(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-13
(45)【発行日】2023-07-24
(54)【発明の名称】ケーブル固定具
(51)【国際特許分類】
H02G 9/00 20060101AFI20230714BHJP
H02G 3/30 20060101ALI20230714BHJP
F16L 3/10 20060101ALI20230714BHJP
F16B 2/08 20060101ALI20230714BHJP
【FI】
H02G9/00
H02G3/30
F16L3/10
F16B2/08 A
(21)【出願番号】P 2019075413
(22)【出願日】2019-04-11
【審査請求日】2022-02-17
(73)【特許権者】
【識別番号】501111142
【氏名又は名称】株式会社タチバナ
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】田代 篤志
【審査官】鈴木 大輔
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-052213(JP,A)
【文献】特開2013-005706(JP,A)
【文献】特開2005-133894(JP,A)
【文献】登録実用新案第3133076(JP,U)
【文献】実開昭53-099595(JP,U)
【文献】特開2001-025141(JP,A)
【文献】特開2015-024791(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16B 2/00-2/26
F16L 3/00-3/26
H02G 3/22-3/40
H02G 9/00-9/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケーブルを設置する設置面部を有するケーブル受け部を備えたケーブル固定具であって、
前記ケーブル受け部に、前記ケーブルを締め付け固定する固定用バンドに係合して前記ケーブルを締め付けた状態に維持するロッキングヘッドを着脱可能に構成した固定部を備え、
前記固定部は、前記ケーブル固定具を支持する支持具の側とは反対側の突出端部のみに備えたケーブル固定具。
【請求項2】
前記固定部に、前記ロッキングヘッドと係合する係合部が設けてある請求項1に記載のケーブル固定具。
【請求項3】
前記固定部の近傍に、前記ケーブルを仮止めする仮止め部を備えた請求項1または2に記載のケーブル固定具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ケーブルを設置する設置面部を備えるケーブル受け部を備えたケーブル固定具に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、上下両端部にアンカーボルトへ装着する固定用突片が設けられ、且つ、全体が縦長の矩形状を成すと共に、前面の中心線上にスリットが設けられた金属製の支持具と、この支持具のスリット内に上下多段的に装着される複数のケーブル支持用の受け皿体とによって構成されたケーブル支持具が開示してある。このケーブル支持具には、ケーブルを下から抱持する略半円弧状の湾曲面部が凹設してある受け皿体に、当該湾曲面部を挟んだ状態で、その左右両側部に、上記湾曲面部内に抱持されたケーブルの上側面に掛け渡した樹脂バンド(固定用バンド)の両端部側を夫々挿通可能とする左右二つのロッキングヘッドが設けてある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載のケーブル支持具において、ケーブルを交換あるいは増設する際には、既設の固定用バンドを除去し、新たなケーブルを受け皿体に載置したのち、新たな固定用バンドを装着する。既設の固定用バンドを除去する際には、当該固定用バンドを切断して生じた固定用バンド片をロッキングヘッドから取り除くこととなる。
【0005】
ロッキングヘッドは受け皿体の左右両側部(支持具のスリット側とその反対側)に設けてあり、それぞれのロッキングヘッドにおいて固定用バンド片を取り除く必要があるため、作業に時間を要していた。
【0006】
また、例えば支持具のスリット側のロッキングヘッドから固定用バンド片を取り除く場合、当該固定用バンド片は、支持具のスリット内に落下させることがある。作業効率を鑑みた場合、スリット内に落下した固定用バンド片はそのまま放置されることがある。
【0007】
また、受け皿体は支持具に上下多段的に装着してあるが、各段の受け皿体において上記の作業を行った場合、各段の受け皿体で生じた複数の固定用バンド片が支持具のスリット内に落下することがある。このように、限られたスペースである支持具のスリット内には複数の固定用バンド片が溜まる可能性があるため、次にケーブルを交換あるいは増設する際には、新たに生じた固定用バンド片を除去するスペースが無くなる虞がある。
【0008】
従って、本発明の目的は、既設の固定用バンドを除去する作業を迅速に行うことができ、切断されて生じた固定用バンド片を容易に除去できるケーブル固定具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するための本発明に係るケーブル固定具は、ケーブルを設置する設置面部を有するケーブル受け部を備えたケーブル固定具であって、その第一特徴構成は、前記ケーブル受け部に、前記ケーブルを締め付け固定する固定用バンドに係合して前記ケーブルを締め付けた状態に維持するロッキングヘッドを着脱可能に構成した固定部を備え、前記固定部は、前記ケーブル固定具を支持する支持具の側とは反対側の突出端部のみに備えた点にある。
【0010】
本構成によれば、固定用バンドでケーブル受け部に固定したケーブルを取り外す場合は、切断工具等で固定用バンドを切断した後に、固定用バンド片をロッキングヘッドから除去し、ロッキングヘッドを固定部から除去するだけでよいため、突出端部の側だけの作業をすればよい。即ち、本構成によれば、特許文献1に記載のケーブル支持具のように、支持具のスリット側で固定用バンド片を除去する作業を行う必要がなくなる。従って、本発明のケーブル固定具であれば、既設の固定用バンドを除去する作業を迅速に行うことができ、かつ、切断されて生じた固定用バンド片を容易に除去することができる。
【0011】
本発明に係るケーブル固定具の第二特徴構成は、前記固定部に、前記ロッキングヘッドと係合する係合部を設けた点にある。
【0012】
本構成によれば、係合部がロッキングヘッドと係合してロッキングヘッドを確実に固定部に固定することができる。
【0013】
本発明に係るケーブル固定具の第三特徴構成は、前記固定部の近傍に、前記ケーブルを仮止めする仮止め部を備えた点にある。
【0014】
本構成によれば、仮止め部でケーブルを仮止めしておけば、固定用バンドをロッキングヘッドに挿通させる作業を迅速に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明のケーブル固定具の使用状態を示す図である。
【
図3】本発明のケーブル固定具を示す上方斜視概略図である。
【
図4】本発明のケーブル固定具を示す下方斜視概略図である。
【
図5】本発明のケーブル固定具の要部概略図である。
【
図6】本発明のケーブル固定具を使用してケーブルを固定用バンドによって固定する手順を示す概略図である。
【
図7】本発明のケーブル固定具を使用してケーブルを固定用バンドによって固定する手順を示す概略図である。
【
図8】本発明のケーブル固定具を使用してケーブルを固定用バンドによって固定する手順を示す概略図である。
【
図9】別実施形態のケーブル固定具を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
図1~5に示したように、本発明のケーブル固定具Xは、ケーブルを設置する設置面部12aを有するケーブル受け部10を備え、ケーブル受け部10に、ケーブルCを締め付け固定する固定用バンド20に係合してケーブルCを締め付けた状態に維持するロッキングヘッド30を着脱可能に構成した固定部11を備え、固定部11は、ケーブル固定具Xを支持する支持具2の側とは反対側の突出端部10Aのみに備える。
【0017】
図1は、トンネル内に電力ケーブルや通信ケーブル等の各種のケーブルCを配設するのに本実施形態に係るケーブル固定具Xを使用した状態を示す。
図1に示すように、ケーブル固定具Xを支持する支持具2がボルト3によりトンネルの内壁面1に設置されており、支持具2により支持された複数の(本実施形態では3つの)ケーブル固定具XにケーブルCが固定されている。この支持具2及びケーブル固定具Xをトンネルの内壁面1に所定間隔で設けることで、トンネル内にケーブルCをわたらせながら固定することができる。
【0018】
支持具2は、トンネル内にケーブルCを配設するために一般に用いられるものであればよく詳述は省略するが、
図1,2に示すように、支持具2は平面視C字状で高さ方向に延びる支持部2aを有し、支持部2a内に順番にケーブル固定具Xが挿通されることにより、複数のケーブル固定具Xが高さ方向に配設された状態となっている。
【0019】
各ケーブル固定具Xは対象のケーブルCの太さや形状に合わせた大きさにそれぞれ形成されている。本実施形態では、一番上に位置するケーブル固定具X1は3本のケーブルが結束されたケーブルC1を対象とし、3つの中で最も大きく形成されている。真ん中に位置するケーブル固定具X2はケーブルC1よりも細い一本のケーブルC2を対象とし、ケーブルC2に合わせた大きさで形成されている。一番下に位置するケーブル固定具X3はケーブルC2よりもさらに細いケーブルC3を対象とし、3つの中で最も小さく形成されている。また、各ケーブル固定具X1~X3の位置調整をするために、最も上側のケーブル固定具X1と真ん中のケーブル固定具X2との間に板状部材からなるスペーサー4が挿通されている。そして、複数のケーブル固定具X1~X3の抜けを防止するために、支持具2の上部に抜け止めピン5が設けられている。このように、トンネルの内壁面1に設置された支持具2に対し、対象のケーブルC1~C3の太さに合わせたケーブル固定具X1~X3がスペーサー4により所望の位置に配置されており、これにより適切にケーブルC1~C3をトンネルの内壁面1に対して固定することができる。
【0020】
次に、ケーブル固定具Xについて説明する。
図1,2に示したケーブル固定具X1~X3はそれぞれ大きさが異なるが、主要な構成については共通するため、以下では、ケーブル固定具X2を例に説明する。
【0021】
図3に示すように、ケーブル固定具Xは、ケーブルCを設置するケーブル受け具10を備える。以下では、支持具2に設置するときを基準とし、支持具2の延在方向を高さ方向Hとし、トンネルの内壁面1(支持具2)に直交する方向を横方向S、ケーブルCの延在方向を幅方向Wとして説明する。
【0022】
ケーブル受け具10は、支持部2aに挿通させる部位であり、高さ方向Hに延びる板状の挿通部13と、挿通部13に対して横方向Sに突出し、ケーブルCを設置する設置面部12aを有する設置部12と、を備える。設置面部12aはケーブルCの形状に沿うように、幅方向Wから見て下に凸の弧状に形成してある。
【0023】
また、ケーブル受け部10には、ケーブルCを締め付け固定する固定用バンド20に係合してケーブルCを締め付けた状態に維持するロッキングヘッド30を着脱可能に構成した固定部11が備えてある。当該固定部11は、ケーブル固定具Xを支持する支持具2の側とは反対側の突出端部10Aのみに備えてある。
【0024】
固定部11は、ロッキングヘッド30が着脱可能となるように構成すればその形状は特に限定されるものではない。本実施形態では、固定部11がロッキングヘッド30を収容できる凹状に形成した場合について説明する。
【0025】
固定用バンド20は、長尺に形成されたベルト状の態様を有し、例えば、比較的硬質の難燃性の合成樹脂材(例えば難燃ナイロン)を用いて形成してある。固定用バンド20は、その表面に、ローレット加工等を施して細かい凹凸を形成してある。また、固定用バンド20は、ケーブルCの径等に応じて必要な長さに切断して使用する。尚、固定用バンド20の締め付け具合によって、ある程度の範囲内であれば、ケーブル径の大小に適応することは可能である。
【0026】
ロッキングヘッド30は、固定用バンド20に係合してケーブルCを締め付けた状態に維持する態様であればその形状は特に限定されるものではない。本実施形態では、固定用バンド20が挿通する挿通路31と、挿入された固定用バンド20の位置をロックするロック爪32と、を備えた態様とする場合について説明する。即ち、ロッキングヘッド30に取り付けられたロック爪32は、固定用バンド20の挿入方向への挿通は可能にするが、これを引き戻す方向(挿入方向の反対方向)に引っ張ると、ロック爪の刃先が固定用バンド20の面に食い込み、これにより固定用バンド20の位置をロックして固定用バンド20の引き戻しを防止することができる。本実施形態のロッキングヘッド30は、2つの挿通路31a,31bを隣接配置した態様とし、それぞれの挿通路31にロック爪32を備えた態様とする場合について説明する。
【0027】
ケーブル受け部10の設置面部12aに抱持されたケーブルCは、固定用バンド20の引き締めによってその抱持状態が保持され、ロック爪32の係止によって固定用バンド20によるケーブルCの抱持状態を長期間に亘って維持することができる。
【0028】
また、ケーブル受け部10には、固定用バンド20を高さ方向Hに挿通する開口部14a、および、固定用バンド20を下方からスライドさせて上方に導く溝部15が設けてある。
【0029】
上述した本発明のケーブル固定具Xを使用してケーブルCを固定用バンド20によって固定する手順を以下に説明する(
図6~8)。
・固定用バンド20の一端をロッキングヘッド30の挿通路31aに挿通させた状態で、固定用バンド20の他端を下方から開口部14aに挿通させ、開口部14aを挿通した固定用バンド20が溝部15を沿うように固定用バンド20の他端を上方に導く。このとき、ロッキングヘッド30を固定部11に固定する(
図6,7)。
・ケーブル受け部10の設置面部12aに抱持されたケーブルCの上方を押えるように固定用バンド20の他端を曲げ、突出端部10Aの側に形成した開口部14bを介して、当該固定用バンド20の他端をロッキングヘッド30の挿通路31bに挿通させる(
図8)。
・固定用バンド20を引き締めてケーブルCを固定用バンド20によってケーブル受け部10の設置面部12aに固定する。
・必要に応じて、固定用バンド20の余長分を切断する。
【0030】
従って、本発明のケーブル固定具Xであれば、固定用バンド20を装着して引き締める作業を突出端部10Aの側だけ行えばよいため、固定用バンド20を装着する作業を迅速に行うことができる。
【0031】
また、既設の固定用バンド20を除去する手順を以下に説明する。
・ケーブルCを固定した状態の固定用バンド20を切断工具等で切断する。
・固定用バンド20を切断して生じた固定用バンド片をロッキングヘッド30から除去する。
・ロッキングヘッド30を固定部11から除去する。
【0032】
このように、固定用バンド20でケーブル受け部10に固定したケーブルCを取り外す場合は、切断工具等で固定用バンド20を切断した後に、固定用バンド片をロッキングヘッド30から除去し、ロッキングヘッド30を固定部11から除去するだけでよいため、突出端部10Aの側だけの作業をすればよい。従って、本発明のケーブル固定具Xであれば、既設の固定用バンド20を除去する作業を迅速に行うことができ、かつ、切断されて生じた固定用バンド片を容易に除去することができる。
【0033】
固定部11には、ロッキングヘッド30と係合する係合部11aが設けてある。当該係合部11aはロッキングヘッド30と係合する態様であればその形状は特に限定されるものではない。本実施形態では、係合部11aがロッキングヘッド30の側面に形成してある凹部に係合する凸状部とした場合について説明する。係合部11aは、凹状に形成してある固定部11の内面において対向するように一対設けるとよい。
【0034】
本構成では、係合部11aがロッキングヘッド30と係合してロッキングヘッド30を確実に固定部11に固定することができる。
【0035】
固定部11の近傍には、ケーブルCを仮止めする仮止め部16を備えてある。当該仮止め部16は、ケーブルCを一時的に係止できる態様であればその形状は特に限定されるものではない。本実施形態では、仮止め部16が、一方が解放したスリット状の態様とした場合について説明する。即ち、このような解放した部位からケーブルCを仮止め部16に侵入させることでケーブルCを一時的に係止することができる。
【0036】
仮止め部16でケーブルCを仮止めするケースとしては、例えば、ケーブルCを交換あるいは増設する際に、ケーブルCを設置面部12aに設置した状態で固定用バンド20をロッキングヘッド30の挿通路31に挿通させる前に、一時的にケーブルCを仮止めする場合などが例示される。
【0037】
本構成では、仮止め部16でケーブルCを仮止めしておけば、固定用バンド20をロッキングヘッド30の挿通路31に挿通させる作業を迅速に行うことができる。
【0038】
〔別実施例〕
上述した実施形態では仮止め部を備えた場合について説明したが、
図9に示したように、当該仮止め部を省略して実施してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0039】
本発明は、ケーブルを設置する設置面部を備えるケーブル受け部を備えたケーブル固定具に利用できる。
【符号の説明】
【0040】
X ケーブル固定具
C ケーブル
2 支持具
10 ケーブル受け部
10A 突出端部
11 固定部
11a 係合部
12a 設置面部
16 仮止め部
20 固定用バンド
30 ロッキングヘッド