜を得られるため好ましい。
また、これらのヘテロ原子含有カチオン重合性化合物(C)は、光硬化性組成物のヘテロ原子含有百分率が6.0以下となる範囲で、単独で用いてもよく、また2種以上を併用して用いてもよい。
【0037】
本発明の製造方法にて使用される光硬化性組成物は、照射された光を吸収し、得られたエネルギーを開始剤に受け渡すことで開始剤の光分解を促すことができる光増感剤(D)をさらに含んでいてもよい。
【0038】
光増感剤(D)としては、例えば、特開平11-279212号および特開平09-183960号等に開示されている公知の光増感剤等が使用でき、具体例としては、ナフタレン(1-ナフトール、2-ナフトール、1-メトキシナフタレン、2-メトキシナフタレン、1,4-ジヒドロキシナフタレンおよび4-メトキシ-1-ナフトール等);ベンゾキノン{1,4-ベンゾキノン、1,2-ベンゾキノン等};ナフトキノン{1,4-ナフトキノン、1,2-ナフトキノン等};アントラキノン{2-メチルアントラキノン、2-エチルアントラキノン等};アントラセン{アントラセン、9,10-ジブトキシアントラセン、9,10-ジメトキシアントラセン、9,10-ジエトキシアントラセン、2-エチル-9,10-ジメトキシアントラセン、9,10-ジプロポキシアントラセン等};ピレン;1,2-ベンズアントラセン;ペリレン;テトラセン;コロネン;チオキサントン{チオキサントン、2-メチルチオキサントン、2-エチルチオキサントン、2-クロロチオキサントン、2-イソプロピルチオキサントンおよび2,4-ジエチルチオキサントン等};フェノチアジン{フェノチアジン、N-メチルフェノチアジン、N-エチルフェノチアジン、N-フェニルフェノチアジン等};キサントン;クマリン{7-(ジエチルアミノ)4-(トリフルオロメチル)クマリン、3,3'-カルボニルビス(7-ジエチルアミノクマリン)、3-(2-ベンゾチアゾリル)-7-(ジエチルアミノ)クマリン、10-アセチル-2,3,6,7-テトラヒドロ-1,1,7,7-テトラメチル-1H,5H,11H,-[1]ベンゾピラノ[6,7,8-ij]キノリジン-11-オン、10-(2-ベンゾチアゾリル)-2,3,6,7-テトラヒドロ-1,1,7,7-テトラメチル-1H,5H,11H,-[1]ベンゾピラノ[6,7,8-ij]キノリジン-11-オン等};ケトン{2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン、4’-イソプロピル-2-ヒドロキシ-2-メチルプロピオフェノン、4-ベンゾイル-4’-メチルジフェニルスルフィド、ビス(4,4’-ジメチルアミノ)ベンゾフェノンおよびビス(4,4’-ジエチルアミノ)ベンゾフェノン等};カルバゾール{N-フェニルカルバゾール、N-エチルカルバゾール、ポリ-N-ビニルカルバゾールおよびN-グリシジルカルバゾール等};クリセン{1,4-ジメトキシクリセンおよび1,4-ジ-α-メチルベンジルオキシクリセン等};フェナントレン{9-ヒドロキシフェナントレン、9-メトキシフェナントレン、9-ヒドロキシ-10-メトキシフェナントレンおよび9-ヒドロキシ-10-エトキシフェナントレン等}等が挙げられる。
特に、本発明では、光重合開始剤として含有されるヨードニウム化合物もしくはスルホニウム化合物の電子受容性の観点から、ナフトキノン系、ベンゾフェノン系、キサントン系、アントラキノン系、チオキサントン系の光増感剤を使用したときに、高い増感効果が得られるため、好ましい。
【0039】
これら光増感剤(D)の含有量は特に限定されないが、重合性化合物(B)+(C)100重量部に対して通常0.005~10重量部、好ましくは0.01~5重量部、より好ましくは0.02~4重量部である。また、光増感剤(D)は、単独で用いてもよく、また2種以上を併用して用いてもよい。2種以上を併用する場合は、その合計量が上記の範囲となることが好ましい。
【0040】
本発明の製造方法にて使用される光硬化性組成物には、電極箔への塗布性を向上させるために一般的に使用される界面活性剤(E)を含むことができる。
本発明で用いることができる界面活性剤(E)としては、硬化被膜表面が親水性になることを避けるために、非イオン性(ノニオン系)の界面活性剤が好ましい。
非イオン性(ノニオン系)の界面活性剤としては、フッ素系界面活性剤、シリコーン系界面活性剤等が挙げられる。例えば、フッ素系界面活性剤としては、FC4432、同4430(スリーエム ジャパン社製)、S-242、同243、同431(AGCセイミケミカル社製)等を挙げることができ、シリコーン系界面活性剤としては、KP-341(信越化学工業社製)等が挙げられる。
【0041】
これら界面活性剤(E)の含有量は特に限定されないが、重合性化合物(B)+(C)100重量部に対して0.001~5重量部、好ましくは0.002~4重量部、さらに好ましくは0.005~3重量部である。界面活性剤(E)は、単独で用いてもよく、また2種以上を併用して用いてもよい。2種以上の界面活性剤を用いる場合はその合計重量が上記記載の範囲にあることが好ましい。
【0042】
前記光硬化性組成物には、継時保存安定性を向上させるために一般的に使用される重合禁止剤(F)を含むことができる。本発明で用いられる重合禁止剤(F)としては、例えば、芳香族ポリオール系化合物(4-tert-ブチルカテコール、4-メトキシフェノール、4-メトキシ-1-ナフトール等)、キノン系化合物(ナフトキノン、ベンゾキノン等)、ヒンダードフェノール系化合物(2,6-ジ-tert-ブチルフェノール、2-tert-ブチル-4,6-ジメチルフェノール、2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェノール、2,4,6-トリ-tert-ブチルフェノール等)等を用いることができる。
【0043】
本発明において、これら重合禁止剤(F)の含有量は特に限定されないが、重合性化合物(B)+(C)100重量部に対して0.001~1重量部、好ましくは0.002~1重量部、さらに好ましくは0.003~1重量部である。重合禁止剤(F)は、単独で用いてもよく、また2種以上を併用して用いてもよい。2種以上の重合禁止剤を用いる場合はその合計重量が上記記載の範囲にあることが好ましい。
【0044】
前記光硬化性組成物には、酸化防止剤(G)を含むことができる。酸化防止剤は、酸素ラジカルをトラップする能力を有し、熱、光照射、各種酸化性ガス(例えば、オゾン、活性酸素など)等による退色を抑制するものである。本発明で用いられる酸化防止剤(G)としては、例えば、ヒンダードフェノール系酸化防止剤(BASFジャパン社製Irganox1010、同1035、同1076等)、ヒンダードアミン系酸化防止剤(BASFジャパン社製Tinuvin PA 144、同765等)、チオエーテル系酸化防止剤(ADEKA社製アデカスタブAO-412S、同AO-503等)などを挙げることができる。
【0045】
本発明において、これら酸化防止剤(G)の含有量は特に限定されないが、重合性化合物(B)+(C)100重量部に対し0.001~1重量部、好ましくは0.002~1重量部、さらに好ましくは0.003~1重量部である。酸化防止剤(G)は、単独で用いてもよく、また2種以上を併用して用いてもよい。2種以上の重合禁止剤を用いる場合はその合計重量が上記記載の範囲にあることが好ましい。
【0046】
レジスト層を形成するための前記光硬化性組成物は、必要により溶剤および密着性付与剤(例えばシランカップリング剤)等を含有することができる。
溶剤としては、グリコールエーテル類(エチレングリコールモノアルキルエーテルおよびプロピレングリコールモノアルキルエーテル等)、ケトン類(アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンおよびシクロヘキサノン等)、エステル類(エチルアセテート、ブチルアセテート、エチレングリコールアルキルエーテルアセテートおよびプロピレングリコールアルキルエーテルアセテート等)、芳香族炭化水素類(トルエン、キシレン、メシチレンおよびリモネン等)、アルコール類(メタノール、エタノール、ノルマルプロパノール、イソプロパノール、ブタノール、ゲラニオール、リナロールおよびシトロネロール等)およびエーテル類(テトラヒドロフランおよび1,8-シネオール等)が挙げられる。これらは、単独で使用しても2種以上を併用しても良い。
上記の溶剤の含有量は特に限定されないが、光硬化性組成物の合計重量に基づいて0~99重量%であることが好ましく、さらに好ましくは0~95重量%、特に好ましくは0~90重量%である。
【0047】
また、密着性付与剤としては、ビス(トリメチルシリル)アミン、γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、γ-アミノプロピルトリエトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、p-スチリルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、尿素プロピルトリエトキシシラン、トリス(アセチルアセトネート)アルミニウムおよびアセチルアセテートアルミニウムジイソプロピレート等が挙げられる。上記の密着性付与剤の含有量は特に限定されないが、光硬化性組成物の合計重量に基づいて0~20重量%が好ましく、さらに好ましくは1~15重量%、特に好ましくは5~10重量%である。
【0048】
前記光硬化性組成物は、ヨードニウム化合物もしくはスルホニウム化合物からなる光カチオン重合開始剤(A)、炭素原子および水素原子のみからなるエチレン性不飽和結合を含むカチオン重合性炭化水素化合物(B)、必要により用いるヘテロ原子含有カチオン重合性化合物(C)、必要により用いる光増感剤(D)、必要により用いる界面活性剤(E)、必要により用いる重合禁止剤(F)、必要により用いる酸化防止剤(G)、必要により用いる溶剤および密着性付与剤を、公知の撹拌混合装置(撹拌機の付属した混合容器およびペイントシェーカー等)を用いて均一混合する方法および公知の混練機(ボールミルおよび3本ロールミル等)を用いて混練する方法等で得られる。なお、前記光硬化性組成物を調製する際の均一混合温度および混練温度は通常10℃~40℃、好ましくは20℃~30℃である。
【0049】
以下、本発明の電解コンデンサ用電極箔の製造方法の各工程について説明する。
図1には、本発明の製造方法を用いて電解コンデンサ用電極箔を製造する際の好ましい一例における工程が示されている。
本発明では、
図1に示されるようにして、電極箔基材の表面に、前記の光硬化性組成物(レジスト材料)からなるレジスト層を設けるレジスト層形成工程前に、レジスト層と電極箔基材との間の密着性を高める目的で、被エッチング基板である電解コンデンサ用電極箔の表面に基板処理剤をコーティングして密着層を形成してもよい。密着層形成には、例えば上記密着性付与剤を用い、加熱蒸着や塗布-加熱工程により基板上に密着層を設けることができる。また、密着層の形成に替えて光硬化性組成物に密着性付与剤を含ませてもよい。
【0050】
本発明の製造方法にて使用される電解コンデンサ用の電極箔基材は、公知の方法により表面調整(平坦化・平滑化)を行い、さらに洗浄を行って異物や汚れを除去したものを使用するのが一般的である。電極箔基材としてアルミニウム箔を用いる場合、電解コンデンサ用電極箔として使用可能なものであれば、どのようなものであってもよい。例えば、純度99.9以上、厚さ20~300μm、(100)面配向率95%以上の高純度アルミニウム箔を使用することができ、アルミニウム箔の平均粗度Raは、成形するパターンのホール直径の1/100以下であることが好ましい。例えば、ホール直径1.0μmのパターンを形成する場合はRa=0.01μmとする。
【0051】
そして、レジスト層形成工程においては、電極箔基材の表面に前記光硬化性組成物(レジスト材料)を塗布することによりレジスト層を形成する。レジスト層を形成する際の前記光硬化性組成物の塗布方式は適宜選択できるが、微細液滴を連続して吐出するインクジェット方式や、スリットダイコート方式や小径グラビア方式が好ましい。なお、小径グラビア方式では、直径20~50mm程度の小径のグラビアロールを用いてコーティングを行うのが一般的である。
本発明では、上記レジスト層の膜厚を適宜選択することができるが、0.05~10μm程度が好ましく、0.05μmを下回る膜厚である場合には、レジスト耐性が消失して、レジストパターン周期に従ったピット形成が行われない場合がある。また、膜厚10μmを上回る場合には、残膜厚が厚くなり、酸素反応性エッチングによる残膜除去工程で、レジスト膜の酸化が進み、レジスト耐性が劣化して、レジストパターン周期に従ったピット形成が行えなくなる場合がある。
なお、具体的なレジスト層の膜厚は、電極箔の耐電圧仕様に合わせてサブマイクロメートルからマイクロメートルサイズのパターンを付与する必要があるため、パターンサイズに応じて設定される。
例えば、アスペクト比が1程度の円柱パターン(凸モールド)を使用してレジストに凹部を形成(転写)する場合、円柱の直径および高さが低圧用の電極箔では0.2μm程度、高圧用の電極箔では2.0μm程度になる。レジスト層の膜厚としては、円柱の直径をd[μm]とすると、d/4~d[μm]が好ましく、d/3~4d/5[μm]がさらに好ましい。残膜除去を容易にする観点からは予め残膜が少ない(残膜を残さない)ことが望ましく、レジスト層の膜厚は円柱パターンの高さよりも小さいことが好ましい。
前記の光硬化性組成物を用いてレジスト層を形成する際、通常窒素ガス雰囲気下、空気雰囲気下で行うことができる。ラジカル重合で問題となる酸素阻害を受けないので、空気雰囲気下で行うことが簡便で好ましく、水分による硬化の影響を避けるため乾燥空気雰囲気下で行うことがより好ましい。
【0052】
そして、次のレジストパターン形成工程では、
図1に示されるようにして、電極箔基材の表面に塗布形成されたレジスト層の表面に、凹凸を有する透光性のナノインプリント用モールドを押し付けてレジスト層に凹凸パターンを形成し(第1工程)、その後、モールドが押し付けられたレジスト層を有する電極箔に対し、モールド側から光(紫外線)を照射してレジスト層を硬化させ(第2工程)、モールドの凹凸形状に対応する表面凹凸を有するレジスト層を形成させて、モールドをレジスト層から離型させる(第3工程)ことが好ましい。上記の工程を含むレジストパターン形成工程は、ロール・ツゥ・ロールにおいて有効であり、紫外線照射によるレジスト層の硬化が行えることによって基材の両面処理にも適している。
本発明に適した透光性モールド材としては、ガラス、石英ガラス、ポリカーボネート樹脂、アクリレート樹脂、透明金属蒸着膜、ポリジメチルシロキサン等が挙げられる。モールドのパターンは凸の円柱(ピラー)で、円柱の直径は0.2~2.0μm、高さは直径と同程度(アスペクト比1程度)が好ましく、円柱の配列としては六角形配列または正方配列が挙げられる。
本発明では、前記の光硬化性組成物を用いた光ナノインプリント法によって、
図1に示されるような湿式電解エッチング用レジストのパターンを形成することができる。
【0053】
本発明の製造方法において使用される前記光硬化性組成物は、光を照射することによって強酸を発生させ、カチオン重合による硬化反応を促進させて、硬化被膜(レジスト層)を得ることができる。したがって、このような硬化被膜を製造する際には、光源となる光の波長に応じた光増感剤(D)を選択し、該レジスト用光硬化性組成物に含有させたものを用いて光を照射するか、用いた光増感剤(D)が有する吸収波長に該当する光源を用いて光を照射する工程を含むことが好ましい。また、硬化反応の際には必要に応じて加熱してもよい。加熱温度は、通常、30℃~150℃であり、好ましくは35℃~120℃、さらに好ましくは40℃~100℃である。
本発明では、前記の光硬化性組成物を硬化させる際の光源として、一般的に使用されている高圧水銀灯の他、超高圧水銀灯、低圧水銀灯、メタルハライドランプおよびハイパワーメタルハライドランプ、アルゴンイオンレーザー、ヘリウムカドミウムレーザー、ヘリウムネオンレーザー、クリプトンイオンレーザー、各種半導体レーザー、キセノンランプあるいはLED光源が使用できる。
【0054】
本発明では、光ナノインプリント法において、光を照射してレジスト層の表面に凹凸を形成し、モールドをレジスト層から離型した後、レジスト層の凹凸パターンの凹部に残存する残膜を酸素系ドライエッチングにより除去する(第4工程)。これは、残膜が存在すると、その後に実施される湿式電解エッチングによって電極箔の微細加工ができなくなるからであり、湿式電解エッチングを行う前には、残膜の湿式エッチング耐性を消失させる必要がある。
本発明では、レジスト層の凹凸パターンの凹部に残存する残膜を除去する際、酸素系ドライエッチング(酸素またはオゾンガスを用いるドライエッチング)が用いられ、例えば反応性イオンエッチング、紫外線/オゾン処理等が好ましい。
【0055】
その後、本発明では、レジスト層の表面に形成された凹部の位置に露出した電極箔基材を湿式電解エッチングによりエッチングし、電極箔の表面に、光ナノインプリント用モールドの表面凹凸に対応する微細な表面凹凸を形成させ、最後に、電極箔上に存在する層を除去することで、微細な表面凹凸を有する電極箔が得られる。
この際、湿式電解エッチングの条件は特に限定されるものではないが、塩酸(1~7M)またはこれに硫酸(0.1~2M)を添加し、50~70℃に加温した液中で、30~60秒間エッチング処理を行なうのが一般的である。
【実施例】
【0056】
以下、実施例および比較例により本発明をさらに説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。以下、特に定めない限り、%は重量%、部は重量部を示す。
【0057】
[光硬化性組成物の調製]
[実施例1]
下記光カチオン重合開始剤A-1(3重量部)、下記カチオン重合性炭化水素化合物B-1(50重量部)、下記ヘテロ原子含有カチオン重合性化合物C-1(50重量部)、下記光増感剤D-1(1.5重量部)、下記界面活性剤E-1(0.01重量部)、下記重合禁止剤F-1(0.01重量部)を加えて実施例1のレジスト用光硬化性組成物を調製した。
【0058】
[実施例2~8]
実施例1において、上記レジスト用光硬化性組成物をそれぞれ下記表1記載の化合物に変更した以外は実施例1と同様にして、実施例2~8の組成物を調製した。
【0059】
[比較例1~4]
実施例1において、上記レジスト用光硬化性組成物をそれぞれ下記表1記載の化合物に変更した以外は実施例1と同様にして、比較例1~4の組成物を調製した。
【0060】
[レジスト層(硬化被膜)の形成]
上記で調製した組成物(実施例1~8および比較例1~4)を、あらかじめビス(トリメチルシリル)アミンで表面処理を施したアルミニウム基板上に、スピンコーターを用いて膜厚1.5μmとなるよう塗布した。スピンコートした塗布基膜に対して、高圧水銀灯により紫外線(1J/cm2)を照射させ、レジスト層を作成した。
【0061】
[エッチング耐性の評価]
エッチング耐性の評価は、上記で得られた硬化被膜に被覆されたアルミニウム試験片に対して、レジスト層上に濃塩酸を1mL垂らし、23℃/50%RH条件下1時間静置する濃塩酸暴露試験により行った。
試験後、純水によってレジスト層表面を洗浄した後、ジクロロメタンによってレジスト層を完全に溶解させた。レジスト層を完全に拭い去った後、アルミニウム基板表面の腐食痕を目視で確認した。その結果を表1に示す。また評価基準は以下の通りである。
○:アルミニウム基板表面に腐食が確認されない
△:アルミニウム基板表面の一部が腐食
×:アルミニウム基板表面が完全に腐食
【0062】
[光カチオン重合開始剤(A)]
A-1:クミル-p-トリルヨードニウムトリス(ペンタフルオロエチル)トリフルオロホスフェート(分子量782.2、炭素原子の数22、ヘテロ原子の数20)
A-2:(4-フェニルチオ)フェニルジフェニルスルホニウムトリス(ペンタフルオロエチル)トリフルオロホスフェート(分子量816.5、炭素原子の数30、ヘテロ原子の数21)
A-3:ビス(tert-ブチルフェニル)ヨードニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート(分子量1072.4、炭素原子の数44、ヘテロ原子の数22)
[カチオン重合性炭化水素化合物(B)]
B-1:4-tert-ブチルスチレン(分子量160.3、炭素原子の数12、ヘテロ原子の数0)
B-2:1,4-ジイソプロペニルベンゼン(分子量158.2、炭素原子の数12、ヘテロ原子の数0)
B-3:5-エチリデン-2-ノルボルネン(分子量120.2、炭素原子の数9、ヘテロ原子の数0)
[ヘテロ原子含有カチオン重合性化合物(C)]
C-1:4-tert-ブトキシスチレン(分子量176.3、炭素原子の数12、ヘテロ原子の数1)
C-2:4-メトキシスチレン(分子量134.2、炭素原子の数9、ヘテロ原子の数1)
C-3:4-n-オクチロキシスチレン(分子量232.4、炭素原子の数16、ヘテロ原子の数1)
C-4:4-クロロスチレン(分子量138.6、炭素原子の数8、ヘテロ原子の数1)
C-5:4-アセトキシスチレン(分子量162.2、炭素原子の数10、ヘテロ原子の数2)
C-6:2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパンジグリシジルエーテル(分子量340.4、炭素原子の数21、ヘテロ原子の数4)
[光増感剤(D)]
D-1:9,10-ジブトキシアントラセン(分子量322.4、炭素原子の数22、ヘテロ原子の数2)
[界面活性剤(E)]
E-1:KP-341(信越化学工業社製)
[重合禁止剤(F)]
F-1:4-tert-ブチルカテコール
【0063】
【0064】
表1からわかるように、本発明の製造方法にて使用される光硬化性組成物(レジスト材料)は、比較品として用いた光硬化性組成物と比べて、濃塩酸暴露試験において良好なエッチング耐性を示した。特に、実施例1~8では、濃塩酸暴露試験後でもレジスト層に大きな変化が見られなかった。一方、比較例1は、カチオン重合性炭化水素化合物(B)の重合性化合物の総重量に対する割合が35重量%に満たない例であり、濃塩酸暴露試験によってレジスト層に孔食が多数見られた。また比較例2~4は、ヘテロ原子含有百分率が6.0よりも大きい例であり、濃塩酸暴露試験によりレジスト層全体に膨潤およびヒビ割れが見られた。すなわち本発明の製造方法にて使用される光硬化性組成物は、強酸性のエッチング液に対する耐性に優れている。
【0065】
[光ナノインプリント法による電解コンデンサ用電極箔の製造例]
厚さ120μmの電解コンデンサ用高純度アルミニウム箔を使用。
以下の製造工程に従って電解コンデンサ用電極箔を作製し、アルミニウム電極箔の表面状態を走査型電子顕微鏡(SEM)で観察した。
用いた製造条件:
・表面調整
ラップ加工で平均粗度が1nm以下となるように表面を平滑化。
・表面洗浄
リン酸(2M)溶液(45℃)に60分間浸漬して表面の加工変性層を除去し、さらに、中性洗剤および超純水を用いて表面に付着した異物や汚れを除去するように洗浄。
・密着層形成
ビス(トリメチルシリル)アミンを、ステンレス容器内でオーブン加熱(300cm2に対して50μL、150℃、1時間)して、表面洗浄したアルミニウム箔表面に気相蒸着。
・レジスト層形成用光硬化性組成物の塗布
上記で調製した光硬化性組成物(実施例1~8、比較例1~4)をそれぞれ上記のアルミニウム箔表面に1μL/cm2の量で滴下。
・光ナノインプリント(凹凸形状の形成)
上記光硬化性組成物の塗布面に、凹部φ1.7μm、凹部の深さ1.7μm、ピッチ3.0μmの成形を行うナノインプリント用モールドを置き、モールド側から紫外線(波長365nm)を照射して光硬化性組成物を硬化させ、アルミニウム箔表面に凹凸パターンを付与し、その後、モールドを離型。
・パターン凹部に残存する残膜の除去
アルミニウム箔表面に付与されたパターンの凹部に残った残膜を、酸素リアクティブイオンエッチング(酸素RIE)により除去。
・エッチング
パターンが付与されたアルミニウム箔をエッチング液中でエッチング。
エッチング条件:標準条件(エッチング液として塩酸(6M)に硫酸(1M)を添加したものを55℃に加温して使用)にて所定の電流条件下で40秒間エッチング処理。
【0066】
エッチング後のアルミニウム箔表面のSEM画像から、実施例1~8の光硬化性組成物を用いた場合にはいずれもエッチング後において、付与したパターンに従ってエッチングピットを整列させることができることが確認された。これに対し、比較例1~4の光硬化性組成物を用いた場合にはいずれもエッチング後において、付与したパターンに従ってエッチングピットを整列させることはできなかった。
【0067】
[本発明における光硬化性組成物の使用の有無によるピット形成比較試験]
図2は、上記実施例8の組成を有する光硬化性組成物(レジスト材料)を使用した場合と、使用しない場合のエッチング後のアルミニウム箔表面の状態を比較したSEM画像であり、(a)は、本発明の製造方法(上記のナノインプリント用モールドを使用)にて製造された電解コンデンサ用アルミニウム電極箔の表面状態を示しており、(b)は、レジスト材を用いずにエッチングを行った際のアルミニウム電極箔の表面状態を示している。
これらSEM画像の比較から、本発明によるレジスト材料を使用した場合(
図2(a))には、ピット形成を精密に制御することができ、レジストのホール周期に一致したピット形成が行えることが確認された。これに対し、レジスト膜を設けずにエッチングを行った場合には、エッチング開始点の制御を行うことができず、アルミニウム箔表面にランダムなピット形成が起こることが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0068】
本発明の電解コンデンサ用電極箔の製造方法においては、特定の組成を有する光硬化性組成物により形成されるレジスト層が、エッチング液に対して優れた耐性を示すので、この光硬化性組成物を用いて光ナノインプリント法によりパターンを付与してエッチングを行った場合に、高精度にエッチングピットが形成でき、高容量の電解コンデンサに適した電極箔の製造が可能である。